JPH10158019A - 光学素子の成形方法及び光学素子及び光学素子成形用素材の製造方法及び精密素子の成形方法及び精密素子 - Google Patents

光学素子の成形方法及び光学素子及び光学素子成形用素材の製造方法及び精密素子の成形方法及び精密素子

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JPH10158019A JP8315140A JP31514096A JPH10158019A JP H10158019 A JPH10158019 A JP H10158019A JP 8315140 A JP8315140 A JP 8315140A JP 31514096 A JP31514096 A JP 31514096A JP H10158019 A JPH10158019 A JP H10158019A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】溶融軟化状態にある成形素材から直接に高精度
な形状及び面精度を有する光学素子等の精密素子を、研
削研磨等の後加工なしで得ることが出来る精密素子の成
形方法を提供する。 【解決手段】光学形成面を設けた少なくとも一対の型部
材11,21の中にガラス素材を入れて、型部材の閉成
によりガラス素材を光学素子の形状に成形する光学素子
の成形方法において、型部材11,21内にガラス素材
を載置する前に光学形成面11a,21aに流体膜を形
成し、ガラス素材を型部材で加圧して形状変化させる際
に、流体膜を介してガラス素材に圧力を付与して成形す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する利用分野】本発明は、例えば、カメラや
ビデオカメラに用いられるレンズ等の高精度な光学素子
を熱間加工で成形するための光学素子の成形方法及び光
学素子及び光学素子成形用素材の製造方法及び精密素子
の成形方法及び精密素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、研削・研磨による精密光学素子の
加工方法に代わり、加熱軟化させたガラス等の成形素材
を、成形型を用いて直接プレス成形する方法が注目され
ている。通常、この種の成形には、胴型とその胴型内で
摺動する上下型よりなる成形用型部材を用いて、加熱軟
化状態にある成形素材をプレスし、型部材の成形面に対
応した光学機能面を成形素材に転写し、その後冷却を行
い、型部材から精密光学素子を取り出す方法が用いられ
ている。
【0003】また、特公昭48−22977号や特開昭
59−195541号には、多孔質材や超音波振動を用
いて型表面にガス膜を作り、その膜を介して型と成形素
材である軟化ガラスを非接触の状態でレンズ等に成形す
る技術が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記の
成形型の成形面を成形素材に接触させて形状を転写させ
精密光学素子を得るような従来例では、加熱された型と
成形素材が直接に接触するために、成形素材と型との間
に融着が発生したり、また成形時の型と成形素材の温度
差により成形素材が不均一な熱収縮を起こすことに起因
する、面の転写不良が発生したりする等の問題があっ
た。特に成形素材がガラスである場合には、成形温度が
高いためこの様な問題が顕著となり、成形温度を上げて
成形時間の短縮を図ることや、高温の溶融ガラスから直
接に精密光学素子を成形することは非常に困難であっ
た。また更に、成形素材であるガラスと成形型の接触に
よりガラスと型材が反応したり、型の表面の磨耗等によ
り型が劣化したりするため、使用できる成形型の材料も
限定され、成形できるガラスの種類もごく限られたもの
となってしまうという問題があった。
【0005】上記のような問題を避けるために、前述の
特公昭48−22977号や特開昭59−195541
号には型と成形素材であるガラスを接触させないで成形
する技術が開示されている。このようにガラスと型とを
非接触の状態で成形する事は理想的であり、融着防止や
成形品の表面状態に対しては効果がある。しかしなが
ら、軟化状態にある高温の成形素材を非接触で成形する
と、成形後の冷却期間の間に成形素材が型とは無関係に
自由収縮するため、成形時の形状と冷却完了時の形状が
異なってしまう。特に、成形品の肉厚形状が一定でなか
ったり、成形品への冷却が不均一であったりすると、冷
却中に成形品の内部に温度分布が発生して冷却中の熱収
縮が均等に起こらず、収縮が温度の比較的高い部分に集
中するため、冷却後にその部分がくぼんだ状態に変形し
てしまう。これは、いわゆるヒケと呼ばれるものであ
り、このようなヒケが生ずると、完成した光学素子の形
状が本来の目的とする形状と大きくかけ離れてしまう。
特に成形素材がガラスの場合では、成形可能な温度域で
あるガラス転移点温度以上では熱膨張率が極端に大き
く、成形が終了して成形時の温度からガラス転移点温度
まで冷却する間にガラスが大きく収縮し、且つこの収縮
変形を制御することが容易でないため、高精度の製品を
作り出すのは非常に困難であるという問題があった。こ
の問題は、成形素材と型とを接触させる前述の方法でも
同様に発生する問題でもあった。
【0006】また更に、成形素材と型を接触させて成形
するか否かに拘わらず、型と成形素材の熱膨張率の違い
があると、温度変化により型と成形品との寸法形状に微
妙な差が発生する。この現象は成形型を用いた温度変化
を伴う成形方法では不可避のものであり、一旦成形素材
に転写した型の形状が、温度の変化、特に冷却による温
度の変化により、型の形状とずれてしまうことを意味す
る。
【0007】成形素材と型を接触させて成形する方式で
は、冷却時に成形素材と型が中途半端に接触している
と、成形素材と型が部分的な剥離を起し、形状の転写性
に問題を起こす。これを防ぐため、成形品が自重で変形
を起こさない温度近くまで型に圧力をかけておき、成形
品と型の剥離を防ぐ方法や、単に高温で型と成形素材と
の間に発生する密着力を利用して、成形品が変形を起こ
しにくい温度付近まで成形品と型を密着させておく方法
がとられている。
【0008】しかし、この様な方法のうち、型に圧力を
加える方法では、最終的に形状を転写させる温度、即ち
冷却が進んでいったときに圧力を解除する温度を厳密に
管理できる利点はあるが、成形品に無理な力をかけるこ
とになり、成形品の割れや型の損傷を引き起こすという
問題があった。また、形状によっては対応しきれないと
いう問題もあった。また、密着力に頼る方法も、型と成
形品の密着力を左右する微妙な界面状態を厳密に管理す
ることが実質上不可能であるため、型と成形品の離型す
る温度が不安定となり、形状の転写性が安定しなかった
り、上記の圧力をかける方法と同様に成形品に割れ等の
欠陥を引き起こすという問題があった。さらに、成形素
材と型を接触させないで成形する方法の場合にも、成形
素材が型と接触していないため温度変化のどの時点で型
の形状が成形素材に転写されるかが不安定で成形品の形
状が安定せず、高精度な形状を転写させることはほとん
ど不可能であるという問題があった。
【0009】また、型に供給される成形素材の表面に切
断痕等の欠陥があると、成形を非接触の状態で行って
も、成形された成形品に欠陥が残り、その部分を再度研
削研磨したりして削除する必要が生じ、本来の目的を達
成できないという根本的な問題があり、上記の従来例で
は、この点に関する技術的な開示はされていない。ま
た、光学素子の成形法に於いて重要な条件の一つとし
て、型とガラスの融着を防止することがあげられる。言
い換えれば型とガラスの離型性を良くすることが必要で
ある。このことを主たる目的として従来から、型材料や
ガラス材料に関していろいろな提案がされている。いく
つかの例を挙げるならば、特開昭49−51112号に
は13Crマルテンサイト鋼が、特開昭52−4561
3号にはSiC及びSi3N4が、特開昭60−2462
30号には超硬合金に貴金属をコーティングした材料が
提案されている。更に最近では特に離型性に優れている
と考えられている炭素系材料として特開昭61−183
134号にはダイヤモンド薄膜が、特開平2−8033
0号には水素化アモルファス炭素膜が提案されている。
また特開昭60−210534号には離型機能を有する
薄膜を予めガラス素材にコーティングする成形方法が提
案されている。
【0010】しかし13Crマルテンサイト鋼は酸化し
やすくさらに高温でFeがガラス中に拡散してガラスが
着色される欠点を持つ。またSiC,Si34は極めて
ガラスとの親和性が強いため融着が発生しやすい。貴金
属をコーティングした型は極めて軟らかいためキズが付
きやすい欠点を持つ。ダイヤモンド薄膜は光学的な鏡面
性を得ることが困難である。水素化アモルファス炭素膜
は上記のいずれよりも優れた離型性を持つ。問題点とし
ては薄膜であるために強力な外力によって剥離する場合
があることである。膜の剥離は、型とガラスの熱膨張率
の違いに起因する熱応力によってプレス成形した後の冷
却中に膜に対する剪断力が発生するために起こると考え
られる。即ち型とガラスはプレス直後から冷却中は、強
力に密着しているため熱応力によって膜が剥離するので
ある。そしてこの剥離現象は型の周辺部に於いて特に顕
著である。その理由は型の周辺部が最も熱応力が大き
く、また凸レンズの場合周辺部が肉薄であり中心部に比
べて型とガラスが強く密着していると考えられるためで
ある。少しでも膜が剥離するとその部分で型とガラスが
融着したり成形品が割れたりするため型として使用する
ことができなくなる。また離型機能を有する薄膜を予め
ガラス素材にコーティングすればプレス後の型とガラス
の密着力を減少させることはできるが、特に凸レンズの
周辺部分のように密着力が強くなる場所に於いて融着を
防止する手段としては十分な物ではない。また薄膜をコ
ーティングする工程がよけいに必要となる。
【0011】このように従来は、特に型の周辺部に於い
て融着が発生したり、型の膜が剥離したりすることが問
題であった。唯一の対策として周辺部の型材料にグラフ
ァイト等の離型性の良い材料を使えば融着は防止できる
が、軟らかく消耗しやすく、また汚れの発生源になるた
め適当な材料ではない。また、光学素子を成形する場
合、軟化状態のガラス塊を成形型でプレス成形し、成形
光学素子を得るが、良好な外観精度を有するガラス塊
を、安価に製造する方法の開発が、最近進んでいる。
【0012】一方、所望の成形光学素子の形状に近い形
状に、予め、成形用素材であるガラス塊の形状を成形す
る技術の開発も進んでいる。成形光学素子に近い形状に
成形された成形用素材の利点は、プレス成形時の変形量
が小さいため、プレス成形時間が短く済む点、および、
成形型表面に成膜されている離型作用を有する薄膜を、
プレス成形時にプレス変形に伴う剪断応力により破損す
ることを防止できる点がある。
【0013】良好な外観精度を有するガラス塊を、安価
に製造する方法として、以下に示す製造方法が具体的に
知られている。すなわち、流出口から流出している溶融
ガラス流を、下方からガスが噴出している受け型の上
に、受け型から浮上している状態で受け、溶融ガラス塊
を得る方法である。このようにして得られたガラス塊
は、上下面とも滑らかな自由表面からなっているので、
表面粗さも非常に滑らかであり、良好な外観精度を有し
ている。また、後加工を必要としないので、その製造コ
ストも非常に安価なものである。
【0014】具体例として、ガス噴出孔の開いている受
け型にガラス塊を得る例としては、特公平7−5144
6号が知られている。また、多孔質の材料からなる受け
型からガスが噴出している状態で、溶融ガラス流を受け
ガラス塊を得る例としては、古くは、特公昭48−22
977号に既にその記載が見られ、最近では、特開平6
−122526号、特開平6−144845号、特開平
6−206730号等にその記載が見られる。
【0015】一方、成形用素材であるガラス塊をプレス
成形して、所望の形状の成形ガラス塊を得る方法とし
て、特開平4−37614号が知られている。ここで
は、受け型の上に受けたガラス塊を、受け型から取り出
し、プレス成形用下型の上に置き、熱変形可能な温度ま
でガラス塊を再加熱した後、このガラス塊を成形して、
所望の形状の成形ガラス塊を得ている。
【0016】しかしながら、上記従来例である、ガラス
塊を受け型から浮上した状態で受ける方法には、以下に
示すような欠点があった。すなわち、受け型から噴出し
ているガス流によって、受け型の上に受けられたガラス
塊の下面が上方に持ち上げられた状態のまま固化してし
まう。すなわち、得られたガラス塊の下面が凹んでしま
うのである。
【0017】このように、下面が凹んでいるガラス塊を
光学素子成形用素材として用いて、プレス成形して成形
光学素子を得た場合、プレス成形機のチャンバーの内部
に満たされている窒素ガスが、プレス成形時に、このガ
ラス塊の下面の凹み部分に取り込まれた状態でプレス成
形が行われ、その結果得られた成形光学素子の下面に
は、「ガス残り」と呼ばれる凹み部分が発生し、不良品
となり、光学素子として使うことはできない。
【0018】このような、ガラス塊の下面の凹みを防止
するためには、受け型から噴出しているガス流の流量を
減らせば良い。しかし、噴出ガス流量を減らしすぎた場
合、溶融ガラスと受け型が接触してしまう。このような
ガラス塊は、多孔質の受け型の細孔の凸凹形状を転写し
ているので、外観が悪く、光学素子成形用素材として用
いることはできない。
【0019】ガラス塊の下面の凹みを防止するもうひと
つの方法として、受け型から噴出するガスとして高温の
ガスを用いる方法がある。すなわち、受け型から噴出し
ているガスの温度を高くし、かつ、噴出ガス流量を少な
くすることにより、ガラス塊の下面の凹みを防止でき
る。しかし、この場合も、噴出ガス温度を高くしすぎた
場合や噴出ガス流量を減らしすぎた場合、溶融ガラスと
受け型が接触してしまう。
【0020】このように、従来から知られている、ガラ
ス塊の下面の凹みを防止する方法は、しばしば溶融ガラ
スと受け型が接触することがあり、ガラス塊に接触痕が
生じやすく、その最適な条件を設定することは困難であ
った。一方、ガラス塊をプレス成形して所望の形状の成
形ガラス塊を得る方法の従来例である、特開平4−37
614号には、以下に示す欠点があった。
【0021】すなわち、ガラス塊をプレス成形して所望
の形状のガラス塊を得るに先立ち、このガラス塊を熱変
形可能な温度まで再加熱するに際し、再加熱に非常に長
い時間を要する点である。具体的に、特開平4−376
14号の実施例の記載によれば、5分乃至20分の時間
が、再加熱に必要となっている。このように、再加熱に
長時間を要する理由は、急激に加熱してガラス塊の温度
が過昇温して、ガラス塊と成形用下型とが融着すること
を防止するために、再加熱の温度を低く抑えているため
である。
【0022】また、ガラス光学素子のプレス成形に使用
されるガラス素材には、既に述べたことと重複するが、
形状、容量、表面粗さ等が要求される。形状は図41や
図42に示すように凹形状の型540の場合にはガラス
素材539の曲率半径が大きく、凸形状の型542の場
合にはガラス素材541の曲率半径が小さいとプレス変
形時に型とガラスの間にガス残りが発生してしまう。従
って、ガラス素材の形状としては中心部から順次型と接
触変形してゆくように曲率半径を調整しなければならな
い(凹形状の型の場合:ガラス素材は凸でかつその曲率
半径<型の曲率半径、凸形状の型の場合:ガラス素材は
凸あるいは凹の場合にはその曲率半径>型の曲率半
径)。
【0023】容量は型構造にもよるが大きいと図43に
示すようにはみ出し部が大きくなり、成形時の割れの原
因になったり、後加工が必要になったりする。また小さ
いと図44のようにレンズの有効径がとれなくなる。従
って容量も所要の範囲に調整することが必要になる。表
面粗さはレンズとしては透過率等の関係上、Rmaxで
0.02μm以下であることが必要である。それを満た
すには型の表面粗さがRmaxで0.02μm以下であ
ることは当然であるがガラス素材としても0.04μm
以下であることが必要である。これ以上になるとプレス
によっても表面粗さが0.02μm以下にはならない。
【0024】これらの仕様を満たすガラス素材を作成す
るのに以下の方法が提案されている。 (a)特公平4−20854号 ガラス素材を研削、研磨によりレンズ形状に近似の曲率
形状にし、かつ表面粗さをRmaxで0.01μm以下
にする。 (b)特公平4−43851号 ガラス素材を加熱軟化させ表面張力により球状にし、か
つ表面粗さをRmaxで0.04μm以下にする。 (c)特公平3−60435号 溶融状態にあるガラスを一方の面は光学ガラス素子と近
似形状の熱加工治具により成形しもう一方の面は表面張
力により成形して精密成形用のガラス素材を得る。
【0025】また、多孔質部材を用いたものとしては以
下のものがある。 (d)特開昭61−266317号 ガラス素材を多孔質部材を用いて加圧ガスを介して非接
触状態で、加熱軟化、搬送する。しかし、これらの方法
には以下のような問題点がある。特公平4−20854
号の研削、研磨による方法ではこの後の洗浄工程も含め
これらの工程分コスト高になる。さらに、研磨によるヤ
ケ、表面汚れ等の成形への悪影響があること、研削研磨
によるガラス材料の無駄等の欠点もある。これに対して
特公平4−43851号のガラス材料を加熱軟化させ表
面張力により球状化する方法では上記の問題点は解決さ
れるものの、形状として球状しかできず凹レンズ成形用
のガラス素材の作製が不可能である。また、凸レンズや
メニスカスレンズの場合にも近似形状のガラス素材と比
較して変形量が大きくなり、成形タクトが延びたり、型
への負荷が大きくなったりするという欠点がある。特開
平3−60435号の溶融状態にあるガラスから素材を
作製する方法では、研削研磨による方法での問題点は解
決されるものの、一方の面の形状調整ができない。さら
に、ガラス材料の種類により、粘度カーブの急なものや
失透性の強いものは作製が困難である。
【0026】また、特開昭61−266317号では、
多孔質部材を用いて加熱、搬送を行っているがこの方法
ではガラス素材は加熱前に形状調整を行っており、立方
体や直方体をしたガラスブロックから上下面に任意の曲
率半径を持ったレンズ形状への変形は不可能である。以
上のようにこれまで提案された方法では、研削研磨によ
る方法ではコスト高となり、表面張力を利用した熱変形
では形状の調整が不可能である。
【0027】従って、本発明は上述した課題に鑑みてな
されたものであり、その目的は、溶融軟化状態にある成
形素材から直接に高精度な形状及び面精度を有する光学
素子等の精密素子を、研削研磨等の後加工なしで得るこ
とが出来る精密素子の成形方法を提供することである。
また、本発明の他の目的は、型の周辺部における融着を
防止したり型の膜剥離を防止することである。
【0028】また、本発明のさらに他の目的は、光学素
子成形用素材として適した、下面に凹みのないガラス塊
を、容易にかつ確実に製造する方法を提供することであ
る。また、本発明のさらに他の目的は、ガラス塊をプレ
ス成形して所望の形状の成形ガラス塊を得る方法におい
て、プレス成形に先立つ再加熱時間を短く、または、無
くすことを可能にする、成形ガラス塊の製造方法を提供
することである。
【0029】また、本発明のさらに他の目的は、所要の
形状と容量を有したプレス成形用のガラス材料を安価に
作製することである。また、本発明のさらに他の目的
は、成形時間が短く、かつ型耐久の向上が図れる成形方
法を提供することである。
【0030】
【課題を解決するための手段】上述した課題を解決し、
目的を達成するために、本発明に係わる光学素子の成形
方法は、光学形成面を設けた少なくとも一対の型部材の
中にガラス素材を入れて、該型部材の閉成により前記ガ
ラス素材を光学素子の形状に成形する光学素子の成形方
法において、前記型部材内に前記ガラス素材を載置する
前に前記光学形成面に流体膜を形成し、前記ガラス素材
を前記型部材で加圧して形状変化させる際に、前記流体
膜を介して前記ガラス素材に圧力を付与して成形するこ
とを特徴としている。
【0031】また、本発明に係わる精密素子の成形方法
は、光学素子等の精密素子を溶融軟化状態の成形素材か
ら直接に成形する方法において、少なくとも二つ以上の
型部材から構成され、それらにより形成されるキャビテ
ィーの精密素子の形状を決定する成形面の形状が、所望
する精密素子の最終形状になるように予め補正された形
状を有し、更に、それらの成形面が多孔質の材料から作
られた型ユニットを準備する工程と、前記型ユニットを
開き、多孔質の成形面からキャビティー内に流体を噴出
させるとともに、溶融軟化された成形素材を供給するノ
ズルから、溶融軟化状態の成形素材を成形面と非接触状
態を保った状態で前記型ユニットに供給する工程と、成
形素材の自重と表面張力により、前記ノズルから型ユニ
ットの成形面上に供給された成形素材を、前記ノズルか
ら分離する工程と、前記成形面から流体を噴出させ、軟
化状態の成形素材と成形面とを非接触状態を保った状態
で前記型ユニットに圧力を加え、前記型ユニットを閉
じ、前記成形素材を補正された成形面の状態にならわ
せ、補正された形状の成形品を得る工程と、成形素材を
型ユニットに供給した後から、型ユニットに圧力を加え
型ユニットを閉じ、成形素材を成形面の形状に倣わせる
工程の間に、成形素材への第1の冷却開始し、さらに前
記型ユニットを閉じ、成形素材を成形面の形状にならわ
せた後に第二の冷却を開始し、成形品が所望する最終形
状になるまでの間に冷却を行い精密素子の形状を得る工
程と、前記型ユニット内の精密素子の冷却完了後、型ユ
ニットを開き精密素子を取り出す工程とを具備すること
を特徴としている。
【0032】また、本発明に係わる精密素子の成形方法
は、光学素子等の精密素子を成形する方法において、少
なくとも二つ以上の型部材から構成され、それらにより
形成されるキャビティーの精密素子の形状を決定する成
形面の形状が、所望する精密素子の最終形状になるよう
に予め補正された形状を有し、更に、それらの成形面が
多孔質の材料から作られた型ユニットを準備する工程
と、少なくとも成形後に機能面となる部分に対応する部
分の表面に、高低差が5ミクロン以上の鋭角的な段差が
存在しないように仕上げられた成形素材を準備する工程
と、前記型ユニットを開き、前記成形素材を型ユニット
に供給するとともに、多孔質の成形面からキャビティー
内に流体を噴出させ、成形素材を成形面と非接触状態を
保った状態で加熱し、軟化させる工程と、成形面から流
体を噴出させ、軟化状態の成形素材と成形面とを非接触
状態を保った状態で前記型ユニットに圧力を加え、該型
ユニットを閉じ、成形素材を補正された成形面の状態に
ならわせ、補正された形状の成形品を得る工程と、成形
素材を加熱、軟化した直後から、前記型ユニットに圧力
を加え該型ユニットを閉じ、前記成形素材を成形面の形
状にならわせる工程までの間に、成形素材への冷却を開
始し、成形品が所望する最終形状になるまでの間に冷却
を行い精密素子の形状を得る工程と、型ユニット内の精
密素子の冷却完了後、型ユニットを開き精密素子を取り
出す工程とを具備することを特徴としている。
【0033】また、この発明に係わる精密素子の成形方
法において、前記成形面の予め補正された形状が、成形
面より噴出させる流体の圧力、流量、温度、及び成形素
材の温度、粘度、及び型ユニットに与えられる圧力、温
度、及び成形素材と成形面を形成する型部材の熱膨張率
をパラメーターとして含むシミュレーションにより得ら
れることを特徴としている。
【0034】また、この発明に係わる精密素子の成形方
法において、前記成形面の予め補正された形状が、前記
所望する精密素子の最終形状に近似した形状を有し、該
形状が前記成形素材の成形中及び成形終了後の成形デー
タ、形状データを演算処理することにより得られること
を特徴としている。また、この発明に係わる精密素子の
成形方法において、前記成形面の多孔質部から噴出する
流体の温度を制御する事により、成形素材の温度を制御
することを特徴としている。
【0035】また、この発明に係わる精密素子の成形方
法において、前記流体の噴出圧力と流体の流量と型ユニ
ットへの加圧力の内の少なくとも一つ以上が、成形素材
の粘度に対応して制御されることを特徴としている。ま
た、この発明に係わる精密素子の成形方法において、型
ユニットに圧力を加え成形素材を加圧する際に、型ユニ
ットを構成する型部材を成形素材に対し回転摺動させ、
成形素材と成形面との間に存在する流体の圧力を制御す
ることを特徴としている。
【0036】また、本発明に係わる精密素子は、請求項
1乃至8のいずれか1項に記載の成形方法により成形さ
れたことを特徴としている。また、本発明に係わる精密
素子の成形方法は、光学素子等の精密素子を成形する方
法において、少なくとも二つ以上の型部材から構成さ
れ、それらにより形成されるキャビティーの精密素子の
形状を決定する成形面の形状が、所望する精密素子の最
終形状になるように予め補正された形状を有し、更に、
それらの成形面が鏡面状態に仕上げられている多孔質の
材料から作られた型ユニットを準備する工程と、少なく
とも成形後に機能面となる部分に対応する部分の表面
に、高低差が5μm以上の鋭角的な段差が存在しない様
に仕上げられた成形素材を準備する工程と、前記型ユニ
ットを開き、成形素材を型ユニットに供給すると共に、
多孔質の成形面からキャビティー内に流体を噴出させ、
成形素材を成形面と非接触状態を保った状態で加熱し、
軟化させる工程と、成形面から流体を噴出させ、軟化状
態の成形素材と成形面とを非接触状態を保った状態で型
ユニットを閉じ、成形素材を型部材の補正された成形面
の形状にならわせ、成形面の形状に近似した形状を有す
る予備成形品を得る工程と、該予備成形品の表面近傍の
粘度が107.6dPa・s以上となったときに、成形面
からの流体の噴出を停止し、型ユニットに圧力を加えて
閉じ、予備成形品と型部材の成形面を接触させた状態で
加圧し、予備成形品の形状を成形面の形状にならわせ、
補正された形状の精密素子を得る工程と、補正された形
状の精密素子の少なくとも表面近傍の粘度が108dP
a・s以上となったときに、成形面から流体の噴出を再
開すると共に、精密素子と成形面との間に空隙を設ける
工程と、成形素材を加熱、軟化した直後から、予備成形
品を得る工程までの間に、成形素材への第1の冷却を開
始し、さらに補正された形状の精密素子を得た直後から
第2の冷却を開始し、成形面からの流体の噴出を再開し
た直後から第3の冷却を開始し、成形品が所望する最終
形状になるまでの間に冷却を行い、精密素子の形状を得
る工程と、第2の冷却の際に、その素子の表面と成形面
の密着を維持する様に、その素子の収縮に合わせて方部
材を追従させる工程と、型ユニット内の精密素子の冷却
完了後、型ユニットを開き精密素子を取り出す工程とを
具備することを特徴としている。
【0037】また、この発明に係わる精密素子の成形方
法において、前記成形面の予め補正された形状が、成形
素材の温度、粘度、及び型ユニットに与えられる圧力、
温度、及び成形素材と成形面を形成する型部材の熱膨張
率の少なくとも1つをパラメーターとして含むシミュレ
ーションにより得られることを特徴としている。また、
この発明に係わる精密素子の成形方法において、前記成
形面の予め補正された形状が、前記所望する精密素子の
最終形状に近似した形状を有し、該形状が前記成形素材
の成形中及び成形終了後の成形データ、形状データを演
算処理することにより得られることを特徴としている。
【0038】また、この発明に係わる精密素子の成形方
法において、前記成形面の多孔質部から噴出する流体の
温度を制御する事により、成形素材の温度を制御するこ
とを特徴としている。また、この発明に係わる精密素子
の成形方法において、前記流体の噴出圧力と流体の流量
と型ユニットへの加圧力の内の少なくとも一つ以上が、
成形素材の粘度に対応して制御されることを特徴として
いる。
【0039】また、この発明に係わる精密素子の成形方
法において、型ユニットに圧力を加え非接触の状態で成
形素材を加圧する際及び形状転写後の型内での冷却の際
に、型ユニットを構成する型部材を成形素材に対し回転
摺動させ、成形素材と成形面との間に存在する流体の圧
力を制御することを特徴としている。また、本発明に係
わる精密素子は、請求項10乃至15のいずれか1項に
記載の成形方法により成形されたことを特徴としてい
る。
【0040】また、本発明に係わる精密素子の成形方法
は、光学素子等の精密素子を溶融軟化状態の成形素材か
ら直接に成形する方法において、少なくとも二つ以上の
型部材から構成され、それらにより形成されるキャビテ
ィーの精密素子の形状を決定する成形面の形状が、所望
する精密素子の最終形状になるように予め補正された形
状を有し、更に、それらの成形面が鏡面状態に仕上げら
れている多孔質の材料から作られた型ユニットを準備す
る工程と、前記型ユニットを開き、多孔質の成形面から
キャビティー内に流体を噴出させると共に、溶融軟化さ
れた成形素材を供給するノズルより、溶融軟化状態の成
形素材を成形面と非接触状態を保った状態で型ユニット
に供給する工程と、成形素材の自重と表面張力により、
前記ノズルから型ユニットの成形面上に供給された成形
素材を分離する工程と、成形面から流体を噴出させ、軟
化状態の成形素材と成形面とを非接触状態を保った状態
で型ユニットを閉じ、成形素材を型部材の補正された成
形面の形状にならわせ、成形面の形状に近似した形状を
有する予備成形品を得る工程と、該予備成形品の表面近
傍の粘度が107.6dPa・s以上となったときに、成
形面からの流体の噴出を停止し、型ユニットに圧力を加
えて閉じ、予備成形品と型部材の成形面を接触させた状
態で加圧し、予備成形品の形状を成形面の形状にならわ
せ、補正された形状の精密素子を得る工程と、成形素材
をノズルから分離した直後から、予備成形品を得る工程
までの間に、成形素材への第1の冷却を開始し、さらに
補正された形状の精密素子を得た直後から第2の冷却を
開始する工程と、第2の冷却の際に、少なくとも、補正
された形状の精密素子の表面と成形面との間に密着力が
働いている間に、その素子の表面と成形面の密着を維持
する様に、その素子の収縮に合わせて型部材を追従させ
る工程と、少なくとも、素子の表面と成形面との間の密
着力が解消するまでの冷却を行い、その後、型ユニット
を開き所望の形状に近似した形状を有する成形素子を取
り出す工程と、所望の形状に近似した形状の成形素子を
さらに室温まで冷却し、所望の形状の精密素子を得る工
程とを具備することを特徴としている。
【0041】また、この発明に係わる精密素子の成形方
法において、前記成形面の予め補正された形状が、成形
素材の温度、粘度、及び型ユニットに与えられる圧力、
温度、及び成形素材と成形面を形成する型部材の熱膨張
率、及び成形素子の表面と成形面との間の密着力をパラ
メーターとして含むシミュレーションにより得られるこ
とを特徴としている。
【0042】また、この発明に係わる精密素子の成形方
法において、前記成形面の予め補正された形状が、前記
所望する精密素子の最終形状に近似した形状を有し、該
形状が前記成形素材の成形中及び成形終了後の成形デー
タ、形状データを演算処理することにより得られること
を特徴としている。また、この発明に係わる精密素子の
成形方法において、前記成形面の多孔質部から噴出する
流体の温度を制御する事により、成形素材の温度を制御
することを特徴としている。
【0043】また、この発明に係わる精密素子の成形方
法において、前記流体の噴出圧力と流体の流量と型ユニ
ットへの加圧力の内の少なくとも一つ以上が、成形素材
の粘度に対応して制御されることを特徴としている。ま
た、この発明に係わる精密素子の成形方法において、前
記第2の冷却の際の型部材の追従が、成形面と精密素子
の間の密着力により行われることを特徴としている。
【0044】また、この発明に係わる精密素子の成形方
法において、前記第2の冷却の際の型部材の追従が、型
部材に圧力を加えることにより行われることを特徴とし
ている。また、本発明に係わる精密素子は、請求項17
乃至23のいずれか1項に記載の成形方法により成形さ
れたことを特徴としている。
【0045】また、本発明に係わる精密素子の成形方法
は、光学素子等の精密素子を成形する方法において、少
なくとも二つ以上の型部材から構成され、それらにより
形成されるキャビティーの精密素子の形状を決定する成
形面の形状が、所望する精密素子の最終形状になるよう
に予め補正された形状を有し、更に、それらの成形面が
鏡面状態に仕上げられている多孔質の材料から作られた
型ユニットを準備する工程と、少なくとも成形後に機能
面となる部分に対応する部分の表面に、高低差が5μm
以上の鋭角的な段差が存在しない様に仕上げられた成形
素材を準備する工程と、前記型ユニットを開き、成形素
材を型ユニットに供給すると共に、多孔質の成形面から
キャビティー内に流体を噴出させ、成形素材を成形面と
非接触状態を保った状態で加熱し、軟化させる工程と、
成形面から流体を噴出させ、軟化状態の成形素材と成形
面とを非接触状態を保った状態で型ユニットを閉じ、成
形素材を型部材の補正された成形面の形状にならわせ、
成形面の形状に近似した形状を有する予備成形品を得る
工程と、該予備成形品の表面近傍の粘度が107.6dP
a・s以上となったときに、成形面からの流体の噴出を
停止し、型ユニットに圧力を加えて閉じ、予備成形品と
型部材の成形面を接触させた状態で加圧し、予備成形品
の形状を成形面の形状にならわせ、補正された形状の精
密素子を得る工程と、成形素材を加熱、軟化した直後か
ら、予備成形品を得る工程までの間に、成形素材への第
1の冷却を開始し、さらに補正された形状の精密素子を
得た直後から第2の冷却を開始する工程と、第2の冷却
の際に、少なくとも、補正された形状の精密素子の表面
と成形面との間に密着力が働いている間に、その素子の
表面と成形面の密着を維持する様に、その素子の収縮に
合わせて型部材を追従させる工程と、少なくとも、素子
の表面と成形面との間の密着力が解消するまでの冷却を
行い、その後、型ユニットを開き所望の形状に近似した
形状を有する成形素子を取り出す工程と、所望の形状に
近似した形状の成形素子をさらに室温まで冷却し、所望
の形状の精密素子を得る工程とを具備することを特徴と
している。
【0046】また、この発明に係わる精密素子の成形方
法において、前記成形面の予め補正された形状が、成形
素材の温度、粘度、及び型ユニットに与えられる圧力、
温度、及び成形素材と成形面を形成する型部材の熱膨張
率、及び成形素子の表面と成形面との間の密着力をパラ
メーターとして含むシミュレーションにより得られるこ
とを特徴としている。
【0047】また、この発明に係わる精密素子の成形方
法において、前記成形面の予め補正された形状が、前記
所望する精密素子の最終形状に近似した形状を有し、該
形状が前記成形素材の成形中及び成形終了後の成形デー
タ、形状データを演算処理することにより得られること
を特徴としている。また、この発明に係わる精密素子の
成形方法において、前記成形面の多孔質部から噴出する
流体の温度を制御する事により、成形素材の温度を制御
することを特徴としている。
【0048】また、この発明に係わる精密素子の成形方
法において、前記流体の噴出圧力と流体の流量と型ユニ
ットへの加圧力の内の少なくとも一つ以上が、成形素材
の粘度に対応して制御されることを特徴としている。ま
た、この発明に係わる精密素子の成形方法において、前
記第2の冷却の際の型部材の追従が、成形面と精密素子
の間の密着力により行われることを特徴としている。
【0049】また、この発明に係わる精密素子の成形方
法において、前記第2の冷却の際の型部材の追従が、型
部材に圧力を加えることにより行われることを特徴とし
ている。また、本発明に係わる精密素子は、請求項25
乃至31のいずれか1項に記載の成形方法により成形さ
れたことを特徴としている。
【0050】また、本発明に係わる精密素子の成形方法
は、光学素子等の精密素子を溶融軟化状態の成形素材か
ら直接に成形する方法において、少なくとも二つ以上の
型部材から構成され、それらにより形成されるキャビテ
ィーの精密素子の形状を決定する成形面の形状が、所望
する精密素子の最終形状になるように予め補正された形
状を有し、更に、それらの成形面が鏡面状態に仕上げら
れている多孔質の材料から作られた型ユニットを準備す
る工程と、前記型ユニットを開き、多孔質の成形面から
キャビティー内に流体を噴出させると共に、溶融軟化さ
れた成形素材を供給するノズルより、溶融軟化状態の成
形素材を成形面と非接触状態を保った状態で型ユニット
に供給する工程と、成形素材の自重と表面張力により、
前記ノズルから型ユニットの成形面上に供給された成形
素材を前記ノズルから分離する工程と、成形面から流体
を噴出させ、軟化状態の成形素材と成形面とを非接触状
態を保った状態で型ユニットを閉じ、成形素材を型部材
の補正された成形面の形状にならわせ、成形面の形状に
近似した形状を有する予備成形品を得る工程と、該予備
成形品の表面近傍の粘度が107.6dPa・s以上とな
ったときに、成形面からの流体の噴出を停止し、型ユニ
ットに圧力を加えて閉じ、予備成形品と型部材の成形面
を接触させた状態で加圧し、予備成形品の形状を成形面
の形状にならわせ、補正された形状の精密素子を得る工
程と、補正された形状の精密素子の少なくとも表面近傍
の粘度が108dPa・s以上となったときに、成形面
から流体の噴出を再開すると共に、精密素子と成形面と
の間に空隙を設ける工程と、成形素材をノズルから分離
した直後から、予備成形品を得る工程までの間に、成形
素材への第1の冷却を開始し、さらに補正された形状の
精密素子を得た直後から第2の冷却を開始し、成形面か
らの流体の噴出を再開した直後から第3の冷却を開始
し、成形品が所望する最終形状になるまでの間に冷却を
行い精密素子の形状を得る工程と、第2の冷却の際に、
その素子の表面と成形面の密着を維持する様に、その素
子の収縮に合わせて型部材を追従させる工程と、型ユニ
ット内の精密素子の冷却完了後、型ユニットを開き精密
素子を取り出す工程とを具備することを特徴としてい
る。
【0051】また、この発明に係わる精密素子の成形方
法において、前記成形面の予め補正された形状が、成形
素材の温度、粘度、及び型ユニットに与えられる圧力、
温度、及び成形素材と成形面を形成する型部材の熱膨張
率の少なくとも1つをパラメーターとして含むシミュレ
ーションにより得られることを特徴としている。また、
この発明に係わる精密素子の成形方法において、前記成
形面の予め補正された形状が、前記所望する精密素子の
最終形状に近似した形状を有し、該形状が前記成形素材
の成形中及び成形終了後の成形データ、形状データを演
算処理することにより得られることを特徴としている。
【0052】また、この発明に係わる精密素子の成形方
法において、前記成形面の多孔質部から噴出する流体の
温度を制御する事により、成形素材の温度を制御するこ
とを特徴としている。また、この発明に係わる精密素子
の成形方法において、前記流体の噴出圧力と流体の流量
と型ユニットへの加圧力の内の少なくとも一つ以上が、
成形素材の粘度に対応して制御されることを特徴として
いる。
【0053】また、この発明に係わる精密素子の成形方
法において、型ユニットに圧力を加え非接触の状態で成
形素材を加圧する際及び形状転写後の型内での冷却の際
に、型ユニットを構成する型部材を成形素材に対し回転
摺動させ、成形素材と成形面との間に存在する流体の圧
力を制御することを特徴としている。また、本発明に係
わる精密素子は、請求項33乃至38のいずれか1項に
記載の成形方法により成形されたことを特徴としてい
る。
【0054】また、本発明に係わる光学素子の成形方法
は、重量調整されたガラス素材を成形用型でプレスして
光学素子を成形する方法において、前記成形用型型が、
光学素子の少なくとも光線有効径内を形成するための第
1の型部材と、それ以外の部分を形成するための第2の
型部材で構成され、第2の型部材の内部または表面を経
由してガスを成形面に流しながら成形することを特徴と
している。
【0055】また、この発明に係わる光学素子の成形方
法において、プレス成形中に前記第2の型部材と成形さ
れた光学素子はガス層を介して非接触であることを特徴
としている。また、この発明に係わる光学素子の成形方
法において、前記第2の型部材が多孔質セラミックまた
は、多孔質金属または、多孔質炭素であることを特徴と
している。
【0056】また、この発明に係わる光学素子の成形方
法において、上型を構成する第2の型部材を経由するガ
スの温度と、下型を構成する第2の型部材を経由するガ
スの温度の差が10℃以上であることを特徴としてい
る。また、本発明に係わる光学素子は、プレス成形され
た光学素子であって、少なくとも光線有効径内は型と接
触した面であり、かつそれ以外の表面に非接触状態で型
によって形状を形成された部分を持つことを特徴として
いる。
【0057】また、本発明に係わる光学素子成形用素材
の製造方法は、光学素子の成形用素材として用いるガラ
ス塊を溶融ガラスから製造する方法において、前記溶融
ガラスを、多孔質材料からなり気体を噴出する受け型上
に供給するときに、該受け型の背面に異なる温度の気体
を供給することにより、該受け型から噴出する気体の温
度を制御することを特徴としている。
【0058】また、この発明に係わる光学素子成形用素
材の製造方法において、前記受け型上に溶融ガラスを供
給するときに、前記受け型の表面から気体を噴出してい
る状態で、吐出ノズルから吐出される前記溶融ガラスを
前記受け型上に受け、該受け型上に受けられた溶融ガラ
スの重量が所望の重量になった後に、前記受け型を下降
させ、溶融ガラス流をくびれさせることにより溶融ガラ
ス流を前記吐出ノズルから自然分離させることを特徴と
している。
【0059】また、この発明に係わる光学素子成形用素
材のの製造方法において、前記溶融ガラスを前記受け型
上に受けた後に、前記受け型から噴出する気体の温度を
制御しながら、前記受け型とそれに対向する上型により
前記溶融ガラスをプレス成形することを特徴としてい
る。また、この発明に係わる光学素子成形用素材の製造
方法において、多孔質の受け型及び上型の背面に供給す
るガスを、各々異なった温度のガスを供給することので
きる複数のガス供給管から供給し、前記受け型及び上型
の背面に供給されるガスの温度を変えるために、異なっ
た温度のガスを供給できる複数のガス供給管のうちから
適切なガス供給管を選択し、所望の温度のガスを前記受
け型及び上型の背面に供給することを特徴としている。
【0060】また、本発明に係わる光学素子成形用素材
の製造方法は、ガラス光学素子のプレス成形用素材の製
造方法において、切断あるいは研削により所定の体積に
調寸したガラス塊を多孔質部材の間で高温ガスで加熱す
ることにより所定の形状に変形させることを特徴として
いる。また、この発明に係わる光学素子成形用素材の製
造方法において、ガラス塊をそのガラスの粘度で105
〜108 dPa・sに加熱することにより、所定の形状
に変形させることを特徴としている。
【0061】また、本発明に係わる光学素子の成形方法
は、請求項50に記載の方法で加熱変形させたガラス光
学素子成形用素材をそのガラスの粘度で1010〜1013
dPa・sに相当する温度に調温した型に投入してプレ
スすることを特徴としている。
【0062】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好適な実施形態に
ついて、添付図面を参照して詳細に説明する。 (第1の実施形態)図1は、第1の実施形態で用いられ
る成形装置の概略図である。図1において1は型ユニッ
トであり、下型構成部材2と上型構成部材3とから概略
構成されている。下型構成部材2と上型構成部材3は、
それぞれ下型部材11と、上型部材21と、それらを保
持する下型ホルダー12と上型ホルダー22とを備えて
いる。なお、下型ホルダー12と上型ホルダー22に
は、流体を下型部材11と上型部材21にバランスよく
供給分配するための圧力室12a、22aが設けられて
いる。また、ヒータ13,23と図示せぬ測温手段が埋
め込まれていて、この側温手段の検出信号に基づいて、
後述するコントローラ41により下型部材11及び上型
部材12の温度と流体の温度を最終的に調整することが
出来るようになされている。また、11a,21aは、
それぞれ精密素子の形状を決定する下型部材11と上型
部材21の成形面を示している。31は流体の供給パイ
プであり、不図示の流体供給源から矢印A部を介して供
給された流体を圧力・流量調節器32a,32bヘ供給
するようになされている。更に圧力・流量調節器32
a,32bの先には、それぞれ流体の温度調整を行うた
めの加熱ヒータ33a,33bが取り付けられている。
また、下型構成部材2及び上型構成部材3には不図示の
駆動装置がそれぞれ取り付けられており、下型構成部材
2及び上型構成部材3は図に示す矢印Ba,Bb方向
(上下左右方向)にそれぞれ独立に移動できる様になさ
れていると共に、下型部材11及び上型部材21のセン
タを中心として、矢印Ca,Cb方向に任意の回転数で
回転出来るようになされている。下型構成部材2及び上
型構成部材3と加熱ヒータ33a,33bの間は、耐熱
性のあるフレキシブルチューブ34a,34bとロータ
リージョイント14,24によって接続されており、下
型構成部材2と上型構成部材3の上下左右方向及び回転
方向の動きを妨げない様になされている。また、41は
ヒーター13,23の温度及び流体の流量、圧力、温度
を制御するコントローラであり、信号線44a,44b
によりヒーター13,23に接続されていると共に、信
号線42a,42b,43a,43bにより圧力・流量調
節器32a,32b及び加熱ヒータ33a,33bに接続
されている。
【0063】図2は溶融軟化状態の成形素材を供給ノズ
ルから吐出して型ユニット1に供給し、供給された成形
素材をノズルから分離する工程を示す図である。図2に
おいて101は、溶融軟化状態の成形素材102を吐出
する供給ノズルであり、102bは、下型部材11の成
形面11aの上に供給された分離前の成形素材塊を示
し、102cは成形素材102と分離前の成形素材塊1
02bの間に作られるくびれ部を示す。102aは成形
面11a上に得られた供給ノズル101から分離された
後の成形素材塊を表わす。
【0064】図3は型ユニットの成形面の補正の方法を
模式的に表したものである。図3において、201は、
精密素子が最終的に必要とする形状を表す。202は、
成形素材が加熱されて膨張した状態を示し、この状態
で、型部材の成形面204の形状が流体の薄膜203を
介して成形素材(精密素子)の表面に転写される。薄膜
203を形成する流体は、成形面から噴出される。成形
面204の形状は、精密素子の形状転写時に要求される
形状202に流体の薄膜203の厚さを加えて曲率半径
等が補正されている。205は、形状転写直後の高温の
状態から成形素材を冷却するときに発生するヒケ等に起
因する変形をキャンセルする補正量を示す。即ち、形状
転写後精密素子が冷却されると、その中央部がヒケ等に
よりへこむので、これをキャンセルするために型部材の
成形面は、206で示す様に204で示す形状に更に2
06で示す堀込みが加えられている。これにより、成形
素材の表面は、高温で成形面の形状が転写されるときに
は、205で示す量だけ中央部が出っ張ることになる
が、成形素材が冷却されるにつれて、この出っ張りがヒ
ケにより引っ込んで行き、最終的に、必要とされる形状
201に落ち着く。なお、成形面の形状204及び20
6は、成形素材に形状を転写する高温時に必要とされる
形状であり、低温時においては、型部材の熱収縮によ
り、207及び207aで示すような形状となる。従っ
て、型部材を製作するときには、207および207a
で示すような形状に成形面を加工しておく。
【0065】次に、上記の成形装置を使用して精密素子
を成形する工程を、図を用いて具体的に説明する。な
お、ここで成形される精密素子は、ビデオカメラに用い
られるもので、光学有効面の曲率半径がR20mmとR
35mm、中心肉厚が3mm、外径Φ14mmの両凸の
球面レンズである。成形素材には、温度が1300℃の
時に101.5dPa・s、1200℃の時の101.6dP
a・s、1100℃の時に101.8dPa・s、100
0℃の時に102.2dPa・s、890℃の時に102.9
dPa・s、720℃の時に105dPa・s、610
℃の時に107.6dPa・s、498℃の時に1013d
a・sの粘度となる粘性特性を有する光学ガラスを用い
た。
【0066】また、下型部材11の成形面11aと上型
部材21の成形面21aは、予め成形素材の形状転写時
の形状及び冷却後の形状を流体の膜厚及びヒケ等の変形
を考慮してシミュレーション計算を行い、最終的に精密
素子に必要とされる形状が実現される様に補正を加えて
加工されている。具体的には、上型21の成形面21a
の場合、まず、図3に示すように、精密素子であるレン
ズの標準的な使用条件(例えば20℃)における理論形
状201(R35mm)から、形状転写時の温度まで昇
温したときの理論形状202がどのような形状になるか
を算出する。即ち、成形時の形状転写時の温度を、この
ガラスが107.9dPa・sの粘度を示す温度である6
00℃に設定し、理論形状201がどれだけ膨張するか
を算出し、その値を理論形状201に加えて膨張時の理
論形状202とする。次に、成形面21aと膨張時の理
論形状202の間に介在する流体膜203の厚さが平均
5μm前後となるような条件を、流体の流量、流体の粘
度、ガラスの粘度、及び型ユニットに加えられる圧力等
から算出する。そして、これらの条件で成形を行ったと
きの流体膜203の厚さ分布をあらためてシミュレーシ
ョン計算し、この求められた流体膜203の膜厚分布を
膨張時の理論形状202に加えて形状転写時の成形面の
理論形状204を決定する。次に、形状転写後の冷却に
よるヒケ等の変形量を算出する。この計算では、形状転
写温度から冷却していくときの刻々変化する流体及び型
ユニットの温度、ガラスの保有熱、及び熱伝導率に基づ
いてガラスの温度分布を求め、その時々の熱収縮による
応力とガラスの応力緩和計数等からヒケの量を算出す
る。このヒケの量を補正量205として成形面の理論形
状204に重ね合わせ、形状転写時の成形面の部分的な
補正形状206を決定する。さらに、成形面の材料の熱
収縮による補正の量を算出し、形状転写温度の成形面の
理論形状204とヒケによる補正の理論形状206とに
重ね合わせて、冷間時の成形面の最終理論形状207,
207aを決定する。この最終理論形状に基づいて、上
型部材21の成形面21aを多孔質の穴部のくぼみを除
いた面をRmax0.3ミクロン以下となるような鏡面
状態に加工した。また、下型部材11の成形面11aも
同様の手法で形状を求め加工した。また、型部材11,
21の材料としては、気孔率が30%で、最大穴径が8
ミクロンである多孔質カーボンを用い、流体には型部材
11,21の酸化を防ぐために窒素ガスを用いた。
【0067】次いで、このように加工準備した型部材1
1,21を図1に示す成形装置に取り付け、図2に示す
ような方法で軟化ガラス塊を得た。ここでこの行程を図
2を用いてより具体的に説明する。まず、図示せぬガラ
ス溶融炉でガラス素材を溶融し、脱泡、均質化行程を経
て、軟化状態の成形素材である均質な溶融ガラス102
を得る。それをガラス溶融炉の末端に設けられている成
形素材供給ノズル101へ導く。供給ノズル101を1
200℃の温度に設定し溶融ガラス102を流出させる
と共に、下型構成部材2を供給ノズル101の直下に移
動させ、図2(a)に示すように成形面11a上に所定
の容量のガラスを受けた後、図2(b)に示すように下
型構成部材2を矢印Dのように下方へ少し下げ、供給ノ
ズル101と切断前の成形素材塊であるガラス塊12b
の間にクビレ部102cを発生させる。この状態で、1
02cがガラスの自重と表面張力により分離にいたるま
で待機し(図2(c)の状態)、軟化状態の成形素材塊
であるガラス塊102aを得た。
【0068】このように102の分離工程において下型
構成部材2を一旦停止させることにより、クビレ部10
2cの部分が冷やされることが少なくなり、自重と表面
張力により自然に分離することが可能となる。そのた
め、分離部に成形素材が糸状に固化した切断痕や、破断
痕が残らずに、102aの表面には有害な欠陥が生じる
ことがなくなる。また、この時の流体(窒素ガス)の温
度は、ガラスを成形面11aに受ける時はガラスの転移
点付近の温度である500℃に、その直後には600℃
になるようにヒータ33aとヒータ13の温度を調整す
る。また、窒素ガスの流量も溶融ガラス102を成形面
11aに受ける直前までは毎分20リッター、その後は
毎分5リッターとなるように圧力・流量調節器32aで
制御した。このようにすることで溶融ガラス102が成
形面11aに達する前に102の先端が多少冷却されて
固化し、窒素ガスの流量も増えるために、溶融ガラス1
02の先端が全く成形面11aに接触することがなく、
また上記の分離方法を用いることとの相乗作用により、
表面には全く欠陥がないガラス塊102aが得られた。
【0069】次に下型構成部材2を上型構成部材3の直
下に移動し、ガラス塊102aの成形面11aで受けて
いる下面近傍の粘度が106〜107.5dPa・s、その
他の表面近傍の粘度が1036dPa・sであり、中心
付近が十分に柔らかいうちに、成形面11aと成形面2
1aから噴出する窒素ガスの流量を毎分20リッター、
温度をガラスの粘度で106.5dPa・sに相当する6
50℃となるように圧力・流量調節器32a,32bと
ヒータ33a,33bをコントローラ41により制御し
(第1の冷却開始)、ガラス塊102aの中心肉厚が
3.2mmとなるまで毎秒5mmの速度で型ユニット1
を閉じた。次いで窒素ガスの温度と流量を600℃と毎
分10リッターに設定し、冷間時のレンズの中心肉厚が
3mmに相当する位置になった時に、型ユニット1を閉
じる圧力が20Kgfとなるように圧力を徐々に上げな
がら、且つ、レンズの表面近傍の粘度が107.9dPa
・sとなるように速度を調整しながら型ユニット1を閉
じ、レンズに成形面11a,21aの形状を転写させた
(第1の冷却終了)。
【0070】上記の形状転写の工程と、第1の冷却の工
程に続き、第2の冷却を行った。これは窒素ガスの流量
はそのままで、温度を100℃に設定し、更に型ユニッ
ト1への加圧力を10Kgfとなるように徐々に減圧し
ながら冷却を開始した。冷却開始後、レンズの表面近傍
の粘度が1012dPa・s(温度で約515℃)となっ
た時に型ユニットを開き、下型部材11からは窒素ガス
を噴出させたままの状態で、レンズを図示せぬ吸着ハン
ドで取り出した。更に成形の完了した複数のレンズを使
用条件と同等の温度である20℃の温度下において精度
を測定したが、全てアスがニュートンリング1.5本、
クセがニュートンリング1本以下に収まり、通常の使用
には十分に耐えられる精度を得ることができた。
【0071】また、この複数回の成形の時の温度及び加
圧・減圧等の動作の切り替えタイミングの再現性は、全
ての温度制御点において10℃のばらつき範囲に収ま
り、また型ユニット1の開閉速度等のばらつきも5%に
収まっていたが、更に条件を多少振りながら成形を続け
た結果、この温度や速度のばらつきの範囲を超えると精
度が悪くなり、冷却速度、特に第2の冷却速度が毎分2
0℃より遅くなると自重変形や窒素ガスの圧力の影響を
受けやすくなり、精度が劣化することが確認された。
【0072】(第2の実施形態)次に第1の実施形態と
同じ装置、同じ材料を用いて片面がR50mm、もう一
方の面がR40mmを基準とする非球面形状をなす、レ
ンズの中心肉厚が4.3mm、直径がΦ23mmであ
る、コンパクトカメラ用の両凸のガラス非球面レンズの
成形を行った。
【0073】第1の実施形態と同様に、下型部材11の
成形面11aと上型部材21の成形面21aは、成形前
にシミュレーションにより求めた数々の補正を考慮した
形状に加工し、その後更に実際に成形を行い、その形状
データをもとに最終的な補正を行って形状を決定した。
具体的には、第1の実施形態と同様に、上型21の成形
面21aの場合、図3に示すように、精密素子であるレ
ンズの標準的な使用条件である20℃における形状20
1(R40mmを基準とする非球面形状)に対し、成形
時の形状転写時の温度を、600℃に設定し、第1の補
正の量の一部であるガラスの温度膨張による変形量を算
出し、その結果から、この条件下における精密素子の形
状202を求めた。更に、第2の補正の量である、その
時の成形面と精密素子の間に介在する流体の膜厚分布を
含む膜厚203が平均3ミクロン前後の厚さになるよう
な条件を算出設定し、形状転写時の成形面の基本形状2
04を決定した。次に第3の補正の量に相当する、形状
転写後の冷却によるヒケ等による補正量205を求め、
形状転写時の成形面の部分的な形状206を決定し、更
に第1の補正の量の残りの部分に相当する、型ユニット
の成形面の材料の温度収縮による補正の量から、型の冷
間時、特に型の成形面の形状を加工する時の成形面の形
状207及び207a(図3において207と207a
のハッチング部分の形状)を求た。そして、その形状デ
ータにより、上型部材21の成形面21aを多孔質の穴
部のくぼみを除いた面を鏡面状態に加工し、一旦、シミ
ュレーションで決定した成形条件で実際にレンズを成形
した。次いで、この成形したレンズの形状を測定し、所
定の形状と若干ずれている部分を再度補正加工して、出
っ張りのない平滑な鏡面状態に仕上げ、最終的な成形面
21の形状とした。また、下型部材11の成形面11a
も同様の手法で形状を求め加工した。また、型部材1
1、21の材料として気孔率が25%であり、最大穴径
が6ミクロンである多孔質からなるAlO3を用い、流
体にはクリーンなエアーを用いた。
【0074】次いで、このように加工準備した型部材1
1、21を図1に示す成形装置に取り付け、第1の実施
形態と全く同様にしてガラス塊102aを得た。次に下
型構成部材2を上型構成部材3の直下に移動し、ガラス
塊102aの下型部材11で受けている下面近傍の粘度
が106〜107.5dPa・s、その他の表面近傍の粘度
が103〜106dPa・sであり、中心付近が十分に柔
らかいうちに、成形面11a,21aから噴出するエア
ーの流量を毎分25リッター、温度をガラスの粘度で1
6.5dPa・sに相当する650℃となるように圧力
・流量調節器32a,32bと加熱ヒータ33a,33b
をコントローラ41により制御し(第1の冷却開始)、
ガラス塊102aの中心肉厚が4.6mmとなるまで毎
秒8mmの速度で型ユニット1を閉じた。次いで噴出エ
アーの温度と流量を600℃と毎分15リッターに設定
し、冷間時のレンズの中心肉厚が4.3mmに相当する
位置になった時に、型ユニット1を閉じる圧力が45K
gfとなるように圧力を徐々に上げながら、更に同時
に、レンズの表面近傍の粘度が107.9dPa・sとな
るように速度を調整しながら型ユニット1を閉じ、レン
ズに成形面11a,21aの形状を転写させた(第1の
冷却終了)。
【0075】上記の形状転写の工程と、第1の冷却の工
程に続き、第2の冷却を行った。これはエアーの流量は
そのままで、温度を150℃に設定し、更に型ユニット
1への加圧力を20Kgfとなるように徐々に減圧しな
がら冷却を開始した。冷却開始後、レンズの表面近傍の
粘度が1012dPa・s(温度で約515℃)となった
時に、型ユニット1への加圧を解除すると共に流量を毎
分7リッターにして冷却を続け、レンズ表面の温度が4
98℃(ガラス粘度1013dPa・s)を下回った所で
型ユニットを開き、レンズを取り出した。型ユニット1
を開き、下型部材11からはエアーを噴出させたままの
状態で、レンズを図示せぬ吸着ハンドで取り出した。更
にこの成形を数回繰り返し、またこの時の温度、加圧・
減圧タイミングなどの再現性は5℃の温度範囲に、速度
等のばらつきも3%以内に収まるように厳密に制御しな
がら成形を実施した。その後、完成した複数のレンズを
20℃の温度下において精度を測定したが、全てアスが
ニュートンリング1本、クセがニュートンリング0.5
本以下に収まり第1の実施形態以上の良好な結果を得る
ことができた。
【0076】(第3の実施形態)次に図4に示す型部材
を第1の実施形態で用いた成形装置を用いて、直径がΦ
10mm、凸面の曲率半径がR20mm、凹面の曲率半
径がR30mm、中心部の肉厚が3.3mm、周縁部の
厚さが約3.1mmである凸メニスカス形状のレンズを
成形した。ここで、図4において、211、221はそ
れぞれ下型部材と上型部材であり、それらにはレンズの
光学面を形成する成形面211aと221aが加工され
ている。更に、下型部材211と上型部材221の外周
にはそれぞれレンズの周縁の下部と上部を形成する成形
面216aと226aを有したリング部材216,22
6が取り付けられている。また、下型部材211と上型
部材221は、気孔率が15%で最大穴径が15ミクロ
ン、リング部材216,226は気孔率が10%で最大
穴径が20ミクロンの多孔質の窒化珪素で作られてい
て、図示せぬ供給装置からそれぞれの圧力室12b,1
2c,22b,22cに流体を個々に独立に供給すること
ができるようになっており、それぞれの光学面の成形面
と周縁部の成形面と成形素材の間の流体の膜厚を独立に
制御出来るようになっている。また、成形素材は、第1
の実施形態と同じガラス材料を用い、流体としては窒素
ガスを用いた。
【0077】この実施形態では、レンズの光学面の成形
面211a,221aと周縁部の成形面216a,226
aの形状は、一旦レンズの冷間での形状を成形面上にそ
のまま加工して予備成形を行い、成形された光学素子の
形状誤差を補正する様に成形面の補正加工量を求め、そ
れを再度成形面の形状に反映して加工し直し、鏡面状態
に仕上げた。また、予備成形における形状転写時の温度
は610℃とし、窒素ガスの膜厚は光学面の部分で10
ミクロン、周縁部でおよそ20ミクロンであるようにし
た。
【0078】次いで、このように準備した型部材21
1,221,216,226を第1の実施形態と同様に図
1に示す成形装置に取り付け、同様の方法で軟化ガラス
塊を得た。この時の窒素ガスの温度は、ガラスを成形面
211aに受ける時はガラスの転移点付近の温度である
500℃に、その直後にはガラスの粘度で107.3dP
a・sに相当する温度である620℃になるように温度
を調整し、更に窒素ガスの流量は、溶融ガラス102を
成形面211aに受ける直前までは、成形面211aで
毎分18リッター、成形面216aで毎分8リッター、
その後はどちらも毎分5リッターとなるように制御し
た。
【0079】次に下型構成部材2を上型構成部材3の直
下に移動し、ガラス塊102aの下型部材211で受け
ている下面近傍の粘度が105.6〜107dPa・s、そ
の他の表面近傍の粘度が103〜105.6dPa・sであ
り、中心付近が十分に柔らかいうちに、成形面211
a,221aから噴出する窒素ガスの流量を毎分20リ
ッター、成形面216a,226aからの流量をそれぞ
れ毎分14リッター、12リッターとし、温度をガラス
の粘度で105.8dPa・sに相当する680℃となる
ように設定し(第1の冷却開始)、更に下型構成部材2
と上型構成部材3が互いに逆回転となるような回転方向
で、回転数が200rpmとなるように徐々に回転速度
を上げながら、ガラス塊102aの中心肉厚が3.5m
mとなるまで毎秒8mmの速度で型ユニット1を閉じ
た。次いで、下型構成部材2と上型構成部材3の回転を
保った状態で、窒素ガスの温度を610℃、成形面21
1a,221aからの流量が毎分15リッター、成形面
216a,226aからの流量がそれぞれ毎分12リッ
ター、11リッターとなるように設定し、冷間時のレン
ズの中心肉厚が3.3mmに相当する位置になった時
に、型ユニット1を閉じる圧力が25Kgfとなるよう
に圧力を徐々に上げながら、更に同時に、レンズの表面
近傍の粘度が107.6dPa・sとなるように速度を調
整しながら型ユニット1を閉じ、レンズに成形面211
a,221aの形状を転写させた(第1の冷却終了)。
【0080】なお、上記の成形の工程において、下型構
成部材2と上型構成部材を互いに逆方向に回転させるの
は以下のような理由による。即ち、多孔質材料の孔は完
全に均一に開いていることはなく、微視的に見ると不均
一であることが多く、そのため流体の流量、圧力の分布
が不均一になりやすい。この圧力等の不均一は流体の膜
厚の不均一につながり成形品の形状に影響を及ぼす。こ
の影響を回避するために、型とガラス素材を相対的に回
転させ、型とそれに対向する成形面をずらし、膜を均一
にするものである。
【0081】上記の形状転写の工程と、第1の冷却の工
程に続き、第2の冷却を行った。ここでは窒素ガスの流
量と下型構成部材2と上型構成部材3の回転はそのまま
で、温度を150℃に設定し、更に型ユニット1への加
圧力を13Kgfとなるように徐々に減圧しながら冷却
を開始した。冷却開始後、レンズの表面近傍の粘度が1
12dPa・s(温度で約515℃)となった時に下型
構成部材2と上型構成部材3の回転を停止すると同時に
型ユニットを開き、下型部材211から窒素ガスを噴出
させたままの状態で、レンズを図示せぬ吸着ハンドで取
り出した。更に成形の完了した複数のレンズを使用条件
と同等の温度である20℃の温度下において精度を測定
したが、全てアスがニュートンリング1本、クセがニュ
ートンリング0.5本以下に収まり、十分な精度を得る
ことができた。
【0082】また、この複数回の成形の時の温度及び加
圧・減圧等の動作の切り替えタイミングの再現性は、全
ての温度制御点において10℃のばらつき範囲に収ま
り、型ユニットの開閉速度及び下型構成部材2と上型構
成部材3の回転数等のばらつきも5%に収まっていた
が、更に条件を多少振りながら成形を続けた結果、この
温度や速度のばらつきの範囲を超えると精度が悪くなる
ことが確認された。
【0083】(第4の実施形態)次に第1の実施形態と
全く同じものを、図5に示す様に予め重量調整されたガ
ラス塊より成形した実施形態を述べる。なお、下型11
の成形面11aと上型21の成形面21aは、第1の実
施形態と全く同様にして形状を求め、加工したものを用
いた。
【0084】まず、第1の実施形態で用いたと同じガラ
スのブロックから、ガラス塊を切り出し、それを更に研
削研磨により容積で311mm3となるようなガラス塊
に仕上げ、更に、このガラス塊の研削研磨面以外の部分
に、バーナーによる火炎処理を行うことにより、ガラス
塊の表面の5ミクロン以上の鋭角な段差を取り去り、滑
らかな表面を有する容量が311mm3のガラス塊を得
た。
【0085】次いで、このガラス塊を窒素ガスが毎分3
0リッター噴出されている成形面11aの上に載置した
後、ヒータ13と加熱ヒータ33aにより、窒素ガスの
温度をガラスの粘度で105.4dPa・sに相当する温
度である700℃に上げガラス塊を加熱した。この時上
型構成部材3も下型構成部材2の真上に移動させ、同様
の温度の窒素ガスを流し、ガラス塊を上部からも加熱し
た。このようにすることで、表面に有害な欠陥の全くな
い、粘度が106dPa・sの軟化ガラス塊102aを
得た。
【0086】次に、第1の実施形態と同様に、成形面1
1a,21aから噴射する窒素ガスの流量を毎分20リ
ッター、温度をガラスの粘度で106.5dPa・sに相
当する650℃となるように圧力・流量調節器32a,
32bと加熱ヒータ33a,33bをコントローラ41
により制御し、ガラス塊102aの中心肉厚が3.2m
mとなるまで毎秒5mmの速度で型ユニット1を閉じ
た。次いで、第1の実施形態と全く同じ工程を経て、レ
ンズを成形し、精度を測定したところ、第1の実施形態
で得られた結果と同じ結果が得られ、また、レンズ表面
にも有害な欠陥は全く見られなかった。
【0087】更に、最初に準備するガラス塊の表面処理
の条件を多少振りながら成形を続けた結果、表面に残る
段差が5ミクロンを越えたり、鋭角的な段差が残ったり
すると、加熱軟化した後に、表面を更に滑らかにするた
めの時間が非常にかかったり、場合によっては、この加
熱軟化により段差が解消せず、成形後のレンズ表面に欠
陥が残ったりし、実用上、大きな問題になることが確認
された。
【0088】(第5の実施形態)次に第3の実施形態と
全く同じものを、図5に示す様に予め重量調整されたガ
ラス塊より成形した実施形態を述べる。なお、下型21
1の成形面211aと上型221の成形面221a及び
成形面226aは、第3の実施形態と全く同様にして形
状を求め、加工したものを用いた。
【0089】まず、第1の実施形態で用いたと同じガラ
スブロックから、ガラス塊を切り出し、それを更に研削
研磨により容積で250mm3となるようなガラス塊に
仕上げ、更に、このガラス塊の研削研磨面以外の部分
に、バーナーによる火炎処理を行うことにより、ガラス
塊の表面の5ミクロン以上の鋭角な段差を取り去り、滑
らかな表面を有する容量が250mm3のガラス塊を得
た。
【0090】次いで、このガラス塊を窒素ガスが毎分2
5リッター噴出されている成形面211aの上に載置し
た後、窒素ガスの温度をガラスの粘度で105.4dPa
・sに相当する温度である700℃に上げガラス塊を加
熱した。この時上型構成部材3も下型構成部材2の真上
に移動させ、成形面216a,221a,226aにも同
様の温度の窒素ガスを流し、ガラス塊を上下、外周部か
らも加熱した。このようにすることで、表面に有害な欠
陥の全くない、粘度が106dPa・sの軟化ガラス塊
102aを得た。
【0091】次に、第3の実施形態と同様に、成形面2
11a,221aから噴射する窒素ガスの流量を毎分2
0リッター、成形面216a,226aからの流量をそ
れぞれ毎分14リッター、12リッターとし、温度をガ
ラスの粘度で105.8dPa・sに相当する680℃と
なるように設定し、更に下型構成部材2と上型構成部材
3が互いに逆回転となるような回転方向で、回転数が2
00rpmとなるように徐々に回転速度を上げながら、
102aの中心肉厚が3.5mmとなるまで毎秒8mm
の速度で型ユニット1を閉じた。
【0092】次いで、第3の実施形態と全く同じように
上型構成部材2と下型構成部材3の回転を保った状態
で、窒素ガスの温度を610℃、成形面211a,22
1aからの流量が毎分15リッター、成形面216aと
226aからの流量がそれぞれ毎分12リッター、11
リッターとなるように設定し、冷間時のレンズの中心肉
厚が3.3mmに相当する位置になった時に、型ユニッ
ト1を閉じる圧力が25Kgfとなるように圧力を徐々
に上げながら、更に同時に、レンズの表面近傍の粘度が
107.6dPa・sとなるように速度を調整しながら型
ユニット1を閉じ、レンズに成形面211a,221a
の形状を転写させた。その後1012dPa・sでレンズ
を取り出し、精度を測定したところ、第3の実施形態で
得られた結果と同じ結果が得られ、また、レンズ表面に
も有害な欠陥は全く見られず、また、加熱軟化前のガラ
ス塊の表面の状態に対しても同様の結果が得られた。
【0093】次いで以上第1乃至第5の実施形態をまと
めると、第1の方法においては、第1の工程は、精密素
子の成形形状転写時と精密素子の使用時や型ユニットの
加工時の温度における精密素子と型ユニットとの熱膨張
差による形状の相違量を含めた熱収縮量の補正や、成形
および冷却時の不均一な熱分布に起因する精密素子のヒ
ケの発生位置と量を前もって成形型で補正しておく事に
より、成形された精密素子が所望の形状を得られるよう
にすることであり、この際に成形面と精密素子の間に存
在する流体の厚さも補正しておく。また、型ユニットの
成形面を多孔質の材料で作り、その成形面から成形素材
に向けてエアーやN2ガス等の流体を噴出させ、成形面
表面にごく薄い流体膜を形成することで成形素材と成形
面の接触を防ぐことが出来る。この目的のためには、多
孔質の最大穴径が20ミクロン以下、望ましくは10ミ
クロン以下で気孔率が10〜35%の材料からなり、材
料は対酸化性のあるアルミナや窒化珪素、炭化珪素等の
セラミックや、多孔質カーボンからなり、更に成形面の
表面は、流体膜が破れ、成形素材に傷を付けないように
するためにも、出っ張りの無い平滑な鏡面状に加工され
ていることが必要となる。
【0094】次に第2の工程により、型と成形素材の接
触、特に溶融軟化された形状が不定の状態の成形素材を
ノズルから流出させ型に供給する時に発生しやすい成形
素材と型との接触を防ぐことが出来、更にこの時に、一
時的に噴出する流体の温度を下げたり流量を増やすこと
により、接触を確実に防ぐことが出来る。また、型ユニ
ットの成形面上に供給された成形素材を前記ノズルから
分離する際に、型ユニット上に成形素材を必要量を受け
止めた後、型ユニットを一旦下降させ、型ユニット上の
成形素材とノズルより流出する成形素材との間にくびれ
を発生させ、更に成形素材の自重と表面張力によりくび
れを発達させ分離を行うことにより、型ユニット上に、
成形後に影響がでるような欠陥の全く無い、表面が非常
に滑らかな成形素材塊を得ることが出来る。
【0095】次に第3の工程においても型の成形面から
流体を噴出させながら型ユニットを閉じる事により、成
形面と成形素材の接触を防ぐことが可能となり、前述の
型と成形素材の接触による傷や接触による急冷による欠
陥を防止することが可能となる。また、この時に型ユニ
ットを閉じる速度、タイミング、圧力、および噴出させ
る流体の流量・圧力、温度等を確実に再現することによ
り、安定した形状の転写を得ることが出来る。型ユニッ
トを、成形素材が103〜109dPa・sの粘度を示す
温度範囲の時に閉じ、型ユニットを閉じ終わった時の流
体の膜厚が20ミクロン以下、より高精度な素子を成形
する場合は、5〜10ミクロン、望ましくは、3ミクロ
ン以下になるように流体の圧力と流量を制御し、又、同
時に型を閉じる圧力および速度も流体の膜厚を前記の範
囲内に収まるように成形素材の温度に逆比例させながら
制御する事により成形素材を成形面の補正された形状に
ならわす。また、この型ユニットを閉じる時の動作は成
形素材の温度に対応して制御されることが望ましく、各
々の動作における温度のばらつきは10℃以下、望まし
くは5℃以下とし、同様に噴出させる流体の温度も同じ
範囲に収めることが望ましく、流体の流量及び圧力のば
らつき及び型ユニットを閉じる速度と圧力のばらつきは
5%以内、望ましくは3%以内とすることにより、補正
を施された型ユニットの成形面の形状の転写性をより安
定して得ることが可能となる。
【0096】次の第4の工程での第1の冷却は、成形素
材の粘度を制御し、型ユニットの成形面の補正された形
状を正確に成形素材に転写させるために行われるもので
あり、第一の冷却の完了時に上記の流体の膜厚に成るよ
うに、成形素材の粘度を制御しながら徐々に冷却を行
う。この第1の冷却完了時において成形素材と型ユニッ
トの成形面が流体の膜を挟んで一致することにより、冷
却完了後の精密素子の形状及び面精度が確保される。ま
た、この第1の冷却完了時点では、成形素材や型ユニッ
トや流体の温度等は上記の範囲内に収めておく必要があ
る。その後の第2の冷却は第1の冷却より早い速度で行
なうことが出来、ここでの冷却は、一旦転写された補正
形状が、冷却により補正前の形状、つまり精密素子の本
来の所望する形状に一致し、更に連続成形において冷却
収縮によりばらつきが生じないように行われるものであ
る。そのためには、補正形状を決定した時の冷却開始温
度や冷却時の温度分布等の諸条件を正確に再現する必要
がある。この再現性は、上記と同様に冷却開始時から成
形素材の粘度で1012dPa・sを示す温度の範囲での
温度のばらつきとして10℃以下、望ましくは5℃以下
とすることにより安定した再現性が得られる。また、こ
の時の冷却速度や冷却時の温度分布は、成形素材に割れ
や、大きな複屈折等による欠陥を生じない範囲で補正形
状を決定する時に定められるものであるが、転写した形
状が自重や流体の圧力により変形を起こさないようにす
るためには、精密素子の表面を毎分20℃以上の速度で
冷却する必要があり、また、流体の圧力や流量にも急激
な変化を与えないようにする必要がある。更にこの第2
の冷却は、成形された精密素子が変形を発生させにくく
なる粘度である1012dPa・sまで行われる。また、
特に精密な転写性を要求されるものや、複雑な形状のも
のに対しては成形素材が歪を新たに発生させない粘度で
ある1014.5dPa・sまで行うことにより、より精密
な形状転写性が得られる。以上のような冷却を経ること
で、この工程の終了時には型ユニットの成形面の形状と
成形された精密素子の形状は膨張率の差の分の補正量
や、予め見込んでおいてヒケに対する補正量のために完
全に一致しないが、成形素材がほぼ固化しており、成形
面と非接触状態にあるため、精密素子の形状は型ユニッ
トの成形面の形状に左右されることなく、所望の形状を
維持できる。
【0097】最後の第5の工程で、上記のようにすでに
固化している精密素子を型ユニットを解放して取り出す
ことにより、所望の形状を転写された精密素子を得る。
この時も精密素子と型ユニットの成形面との間には、流
体による膜が介在しているようにすることにより、精密
素子の表面に成形面との接触による傷などの発生を防ぐ
と同時に、成形面も固化した精密素子との接触による損
傷を防ぐことが出来る。
【0098】また、第2の方法においては、第1の工程
及び第4、第5、第6の工程は、上記の第1の方法の第
1の工程及び第3、第4、第5の工程と同様である。こ
こでは次の第2の工程は、精密素子の成形素材を準備す
る際に、成形後の精密素子に欠陥が発生しないように、
成形素材の成形後に機能面となる部分に対応する部分の
表面を、滑らかに仕上げる工程であり、その部分に相当
する部分の表面を光学的な欠陥、つまり加圧成形するこ
とにより解消出来ない欠陥を予め取り除くことである。
具体的には、表面を高低差が5ミクロン以上の鋭角的な
段差が存在しないように仕上げることであり、傷や欠け
等の微視的に見た時に鋭角的な部分が存在しないように
処理する事である。この処理は、従来から行われてい
る、研削研磨による方法や、酸処理などによる表面エッ
チングや、火炎や熱風による表面の軟化光揮処理等によ
り行われる。
【0099】次の第3の行程を実施する事により、成形
素材を型ユニットの成形面と非接触の状態で加熱軟化す
ることが可能となるため、型ユニット上に、成形後に成
形面に影響が出ることが無い、無欠陥の表面が非常に滑
らかな状態の軟化した成形素材塊を得る事が出来る。こ
の時、成形素材が103〜109dPa・sの粘度を示す
温度まで成形素材を加熱する事により、次の第4の工程
につなげることが可能となる。その後の工程は前述のよ
うに第1の方法と同様であり、最終的に所望の形状の精
密素子を得ることが出来る。
【0100】更に、第3の方法においては、成形面の予
め補正された形状を、流体の圧力、流量、温度、及び成
形素材の温度、粘度、及び型ユニットに与えられる圧
力、温度、及び成形素材と多孔質の材料で作られた型部
材の熱膨張率等を成形条件のパラメーターとしてシミュ
レーションし、事前に成形される精密素子の形状を予測
し、それを基に型ユニットの成形面の形状を補正してお
く事により、高精度な形状及び面精度を有する精密素子
を得ることができる。この補正は、型部材と成形素材の
熱膨張差に伴う第1の補正と、型ユニットの成形面と成
形素材との間に介在する流体の厚さをキャンセルするた
めの第3の補正を組み合わせたものであり、成形型の成
形面の形状加工時にこの補正を行うことで、成形が完了
し型ユニットより取り出した精密素子の形状を所望の形
状と一致させることが出来る。
【0101】ここで第1の補正は、形状転写時と型部材
の形状加工時や精密素子の使用時の温度差、及び型部材
と成形素材の熱膨張率の違いから発生する、型部材の成
形面と精密素子の形状のズレ量の補正であり、具体的に
は、所望の精密素子の使用温度での形状を形状転写温度
までの温度差による精密素子の形状変化量を成形素材の
膨張率で算出し、更にその精密素子の形状変化量を形状
転写温度から型ユニットの成形面の加工時の温度差まで
の型部材の形状変化量として型部材の膨張率で算出した
量を型部材成形面の形状の第1の補正の量とするもので
ある。第2の補正は、型部材と成形素材との間に介在す
る流体の厚さ、特に形状転写時の流体の膜厚及び膜厚分
布による形状の変化量を補正するもので、流体の流量
や、温度とその時の粘度、成形素材の温度と粘度、及び
型ユニットに加えられる圧力等から、流体の圧力分布及
び膜厚とその分布状態を算出し、それを型部材の成形面
の形状の第2の補正の量とする。第3の補正は、特に精
密素子が形状を転写した後に、冷却され型から取り出さ
れるまで、場合によっては、取り出し後も含めての冷却
によるヒケ等による変形量の補正であり、主に冷却時に
刻々と変化する流体や型ユニットの温度と成形素材の保
有熱と温度伝導率に支配される、成形素材自体の温度分
布とそれに伴うその時々の粘度分布と熱膨張率とそれら
により算出される応力と、成形素材独自の応力緩和係数
によりヒケの量を算出し、更にその量に、その時々の成
形素材の自重や流体の圧力変化等による形状の変化量を
算出して加算したものを第3の補正の量とする。
【0102】更に、第4の方法においては、予め所望す
る精密素子の最終形状に近似した形状を有する素子を成
形し、その成形中及び成形終了後の成形、形状データか
ら得られた情報を型部材の成形面の形状へフィードバッ
クすることにより、高精度な形状及び面精度を有する光
学素子等を得ることが出来る。この補正方法は、最初に
精密素子の形状とほぼ同等の形状の成形面を有する型ユ
ニットを用いて、予め設定し、固定された諸条件下で素
子を一旦成形し、成形完了後の使用条件と同じ状態の素
子の形状と、使用した型ユニットの成形面の形状を比較
し、そこで判明した形状の相違量を、基本的には型ユニ
ットの成形面への補正量として用い、成形条件の変更で
補正出来るような単純な補正の場合は、成形条件をも修
正することにより、成形した精密素子を所望の形状に一
致させることが可能となる。また、この補正を数回繰り
返すことにより、より精度のよい安定した形状を得るこ
とも可能となり、更に前述のシミュレーションによる型
ユニットの成形面の補正方法を組合わせて実施すること
で同様の効果を得ることが出来る。
【0103】更に、第5の方法においては、成形面の多
孔質部より噴出する流体の温度を制御する事により、成
形素材の温度を制御することが出来る。これは、成形素
材が型ユニットと非接触状態にある事や、成形素材が型
ユニットに覆われており、外部から成形素材の温度を測
定することが実質上不可能であるが、成形素材に直接に
接触する流体の温度を制御し、その伝熱により成形素材
の温度を間接的に制御することで解決され、また、こう
する事により、成形素材に対して、より応答性の良い確
実な温度制御を行なうことが出来る。ここで、流体の温
度の制御方法としては、流体を供給源の近傍で直接に加
熱温調して用いることでも十分に目的を達成することが
できるが、一旦前述の型ユニット等に組み込まれたヒー
ター等の加熱源により、再度温調をかけなおして用いる
ことで、より良好な成形素材への温度制御を実現するこ
とが可能となる。
【0104】更に、第6の方法においては、成形素材の
粘度に合わせ成形型の成形面より噴出させる流体の噴出
圧力と流体の流量と、型ユニットへの加圧力を制御する
ことにより、高精度な形状及び面精度を有する光学素子
を得ることができる。ここで、成形素材の硬さに相当す
る粘度変化に同調させて、流体の流量や圧力と型ユニッ
トへの加圧力を制御する事により、型ユニットの成形面
と成形素材の間の流体の膜厚を確実に安定させて制御す
ることが出来、その結果、完成した精密素子が、より一
層、高精度で、かつ連続成形時においてもばらつきの少
ない安定した形状を得ることが可能となる。
【0105】更に、第7の方法においては、型ユニット
に圧力を加え成形素材を加圧する際に、型ユニットを構
成する型部材を成形素材に対し回転摺動させ、成形素材
と成形面との間に存在する流体の圧力分布を制御するこ
とにより、高精度な形状及び面精度を有する光学素子等
を得ることができる。これは、加圧成形中に型部材を成
形素材に対して回転摺動させる事により、成形素材と型
部材の成形面との間の流体の膜厚を均一化することが容
易となり、より高精度な精密素子を得る事ができるよう
になり、特に回転軸を中心とした軸対象に膜厚が容易に
均一化することにより、レンズ等の機能面が軸対象の形
状の球面を基本とする形状の精密素子に対しては大きな
効果を発揮する事が可能となる。
【0106】(第6の実施形態)次に第1の実施形態と
全く同じものを、図5に示す様に予め重量調整されたガ
ラス塊より成形した他の実施形態を述べる。なお、下型
11の成形面11aと上型21の成形面21aは、第1
の実施形態と略同様にして、ただし、図3Aに示すよう
に、流体の膜厚を考慮せず、また、最終的な形状転写時
の温度をガラス素材が109dPa・sの粘度を示す温
度に設定し形状を求め、加工したものを用いた。
【0107】まず、このように加工準備した型部材1
1,21を図1に示す成形装置に取り付け、さらに第1
の実施形態で用いたと同じガラスのブロックから、ガラ
ス塊を切り出し、それを図5(a)に示す様に更に研削
研磨により容積で311mm3となるようなガラス塊に
仕上げ、更に、このガラス塊の研削研磨面以外の部分
に、バーナーによる火炎処理を行うことにより、ガラス
塊の表面の5ミクロン以上の鋭角な段差を取り去り、図
5(b)に示すような滑らかな表面を有する容量が31
1mm3のガラス塊を得た。
【0108】次いで、このガラス塊を窒素ガスが毎分3
0リッター噴出されている成形面11aの上に載置した
後、ヒータ13と加熱ヒータ33aにより、窒素ガスの
温度をガラスの粘度で105.4dPa・sに相当する温
度である700℃に上げガラス塊を加熱した。この時上
型構成部材3も下型構成部材2の真上に移動させ、同様
の温度の窒素ガスを流し、ガラス塊を上部からも加熱し
た。このようにすることで、表面に有害な欠陥の全くな
い、粘度が106dPa・sの軟化ガラス塊102aを
得た。
【0109】次に、第1の実施形態と同様に、成形面1
1a,21aから噴射する窒素ガスの流量を毎分20リ
ッター、温度をガラスの粘度で106.5dPa・sに相
当する650℃となるように圧力・流量調節器32a,
32bと加熱ヒータ33a,33bをコントローラ41
により制御し(第1の冷却開始)、ガラス塊102aの
中心肉厚が3.2mmとなるまで毎秒5mmの速度で型
ユニット1を閉じた。次いで、窒素ガスの温度と流量を
ガスの膜厚が20ミクロン程度となる様に、610°C
(ガラスの粘度で107.6dPa・sに相当する温度)
と毎分10リッターに設定し、冷間時のレンズの中心肉
厚が3.05mmに相当する位置になったときに、型ユ
ニット1を閉じ、成形面への圧力が2MPaとなる様に
圧力を徐々に上げながら、同時に、レンズの表面近傍の
粘度が107.6Pa・sとなる様に速度を調整しながら
型ユニット1を閉じ予備成形品を得た。
【0110】さらに、その直後にガスの噴出を停止し、
さらに型ユニット1の成形面に初期に1.5MPa、最
終的に2MPaの力が加わる様に徐々に圧力を上げて閉
じ、予備成形品と型部材の成形面を接触させた状態で、
予備成形品の形状を成形面の形状にならわせた。また、
軟化ガラス塊102aを得た直後から、予備成形品を得
るまでの間に、成形素材への第1の冷却を開始し、予備
成形品を得た直後から第2の冷却を開始した。第2の冷
却は不図示の冷却装置により型ユニット1の外部より、
冷却用の窒素ガスを吹きつけることにより行われ、その
時において、型構成部材2,3への外部からの拘束を解
き、下型部材11及び上型部材21がレンズの収縮に追
従出来るようにした。
【0111】また、第2の冷却開始後すぐに、レンズの
表面近傍の粘度が108dPa・sとなった時点で、成
形面11a,21aから流体を15kPaの圧力で瞬間
的に噴出させると同時に型ユニット1を僅かに開き、レ
ンズを成形面から離型させ、その後直ちに流体の圧力を
1.02kPa、流量をそれぞれ毎分3リッターに設定
し、第3の冷却を行った。
【0112】第3の冷却開始後、レンズの表面近傍の粘
度が1012dPa・s(温度で約515°C)となった
ときに型ユニット1を完全に開き、下型部材11からは
窒素ガスを噴出させたままの状態で、レンズを不図示の
吸着ハンドで取り出した。さらに成形の完了した複数の
レンズを使用条件と同等の温度である20°Cの温度下
において精度を測定したが、全てアスがニュートンリン
グ1.7本、クセがニュートンリング1本以下に収ま
り、通常の使用には十分耐えられる精度を得ることがで
きた。
【0113】なお、この複数回の成形のときの温度及び
加圧・減圧等の動作の切り替えタイミングの再現性は、
温度に付いては第2の冷却完了までの間に全ての温度制
御点において20°Cのばらつきの範囲、その後は30
°Cのばらつきの範囲に収まり、型ユニットの開閉速度
等のばらつきも5%に収まっていたが、さらに条件を多
少振りながら成形を続けた結果、この温度や速度のばら
つきの範囲を越えると精度が悪くなることが確認され
た。
【0114】(第7の実施形態)次に第6の実施形態と
同じ装置、同じ材料を用いて片面がR50mm、もう一
方の面がR40mmを基準とする非球面形状をなす、レ
ンズの中心肉厚が4.3mm、直径がΦ23mmであ
る、コンパクトカメラ用の両凸のガラス非球面レンズの
成形を行った。
【0115】第6の実施形態と同様にして、図3Aに示
すように20°Cでの形状201に対してガラスの粘度
で1012dPa・s(515°C)で第1の補正形状2
04を求め、ヒケ等の補正量205を求め、ガラスの粘
度で1012dPa・sでの補正形状206を求める。更
に型の収縮を考慮して冷間での型形状207,207a
を決定する。そして、その形状データにより、上型部材
21の成形面21aを多孔質の穴部のくぼみを除いた面
をニュートンリングのずれで0.2本以内となるような
鏡面状態に加工し、一旦、シミュレーションで決定した
成形条件で実際にレンズを成形した。次いで、この成形
したレンズの形状を測定し、所定の形状と若干ずれてい
る部分を再度補正加工して、出っ張りのない平滑な鏡面
状態に仕上げ、最終的な成形面21の形状とした。ま
た、下型部材11の成形面11aも同様の手法で形状を
求め加工した。また、型部材11、21の材料として気
孔率が25%であり、最大穴径が6ミクロンである多孔
質からなるAlO3を用い、流体にはクリーンなエアー
を用いた。なお、この成形面の表面には、離型層として
カーボン膜を多孔質の孔が塞がらない様にして蒸着させ
た。この離型層は型とガラスの融着を防ぎ、成形面の鏡
面性を失うものでなければ、特にカーボン膜に限定され
るものではない。
【0116】次いで、このように加工準備した型部材1
1、21を図1に示す成形装置に取り付け、第6の実施
形態と全く同様にしてガラス塊を切り出し、切削部を研
磨加工し、第6の実施形態と全く同様にして軟化状態に
あるガラス塊102aを得た。このガラス塊102aが
106.5dPa・sの温度になった時点で、成形面11
a,21aから噴出するエアーの流量を毎分25リッタ
ー、温度をガラスの粘度で106.5dPa・sに相当す
る650℃となるように圧力・流量調節器32a,32
bと加熱ヒータ33a,33bをコントローラ41によ
り制御し(第1の冷却開始)、ガラス塊102aの中心
肉厚が4.6mmとなるまで毎秒8mmの速度で型ユニ
ット1を閉じた。次いで噴出エアーの温度と流量を60
0℃(ガラスの粘度で107.9dPa・sに相当する温
度)と毎分15リッターに設定し、冷間時のレンズの中
心肉厚が4.32mmに相当する位置になった時に、型
ユニット1を閉じ、成形面への圧力が4.5MPaとな
るように圧力を徐々に上げながら、更に同時に、レンズ
の表面近傍の粘度が107.9dPa・sとなるように速
度を調整しながら型ユニット1を閉じ、予備成形品を得
た。なお、このときのガス厚は8ミクロン程度であっ
た。
【0117】さらに、その直後にガスの噴出を停止し、
さらに型ユニット1の成形面に初期に2MPa、形状が
最初に転写しおわるときに8MPaの力が加わる様に徐
々に圧力を上げて閉じ、予備成形品と型部材の成形面を
接触させた状態で、予備成形品の形状を成形面の形状に
ならわせた。また、軟化ガラス塊102aを得た直後か
ら、予備成形品を得るまでの間に、成形素材への第1の
冷却を開始し、予備成形品を得た直後から第2の冷却を
開始した。その時において、型構成部材2,3に外部か
ら成形面に前述のように第2の冷却完了時に8MPaの
圧力となる様に圧力を加え、下型部材11と上型部材2
1をレンズの肉厚方向の収縮に追従させた。第2の冷却
開始後、レンズの表面近傍の粘度が1012dPa・s
(温度で約515°C)となった時点で、下型部材2と
上型部材3への加圧を解除すると同時に、第6の実施形
態と同様に成形面11a,21aから流体を噴出させ、
レンズを成形面から離型させた。その後さらに流量を毎
分7リッターに設定して、第3の冷却を行い、レンズの
表面の温度が498°C(ガラスの粘度で1013dPa
・s)を下回ったときに型ユニット1を完全に開き、下
型部材11からはエアーを噴出させたままの状態で、レ
ンズを不図示の吸着ハンドで取り出した。さらにこの成
形を数回繰り返し、またこのときの温度及び加圧・減圧
等のタイミングの再現性は、第2の冷却完了までは10
°C、その後は5°Cの温度範囲に、速度等のばらつき
も3%以内に収まる様に厳密に制御しながら成形を実施
した。その後、完成した複数のレンズを20°Cの温度
下において精度を測定したが、全てアスがニュートンリ
ング1本、クセがニュートンリング0.5本以下に収ま
り、第6の実施形態以上の良好な結果を得ることができ
た。
【0118】(第8の実施形態)次に図4に示す型部材
を第6の実施形態で用いた成形装置を用いて、直径がΦ
10mm、凸面の曲率半径がR20mm、凹面の曲率半
径がR30mm、中心部の肉厚が3.3mm、周縁部の
厚さが約3.1mmである凸メニスカス形状のレンズを
成形した。ここで、図4において、211、221はそ
れぞれ下型部材と上型部材であり、それらにはレンズの
光学面を形成する成形面211aと221aが加工され
ている。更に、下型部材211と上型部材221の外周
にはそれぞれレンズの周縁の下部と上部を形成する成形
面216aと226aを有したリング部材216,22
6が取り付けられている。また、下型部材211と上型
部材221は、気孔率が15%で最大穴径が15ミクロ
ン、リング部材216,226は気孔率が10%で最大
穴径が20ミクロンの多孔質の窒化珪素で作られてい
て、図示せぬ供給装置からそれぞれの圧力室12b,1
2c,22b,22cに流体を個々に独立に供給すること
ができるようになっており、それぞれの光学面の成形面
と周縁部の成形面と成形素材の間の流体の膜厚を独立に
制御出来るようになっている。また、成形素材は、第6
の実施形態と同じガラス材料を用い、流体としては窒素
ガスを用いた。また、離型層として第7の実施形態と同
様のものを用いた。
【0119】この実施形態では、レンズの光学面の成形
面211a,221aと周縁部の成形面216a,226
aの形状は、一旦レンズの冷間での形状を成形面上にそ
のまま加工して予備成形を行い、成形された光学素子の
形状誤差を補正する様に成形面の補正加工量を求め、そ
れを再度成形面の形状に反映して加工し直し、鏡面状態
に仕上げた。また、予備成形における形状転写時の温度
は555℃(ガラスの粘度で1010dPa・s)として
実施した。
【0120】次いで、このように準備した型部材21
1,221,216,226を第6の実施形態と同様に図
1に示す成形装置に取り付け、さらに、第6の実施形態
で用いたのと同じガラスブロックから、ガラス塊を切り
出し、それをさらに研削研磨により容積が250mm3
となるようなガラス塊に仕上げ、さらにこのガラス塊の
研削研磨面以外の部分に、バーナーによる火炎処理を行
うことにより、ガラス塊の表面の5ミクロン以上の鋭角
な段差を取り去り、滑らかな表面を有する容量が250
mm3のガラス塊を得た。
【0121】次いで、このガラス塊を窒素ガスが毎分2
5リッター噴出されている成形面211aの上に載置し
た後、窒素ガスの温度をガラスの粘度で105.4dPa
・sに相当する温度である700℃に上げガラス塊を加
熱した。この時上型構成部材3も下型構成部材2の真上
に移動させ、成形面216a,221a,226aにも同
様の温度の窒素ガスを流し、ガラス塊を上下、外周部か
らも加熱した。このようにすることで、表面に有害な欠
陥の全くない、粘度が106dPa・sの軟化ガラス塊
102aを得た。
【0122】その直後に、成形面211a,221aか
ら噴出する窒素ガスの流量を毎分20リッター、成形面
216a,226aからの流量をそれぞれ毎分14リッ
ター、12リッターとし、温度をガラスの粘度で10
5.8dPa・sに相当する680℃となるように設定し
(第1の冷却開始)、更に下型構成部材2と上型構成部
材3が互いに逆回転となるような回転方向で、回転数が
200rpmとなるように徐々に回転速度を上げなが
ら、ガラス塊102aの中心肉厚が3.5mmとなるま
で毎秒8mmの速度で型ユニット1を閉じた。次いで、
下型構成部材2と上型構成部材3の回転を保った状態
で、窒素ガスの温度を610℃、成形面211a,22
1aからの流量を膜厚が12ミクロン前後となる様に毎
分15リッター、成形面216a,226aからの流量
がそれぞれ毎分12リッター、11リッターとなるよう
に設定し、冷間時のレンズの中心肉厚が3.33mmに
相当する位置になった時に、型ユニット1を閉じる圧力
が成形面で2.5MPaとなる様に圧力を徐々に上げな
がら、更に同時に、レンズの表面近傍の粘度が107.6
dPa・sとなるように速度を調整しながら型ユニット
1を閉じ、予備成形品を得た。
【0123】さらに、その直後にガスの噴出と回転を停
止し、レンズの表面近傍の粘度が108.5dPa・sと
なったときに、さらに型ユニットの成形面に5MPaの
圧力を加えて閉じ、予備成形品と型部材の成形面を接触
させた状態で加圧をし、予備成形品の形状を成形面の形
状にならわせた。上記の予備成形品を得るまでの間の第
1の冷却の工程に続き、予備成形品を得た直後に第6の
実施形態と同様に第2の冷却を行った。その時におい
て、型構成部材2,3に外部から成形面に上記のように
5MPaの圧力から第2の冷却の完了時に7.5MPa
となる様に圧力を徐々に加えて行き、型部材11,21
をレンズの肉厚方向の収縮に追従させた。冷却開始後、
レンズの表面近傍の粘度が1010dPa・s(温度で約
555°C)となったときに、成形面11a,21aか
ら第6の実施形態と同様に流体を噴出させ、同時に型構
成部材2,3への加圧を解除し、レンズの離型を行っ
た。その後すぐに流体の温度を150°C、流量をそれ
ぞれ毎分5リッターとし、同時に型構成部材2,3の回
転を、それぞれの向きが逆方向となるような回転方向
で、150rpmの速度で回転させ、流体の膜厚の均一
化を図りながら第3の冷却を実施した。ガラスの粘度が
1013dPa・sを越えたところで型構成部材2,3を
停止すると同時に、型ユニット1を開き、レンズを取り
出し、室温まで冷却した。更に成形の完了した複数のレ
ンズを使用条件と同等の温度である20℃の温度下にお
いて精度を測定したが、全てアスがニュートンリング
1.2本、クセがニュートンリング0.5本以下に収ま
り、十分な精度を得ることができた。 また、この複数
回の成形の時の温度及び加圧・減圧等の動作の切り替え
タイミングの再現性は、第6の実施形態と同様の範囲に
収まっており、また、型ユニットの開閉速度及び下型構
成部材2と上型構成部材3の回転数等のばらつきも5%
に収まっていたが、更に条件を多少振りながら成形を続
けた結果、この温度や速度のばらつきの範囲を超えると
精度が悪くなることが確認された。
【0124】以上第6乃至第8の実施形態をまとめる
と、第8の方法においては、第1の工程は、精密素子の
成形形状転写時と精密素子の使用時や型ユニットの加工
時の温度における精密素子と型ユニットとの熱膨張差に
よる形状の相違量を含めた熱収縮量の補正や、成形及び
冷却時の不均一な熱分布に起因する精密素子のヒケの発
生位置と量を前もって成形型で補正しておく事により、
成形された精密素子が所望の形状を得られるようにする
事であり、この際に、予備成形品を得る時の成形面と予
備成形品との間に存在する流体の厚さも補正しておく事
も必要である。また、型ユニットの成形面を多孔質の材
料で作り、その成形面から成形素材に向けてエアーやN
2ガス等の流体を噴出させ、成形面表面にごく薄い流体
膜を形成する事で高温の軟化状態の成形素材と成形面の
接触を防ぐ事が出来る。この目的のためには、多孔質の
最大穴径が20ミクロン以下、望ましくは10ミクロン
以下で気孔率が10〜35%の材料からなり、材料は耐
酸化性のあるアルミナや窒化珪素、炭化珪素等のセラミ
ックや、多孔質カーボン等を用い、更に成形面の表面
は、流体膜が破れ、成形素材に傷を付けないようにし、
更に補正された形状の精密素子を得る段階での、成形面
と予備成形品の接触時の転写性を確保するためには、出
っ張りの無い平滑な鏡面状で、精密素子の機能を確保で
きる所望の面精度に加工されている事が必要となる。
【0125】次に第2の工程は、精密素子の成形素材を
準備する際に、成形後の精密素子に欠陥が発生しないよ
うに、成形素材の成形後に機能面となる部分に対応する
部分の表面を、滑らかに仕上げる工程であり、その部分
に相当する部分の表面を光学的な欠陥、つまり加圧成形
する事により解消できない欠陥を予め取り除くことであ
る。具体的には、表面を高低差が5ミクロン以上の鋭角
的な段差が存在しないように仕上げることであり、傷や
欠け等の微視的に見たときに鋭角的な部分が存在しない
ように処理する事である。この処理は、従来から行われ
ている、研削研磨による方法や、酸処理などによる表面
エッチングや、火炎や熱風による表面の軟化光揮処理等
により行われる。
【0126】更に第3の工程を実施することにより、成
形素材を型ユニットの成形面と非接触の状態で加熱軟化
する事が可能となるため、型ユニット上に、成形後に成
形面に影響が出ることが無い、無欠陥の表面が非常に滑
らかな状態の軟化した成形素材塊を得る事ができる。こ
の時、成形素材が103〜109dPa・sの粘度を示す
温度まで成形素材を加熱する事により、次の第4の工程
につなげることが可能となる。
【0127】次の第4の工程においても型の成形面から
流体を噴出させながら型ユニットを閉じる事により、成
形面と高温の成形素材の接触を防ぐ事が可能となり、次
工程での補正された形状の精密素子を得る事が容易にな
るような形状を有した、表面い欠陥の全く無い予備成形
品を得ることが出来る。この工程において得る予備成形
品の形状は、次工程でのプレス時に、成形素材が大きな
変形を起こさずに、変形が成形素材の流動ではなく、見
かけ上、ほとんど曲げによる変形であるかのような微少
な変形で事足りるような形状である事が望ましい。この
為に、予備成形品の形状は、次の工程で得る補正された
形状の精密素子のプレスの加圧方向の肉厚に対し、それ
よりも0〜3%厚くするか、または肉厚より0.5mm
を超えない範囲の厚さで、また、外径も同様にほとんど
同じかごく僅かに小さな形状である事が望ましく、次工
程での加圧力が予備成形品全体に出来るだけ均等にかか
り、変形量がどこでも出来るだけ同じとなるような、成
形面と相似した形状である事が望ましい。また、このよ
うな形状にする事により、次工程での成形が実質的に曲
げを主体とする変形となり、成形面を形成する多孔質の
材料の穴部の微細な転写が抑制され、穴部の形状が残ら
無い表面を有する精密素子を得る事が出来るようにな
る。更にこの工程において型ユニットを閉じる速度、タ
イミング、圧力、及び噴出させる流体の流量・圧力、温
度等を確実に再現する事により、再現性のある安定した
形状の予備成形品を得る事が出来る。これは、型ユニッ
トを、成形素材が103〜109dPa・sの粘度を示す
温度範囲の時に閉じ、予備成形品の形状を得た時の流体
の膜厚が20ミクロン以下、より安定した形状の予備成
形品を得る場合は、10ミクロン以下になるように流体
の圧力と流量を制御し、また、同時に型を閉じる圧力及
び速度も流体の膜厚を前記の範囲内に収まるように成形
素材の温度に逆比例させながら制御する事により成形素
材を成形面の補正された形状にならわす事により達成さ
れる。また、この型ユニットを閉じるときの動作は成形
素材の温度に対応して制御される事が望ましく、各々の
動作における温度のばらつきは10℃以下、望ましくは
5℃以下とし、同様に噴出させる流体の温度も同じ範囲
に収める事が望ましく、流体の流量及び圧力のばらつき
及び型ユニットを閉じる速度と圧力のばらつきは5%以
内、望ましくは3%以内とする事により、予備成形品の
形状をより安定して得る事が可能となる。
【0128】次の第5の工程は、前記第4の工程で得た
予備成形品を型部材の成形面に接触させ、補正を施され
た成形面の形状を正確に予備成形品に転写し、冷却完了
後の精密素子の形状を確定するために行われる物であ
り、予備成形品の表面が、細かな形状を転写しないよう
な条件のもとで、プレス成形が行われる。これは、前述
のような材料・材質から作られている型部材の成形面の
流体の噴出孔である多孔質の穴部の形状を転写しないよ
うに、予備成形品の表面近傍の粘度が高くなった時点
で、具体的にはガラスの軟化温度である107.6dPa
・sの粘度を示す温度以下になった時に、予備成形品と
型部材の成形面を接触させた状態で圧力を加えて形状を
修正し、補正された成形面の形状を予備成形品に転写さ
せる事であり、この時の圧力も同様に、穴部の形状を転
写しないような圧力、具体的には5MPa以下、好まし
くは2MPa以下である事が望ましい。但し、この圧力
は成形素材の粘度と穴部の形状が前述のような時の圧力
であり、粘度が高いときや、穴部の大きさが更に細かい
ときには、もっと高い圧力を加えることも可能である。
【0129】次の第6の工程は、補正された形状の成形
面と密着している補正形状の精密素子を、成形面の多孔
質の穴から流体を再度噴出させ、成形面から精密素子を
浮上させる力を与えると同時に、必要に応じて外部から
も成形面から精密素子を引き離す力を与えて離型させ、
精密素子と成形面との間に空隙を設ける工程であり、こ
の工程の目的は、一旦成形され補正された形状を有する
精密素子の形状が、冷却時の型と成形素材の収縮差によ
り劣化をするのを防ぐ為に行われるものであり、成形素
材が成形面と離れても自重や他の外力により変形しにく
く、かつ型と素材の収縮量の差が大きくならない温度範
囲にて実現される。具体的な温度範囲は、上限に対して
は成形面との離型行為や次工程の非接触状態での冷却の
初期に変形を起こさない粘度である、108dPa・s
以上、望ましくは109dPa・s以上の粘度となる温
度以下で行うことが必要である。また、下限の温度は、
熱収縮量の差が大きくなり、成形素材が型の収縮に追従
できる範囲の温度以上であれば良く、成形素材と型の膨
張率の差に大きく左右されるが、通常、成形素材が10
12dpa・s以下の粘性を示す温度以上であることが望
ましい。また、この工程の離型動作を容易にするため
に、型の成形面の表面がカーボンや白金等に代表される
成形素材との濡れ性の悪い材料で作られていることがよ
り良い結果をもたらす。
【0130】次の第7の工程での第1の冷却は、成形素
材の粘度を制御し、型ユニットの成形面の補正された形
状を成形素材に転写させ安定した形状の予備成形品を得
るために行われるものであり、第1の冷却の完了時に前
述の流体の膜厚になるように、成形素材の粘度を制御し
ながら徐々に冷却を行う。この第1の冷却完了時に於い
て、予備成形品が成形面との間に厚さを制御された流体
の膜を挟んで成形される事により、次工程に必要な予備
成形品の形状精度が確保される。また、この第1の冷却
完了時点では、成形素材や型ユニットや流体の温度等は
前述の範囲内に収めておく事が望まれる。更にその後の
第2の冷却は、一旦接触により転写された補正形状が、
成形素材がほぼ固まり、離型時において形状が変化しな
いような前述の温度まで行われ、更に連続成形において
形状のばらつきが生じないように行われるものである。
その為には、冷却開始温度や冷却時の冷却速度や温度分
布や、特に離型時である冷却完了時の温度及び温度分布
を正確に再現する必要がある。この時の再現性は、離型
時までの温度のばらつきとして20℃以下、望ましくは
10℃以下とする事により安定した形状の再現性を得る
事が可能となる。また、この時の冷却速度や冷却時の温
度分布は、成形素材に割れや、大きな複屈折等による欠
陥を生じない範囲で成形面の補正形状を決定する時に定
められるものである。更に、その後の第3の冷却は第
1、第2の冷却より速い速度で行うことが出来、ここで
の冷却は、一旦離型前までに転写された補正形状が、冷
却により補正前の形状、つまり精密素子の本来の所望す
る形状に一致し、更に連続成形において冷却収縮により
ばらつきが生じないように行われるものである。そのた
めには、補正形状を決定したときの第3の冷却開始温度
(=離型温度)や冷却時の温度分布等の諸条件を正確に
再現する必要がある。この再現性は、上記と同様に冷却
開始時から成形された精密素子が変形を発生させにくく
なる粘度である10 12dPa・sを示す温度、より精密
な転写性を要求されるものや、複雑な形状のものに対し
ては成形素材が歪を新たに発生させない粘度である10
14.5dPa・s迄の温度のばらつきとして30℃以下、
望ましくは15℃以下とする事により安定した再現性が
得られる。また、この時の冷却速度や冷却時の温度分布
は、成形素材に割れや、大きな複屈折等による欠陥を生
じない範囲で補正形状を決定する時に定められるもので
あるが、転写した形状が自重や流体の圧力により変形を
起こさないようにするためには、精密素子の表面を毎分
20℃以上の速度で冷却する事が望ましく、また、流体
の圧力や流量にも急激な変化を与えないようにする事が
望ましい。以上のような冷却を経ることで、この工程の
終了時には型ユニットの成形面の形状と成形された精密
素子の形状はそれぞれの膨張率の差の分の補正量や、予
め見込んでおいたヒケに対する補正量のために完全に一
致しないが成形面と非接触状態にあるため、精密素子の
形状は型ユニットの成形面の形状に左右される事なく、
所望の形状を維持できる。
【0131】次の第8の工程は、第2の冷却中での形状
転写時の型部材の成形面と成形素材の熱収縮量の違いに
よる、形状のズレを補正する工程である。これは、型部
材の成形面が精度よく鏡面状態に仕上げられて、その面
状態を転写させるような成形においては、型部材と成形
素材とに冷却中の収縮量の違いがあると、成形した形状
が冷却中に不均一に成形面に接触し、その時々の温度の
型の成形面の形状を部分的に転写し、離型後の精密素子
の成形面がいびつになったり、不連続な面形状になった
りしてしまい、本来の所望とする面形状を得ることが出
来なくなってしまうと言う事を防ぐための工程であり、
この型と精密素子の接触冷却中の型に成形面を精密素子
の表面に、精密素子の肉厚方向の収縮に追従する様に密
着させておく事で始めて解決することが出来る。なお、
この精密素子の表面への型部材の追従には、成形面と精
密素子の間の密着力を利用して行っても良いが、より確
実性を増し、精密素子の形状に左右されないようにする
為には、型部材から外部に圧力を加える事によって行う
事が望ましい。
【0132】最後の第9の工程で、上記のようにすでに
固化している精密素子を型ユニットから取り出すことに
より、所望の形状を転写された精密素子を得る。この時
も精密素子と型ユニットの成形面との間には、流体によ
る膜が介在しているようにする事により、精密素子の表
面の成形面との接触による傷などの発生を防ぐと同時
に、成形面も固化した精密素子との接触による損傷を防
ぐ事が出来る。
【0133】また、第9の方法においては、成形面の予
め補正された形状を、成形素材の温度、粘度、及び型ユ
ニットに与えられる圧力、温度、及び成形素材と多孔質
の材料で作られた型部材の熱膨張率等を成形条件のパラ
メータとしてシミュレーションし、事前に成形される精
密素子の形状を予測し、それを基に型ユニットの成形面
の形状を補正しておく事により、高精度な形状及び面精
度を有する精密素子を得る事が出来る。この補正は、型
部材と成形素材の熱膨張差に伴う第1の補正と、成形素
材の冷却に伴うヒケ等をキャンセルするための第2の補
正を組み合わせたものであり、成形型の成形面の形状加
工時にこの補正を行うことで、成形が完了し型ユニット
から取り出し、更に冷却の完了した時点の精密素子の形
状を所望の形状と一致させる事が出来る。
【0134】ここで第1の補正は、形状転写時と型部材
の形状加工時や精密素子の使用時の温度差、及び型部材
と成形素材の熱膨張率の違いから発生する、型部材の成
形面と精密素子の形状のズレ量の補正であり、具体的に
は、所望の精密素子の使用温度での形状を、第2の冷却
の際の型部材の追従が終わる最終的な形状転写温度まで
の温度差による精密素子の形状変化量を成形素材の膨張
率で算出し、更にその精密素子の形状変化量を最終的な
形状転写温度から型ユニットの形成面の加工時の温度差
までの型部材の形状変化量として型部材の膨張率で算出
した量を型部材成形面の形状の第1の補正の量とするも
のである。第2の補正は、特に精密素子が形状を転写し
た後に、型内及び型からの取り出し後の冷却による収縮
やヒケ等による部分的な変形を含めた変形量の補正であ
り、主に冷却時に刻々と変化する流体や型ユニットの温
度と成形素材の保有熱と温度伝導率に支配される、成形
素材自体の温度分布とそれに伴うその時々の粘度分布と
熱膨張率とそれらにより算出される応力と、成形素材独
自の応力緩和係数によりヒケの量を算出し、更にその量
に、その時々の成形素材の自重や流体の圧力変化等によ
る形状の変化量を算出して加算したものを第2の補正の
量とするものである。
【0135】また、第10の方法においては、予め所望
する精密素子の最終形状に近似した形状を有する素子を
成形し、その成形中及び成形終了後の成形、形状データ
から得られた情報を型部材の成形面の形状へフィードバ
ックする事により、高精度な形状及び面精度を有する光
学素子等を得る事ができる。この補正方法は、最初に精
密素子の形状とほぼ同等の形状の成形面を有する型ユニ
ットを用いて、予め設定し、固定された諸条件下で素子
を一旦成形し、成形完了後の使用条件と同じ状態の素子
の形状と、使用した型ユニットの成形面の形状を比較
し、そこで判明した形状の相違量を、基本的には型ユニ
ットの成形面への補正量として用い、成形条件の変更で
補正出来るような単純な補正の場合は、成形条件をも修
正する事により、成形した精密素子を所望の形状に一致
させることが可能となる。また、この補正を数回繰り返
すことにより、より精度のよい安定した形状を得る事も
可能となり、更に前述のシミュレーションによる型ユニ
ットの成形面の補正方法を組み合わせて実施する事で同
様の効果を得る事が出来る。
【0136】また、第11の方法においては、成形面の
多孔質部より噴出する流体の温度を制御する事により、
成形素材の温度を制御する事ができる。これは、成形素
材が型ユニットと非接触状態にある事や、成形素材が型
ユニットに覆われており、外部から成形素材の温度を測
定することが実質上不可能であるが、成形素材に直接に
接触する流体の温度を制御し、その伝熱により成形素材
の温度を間接的に制御する事で解決され、また、こうす
る事により、成形素材に対して、より応答性の良い確実
な温度制御を行うことが出来る。ここで、流体の温度の
制御方法としては、流体を供給源の近傍で直接に加熱温
調して用いる事でも十分に目的を達成することが出来る
が、一旦前述の様に加熱温調した流体を更に流体が成形
素材に触れる直前の流体の通路である型ユニット等に組
み込まれたヒーター等の加熱源により、再度温調をかけ
直して用いることで、より良好な成形素材への温度制御
を実現することが可能となる。
【0137】また、第12の方法においては、成形素材
の粘度に合わせ成形型の成形面より噴出される流体の噴
出圧力と流体の流量と、型ユニットへの加圧力を制御す
る事により、高精度な形状及び面精度を有する光学素子
を得る事ができる。ここで、成形素材の硬さに相当する
粘度変化に同調させて、流体の流量や圧力と型ユニット
への加圧力を制御する事により、型ユニットの成形面と
成形素材の間の流体の膜厚を確実に安定させて制御する
事が出来、その結果、予備成形品及びその後の完成した
精密素子が、より一層、高精度で、かつ連続成形時にお
いてもばらつきの少ない安定した形状を得る事が可能と
なる。
【0138】また、第13の方法においては、成形面の
形状に近似した形状を有する予備成形品を得る際及び形
状転写後の型内での冷却の際に、型ユニットを構成する
型部材を成形素材に対し回転摺動させ、成形素材と成形
面との間に存在する流体の圧力分布を制御する事によ
り、高精度な形状及び面精度を有する光学素子等を得る
事ができる。これは、加圧成形中に型部材を成形素材に
対して回転摺動させる事により、成形素材と型部材の成
形面との間の流体の膜厚を均一化する事が容易となり、
より高精度な精密素子を得る事が出来るようになり、特
に回転軸を中心とした軸対称に膜厚が容易に均一化する
事により、レンズ等の機能面が軸対称の形状の球面を基
本とする形状の精密素子に対しては大きな効果を発揮す
る事が可能となる。
【0139】(第9の実施形態)次に第1の実施形態と
全く同じものを成形する他の実施形態を述べる。なお、
下型11の成形面11aと上型21の成形面21aは、
第6の実施形態と全く同様にして、ただし最終的な形状
転写時の温度を、ガラス素材が1014dPa・sの粘度
を示す温度に設定し形状を求め、加工したものを用い
た。
【0140】まず、第1の実施例とまったく同様の方法
により、成形面11a上にガラス塊102aを得た。次
に下型構成部材2を上型構成部材3の直下に移動し、ガ
ラス塊102aの成形面11aで受けている下面近傍の
粘度が106〜107.5dPa・s、その他の表面近傍の
粘度が1036dPa・sであり、中心付近が十分に柔
らかいうちに、成形面11aと成形面21aから噴出す
る窒素ガスの流量を毎分20リッター、温度をガラスの
粘度で106.5dPa・sに相当する650℃となるよ
うに圧力・流量調節器32a,32bとヒータ33a,3
3bをコントローラ41により制御し(第1の冷却開
始)、ガラス塊102aの中心肉厚が3.2mmとなる
まで毎秒5mmの速度で型ユニット1を閉じた。次いで
窒素ガスの温度と流量をガスの膜厚が20ミクロン程度
となる様に、600℃と毎分10リッターに設定し、冷
間時のレンズの中心肉厚が3.05mmに相当する位置
になった時に、型ユニット1を閉じる圧力が20Kgf
となるように圧力を徐々に上げながら、且つ、レンズの
表面近傍の粘度が107.9dPa・sとなるように速度
を調整しながら型ユニット1を閉じ、予備成形品を得
た。
【0141】さらに、その直後にガスの噴出を停止し、
さらに型ユニット1の成形面に200kgfの圧力を加
えて閉じ、予備成形品と型部材の成形面を接触させた状
態で、予備成形品の形状を成形面の形状にならわせた。
また、軟化ガラス塊102aを得た直後から、予備成形
品を得るまでの間に、成形素材への第1の冷却を開始
し、予備成形品を得た直後から第2の冷却を開始した。
第2の冷却は不図示の冷却装置により型ユニット1の外
部より、冷却用の窒素ガスを吹きつけることにより行わ
れ、その時において、型構成部材2,3への外部からの
拘束を解き、下型部材11及び上型部材21がレンズの
収縮に追従出来るようにした。冷却開始後、レンズの表
面近傍の粘度が1014dPa・sとなり、成形面11
a,21aとレンズとの間の密着力が無くなった時点で
型ユニット1を開き、レンズを不図示の吸着ハンドで取
り出し、室温まで冷却した。さらに成形の完了した複数
のレンズを使用条件と同等の温度である20℃の温度下
において精度を測定したが、全てアスがニュートンリン
グ1.5本、クセがニュートンリング1本以下に収ま
り、十分な精度を得ることができた。
【0142】また、この複数回の成形の時の温度及び加
圧・減圧等の動作の切り替えタイミングの再現性は、す
べての温度制御点において10°Cのばらつき範囲に収
まり、また、型ユニットの開閉速度等のばらつきも5%
に収まっていたが、更に条件を多少振りながら成形を続
けた結果、この温度や速度のばらつきの範囲を超えると
精度が悪くなることが確認された。
【0143】(第10の実施形態)次に第9の実施形態
と同じ装置、同じ材料を用いて片面がR50mm、もう
一方の面がR40mmを基準とする非球面形状をなす、
レンズの中心肉厚が4.3mm、直径がΦ23mmであ
る、コンパクトカメラ用の両凸のガラス非球面レンズの
成形を行った。
【0144】第9の実施形態と同様に、下型部材11の
成形面11aと上型部材21の成形面21aは、成形前
にシミュレーションにより求めた数々の補正を考慮した
形状に加工し、その後更に実際に成形を行い、その形状
データをもとに最終的な補正を行って形状を決定した。
具体的には、第9の実施形態と同様に、上型21の成形
面21aの場合、図3Aに示すように、精密素子である
レンズの標準的な使用条件である20℃における形状2
01(R40mmを基準とする非球面形状)に対し、成
形時の形状転写時の温度を、ガラスの粘度で1012dP
a・sを示す温度に設定し、第1の補正の量の一部であ
るガラスの温度膨張による変形量を算出し、その結果か
ら、この条件下における精密素子の形状204を求め
た。次に第2の補正の量に相当する、形状転写後の冷却
によるヒケ等による補正量205を求め、形状転写時の
成形面の部分的な形状206を決定し、更に第1の補正
の量の残りの部分に相当する、型ユニットの成形面の材
料の温度収縮による補正の量から、型の冷間時、特に型
の成形面の形状を加工する時の成形面の形状207及び
207a(図3Aにおいて207と207aのハッチン
グ部分の形状)を求た。そして、その形状データによ
り、上型部材21の成形面21aを多孔質の穴部のくぼ
みを除いた面を鏡面状態に加工し、一旦、シミュレーシ
ョンで決定した成形条件で実際にレンズを成形した。次
いで、この成形したレンズの形状を測定し、所定の形状
と若干ずれている部分を再度補正加工して、出っ張りの
ない平滑な鏡面状態に仕上げ、最終的な成形面21の形
状とした。また、下型部材11の成形面11aも同様の
手法で形状を求め加工した。また、型部材11、21の
材料として気孔率が25%であり、最大穴径が6ミクロ
ンである多孔質からなるAlO3を用い、流体にはクリ
ーンなエアーを用いた。なお、この成形面の表面には、
離型層としてカーボン膜を多孔質の孔が塞がらない様に
して蒸着させた。この離型層は型とガラスの融着を防
ぎ、成形面の鏡面性を失うものでなければ、特にカーボ
ン膜に限定されるものではない。
【0145】次いで、このように加工準備した型部材1
1、21を図1に示す成形装置に取り付け、第1の実施
形態と全く同様にしてガラス塊102aを得た。次に下
型構成部材2を上型構成部材3の直下に移動し、ガラス
塊102aの下型部材11で受けている下面近傍の粘度
が106〜107.5dPa・s、その他の表面近傍の粘度
が1036dPa・sであり、中心付近が十分に柔らか
いうちに、成形面11a,21aから噴出するエアーの
流量を毎分25リッター、温度をガラスの粘度で10
6.5dPa・sに相当する650℃となるように圧力・
流量調節器32a,32bと加熱ヒータ33a,33bを
コントローラ41により制御し(第1の冷却開始)、ガ
ラス塊102aの中心肉厚が4.6mmとなるまで毎秒
8mmの速度で型ユニット1を閉じた。次いで噴出エア
ーの温度と流量を600℃と毎分15リッターに設定
し、冷間時のレンズの中心肉厚が4.32mmに相当す
る位置になった時に、型ユニット1を閉じる圧力が45
Kgfとなるように圧力を徐々に上げながら、更に同時
に、レンズの表面近傍の粘度が107.9dPa・sとな
るように速度を調整しながら型ユニット1を閉じ、予備
成形品を得た。なお、このときのガスの膜厚は8ミクロ
ン程度であった。
【0146】さらに、その直後にガスの噴出を停止し、
さらに型ユニット1の成形面に220kgfの圧力を加
えて閉じ、予備成形品と型部材の成形面を接触させた状
態で、予備成形品の形状を成形面の形状にならわせた。
上記の予備成形品を得るまでの間の第1の冷却の工程に
続き、予備成形品の形状を型の成形面の形状にならわせ
た直後に第9の実施形態と同様に第2の冷却を行った。
その時において、型構成部材2,3に外部から150k
gfの圧力を加え、型部材11,21をレンズの肉厚方
向の収縮に追従させた。冷却開始後、レンズの表面近傍
の粘度が1012dPa・s(温度で約515°C)とな
ったときに、型構成部材2,3への加圧を解除すると同
時に型ユニット1を開き、レンズを取り出し室温まで冷
却した。さらにこの成形を数回繰り返し、またこのとき
の温度及び加圧・減圧等のタイミングの再現性は、5°
Cの温度範囲に、速度等のばらつきも3%以内に収まる
様に厳密に制御しながら成形を実施した。その後、完成
した複数のレンズを20°Cの温度下において精度を測
定したが、全てアスがニュートンリング1本、クセがニ
ュートンリング0.5本以下に収まり、第9の実施形態
以上の良好な結果を得ることができた。
【0147】(第11の実施形態)次に図4に示す型部
材を第1の実施形態で用いた成形装置を用いて、直径が
Φ10mm、凸面の曲率半径がR20mm、凹面の曲率
半径がR30mm、中心部の肉厚が3.3mm、周縁部
の厚さが約3.1mmである凸メニスカス形状のレンズ
を成形した。ここで、図4において、211、221は
それぞれ下型部材と上型部材であり、それらにはレンズ
の光学面を形成する成形面211aと221aが加工さ
れている。更に、下型部材211と上型部材221の外
周にはそれぞれレンズの周縁の下部と上部を形成する成
形面216aと226aを有したリング部材216,2
26が取り付けられている。また、下型部材211と上
型部材221は、気孔率が15%で最大穴径が15ミク
ロン、リング部材216,226は気孔率が10%で最
大穴径が20ミクロンの多孔質の窒化珪素で作られてい
て、図示せぬ供給装置からそれぞれの圧力室12b,1
2c,22b,22cに流体を個々に独立に供給すること
ができるようになっており、それぞれの光学面の成形面
と周縁部の成形面と成形素材の間の流体の膜厚を独立に
制御出来るようになっている。また、成形素材は、第1
の実施形態と同じガラス材料を用い、流体としては窒素
ガスを用いた。また、離型層として第10の実施形態と
同様のものを用いた。
【0148】この実施形態では、レンズの光学面の成形
面211a,221aと周縁部の成形面216a,226
aの形状は、一旦レンズの冷間での形状を成形面上にそ
のまま加工して予備成形を行い、成形された光学素子の
形状誤差を補正する様に成形面の補正加工量を求め、そ
れを再度成形面の形状に反映して加工し直し、鏡面状態
に仕上げた。また、このときの最終的な形状転写時の温
度は515°C(ガラスの粘度で1012dPa・s)と
して実施した。
【0149】次いで、このように準備した型部材21
1,221,216,226を第1の実施形態と同様に図
1に示す成形装置に取り付け、同様の方法で軟化ガラス
塊を得た。この時の窒素ガスの温度は、ガラスを成形面
211aに受ける時はガラスの転移点付近の温度である
500℃に、その直後にはガラスの粘度で107.3dP
a・sに相当する温度である620℃になるように温度
を調整し、更に窒素ガスの流量は、溶融ガラス102を
成形面211aに受ける直前までは、成形面211aで
毎分18リッター、成形面216aで毎分8リッター、
その後はどちらも毎分5リッターとなるように制御し
た。
【0150】次に下型構成部材2を上型構成部材3の直
下に移動し、ガラス塊102aの下型部材211で受け
ている下面近傍の粘度が105.6〜107dPa・s、そ
の他の表面近傍の粘度が103〜105.6dPa・sであ
り、中心付近が十分に柔らかいうちに、成形面211
a,221aから噴出する窒素ガスの流量を毎分20リ
ッター、成形面216a,226aからの流量をそれぞ
れ毎分14リッター、12リッターとし、温度をガラス
の粘度で105.8dPa・sに相当する680℃となる
ように設定し(第1の冷却開始)、更に下型構成部材2
と上型構成部材3が互いに逆回転となるような回転方向
で、回転数が200rpmとなるように徐々に回転速度
を上げながら、ガラス塊102aの中心肉厚が3.5m
mとなるまで毎秒8mmの速度で型ユニット1を閉じ
た。次いで、下型構成部材2と上型構成部材3の回転を
保った状態で、窒素ガスの温度を610℃、成形面21
1a,221aからの流量を膜厚が12ミクロン前後と
なる様に毎分15リッター、成形面216a,226a
からの流量がそれぞれ毎分12リッター、11リッター
となるように設定し、冷間時のレンズの中心肉厚が3.
33mmに相当する位置になった時に、型ユニット1を
閉じる圧力が25Kgfとなるように圧力を徐々に上げ
ながら、更に同時に、レンズの表面近傍の粘度が10
7.6dPa・sとなるように速度を調整しながら型ユニ
ット1を閉じ、予備成形品を得た。
【0151】さらに、その直後にガスの噴出と回転を停
止し、さらに型ユニット1の成形面に100kgfの圧
力を加えて閉じ、予備成形品と型部材の成形面を接触さ
せた状態で、予備成形品の形状を成形面の形状にならわ
せた。上記の予備成形品を得るまでの間の第1の冷却の
工程に続き、予備成形品を得た直後に第10の実施形態
と同様に第2の冷却を行った。その時において、型構成
部材2,3に外部から75kgfの圧力を加え、型部材
11,21をレンズの肉厚方向の収縮に追従させた。冷
却開始後、レンズの表面近傍の粘度が1012dPa・s
(温度で約515°C)となったときに、型構成部材
2,3への加圧を解除すると同時に型ユニット1を開
き、レンズを取り出し室温まで冷却した。さらに成形の
完了した複数のレンズを使用条件と同等の温度である2
0℃の温度下において精度を測定したが、全てアスがニ
ュートンリング1本、クセがニュートンリング0.5本
以下に収まり、十分な精度を得ることができた。
【0152】また、この複数回の成形の時の温度及び加
圧・減圧等の動作の切り替えタイミングの再現性は、す
べての温度制御点において10°Cのばらつき範囲に収
まり、また、型ユニットの開閉速度及び型構成部材の回
転数等のばらつきも5%に収まっていたが、更に条件を
多少振りながら成形を続けた結果、この温度や速度のば
らつきの範囲を超えると精度が悪くなることが確認され
た。
【0153】以上第9乃至第11の実施形態をまとめる
と、第14の方法においては、第1の工程は、精密素子
の成形形状転写時と精密素子の使用時や型ユニットの加
工時の温度における精密素子と型ユニットとの熱膨張差
による形状の相違量を含めた熱収縮量の補正や、成形及
び冷却時の不均一な熱分布に起因する精密素子のヒケの
発生位置と量を前もって成形型で補正しておく事によ
り、成形された精密素子が所望の形状を得られるように
する事である。また、型ユニットの成形面を多孔質の材
料で作り、その成形面から成形素材に向けてエアーやN
2ガス等の流体を噴出させ、成形面表面にごく薄い流体
膜を形成する事で高温の軟化状態の成形素材と成形面の
接触を防ぐ事が出来る。この目的のためには、多孔質の
最大穴径が20ミクロン以下、望ましくは10ミクロン
以下で気孔率が10〜35%の材料からなり、材料は耐
酸化性のあるアルミナや窒化珪素、炭化珪素等のセラミ
ックや、多孔質カーボン等を用い、更に成形面の表面
は、流体膜が破れ、成形素材に傷を付けないようにし、
更に接触時の面精度の転写性を確保するためにも、出っ
張りの無い平滑な鏡面状で、精密素子の機能を確保でき
る粗さに加工されている事が必要となる。
【0154】次に第2の工程により、型と成形素材の接
触、特に溶融軟化された形状が不定の状態の成形素材を
ノズルから流出させ型ユニットに供給する時に発生しや
すい成形素材と型ユニットの成形面との接触を防ぐ事が
出来、更にこの時に、一時的に噴出する流体の温度を下
げたり流量を増やすことにより、接触を確実に防ぐ事が
出来る。また、型ユニットの成形面上に供給された成形
素材を前記ノズルから分離する際に、型ユニット上に成
形素材を必要量を受け止めた後、型ユニットと一旦下降
させ、ノズルより流出する成形素材と型ユニット上の成
形素材との間にくびれを発生させ、更に成形素材の自重
と表面張力によりくびれを発達させ分離を行う事によ
り、型ユニット上に、成形後に影響が出るような欠陥の
全く無い、表面が非常に滑らかな成形素材塊を得ること
が出来る。
【0155】次に第3の工程においても型の成形面から
流体を噴出させながら型ユニットを閉じる事により、成
形面と成形素材の接触を防ぐ事が可能となり、次工程で
の補正された形状の精密素子を得る事が容易になるよう
な形状を有した、表面に欠陥の全く無い予備成形品を得
ることが出来る。この工程において得る予備成形品の形
状は、次工程でのプレス時に、成形素材が大きな変形を
起こさずに、変形が成形素材の流動ではなく、見かけ
上、ほとんど曲げによる変形であるかのような微少な変
形で事足りるような形状である事が望ましい。この為
に、予備成形品の形状は、次の工程で得る補正された形
状の精密素子のプレスの加圧方向の肉厚に対し、それよ
りも0〜3%厚くするか、又は肉厚より0.5mmを超
えない範囲の厚さで、また、外径も同様にほとんど同じ
かごく僅かに小さな形状である事が望ましく、次工程で
の加圧力が予備成形品全体に出来るだけ均等に掛かり、
変形量がどこでも出来るだけ同じとなるような、成形面
と相似した形状である事が望ましい。また、このような
形状にする事により、次工程での成形が実質的に曲げを
主体とする変形となり、成形面を形成する多孔質の材料
の穴部の微細な転写が抑制され、穴部の形状が残ら無い
表面を有する精密素子を得る事が出来るようになる。更
にこの工程において型ユニットを閉じる速度、タイミン
グ、圧力、及び噴出させる流体の流量・圧力、温度等を
確実に再現する事により、再現性のある安定した形状の
予備成形品を得る事が出来る。これは、型ユニットを、
成形素材が103〜109dPa・sの粘度を示す温度範
囲の時に閉じ、予備成形品の形状を得た時の流体の膜厚
が20ミクロン以下、より安定した形状の予備成形品を
得る場合は、10ミクロン以下になるように流体の圧力
と流量を制御し、また、同時に型を閉じる圧力及び速度
も流体の膜厚を前記の範囲内に収まるように成形素材の
温度に逆比例させながら制御する事により成形素材を成
形面の補正された形状にならわす事により達成される。
また、この型ユニットを閉じるときの動作は成形素材の
温度に対応して制御される事が望ましく、各々の動作に
おける温度のばらつきは10℃以下、望ましくは5℃以
下とし、同様に噴出させる流体の温度も同じ範囲に収め
る事が望ましく、流体の流量及び圧力のばらつき及び型
ユニットを閉じる速度と圧力のばらつきは5%以内、望
ましくは3%以内とする事により、型ユニットの成形面
の形状をより安定して得る事が可能となる。
【0156】次の第4の工程は、前記工程で得た予備成
形品を型部材の成形面に接触させ、補正を施された成形
面の形状を正確に予備成形品に転写し、冷却完了後の精
密素子の形状を確定するために行われるものであり、予
備成形品の表面が、細かな形状を転写しないような条件
のもとで、プレス成形が行われる。これは、前述のよう
な材料・材質から作られている型部材の成形面の流体の
噴出孔である多孔質の穴部の形状を転写しないように、
予備成形品の表面近傍の粘度が高くなった時点で、具体
的には107.6dPa・s以上の粘度となった時に、予
備成形品と型部材の成形面を接触させた状態で圧力を加
えて形状を修正し、補正された成形面の形状を予備成形
品に転写させる事であり、この時の圧力も同様に、穴部
の形状を転写しないような圧力、具体的には5MPa以
下、好ましくは2MPa以下である事が望ましい。但
し、この圧力は成形素材の粘度と穴部の形状が前述のよ
うな時の圧力であり、粘度が高いときや、穴部の大きさ
が更に細かいときには、もっと高い圧力を加えることも
可能である。
【0157】次の第5の工程での第1の冷却は、成形素
材の粘度を制御し、型ユニットの成形面の補正された形
状を成形素材に転写させ安定した形状の予備成形品を得
るために行われるものであり、第1の冷却の完了時に前
述の流体の膜厚になるように、成形素材の粘度を制御し
ながら徐々に冷却を行う。この第1の冷却完了時におい
て、予備成形品が成形面との間に厚さを制御された流体
の膜を挟んで成形される事により、次工程に必要な予備
成形品の形状精度が確保される。また、この第1の冷却
完了時点では、成形素材や型ユニットや流体の温度等は
前述の範囲内に収めておく事が望まれる。更にその後の
第2の冷却は第2の冷却より速い速度で行うことが出
来、ここでの冷却は、一旦転写された補正形状が、冷却
により補正前の形状、つまり精密素子の本来の所望する
形状に一致し、更に連続成形において冷却収縮等により
ばらつきが生じないように行われるものである。その為
には、冷却開始温度や冷却時の冷却速度や温度分布等の
諸条件を正確に再現する必要がある。この再現性は、上
記と同様に冷却開始時から成形素材の粘度で1012dP
a・sを示す温度の範囲での温度のばらつきとして10
℃以下、望ましくは5℃以下とする事により安定した形
状の再現性が得られる。又この時の冷却速度や冷却時の
温度分布は、成形素材に割れや、大きな複屈折等による
欠陥を生じない範囲で成形面の補正形状を決定する時に
定められるものである。
【0158】次の第6の工程は、形状転写後の型部材の
成形面と成形素材の熱収縮量の違いによる、冷却時の形
状のズレを補正する工程である。これは、通常、加圧変
形できる温度状態の成形素材は粘着力があり、特に型部
材の成形面が精度よく鏡面状態に仕上げられて、その面
状態を転写させるような成形においては、この力が成形
素材の表面と成形面との間に強い密着力として働く。こ
の力は接触面の形状や接触面の界面の微細な状態に左右
され易く、それ故その力の大きさは不安定であり、その
分布状態も不均一である為、接触面全体が一様に剥離せ
ずに、部分的に徐々に剥離して行ったり、段階的に剥離
して行き、その結果、出来上がった面状態が不安定で、
場合によっては成形された面が不連続になったりしてし
まい、最終的に所望の形状と一致させる事ができないと
いう問題がある。この問題は、少なくとも、型の素材の
間に、転写面を変形させるような大きさの密着力が働い
ている間に、その素子の表面と成形面の密着を維持する
ように、その素子の収縮に合せて型部材を追従させる事
により初めて解決させることが可能となる。
【0159】更に前記の第2の冷却を、この型部材の追
従の工程が完了するまで行い、その後、型ユニットを開
き成形素子を取り出す事(第7の工程)により、所望の
形状に近似した形状を有する成形素子を得ることが出来
る。また、この第2の冷却の終了点、つまり型部材の追
従工程完了時点は、密着力如何により決められる物であ
るが、通常、素材の粘度で101214.5dPa・sで行
われるのが理想的である。
【0160】次の第8の工程で、この所望の形状に近似
した形状を有する成形素子を更に室温迄冷却する事によ
り、熱収縮が起こり、前記素子が所望の形状を有する精
密素子の形状となり、目的とする精密素子を得ることが
出来る。また、第15の方法においては、成形面の予め
補正された形状を、流体の圧力、流量、温度、及び成形
素材の温度、粘度、及び型ユニットに与えられる圧力、
温度、及び成形素材と多孔質の材料で作られた型部材の
熱膨張率等を成形条件のパラメーターとしてシミュレー
ションし、事前に成形される精密素子の形状を予測し、
それを基に型ユニットの成形面の形状を補正しておく事
により、高精度な形状及び面精度を有する精密素子を得
る事ができる。この補正は、型部材と成形素材の熱膨張
差に伴う第1の補正と、成形素材の冷却に伴うヒケ等を
キャンセルするための第2の補正を組み合わせたもので
あり、成形型の成形面の形状加工時にこの補正を行うこ
とで、成形が完了し型ユニットより取り出し、更に冷却
の完了した時点の精密素子の形状を所望の形状と一致さ
せる事が出来る。
【0161】ここで第1の補正は、形状転写時と型部材
の形状加工時や精密素子の使用時の温度差、及び型部材
と成形素材の熱膨張率の違いから発生する、型部材の成
形面と精密素子の形状のズレ量の補正であり、具体的に
は、所望の精密素子の使用温度での形状を、第2の冷却
の際の型部材の追従が終わる最終的な形状転写温度まで
の温度差による精密素子の形状変化量を成形素材の膨張
率で算出し、更にその精密素子の形状変化量を最終的な
形状転写温度から型ユニットの形成面の加工時の温度差
までの型部材の形状変化量として型部材の膨張率で算出
した量を型部材の成形面の形状の第1の補正の量とする
ものである。第2の補正は、特に精密素子が形状を転写
した後に、冷却され型から取り出され、更に取り出し後
の冷却による収縮やヒケ等による部分的な変形を含めた
変形量の補正であり、主に冷却時に刻々と変化する成形
素材の保有熱と温度伝導率に支配される、成形素材自体
の温度分布とそれに伴うその時々の粘度分布と熱膨張率
とそれらにより算出される応力と、成形素材独自の応力
緩和係数によりヒケの量を算出し、更にその量に、その
時々の成形素材の自重や外部応力の変化等による形状の
変化量を算出して加算したものを第2の補正の量とする
ものである。
【0162】また、第16の方法においては、予め所望
する精密素子の最終形状に近似した形状を有する素子を
成形し、その成形中及び成形終了後の成形、形状データ
から得られた情報を型部材の成形面の形状へフィードバ
ックする事により、高精度な形状及び面精度を有する光
学素子等を得る事ができる。この補正方法は、最初に精
密素子の形状とほぼ同等の形状の成形面を有する型ユニ
ットを用いて、予め設定し、固定された諸条件下で素子
を一旦成形し、成形完了後の使用条件と同じ状態の素子
の形状と、使用した型ユニットの成形面の形状を比較
し、そこで判明した形状の相違量を、基本的には型ユニ
ットの成形面への補正量として用い、成形条件の変更で
補正出来るような単純な補正の場合は、成形条件をも修
正する事により、成形した精密素子を所望の形状に一致
させることが可能となる。また、この補正を数回繰り返
すことにより、より精度のよい安定した形状を得る事も
可能となり、更に前述のシミュレーションによる型ユニ
ットの成形面の補正方法を組み合わせて実施する事で同
様の効果を得る事が出来る。
【0163】また、第17の方法は、前記成形面の多孔
質部より噴出する流体の温度を制御する事により、成形
素材の温度を制御する事ができる。これは、成形面の形
状に近似した形状を有する予備成形品を得る際に、成形
素材が型ユニットと非接触状態にある事や、成形素材が
型ユニットに覆われており、外部から成形素材の温度を
測定することが実質上不可能であるが、成形素材に直接
に接触する流体の温度を制御し、その伝熱により成形素
材の温度を間接的に制御する事で解決され、また、こう
する事により、成形素材に対して、より応答性の良い確
実な温度制御を行うことが出来る。ここで、流体の温度
の制御方法としては、流体を供給源の近傍で直接に加熱
温調して用いる事でも十分に目的を達成することが出来
るが、一旦前述の様に加熱温調した流体を更に流体が成
形素材に触れる直前の流体の通路である型ユニット等に
組み込まれたヒーター等の加熱源により、再度温調をか
け直して用いることで、より良好な成形素材への温度制
御を実現することが可能となる。
【0164】また、第18の方法においては、前記の第
17の方法と同様に、成形面の形状に近似した形状を有
する予備成形品を得る際に、成形素材の粘度に合わせ成
形型の成形面より噴出される流体の噴出圧力と流体の流
量と、型ユニットへの加圧力を制御する事により、安定
的な形状を有する予備成形品を得る事ができる。ここ
で、成形素材の硬さに相当する粘度変化に同調させて、
流体の流量や圧力と型ユニットへの加圧力を制御する事
により、型ユニットの成形面と成形素材の間の流体の膜
厚を確実に安定させて制御する事が出来、その結果、成
形された予備成形品が、連続成形時においてもばらつき
の少ない安定した形状を得る事が可能となる。
【0165】また、第19の方法においては、第2の冷
却の際の型部材の追従を、成形面と精密素子の間の密着
力を利用して行う事により高精度な精密素子を得られる
ようにする事であり、型部材の少なくとも一つを、精密
素子の肉厚方向の収縮に追従できるように、外部からの
拘束を解くことにより実現される。また、第20の方法
においては、第19の方法と同様に、第2の冷却の際の
型部材の追従を、型部材に外部から圧力を加える事によ
り、より確実に実行する事により、より安定的に高精度
な精密素子を得られるようにする事であり、型部材の少
なくとも一つに、精密素子の肉厚方向の収縮に追従でき
るように、外部から圧力を加える事により実現される。
【0166】(第12の実施形態)次に第1の実施形態
と全く同じものを成形する他の実施形態を述べる。な
お、下型11の成形面11aと上型21の成形面21a
は、第6の実施形態と全く同様にして、ただし最終的な
形状転写時の温度を、ガラス素材が1014dPa・sの
粘度を示す温度に設定し形状を求め、加工したものを用
いた。
【0167】まず、このように加工準備した型部材1
1,21を図1に示す成形装置に取り付け、さらに第1
の実施形態で用いたと同じガラスブロックから、ガラス
塊を切り出し、それを図5(a)に示す様に更に研削研
磨により容積で311mm3となるようなガラス塊に仕
上げ、更に、このガラス塊の研削研磨面以外の部分に、
バーナーによる火炎処理を行うことにより、ガラス塊の
表面の5ミクロン以上の鋭角な段差を取り去り、図5
(b)に示すような滑らかな表面を有する容量が311
mm3のガラス塊を得た。
【0168】次いで、このガラス塊を窒素ガスが毎分3
0リッター噴出されている成形面11aの上に載置した
後、ヒータ13と加熱ヒータ33aにより、窒素ガスの
温度をガラスの粘度で105.4dPa・sに相当する温
度である700℃に上げガラス塊を加熱した。この時上
型構成部材3も下型構成部材2の真上に移動させ、同様
の温度の窒素ガスを流し、ガラス塊を上部からも加熱し
た。このようにすることで、表面に有害な欠陥の全くな
い、粘度が106dPa・sの軟化ガラス塊102aを
得た。
【0169】次に、成形面11a,21aから噴射する
窒素ガスの流量を毎分20リッター、温度をガラスの粘
度で106.5dPa・sに相当する650℃となるよう
に圧力・流量調節器32a,32bと加熱ヒータ33a,
33bをコントローラ41により制御し(第1の冷却開
始)、ガラス塊102aの中心肉厚が3.2mmとなる
まで毎秒5mmの速度で型ユニット1を閉じ、中心肉厚
が3.05mmの予備成形品を得た。
【0170】さらに、その直後にガスの噴出を停止し、
さらに型ユニット1の成形面に200kgfの圧力を加
えて閉じ、予備成形品と型部材の成形面を接触させた状
態で加圧をし、予備成形品の形状を成形面の形状になら
わせた。また、軟化ガラス塊102aを得た直後から、
予備成形品を得るまでの間に、成形素材への第1の冷却
を開始し、予備成形品を得た直後から第2の冷却を開始
した。第2の冷却は不図示の冷却装置により型ユニット
1の外部より、冷却用の窒素ガスを吹きつけることによ
り行われ、その時において、型構成部材2,3への外部
からの拘束を解き、下型部材11及び上型部材21がレ
ンズの収縮に追従出来るようにした。冷却開始後、レン
ズの表面近傍の粘度が1014dPa・sとなり、成形面
11a,21aとレンズとの間の密着力が無くなった時
点で型ユニット1を開き、レンズを不図示の吸着ハンド
で取り出し、室温まで冷却した。さらに成形の完了した
複数のレンズを使用条件と同等の温度である20℃の温
度下において精度を測定したが、全てアスがニュートン
リング1.5本、クセがニュートンリング1本以下に収
まり、十分な精度を得ることができた。
【0171】更に、最初に準備するガラス塊の表面処理
の条件を多少振りながら成形を続けた結果、表面に残る
段差が5ミクロンを越えたり、鋭角的な段差が残ったり
すると、加熱軟化した後に、表面を更に滑らかにするた
めの時間が非常にかかったり、場合によっては、この加
熱軟化により段差が解消せず、成形後のレンズ表面に欠
陥が残ったりし、実用上、大きな問題になることが確認
された。
【0172】また、この複数回の成形の時の温度及び加
圧・減圧等の動作の切り替えタイミングの再現性は、す
べての温度制御点において10°Cのばらつき範囲に収
まり、また、型ユニットの開閉速度等のばらつきも5%
に収まっていたが、更に条件を多少振りながら成形を続
けた結果、この温度や速度のばらつきの範囲を超えると
精度が悪くなり、また、冷却速度、特に第2の冷却速度
が毎分20°Cより遅くなると自重変形や窒素ガスの圧
力の影響を受けやすくなり、精度が劣化することが確認
された。
【0173】(第13の実施形態)次に第12の実施形
態と同じ装置、同じ材料を用いて片面がR50mm、も
う一方の面がR40mmを基準とする非球面形状をな
す、レンズの中心肉厚が4.3mm、直径がΦ23mm
である、コンパクトカメラ用の両凸のガラス非球面レン
ズの成形を行った。
【0174】第12の実施形態と同様に、下型部材11
の成形面11aと上型部材21の成形面21aは、成形
前にシミュレーションにより求めた数々の補正を考慮し
た形状に加工し、その後更に実際に成形を行い、その形
状データをもとに最終的な補正を行って形状を決定し
た。具体的には、第14の実施形態と同様に、上型21
の成形面21aの場合、図3Aに示すように、精密素子
であるレンズの標準的な使用条件である20℃における
形状201(R40mmを基準とする非球面形状)に対
し、成形時の形状転写時の温度を、ガラスの粘度で10
12dPa・sを示す温度に設定し、第1の補正の量の一
部であるガラスの温度膨張による変形量を算出し、その
結果から、この条件下における精密素子の形状204を
求めた。次に第2の補正の量に相当する、形状転写後の
冷却によるヒケ等による補正量205を求め、形状転写
時の成形面の部分的な形状206を決定し、更に第1の
補正の量の残りの部分に相当する、型ユニットの成形面
の材料の温度収縮による補正の量から、型の冷間時、特
に型の成形面の形状を加工する時の成形面の形状207
及び207a(図3Aにおいて207と207aのハッ
チング部分の形状)を求た。そして、その形状データに
より、上型部材21の成形面21aを多孔質の穴部のく
ぼみを除いた面をニュートンリングのずれで0.2本以
内となるような鏡面状態に加工し、一旦、シミュレーシ
ョンで決定した成形条件で実際にレンズを成形した。次
いで、この成形したレンズの形状を測定し、所定の形状
と若干ずれている部分を再度補正加工して、出っ張りの
ない平滑な鏡面状態に仕上げ、最終的な成形面21の形
状とした。また、下型部材11の成形面11aも同様の
手法で形状を求め加工した。また、型部材11、21の
材料として気孔率が25%であり、最大穴径が6ミクロ
ンである多孔質からなるAlO3を用い、流体にはクリ
ーンなエアーを用いた。なお、この成形面の表面には、
離型層としてカーボン膜を多孔質の孔が塞がらない様に
して蒸着させた。この離型層は型とガラスの融着を防
ぎ、成形面の鏡面性を失うものでなければ、特にカーボ
ン膜に限定されるものではない。
【0175】次いで、このように加工準備した型部材1
1、21を図1に示す成形装置に取り付け、第12の実
施形態と全く同様にしてガラス塊を切り出し、切削部を
研磨加工し、第12の実施形態と全く同様にして軟化状
態にあるガラス塊102aを得た。このガラス塊102
aが106.5dPa・sの温度になった時点で、成形面
11a,21aから噴出するエアーの流量を毎分25リ
ッター、温度をガラスの粘度で106.5dPa・sに相
当する650℃となるように圧力・流量調節器32a,
32bと加熱ヒータ33a,33bをコントローラ41
により制御し(第1の冷却開始)、ガラス塊102aの
中心肉厚が4.6mmとなるまで毎秒8mmの速度で型
ユニット1を閉じた。次いで噴出エアーの温度と流量を
600℃(ガラスの粘度で107.9dPa・sに相当す
る温度)と毎分15リッターに設定し、冷間時のレンズ
の中心肉厚が4.32mmに相当する位置になった時
に、型ユニット1を閉じる圧力が45kgfとなるよう
に圧力を徐々に上げながら、更に同時に、レンズの表面
近傍の粘度が107.9dPa・sとなるように速度を調
整しながら型ユニット1を閉じ、予備成形品を得た。な
お、このときのガス厚は8ミクロン程度であった。
【0176】上記の予備成形品を得るまでの間の第1の
冷却の工程に続き、予備成形品を得た直後に第12の実
施形態と同様に第2の冷却を行った。その時において、
型構成部材2,3に外部から150kgfの圧力を加
え、型部材11,21をレンズの肉厚方向の収縮に追従
させた。冷却開始後、レンズの表面近傍の粘度が1012
dPa・s(温度で約515°C)となったときに、型
構成部材2,3への加圧を解除すると同時に型ユニット
1を開き、レンズを取り出し室温まで冷却した。さらに
この成形を数回繰り返し、またこのときの温度及び加圧
・減圧等のタイミングの再現性は、5°Cの温度範囲
に、速度等のばらつきも3%以内に収まる様に厳密に制
御しながら成形を実施した。その後、完成した複数のレ
ンズを20°Cの温度下において精度を測定したが、全
てアスがニュートンリング1本、クセがニュートンリン
グ0.5本以下に収まり、第12の実施形態以上の良好
な結果を得ることができた。
【0177】(第14の実施形態)次に図4に示す型部
材を第12の実施形態で用いた成形装置を用いて、直径
がΦ10mm、凸面の曲率半径がR20mm、凹面の曲
率半径がR30mm、中心部の肉厚が3.3mm、周縁
部の厚さが約3.1mmである凸メニスカス形状のレン
ズを成形した。ここで、図4において、211、221
はそれぞれ下型部材と上型部材であり、それらにはレン
ズの光学面を形成する成形面211aと221aが加工
されている。更に、下型部材211と上型部材221の
外周にはそれぞれレンズの周縁の下部と上部を形成する
成形面216aと226aを有したリング部材216,
226が取り付けられている。また、下型部材211と
上型部材221は、気孔率が15%で最大穴径が15ミ
クロン、リング部材216,226は気孔率が10%で
最大穴径が20ミクロンの多孔質の窒化珪素で作られて
いて、図示せぬ供給装置からそれぞれの圧力室12b,
12c,22b,22cに流体を個々に独立に供給するこ
とができるようになっており、それぞれの光学面の成形
面と周縁部の成形面と成形素材の間の流体の膜厚を独立
に制御出来るようになっている。また、成形素材は、第
12の実施形態と同じガラス材料を用い、流体としては
窒素ガスを用いた。また、離型層として第13の実施形
態と同様のものを用いた。
【0178】この実施形態では、レンズの光学面の成形
面211a,221aと周縁部の成形面216a,226
aの形状は、一旦レンズの冷間での形状を成形面上にそ
のまま加工して予備成形を行い、成形された光学素子の
形状誤差を補正する様に成形面の補正加工量を求め、そ
れを再度成形面の形状に反映して加工し直し、鏡面状態
に仕上げた。また、予備成形における形状転写時の温度
は515℃(ガラスの粘度で1012dPa・s)として
実施した。
【0179】次いで、このように準備した型部材21
1,221,216,226を第12の実施形態と同様に
図1に示す成形装置に取り付け、さらに、第14の実施
形態で用いたのと同じガラスブロックから、ガラス塊を
切り出し、それをさらに研削研磨により容積が250m
3となるようなガラス塊に仕上げ、さらにこのガラス
塊の研削研磨面以外の部分に、バーナーによる火炎処理
を行うことにより、ガラス塊の表面の5ミクロン以上の
鋭角な段差を取り去り、滑らかな表面を有する容量が2
50mm3のガラス塊を得た。
【0180】次いで、このガラス塊を窒素ガスが毎分2
5リッター噴出されている成形面211aの上に載置し
た後、窒素ガスの温度をガラスの粘度で105.4dPa
・sに相当する温度である700℃に上げガラス塊を加
熱した。この時上型構成部材3も下型構成部材2の真上
に移動させ、成形面216a,221a,226aにも同
様の温度の窒素ガスを流し、ガラス塊を上下、外周部か
らも加熱した。このようにすることで、表面に有害な欠
陥の全くない、粘度が106dPa・sの軟化ガラス塊
102aを得た。
【0181】その直後に、成形面211a,221aか
ら噴出する窒素ガスの流量を毎分20リッター、成形面
216a,226aからの流量をそれぞれ毎分14リッ
ター、12リッターとし、温度をガラスの粘度で10
5.8dPa・sに相当する680℃となるように設定し
(第1の冷却開始)、更に下型構成部材2と上型構成部
材3が互いに逆回転となるような回転方向で、回転数が
200rpmとなるように徐々に回転速度を上げなが
ら、ガラス塊102aの中心肉厚が3.5mmとなるま
で毎秒8mmの速度で型ユニット1を閉じ、さらにレン
ズの中心肉厚が3.33mmになった時に、型ユニット
1を閉じる圧力が25kgfとなる様に圧力を徐々に上
げながら、更に同時に、レンズの表面近傍の粘度が10
7.6dPa・sとなるように速度を調整しながら型ユニ
ット1を閉じ、予備成形品を得た。なお、このときのガ
ス層の厚みは平均12ミクロンであった。
【0182】さらに、その直後にガスの噴出と型構成部
材2,3の回転を停止し、さらに型ユニットに100k
gfの圧力を加えて閉じ、予備成形品と型部材の成形面
を接触させた状態で加圧をし、予備成形品の形状を成形
面の形状にならわせた。上記の予備成形品を得るまでの
間の第1の冷却の工程に続き、予備成形品を得た直後に
第12の実施形態と同様に第2の冷却を行った。その時
において、予備成形品の形状が成形面の形状に一致した
後、型構成部材2,3に外部から75kgfの圧力を加
え、型部材11,21をレンズの肉厚方向の収縮に追従
させた。冷却開始後、レンズの表面近傍の粘度が1012
dPa・s(温度で約515°C)となったときに、型
構成部材2,3への加圧を解除し型ユニット1を開き、
レンズを取り出し、室温まで冷却した。更に成形の完了
した複数のレンズを使用条件と同等の温度である20℃
の温度下において精度を測定したが、全てアスがニュー
トンリング1本、クセがニュートンリング0.5本以下
に収まり、十分な精度を得ることができた。
【0183】また、この複数回の成形の時の温度及び加
圧・減圧等の動作の切り替えタイミングの再現性は、す
べての温度制御点において10°Cのばらつき範囲に収
まっており、また、型ユニットの開閉速度及び下型構成
部材2と上型構成部材3の回転数等のばらつきも5%に
収まっていたが、更に条件を多少振りながら成形を続け
た結果、この温度や速度のばらつきの範囲を超えると精
度が悪くなることが確認された。
【0184】以上第12乃至第14の実施形態をまとめ
ると、第21の方法においては、第1の工程は、精密素
子の成形形状転写時と精密素子の使用時や型ユニットの
加工時の温度における精密素子と型ユニットとの熱膨張
差による形状の相違量を含めた熱収縮量の補正や、成形
及び冷却時の不均一な熱分布に起因する精密素子のヒケ
の発生位置と量を前もって成形型で補正しておく事によ
り、成形された精密素子が所望の形状を得られるように
する事である。また、型ユニットの成形面を多孔質の材
料で作り、その成形面から成形素材に向けてエアーやN
2ガス等の流体を噴出させ、成形面表面にごく薄い流体
膜を形成する事で高温の軟化状態の成形素材と成形面の
接触を防ぐ事が出来る。この目的の為には、多孔質の最
大穴径が20ミクロン以下、望ましくは10ミクロン以
下で気孔率が10〜35%の材料からなり、材質には耐
酸化性のあるアルミナや窒化珪素、炭化珪素等のセラミ
ックや、多孔質カーボン等を用い、更に成形面の表面
は、流体膜が破れ、成形素材に傷を付けないようにし、
更に接触時の面精度の転写性を確保するためにも、出っ
張りの無い平滑な鏡面状で、精密素子の機能を確保でき
る荒さに加工されている事が必要となる。
【0185】次に第2の工程により、精密素子の成形素
材を準備する際に、成形後の精密素子に欠陥が発生しな
いように、成形素材の成形後に機能面となる部分に対応
する部分の表面を、滑らかに仕上げる工程であり、その
部分に相当する部分の表面を光学的な欠点、つまり加圧
成形する事により解消出来ない欠陥を予め取り除くこと
である。具体的には、表面を高低差が5ミクロン以上の
鋭角的な段差が存在しないように仕上げることであり、
傷や欠け等の微視的に見たときに鋭角的な部分が存在し
ないように処理する事である。この処理は、従来から行
われている、研削研磨による方法や、酸処理などによる
表面エッチングや、火炎や熱風による表面の軟化光揮処
理等により行われる。
【0186】更に第3の工程を実施することにより、成
形素材を型ユニットの成形面と非接触の状態で加熱軟化
する事が可能となるため、型ユニット上に、成形後に成
形面に影響が出ることが無い、無欠陥の表面が非常に滑
らかな状態の軟化した成形素材塊を得る事が出来る。こ
の時、成形素材が103〜109dPa・sの粘度を示す
温度まで成形素材を加熱する事により、次の第4の工程
につなげることが可能となる。
【0187】次に第4の工程においても型の成形面から
流体を噴出させながら型ユニットを閉じる事により、成
形面と成形素材の接触を防ぐ事が可能となり、次工程で
の補正された形状の精密素子を得ることが容易になるよ
うな形状を有した、表面に欠陥の全く無い予備成形品を
得ることが出来る。この工程に於いて得る予備成形品の
形状は、次工程でのプレス時に、成形素材が大きな変形
を起こさずに、変形が成形素材の流動ではなく、見かけ
上、ほとんど曲げによる変形であるかのような微少な変
形で事足りるような形状である事が望ましい。この為
に、予備成形品の形状は、次の工程で得る補正された形
状の精密素子のプレスの加圧方向の肉厚に対し、それよ
りも0〜3%厚くするか、又は肉厚より0.5mmを超
えない範囲の厚さで、また、外径も同様にほとんど同じ
かごく僅かに小さな形状である事が望ましく、次工程で
の加圧力が予備成形品全体に出来るだけ均等にかかり、
変形量がどこでも出来るだけ同じとなるような、成形面
と相似した形状である事が望ましい。また、このような
形状にする事により、次工程での成形が実質的に曲げを
主体とする変形となり、成形面を形成する多孔質の材料
の穴部の微細な転写が抑制され、穴部の形状が残ら無い
表面を有する精密素子を得る事が出来るようになる。更
にこの工程において型ユニットを閉じる速度、タイミン
グ、圧力、及び噴出させる流体の流量・圧力、温度等を
確実に再現する事により、再現性のある安定した形状の
予備成形品を得る事が出来る。これは、型ユニットを、
成形素材が103〜109dPa・sの粘度を示す温度範
囲の時に閉じ、予備成形品の形状を得た時の流体の膜厚
が20ミクロン以下、より安定した形状の予備成形品を
得る場合は、10ミクロン以下になるように流体の圧力
と流量を制御し、又、同時に型を閉じる圧力及び速度も
流体の膜厚を前記の範囲内に収まるように成形素材の温
度に逆比例させながら制御する事により成形素材を成形
面の補正された形状にならわす事により達成される。ま
た、この型ユニットを閉じるときの動作は成形素材の温
度に対応して制御される事が望ましく、各々の動作にお
ける温度のばらつきは10℃以下、望ましくは5℃以下
とし、同様に噴出させる流体の温度も同じ範囲に収める
事が望ましく、流体の流量及び圧力のばらつき及び型ユ
ニットを閉じる速度と圧力のばらつきは5%以内、望ま
しくは3%以内とする事により、型ユニットの成形面の
形状をより安定して転写する事が可能となる。
【0188】次の第5の工程は、前記工程で得た予備成
形品を型部材の成形面に接触させ、補正を施された成形
面の形状を正確に予備成形品に転写し、冷却完了後の精
密素子の形状を確定するために行われる物であり、予備
成形品の表面が、細かな形状を転写しないような条件の
もとで、プレス成形が行われる。これは、前述のような
材料・材質から作られている型部材の成形面の流体の噴
出孔である多孔質の穴部の形状を転写しないように、予
備成形品の表面近傍の粘度が高くなった時点で、具体的
には107.6dPa・s以上の粘度となった時に、予備
成形品と型部材の成形面を接触させた状態で圧力を加え
て形状を修正し、補正された成形面の形状を予備成形品
に転写させる事であり、この時の圧力も同様に、穴部の
形状を転写しないような圧力、具体的には5MPa以
下、好ましくは2MPa以下である事が望ましい。但
し、この圧力は成形素材の粘度と穴部の形状が前述のよ
うな時の圧力であり、粘度が高いときや、穴部の大きさ
が更に細かいときには、もっと高い圧力を加えることも
可能である。
【0189】次の第6の工程での第1の冷却は、成形素
材の粘度を制御し、型ユニットの成形面の補正された形
状を成形素材に転写させ安定した形状の予備成形品を得
るために行われるものであり、安定した形状の予備成形
品が得られるように、成形素材の粘度と流体の膜厚を制
御しながら徐々に冷却を行う。この第1の冷却完了時に
おいて、予備成形品が成形面との間に厚さを制御された
流体の膜を挟んで成形される事により、次工程に必要な
予備成形品の形状精度が確保される。また、この第1の
冷却完了時点では、成形素材や型ユニットや流体の温度
等は前述の範囲内に収めておく事が望まれる。更にその
後の第2の冷却は第2の冷却より速い速度で行うことが
出来、ここでの冷却は、一旦転写された補正形状が、冷
却により補正前の形状、つまり精密素子の本来の所望す
る形状に一致し、更に連続成形において冷却収縮等によ
りばらつきが生じないように行われるものである。その
為には、冷却開始温度や冷却時の冷却速度や温度分布等
の諸条件を正確に再現する必要がある。この再現性は、
上記と同様に冷却開始時から成形素材の粘度で10 12
Pa・sを示す温度の範囲での温度のばらつきとして1
0℃以下、望ましくは5℃以下とする事により安定した
形状の再現性が得られる。また、この時の冷却速度や冷
却時の温度分布は、成形素材に割れや、大きな複屈折等
による欠陥を生じない範囲で成形面の補正形状を決定す
る時に定められるものである。
【0190】次の第7の工程は、形状転写後の型部材の
成形面と成形素材の熱収縮量の違いによる、冷却時の形
状のズレを補正する工程である。これは、通常、加圧変
形できる温度状態の成形素材は粘着力があり、特に型部
材の成形面が精度よく鏡面状態に仕上げられて、その面
状態を転写させるような成形に於いては、この力が成形
素材の表面と成形面との間に強い密着力として働く。こ
の力は接触面の形状や接触面の界面の微細な状態に左右
され易く、それ故その力の大きさは不安定であり、その
分布状態も不均一である為、接触面全体が一様に剥離せ
ずに、部分的に徐々に剥離して行ったり、段階的に剥離
して行き、その結果、出来上がった面状態が不安定で、
場合によっては成形された面が不連続になったりしてし
まい、最終的に所望の形状と一致させる事が出来ないと
いう問題がある。この問題は、少なくとも、型と素材の
間に、転写面を変形させるような大きさの密着力が働い
ている間に、その素子の表面と成形面の密着を維持する
ように、その素子の収縮に合せて型部材を追従させる事
により初めて解決させることが可能となる。
【0191】更に前記の第2の冷却を、この型部材の追
従の工程が完了するまで行い、その後、型ユニットを開
き成形素子を取り出す事(第8の工程)により、所望の
形状に近似した形状を有する成形素子を得ることが出来
る。また、この第2の冷却の終了点、つまり型部材の追
従工程完了時点は、密着力如何により決められる物であ
るが、通常、素材の粘度で101214.5dPa・sで行
われるのが理想的である。
【0192】次の第9の工程で、この所望の形状に近似
した形状を有する成形素子を更に室温迄冷却する事によ
り、熱収縮が起こり、前記素子が所望の形状を有する精
密素子の形状となり、目的とする精密素子を得ることが
出来る。 (第15の実施形態)次に第1の実施形態と全く同じも
のを成形する他の実施形態を述べる。なお、下型11の
成形面11aと上型21の成形面21aは、第6の実施
形態と全く同様にして、ただし最終的な形状転写時の温
度を、ガラス素材が108dPa・sの粘度を示す温度
に設定し形状を求め、加工したものを用いた。
【0193】まず、第1の実施例とまったく同様の方法
により、成形面11a上にガラス塊102aを得た。次
に下型構成部材2を上型構成部材3の直下に移動し、ガ
ラス塊102aの成形面11aで受けている下面近傍の
粘度が106〜107.5dPa・s、その他の表面近傍の
粘度が1036dPa・sであり、中心付近が十分に柔
らかいうちに、成形面11aと成形面21aから噴出す
る窒素ガスの流量を毎分20リッター、温度をガラスの
粘度で106.5dPa・sに相当する650℃となるよ
うに圧力・流量調節器32a,32bとヒータ33a,3
3bをコントローラ41により制御し(第1の冷却開
始)、ガラス塊102aの中心肉厚が3.2mmとなる
まで毎秒5mmの速度で型ユニット1を閉じた。次いで
窒素ガスの温度と流量をガスの膜厚が20ミクロン程度
となる様に、610℃(ガラスの粘度で107.6dPa
・sに相当する温度)と毎分10リッターに設定し、冷
間時のレンズの中心肉厚が3.05mmに相当する位置
になった時に、型ユニット1を閉じ、成形面への圧力が
2MPaとなるように圧力を徐々に上げながら、且つ、
レンズの表面近傍の粘度が107.6dPa・sとなるよ
うに速度を調整しながら型ユニット1を閉じ、予備成形
品を得た。
【0194】さらに、その直後にガスの噴出を停止し、
さらに型ユニット1の成形面に初期に1.5MPa、最
終的に2MPaの力が加わる様に徐々に圧力を上げて閉
じ、予備成形品と型部材の成形面を接触させた状態で、
予備成形品の形状を成形面の形状にならわせた。また、
軟化ガラス塊102aを得た直後から、予備成形品を得
るまでの間に、成形素材への第1の冷却を開始し、予備
成形品を得た直後から第2の冷却を開始した。第2の冷
却は不図示の冷却装置により型ユニット1の外部より、
冷却用の窒素ガスを吹きつけることにより行われ、その
時において、型構成部材2,3への外部からの拘束を解
き、下型部材11及び上型部材21がレンズの収縮に追
従出来るようにした。
【0195】また、第2の冷却開始後すぐに、レンズの
表面近傍の粘度が108dPa・sとなった時点で、成
形面11a,21aから流体を15kPaの圧力で瞬間
的に噴出させると同時に型ユニット1を僅かに開き、レ
ンズを成形面から離型させ、その後直ちに流体の圧力を
1.02kPa、流量をそれぞれ毎分3リッターに設定
し、第3の冷却を行った。
【0196】第3の冷却開始後、レンズの表面近傍の粘
度が1012dPa・s(温度で約515°C)となった
ときに型ユニット1を完全に開き、下型部材11からは
窒素ガスを噴出させたままの状態で、レンズを不図示の
吸着ハンドで取り出した。さらに成形の完了した複数の
レンズを使用条件と同等の温度である20°Cの温度下
において精度を測定したが、全てアスがニュートンリン
グ1.7本、クセがニュートンリング1本以下に収ま
り、通常の使用には十分耐えられる精度を得ることがで
きた。
【0197】なお、この複数回の成形のときの温度及び
加圧・減圧等の動作の切り替えタイミングの再現性は、
温度については第2の冷却完了までの間に全ての温度制
御点において20°Cのばらつきの範囲、その後は30
°Cのばらつきの範囲に収まり、型ユニットの開閉速度
等のばらつきも5%に収まっていたが、さらに条件を多
少振りながら成形を続けた結果、この温度や速度のばら
つきの範囲を越えると精度が悪くなることが確認され
た。
【0198】(第16の実施形態)次に第15の実施形
態と同じ装置、同じ材料を用いて片面がR50mm、も
う一方の面がR40mmを基準とする非球面形状をな
す、レンズの中心肉厚が4.3mm、直径がΦ23mm
である、コンパクトカメラ用の両凸のガラス非球面レン
ズの成形を行った。
【0199】第15の実施形態と同様に、下型部材11
の成形面11aと上型部材21の成形面21aは、成形
前にシミュレーションにより求めた数々の補正を考慮し
た形状に加工し、その後更に実際に成形を行い、その形
状データをもとに最終的な補正を行って形状を決定し
た。具体的には、第17の実施形態と同様に、上型21
の成形面21aの場合、図3Aに示すように、精密素子
であるレンズの標準的な使用条件である20℃における
形状201(R40mmを基準とする非球面形状)に対
し、成形時の形状転写時の温度を、ガラスの粘度で10
12dPa・sを示す温度である515℃に設定し、第1
の補正の量の一部であるガラスの温度膨張による変形量
を算出し、その結果から、この条件下における精密素子
の形状204を求めた。次に第2の補正の量に相当す
る、形状転写後の冷却によるヒケ等による補正量205
を求め、形状転写時の成形面の部分的な形状206を決
定し、更に第1の補正の量の残りの部分に相当する、型
ユニットの成形面の材料の温度収縮による補正の量か
ら、型の冷間時、特に型の成形面の形状を加工する時の
成形面の形状207及び207a(図3Aにおいて20
7と207aのハッチング部分の形状)を求た。そし
て、その形状データにより、上型部材21の成形面21
aを多孔質の穴部のくぼみを除いた面をニュートンリン
グのずれで0.2本以内となるような鏡面状態に加工
し、一旦、シミュレーションで決定した成形条件で実際
にレンズを成形した。次いで、この成形したレンズの形
状を測定し、所定の形状と若干ずれている部分を再度補
正加工して、出っ張りのない平滑な鏡面状態に仕上げ、
最終的な成形面21の形状とした。また、下型部材11
の成形面11aも同様の手法で形状を求め加工した。ま
た、型部材11、21の材料として気孔率が25%であ
り、最大穴径が6ミクロンである多孔質からなるAlO
3を用い、流体にはクリーンなエアーを用いた。なお、
この成形面の表面には、離型層としてカーボン膜を多孔
質の孔が塞がらない様にして蒸着させた。この離型層は
型とガラスの融着を防ぎ、成形面の鏡面性を失うもので
なければ、特にカーボン膜に限定されるものではない。
【0200】次いで、このように加工準備した型部材1
1、21を図1に示す成形装置に取り付け、第15の実
施形態と全く同様にして軟化状態にあるガラス塊102
aを得た。次に下型構成部材2を上型構成部材3の直下
に移動し、ガラス塊102aの下型部材11で受けてい
る下面近傍の粘度が106〜107.5dPa・s、その他
の表面近傍の粘度が1036dPa・sであり、中心付
近が十分に柔らかいうちに、成形面11a,21aから
噴出するエアーの流量を毎分25リッター、温度をガラ
スの粘度で106.5dPa・sに相当する650℃とな
るように圧力・流量調節器32a,32bと加熱ヒータ
33a,33bをコントローラ41により制御し(第1
の冷却開始)、ガラス塊102aの中心肉厚が4.6m
mとなるまで毎秒8mmの速度で型ユニット1を閉じ
た。次いで噴出エアーの温度と流量を600℃と毎分1
5リッターに設定し、冷間時のレンズの中心肉厚が4.
32mmに相当する位置になった時に、型ユニット1を
閉じ、成形面への圧力が4.5MPaとなるように圧力
を徐々に上げながら、更に同時に、レンズの表面近傍の
粘度が107.9dPa・sとなるように速度を調整しな
がら型ユニット1を閉じ、予備成形品を得た。なお、こ
のときのガスの膜厚は8ミクロン程度であった。
【0201】さらに、その直後にガスの噴出を停止し、
さらに型ユニット1の成形面に初期に2MPa、形状が
最初に転写しおわるときに3MPaの力が加わる様に徐
々に圧力を上げて閉じ、予備成形品と型部材の成形面を
接触させた状態で、予備成形品の形状を成形面の形状に
ならわせた。上記の予備成形品を得るまでの間の第1の
冷却の工程に続き、予備成形品を得た直後に第15の実
施形態と同様に第2の冷却を行った。その時において、
予備成形品の形状が型の形状にならった後、型構成部材
2,3に外部から第2の冷却完了時に最終的に8MPa
の圧力となる様に圧力を徐々に加え、型部材11,21
をレンズの肉厚方向の収縮に追従させた。第2の冷却開
始後、レンズの表面近傍の粘度が1012dPa・s(温
度で約515°C)となった時点で、下型部材2と上型
部材3への加圧を解除すると同時に、第15の実施形態
と同様に成形面11a,21aから流体を噴出させ、レ
ンズを成形面から離型させた。その後さらに流量を毎分
7リッターに設定して、第3の冷却を行い、レンズの表
面の温度が498°C(ガラスの粘度で1013dPa・
s)を下回ったときに型ユニット1を完全に開き、下型
部材11からはエアーを噴出させたままの状態で、レン
ズを不図示の吸着ハンドで取り出した。さらにこの成形
を数回繰り返し、またこのときの温度及び加圧・減圧等
のタイミングの再現性は、第2の冷却完了までは10°
C、その後は5°Cの温度範囲に、速度等のばらつきも
3%以内に収まる様に厳密に制御しながら成形を実施し
た。その後、完成した複数のレンズを20°Cの温度下
において精度を測定したが、全てアスがニュートンリン
グ1本、クセがニュートンリング0.5本以下に収ま
り、第15の実施形態以上の良好な結果を得ることがで
きた。
【0202】(第17の実施形態)次に図4に示す型部
材を第17の実施形態で用いた成形装置を用いて、直径
がΦ10mm、凸面の曲率半径がR20mm、凹面の曲
率半径がR30mm、中心部の肉厚が3.3mm、周縁
部の厚さが約3.1mmである凸メニスカス形状のレン
ズを成形した。ここで、図4において、211、221
はそれぞれ下型部材と上型部材であり、それらにはレン
ズの光学面を形成する成形面211aと221aが加工
されている。更に、下型部材211と上型部材221の
外周にはそれぞれレンズの周縁の下部と上部を形成する
成形面216aと226aを有したリング部材216,
226が取り付けられている。また、下型部材211と
上型部材221は、気孔率が15%で最大穴径が15ミ
クロン、リング部材216,226は気孔率が10%で
最大穴径が20ミクロンの多孔質の窒化珪素で作られて
いて、図示せぬ供給装置からそれぞれの圧力室12b,
12c,22b,22cに流体を個々に独立に供給するこ
とができるようになっており、それぞれの光学面の成形
面と周縁部の成形面と成形素材の間の流体の膜厚を独立
に制御出来るようになっている。また、成形素材は、第
6の実施形態と同じガラス材料を用い、流体としては窒
素ガスを用いた。また、離型層として第16の実施形態
と同様のものを用いた。
【0203】この実施形態では、レンズの光学面の成形
面211a,221aと周縁部の成形面216a,226
aの形状は、一旦レンズの冷間での形状を成形面上にそ
のまま加工して予備成形を行い、成形された光学素子の
形状誤差を補正する様に成形面の補正加工量を求め、そ
れを再度成形面の形状に反映して加工し直し、鏡面状態
に仕上げた。また、予備成形における形状転写時の温度
は555℃(ガラスの粘度で1010dPa・s)として
実施した。
【0204】次いで、このように準備した型部材21
1,221,216,226を第17の実施形態と同様に
図1に示す成形装置に取り付け、同様の方法で軟化ガラ
ス塊を得た。この時の窒素ガスの温度は、ガラスを成形
面211aに受ける時はガラスの転移点付近の温度であ
る500℃に、その直後にはガラスの粘度で107.3
Pa・sに相当する温度である620℃になるように温
度を調整し、更に窒素ガスの流量は、溶融ガラス102
を成形面211aに受ける直前までは、成形面211a
で毎分18リッター、成形面216aで毎分8リッタ
ー、その後はどちらも毎分5リッターとなるように制御
した。
【0205】次に下型構成部材2を上型構成部材3の直
下に移動し、ガラス塊102aの下型部材211で受け
ている下面近傍の粘度が105.6〜107dPa・s、そ
の他の表面近傍の粘度が103〜105.6dPa・sであ
り、中心付近が十分に柔らかいうちに、成形面211
a,221aから噴出する窒素ガスの流量を毎分20リ
ッター、成形面216a,226aからの流量をそれぞ
れ毎分14リッター、12リッターとし、温度をガラス
の粘度で105.8dPa・sに相当する680℃となる
ように設定し(第1の冷却開始)、更に下型構成部材2
と上型構成部材3が互いに逆回転となるような回転方向
で、回転数が200rpmとなるように徐々に回転速度
を上げながら、ガラス塊102aの中心肉厚が3.5m
mとなるまで毎秒8mmの速度で型ユニット1を閉じ
た。次いで、下型構成部材2と上型構成部材3の回転を
保った状態で、窒素ガスの温度を610℃、成形面21
1a,221aからの流量を膜厚が12ミクロン前後と
なる様に毎分15リッター、成形面216a,226a
からの流量がそれぞれ毎分12リッター、11リッター
となるように設定し、冷間時のレンズの中心肉厚が3.
33mmに相当する位置になった時に、型ユニット1を
閉じる圧力が成形面で2.5MPaとなるように圧力を
徐々に上げながら、更に同時に、レンズの表面近傍の粘
度が107.6dPa・sとなるように速度を調整しなが
ら型ユニット1を閉じ、予備成形品を得た。
【0206】さらに、その直後にガスの噴出と回転を停
止し、レンズの表面近傍の粘度が108.5dPa・sと
なったときに、さらに型ユニットの成形面に10MPa
の圧力を加えて閉じ、予備成形品と型部材の成形面を接
触させた状態で加圧をし、予備成形品の形状を成形面の
形状にならわせた。上記の予備成形品を得るまでの間の
第1の冷却の工程に続き、予備成形品を得た直後に第1
5の実施形態と同様に第2の冷却を行った。その時にお
いて、予備成形品の形状が方にならった後更に型構成部
材2,3に外部から成形面に第2の冷却の完了時に最終
的に7.5MPaとなる様に圧力を徐々に減じて行きな
がら、型部材11,21をレンズの肉厚方向の収縮に追
従させた。冷却開始後、レンズの表面近傍の粘度が10
10dPa・s(温度で約555°C)となったときに、
成形面11a,21aから第17の実施形態と同様に流
体を噴出させ、同時に型構成部材2,3への加圧を解除
し、レンズの離型を行った。その後すぐに流体の温度を
150°C、流量をそれぞれ毎分5リッターとし、同時
に型構成部材2,3の回転を、それぞれの向きが逆方向
となるような回転方向で、150rpmの速度で回転さ
せ、流体の膜厚の均一化を図りながら第3の冷却を実施
した。ガラスの粘度が1013dPa・sを越えたところ
で型構成部材2,3を停止すると同時に、型ユニット1
を開き、レンズを取り出し、室温まで冷却した。更に成
形の完了した複数のレンズを使用条件と同等の温度であ
る20℃の温度下において精度を測定したが、全てアス
がニュートンリング1.2本、クセがニュートンリング
0.5本以下に収まり、十分な精度を得ることができ
た。
【0207】また、この複数回の成形の時の温度及び加
圧・減圧等の動作の切り替えタイミングの再現性は、第
15の実施形態と同様の範囲に収まっており、また、型
ユニットの開閉速度及び下型構成部材2と上型構成部材
3の回転数等のばらつきも5%に収まっていたが、更に
条件を多少振りながら成形を続けた結果、この温度や速
度のばらつきの範囲を超えると精度が悪くなることが確
認された。
【0208】なお、これら前述の実施形態では、流体に
圧縮性流体を用いているが溶融塩のような非圧縮性流体
を用いても同様の効果が得られることは言うまでもな
い。以上説明したように、上記の第15乃至第17の実
施形態によれば、成形品と型の成形面との接触に起因す
る融着や面の転写不良及び成形面の劣化を回避すること
が出来、更に型の成形面と成形品の熱膨張差に起因する
形状転写不良を回避することが可能となり、更に研削研
磨等の加工方法により発生する、研削研磨屑等の廃棄物
を極端に削減することが可能となり、光学レンズ等の精
密素子を大量に安価に提供することができる。
【0209】以上第15乃至第17の実施形態をまとめ
ると、第22の方法においては、第1の工程は、精密素
子の成形形状転写時と精密素子の使用時や型ユニットの
加工時の温度における精密素子と型ユニットとの熱膨張
差による形状の相違量を含めた熱収縮量の補正や、成形
及び冷却時の不均一な熱分布に起因する精密素子のヒケ
の発生位置と量を前もって成形型で補正しておく事によ
り、成形された精密素子が所望の形状を得られるように
する事であり、この際に、予備成形品を得る時の成形面
と予備成形品との間に存在する流体の厚さも補正してお
く事も必要である。また、型ユニットの成形面を多孔質
の材料で作り、その成形面から成形素材に向けてエアー
やN2ガス等の流体を噴出させ、成形面表面にごく薄い
流体膜を形成する事で高温の軟化状態の成形素材と成形
面の接触を防ぐ事が出来る。この目的のためには、多孔
質の最大穴径が20ミクロン以下、望ましくは10ミク
ロン以下で気孔率が10〜35%の材料からなり、材質
には耐酸化性のあるアルミナや窒化珪素、炭化珪素等の
セラミックや、多孔質カーボン等を用い、更に成形面の
表面は、流体膜が破れ、成形素材に傷を付けないように
し、更に補正された形状の精密素子を得る段階での、成
形面と予備型品の接触時の転写性を確保するためには、
出っ張りの無い平滑な鏡面状で、精密素子の機能を確保
できる所望の面精度に加工されている事が必要となる。
【0210】次に第2の工程により、型と成形素材の接
触、特に溶融軟化された形状が不定の状態の成形素材を
ノズルから流出させ型ユニットに供給する時に発生しや
すい成形素材と型ユニットの成形面との接触を防ぐ事が
出来、更にこの時に、一時的に噴出する流体の温度を下
げたり流量を増やすことにより、接触を確実に防ぐ事が
出来る。また、型ユニットの成形面上に供給された成形
素材を前記ノズルから切断分離する際に、型ユニット上
に成形素材を必要量を受け止めた後、型ユニットを一旦
下降させ、ノズルより流出する成形素材と型ユニット上
の成形素材との間にくびれを発生させ、更に成形素材の
自重と表面張力によりくびれを発達させ分離を行う事に
より、型ユニット上に、成形後に影響がでるような欠陥
の全く無い、表面が非常に滑らかな成形素材塊を得るこ
とが出来る。
【0211】次に第3の工程においても型の成形面から
流体を噴出させながら型ユニットを閉じる事により、成
形面と高温の成形素材の接触を防ぐことが可能となり、
次工程での補正された形状の精密素子を得る事が容易に
なるような形状を有した、表面に欠陥の全く無い予備成
形品を得ることが出来る。この工程に於いて得る予備成
形品の形状は、次工程でのプレス時に、成形素材が大き
な変形を起こさずに、変形が成形素材の流動ではなく、
みかけ上、ほとんど曲げによる変形であるかのような微
少な変形で事足りるような形状である事が望ましい。こ
の為に、予備成形品の形状は、次の工程で得る補正され
た形状の精密素子のプレスの加圧方向の肉厚に対し、そ
れよりも0〜3%厚くするか、または肉厚より0.5m
mを超えない範囲の厚さで、また、外径も同様にほとん
ど同じか極僅かに小さな形状であることが望ましく、次
工程での加圧力が予備成形品全体に出来るだけ均等に掛
かり、変形量がどこでもできるだけ同じとなるような、
成形面と相似した形状である事が望ましい。また、この
ような形状にする事により、次工程での成形が実質的に
曲げを主体とする変形となり、成形面を形成する多孔質
の材料の穴部の微細な転写が抑制され、穴部の形状が残
ら無い表面を有する精密素子を得る事が出来るようにな
る。更にこの工程に於いて型ユニットを閉じる速度、タ
イミング、圧力、及び噴出させる流体の流量・圧力、温
度等を確実に再現することにより再現性のある安定した
形状の予備成形品を得ること事が出来る。これは、型ユ
ニットを、成形素材が103〜109dPa・sの粘度を
示す温度範囲の時に閉じ、予備成形品の形状を得た時の
流体の膜厚が20ミクロン以下、より安定した形状の予
備成形品を得る場合は、10ミクロン以下になるように
流体の圧力と流量を制御し、又、同時に型を閉じる圧力
及び速度も流体の膜厚を前記の範囲内に収まるように成
形素材の温度に逆比例させながら制御する事により成形
素材を成形面の補正された形状にならわすことにより達
成される。また、この型ユニットを閉じる時の動作は成
形素材の温度に対応して制御されることが望ましく、各
々の動作における温度のばらつきは10℃以下、望まし
くは5℃以下とし、同様に噴出させる流体の温度も同じ
範囲に収めることが望ましく、流体の流量及び圧力のば
らつき及び型ユニットを閉じる速度と圧力のばらつきは
5%以内、望ましくは3%以内とする事により、予備成
形品の形状をより安定して得る事が可能となる。。
【0212】次の第4の工程は、前記工程で得た予備成
形品を型部材の成形面に接触させ、補正を施された成形
面の形状を正確に予備成形品に転写し、冷却完了後の精
密素子の形状を確定するために行われる物であり、予備
成形品の表面が、細かな形状を転写しないような条件の
もとで、プレス成形が行われる。これは、前述のような
材料・材質から作られている型部材の成形面の流体の噴
出孔である多孔質の穴部の形状を転写しないように、予
備成形品の表面近傍の粘度が高くなった時点で、具体的
にはガラスの軟化温度である107.6dPa・sの粘度
を示す温度以下になった時に、予備成形品と型部材の成
形面を接触させた状態で圧力を加えて形状を修正し、補
正された成形面の形状を予備成形品に転写させる事であ
り、この時の圧力も同様に、穴部の形状を転写しないよ
うな圧力、具体的には5MPa以下、好ましくは2MP
a以下である事が望ましい。但し、この圧力は成形素材
の粘度と穴部の形状が前述のような時の圧力であり、粘
度が高い時や、穴部の大きさが更に細かい時には、もっ
と高い圧力を加える事も可能である。
【0213】次の第5の工程は、補正された形状の成形
面と密着している補正形状の精密素子を、成形面の多孔
質の穴から流体を再度噴出させ、成形面から精密素子を
浮上させる力を与えると同時に、必要に応じて外部から
も成形面から精密素子を引き離す力を与えて離型させ、
精密素子と成形面との間に空隙を設ける工程であり、こ
の工程の目的は、一旦成形され補正された形状を有する
精密素子の形状が、冷却時の型と成形素材の収縮差によ
り劣化をするのを防ぐ為に行われるものであり、成形素
材が成形面と離れても自重や他の外力により変形しにく
く、かつ型と素材の収縮量の差が大きくならない温度範
囲で実施される。具体的な温度範囲は、上限に対しては
成形面との離型行為や次工程の非接触状態での冷却の初
期に変形を起こさない粘度である、108dPa・s以
上、望ましくは109dPa・s以上の粘度となる温度
以下で行うことが必要である。又、下限の温度は、熱収
縮量の差が大きくなり、成形素材が型の収縮に追従でき
なくなる温度以上であれば良く、成形素材と型の膨張率
の差に大きく左右されるが、通常、成形素材が1012
Pa・s以下の粘性を示す温度以上であることが望まし
い。また、この工程の離型動作を容易にするために、型
の成形面の表面がカーボンや白金等に代表される成形素
材との濡れ性の悪い材料で作られていることがよりよい
結果をもたらす。
【0214】次の第6の工程での第1の冷却は、成形素
材の粘度を制御し、型ユニットの成形面の補正された形
状を成形素材に転写させ安定した形状の予備成形品を得
るために行われるものであり、第1の冷却の完了時に前
述の流体の膜厚になるように、成形素材の粘度を制御し
ながら徐々に冷却を行う。この第1の冷却完了時におい
て、予備成形品が成形面との間に厚さを制御された流体
の膜を挟んで成形される事により、次工程に必要な予備
成形品の形状精度が確保される。また、この第1の冷却
完了時点では、成形素材や型ユニットや流体の温度等は
前述の範囲内に収めておく事が望まれる。更にその後の
第2の冷却は、一旦接触により転写された補正形状が、
成形素材がほぼ固まり、離型時において形状が変化しな
いような前述の温度まで行われ、更に連続成形において
形状のばらつきが生じないように行われるものである。
その為には、冷却開始温度や冷却時の冷却速度や温度分
布や、特に離型時である冷却完了時の温度及び温度分布
を正確に再現する必要がある。この時の再現性は、離型
時までの温度のばらつきとして20℃以下、望ましくは
10℃以下とする事により安定した形状の再現性を得る
事が可能となる。また、この時の冷却速度や冷却時の温
度分布は、成形素材に割れや、大きな複屈折等による欠
陥を生じない範囲で成形面の補正形状を決定する時に定
められるものである。更に、その後の第3の冷却は第
1、第2の冷却より速い速度で行うことが出来、ここで
の冷却は、一旦離型前までに転写された補正形状が、冷
却により補正前の形状、つまり精密素子の本来の所望す
る形状に一致し、更に連続成形において冷却収縮により
ばらつきが生じないように行われるものである。そのた
めには、補正形状を決定した時の第3の冷却開始温度
(=離型温度)や冷却時の温度分布などの諸条件を正確
に再現する必要がある。この再現性は、上記と同様に冷
却開始時から成形された精密素子が変形を発生させにく
くなる粘度である10 12dPa・sを示す温度、より精
密な転写性を要求されるものや、複雑な形状のものに対
しては成形素材が歪を新たに発生させない粘度である1
14.5dPa・s迄の温度のばらつきとして30℃以
下、望ましくは15℃以下とする事により安定した再現
性が得られる。又、この時の冷却速度や冷却時の温度分
布は、成形素材に割れや、大きな複屈折等による欠陥を
生じない範囲で補正形状を決定する時に定められるもの
であるが、転写した形状が自重や流体の圧力により変形
を起こさないようにするためには、精密素子の表面を毎
分20℃以上の速度で冷却する事が望ましく、また、流
体の圧力や流量にも急激な変化を与えないようにする事
が望ましい。以上のような冷却を経ることで、この工程
の終了時には型ユニットの成形面の形状と成形された精
密素子の形状はそれぞれの膨張率の差の分の補正量や、
予め見込んでおいたヒケに対する補正量のために完全に
一致しないが成形面と非接触状態にあるため、精密素子
の形状は型ユニットの成形面の形状に左右される事な
く、所望の形状を維持できる。
【0215】次の第7の工程は、第2の冷却中での形状
転写時の型部材の成形面と成形素材の熱収縮量の違いに
よる、形状のズレを補正する工程である。これは、型部
材の成形面が精度よく鏡面状態に仕上げられて、その面
状態を転写させるような成形においては、型部材と成形
素材とに冷却中の収縮量の違いがあると、成形した形状
が冷却中に不均一に成形面に接触し、その時々の温度の
型の成形面の形状を部分的に転写し、離型後の精密素子
の成形面がいびつになったり、不連続な面形状になった
りしてしまい、本来の所望とする面形状を得ることが出
来なくなってしまうと言う事を防ぐための工程であり、
この型と精密素子の接触冷却中に型の成形面を精密素子
の表面に、精密素子の肉厚方向の収縮に追従する様に密
着させておく事で始めて解決することが出来る。なお、
この精密素子の表面への型部材の追従には、成形面と精
密素子の間の密着力を利用して行っても良いが、より確
実性を増し、精密素子の形状に左右されないようにする
ためには、型部材に外部から圧力を加える事によって行
う事が望ましい。
【0216】最後の第8の工程で、上記のようにすでに
固化している精密素子を型ユニットから取り出すことに
より、所望の形状を転写された精密素子を得る。この時
も精密素子と型ユニットの成形面との間には、流体によ
る膜が介在しているようにする事により、精密素子の表
面に成形面との接触による傷などの発生を防ぐと同時
に、成形面も固化した精密素子との接触による損傷を防
ぐ事が出来る。
【0217】また、第23の方法においては、前記成形
面の予め補正された形状を、成形素材の温度、粘度、及
び型ユニットに与えられる圧力、温度、及び成形素材と
多孔質の材料で作られた型部材の熱膨張率等を成形条件
のパラメーターとしてシミュレーションし、事前に成形
される精密素子の形状を予測し、それを基に型ユニット
の成形面の形状を補正しておく事により、高精度な形状
及び面精度を有する精密素子を得る事ができる。この補
正は、型部材と成形素材の熱膨張差に伴う第1の補正
と、成形素材の冷却に伴うヒケ等をキャンセルするため
の第2の補正を組み合わせたものであり、成形型の成形
面の形状加工時にこの補正を行うことで、成形が完了し
型ユニットより取り出し、更に冷却の完了した時点の精
密素子の形状を所望の形状と一致させる事が出来る。
【0218】ここで第1の補正は、形状転写時と型部材
の形状加工時や精密素子の使用時の温度差、及び型部材
と成形素材の熱膨張率の違いから発生する、型部材の成
形面と精密素子の形状のズレ量の補正であり、具体的に
は、所望の精密素子の使用温度での形状を、第2の冷却
の際の型部材の追従が終わる最終的な形状転写温度まで
の温度差による精密素子の形状変化量を成形素材の膨張
率で算出し、更にその精密素子の形状変化量を最終的な
形状転写温度から型ユニットの成形面の加工時の温度差
までの型部材の形状変化量として型部材の膨張率で算出
した量を型部材の成形面の形状の第1の補正の量とする
ものである。第2の補正は、特に精密素子が形状を転写
した後に、型内及び型からの取り出し後の冷却による収
縮やヒケ等による部分的な変形を含めた変形量の補正で
あり、主に冷却時に刻々と変化する流体や型ユニットの
温度と成形素材の保有熱と温度伝導率に支配される、成
形素材自体の温度分布とそれに伴うその時々の粘度分布
と熱膨張率とそれらにより算出される応力と、成形素材
独自の応力緩和係数によりヒケの量を算出し、更にその
量に、その時々の成形素材の自重や流体の圧力変化等に
よる形状の変化量を算出して加算したものを第2の補正
の量とするものである。
【0219】また、第24の方法においては、予め所望
する精密素子の最終形状に近似した形状を有する素子を
成形し、その成形中及び成形終了後の成形、形状データ
から得られた情報を型部材の成形面の形状へフィードバ
ックする事により、高精度な形状及び面精度を有する光
学素子等を得る事ができる。この補正方法は、最初に精
密素子の形状とほぼ同等の形状の成形面を有する型ユニ
ットを用いて、予め設定し、固定された諸条件下で素子
を一旦成形し、成形完了後の使用条件と同じ状態の素子
の形状と、使用した型ユニットの成形面の形状を比較
し、そこで判明した形状の相違量を、基本的には型ユニ
ットの成形面への補正量として用い、成形条件の変更で
補正出来るような単純な補正の場合は、成形条件をも修
正する事により、成形した精密素子を所望の形状に一致
させることが可能となる。また、この補正を数回繰り返
すことにより、より精度のよい安定した形状を得る事も
可能となり、更に前述のシミュレーションによる型ユニ
ットの成形面の補正方法を組み合わせて実施する事で同
様の効果を得る事が出来る。
【0220】また、第25の方法においては、前記成形
面の多孔質部より噴出する流体の温度を制御する事によ
り、成形素材の温度を制御する事ができる。これは、成
形素材が型ユニットと非接触状態にある事や、成形素材
が型ユニットに覆われており、外部から成形素材の温度
を測定することが実質上不可能であるが、成形素材に直
接に接触する流体の温度を制御し、その伝熱により成形
素材の温度を間接的に制御する事で解決され、また、こ
うする事により、成形素材に対して、より応答性の良い
確実な温度制御を行うことが出来る。ここで、流体の温
度の制御方法としては、流体を供給源の近傍で直接に加
熱温調して用いる事でも十分に目的を達成することが出
来るが、一旦前述の様に加熱温調した流体を更に流体が
成形素材に触れる直前の流体の通路である型ユニット等
に組み込まれたヒーター等の加熱源により、再度温調を
かけ直して用いることで、より良好な成形素材への温度
制御を実現することが可能となる。
【0221】また、第26の方法においては、成形素材
の粘度に合わせ成形型の成形面より噴出させる流体の噴
出圧力と流体の流量と、型ユニットへの加圧力を制御す
る事により、高精度な形状及び面精度を有する光学素子
を得る事ができる。ここで、成形素材の硬さに相当する
粘度変化に同調させて、流体の流量や圧力と型ユニット
への加圧力を制御する事により、型ユニットの成形面と
成形素材の間の流体の膜厚を確実に安定させて制御する
事が出来、その結果、予備成形品及びその後の完成した
精密素子が、より一層、高精度で、かつ連続成形時にお
いてもばらつきの少ない安定した形状を得る事が可能と
なる。
【0222】また、第27の方法においては、成形面の
形状に近似した形状を有する予備成形品を得る際及び形
状転写後の型内での冷却の際に、型ユニットを構成する
型部材を成形素材に対し回転摺動させ、成形素材と成形
面との間に存在する流体の圧力分布を制御する事によ
り、高精度な形状及び面精度を有する光学素子等を得る
事が出来る。これは、加圧成形中に型部材を成形素材に
対して回転摺動させる事により、成形素材と型部材の成
形面との間の流体の膜厚を均一化する事が容易となり、
より高精度な精密素子を得る事が出来るようになり、特
に回転軸を中心とした軸対象に膜厚が容易に均一化する
事により、レンズ等の機能面が軸対称の形状の球面を基
本とする形状の精密素子に対しては大きな効果を発揮す
る事が可能となる。
【0223】(第18の実施形態)図6は本発明の第1
8の実施形態の成形方法を示すための型構造の図であ
る。符号301は上型の第1型部材、符号302は下型
の第1部材、符号303は上型の第2型部材、符号30
4は下型の第2型部材、符号305は第2型部材303
を固定するためのリング、符号306は第2型部材30
4を固定するためのリング、符号307,308はガス
の通路、符号309は成形品を示す。
【0224】図7は成形品を芯取りして得た光学素子3
10を示す。レンズ成形用素材としてSK12(nd=
1.58313,νd=59.4,Tg=506℃,A
t=538℃)を用い、これによってプリフォームとし
て直径12mm、中心厚7mmのゴブ(ガラス塊)を作
成した。この素材からR1=16.45mm、R2=1
6.86mm、中心厚=4.5mm、光線有効径=Φ1
2mm、外径=Φ14mmの両凸レンズを作成する。
【0225】図6に示す型の製造方法としては超硬合金
よりなる型部材301,302に放電加工でガスの通路
307、308を形成した。さらに多孔質アルミナ、多
孔質ジルコニア、多孔質炭化珪素、多孔質ステンレス、
多孔質炭素等からなる型部材303,304をレンズ面
以外を加工して、型部材301,302に嵌合挿入し
た。さらに固定用のリング305,306を挿入し不図
示の固定ピンで型部材同士を固定した。最後にレンズ面
を研削研磨加工して仕上げた。
【0226】第2部材303,304の内径はΦ12.
2mmで光学素子の光線有効径よりわずかに大きくし
た。N2雰囲気下の成形装置内のプレス軸に上記型を取
付け、上下型間にガラス素材を投入し、型とガラスを加
熱して580℃に加熱した。つぎに上型を下降させてプ
レスを開始した。型部材301,302によってガラス
が変形を開始した後にN2ガスを型部材303,304に
流し込み、上下型の隙間から成形室内に放出するように
した。N2ガスは通路307,308に入る前に不図示の
ヒータにより型温度と同等に加熱する。またガスの流量
は不図示の流量調整器で制御する。
【0227】変形が完了した後、型温度とガス温度を同
等に保ちながら冷却し、200℃まで冷却したところで
上型を上昇させて型とガラスを離型した。取り出した成
形品の外観を顕微鏡で観察したところ第1の型部材に対
応する部分は微細な型の表面あらさを転写していたが、
第2の型部材に対応する部分は型の接触痕が全くなく滑
らかな状態であって型とガラスが非接触の状態で形成さ
れたことがわかった。成形品を芯取り加工して光学素子
310を得た。得られた光学素子は光線有効径内は設計
値に対しニュートンリング0.5本の精度を有してい
た。また光線有効径外は所定の曲面からのズレは5μm
前後であったが、機械的な精度としては十分な値であっ
た。
【0228】上記プロセスを500ショット連続で行い
その結果を図8にまとめた。型部材303,304の材
質および気孔率、ガス流量に関して各種条件で500シ
ョットおこなったが全て外観品質は融着が無く、形状精
度に関しても良好な結果を得られた。(第19の実施形
態)第18の実施形態と同じ装置、型、ガラスを使用し
て同様のプロセスで両凸レンズを形成した。第18の実
施形態では離型温度は200℃としたが、ここでは離型
温度500℃にして成形時間を短縮することを目的とし
た。相違点としては変形が完了した後は上型の第2型部
材に供給するガスの温度だけを低下させて第2型部材か
ら放出されるガスの温度が、下型の第2型部材から放出
されるガスの温度より10℃低く保たれるように、ガス
の温度を制御した。型温度が500℃まで低下した時点
で上型を上昇させて型とガラスを離型した。成形品は下
型上に残っていたので直ちにオートハンドで取り出すこ
とができた。その結果連続的に成形を500ショット繰
り返すことが出来た。このことは、低い温度で離型させ
る場合には問題はないがTg点近くのような高い温度で
離型させる場合には、上下のガスの温度差を持たせるこ
とで成形品が必ず下型に残るように制御できることを示
している。
【0229】上型と下型のガスの温度差を変えて連続成
形ができるかどうかを調べた。比較例として温度差が無
いかまたは少ない場合には離型した時に成形品が上型に
付着した状態になることがありその後のオートハンドに
よる取り出しに支障を生じ、連続成形ができなかった。
ガスの温度差と離型性の関係を図9に示す。 (第20の実施形態)図10は第20の実施形態の成形
方法を示すための型構造の図である。符号311は上型
の第1型部材、符号312は上型の第2型部材、符号3
13は下型、符号314はガスの通路、符号315は成
形品を示す。
【0230】図11は成形品を芯取りして出来た光学素
子316を示す。レンズ成形用素材としてLaK12
(nd=1.67790,νd=54.9,Tg=56
2℃,At=593℃)が用いられ、これによってプリ
フォームとして直径23mm、中心厚12mmのゴブ
(ガラス塊)を作成した。この素材からR1(凹)=1
4.232mm(非球面)、R2(凸)=155.3m
m、中心厚=1.5mm、外径=Φ29mm、R1の光
線有効径=Φ20mm、R2の光線有効径=Φ27mm
でR1側に45度の面取りをした凹メニスカスレンズを
作成する。
【0231】図10に示す型の製造方法は超硬合金から
なる型部材311に放電加工でガスの通路314を形成
した。さらにモリブデンよりなる型部材312を型部材
311にネジ止めした。第1型部材の非球面加工部分の
外径は23mmで、第2型部材の内径は24mmとしガス
が通過することを目的として型部材311と型部材31
2の隙間は幅0.5mmとした。第2型部材のレンズ成
形面は45度のテーパー面とした。
【0232】N2雰囲気下の成形装置内のプレス軸に上
記型を取り付け、上下型間にガラス素材を投入し、型と
ガラスを加熱して625℃に加熱した。次に上型を下降
させてプレスを開始した。型部材311,313によっ
てガラスが変形を開始した後にN2ガスをガス通路31
4に流し込み型部材311と312の隙間から成形室内
に放出するようにした。N2ガスの温度は通路314に
入る前に不図示のヒータにより型温度と同等に加熱して
いる。またガスの流量は不図示の流量調整器で制御す
る。
【0233】変形が完了した後、型温度とガラス温度を
同等に保ちながら冷却し、200℃まで冷却した所で上
型を上昇させて型とガラスを離型した。取り出した成形
品の外観は融着などの欠陥が無く、凹面側はΦ22の範
囲で上型311と接触しており、Φ24.5からΦ30
までは型部材312によって45度のテーパー面が形成
されていた。また、Φ22からΦ24.5の間は完全な
自由表面であった。成形品を芯取り加工して光学素子3
16を得た。得られた光学素子は設計値に対し凹面側
(非球面)は0.3μmのずれ、凸面側(球面)はニュ
ートンリング0.5本の精度を有していた。外周部の4
5度のテーパー面は設計値からのズレが3μm前後で機
械的な精度としては十分な数値であった。
【0234】上記プロセスをガスの流量を変えてそれぞ
れ500ショット行いその結果を図12にまとめた。全
て外観品質は融着が無く、形状精度に関しても良好な結
果を得られた。比較のためにガスを流さずに成形を行っ
たが20ショットで第2型部材312にガラスが融着し
成形が不可能となった。 (第21の実施形態)図13は第21の実施形態の成形
方法を示すための型構造の図である。符号317は上
型、符号318は下型の第1型部材、符号319は下型
の第2型部材、符号320は固定用のリング、符号32
1はガスの通路、符号322は成形品を示す。図14は
成形された光学素子323を示す。光学素子323は芯
取り加工をせず、成形されたままの状態で鏡筒に組み込
むことが出来た。
【0235】レンズ形成用素材としてLaF010(n
d=1.73310,νd=49.4,Tg=571
℃,At=600℃)を用い、これによってプリフォー
ムとして直径10.6mmの球を作成した。上記素材か
らR1=18.5mm、R2=16.4mm、中心厚=
5mm、光線有効径=Φ12mm、R2両側の外径がΦ
13mmに規定された両凸レンズを作成する。
【0236】図13に示す型の製造方法としては超硬合
金からなる型部材318に放電加工でガスの通路321
を形成した。さらに球面研磨をした後に炭素膜をコーテ
ィングした。さらに多孔質炭素よりなる型部材319を
型部材318に嵌合挿入した。さらに固定用のリング3
20を挿入し、不図示の固定ピンで型部材同士を固定し
た。第2型部材319の内径はΦ13で、成形品の芯取
り加工を不要にした。
【0237】N2雰囲気下の成形装置内のプレス軸に上
記型を取り付け、上下型間にガラス素材を投入し、型と
ガラスを加熱して640℃に加熱した。次に上型を下降
させてプレスを開始した。型部材317,318によっ
てガラスが変形を開始した後にN2ガスをガス通路32
1に流し込み型部材317と319の隙間から成形室内
に放出するようにした。N2ガスの温度は通路321に
入る前に不図示のヒータにより型温度と同等に加熱す
る。
【0238】変形が完了した後、型温度とガラス温度を
同等に保ちながら冷却し、200℃まで冷却した所で上
型を上昇させて型とガラスを離型した。取り出した成形
品の外観を顕微鏡で観察したところ第1の型部材に対応
する部分は微細な型の表面あらさを転写していたが、第
2の型部材に対応する部分は型の接触痕が全くなく滑ら
かな状態であって型とガラスが非接触の状態で形成され
たことがわかった。得られた光学素子は光線有効径内は
両面とも設計値に対しニュートンリング0.5本の精度
を有していた。またR2面側の外径Φ13は所定の数値
からのズレが2μm前後で、芯取りをしないで使用でき
るレベルであった。
【0239】上記プロセスを500ショット行ったが品
質上の問題は発生せず連続で成形することが可能であっ
た。比較として第2の型部材319の材質を、超硬合金
で作成し、炭素膜をコーティングした材料を使用した
が、50ショット成形したところで型部材319の水平
面の部分の炭素膜が剥離し、更に成形を続けたところそ
の部分から融着が発生した。
【0240】(第22の実施形態)図15は第22の実
施形態の成形方法を示すための型構造の図である。符号
324は上型、符号325は下型、符号326は胴型、
符号327は外径を形成するための第2型部材、符号3
28はガスの通路、符号329は成形品を示す。図16
は得られた光学素子330を示す。
【0241】レンズ成形用素材として第22の実施形態
と同じくSK12を用い、これによってプリフォームと
して直径12mm、中心厚6.3mmのゴブ(ガラス
塊)を作成した。上記素材からR1=16.45mm、
R2=16.86mm、中心厚4.5mm、光線有効径
=Φ12mm、外径=Φ14mmの両凸レンズを作成す
る。
【0242】図15に示す型の製造方法としては超硬合
金からなる型部材324,325を研磨した後、炭素膜
をコーティングした。さらに多孔質炭素からなる第2型
部材327を胴型326に嵌合させた。型部材324,
325と胴型326の隙間は10μmで、ガスの逃げ道
を確保しつつ、型部材324,325の偏心を防止する
量とした。
【0243】N2雰囲気下の成形装置内のプレス軸に上
記型を取り付け、上下型間にガラス素材を投入し、型と
ガラスを加熱して580℃に加熱した。つぎに上型を下
降させてプレスを開始した。型部材324,325によ
ってガラスが変形を開始した後にN2ガスを型部材32
7に流し込み、上下型と胴型の隙間から成形室内に放出
するようにした。N2ガスの温度は通路328に入る前
に不図示のヒータにより型温度と同等に加熱する。また
ガスの流量は不図示の流量調整器で制御する。
【0244】変形が完了した後、型温度とガス温度を同
等に保ちながら冷却し、200℃まで冷却したところで
上型を上昇させて型とガラスを離型した。取り出した成
形品の外観を顕微鏡で観察したところ球面部分は微細な
型の表面あらさを転写していたが、外径部分は型の接触
痕が全くなく滑らかな状態であって、型とガラスが非接
触の状態で成形されたことがわかった。得られた光学素
子は光線有効径内は設計値に対しニュートンリング0.
5本以下の精度を有していた。又外径は設計値からのズ
レが5μmで、機械的な精度としては十分な値であっ
た。
【0245】上記プロセスを500ショット行ったが品
質上の問題は発生せず、連続で成形することが可能であ
った。比較として第2型部材327の材質を超硬合金で
作成し、炭素膜をコーティングした材料を使用したが、
第2型部材327と上下型324,325の隙間にガラ
スが入り込み、その結果上下型を胴型から抜き出すこと
ができなくなった。
【0246】上記結果から第2型部材からガスを流すこ
とによって、上下型と胴型の隙間にガラスが入り込むこ
とを防止できることがわかった。以上説明したように、
重量調整されたガラス素材を成形用型でプレスして光学
素子を成形する方法において使用する型が、光学素子の
少なくとも光線有効径内を形成するための第1の型部材
とそれ以外の部分を形成するための第2の型部材で構成
され、第2の型部材に形成されている通路の内部、また
は表面を経由してガスを成形面に流しながら成形するこ
とによって、とくに融着や膜剥離の発生しやすいレンズ
周辺部で、型とガラスを非接触の状態で成形することが
でき、その結果、融着などのトラブルが無く連続的に成
形を行うことができるようになる。
【0247】さらに上下型でガスの温度差をつけること
によって離型した時に安定的に成形品を下型上に残して
ハンドリングのトラブルを防止できる。また、外径形成
部材として多孔質材を使えば型の隙間にガラスが入り込
まない状態で芯取りの必要のない光学素子を得ることが
出来る。上記の第18乃至第22の実施形態をまとめる
と、第28の方法において、光学素子周辺部に融着や型
の膜剥離が発生しやすいことに注目し、周辺部に於いて
型とガラスの密着力をゼロにするために非接触の状態で
成形する方法を提案している。ただし光線有効系内は光
学的精度を達成するために型とガラスは接触させ、光線
有効径外は鏡筒などとの組み合わせ上必要な機械的精度
は必要だが光学的精度は不要であるため型とガラスは非
接触とした。ここで言う光学的精度とは0.5μm程度
以下の形状誤差を言い、機械的精度とは10μm程度の
形状誤差を言う。
【0248】具体的な方法としては、重量調整されたガ
ラス素材を成型用型でプレスして光学素子を成形する方
法に於いて使用する型が、光学素子の少なくとも光線有
効径内を形成するための第1の型部材と、それ以外の部
分を形成するために第2の型部材で構成され、第2の型
部材の内部または表面を経由してガスを成形面に流しな
がら成形することによって上記目的を達成した。また第
2の型部材と成形された光学素子はガス層を介して非接
触であることによって上記目的をより確実に達成でき
た。
【0249】第2の型部材の表面にガス層を形成するた
めには型形状を工夫してガスの通過する隙間を形成し型
表面にガスを放出するような構造にしても良いが、より
好ましくは第2の型部材を多孔質セラミックまたは、多
孔質金属または、多孔質炭素で作成することである。こ
のような多孔質材料を使用することにより第2の型部材
の表面全域に於いて均等にガスが放出されるので非接触
状態で機械的精度を出すことが容易になる。
【0250】また付随する目的として上型を構成する第
2の型部材を経由するガスの温度と、下型を構成する第
2の型部材を経由するガスの温度の差を10℃以上にす
ることによって離型する時に上面、下面のどちらを先に
離型させるかを制御することもできる。これにより離型
後光学素子を必ず下型上に残したいような装置構造に於
いても、トラブルの発生を防止できる。
【0251】上記の第18乃至第22の実施形態で得ら
れる光学素子は、少なくとも光線有効径内は型と接触し
た面でありかつそれ以外の表面に非接触状態で型によっ
て形状を形成された部分を持つ。光線有効径内は型と接
触することで光学的精度(形状誤差0.5μm以下程
度)で成形することが出来、光線有効径外は型と非接触
であるが機械的精度(形状誤差10μm以下程度)を維
持することで鏡筒への組立が可能である。また光線有効
径外は全ての部分が機械的精度を必要とするわけではな
く、全く型から拘束を受けない自由表面が存在しても差
し支えない。 (第23の実施形態)第23の実施形態では、光学素子
成形用素材として適したガラス塊を、溶融ガラス流から
得る方法について説明する。
【0252】図17は、本発明の第23の実施形態であ
るガラス塊の製造において用いた、受け型の構成を説明
する図である。図17において、401は溶融ガラス流
出パイプ、402は溶融ガラス流、403は多孔質の受
け型、404は多孔質の受け型403を保持している受
け型保持ブロック、405は多孔質の受け型403の背
面に位置し型保持ブロック404により囲まれているガ
ス供給室、406はガス供給室405に低温のガスを供
給するための低温ガス供給管、407はガス供給室40
5に高温のガスを供給するための高温ガス供給管、40
8は高温ガス供給管407の内部に設けられたガス加熱
用の白金巻線ヒータ、409は低温ガス供給管406お
よび高温ガス供給管407の途中に設けられたガス流量
調整バルブである。
【0253】図18乃至図21は、第23の実施形態で
ある溶融ガラス塊の製造工程を、順次説明する図であ
る。これらの図を用いて、本実施形態における動作を説
明する。ガラス溶融るつぼ(図示せず)の内部で溶融さ
れたガラスは、ガラス溶融るつぼの下部に設置された溶
融ガラス流出パイプ401を通って流出してくる。
【0254】溶融ガラス流を受け型に受ける工程の初期
段階において、図18に示すように、溶融ガラス流40
2の先端は、多孔質の受け型403の上方の位置にあ
る。この時、低温ガス供給管406および高温ガス供給
管407のガス流量調整バルブ409は開かれており、
低温ガス供給管406から低温ガスが、高温ガス供給管
407からは高温ガスが、ガス供給室405の内部に供
給され、混合されている。そして、この混合された温度
のガスが、多孔質の受け型403の細孔を通って、受け
型403の受け面に噴出している。
【0255】更に、溶融ガラス流402の流出が進み、
溶融ガラス流402の先端部の下降が進むと、図19に
示すように、溶融ガラス流402の先端部が多孔質の受
け型403の受け面に接近した状態になる。しかし、こ
の時、多孔質の受け型403の受け面からは混合された
温度のガスが噴出しているので、溶融ガラス流402の
先端部と多孔質の受け型403とが接触することは無
い。なお、この時も、低温ガス供給管406と高温ガス
供給管407の両方からガスが供給されている。
【0256】さらに溶融ガラス流402の流出が進む
と、図20に示すように、溶融ガラス流402が多孔質
の受け型403の上に溜り始める。この状態で、低温ガ
ス供給管406に設けたガス流量調整バルブ409を閉
じ始める。すると、ガス供給室405に供給される低温
ガスの量が減り始めるので、ガス供給室405で混合さ
れたガスの温度は上がり始め、多孔質の受け型403の
受け面から噴出しているガスの温度も上がり始める。
【0257】そして、低温ガス供給管406のガス流量
調整バルブ409を閉じ、受け型403の上に溜った溶
融ガラスの重量が所望の値になった後、受け型403を
下方へ下降させ、溶融ガラスを括れさせ、自然切断さ
せ、溶融ガラス塊410を得る。この状態を図21に示
す。この時、低温ガス供給管406は閉じられており、
高温ガス供給管407から高温のガスがガス供給室40
5に供給されている。そして、多孔質の受け型403の
受け面から噴出している高温のガスにより溶融ガラス塊
410は浮上している。
【0258】このようにして得られたガラス塊410
は、常に受け型403から浮上した状態であるので、そ
の上下面とも自由表面からなっており、非常に滑らかで
ある。また、ガラス塊410には、受け型403との接
触痕もない。更に、ガラス塊の製造工程に最適な温度条
件のガスで、ガラス塊410を浮上させているので、ガ
ラス塊の下面が噴出ガスにより持ち上げられ凹んだ状態
で固化することは無く、このようにして得られたガラス
塊410の下面は、受け型403の形状にほぼ倣った形
をしている。
【0259】すなわち、このようにして得られたガラス
塊410は、外観・形状ともに優れており、光学素子成
形用素材として大変適している。次に、本実施形態のよ
り具体的な実施例について、具体的に述べる。白金製の
ガラス溶融るつぼ(図示せず)の中で溶融された光学ガ
ラスは、溶融るつぼの下部に接続された白金製の溶融ガ
ラス流出パイプ401を通って、液滴状に流出してい
る。この流出されている溶融ガラス流402の温度は1
000℃である。
【0260】受け型403は、多孔質のカーボンからな
っており、この気孔率は30%であり、平均孔径15μ
mの細孔が開いている。この多孔質の受け型403の受
け面は、半径15mmの球面に加工されている。受け型
403の下部および側面は、ステンレス製の受け型保持
部材404で囲まれている。そして、受け型403の下
面と受け型保持部材404の間には、ガス供給室405
となる空間部が設けられている。
【0261】そして、このガス供給室405には、低温
ガス供給管406と高温ガス供給管407の2種類のガ
ス供給管が、受け型保持部材404を通って接続されて
いる。低温ガス供給管406はステンレスのパイプから
なっており、この低温ガス供給管406を通って、室温
の窒素ガスがガス供給室405に供給される。高温ガス
供給管407は、ステンレスのパイプの中に白金製の巻
線ヒータ408が設置されており、このステンレスのパ
イプと白金巻線ヒータ408の間には、絶縁のため石英
ガラスのパイプ(図示せず)が設置されている。この高
温ガス供給管407の中に室温の窒素ガスを供給する
と、この高温ガス供給管407の中を通過する間に、窒
素ガスは加熱された白金巻線ヒータ408により加熱さ
れ、高温のガスがガス供給室405の中に供給される。
【0262】本実施形態において、低温ガス供給管40
6はガス供給室405の中心部に1本設置されており、
高温ガス供給管407は、低温ガス供給管406の回り
に円周上に6本設置されている。ガス流量調整バルブ4
09は、低温ガス供給管406および6本の高温ガス供
給管407の全てに設けられている。このガス流量調整
バルブ409により、ガス流量を予め設定された値から
流量0まで連続的に制御することが可能である。本実施
形態においては、低温ガス供給管406では最大5リッ
トル/分の流量の窒素ガスを流すことができ、また、高
温ガス供給管407では、各1本につき、最大1リット
ル/分の流量の500℃の温度の高温の窒素ガスを流す
ことができるように、ガス流量調整バルブ409は設定
されている。
【0263】そして、受け型403と一体になっている
受け型保持部材404と低温ガス供給管406と高温ガ
ス供給管407は、上下に位置制御可能な上下駆動装置
(図示せず)に連結されており、上下動できるようにな
っている。次に、この装置を使ってガラス塊410を得
る工程の具体的な様子を、図18乃至図21を用いて説
明する。
【0264】図18は、溶融ガラス流402を受け型4
03に受け始める直前の様子を示している。この時、受
け型403は、溶融ガラス流出パイプ401の出口の下
方10mmの位置まで上昇し停止している。この時、低
温ガス供給管406および6本の高温ガス供給管407
のガス流量調整バルブ409は、全て全開になってい
る。従って、低温ガス供給管406から5リットル/分
の流量の室温の窒素ガスが、6本の高温ガス供給管40
7から合計6リットル/分の流量の500℃の窒素ガス
が、ガス供給室405の中に供給されている。この低温
ガスと高温ガスはガス供給室405の中で混合され、こ
のガスは多孔質の受け型403の細孔を通って受け面に
噴出している。この時、受け面から噴出しているガスの
温度は、300℃であった。なお、本実施形態では、受
け型保持部材404の中には加熱用のヒータは設置され
ていない。
【0265】図19は、溶融ガラス流402がさらに流
出した時の様子を示している。この時、溶融ガラス40
2の先端部は、多孔質の受け型403の受け面に近接し
ているが、受け面からガスが噴出しているので、溶融ガ
ラス流402の先端部と多孔質の受け型403の受け面
とが接触することは無い。なお、この時も、低温ガス供
給管406および6本の高温ガス供給管407のガス流
量調整バルブ409は、全て全開になっている。なお、
図19はゴブ受け開始、すなわち、図18の状態から、
1秒後の様子を示している。
【0266】図20は、溶融ガラス流402がさらに流
出し、溶融ガラスが受け型403の上に溜まっている状
態の様子を示している。この時、低温ガス供給管407
のガス流量調整バルブ409を連続的に閉じつつある。
ガス流量バルブ409を閉じ始めたのは、ゴブ受け開始
後2秒後からであり、その後3秒かけて、ガス流量バル
ブ409を連続的に徐々に閉じた。更に、ゴブ受け開始
後7秒後に、受け型403の上に溜まった溶融ガラスの
重量が所望の値になったので、受け型403を下方へ5
mm下降させ、その状態で1秒保持する間に、溶融ガラ
ス流を括れさせ、さらに自然切断し、溶融ガラス塊41
0を得た。
【0267】この時、ガス供給室405には高温ガス供
給管から高温のガスが供給されており、この高温のガス
が受け型403から噴出しており、このガスによりガラ
ス塊410は浮上保持されている。この状態を図21に
示す。この時、受け型403の受け面から噴出している
ガスの温度は400℃であった、このようにして得られ
たガラス塊410は、その重量が2.5gであり、その
下面に凹み等は無く、上下面とも滑らかな自由表面から
なっており、受け型403との接触痕等は無いので、光
学素子成形用素材として大変適している。
【0268】本実施形態特有の効果として、外観・形状
ともに優れており、光学素子成形用素材として大変適し
ているガラス塊を、溶融ガラス流から得るための最適な
成形条件を、ガス温度、ガス流量、低温ガス流停止タイ
ミングの組み合わせから、容易に求めることができる点
がある。従って、所望とするガラス塊の大きさや形状、
また、ガラスの種類が異なった場合も、その最適成形条
件を、容易に素早く求めることができる。
【0269】(第24の実施形態)第24の実施形態で
は、光学素子成形用素材として適したガラス塊を、溶融
ガラス流から得る方法について説明する。図22は、本
発明の第24の実施形態であるガラス塊の製造において
用いた、受け型の構成を説明する図である。
【0270】図22において、401は溶融ガラス流出
パイプ、402は溶融ガラス流、403は多孔質の受け
型、404は多孔質の受け型403を保持している受け
型保持ブロック、406は低温のガスを供給するための
低温ガス供給管、407は高温のガスを供給するための
高温ガス供給管、408は高温ガス供給管407の内部
に設けられたガス加熱用の白金巻線ヒータ、409は低
温ガス供給管406および高温ガス供給管407の途中
に設けられたガス流量調整バルブである。また411は
多孔質の受け型403の背面に位置し型保持ブロック4
04により囲まれているガス供給室を中心部分と外周部
分との2つの空間に分割するための隔壁であり、412
は隔壁411により分割された中心部ガス供給室であ
り、413は隔壁411により分割された外周部ガス供
給室である。中心部ガス供給室412には、低温ガス供
給管406と高温ガス供給管407が接続されている。
また、外周部ガス供給室413には、高温ガス供給管4
07が接続されている。
【0271】図23乃至図26は、本第24の実施形態
である溶融ガラス塊の製造工程を、順次説明する図であ
る。これらの図を用いて、本実施形態における動作を説
明する。ガラス溶融るつぼ(図示せず)の内部で溶融さ
れたガラスは、ガラス溶融るつぼの下部に設置された溶
融ガラス流出パイプ1を通って流出してくる。
【0272】溶融ガラス流を受け型に受ける工程の初期
段階において、図23に示すように、溶融ガラス流40
2の先端は、多孔質の受け型403の上方の位置にあ
る。この時、中心部ガス供給室412に接続された低温
ガス供給管406のガス流量調整バルブ409は開かれ
ており、高温ガス供給管407のガス流量調整バルブ4
09は閉められている。また、外周部ガス供給室413
に接続された高温ガス供給管407のガス流量調整バル
ブ409も開かれている。従って、中心部ガス供給室4
12には低温のガスが供給され、外周部ガス供給室41
3には高温のガスが供給され、これらのガスが、多孔質
の受け型403の細孔を通って、受け型403の受け面
に噴出している。その結果、受け型403の受け面の中
心部からは低温のガスが噴出しており、外周部からは高
温のガスが噴出している。
【0273】更に、溶融ガラス流402の流出が進み、
溶融ガラス流402の先端部の下降が進むと、図24に
示すように、溶融ガラス流402の先端部が多孔質の受
け型403の受け面に接近した状態になる。しかし、こ
の時、多孔質の受け型403の受け面からガスが噴出し
ているので、溶融ガラス流402の先端部と多孔質の受
け型403とが接触することは無い。なお、この時、中
心部ガス供給室412に接続された低温ガス供給管40
6とガス流量調整バルブ409を閉じ始め、反対に、高
温ガス供給管407のガス流量調整バルブ409を開け
始めている。
【0274】さらに溶融ガラス流402の流出が進む
と、図25に示すように、溶融ガラス流402が多孔質
の受け型403の上に溜り始める。この状態で、中心部
ガス供給室412に接続された低温ガス供給管406の
ガス流量調整バルブ409は閉じられ、逆に、高温ガス
供給管407のガス流量調整バルブ409が開けられて
いる。すると、中心部ガス供給室412に供給されるガ
スの温度は上がるので、多孔質の受け型403の受け面
の中心部から噴出しているガスの温度が上がる。
【0275】そして、受け型403の上に溜った溶融ガ
ラスの重量が所望の値になった後、受け型403を下方
へ下降させ、溶融ガラスを括れさせ、自然切断させ、溶
融ガラス塊410を得る。この状態を図26に示す。こ
の時、多孔質の受け型403の受け面から噴出している
高温のガスにより溶融ガラス塊410は浮上している。
【0276】このようにして得られたガラス塊410
は、常に受け型403から浮上した状態であるので、そ
の上下面とも自由表面からなっており、非常に滑らかで
ある。また、ガラス塊410には、受け型403との接
触痕もない。更に、ガラス塊の製造工程に最適な温度条
件のガスで、ガラス塊410を浮上させているので、ガ
ラス塊の下面が噴出ガスにより持ち上げられ凹んだ状態
で固化することは無く、このようにして得られたガラス
塊410の下面は、受け型403の形状にほぼ倣った形
をしている。
【0277】すなわち、このようにして得られたガラス
塊410は、外観・形状ともに優れており、光学素子成
形用素材として大変適している。次に、本実施形態のよ
り具体的な実施形態について、具体的に述べる。白金製
のガラス溶融るつぼ(図示せず)の中で溶融された光学
ガラスは、溶融るつぼの下部に接続された白金製の溶融
ガラス流出パイプ401を通って、液滴状に流出してい
る。この流出されている溶融ガラス流402の温度は1
000℃である。
【0278】受け型403は、多孔質のカーボンからな
っており、この気孔率は30%であり、平均孔径15μ
mの細孔が開いている。この多孔質の受け型403の受
け面は、半径15mmの球面に加工されている。受け型
403の下部および側面は、ステンレス製の受け型保持
部材404で囲まれている。そして、受け型403の下
面と受け型保持部材404の間には、ガス供給室405
となる空間部が設けられている。
【0279】このガス供給室は、その内部に設けられた
ステンレス製の円筒状の隔壁411により中心部ガス供
給室412と外周部ガス供給室413の2つに分割され
ている。中心部ガス供給室412には、低温ガス供給管
406と高温ガス供給管407の2種類のガス供給管が
接続されている。また、外周部ガス供給室413には、
高温ガス供給管407が接続されている。低温ガス供給
管406はステンレスのパイプからなっており、この低
温ガス供給管406を通って、室温の窒素ガスがガス供
給室に供給される。高温ガス供給管407は、ステンレ
スのパイプの中に白金製の巻線ヒータ408が設置され
ており、このステンレスのパイプと白金巻線ヒータ40
8の間には、絶縁のため石英ガラスのパイプ(図示せ
ず)が設置されている。この高温ガス供給管407の中
に室温の窒素ガスを供給すると、この高温ガス供給管4
07の中を通過する間に、窒素ガスは加熱された白金巻
線ヒータ408により加熱され、高温のガスがガス供給
室の中に供給される。
【0280】本実施形態において、中心部ガス供給室4
12は、低温ガス供給管406と高温ガス供給管407
が各1本ずつ接続されている。また、周辺部ガス供給室
413には、円周上に6本の高温ガス供給管407が設
置されている。ガス流量調整バルブ409は、低温ガス
供給管406および6本の高温ガス供給管407の全て
に設けられている。このガス流量調整バルブ409によ
り、ガス流量を予め設定された値から流量0まで連続的
に制御することが可能である。本実施形態においては、
低温ガス供給管406では最大5リットル/分の流量の
窒素ガスを流すことができ、また、高温ガス供給管40
7では、各1本につき、最大1リットル/分の流量の5
00℃の温度の高温の窒素ガスを流すことができるよう
に、ガス流量調整バルブ409は設定されている。
【0281】そして、受け型403と一体になっている
受け型保持部材404と低温ガス供給管406と高温ガ
ス供給管407は、上下に位置制御可能な上下駆動装置
(図示せず)に連結されており、上下動できるようにな
っている。次に、この装置を使って溶融ガラス塊410
を得る工程の具体的な様子を、図23乃至図26を用い
て説明する。
【0282】図23は、溶融ガラス流402を受け型4
03に受け始める直前の様子を示している。この時、受
け型403は、溶融ガラス流出パイプ401の出口の下
方10mmの位置まで上昇し停止している。この時、中
心部ガス供給室412に接続されている低温ガス供給管
406と、外周部ガス供給室413接続されている高温
ガス供給管406は、全て全開になっている。従って、
中心部ガス供給室412へ低温ガス供給管406から5
リットル/分の流量の室温の窒素ガスが、周辺部ガス供
給室413へ6本の高温ガス供給管407から合計6リ
ットル/分の流量の500℃の窒素ガスが、供給されて
いる。このガスは多孔質の受け型403の細孔を通って
受け面に噴出している。この時、受け面から噴出してい
るガスの温度は、中心部で150℃、外周部で400℃
であった。なお、本実施形態では、受け型保持部材40
4の中には加熱用のヒータは設置されていない。
【0283】図24は、溶融ガラス流402がさらに流
出した時の様子を示している。この時、溶融ガラス40
2の先端部は、多孔質の受け型403の受け面に近接し
ているが、受け面からガスが噴出しているので、溶融ガ
ラス流402の先端部と多孔質の受け型403の受け面
とが接触することは無い。なお、この時、中心部ガス供
給室412に接続されている低温ガス供給管406のガ
ス流量調整バルブ409は、閉じ始めており、逆に高温
ガス供給管407のガス流量調整バルブ409は、開き
始めている。これらのガス流量調整バルブ409の開度
調整は、ゴブ受け開始、すなわち、図23の状態から、
1秒後から行なわれ、その後3秒かけて、低温ガス供給
管406のガス流量調整バルブ409を閉じるととも
に、高温ガス供給管407のガス流量調整バルブ409
を全開にした。なお、この間、外周部ガス供給室413
に供給されている高温ガス供給管407のガス流量調整
バルブ409は全開のままである。なお、図24は、ゴ
ブ受け開始後、1.5秒後の様子を示している。
【0284】図25は、溶融ガラス流402がさらに流
出し、溶融ガラスが受け型403の上に溜まっている状
態の様子を示している。この時、中心部ガス供給室41
2には1リットル/分の流量の500℃の窒素ガスが、
外周部ガス供給室413には6リットル/分の流量の5
00℃の窒素ガスが、供給されている。ゴブ受け開始後
8秒後に、受け型3の上に溜まった溶融ガラスの重量が
所望の値になったので、受け型403を下方へ5mm下
降させ、その状態で1秒保持する間に、溶融ガラス流を
括れさせ、さらに自然切断し、溶融ガラス塊410を得
た。
【0285】この時、ガス供給室には高温ガス管407
から高温のガスが供給されており、この高温のガスが受
け型403から噴出しており、このガスによりガラス塊
410は浮上保持されている。この状態を図26に示
す。この時、受け型403の受け面から噴出しているガ
スの温度は400℃であった、このようにして得られた
ガラス塊410は、その重量が2.7gであり、その下
面に凹み等は無く、上下面とも滑らかな自由表面からな
っており、受け型403との接触痕等は無いので、光学
素子成形用素材として大変適している。
【0286】本実施形態特有の効果として、外観・形状
ともに優れており、光学素子成形用素材として大変適し
ているガラス塊を、溶融ガラス流から得るための最適な
成形条件を、中心部ガス供給室と外周部ガス供給室に供
給するガスの、ガス温度、ガス流量、低温ガス流停止タ
イミングの組み合わせから、第27の実施形態に比べよ
り容易に求めることができる点がある。従って、所望と
するガラス塊の大きさや形状、また、ガラスの種類が異
なった場合も、その最適成形条件を、第27の実施形態
に比べより容易に素早く求めることができる。
【0287】(第25の実施形態)第25の実施形態で
は、光学素子成形用素材として適した成形ガラス塊を、
プレス成形して得る方法について説明する。図27は、
第25の実施形態である成形ガラス塊の製造において用
いた、成形型の構成を説明する図である。
【0288】図27において、406は低温のガスを供
給するための低温ガス供給管、407は高温のガスを供
給するための高温ガス供給管、408は高温ガス供給管
407の内部に設けられたガス加熱用の白金線ヒータ、
409は低温ガス供給管406および高温ガス供給管4
07の途中に設けられたガス流量調整バルブである。4
14は多孔質の成形型、415は多孔質の成形型414
を保持している成形型保持ブロックであり、405は多
孔質の成形型414の背面に位置し成形型保持ブロック
で囲まれている供給室である。低温ガス供給管406と
高温ガス供給管407はガス供給室405に接続されて
いる。また、416は成形用下型であり、417は予め
用意されたガラス塊である。
【0289】図28乃至図32は、第25の実施形態で
ある成形ガラス塊の製造工程を、順次説明する図であ
る。これらの図を用いて、本実施形態における動作を説
明する。ガラス塊417は、実施形態27,28に記載
したような方法で予め製造され、用意されている。従っ
て、本実施形態によるガラス塊の製造工程の初期段階に
おいて、このガラス塊417は比較的低温の状態にあ
る。
【0290】ガラス塊を成形する工程の初期段階におい
て、図27に示すように、予め用意されたガラス塊41
7は、成形用下型416の上に乗せられている。この
時、成形用下型416は所望の温度に加熱されている。
この時、多孔質の成形型414は、ガラス塊417の上
方の位置にある。この時、低温ガス供給管406のガス
流量調整バルブ409は閉じられており、一方、高温ガ
ス供給管407のガス流量調整バルブ409は開かれて
いる。そして、高温のガスがガス供給室405の内部に
供給され、この高温のガスが多孔質の成形型414の細
孔を通って、成形型414の成形面に噴出している。
【0291】続いて、この高温のガスが成形面から噴出
している状態の成形型414を、図28に示すように、
ガラス塊417の上面に近接した位置まで下降する。こ
の状態で、成形面から噴出している高温のガスにより、
ガラス塊417は熱変形可能な温度まで加熱される。そ
の後、成形型414を微速で下降させる。この間、成形
面からは高温のガスが噴出しているので、成形型414
の成形面とガラス塊417の上面とが接触することは無
い。この時の様子を図29に示す。
【0292】更に、成形型414の下降が進むと、図3
0に示すように、成形型保持ブロック415と下型41
6が接触し、ガラス塊417のプレス変形が終了する。
なお、ガラス塊417をプレス成形する工程の間、成形
面から高温ガスが噴射しているので、成形型414とガ
ラス塊417が接触することは無い。ガラス塊417の
プレス変形が終了した後、そのままの状態で、図31に
示すように、高温ガス供給管407のガス流量調整バル
ブ409を閉じ始め、逆に、低温ガス供給管406のガ
ス流量調整バルブを開け始めた。
【0293】更に、図32に示すように、高温ガス供給
管407のガス流量調整バルブを閉め、低温ガス供給管
406から低温のガスをガス供給室へ供給し、低温ガス
を成形面から噴出している状態で、プレス成形された成
形ガラス塊418を冷却した。そして、取り出し可能な
温度まで成形ガラス塊418を冷却した後、成形ガラス
塊418を取り出した。
【0294】このようにして得られた成形ガラス418
は、その成形に先立って行う再加熱を、多孔質の成形型
から噴射する高温のガスによって行うので、速い時間で
成形可能な温度まで到達することができ、特に、予め用
意されたガラス塊417の温度が十分に高い場合、成形
に先立って行う再加熱の時間はほとんど不要になり、多
孔質の成形型414の成形面から高温のガスを噴出した
状態で、直ちに、ガラス塊417をプレス成形すること
が可能になる。また本実施形態により、成形型から噴射
している高温のガスによりガラス塊417を加熱する場
合、ガラス塊417の下面が過剰に加熱されることは無
く、従って、ガラス塊417の下面と下型416とが融
着することは無い。また、このようにして得られた成形
ガラス塊418の上面は、プレス成形中、常に、成形型
414から噴出しているガスにより非接触状態に保たれ
ているので、非常に滑らかである。
【0295】このようにして得られた成形ガラス塊41
8は、その上面は滑らかな自由表面であり、また、その
下面は融着することも無く、このような外観精度に優
れ、所望する形状となっている。このようにして得られ
た成形ガラス塊418は、所望の成形光学素子に近似し
た形状をしているので、この成形ガラス塊418を光学
素子成形用素材として用いると、成形時間が短くなる
点、成形時に成形型に付けられている離型作用を有する
薄膜を剥離されることが無くなる点等の利点がある。
【0296】次に、本実施形態のより具体的な実施形態
について、具体的に述べる。成形型414は、多孔質の
炭素珪素(SiC)からなっており、この気孔率は20
%であり、平均孔径5μmである。この多孔質の成形型
414の成形面は、半径10mmの球面に加工されてい
る。成形型414の上部および側面は、ステンレス製の
成形型保持部材415で囲まれている。そして、成形型
414の上面と成形型保持部材415の間には、ガス供
給室405となる空間部が設けられている。また、成形
型保持部材415の中には加熱用のカートリッジヒータ
(図示せず)が設置されている。
【0297】そして、このガス供給室405には、低温
ガス供給管406と高温ガス供給管407の2種類のガ
ス供給管が、成形型保持部材415を通って接続されて
いる。低温ガス供給管406はステンレスのパイプから
なっており、この低温ガス供給管406を通って、室温
の窒素ガスがガス供給室405に供給される。高温ガス
供給管407は、ステンレスのパイプの中に白金製の巻
線ヒータ408が設置されており、このステンレスのパ
イプと白金巻線ヒータ408の間には、絶縁のため石英
ガラスのパイプ(図示せず)が設置されている。この高
温ガス供給管407の中に室温の窒素ガスを供給する
と、この高温ガス供給管407の中を通過する間に、窒
素ガスは加熱された白金巻線ヒータ408により加熱さ
れ、高温のガスがガス供給室405の中に供給される。
【0298】本実施形態において、低温ガス供給管40
6はガス供給室405の中に円周上に4本設置されてお
り、高温ガス供給管407は、低温ガス供給管406と
交互に円周上に4本設置されている。ガス流量調整バル
ブ409は、低温ガス供給管406および高温ガス供給
管407の全てに設けられている。このガス流量調整バ
ルブ409により、ガス流量を予め設定された値から流
量0まで連続的に制御することが可能である。本実施形
態においては、低温ガス供給管406では、各1本につ
き、最大5リットル/分の流量の窒素ガスを流すことが
でき、また、高温ガス供給管407では、1本につき、
最大5リットル/分の流量の900℃の温度の高温の窒
素ガスを流すことができるように、ガス流量調整バルブ
409は設定されている。
【0299】そして、成形型414と一体になっている
成形型保持部材415と低温ガス供給管406と高温ガ
ス供給管407は、上下に位置制御可能な上下駆動装置
(図示せず)に連結されており、上下動できるようにな
っている。また、下型416は、カーボン材料で作られ
ており、その成形面は半径30mmの球面に加工されて
いる。そして、この下型416の内部には、加熱用のカ
ートリッジヒータ(図示せず)が設置されている。
【0300】次に、この装置を使って成形ガラス塊41
8を得る工程の具体的な様子を、図27乃至図32を用
いて説明する。図27は、成形工程の初期状態を示す。
この時、ガラス塊217は、別の装置(図示せず)より
溶融ガラス流から得られたガラス塊を、直ちにこの下型
216の中に搬送したので、300℃の温度であった。
そして、下型416は、内蔵するカートリッジヒータ
(図示せず)により、常時400℃に加熱されている。
一方、成形型保持ブロック415は内蔵するカートリッ
ジヒータ(図示せず)により、常時600℃に加熱され
ている。そして、4本の高温ガス供給管407からは、
合計20リットル/分の流量の900℃の高温の窒素ガ
スがガス供給室405の中に供給されている。そして、
この高温ガスは、多孔質の成形型414の細孔を通って
成形面から噴出している。この成形面から噴出している
ガスの温度は700℃であった。
【0301】ガラス塊417を下型416の上に載せた
後、高温のガスが噴出している状態の成形型414を下
降させ、図28に示すように、ガラス塊417の上面に
接近した位置で保持した。この状態で20秒保持したと
ころ、ガラス塊417は熱変形可能な温度まで加熱され
た。なお、この時のガラス塊417の温度は、上面が7
00℃、中央部600℃、下面が550℃であった。
【0302】その後、直ちに、成形型414を下降させ
始めた。下降速度は、0.2mm/秒であった。この
時、成形型414の成形面からは高温のガスが噴出して
いるので、成形型414とガラス塊417が接触するこ
とは無い。このように、ガラス塊417をプレス成形し
ている途中の様子を図29に示す。成形型414を下降
させ始めてから25秒後に、図30に示すように、成形
型保持ブロック415と下型416とが突き当たり、ガ
ラス塊417のプレス成形が完了した。
【0303】その後、直ちに、高温ガス供給管407の
ガス流量調整バルブ409を閉じ始めると同時に、低温
ガス供給管406のガス流量調整バルブ409を開き始
めた。図31にこの様子を示す。1秒後に、高温ガス供
給管407のガス流量調整バルブ409は完全に閉じら
れた。また、低温ガス供給管406のガス流量調整バル
ブ409は10秒かけて全開にした。図32にこの様子
を示す。この間、成形型414の成形面から噴出してい
るガスの温度は下がるので、成形ガラス塊418は冷却
される。更に、5秒冷却した時、成形ガラス塊418は
取り出し可能な温度になったので、成形型414を上昇
し、成形ガラス塊418を取り出した。
【0304】このようにして得られた成形ガラス塊41
8は、その上面は自由表面からなっており成形型414
との接触痕は無く、また、その下面は、下型416との
融着は無く、滑らかであり、凹メニスカス形状のレンズ
を成形するための光学素子成形用素材として大変適して
いる。本実施形態特有の効果として、外観精度が優れて
おり、所望の光学素子形状に近似した形状の、光学素子
成形用素材として大変適している成形ガラス塊を、予め
用意されたガラス塊を加熱して得るに際して、成形型か
ら噴出するガスの温度を制御することにより、効率的な
加熱冷却が可能なので、加熱および冷却に要する時間が
非常に短くなり、成形時間の大幅短縮が可能になる。
【0305】以上説明したように、上記の実施形態によ
れば、受け型から噴出しているガスの温度を制御するこ
とにより、光学素子成形用素材として適した、下面に凹
みの無いガラス塊を、容易にかつ確実に製造することが
できる。また、成形型から噴出しているガスの温度を制
御することにより、ガラス塊をプレス成形して所望の形
状の成形ガラス塊を得る方法において、加熱および冷却
に要する時間を短くすることができる。
【0306】また、受け型から噴出しているガスの温度
をより正確かつ素早く制御することにより、光学素子成
形用素材として適した、下面の凹みの無いガラス塊を、
より容易にかつ確実に製造することができる。また、成
形型から噴出しているガスの温度をより正確かつ素早く
制御することにより、ガラス塊をプレス成形し所望の形
状の成形ガラス塊を得る方法において、加熱および冷却
に要する時間をより短くすることができる。
【0307】上記の第23乃至第25の実施形態をまと
めると、第29の方法においては、溶融ガラス塊製造工
程において、その時間毎に所望される最適の温度のガス
を多孔質の受け型の受け面から噴出するために、多孔質
の受け型の背面に所望する異なった温度のガスを供給
し、この所望の温度のガスを多孔質の受け型の受け面か
ら噴出させる。
【0308】多孔質の受け型の受け面から噴出するガス
の温度を、経時的に所望の温度に制御するためには、受
け型の背面に供給されるガスの温度を経時的に消耗の温
度に制御することが、制御性が良く、受け型から噴出す
るガスの温度を短い時間で所望の温度に制御できるので
望ましい。このとき、受け型の細孔を通過する間にガス
の温度が下がるので、受け型の背面に供給されるガスの
温度は、受け型の受け面から噴出するガスの所望の温度
に比べ、高くすることが好ましい。
【0309】なお、多孔質の受け型から噴出するガスの
温度を制御する他の方法として、受け型の背面に供給す
るガスの温度を常時一定にし、受け型を保持する型ホル
ダーにヒータを内蔵し、このヒータにより型ホルダーの
温度を制御し、それにより多孔質の受け型の温度を制御
し、この多孔質の受け型の細孔を通過する噴出ガスの温
度を制御する方法もある。しかし、この方法では、多孔
質の受け型の熱伝導率が小さいため温度の追従性が悪
く、本実施形態に比べ制御性が極めて悪い。
【0310】このようにして、多孔質の受け型の受け面
から噴出するガスの温度を、経時的に所望の温度に制御
した場合、この受け型の上に受けられたガラス塊の下面
には凹みは無く、光学素子成形用素材として優れた外観
形状を有している。なお、多孔質の受け型の受け面から
噴出するガスの温度の経時的な制御としては、溶融ガラ
ス流を受け型に受け始める初期の段階で、ガスの温度を
低くし、その後、ガスの温度を高くすることが望まし
い。このようにガス温度を制御することにより、溶融ガ
ラスと受け型が接触すること無く、また、下面に凹みの
無いガラス塊を、容易に、かつ、確実に得ることができ
る。
【0311】なぜならば、初期の段階でガスの温度を低
くすることにより、溶融ガラスと受け型が接触すること
を防止し、また、その後、ガスの温度を高くすることに
より、ガラス塊の冷却速度が遅くなるので、下面が凹ん
だ状態でガラス塊が固化することを防止でき、ガラス塊
の下面がその自重で下方に変形し、受け型の面の形状に
ほぼ倣った形になった後、固化することができるからで
ある。
【0312】また、第30の方法においては、ガラス塊
製造工程において、その時間毎に所望される最適の温度
のガスを多孔質の成形型の成形面から噴出するために、
多孔質の成形型の背面に所望する異なった温度のガスを
供給し、この所望の温度のガスを多孔質の成形型の成形
面から噴出させる。多孔質の成形型の成形面から噴出す
るガスの温度を、経時的に所望の温度に制御するために
は、成形型の背面に供給されるガスの温度を経時的に所
望の温度に制御することが、制御性が良く、成形型から
噴出するガスの温度を短い時間で所望の温度に制御でき
るので望ましい。このとき、成形型の細孔を通過する間
にガスの温度が下がるので、成形型の背面に供給される
ガスの温度は、成形型の成形面から噴出するガスの所望
の温度に比べ、高くすることが望ましい。
【0313】このようにして、多孔質の成形型の成形面
から噴出するガスの温度を、経時的に所望の温度に制御
した場合、多孔質の成形型でガラス塊をプレス成形する
に先立って行う、ガラス塊を再加熱する工程を、大幅に
短縮、または、削減できる。なお、多孔質の成形型の成
形面から噴出するガスの温度の経時的な制御としては、
ガラス塊をプレス成形し始める初期の段階で、ガスの温
度を高くし、その後、ガスの温度を低くすることが望ま
しい。このようにガス温度を制御することにより、ガラ
ス塊を再加熱する工程を、大幅に短縮、または、削減で
きる。
【0314】なぜならば、ガラス塊をプレス成形し始め
る初期の段階で、多孔質の成形型から噴出するガスの温
度を高くすることにより、ガラス塊上部の部分を熱変形
可能な温度まで、短い時間で上げることができる。この
時、ガラス塊の温度が前もって十分高ければ、この工程
に先立ってガラス塊を再加熱する工程は不要となる。ま
た、そうで無い場合も、短時間の再加熱を行えば、その
後の多孔質の成形型から噴出される高温のガスにより、
ガラス塊上部を熱変形可能な温度まで短い時間で上げる
ことができるからである。
【0315】また、多孔質の成形型から噴出される高温
のガスにより、ガラス塊の上部を熱変形可能な温度まで
加熱する時、このガスによりガラス塊の反対側の部分が
過剰に加熱されることは無い。従って、この加熱により
ガラス塊が反対側の下型と融着することは無い。そのた
め、多孔質の成形型から噴出される高温のガスにより、
ガラス塊を加熱する場合、ガラス塊を急加熱しても融着
しないので、加熱に要する時間を短くできる。
【0316】また、第31の方法においては、その時間
毎に所望される最適の温度のガスを多孔質の受け型の受
け面から噴出するために、多孔質の受け型の背面に所望
する異なった温度のガスを供給し、この所望の温度のガ
スを多孔質の受け型の受け面から噴出させる。この時、
溶融ガラス塊製造工程の時間毎に所望される異なった温
度のガスを、多孔質の受け型の背面に供給するために、
受け型の背面に設置された、異なった温度のガスを供給
できる複数のガス供給管のうちから適切なガス供給管を
選択し、所望の温度のガスを多孔質の受け型の背面に供
給することにより、所望の温度のガスを所望の時間に遅
れることなく得ることができる。
【0317】なぜならば、異なった温度のガスを供給で
きる複数のガス供給管のうちから適切なガス供給管を選
択し、温度の異なったガスを混合することにより、瞬時
に、所望とする温度のガスを得ることができる。例え
ば、ガス温度を高くする場合は、次のようにする。先
ず、最初、低温と高温の2つの温度を含む複数のガス供
給管からガスを供給し、それらを混合し、低温のガスを
多孔質の受け型の背面に供給する。次に、低温のガス供
給管からの低温ガス供給を停止する。すると、多孔質の
受け型の背面に供給されるガスの温度は直ちに上昇す
る。逆に、ガスの温度を低くする場合は、最初、低温の
ガス供給管からはガスが供給されていない状態で、高温
のガスを多孔質の受け型の背面に供給する。次に、低温
ガス供給管から低温ガスを供給する。すると、多孔質の
受け型の背面に供給されている混合されたガスの温度が
直ちに下がる。
【0318】このように、多孔質の受け型の背面に設置
された複数のガス供給管のうちから適切なガス供給管を
選択し、所望の温度のガスを多孔質の受け型の背面に供
給することにより、所望の温度のガスを所望の時間に遅
れることなく得ることができる。なお、この時のガス供
給管の選択切替は、瞬間的に断続的に行っても、連続的
に行っても良く、後者の方が、より精度の高いガス温度
コントロールが可能となる。また、選択切替するガス供
給管の本数は、1本に限らず複数本でも良く、その場
合、これらのガス供給管の選択切替のタイミングは、各
々のガス供給管毎に異なっていても良い。
【0319】なお、多孔質の受け型の背面に供給するガ
スの温度を変える手段として、受け型の背面に設置され
た唯一のガス供給管の内部に加熱用のヒータを設け、こ
のヒータの出力を調整することにより、供給ガスの温度
を変える手段が従来から知られている。しかし、この方
法では、ガスの温度を瞬時に所望の温度に制御すること
はできない。なぜならば、この方法では、ヒータの温度
を所望の温度にし、さらに、ヒータからの熱伝達により
ガスの温度を所望の温度にするのに時間がかかるためで
ある。
【0320】一方、本方法では、ガスの温度を瞬時に所
望の温度にすることができる。従って、溶融ガラス塊を
製造する工程において、最適の噴出ガスの温度制御が可
能になるので、得られたガラス塊の下面には凹みは無
く、光学素子成形用素材として優れた外観形状を有して
いる。また、第32の方法においては、その時間ごとに
所望される最適の温度のガスを多孔質の成形型の成形面
から噴出するために、多孔質の成形型の背面に所望する
異なった温度のガスを供給し、この所望の温度のガスを
多孔質の成形型の成形面から噴出させる。
【0321】この時、成形ガラス塊製造工程の時間毎に
所望される異なった温度のガスを、多孔質の成形型の背
面に供給するために、成形型の背面に設置された、異な
った温度のガスを供給できる複数のガス供給管のうちか
ら適切なガス供給管を選択し、所望の温度のガスを多孔
質の成形型の背面に供給することにより、所望の温度の
ガスを所望の時間に遅れることなく得ることができる。
【0322】このように、本方法では、ガスの温度を瞬
時に所望の温度にすることができる。従って、成形ガラ
ス塊を製造する工程において、最適の噴出ガスの温度制
御が可能になるので、多孔質の成形型でガラス塊をプレ
ス成形するに先立って行う、ガラス塊を再加熱する工程
を、大幅に短縮、または、削減できる。 (第26の実施形態)図33は第26の実施形態に係わ
る光学素子成形用ガラス素材の作製方法を示す概略図で
ある。
【0323】図33(a)で501は図34に組成を示
すガラス素材であり、所要の体積になるように直方体に
切断されている。502はガラス素材の上面を形成する
ための多孔質カーボン材で高温ガスを吹き出す面502
aはR50に加工されている。503,504はガラス
素材の下面を形成するための多孔質カーボン材で高温ガ
ス(後の成形において非酸化状態である必要があり、本
実施形態ではN2を用いている)を吹き出す面503
a、504aはR28に加工されている。ここで下面を
形成する多孔質カーボン材を503,504と2分割に
しているのは後の成形においてガラス素材を下に落と
し、型に投入するためである。505,506は高温ガ
スを密閉するための外枠であり506は多孔質カーボン
材と同様に2分割されている。507,508,509は
高温ガスを導入するパイプであり、不図示の加熱装置か
ら高温ガスが送られていくる。
【0324】ここで高温ガスをこのガラスの粘度で10
6dPa・sである740℃に設定し、30リットル/
分の流量で高温ガスを吹き出し、図33(b)に示すよ
うに変形させた。図33(b)で510は高温ガス、5
11は変形したガラス素材である。2分後、上面形成用
の多孔質カーボン材502をガラス素材から遠ざけ下面
形成用の多孔質カーボン材503,504から吹き出す
高温ガスの流量を2リットル/分に絞った。これは吹き
出す時間とガラス素材の肉厚の関係をとると、2分後に
所要の肉厚8.7mmに達しており、ここで変形を抑え
るために上面形成用の多孔質カーボン材502を遠ざ
け、保持するに足りる流量だけ下面形成用の多孔質カー
ボン材503,504から高温ガスを吹き出した。また
2分間の変形中、上面形成用の多孔質カーボン材502
は吹き出し時間と変形量の関係から徐々に下に移動させ
ている。
【0325】この方法で作製したガラス素材の表面粗さ
を測定すると、熱変形前の切断されたブロック材ではR
maxで1μm以上あったのが0.02μmmになり、
成形用のガラス素材の仕様を満たしていた。比較例とし
て高温ガスの温度を変化させた時の状況を図35に示
す。先ず、ガラスの粘度で104.5dPa・sに相当す
る温度840℃に設定した時には変形が急であり流量を
絞っても自重により変形が進んでしまい、図35に示す
ように多孔質カーボン材の外まで変形してしまう。これ
はガラスの粘度で105dPa・sに相当する温度80
0℃以下であれば高温ガスの流量を絞ることにより発生
しない。逆に高温ガスの温度をガラスの粘度で108.5
dPa・sに相当する温度655℃に設定した時には変
形が非常に遅く所要の形状になるのに数十分を要し、表
面粗さもRmaxで0.04μm以下にならなかった。
しかし、ガラスの粘度で108dPa・sに相当する温
度675℃以上であれば変形も数分で完了し、表面粗さ
もRmaxで0.04μm以下になり、ガラス素材の仕
様を満たす。
【0326】このガラス素材をプレス成形して光学素子
を成形する方法を図36を用いて説明する。図36にお
いて512はレンズの上面を形成するための上型で、ガ
ラスと接触する面512aはR54に研磨してある。5
13はレンズの下面を形成するための下型で、ガラスと
接触する面513aはR30に研磨してある。514は
上下型の軸を合わせるための胴型である。図36(a)
に示すようにガラス素材を浮上させた状態で下型513
の真上に持ってゆき、図36(b)に示すように多孔質
カーボン部材を左右に開き下型上にガラス素材を落と
す。この時、上下型はこのガラスの粘度で1012dPa
・sに相当する570℃に不図示の加熱装置で調温して
ある。その後、多孔質カーボン材を胴型外へ出し、図3
6(c)のように上型を下降させプレスする。プレスは
ガラス素材の中心部から接触変形するようになってお
り、ガス残りは発生しない。プレス変形は上型のツバ部
512bが胴型の上部514aに突き当たった時点で終
了する。この方法で作製したレンズはフィゾー干渉計に
よるとアス及びクセがニュートンリング0.5本以下の
良好な形状精度を有していた。型の温度をこのガラスの
粘度で1013dPa・sより大きく(低温)したものは
変形が完了するまでにガラスの温度が下がってしまい押
し切らなかったり、レンズ表面がしわ状になる不良が発
生した。逆に型の温度をこのガラスの粘度で1010dP
a・sより小さく(高温)したものはプレス完了後すぐ
に取り出すと自重や取り出し時の外力により変形してし
まい形状精度が悪化したため1010dPa・sに相当す
る温度以下に冷却した後、取り出さなければならなかっ
た。また、型も劣化が激しく耐久性が低下した。以上の
ように本実施形態によるガラス素材の作製方法とその後
のプレス成形方法によれば、切断したガラスブロックか
ら安価に所要の容積、形状、表面粗さを有したガラス素
材を作成することができ、かつ成形時間の短縮と型の耐
久性の向上が図れる。
【0327】(第27の実施形態)図37に示すように
凹レンズ成形用のガラス素材を作製した。ガラスは第3
0の実施形態で用いたものと同じものである。高温ガス
の温度をガラスの粘度で107dPa・sに相当する7
05℃にし、流量を35リットル/分に設定した。3分
間吹き出すことにより所要の中心厚になった。3分間吹
き出した時点で上面形成用の多孔質カーボン部材518
からの高温ガスの温度をガラスの粘度で10 9.5dPa
・sに相当する620℃に、流量を5リットル/分に変
更し、下面形成用の多孔質カーボン部材519からの高
温ガスの温度はそのまま705℃、流量を5リットル/
分に変更した。2分後、高温ガスの吹き出しを止めると
同時に上面形成用の多孔質カーボン部材518への高温
ガス導入パイプ522から真空引きし、ガラス素材51
7を上面形成用の多孔質カーボン部材518に真空吸着
した。吸着前に上面形成用の多孔質カーボン部材518
からの高温ガスの温度を下げたのは、ガラス素材の温度
が高いと変形しやすく真空吸着によるガラス素材517
と多孔質カーボン部材518との接触面積が増えるた
め、この後の工程でガラスを下型上へ落下させるのが困
難になるためである。
【0328】真空吸着したまま、図38(a)に示すよ
うに下型の真上にガラス素材517を運び、図38
(b)に示すように少しガスを吹き出すことにより、ガ
ラス素材517を下型526上に落とす。この時上下型
525,526はガラスの粘度で1010dPa・sに相
当する600℃に調温してある。ここで528は、ガラ
ス素材を下型の中心にセットするための位置決めピンで
ある。その後、多孔質カーボン部材を胴型外へ出し、図
38(c)の様に上型525を下降させプレスする。こ
の時、位置決めピンは、プレス変形が開始するとガラス
素材517から遠ざかる。
【0329】この方法で作製したレンズはフィゾー干渉
計によるとアス及びクセがニュートンリング0.5本以
下の良好な形状精度を有していた。以上のように本実施
形態によるガラス素材の作製方法とその後のプレス成形
方法によれば、切断したガラスブロックから安価に所要
の容積、形状、表面粗さを有したガラス素材を作製する
ことができ、かつ成形時間の短縮と型の耐久性の向上が
図れる。
【0330】また、ガラス素材の上下面に温度差を設け
て、真空吸着によりガラス素材の搬送が可能となる。 (第28の実施形態)図39に示すように凸メニスカス
レンズ成形用のガラス素材531を作製した。ガラスは
図40に組成を示すガラスを用いた。第26の実施形態
と同様な方法でガラス素材531の作製及びプレス成形
を行った。ただし条件としては高温ガスはガラスの粘度
で106dPa・sに相当する温度740℃とし、3分
間40リットル/分の流量で吹き付けた。光学素子成形
用の上下型の温度はガラスの粘度で1012dPa・sに
相当する温度にした。
【0331】この方法で作製したレンズは形状精度とし
ては、フィゾー干渉計により、アス及びクセがニュート
ンリング0.5本以下と良好であったが、下型の劣化が
激しく成形品の曇耐久が100shot程度しかなかっ
た。そこで、下型の劣化を抑えるために、ガラス素材の
作製時、形状を形成した後、下面形成用の多孔質カーボ
ンからの高温ガスをガラスの粘度で109.5dPa・s
に相当する温度にして3分間保持した後下型へ投入し
た。すると下型の劣化はなくなり、2000shot成
形後も成形品の曇りは発生しなかった。
【0332】以上のように本実施形態によるガラス素材
の作製方法とその後のプレス成形方法によれば、切断し
たガラスブロックから安価に所要の容積、形状、表面粗
さを有したガラス素材を作製することができ、かつ成形
時間の短縮と型の耐久性の向上が図れる。また、型の劣
化が激しいガラスについてはガラス素材の下面の温度を
下げることにより型の耐久を向上させることができる。
【0333】本実施形態では多孔質部材としてカーボン
を用いたがその他多孔質セラミックや金属でも同様の効
果が得られた。上記の第26乃至第18の実施形態をま
とめると、第33の方法においては、切断あるいは研削
により所定の体積に調寸したガラス塊を多孔質部材の間
で高温ガスによりガラスの粘度で105〜108dPa・
sに加熱することにより所定の形状に変形させるととも
にその表面粗さをRmaxで0.04μm以下にする。
これは、高温ガスによる加熱であるため型とは直接接触
せず型の表面粗さの影響を受けない。またガラスの粘度
で105〜108dPa・sに加熱するため立方体や直方
体からレンズ形状などへの変形が可能である。
【0334】また、第34の方法においては、上記の第
33の方法で作製したガラス素材をそのガラスの粘度で
1010〜1013dPa・sに相当する温度に調温した型
に投入してプレス成形する。ガラス素材の温度が高温ガ
スで変形するほどの温度であるため型の温度がガラスの
粘度で1010dPa・sより小さい(高温)とガラスの
温度が高いため型の劣化が激しく、型の耐久性が落ちる
とともに、プレス後、成形品の取り出し温度(ガラスの
粘度で1010dPa・s以下)まで冷却する必要があり
成形時間が長くなる。型の温度をガラスの粘度で1010
〜1013dPa・sに相当する温度にすることにより型
の劣化が少なくなり、プレス後の冷却時間が短縮され
る。また型の温度がガラスの粘度で1013dPa・sよ
り大きい(低温)と変形途中でガラスが冷えてしまいプ
レス変形が完了しない。
【0335】なお、本発明は、その主旨を逸脱しない範
囲で、上記実施形態を修正又は変形したものに適用可能
である。
【0336】
【発明の効果】以上説明した様に、本発明によれば、成
形品と型の成形面との接触に起因する融着や面の転写不
良、及び型の成形面の劣化を回避することができる。ま
た、型の成形面と成形品の熱膨張差に起因する形状転写
不良を回避することが出来る。さらに、研削研磨等の加
工方法により発生する研削研磨屑等の廃棄物を極端に削
減することが可能となり、レンズ等の精密素子を大量に
安価に提供することが出来る。
【0337】また、融着や膜剥離の発生しやすいレンズ
周辺部で、型とガラスを非接触の状態で成形することが
でき、その結果融着などのトラブルがなく連続的に成形
を行うことが出来る。さらに、上下の型で噴出するガス
に温度差をつけることによって、離型したときに安定的
に成形品を下型上に残してハンドリングのトラブルを防
止できる。さらに、外形成形部材として多孔質材を使用
することにより、型の隙間にガラスが入り込まない状態
で芯取りの必要のない光学素子を得ることが出来る。
【0338】また、受け型から噴出しているガスの温度
を制御することにより、光学素子成形用素材として適し
た、下面に凹みのないガラス塊を、容易にかつ確実に製
造することが出来る。また、成形型から噴出しているガ
スの温度を制御することにより、ガラス塊をプレス成形
して所望の形状の成形ガラス塊を得る方法において、加
熱及び冷却に要する時間を短くすることが出来る。ま
た、受け型から噴出しているガスの温度をより正確かつ
素早く制御することにより、光学素子成形用素材として
適した、下面に凹みのないガラス塊を、より容易にかつ
確実に製造することが出来る。さらに、成形型から噴出
しているガスの温度をより正確かつ素早く制御すること
により、ガラス塊をプレス成形して所望の形状の成形ガ
ラス塊を得る方法において、加熱及び冷却に要する時間
をより短くすることが出来る。
【0339】また、ガラスブロックから任意の曲率半径
を有するレンズ状のガラス素材を安価に作製可能とな
る。また、型へ投入する前のガラス素材の上下面に温度
差を設けることが可能となり、型への搬送が有利にな
り、型の耐久性の向上も図れる。また、成形時間の短縮
も図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】精密素子の成形装置の概略構成図である。
【図2】成形素材の分離方法を説明するための図であ
る。
【図3】成形面の補正方法を示す概念図である。
【図3A】成形面の補正方法を示す概念図である。
【図4】型ユニットの構造を示す図である。
【図5】成形素材の状態を示す図である。
【図6】型の構造を示す図である。
【図7】芯取り後の光学素子の形状を示す図である。
【図8】型の材料を示す図である。
【図9】上型と下型の温度差を示す図である。
【図10】型の構造を示す図である。
【図11】芯取り後の光学素子の形状を示す図である。
【図12】ガスの流量と成形品の外観品質の関係を示す
図である。
【図13】型の構造を示す図である。
【図14】芯取りを不要にした光学素子を示す図であ
る。
【図15】型の構造を示す図である。
【図16】芯取りを不要にした光学素子を示す図であ
る。
【図17】型の構造を示す図である。
【図18】光学素子成形用素材を成形する工程を示す図
である。
【図19】光学素子成形用素材を成形する工程を示す図
である。
【図20】光学素子成形用素材を成形する工程を示す図
である。
【図21】光学素子成形用素材を成形する工程を示す図
である。
【図22】型の構造を示す図である。
【図23】光学素子成形用素材を成形する工程を示す図
である。
【図24】光学素子成形用素材を成形する工程を示す図
である。
【図25】光学素子成形用素材を成形する工程を示す図
である。
【図26】光学素子成形用素材を成形する工程を示す図
である。
【図27】型の構造を示す図である。
【図28】光学素子成形用素材を成形する工程を示す図
である。
【図29】光学素子成形用素材を成形する工程を示す図
である。
【図30】光学素子成形用素材を成形する工程を示す図
である。
【図31】光学素子成形用素材を成形する工程を示す図
である。
【図32】光学素子成形用素材を成形する工程を示す図
である。
【図33】凸レンズ成形用ガラス素材の製造方法を示す
図である。
【図34】ガラス素材の組成を示す図である。
【図35】変形しすぎたガラス素材を示す図である。
【図36】光学素子の成形方法を示す図である。
【図37】凹レンズ成形用ガラス素材の製造方法を示す
図である。
【図38】光学素子の成形方法を示す図である。
【図39】凸メニスカスレンズ成形用ガラス素材の製造
方法を示す図である。
【図40】ガラス素材の組成を示す図である。
【図41】凸面成形時のガス残り状態を示す図である。
【図42】凹面成形時のガス残り状態を示す図である。
【図43】ガラス素材の容量が大きすぎた場合を示す図
である。
【図44】ガラス素材の容量が小さすぎた場合を示す図
である。
【符号の説明】
1 型ユニット 2 下型構成部材 3 上型構成部材 11 下型部材 11a,21a 成形面 12 下型ホルダー 12a,22a 圧力室 13,23 ヒータ 21 上型部材 22 上型ホルダー 31 供給パイプ 32a,32b 圧力・流量調節器 33a,33b 加熱ヒータ 34a,34b フレキシブルチューブ 41 コントローラ 102a ガラス塊
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 久保 裕之 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 山本 潔 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 大森 正樹 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 宮崎 直 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内

Claims (51)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 光学形成面を設けた少なくとも一対の型
    部材の中にガラス素材を入れて、該型部材の閉成により
    前記ガラス素材を光学素子の形状に成形する光学素子の
    成形方法において、 前記型部材内に前記ガラス素材を載置する前に前記光学
    形成面に流体膜を形成し、 前記ガラス素材を前記型部材で加圧して形状変化させる
    際に、前記流体膜を介して前記ガラス素材に圧力を付与
    して成形することを特徴とする光学素子の成形方法。
  2. 【請求項2】 光学素子等の精密素子を溶融軟化状態の
    成形素材から直接に成形する方法において、 少なくとも二つ以上の型部材から構成され、それらによ
    り形成されるキャビティーの精密素子の形状を決定する
    成形面の形状が、所望する精密素子の最終形状になるよ
    うに予め補正された形状を有し、更に、それらの成形面
    が多孔質の材料から作られた型ユニットを準備する工程
    と、 前記型ユニットを開き、多孔質の成形面からキャビティ
    ー内に流体を噴出させるとともに、溶融軟化された成形
    素材を供給するノズルから、溶融軟化状態の成形素材を
    成形面と非接触状態を保った状態で前記型ユニットに供
    給する工程と、 成形素材の自重と表面張力により、前記ノズルから型ユ
    ニットの成形面上に供給された成形素材を、前記ノズル
    から分離する工程と、 前記成形面から流体を噴出させ、軟化状態の成形素材と
    成形面とを非接触状態を保った状態で前記型ユニットに
    圧力を加え、前記型ユニットを閉じ、前記成形素材を補
    正された成形面の状態にならわせ、補正された形状の成
    形品を得る工程と、 成形素材を型ユニットに供給した後から、型ユニットに
    圧力を加え型ユニットを閉じ、成形素材を成形面の形状
    に倣わせる工程の間に、成形素材への第1の冷却開始
    し、さらに前記型ユニットを閉じ、成形素材を成形面の
    形状にならわせた後に第二の冷却を開始し、成形品が所
    望する最終形状になるまでの間に冷却を行い精密素子の
    形状を得る工程と、 前記型ユニット内の精密素子の冷却完了後、型ユニット
    を開き精密素子を取り出す工程とを具備することを特徴
    とする精密素子の成形方法。
  3. 【請求項3】 光学素子等の精密素子を成形する方法に
    おいて、 少なくとも二つ以上の型部材から構成され、それらによ
    り形成されるキャビティーの精密素子の形状を決定する
    成形面の形状が、所望する精密素子の最終形状になるよ
    うに予め補正された形状を有し、更に、それらの成形面
    が多孔質の材料から作られた型ユニットを準備する工程
    と、 少なくとも成形後に機能面となる部分に対応する部分の
    表面に、高低差が5ミクロン以上の鋭角的な段差が存在
    しないように仕上げられた成形素材を準備する工程と、 前記型ユニットを開き、前記成形素材を型ユニットに供
    給するとともに、多孔質の成形面からキャビティー内に
    流体を噴出させ、成形素材を成形面と非接触状態を保っ
    た状態で加熱し、軟化させる工程と、 成形面から流体を噴出させ、軟化状態の成形素材と成形
    面とを非接触状態を保った状態で前記型ユニットに圧力
    を加え、該型ユニットを閉じ、成形素材を補正された成
    形面の状態にならわせ、補正された形状の成形品を得る
    工程と、 成形素材を加熱、軟化した直後から、前記型ユニットに
    圧力を加え該型ユニットを閉じ、前記成形素材を成形面
    の形状にならわせる工程までの間に、成形素材への冷却
    を開始し、成形品が所望する最終形状になるまでの間に
    冷却を行い精密素子の形状を得る工程と、 型ユニット内の精密素子の冷却完了後、型ユニットを開
    き精密素子を取り出す工程とを具備することを特徴とす
    る精密素子の成形方法。
  4. 【請求項4】 前記成形面の予め補正された形状が、成
    形面より噴出させる流体の圧力、流量、温度、及び成形
    素材の温度、粘度、及び型ユニットに与えられる圧力、
    温度、及び成形素材と成形面を形成する型部材の熱膨張
    率をパラメーターとして含むシミュレーションにより得
    られることを特徴とする請求項2又は3に記載の精密素
    子の成形方法。
  5. 【請求項5】 前記成形面の予め補正された形状が、前
    記所望する精密素子の最終形状に近似した形状を有し、
    該形状が前記成形素材の成形中及び成形終了後の成形デ
    ータ、形状データを演算処理することにより得られるこ
    とを特徴とする請求項2又は3に記載の精密素子の成形
    方法。
  6. 【請求項6】 前記成形面の多孔質部から噴出する流体
    の温度を制御する事により、成形素材の温度を制御する
    ことを特徴とする請求項2又は3に記載の精密素子の成
    形方法。
  7. 【請求項7】 前記流体の噴出圧力と流体の流量と型ユ
    ニットへの加圧力の内の少なくとも一つ以上が、成形素
    材の粘度に対応して制御されることを特徴とする請求項
    2又は3に記載の精密素子の成形方法。
  8. 【請求項8】 型ユニットに圧力を加え成形素材を加圧
    する際に、型ユニットを構成する型部材を成形素材に対
    し回転摺動させ、成形素材と成形面との間に存在する流
    体の圧力を制御することを特徴とする請求項2又は3に
    記載の精密素子の成形方法。
  9. 【請求項9】 請求項1乃至8のいずれか1項に記載の
    成形方法により成形されたことを特徴とする精密素子。
  10. 【請求項10】 光学素子等の精密素子を成形する方法
    において、 少なくとも二つ以上の型部材から構成され、それらによ
    り形成されるキャビティーの精密素子の形状を決定する
    成形面の形状が、所望する精密素子の最終形状になるよ
    うに予め補正された形状を有し、更に、それらの成形面
    が鏡面状態に仕上げられている多孔質の材料から作られ
    た型ユニットを準備する工程と、 少なくとも成形後に機能面となる部分に対応する部分の
    表面に、高低差が5μm以上の鋭角的な段差が存在しな
    い様に仕上げられた成形素材を準備する工程と、 前記型ユニットを開き、成形素材を型ユニットに供給す
    ると共に、多孔質の成形面からキャビティー内に流体を
    噴出させ、成形素材を成形面と非接触状態を保った状態
    で加熱し、軟化させる工程と、 成形面から流体を噴出させ、軟化状態の成形素材と成形
    面とを非接触状態を保った状態で型ユニットを閉じ、成
    形素材を型部材の補正された成形面の形状にならわせ、
    成形面の形状に近似した形状を有する予備成形品を得る
    工程と、 該予備成形品の表面近傍の粘度が107.6dPa・s以
    上となったときに、成形面からの流体の噴出を停止し、
    型ユニットに圧力を加えて閉じ、予備成形品と型部材の
    成形面を接触させた状態で加圧し、予備成形品の形状を
    成形面の形状にならわせ、補正された形状の精密素子を
    得る工程と、 補正された形状の精密素子の少なくとも表面近傍の粘度
    が108dPa・s以上となったときに、成形面から流
    体の噴出を再開すると共に、精密素子と成形面との間に
    空隙を設ける工程と、 成形素材を加熱、軟化した直後から、予備成形品を得る
    工程までの間に、成形素材への第1の冷却を開始し、さ
    らに補正された形状の精密素子を得た直後から第2の冷
    却を開始し、成形面からの流体の噴出を再開した直後か
    ら第3の冷却を開始し、成形品が所望する最終形状にな
    るまでの間に冷却を行い、精密素子の形状を得る工程
    と、 第2の冷却の際に、その素子の表面と成形面の密着を維
    持する様に、その素子の収縮に合わせて方部材を追従さ
    せる工程と、 型ユニット内の精密素子の冷却完了後、型ユニットを開
    き精密素子を取り出す工程とを具備することを特徴とす
    る精密素子の成形方法。
  11. 【請求項11】 前記成形面の予め補正された形状が、
    成形素材の温度、粘度、及び型ユニットに与えられる圧
    力、温度、及び成形素材と成形面を形成する型部材の熱
    膨張率の少なくとも1つをパラメーターとして含むシミ
    ュレーションにより得られることを特徴とする請求項1
    0に記載の精密素子の成形方法。
  12. 【請求項12】 前記成形面の予め補正された形状が、
    前記所望する精密素子の最終形状に近似した形状を有
    し、該形状が前記成形素材の成形中及び成形終了後の成
    形データ、形状データを演算処理することにより得られ
    ることを特徴とする請求項10に記載の精密素子の成形
    方法。
  13. 【請求項13】 前記成形面の多孔質部から噴出する流
    体の温度を制御する事により、成形素材の温度を制御す
    ることを特徴とする請求項10に記載の精密素子の成形
    方法。
  14. 【請求項14】 前記流体の噴出圧力と流体の流量と型
    ユニットへの加圧力の内の少なくとも一つ以上が、成形
    素材の粘度に対応して制御されることを特徴とする請求
    項10に記載の精密素子の成形方法。
  15. 【請求項15】 型ユニットに圧力を加え非接触の状態
    で成形素材を加圧する際及び形状転写後の型内での冷却
    の際に、型ユニットを構成する型部材を成形素材に対し
    回転摺動させ、成形素材と成形面との間に存在する流体
    の圧力を制御することを特徴とする請求項10に記載の
    精密素子の成形方法。
  16. 【請求項16】 請求項10乃至15のいずれか1項に
    記載の成形方法により成形されたことを特徴とする精密
    素子。
  17. 【請求項17】 光学素子等の精密素子を溶融軟化状態
    の成形素材から直接に成形する方法において、 少なくとも二つ以上の型部材から構成され、それらによ
    り形成されるキャビティーの精密素子の形状を決定する
    成形面の形状が、所望する精密素子の最終形状になるよ
    うに予め補正された形状を有し、更に、それらの成形面
    が鏡面状態に仕上げられている多孔質の材料から作られ
    た型ユニットを準備する工程と、 前記型ユニットを開き、多孔質の成形面からキャビティ
    ー内に流体を噴出させると共に、溶融軟化された成形素
    材を供給するノズルより、溶融軟化状態の成形素材を成
    形面と非接触状態を保った状態で型ユニットに供給する
    工程と、 成形素材の自重と表面張力により、前記ノズルから型ユ
    ニットの成形面上に供給された成形素材を分離する工程
    と、 成形面から流体を噴出させ、軟化状態の成形素材と成形
    面とを非接触状態を保った状態で型ユニットを閉じ、成
    形素材を型部材の補正された成形面の形状にならわせ、
    成形面の形状に近似した形状を有する予備成形品を得る
    工程と、 該予備成形品の表面近傍の粘度が107.6dPa・s以
    上となったときに、成形面からの流体の噴出を停止し、
    型ユニットに圧力を加えて閉じ、予備成形品と型部材の
    成形面を接触させた状態で加圧し、予備成形品の形状を
    成形面の形状にならわせ、補正された形状の精密素子を
    得る工程と、 成形素材をノズルから分離した直後から、予備成形品を
    得る工程までの間に、成形素材への第1の冷却を開始
    し、さらに補正された形状の精密素子を得た直後から第
    2の冷却を開始する工程と、 第2の冷却の際に、少なくとも、補正された形状の精密
    素子の表面と成形面との間に密着力が働いている間に、
    その素子の表面と成形面の密着を維持する様に、その素
    子の収縮に合わせて型部材を追従させる工程と、 少なくとも、素子の表面と成形面との間の密着力が解消
    するまでの冷却を行い、その後、型ユニットを開き所望
    の形状に近似した形状を有する成形素子を取り出す工程
    と、 所望の形状に近似した形状の成形素子をさらに室温まで
    冷却し、所望の形状の精密素子を得る工程とを具備する
    ことを特徴とする精密素子の成形方法。
  18. 【請求項18】 前記成形面の予め補正された形状が、
    成形素材の温度、粘度、及び型ユニットに与えられる圧
    力、温度、及び成形素材と成形面を形成する型部材の熱
    膨張率、及び成形素子の表面と成形面との間の密着力を
    パラメーターとして含むシミュレーションにより得られ
    ることを特徴とする請求項17に記載の精密素子の成形
    方法。
  19. 【請求項19】 前記成形面の予め補正された形状が、
    前記所望する精密素子の最終形状に近似した形状を有
    し、該形状が前記成形素材の成形中及び成形終了後の成
    形データ、形状データを演算処理することにより得られ
    ることを特徴とする請求項17に記載の精密素子の成形
    方法。
  20. 【請求項20】 前記成形面の多孔質部から噴出する流
    体の温度を制御する事により、成形素材の温度を制御す
    ることを特徴とする請求項17に記載の精密素子の成形
    方法。
  21. 【請求項21】 前記流体の噴出圧力と流体の流量と型
    ユニットへの加圧力の内の少なくとも一つ以上が、成形
    素材の粘度に対応して制御されることを特徴とする請求
    項17に記載の精密素子の成形方法。
  22. 【請求項22】 前記第2の冷却の際の型部材の追従
    が、成形面と精密素子の間の密着力により行われること
    を特徴とする請求項17に記載の精密素子の成形方法。
  23. 【請求項23】 前記第2の冷却の際の型部材の追従
    が、型部材に圧力を加えることにより行われることを特
    徴とする請求項17に記載の精密素子の成形方法。
  24. 【請求項24】 請求項17乃至23のいずれか1項に
    記載の成形方法により成形されたことを特徴とする精密
    素子。
  25. 【請求項25】 光学素子等の精密素子を成形する方法
    において、 少なくとも二つ以上の型部材から構成され、それらによ
    り形成されるキャビティーの精密素子の形状を決定する
    成形面の形状が、所望する精密素子の最終形状になるよ
    うに予め補正された形状を有し、更に、それらの成形面
    が鏡面状態に仕上げられている多孔質の材料から作られ
    た型ユニットを準備する工程と、 少なくとも成形後に機能面となる部分に対応する部分の
    表面に、高低差が5μm以上の鋭角的な段差が存在しな
    い様に仕上げられた成形素材を準備する工程と、 前記型ユニットを開き、成形素材を型ユニットに供給す
    ると共に、多孔質の成形面からキャビティー内に流体を
    噴出させ、成形素材を成形面と非接触状態を保った状態
    で加熱し、軟化させる工程と、 成形面から流体を噴出させ、軟化状態の成形素材と成形
    面とを非接触状態を保った状態で型ユニットを閉じ、成
    形素材を型部材の補正された成形面の形状にならわせ、
    成形面の形状に近似した形状を有する予備成形品を得る
    工程と、 該予備成形品の表面近傍の粘度が107.6dPa・s以
    上となったときに、成形面からの流体の噴出を停止し、
    型ユニットに圧力を加えて閉じ、予備成形品と型部材の
    成形面を接触させた状態で加圧し、予備成形品の形状を
    成形面の形状にならわせ、補正された形状の精密素子を
    得る工程と、 成形素材を加熱、軟化した直後から、予備成形品を得る
    工程までの間に、成形素材への第1の冷却を開始し、さ
    らに補正された形状の精密素子を得た直後から第2の冷
    却を開始する工程と、 第2の冷却の際に、少なくとも、補正された形状の精密
    素子の表面と成形面との間に密着力が働いている間に、
    その素子の表面と成形面の密着を維持する様に、その素
    子の収縮に合わせて型部材を追従させる工程と、 少なくとも、素子の表面と成形面との間の密着力が解消
    するまでの冷却を行い、その後、型ユニットを開き所望
    の形状に近似した形状を有する成形素子を取り出す工程
    と、 所望の形状に近似した形状の成形素子をさらに室温まで
    冷却し、所望の形状の精密素子を得る工程とを具備する
    ことを特徴とする精密素子の成形方法。
  26. 【請求項26】 前記成形面の予め補正された形状が、
    成形素材の温度、粘度、及び型ユニットに与えられる圧
    力、温度、及び成形素材と成形面を形成する型部材の熱
    膨張率、及び成形素子の表面と成形面との間の密着力を
    パラメーターとして含むシミュレーションにより得られ
    ることを特徴とする請求項25に記載の精密素子の成形
    方法。
  27. 【請求項27】 前記成形面の予め補正された形状が、
    前記所望する精密素子の最終形状に近似した形状を有
    し、該形状が前記成形素材の成形中及び成形終了後の成
    形データ、形状データを演算処理することにより得られ
    ることを特徴とする請求項25に記載の精密素子の成形
    方法。
  28. 【請求項28】 前記成形面の多孔質部から噴出する流
    体の温度を制御する事により、成形素材の温度を制御す
    ることを特徴とする請求項25に記載の精密素子の成形
    方法。
  29. 【請求項29】 前記流体の噴出圧力と流体の流量と型
    ユニットへの加圧力の内の少なくとも一つ以上が、成形
    素材の粘度に対応して制御されることを特徴とする請求
    項25に記載の精密素子の成形方法。
  30. 【請求項30】 前記第2の冷却の際の型部材の追従
    が、成形面と精密素子の間の密着力により行われること
    を特徴とする請求項25に記載の精密素子の成形方法。
  31. 【請求項31】 前記第2の冷却の際の型部材の追従
    が、型部材に圧力を加えることにより行われることを特
    徴とする請求項25に記載の精密素子の成形方法。
  32. 【請求項32】 請求項25乃至31のいずれか1項に
    記載の成形方法により成形されたことを特徴とする精密
    素子。
  33. 【請求項33】 光学素子等の精密素子を溶融軟化状態
    の成形素材から直接に成形する方法において、 少なくとも二つ以上の型部材から構成され、それらによ
    り形成されるキャビティーの精密素子の形状を決定する
    成形面の形状が、所望する精密素子の最終形状になるよ
    うに予め補正された形状を有し、更に、それらの成形面
    が鏡面状態に仕上げられている多孔質の材料から作られ
    た型ユニットを準備する工程と、 前記型ユニットを開き、多孔質の成形面からキャビティ
    ー内に流体を噴出させると共に、溶融軟化された成形素
    材を供給するノズルより、溶融軟化状態の成形素材を成
    形面と非接触状態を保った状態で型ユニットに供給する
    工程と、 成形素材の自重と表面張力により、前記ノズルから型ユ
    ニットの成形面上に供給された成形素材を前記ノズルか
    ら分離する工程と、 成形面から流体を噴出させ、軟化状態の成形素材と成形
    面とを非接触状態を保った状態で型ユニットを閉じ、成
    形素材を型部材の補正された成形面の形状にならわせ、
    成形面の形状に近似した形状を有する予備成形品を得る
    工程と、 該予備成形品の表面近傍の粘度が107.6dPa・s以
    上となったときに、成形面からの流体の噴出を停止し、
    型ユニットに圧力を加えて閉じ、予備成形品と型部材の
    成形面を接触させた状態で加圧し、予備成形品の形状を
    成形面の形状にならわせ、補正された形状の精密素子を
    得る工程と、 補正された形状の精密素子の少なくとも表面近傍の粘度
    が108dPa・s以上となったときに、成形面から流
    体の噴出を再開すると共に、精密素子と成形面との間に
    空隙を設ける工程と、 成形素材をノズルから分離した直後から、予備成形品を
    得る工程までの間に、成形素材への第1の冷却を開始
    し、さらに補正された形状の精密素子を得た直後から第
    2の冷却を開始し、成形面からの流体の噴出を再開した
    直後から第3の冷却を開始し、成形品が所望する最終形
    状になるまでの間に冷却を行い精密素子の形状を得る工
    程と、 第2の冷却の際に、その素子の表面と成形面の密着を維
    持する様に、その素子の収縮に合わせて型部材を追従さ
    せる工程と、 型ユニット内の精密素子の冷却完了後、型ユニットを開
    き精密素子を取り出す工程とを具備することを特徴とす
    る精密素子の成形方法。
  34. 【請求項34】 前記成形面の予め補正された形状が、
    成形素材の温度、粘度、及び型ユニットに与えられる圧
    力、温度、及び成形素材と成形面を形成する型部材の熱
    膨張率の少なくとも1つをパラメーターとして含むシミ
    ュレーションにより得られることを特徴とする請求項3
    3に記載の精密素子の成形方法。
  35. 【請求項35】 前記成形面の予め補正された形状が、
    前記所望する精密素子の最終形状に近似した形状を有
    し、該形状が前記成形素材の成形中及び成形終了後の成
    形データ、形状データを演算処理することにより得られ
    ることを特徴とする請求項33に記載の精密素子の成形
    方法。
  36. 【請求項36】 前記成形面の多孔質部から噴出する流
    体の温度を制御する事により、成形素材の温度を制御す
    ることを特徴とする請求項33に記載の精密素子の成形
    方法。
  37. 【請求項37】 前記流体の噴出圧力と流体の流量と型
    ユニットへの加圧力の内の少なくとも一つ以上が、成形
    素材の粘度に対応して制御されることを特徴とする請求
    項33に記載の精密素子の成形方法。
  38. 【請求項38】 型ユニットに圧力を加え非接触の状態
    で成形素材を加圧する際及び形状転写後の型内での冷却
    の際に、型ユニットを構成する型部材を成形素材に対し
    回転摺動させ、成形素材と成形面との間に存在する流体
    の圧力を制御することを特徴とする請求項33に記載の
    精密素子の成形方法。
  39. 【請求項39】 請求項33乃至38のいずれか1項に
    記載の成形方法により成形されたことを特徴とする精密
    素子。
  40. 【請求項40】 重量調整されたガラス素材を成形用型
    でプレスして光学素子を成形する方法において、 前記成形用型型が、光学素子の少なくとも光線有効径内
    を形成するための第1の型部材と、それ以外の部分を形
    成するための第2の型部材で構成され、第2の型部材の
    内部または表面を経由してガスを成形面に流しながら成
    形することを特徴とする光学素子の成形方法。
  41. 【請求項41】 プレス成形中に前記第2の型部材と成
    形された光学素子はガス層を介して非接触であることを
    特徴とする請求項40に記載の光学素子の成形方法。
  42. 【請求項42】 前記第2の型部材が多孔質セラミック
    または、多孔質金属または、多孔質炭素であることを特
    徴とする請求項40に記載の光学素子の成形方法。
  43. 【請求項43】 上型を構成する第2の型部材を経由す
    るガスの温度と、下型を構成する第2の型部材を経由す
    るガスの温度の差が10℃以上であることを特徴とする
    請求項40に記載の光学素子の成形方法。
  44. 【請求項44】 プレス成形された光学素子であって、
    少なくとも光線有効径内は型と接触した面であり、かつ
    それ以外の表面に非接触状態で型によって形状を形成さ
    れた部分を持つことを特徴とする光学素子。
  45. 【請求項45】 光学素子の成形用素材として用いるガ
    ラス塊を溶融ガラスから製造する方法において、 前記溶融ガラスを、多孔質材料からなり気体を噴出する
    受け型上に供給するときに、該受け型の背面に異なる温
    度の気体を供給することにより、該受け型から噴出する
    気体の温度を制御することを特徴とする光学素子成形用
    素材の製造方法。
  46. 【請求項46】 前記受け型上に溶融ガラスを供給する
    ときに、前記受け型の表面から気体を噴出している状態
    で、吐出ノズルから吐出される前記溶融ガラスを前記受
    け型上に受け、該受け型上に受けられた溶融ガラスの重
    量が所望の重量になった後に、前記受け型を下降させ、
    溶融ガラス流をくびれさせることにより溶融ガラス流を
    前記吐出ノズルから自然分離させることを特徴とする請
    求項45に記載の光学素子成形用素材の製造方法。
  47. 【請求項47】 前記溶融ガラスを前記受け型上に受け
    た後に、前記受け型から噴出する気体の温度を制御しな
    がら、前記受け型とそれに対向する上型により前記溶融
    ガラスをプレス成形することを特徴とする請求項45に
    記載の光学素子成形用素材の製造方法。
  48. 【請求項48】 多孔質の受け型及び上型の背面に供給
    するガスを、各々異なった温度のガスを供給することの
    できる複数のガス供給管から供給し、前記受け型及び上
    型の背面に供給されるガスの温度を変えるために、異な
    った温度のガスを供給できる複数のガス供給管のうちか
    ら適切なガス供給管を選択し、所望の温度のガスを前記
    受け型及び上型の背面に供給することを特徴とする、請
    求項45に記載の光学素子成形用素材の製造方法。
  49. 【請求項49】 ガラス光学素子のプレス成形用素材の
    製造方法において、 切断あるいは研削により所定の体積に調寸したガラス塊
    を多孔質部材の間で高温ガスで加熱することにより所定
    の形状に変形させることを特徴とするガラス光学素子成
    形用素材の製造方法。
  50. 【請求項50】 ガラス塊をそのガラスの粘度で105
    〜108 dPa・sに加熱することにより、所定の形状
    に変形させることを特徴とする請求項49に記載の光学
    素子成形用素材の製造方法。
  51. 【請求項51】 請求項50に記載の方法で加熱変形さ
    せたガラス光学素子成形用素材をそのガラスの粘度で1
    10〜1013dPa・sに相当する温度に調温した型に
    投入してプレスすることを特徴とする光学素子の成形方
    法。
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