JPH10158812A - ステンレス鋼の製造方法 - Google Patents
ステンレス鋼の製造方法Info
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- C—CHEMISTRY; METALLURGY
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Abstract
おいて、揮発性薬液を用いずに鉄酸化被膜の除去が行え
る方法を提供する。 【解決手段】 ステンレス鋼表面を清浄化処理した後、
酸化雰囲気中で加熱処理を行って得られた金属酸化物の
被膜を、硫酸水溶液を用いたエッチング操作により除去
して、表層を耐蝕性の不動態被膜であるクロム濃縮層に
実質的に変化させる。
Description
造方法に関する。さらに詳細には、ステンレス鋼表面に
形成された金属酸化物の被膜を除去して、例えば半導
体、原子力利用等の分野において用いられる超純水等の
ための容器、配管、部品などの材料として好適な、耐蝕
性に富んだ表面を有するステンレス鋼を提供することが
できる、ステンレス鋼の製造方法に関する。
は、食品、医薬品、精密機器等の分野において広く使用
されており、その用途に応じて様々な種類のものが提供
されている。半導体または原子力利用等の分野では、特
に厳密に処置及び清浄化を行う必要があるので、鉄イオ
ンの溶出遊離が高度に防止された、極めて耐蝕性に富ん
だ表面を有するステンレス鋼が、超純水等のための容
器、配管、部品などの材料として用いられる。このよう
な材料に好適なステンレス鋼として、例えば、特公平2
−1916号に開示された方法によって製造されたステ
ンレス鋼が挙げられる。かかる製造方法は、本質的に以
下の工程を経るものである。
造するためにかかる方法を適用する場合、微細な埃塵等
が付着しないよう特に留意して各工程を実施しなければ
ならない。従って、このような目的に使用されるステン
レス鋼の製造は、従来よりクリーンブースまたはクリー
ンルーム等の清浄化空気の環境下にて行われている。と
ころが、これらの比較的閉鎖状態にある空間内におい
て、製造工程で揮発性の試薬を使用すると、短時間で揮
発した試薬が充満し、試薬の種類によっては作業者の身
体に悪影響を及ぼしたり、空間内の機器や施設を汚染、
腐蝕する等の不都合を免れえない。特公平2−1916
号の方法では、第3工程の酸化被膜の溶解除去のために
塩酸水溶液が使用されており、揮発するミストの拡散に
よる影響が危惧されていた。
食性に優れたステンレス鋼の製造方法において、揮発性
薬液を用いずに所望の程度の酸化被膜除去が行える方法
を提供することを目的とする。
術に鑑みてこの課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結
果、ステンレス鋼の製造方法において、ステンレス鋼表
面を清浄化処理した後、酸化雰囲気中で加熱処理を行う
ことにより形成された金属酸化物の被膜を、硫酸水溶液
を用いたエッチング操作により除去して、表層を耐蝕性
の不動態被膜であるクロム濃縮層に実質的に変化させる
ことにより、本質的に閉鎖状態にある空間内での操作に
適した方法が提供されることを見出し、本発明を完成す
るに至った。
テンレス鋼としては、種々のステンレス鋼が使用可能で
あるが、例えば、SUS316、SUS316L、SU
S304またはSUS304L等が好適に使用される。
工変質層を取り除くことを意図して実施される工程であ
る。この清浄化工程としては、バフ研磨、電解研磨等が
可能であり、これらを組み合わせてもよい。前記電解研
磨法は、本質的に本出願人による特開平7−26613
4号に開示された方法に従うものである。
酸化雰囲気中において加熱処理を行うものである。この
加熱処理は、好ましくは300〜500℃の範囲にて、
1〜3時間、好ましくは約2時間実施されるとよい。処
理温度が低いと酸化膜の形成が不充分なために発錆の可
能性が高くなり、また処理温度が高いと酸化被膜が過度
に肥厚すると同時に脆弱になることがある。また、加熱
時間が短すぎると、やはり酸化膜の形成が不充分にな
り、また長時間処理することで酸化被膜が過厚となりう
る。
下のごとく除去することによって、ステンレス鋼の表層
を耐蝕性の不動態被膜であるクロム濃縮層に実質的に変
化させる。すなわち、金属酸化物の被膜が施されたステ
ンレス鋼を、硫酸水溶液に浸漬することによりエッチン
グを行う。
%水溶液であり、特に好ましくは5重量%である。硫酸
の濃度が低すぎると膜の溶解除去を充分に行うために長
時間を要し、また、高濃度硫酸を用いると、急激に溶解
除去がなされることに起因して、処理後の表面が荒れて
不均一となり、平滑なクロム濃縮層の不動態膜が得られ
難い。また、エッチング操作は、40〜90℃の範囲で
行われることが好ましく、特に昇温及び温度維持に要す
るエネルギーとエッチング効率に鑑みて、60℃にて行
うことが最も好ましい。従って、前記エッチングが、5
重量%の硫酸水溶液を用いて60℃にて行われることが
本発明の最も好ましい実施態様である。
温度に依存して、鉄酸化被膜色(上記方法に従えばゴー
ルド色)の退色を指標として所望に応じて溶解除去が達
成されるまでの時間、実施すればよい。例えば、本発明
の好ましい実施態様において、SUS316Lステンレ
ス鋼に処理を施した場合には、約3時間で充分なエッチ
ングが行え、平滑なクロム濃縮層が得られる。
を、実施例を挙げてさらに説明するが、本発明はもとよ
りこれらに限定されるものではない。以下、%標記は、
特に断らない限り重量%を表す。
316Lステンレス鋼に、以下の工程に従って処理を施
し、様々な条件でエッチングを行った試料を得た。
上記ステンレス鋼表面を研磨した。
1.5Aの電流を通電し、38℃にて3分間、電解研磨
を行った。
た。
た希硫酸水溶液( 0.1%)で3時間、常温にて一次
酸洗を行った。
素気流下で乾燥させた。
理を2時間行なって、金属酸化物被膜を形成させた。
て、硫酸水溶液(5、7.5もしくは10重量%)また
は硝酸水溶液(5重量%)中に、試料を24時間にわた
って浸漬した。
った。
の工程で経時的に変化し、脱色する時間を目視により
観察した。得られた結果を以下の表1に示す。
ド色は、40℃及び60℃の硫酸水溶液中では24時間
以内に脱色して、酸化被膜の溶解除去が進行したことが
示唆されたが、一方25℃の硫酸水溶液及び硝酸水溶液
中では、24時間経過後にも脱色が認められなかった。
イオン濃度を、経時的にフェナトロリン吸光光度法によ
って以下のとおりに分析した。分析は、上記a.の目視
による評価にて酸化被膜の除去が示唆された、5、7.
5または10%硫酸水溶液を用いて40℃または60℃
で工程を行ったエッチング溶液から、所定時間毎に採
取したエッチング溶液試料について行った。
0mlとし、これに塩化ヒドロキシルアンモニウム溶液
(鉄不含、10重量/容量%)1ml、1,10-フェナント
ロリン溶液(0.1重量/容量%)5ml、酢酸アンモニ
ウム溶液(鉄不含、50重量/容量%)10ml及び超純
水14mlを添加し、合計100mlに調整した。20分間
室温にて放置して発色させ、その後510nmにて吸光度
を測定した。
e1000(Cica-MARCK社製、化学試験用鉄標準溶液、1000
mg Fe2+/L)を1000倍及び100倍に希釈して、
1mgFe2+/L及び10mg Fe2+/Lの鉄標準液を調製し
た。使用前のエッチング溶液に段階的に量を変えてこの
標準液を加え、30mlとした標準試料液について上記と
同様の操作を行い、Fe2+の濃度に対する吸光度の検量
線を作成した。得られた検量線を用いて、上記エッチン
グ溶液中へのFe2+イオンの遊離濃度を定量化した。そ
れぞれの条件下でエッチングを行った場合の溶液へのF
e2+鉄イオン遊離量の経時変化を、図1〜4に示す。
0%の硫酸水溶液中で40℃にて工程を実施した場合
の結果を示すものである。図1より明らかなとおり、5
%硫酸中、40℃にてエッチングを行った場合、16時
間後に及んでもエッチング溶液中の鉄濃度は増加し続
け、鉄が極めて緩徐に溶出し続けていることが明らかに
なった。図2及び3には、それぞれ7.5及び10%の
硫酸水溶液中で40℃にてエッチングを行った場合の結
果を示すが、それぞれ約8時間及び4時間までエッチン
グ溶液中の鉄濃度が増加し、その後はほぼ一定値を維持
している。従って、硫酸濃度を高めるにつれて鉄の溶出
速度が増大することが示唆される。
合、5%の硫酸水溶液中でもほぼ3時間以内に鉄の濃度
は一定値に至り、40℃で行った場合に比してかなり速
やかに鉄の溶出が完了することが図4より明らかであ
る。
価結果を総合して、硫酸水溶液を用いた場合にそれぞれ
の条件下にてエッチングが完了する時間を判断すると、
以下の通りである。
態を金属顕微鏡(OPTIPHOTO、日本光学工業(株)製)
を用いて観察し、エッチング前の状態と比較した。
中でエッチングした後のステンレス鋼試料は表面が荒れ
ており、均一な不動態膜は得難いことが示唆された。一
方、5%の硫酸水溶液を用いた場合、24時間後も40
℃及び60℃の双方において表面の荒れが認められず、
従って、エッチング溶液として5%硫酸水溶液が好適で
あると考えられた。
素組成をオージェ電子分光(AES)により分析した。
エッチング後のステンレス鋼試料は、10%の硫酸水溶
液中40℃の条件で、8時間及び16時間エッチングを
行ったものを用いた。
×10×2mm)をアルゴン(Ar)エッチングに付し、
加速電圧10keV、試料電流10nAとして、VGサ
イエンティフィック社製MICROLAB310−D走
査型オージェ電子分光装置を用い、オージェ電子放出に
伴うエネルギー値を測定することによって、開始後30
秒ごとにO、Fe、Cr、Ni及びCの各元素の原子個
数の割合を求めた。Arエッチングは、加速電圧3ke
V、試料電流400nAとして、Ar+イオンによって
約1.5mm2のエッチング面積にて行ない、この際、標
準試料のエッチング速度は、約45Å/分(Fe)であ
った。得られた結果を、図5〜7に示す。尚、各元素の
強度を原子百分率に変換する際に用いた感度係数は、C
:0.40、O :0.15、Cr:0.22、F
e:0.18、及びNi:0.29である。
元素分析について示した図5より、上記[1]工程で
得られた酸化被膜(酸化被膜の存在はO原子により示唆
される)は、主としてFeを含有するものであることが
明らかである。CrはArエッチング時間200秒付近よ
り確認され、Niは深部に向かうにつれて増加してい
る。これらの観察により、酸化被膜の最外表面は主に鉄
酸化物層からなり、その下部にクロム濃縮層が存在して
いることが示される。
件で8時間エッチングを行った後のステンレス鋼試料に
ついて示した図6においては、Oの存在する酸化膜にC
r、Fe及びNiの金属元素の存在が認められ、エッチ
ング前に存在していた鉄酸化物層が除かれ、下部のクロ
ム濃縮層が表出してきていることが示される。また、N
iは酸化膜層とバルク層との境界付近に濃縮している。
の条件で16時間エッチングを行った場合の結果は、本
質的に図6と同様であり、エッチング時間をさらに延長
しても、上記クロム濃縮層は保持されていることが示さ
れた。
鋼に被覆された鉄酸化被膜を、硫酸を用いた酸エッチン
グによって除去すると、最外層にクロム濃縮層が与えら
れることが示唆された。また、クロム濃縮層が表出した
後さらにエッチングを継続しても、クロム濃縮層が除か
れていないことも明らかになった。
ッチングを行ったステンレス鋼試料について、2、8及
び16時間後にエリプソメトリによって酸化膜の厚みを
測定し、エッチング前の厚みとともに比較した。エリプ
ソメトリは、横溝光学社製DVA−316型自動エリプ
ソメータを使用し、回転検光子法により偏光角を測定し
た。入射光の波長は6328Å(He−Neレーザによ
る)、入射角70度、偏光角は45度に設定して、1mm
角の面積において測定を行った。
るために、前記d.にて得られた深さ方向の元素分布の
OのプロファイルとArエッチング速度より予測され
る、酸化膜厚を求めた。Arエッチング速度としては、
Feに対する数値を採用し、[[標準試料のエッチング
速度(Å/分)×エッチング時間(分)]の値を、酸化膜
厚の予測値とした。
Fe2+の溶出量により示されるエッチングの進行状態に
対応し、エッチングの進行に伴って酸化膜厚が減少して
いる。エッチング後の酸化膜厚は、およそ65Åと推定さ
れた。
条件下に得られるステンレス鋼に対する評価をまとめる
と以下の表3のとおりである。
れる。
ッチング条件としては、5重量%硫酸水溶液、60℃、
3時間が最適である。
面を有するステンレス鋼が得られ、その酸化膜厚は約65
Åである。
より表されるエッチング進行状態と酸化膜厚とは対応関
係にある。
レス鋼の製造方法において、揮発性薬液を用いずに所望
の程度の酸化被膜除去が行え、クロムに富んだ表面を有
するステンレス鋼を得る方法を提供することができる。
従って、例えば超純水等の容器などに使用されるステン
レス鋼を、クリーンルーム等の実質的に閉鎖状態にある
空間内で、埃塵等の付着が最小限に抑制された環境下に
て製造することができるという作用効果が奏される。
酸水溶液中40℃にてエッチングした場合の、エッチン
グ溶液への鉄の遊離量の経時変化を表すグラフである。
と同様のグラフである。
同様のグラフである。
た場合の、図1と同様のグラフである。
素組成を表すグラフである。
ッチングを施した後のステンレス鋼の、図5と同様のグ
ラフである。
エッチングを施した後のステンレス鋼の、図5と同様の
グラフである。
Claims (4)
- 【請求項1】 ステンレス鋼の製造方法であって、 ステンレス鋼表面を清浄化処理した後、酸化雰囲気中で
加熱処理を行うことにより形成された金属酸化物の被膜
を、硫酸水溶液を用いたエッチング操作により除去し
て、表層を耐蝕性の不動態被膜であるクロム濃縮層に実
質的に変化させることを特徴とするステンレス鋼の製造
方法。 - 【請求項2】 前記硫酸水溶液が、3〜7重量%水溶液
である請求項1記載のステンレス鋼の製造方法。 - 【請求項3】 前記エッチングが、40〜90℃の範囲
で行われる請求項1または2記載のステンレス鋼の製造
方法。 - 【請求項4】 前記エッチングが、5重量%の硫酸水溶
液を用い、60℃にて行われる請求項3記載のステンレ
ス鋼の製造方法。
Priority Applications (1)
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JP31746396A JP3294128B2 (ja) | 1996-11-28 | 1996-11-28 | ステンレス鋼の製造方法 |
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Publications (2)
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Family Applications (1)
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JP31746396A Expired - Lifetime JP3294128B2 (ja) | 1996-11-28 | 1996-11-28 | ステンレス鋼の製造方法 |
Country Status (1)
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Cited By (2)
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1996
- 1996-11-28 JP JP31746396A patent/JP3294128B2/ja not_active Expired - Lifetime
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