JPH10156996A - 医療具用包装材料 - Google Patents

医療具用包装材料

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JPH10156996A
JPH10156996A JP32314596A JP32314596A JPH10156996A JP H10156996 A JPH10156996 A JP H10156996A JP 32314596 A JP32314596 A JP 32314596A JP 32314596 A JP32314596 A JP 32314596A JP H10156996 A JPH10156996 A JP H10156996A
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JP
Japan
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layer
packaging material
resin
anchor coat
film
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JP32314596A
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English (en)
Inventor
Ryuta Miyake
竜太 三宅
Toshihide Maruyama
俊秀 丸山
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Daicel Corp
Original Assignee
Daicel Chemical Industries Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 密着性およびバリア性の高い複合フィルムで
医療具を包装し、内容物の劣化変質を抑制するととも
に、視認性及び金属探知性を改善する。 【解決手段】 基材フィルムの少なくとも一方の面を、
必要によりアンカーコート層と、ケイ素酸化物などの無
機質層と、シランカップリング剤を含んでいてもよいバ
リア性樹脂(塩化ビニリデン系共重合体、エチレン−ビ
ニルアルコール共重合体など)とで順次被覆した複合フ
ィルムを用い、医療具を包装する。前記バリア性樹脂層
又は基材フィルムの他方の面には、ヒートシール層を形
成してもよい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、医療具、例えば、
点眼液,輸液や,コンタクトレンズ洗浄液,ビタミン
剤,栄養補助食品,化粧料などの医薬部外品、白衣,シ
ーツ,包帯,ガーゼ,シリンジ,カテーテル,輸液バッ
グなどを包装するのに有用な包装材料及び医療具の保存
又は保管方法に関する。
【0002】
【従来の技術】フォーク,スプーン,白衣などの衛生器
具や、シリンジなどの医療器具の包装には、内容物の変
質劣化や外部からの汚染を防止するため、高い安全衛生
性が要求される。特に、防腐剤の添加が規制されている
治療剤やその付属品、例えば、点眼液やコンタクトレン
ズ洗浄液,化粧料などでは、水分の揮散・侵入や酸素ガ
スの侵入などによる腐敗・変質防止のための高い非変質
性と、非汚染性が要求される。このような包装材料とし
て、ポリエチレン,ポリプロピレンなどのポリオレフィ
ンフィルム、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエ
ステルフィルムなどが利用されている。しかし、このよ
うなフィルムは、酸素ガス及び水分の双方に対する高い
バリア性を両立できない。そのため、腐敗・劣化や乾燥
を抑制しつつ長期間に亘り医療具を保存することが困難
である。特に防腐剤などの変質劣化防止剤を含まない治
療剤などの医療具については、長期間に亘り組成の変化
とともに、腐敗・変質を防止することが困難である。
【0003】バリア性の高い包装材料として、ポリエチ
レンなどの基材フィルムにアルミニウム箔を積層した複
合フィルムも知られている。この複合フィルムは、アル
ミニウム箔の積層により高いバリア性を確保できる。し
かし、アルミニウム箔を備えたフィルムは不透明である
ため、内容物の視認性がない。さらに、金属片の混入を
回避するため、治療剤などの医療具の包装体は金属探知
機による検査が行われる。しかし、アルミニウム箔を備
えた積層フィルムを用いると、袋体内に金属片が混入し
ていなくても、金属探知機が金属片が混入していると誤
って検知する。そのため、高い安全性が要求される包装
材料として、アルミニウム箔の積層フィルムは適さな
い。
【0004】一方、特公平8−18395号公報には、
基材フィルムに、二液硬化型ポリウレタンと5〜30重
量%の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の混合物層を形
成し、この混合物層に酸化マグネシウムなどの金属酸化
物の蒸着層を形成した蒸着フィルムが開示されている。
特開平3−86539号公報には、基材フィルムの表面
に、ポリイソシアネート化合物と飽和ポリエステルポリ
オールとで構成された反応性の二液硬化型の樹脂組成物
を塗布し、塗布面にケイ素酸化物薄膜層を形成し、レト
ルト適性を有する包装用フィルムを得ることが開示され
ている。特開平3−278946号公報には、基材フィ
ルムの表面に、アンカーコート層、金属酸化物薄膜およ
びヒートシール層を順次形成したレトルト処理用包装材
料が開示されている。特開平4−173137号公報に
は、フィルムに二液硬化型ポリウレタンなどの下塗り層
を形成し、この下塗層上に無機酸化物の薄膜層を形成
し、この薄膜層上へ塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、
ポリアミド、ポリエステル、アクリル樹脂を塗布した
り、ホットメルトコーテング剤を塗布することにより、
ヘリウム、水素ガスに対する高いバリア性のバルーン用
積層体が開示されている。
【0005】特開平5−131590号公報には、基材
フィルムの少なくとも片面に形成したケイ素酸化物薄膜
上に、末端にアミノ基を有するシランカップリング剤の
薄膜層を介して、酸無水物基を有する樹脂層を積層した
積層フィルムが開示されている。特開平3−23953
7号公報には、基材フィルム上に、ケイ素酸化物からな
る第1の透明層と、シランカップリング剤からなる第2
の透明層と、透明な感圧性又は感熱性接着剤層とを順次
形成した積層フィルムが開示されている。
【0006】さらに、特開平7−80986号公報に
は、包装フィルムとして、基材フィルムの少なくとも一
方の面に、ケイ素酸化物などの透明性無機質層を介し
て、塩化ビニリデン系樹脂などのバリア性樹脂コーティ
ング層が形成されたバリア性フィルムが開示されてい
る。特開平7−285191号公報には、レトルト処理
や電子レンジ加熱に適した包装フィルムとして、基材フ
ィルムの少なくとも一方の面に、ケイ素酸化物などの透
明性無機質層を介して、塩化ビニリデン系樹脂などのバ
リア性樹脂コーティング層を形成し、さらに基材フィル
ムの他方の面又はバリア性樹脂コーティング層にヒート
シール層を形成したバリア性フィルムが開示されてい
る。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、防腐
剤などの変質劣化防止剤を含んでいなくても、医療具の
変質や劣化を抑制しつつを長期間に亘り保存又は保管で
きるとともに、視認性及び金属探知性の高い包装材料を
提供することにある。本発明の他の目的は、極めて高い
安全衛生性が要求される医療具であっても、長期間に亘
り保存又は保管できる方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記目的
を達成するため鋭意検討の結果、基材フィルムに、透明
な無機化合物層とガスバリア性樹脂層とを積層すると、
酸素ガス,水分などに対する高いバリア性、視認性及び
金属探知性を両立できることを見いだし、本発明を完成
した。すなわち、本発明の医療具用包装材料は、複合フ
ィルムで構成された包装材料であって、基材フィルムの
少なくとも一方の面に形成された透明無機化合物層と、
この無機化合物層を被覆するバリア性樹脂層とで構成さ
れている。前記無機化合物層は、周期表2A族元素、遷
移元素、2B族元素、3B族元素、4B族元素および6
B族元素から選ばれた金属酸化物で構成できる。前記バ
リア性樹脂層は、塩化ビニリデン系共重合体、エチレン
−ビニルアルコール共重合体などで構成でき、バリア性
樹脂層は、さらに、シランカップリング剤を含んでいて
もよい。さらに、基材フィルムと透明無機化合物層との
間には、アンカーコート層が介在していてもよい。この
アンカーコート層は、例えば、(i)少くとも塩素含有
樹脂を含むアンカーコート剤や、(ii)ポリイソシアネ
ート化合物と塩素含有樹脂及び/又は飽和ポリエステル
樹脂とを含むアンカーコート剤で構成できる。本発明に
は、例えば、次のような包装材料も含まれる。 (A)ポリプロピレン、ポリアルキレンテレフタレート
又はポリアミドで構成された基材フィルム層の少なくと
も一方の面に、(i)少くとも塩素含有樹脂、又は(i
i)ポリイソシアネート化合物と塩素含有樹脂及び/又
は飽和ポリエステル樹脂とを含むアンカーコート層と、
金属酸化物で構成され、かつ透明性を有する無機化合物
層と、シランカップリング剤と塩化ビニリデン系共重合
体又はエチレン−ビニルアルコール共重合体とを含むバ
リア性樹脂層とがこの順に形成されている医療具用包装
材料、 (B)基材フィルム層の少くとも一方の面に、アンカー
コート層、透明無機化合物層、およびバリア性樹脂層が
順次形成された複合フィルムであって、前記アンカーコ
ート層の弾性率が0.1×101 〜1×103 N/mm
2 である医療具用包装材料、 (C)基材フィルム層の少くとも一方の面に、アンカー
コート層、透明無機化合物層、およびバリア性樹脂層が
順次形成された複合フィルムであって、基材フィルム層
の厚さが10〜30μm、アンカーコート層、無機化合
物層及びバリア性樹脂層で構成された被覆層の厚さが
0.5〜5μmであるとき、温度25℃で酸素ガス透過
率が1cc/m2 ・24時間以下、温度40℃及び90
%相対湿度で水蒸気透過率が3g/m2 ・24時間以下
である医療具用包装材料。さらに、基材フィルム層の他
方の面又はバリア性樹脂層は、ポリマー層で被覆しても
よく、このポリマー層はヒートシール層であってもよ
い。本発明は、基材フィルムの少なくとも一方の面に形
成された透明無機化合物層と、この無機化合物層を被覆
するバリア性樹脂層とで構成されている複合フィルムで
医療具を密封状態で包装する医療具の保存又は保管方法
も提供する。
【0009】なお、本明細書において、「無機化合物
層」とは金属単体以外の無機物質層を意味し、単に「無
機質層」という場合がある。「医療具」とは、衛生性が
必要とされる種々の物品、例えば、点眼液,輸液などの
治療剤、コンタクトレンズ洗浄液,ビタミン剤、栄養補
助食品,化粧料などの医薬部外品,医療器具や医療用品
(シリンジ,カテーテル,輸液バッグなど),医療器具
の付属品(白衣,シーツ,包帯,ガーゼなど)などを意
味する。「バリア性樹脂層」とは、厚さ2μmにおい
て、温度25℃で酸素ガス透過率20cc/m2 ・24
時間以下、温度40℃、90%相対湿度で水蒸気透過率
20g/m2 ・24時間以下のバリア性樹脂を含む層を
意味する。また、「ヒートシール層」とは、ヒートシー
ラーによる熱接合に限らず、インパルスシール、高周波
接合、超音波接合などの方法により熱接合可能な層を意
味する。
【0010】
【発明の実施の形態】医療具を包装するための本発明の
包装材料は、基材フィルムの少なくとも一方の面に形成
された透明無機質層と、この無機質層を被覆するバリア
性樹脂層とで構成されている。前記基材フィルムと透明
無機質層との間にはアンカーコート層が介在してもよ
い。
【0011】[基材フィルム層]基材フィルム層を構成
するポリマーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプ
ロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ−4−
メチルペンテン−1などのポリオレフィン;ポリアルキ
レンテレフタレート(ポリエチレンテレフタレート、ポ
リブチレンテレフタレートなど)、ポリアルキレンナフ
タレート(ポリエチレン−2,6−ナフタレートな
ど)、ポリアリレートなどのポリエステル;ナイロン
6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイ
ロン610、ナイロン6/66、ナイロン66/61
0、ナイロンMXDなどのポリアミド;ポリ塩化ビニ
ル;スチレン系樹脂;ポリビニルアルコール;ポリカー
ボネート;ポリアクリロニトリル;セルロース系ポリマ
ー;前記種々のポリマーの構成成分を含む共重合体など
が例示される。これらのポリマーは一種または二種以上
を混合して用いることができる。好ましい基材フィルム
層は、通常、オレフィン系ポリマー(特にポリプロピレ
ン系ポリマーなど)、ポリエステル(特にポリエチレン
テレフタレートなどのポリアルキレンテレフタレー
ト)、ポリアミドで構成されている。
【0012】基材フィルム層は、種々の添加剤、例え
ば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤などの安定
剤;帯電防止剤;結晶核成長剤;炭化水素系重合体;可
塑剤;ワックス;無機又は有機微粉末状滑剤;着色剤な
どを含有していてもよい。基材フィルム層の光線透過率
は、適当に選択でき、包装内容物の視認性と美観のため
には、白色光線での全光線透過率が、通常、60%以
上、好ましくは80%以上である。基材フィルム層は、
単層フィルムや積層フィルムであってもよい。基材フィ
ルム層の厚みは、通常、3〜200μm、好ましくは5
〜100μm、さらに好ましくは10〜50μm(例え
ば、10〜30μm)程度である。基材フィルム層は、
未延伸であってもよく、一軸又は二軸延伸処理されてい
てもよい。延伸倍率は、例えば、少なくとも一方の方向
に1.5〜20倍、好ましくは2〜15倍程度である。
基材フィルム層の少なくとも一方の面は、コロナ放電処
理、プラズマ処理などにより表面処理してもよい。な
お、基材フィルム層のうち、表面処理を施した面に、ア
ンカーコート層を形成すると、密着性を高めることがで
きる。
【0013】[アンカーコート層(下塗層)]前記基材
フィルム層には透明無機質層を直接形成してもよいが、
アンカーコート層(又はアンダーコート層)を介して、
基材フィルム層の少くとも一方の面に透明性無機質層を
形成すると、基材フィルム層と無機質層との密着性およ
びバリア性を大きく改善できる。アンカーコート層は、
種々の樹脂、例えば、熱可塑性樹脂(アクリル系樹脂、
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラー
ル、ポリカーボネート、ニトロセルロースやセルロース
アセテートなどのセルロース系ポリマー、ロジン変性マ
レイン酸樹脂など)、熱硬化性樹脂(ウレタン系樹脂、
尿素系樹脂、メラミン系樹脂、尿素−メラミン系樹脂、
エポキシ系樹脂など)、光線硬化性樹脂(エポキシ(メ
タ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートなど
の電子線硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂など)で構成す
ることができる。好ましいアンカーコート層は軟質であ
り、アンカーコート層の弾性率は、例えば、0.1×1
1 〜1×103 N/mm2 、好ましくは0.5×10
1 〜7×102 N/mm2 、特に1×101 〜5×10
2 N/mm2 程度である。
【0014】好ましいアンカーコート層には、(i)少
くとも(A)塩素含有樹脂を含むアンカーコート層、(i
i)(B)ポリイソシアネート化合物と(A)塩素含有樹
脂及び/又は(C)飽和ポリエステル樹脂とを含むアン
カーコート層が含まれ、通常、軟質である。特に好まし
いアンカーコート層は、例えば、(A)塩素含有樹脂、
(B)ポリイソシアネート化合物、(C)飽和ポリエステ
ル樹脂などで構成できる。前記(C)飽和ポリエステル
樹脂は軟質であるとともに、前記ポリイソシアネート化
合物に対して実質的に非反応性の飽和ポリエステル樹脂
であるのが好ましい。(C)飽和ポリエステル樹脂とし
て(B)ポリイソシアネート化合物との反応性を有する
ポリエステルポリオールを用いると、架橋反応に起因す
るためか、密着性およびバリア性が大きく低下する場合
がある。また、(B)ポリイソシアネート化合物と(C)
軟質で非反応性の飽和ポリエステル樹脂とを組合わせて
も、アンカーコート層のブロッキング性は(A)塩素含
有樹脂により改善できる。なお、「実質的に非反応性」
とは、架橋した硬化物を生成しないことを意味する。以
下、(A)塩素含有樹脂、(B)ポリイソシアネート化合
物、(C)飽和ポリエステル樹脂について説明する。
【0015】(A)塩素含有樹脂 塩素含有樹脂には、塩素含有モノマーの単独重合体又は
共重合体(塩素含有モノマーと共重合性モノマーとの共
重合体)、塩素含有モノマーをグラフト共重合させたグ
ラフト共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロ
ピレンなどの塩素化ポリオレフィンなどが含まれる。塩
素含有モノマーには、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリ
デンなど、特に塩化ビニルが含まれ、単独又は二種以上
組合わせて使用できる。共重合性モノマーとしては、例
えば、オレフィン(エチレン、プロピレンなど)、ビニ
ルエステル(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなど)、
シアン化ビニル(アクリロニトリルなど)、(メタ)ア
クリル酸エステル(アクリル酸C1-12アルキルエステル
など)などが例示できる。これらの共重合性モノマーは
単独で又は二種以上組合わせて使用できる。また、少量
であれば、共重合性モノマーとして、重合性カルボン酸
又はその誘導体(アクリル酸、メタクリル酸、イタコン
酸、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸モノアル
キルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル、これら
に対応するフマル酸又はその誘導体など)を使用しても
よい。グラフト共重合体には、例えば、エチレン−酢酸
ビニル共重合体(EVA)に塩化ビニル(VC)をグラ
フト共重合させたグラフト共重合体、ポリウレタンに塩
化ビニルをグラフト共重合させたグラフト共重合体など
が含まれる。
【0016】好ましい塩素含有樹脂には、ポリ塩化ビニ
ル、塩化ビニル系共重合体[例えば、少くとも塩化ビニ
ルおよび共重合性モノマー(特に酢酸ビニルなど)をモ
ノマー成分とする塩化ビニル系共重合体(特に塩化ビニ
ル−酢酸ビニル系共重合体など)]が含まれる。好まし
い塩素含有樹脂には、塩化ビニルおよび共重合性モノマ
ーの二成分に加えて、重合性カルボン酸又はその誘導体
(例えば、無水マレイン酸など)などの第三成分もモノ
マー成分とする共重合体も含まれる。塩化ビニルと共重
合性モノマー(例えば、酢酸ビニル)との割合は、例え
ば、塩化ビニル/共重合性モノマー=95/5〜50/
50(重量比)、好ましくは95/5〜65/35(重
量比)程度の範囲から選択できる。
【0017】(A)塩素含有樹脂はポリイソシアネート
化合物に対して実質的に非反応性である。すなわち、
(A)塩素含有樹脂は(B)ポリイソシアネート化合物に
対して非反応性であるか、反応性の活性水素原子を有し
ていたとしても活性水素原子の濃度は低濃度である。塩
素含有樹脂の酸価は、例えば、0〜30mgKOH/
g、好ましくは0〜20mgKOH/g程度である。な
お、塩素含有樹脂の酸価は、通常、重合性カルボン酸又
はその誘導体に起因する。前記塩素含有樹脂のガラス転
移温度は、例えば、25〜80℃(例えば、25〜60
℃)、好ましくは30〜60℃程度、特に30〜50℃
程度である。塩素含有樹脂の分子量及び重合度は、例え
ば、数平均分子量0.5×104 〜10×104 、好ま
しくは1×104 〜5×104 、さらに好ましくは1×
10 4 〜3×104 程度、平均重合度100〜100
0、好ましくは150〜800、さらに好ましくは20
0〜700(例えば、300〜700)程度である。
【0018】(B)ポリイソシアネート化合物 ポリイソシアネート化合物としては、分子中に少くとも
2つのイソシアネート基を有する化合物、例えば、2,
4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイ
ソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレ
ンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシア
ネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリジン
ジイソシアネート[ビス(4−イソシアネート−3−メ
チルフェニル)メタン]、トリフェニルメタントリイソ
シアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネートなど
の芳香族ジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジ
イソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネ
ート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、
1,10−デカメチレンジイソシアネート、リジンジイ
ソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシ
アネートなどの脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジ
イソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネー
ト、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートなどの
脂環族ジイソシアネート、ポリイソシアネートの変性体
などが例示される。ポリイソシアネートの変性体には、
例えば、多価アルコールに対してポリイソシアネートが
付加したアダクト体、二量体、イソシアヌレート環を有
する三量体、アロハネート変性体、ウレア変性ポリイソ
シアネート、ビュレット変性ポリイソシアネートなどが
含まれる。前記アダクト体における多価アルコールに
は、3以上のヒドロキシル基を有する低分子量ポリオー
ル、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ト
リメチロールエタンなどのトリオール、ペンタエリスリ
トールなどテトラオールなどが含まれる。これらのポリ
イソシアネートは一種又は二種以上使用できる。
【0019】好ましいポリイソシアネート化合物には、
分子中に3以上のイソシアネート基を有する低分子量化
合物、例えば、トリメチロールプロパン1モルにポリイ
ソシアネート化合物(ジイソシアネートなど)3モルが
付加したアダクト体などが含まれる。ポリイソシアネー
ト化合物の分子量は、例えば、150〜1000、好ま
しくは300〜1000程度の範囲から選択できる。
【0020】(C)飽和ポリエステル樹脂 飽和ポリエステル樹脂としては、多価カルボン酸又はそ
の酸無水物若しくは低級アルコールエステルと、多価ア
ルコールとの縮合反応により得られる種々のポリエステ
ルが使用できる。縮合反応にはオキシカルボン酸を用い
てもよい。多価カルボン酸成分としては、例えば、フタ
ル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、
ピロメリット酸などの芳香族カルボン酸およびそれらの
酸無水物(特にフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸
などの芳香族ジカルボン酸又はその酸無水物);コハク
酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン
酸などの脂肪族カルボン酸およびそれらの酸無水物(特
にアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの飽和脂
肪族ジカルボン酸)などが挙げられる。オキシカルボン
酸には、例えば、β−オキシプロピオン酸、β−オキシ
酪酸などが含まれる。
【0021】多価アルコール成分としては、例えば、エ
チレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレ
ングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタ
ンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキ
サンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族二
価アルコール;ジエチレングリコール、トリエチレング
リコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレング
リコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレ
ングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール
などのポリオキシアルキレングリコール;グリセリン、
トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペン
タエリスリトールなどの脂肪族多価アルコール;シクロ
ヘキサンジオール、水添ビスフェノールAなどの脂環族
多価アルコール;2,2−ビス(4−ジヒドロキシエチ
ルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ジヒドロキ
シプロピルフェニル)プロパンなどのビスフェノールA
とアルキレンオキサイドとの付加物などの芳香族多価ア
ルコールが挙げられる。なお、残存するヒドロキシル基
やカルボキシル基を封鎖するため、末端封鎖剤として、
一価アルコール、モノカルボン酸などを用いてもよい。
【0022】好ましいポリエステル樹脂は、通常、(C
1)ポリアルキレンテレフタレート以外のポリエステル
であって、有機溶媒に可溶な非結晶性ポリエステル(例
えば、非結晶性線状ポリエステル)である。このような
ポリエステル樹脂には、テレフタル酸、フタル酸、イソ
フタル酸などの芳香族多価カルボン酸に由来する芳香環
を有するポリエステル(例えば、オイルフリー芳香族ポ
リエステルなど)、(C2)ポリアルキレンエーテルグリ
コール単位(ポリテトラメチレンエーテルグリコール単
位など)をソフトセグメント、ポリアルキレンテレフタ
レート単位(ポリエチレンテレフタレートやポリブチレ
ンテレフタレート単位など)をハードセグメントとする
熱可塑性エラストマーが含まれる。前記飽和ポリエステ
ル樹脂(C1)には、ポリアルキレンテレフタレートのア
ルキレングリコール及び/又はテレフタル酸の一部を、
他のジオール(例えば、ジエチレングリコール、トリエ
チレングリコールなどの軟質ジオール成分など)及び/
又はジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、アジピン
酸など)で置換した変性ポリエステル(変性ポリアルキ
レンテレフタレート)、イソフタル酸とグリコール(エ
チレングリコールなど)を主成分とするイソフタル酸系
ポリエステルが含まれる。
【0023】飽和ポリエステル樹脂は、ポリイソシアネ
ート化合物と組合わせて二液硬化性接着剤を構成するた
めのポリオール(ポリエステルポリオール、ポリエーテ
ルポリオール、アクリルポリオールなど)と明確に区別
される。すなわち、二液硬化性接着剤を構成するポリオ
ールは、ポリイソシアネート化合物との架橋反応のた
め、通常、40mgKOH/g以上のOH価を有してい
るが、飽和ポリエステル樹脂は、前記塩素含有樹脂と同
様に、ポリイソシアネート化合物に対して実質的に非反
応性である。飽和ポリエステル樹脂のOH価は、例え
ば、0〜15mgKOH/g、好ましくは0〜10mg
KOH/g程度であり、0〜5mgKOH/g程度であ
る場合が多い。また、飽和ポリエステル樹脂の酸価は、
例えば、0〜10mgKOH/g、好ましくは0〜7m
gKOH/g程度であり、0〜5mgKOH/g程度で
ある場合が多い。本発明の包装材料において、過酷な条
件に晒されるか否かに拘らず、基材フィルム層と無機質
層との密着性およびバリア性を高いレベルに維持するた
め、軟質の非反応性の飽和ポリエステル樹脂を用いるの
が有利である。飽和ポリエステル樹脂のガラス転移温度
は、例えば、−10℃〜20℃、好ましくは−5℃〜1
5℃(例えば、0〜15℃)程度であり、通常、0〜2
0℃程度である。飽和ポリエステル樹脂の分子量は、密
着性やバリア性を損なわない範囲で選択でき、例えば、
数平均分子量0.5×104 〜10×104 、好ましく
は1×104 〜5×104 、さらに好ましくは1×10
4 〜3×104 程度である。
【0024】成分(A)(B)(C)の割合 アンカーコート層を前記成分(A)(B)(C)で構成す
る場合、各成分の割合は、例えば、(A)塩素含有樹脂
100重量部に対して、(B)ポリイソシアネート化合
物10〜500重量部(好ましくは25〜400重量
部、さらに好ましくは30〜300重量部)、(C)飽
和ポリエステル樹脂1〜50重量部(好ましくは2〜5
0重量部、さらに好ましくは5〜30重量部)程度であ
る。なお、各成分の割合が、(A)塩素含有樹脂100
重量部に対して、(B)ポリイソシアネート化合物30
〜200重量部(例えば、30〜150重量部)、
(C)飽和ポリエステル樹脂3〜20重量部(例えば、
5〜20重量部)程度のアンカーコート層を形成して
も、高い密着性およびバリア性を確保できる。(C)飽
和ポリエステル樹脂の割合は、通常、(B)ポリイソシ
アネート化合物の使用量よりも少なく、例えば、(B)
ポリイソシアネート化合物100重量部に対して5〜5
0重量部、好ましくは7〜40重量部、さらに好ましく
は10〜30重量部程度である。アンカーコート層を、
前記成分(B)と、成分(A)又は成分(C)で構成する
場合、(A)塩素含有樹脂の割合は、(B)ポリイソシア
ネート化合物100重量部に対して50〜250重量部
(好ましくは75〜200重量部)程度であり、(C)
飽和ポリエステル樹脂の割合は、(B)ポリイソシアネ
ート化合物100重量部に対して5〜50重量部(好ま
しくは10〜25重量部)程度である。
【0025】なお、アンカーコート層は、種々の添加
剤、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤など
の安定剤;可塑剤;充填剤;着色剤などを含有してもよ
い。
【0026】アンカーコート層(下塗層)の厚みは、無
機質層に対する密着性を向上させ、バリア性を損わない
範囲、例えば、0.01〜5μm(例えば、0.1〜5
μm)、好ましくは0.1〜1μm(例えば、0.2〜
1μm)程度の範囲から選択でき、0.2〜0.7μm
程度であってもガスバリア性を低下させることなく、無
機質層に対して高い密着性を示す。
【0027】[無機質層]基材フィルム層には、直接又
は前記アンカーコート層を介して透明性無機質層が形成
されている。特に、前記アンカーコート層と透明性無機
質層とバリア性樹脂層(特にシランカップリング剤を含
有するバリア性樹脂層)とを組み合わせて、基材フィル
ムの表面を被覆すると、基材フィルム層と無機質層との
密着性を著しく改善できるだけでなく、バリア性も大き
く改善できる。さらに、機械的外力が作用したり、高温
多湿の過酷な条件に晒されても、密着性およびガスバリ
ア性の低下を著しく抑制できる。さらに、無機質層とバ
リア性樹脂層との親和性が高いためか高い透明性を有
し、バリア性樹脂層が薄くても、優れたバリア性を有す
るフィルムが得られる。
【0028】無機質層を構成する無機化合物としては、
透明性薄膜を形成できる無機物、例えば、ベリリウム、
マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム
などの周期表2A族元素;チタン、ジルコニウム、ルテ
ニウム、ハフニウム、タンタルなどの周期表遷移元素;
亜鉛などの周期表2B族元素;アルミニウム、ガリウ
ム、インジウム、タリウムなどの周期表3B族元素;ケ
イ素、ゲルマニウム、錫などの周期表4B族元素;セレ
ン、テルルなどの周期表6B族元素などの元素を含む無
機化合物、例えば、酸化物、ハロゲン化物、炭化物、窒
化物などが挙げられる。これらは一種または二種以上用
いることができる。好ましい無機物には、例えば、マグ
ネシウム、カルシウム、バリウムなどの周期表2A族元
素;チタン、ジルコニウム、タンタル、ルテニウムなど
の周期表遷移元素;亜鉛などの周期表2B族元素;アル
ミニウム、インジウム、タリウムなどの周期表3B族元
素;ケイ素、錫などの周期表4B族元素;セレンなどの
周期表6B族元素の酸化物が含まれる。特に周期表3B
族元素又は4B族元素の金属酸化物により、透明性を有
する無機質層を形成するのが好ましい。
【0029】前記無機物のなかでも前記元素を含む酸化
物(例えば、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化インジウ
ム又はこれらの複合酸化物やケイ素酸化物など)は透明
性やバリア性に優れている。特に、ケイ素酸化物は、前
記特性に加えて、緻密な薄膜を形成でき、バリア性樹脂
層を構成するポリマーとの親和性が高く、機械的外力が
作用しても、無機質層に亀裂や欠陥が生成せず、高温に
おいても高いバリア性を長期間に亘り維持できる。な
お、ケイ素酸化物には、一酸化ケイ素や、二酸化ケイ素
のみならず、組成式SiOx (式中、0<x≦2、好ま
しくは0.8≦x≦1.5)で表されるケイ素酸化物が
含まれる。包装体における金属探知性を高めるために
は、導電率の低い無機化合物、例えば、酸化物、ハロゲ
ン化物、炭化物、窒化物などの非導電性無機物が有用で
ある。好ましい非導電性無機物には、酸化物、特にケイ
素酸化物などが有用である。
【0030】無機質層の厚さは、通常、100〜500
0オングストローム(0.01〜0.5μm)、好まし
くは200〜3000オングストローム(0.02〜
0.3μm)、さらに好ましくは300〜1500オン
グストローム(0.03〜0.15μm)程度の範囲か
ら選択できる。厚さが100オングストローム未満で
は、均質な薄膜の形成が困難であり、十分なバリア性や
機械的強度が得られず、5000オングストロームを越
えても、バリア性はさほど向上しないばかりか、透明性
や外観を損なうなどの問題があり、経済的にも不利であ
る。
【0031】[バリア性樹脂層]バリア性樹脂として
は、前記の如き高いバリア性を示す樹脂、例えば、塩化
ビニリデン系共重合体、エチレン−ビニルアルコール共
重合体などが挙げられる。これらのバリア性樹脂は一種
又は二種以上混合して使用できる。塩化ビニリデン系共
重合体は、塩化ビニリデンと他の重合性モノマーとの共
重合体であり、このような共重合性モノマーとしては、
例えば、塩化ビニル、酢酸ビニル、クロトン酸、アクリ
ル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロ
ピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチル
アクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブ
チルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルア
クリレートなどの各種アクリレート(例えば、C1-8
ルキル−アクリレート)、アクリロニトリル、メタクリ
ロニトリル、メタクリル酸や上記アクリレートに対応す
るメタクリレートなどが例示される。これらの塩化ビニ
リデン系共重合体のうち、塩化ビニリデン−アクリロニ
ロリル共重合体、塩化ビニリデン−メタクリル酸共重合
体、塩化ビニリデン−アクリレート共重合体、塩化ビニ
リデン−メタクリレート共重合体、塩化ビニリデン−酢
酸ビニル共重合体などが好ましい。塩化ビニリデン系共
重合体における塩化ビニリデン含量は、通常、85〜9
9重量%、好ましくは90〜97重量%程度である。
【0032】エチレン−ビニルアルコール共重合体とし
ては、溶媒可溶性又は分散性のエチレン−ビニルアルコ
ール共重合体が好ましい。このようなエチレン−ビニル
アルコール共重合体において、エチレン含量は、通常、
5〜50モル%、好ましくは10〜45モル%、より好
ましくは25〜35モル%程度であり、分子量(重量平
均分子量)は、例えば、1×104 〜10×104 、好
ましくは2×104 〜7×104 、好ましくは4×10
4 〜5×104 程度である。ケン化度は99.5%以上
であるのが好ましい。このような溶媒可溶性エチレン−
ビニルアルコール共重合体は、水や、水とアルコールと
の混合溶媒に可溶又は分散可能であり、塗布により薄膜
を形成できる。
【0033】バリア性樹脂層は、バリア性樹脂を含有す
る複数の層、例えば、バリア性樹脂コーテイング層は、
塩化ビニリデン系共重合体を含有する層と、エチレン−
ビニルアルコール共重合体を含有する層とを含む複数の
層で構成してもよい。バリア性樹脂層中のバリア性樹脂
の含有量は、50重量%以上、好ましくは75〜100
重量%、さらに好ましくは90〜100重量%程度であ
る。
【0034】なお、バリア性樹脂層は、必要により他の
ポリマーを含有していてもよい。バリア性樹脂層は、必
要に応じて、前記添加剤、アンチブロッキング剤;ポリ
エチレンイミン、ポリイソシアネートなどの接着性向上
剤などを含んでいてもよい。
【0035】[シランカップリング剤]バリア性樹脂層
は、無機質層および基材フィルム層やバリア性樹脂層に
対する密着性を向上させるため、シランカップリングザ
イを含んでいてもよい。シランカップリング剤として
は、例えば、ハロゲン原子、エポキシ基、アミノ基、ヒ
ドロキシル基、メルカプト基、カルボキシル基、ビニル
基、(メタ)アクリロイル基から選択された少くとも一
種の官能基と、アルコキシ基とを有するケイ素化合物が
含まれる。ハロゲン原子には、フッ素、塩素、臭素およ
びヨウ素原子が含まれ、通常、塩素原子又は臭素原子で
ある。エポキシ基は、炭化水素基の不飽和結合(例え
ば、シクロペンテニル基、シクロへキセニル基、シクロ
オクテニル基などのシクロアルケニル基の不飽和二重結
合)の酸化により生成するエポキシ環や、グリシジル基
のエポキシ環で構成してもよい。アミノ基には1又は2
個の低級アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピ
ル、イソプロピル、ブチル基などのC1-4 アルキル基な
ど)が置換していてもよい。さらに、(メタ)アクリロ
イル基は(メタ)アクリロイルオキシ基により構成され
ていてもよい。アルコキシ基には、例えば、メトキシ、
エトキシ、フロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イ
ソブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ基などのC
1-4 アルコキシ基、特に加水分解性アルコキシ基(特に
メトキシ基又はエトキシ基)が含まれる。ケイ素化合物
において前記反応性官能基の数は1〜3(特に1又は
2)程度であり、アルコキシ基の数は1〜3(特に2又
は3)程度である。
【0036】好ましいシランカップリング剤には、下記
式で表されるケイ素化合物が含まれる。 Y−(R)n−SiX3 (式中、Yは、ハロゲン原子、エポキシ基、アミノ基、
メルカプト基、カルボキシル基、ビニル基、(メタ)ア
クリロイル基から選択された一種の官能基,Rは炭化水
素残基,Xは同一又は異なるアルコキシ基を示す。nは
0又は1である)Yで表される官能基およびXで表され
るアルコキシ基は前記の通りである。Rで表される炭化
水素残基には、アルキレン基(例えば、メチレン、エチ
レン、トリメチレン、プロピレン、テトラメチレンなど
の直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキレン基など)、シク
ロアルケン残基(例えば、シクロヘプテン、シクロヘキ
セン、シクロペンテン、シクロオクテンなどのC4-10
クロアルケン残基など)、シクロアルケン−アルキル残
基(例えば、シクロヘプテン、シクロヘキセン、シクロ
ペンテンなどのC4-10シクロアルケン−C1-6 アルキル
基など)などが挙げられる。なお、シクロアルケン残基
およびシクロアルケン−アルキル残基は、前記のよう
に、通常、二重結合のエポキシ化により生成する残基で
ある。好ましい炭化水素残基Rには、C1-4 アルキレン
残基(特にC2-4 アルキレン残基)、C5-8 シクロアル
ケン−C1-4 アルキル残基(特にシクロヘキセン−C
2-4 アルキル残基)が含まれる。さらに、nは0又は1
である。Yがビニル基である場合、nは0であり、Yが
他の官能基である場合、nは1である場合が多い。
【0037】シランカップリング剤には、例えば、ハロ
ゲン含有シランカップリング剤(2−クロロエチルトリ
メトキシシラン,2−クロロエチルトリエトキシシラ
ン,3−クロロプロピルトリメトキシシラン,3−クロ
ロプロピルトリエトキシシランなど)、エポキシ基含有
シランカップリング剤[2−(3,4−エポキシシクロ
ヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−
エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、
3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリ
メトキシシラン、2−グリシジルオキシエチルトリメト
キシシラン、2−グリシジルオキシエチルトリエトキシ
シラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシ
ラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラ
ンなど]、アミノ基含有シランカップリング剤(2−ア
ミノエチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルト
リメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシ
ラン、2−[N−(2−アミノエチル)アミノ]エチル
トリメトキシシラン、3−[N−(2−アミノエチル)
アミノ]プロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミ
ノエチル)アミノ]プロピルトリエトキシシラン、3−
[N−(2−アミノエチル)アミノ]プロピル メチル
ジメトキシシランなど)、メルカプト基含有シランカ
ップリング剤(2−メルカプトエチルトリメトキシシラ
ン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−
メルカプトプロピルトリエトキシシランなど)、カルボ
キシル基含有シランカップリング剤(カルボキシメチル
トリメトキシシラン、カルボキシメチルトリエトキシシ
ラン、2−カルボキシエチルトリメトキシシラン、3−
カルボキシプロピルトリメトキシシラン、3−カルボキ
シプロピルトリエトキシシランなど)、ビニル基含有シ
ランカップリング剤(ビニルトリメトキシシラン、ビニ
ルトリエトキシシランなど)、(メタ)アクリロイル基
含有シランカップリング剤(2−メタクリロイルオキシ
エチルトリメトキシシラン、2−メタクリロイルオキシ
エチルトリエトキシシラン、2−アクリロイルオキシエ
チルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプ
ロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシ
プロピルトリエトキシシラン、3−アクリロイルオキシ
プロピルトリメトキシシランなど)などが例示できる。
これらのシランカップリング剤は単独で又は二種以上組
合わせて使用できる。
【0038】シランカップリング剤の使用量は、例え
ば、バリア性樹脂100重量部に対して0.05〜10
重量部(例えば、0.1〜10重量部)、好ましくは
0.1〜7重量部(例えば、0.2〜7重量部)、さら
に好ましくは0.5〜5重量部(例えば、0.5〜3重
量部)程度である。
【0039】バリア性樹脂層の厚さは、例えば、0.0
5〜15μm、好ましくは0.1〜10μm(例えば
0.2〜7μm)、より好ましくは0.25〜5μm
(例えば0.3〜3μm)程度である。コーティング層
の厚さが0.05μm未満では高いガスバリア性を付与
することが困難であり、15μmを越えても、さほどガ
スバリア性が向上せず、経済的に不利である。
【0040】無機質層とバリア性樹脂層との厚さの割合
はバリア性に影響する。高いバリア性及び耐性を得るた
めには、無機質層の厚さt(μm)に対するバリア性樹
脂層の厚さT(μm)の割合T/tは、例えば、0.1
〜1500、好ましくは0.5〜500(例えば、0.
5〜300、好ましくは1〜200程度)、さらに好ま
しくは1〜100程度であり、通常、2〜50程度(例
えば、5〜50程度)である。厚さの割合が前記範囲を
外れると、高いバリア性を付与するのが困難となり、前
記割合が0.1未満では、外力により無機質層に欠陥が
生じ易く、1500を越えても、さほどバリア性などが
向上せず、経済的でない。
【0041】[ポリマー層]前記基材フィルム層の一方
の面に、必要により前記アンカーコート層を介して、無
機質層とバリア性樹脂層(コーティング層)とが形成さ
れている場合、基材フィルム層の他方の面(非被覆面)
又は前記バリア性樹脂層は、印刷性や接着性などを付与
するため、ポリマー層で被覆してもよい。好ましいポリ
マー層には、例えば、袋体を容易に形成するためのヒー
トシール層などが含まれる。ヒートシール層を構成する
ポリマーとしては、熱接合性ポリマー、例えば、オレフ
ィン系ポリマー、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、ポ
リエステル、ポリアミド、ゴム系ポリマーなどが挙げら
れる。これらの熱接合性ポリマーは一種又は二種以上混
合して使用できる。好ましいオレフィン系ポリマーに
は、例えば、低密度ポリエチレンや直鎖状低密度ポリエ
チレンなどのポリエチレン、エチレン−ブテン−1共重
合体、エチレン−(4−メチルペンテン−1)共重合
体、エチレン−ヘキセン−1共重合体、エチレン−酢酸
ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合
体、エチレン−(メタ)アクリレート共重合体、アイオ
ノマー、ポリプロピレン、プロピレン−ブテン−1共重
合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロ
ピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−
ジエン共重合体、無水マレイン酸変性ポリエチレンや無
水マレイン酸変性ポリプロピレンなどの変性ポリオレフ
ィンなどが挙げられる。好ましいオレフィン系ポリマー
には、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、
エチレン−アクリル酸エチル共重合体、非晶質ポリオレ
フィン(例えば、無延伸又はアモルファスポリプロピレ
ンなど)、エチレン−プロピレン共重合体などが含まれ
る。ラミネートによりヒートシール層を形成する場合、
好ましい熱接合性フィルムには、無延伸ポリプロピレン
フィルム、無延伸エチレン−プロピレン共重合体フィル
ムなどが含まれる。熱接合性ポリエステルには、脂肪族
ジオールと脂肪族ジカルボン酸を構成成分とする脂肪族
ポリエステルが含まれる。熱接合性ポリアミドとして
は、例えば、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6
/12などが挙げられる。ゴム系ポリマーには、例え
ば、ブチルゴム、イソブチレンゴム、クロロプレンゴ
ム、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−
ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブ
タジエン共重合体などが含まれる。ヒートシール層の厚
さは、包装材料の用途などに応じて、例えば、3〜10
0μm程度の範囲で適宜選択でき、フィルムのラミネー
トによりヒートシール層を形成する場合には、例えば、
20〜100μm、好ましくは30〜80μm程度であ
る。
【0042】ヒートシール層は、基材フィルム層または
バリア性樹脂層の表面の所定の部位、例えば、ヒートシ
ールに供される部位に形成すればよく、パートコートま
たは全面コートのいずれであってもよいが、通常、基材
フィルム層またはバリア性樹脂層の表面全体に形成でき
る。なお、ヒートシール層は、必要に応じて、前記添加
剤を含んでいてもよい。ヒートシール層を内面にして医
療具を包装する場合、医療具の汚染を抑制するため、ヒ
ートシール層は添加剤を含まないのが望ましい。
【0043】[バリア性複合フィルムの特性]本発明の
包装材料には、基材フィルム層の少くとも一方の面に、
アンカーコート層(弾性率が0.1×101 〜1×10
3 N/mm2 のアンカーコート層)、透明性無機質層お
よびバリア性樹脂層が順次形成された複合フィルムも含
まれる。好ましいアンカーコート層の弾性率は、0.5
×101 〜7×102 N/mm 2 、特に1×101 〜5
×102 N/mm2 程度である。前記バリア性樹脂層
は、通常、シランカップリング剤を含有している。
【0044】さらに、本発明の包装材料を構成する複合
フィルムには、過酷な条件に晒されても、高い密着性お
よび高いレベルのガスバリア性を示す複合フィルム、例
えば、基材フィルム層の少くとも一方の面に、アンカー
コート層、無機質層、およびバリア性樹脂層が順次形成
された複合フィルムであって、温度120℃、時間30
分の加熱滅菌処理後の基材フィルム層に対するバリア性
樹脂層の剥離強度が100g/15mm以上(例えば、
100〜500g/15mm)であるバリア性複合フィ
ルムも含まれる。バリア性樹脂層は、通常、シランカッ
プリング剤を含有している。基材フィルム層に対するバ
リア性樹脂層の剥離強度は、好ましくは150〜450
g/15mm、さらに好ましくは200〜400g/1
5mm程度である。
【0045】これらの複合フィルムは、ガスバリア性が
高く、常態及び前記加熱滅菌処理後において、基材フィ
ルム層の厚さが10〜30μm、アンカーコート層、無
機質層及びコーティング層で構成された被覆層の厚さが
0.5〜5μm(例えば、1〜3μm程度)であると
き、酸素ガス透過率および水蒸気透過率は、例えば、次
の通りである。 酸素ガス透過率(温度25℃):1cc/m2 ・24時
間以下(例えば、0.01〜1cc/m2 ・24時
間)、好ましくは0.01〜0.5cc/m2 ・24時
間程度 水蒸気透過率(温度40℃及び90%相対湿度):3g
/m2 ・24時間以下(例えば、0.01〜2g/m2
・24時間)、好ましくは0.01〜1.5g/m2
24時間程度。
【0046】さらに、包装材料を構成する複合フィルム
の透明性は高く、例えば、JISK7105に準拠する
全光線透過率は、60〜100%、好ましくは70〜1
00%、さらに好ましくは80〜100%程度であり、
通常、75〜98%程度である。また、複合フィルムの
ヘーズは、20%以下、好ましくは15%以下である。
そのため、医療具を包装したとしても、外部から容易に
視認でき、安全かつ容易に取り扱うことができる。
【0047】[複合フィルムの製造方法]本発明の包装
材料を構成する複合フィルムは、基材フィルムの少なく
とも一方の面を、必要によりアンカーコート層で被覆
し、無機質層と、バリア性樹脂層(好ましくはシランカ
ップリング剤を含むバリア性樹脂層)とで順次被覆する
ことによって得ることができる。本発明の他の複合フィ
ルムは、基材フィルムの他方の面またはバリア性樹脂層
の面に、ヒートシール層などのポリマー層を形成するこ
とにより得ることができる。例えば、(i)基材フィル
ムの少なくとも一方の面を、アンカーコート層と、無機
質層と、シランカップリング剤を含むバリア性樹脂層
と、ヒートシール層などのポリマー層とで順次被覆する
方法、(ii)基材フィルムの一方の面を、アンカーコー
ト層と、無機質層と、シランカップリング剤を含むバリ
ア性樹脂層とで順次被覆し、基材フィルムの他方の面を
ヒートシール層などのポリマー層で被覆する方法、(ii
i)基材フィルムの一方の面を、アンカーコート層と、
無機質層と、シランカップリング剤を含むバリア性樹脂
層と、ヒートシール層などのポリマー層とで順次被覆
し、基材フィルムの他方の面もヒートシール層などのポ
リマー層で被覆する方法などにより得ることができる。
【0048】アンカーコート層は、前記アンカーコート
成分を含む有機または水性コーティング剤を慣用のコー
ティング法により塗布し、乾燥または硬化することによ
り形成できる。なお、光硬化性樹脂を用いる場合には、
活性光線を照射すればよい。コーティング剤は溶液であ
ってもよく分散液であってもよい。溶媒としては、例え
ば、炭化水素類、エステル類、ケトン類、エーテル類、
これらの混合溶媒などが例示できる。なお、前記成分
(A)〜(C)で構成されたアンカーコート層は、ポリイ
ソシアネート化合物とポリオールとで構成された二液硬
化性接着剤と異なり、非粘着性で、耐ブロッキング性が
高い。そのため、アンカーコート層を塗布により形成し
ても、フィルムの巻取及び巻き戻しを円滑に行なうこと
ができ、複合フィルムの生産性を向上できる。
【0049】無機質層は、慣用の方法、例えば、物理的
方法(真空蒸着法、反応性蒸着法、スパッタリング法、
反応性スパッタリング法、イオンプレーティング法、反
応性イオンプレーティング法など)、化学的方法(CV
D法、プラズマCVD法、レーザーCVD法など)によ
り形成できる。無機質層は、通常、蒸着などの物理的方
法により形成される。真空蒸着法などによる薄膜形成
は、ロール状に巻き取られたフィルムを繰出しつつ、1
-3〜10-6Torr程度に減圧された巻取式真空蒸着
機内を通過させながら、電子ビーム、高周波誘導加熱、
低抗加熱方式などにより、無機化合物を加熱蒸発させて
連続的に蒸着させることができる。
【0050】バリア性樹脂層は、前記無機質層の表面
に、必要によりシランカップリング剤とバリア性樹脂と
を含有する塗布液を塗布し乾燥することにより形成でき
る。塗布液は、シランカップリング剤およびバリア性樹
脂の種類に応じて、適当な溶媒を選択することにより調
製でき、溶液又は分散液のいずれの形態であってもよい
これらの塗布液は、例えば、消泡剤、粘度調整剤などの
慣用の添加剤を含有していてもよい。
【0051】前記バリア性樹脂の表面には、ヒートシー
ル層の有無に拘らず、必要に応じて、前記基材フィルム
層の項で例示した慣用の表面処理を施してもよく、表面
処理を施すことなく部分的又は全面にポリマー層(接着
層や保護層など)を形成してもよい。ポリマー層は、慣
用の方法、例えば、コーティングやラミネートなどによ
り形成できる。ヒートシール層は、熱接合性ポリマーの
種類などに応じて慣用の方法、例えば、ドライラミネー
ト法、押出しラミネート法、塗布法などにより形成でき
る。前記層構成の複合フィルムでは、バリア性樹脂層側
に、印刷又はラミネート加工しても、印刷インキおよび
ラミネート接着剤に含有される溶剤などの基材フィルム
への浸透が殆どなく、残留溶剤の量が極めて低い。その
ため、内容物としての医療具の汚染を防止でき、高い安
全性を確保できる。なお、複合フィルムには、フィルム
の種類、用途に応じて、種々のコーティング層やラミネ
ート層、例えば、滑性層、帯電防止層、装飾用印刷フィ
ルム層や、ナイロンフィルムなどによる補強層などを形
成してもよい。
【0052】本発明のバリア性複合フィルムは、基材フ
ィルム層に対する無機質層の密着性だけでなくバリア性
が大きく改善され、機械的外力が作用したり、過酷な条
件に晒されても、前記のように高いバリア性を示す。ま
た、バリア性樹脂層が極めて薄くても高いガスバリア性
を示し、透明性が高く、内容物を容易に視認できる。し
かも、金属探知機による金属探知に供しても、複合フィ
ルムは検知されない。そのため、前記複合フィルムで医
療具を密封状態で包装し、医療具を保存又は保管する
と、前記のように、医療具を高いバリア性で外部からの
汚染を防止できるとともに、金属異物の混入を防止でき
る。医療具の密封は、接着剤を用いて前記複合フィルム
により医療具を密封する方法、前記ポリマー層(特にヒ
ートシール層)を利用して熱接合(特にヒートシール)
により医療具を密封する方法などが採用できる。
【0053】本発明の包装材料は、安全衛生性の高い医
療具、例えば、点眼液,輸液などの治療剤、コンタクト
レンズ洗浄液,ビタミン剤、栄養補助食品,化粧料(粉
末又は液体乃至クリーム状化粧料)などの医薬部外品,
医療器具や医療用品(シリンジ,カテーテル,輸液バッ
グなど),医療器具の付属品(白衣,シーツ,包帯,ガ
ーゼなど)の包装に好適に用いることができる。特に、
防腐剤などの変質劣化防止剤の添加が規制されている医
療具、例えば、点眼液,輸液などの治療剤、コンタクト
レンズ洗浄液,化粧料などを包装する上で有用である。
変質劣化防止剤としては、安全衛生性を損なう種々の化
合物、例えば、防腐剤、殺菌剤、防黴剤、安定化剤(酸
化防止剤、紫外線吸収剤、耐熱安定剤など)などが含ま
れる。なお、液状の形態の医療具(点眼液,輸液,コン
タクトレンズ洗浄液,ビタミン剤,化粧料など)は予め
容器(特にポリエチレン,ポリプロピレン,ポリエステ
ルなどのプラスチック容器)に収容し、この容器を本発
明の複合フィルムで包装してもよく、本発明の複合フィ
ルムで直接包装してもよい。後者の場合、内面に非汚染
性層を有する複合フィルム(例えば、添加物を含まない
ヒートシール層を内面に備えた複合フィルム)を使用で
きる。
【0054】
【発明の効果】本発明の包装材料を構成する複合フィル
ムは、必要によりアンカーコート層と、無機質層と、シ
ランカップリング剤を含んでいてもよいバリア性樹脂層
とを組合わせているので、機械的外力が作用したり、高
温多湿の過酷な条件に晒されても、基材フィルム層と無
機薄膜層との密着力およびバリア性を長期間に亘り大き
く改善できる。さらに、透明性も高く、金属探知機によ
り探知されない。そのため、変質劣化防止剤を含んでい
なくても、変質や劣化を抑制しつつ医療具を長期間に亘
り保存又は保管できるとともに、高い透明性で内容物を
視認でき、金属探知機による金属探知が可能であり、包
装体内への金属片の混入を未然に防止できる。本発明の
方法では、極めて高い安全衛生性が要求される医療具で
あっても長期間に亘り保存又は保管できるとともに、高
い視認性及び金属探知性により内容物の取り扱い性及び
安全性を高めることができる。
【0055】
【実施例】以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に
説明するが、本発明はこれらの実施例により限定される
ものではない。 実施例1及び2アンカーコート剤の調製 下記のアンカーコート剤成分を用い、アンカーコート剤
を調製した。すなわち、固形分換算で、(A1)塩化ビニ
ル系共重合体100重量部に対して、(B1)ポリイソシ
アネート化合物100重量部および(C)飽和ポリエス
テル樹脂15重量部を混合し、アンカーコート剤を調製
した。 (A1)塩化ビニル系共重合体:電気化学工業(株)製,
デンカ1000C,塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレ
イン酸共重合体、塩素含有量48.8%、平均重合度43
0、ガラス転移温度43℃、無水マレイン酸に起因する
酸価約10mgKOH/g (B1)ポリイソシアネート化合物:日本ポリウレタン工
業(株)製,コロネートL,トリレンジイソシアネート
−トリメチロールプロパンアダクト体,固形分75重量
%、イソシアネート含量12% (C)飽和ポリエステル樹脂:東洋紡績(株)製,バイ
ロン30SS,テレフタル酸及びエチレングリコールを
主成分とするポリエステル樹脂,数平均分子量22,0
00,ガラス転移温度7℃,水酸基価4.8mgKOH
/gコーティング剤の調製 塩化ビニリデン系共重合体(旭化成工業(株)製、商品
名:サランレジンF216)100重量部に対して、γ
−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(すなわ
ち、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラ
ン)(東芝シリコーン(株)製,商品名:TSL835
0)1.0重量部を添加し、トルエン/テトラヒドロフ
ラン=1/2(重量比)の混合溶媒に溶解し、樹脂濃度
15重量%のバリア性樹脂層用の塗布液を調製した。な
お、前記塩化ビニリデン系共重合体は、塩化ビニリデン
モノマー85モル%以上を主成分とし、アクリル酸、メ
タクリル酸メチル、メタアクリロニトリルから選ばれた
少くとも1種をコモノマーとして重合させた共重合体で
ある。
【0056】厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレ
フタレートフィルム(PET)の一方の面に、前記アン
カーコート剤を乾燥後の厚み0.3μmで塗布し、乾燥
した後、SiOを蒸発源として、5×10-3Torrの真空
下で、真空蒸着法により厚さ500オングストロームの
ケイ素酸化物蒸着層を無機質層として形成した。そし
て、前記コーティング剤を、無機質層上に、バーコータ
ーを用いて乾燥後の厚さ0.5μm(実施例1)および
2.5μm(実施例2)になるように塗布し、105℃
のオーブンで30秒間乾燥し、バリア性樹脂層を形成し
て、複合フィルムを得た。
【0057】実施例3 塩化ビニリデン系共重合体(旭化成工業(株)製、商品
名:サランレジンF216)100重量部に対して、γ
−アミノプロピルトリエトキシシラン(すなわち、3−
アミノプロピルトリエトキシシラン)(東芝シリコーン
(株)製,商品名:TSL8331)1.0重量部を添
加し、トルエン/テトラヒドロフラン=1/2(重量
比)の混合溶媒に溶解し、樹脂濃度15重量%のバリア
性樹脂層用の塗布液を調製した。この塗布液を、無機質
層上に塗布し、乾燥後の厚さ2.5μmのコーティング
層を形成する以外、実施例1と同様にして、複合フィル
ムを得た。
【0058】実施例4 塩化ビニリデン系共重合体(旭化成工業(株)製、商品
名:サランレジンF216)100重量部に対して、ビ
ニルトリメトキシシラン(東芝シリコーン(株)製,商
品名:TSL8311)1.0重量部を添加し、トルエ
ン/テトラヒドロフラン=1/2(重量比)の混合溶媒
に溶解し、樹脂濃度15重量%のバリア性樹脂層用の塗
布液を調製した。この塗布液を、無機質層上に乾燥後の
厚さ2.5μmとなるように塗布する以外、実施例1と
同様にして、複合フィルムを得た。
【0059】実施例5 塩化ビニリデン系共重合体(旭化成工業(株)製、商品
名:サランレジンF216)100重量部に対して、γ
−メルカプトプロピルトリエトキシシラン(東芝シリコ
ーン(株)製,商品名:TSL8380)1.0重量部
を添加し、トルエン/テトラヒドロフラン=1/2(重
量比)の混合溶媒に溶解し、樹脂濃度15重量%のバリ
ア性樹脂層用の塗布液を調製した。この塗布液を、無機
質層上に乾燥後の厚さ2.5μmとなるように塗布する
以外、実施例1と同様にして、複合フィルムを得た。
【0060】実施例6 エチレン−ビニルアルコール共重合体(日本合成化学工
業(株)製、商品名:ソアノール30L)100重量部
に対して、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラ
ン(東芝シリコーン(株)製,商品名:TSL835
0)1.0重量部を添加し、水/イソプロパノール=1
/1(重量比)の混合溶媒に溶解し、樹脂濃度12重量
%のバリア性樹脂層用の塗布液を調製した。この塗布液
を、無機質層上に乾燥後の厚さ4.0μmとなるように
塗布する以外、実施例1と同様にして、複合フィルムを
得た。
【0061】実施例7および8 アンカーコート剤の成分として実施例1のポリイソシア
ネート化合物に代えて下記のポリイソシアネート化合物
を用いる以外、実施例2と同様にして、複合フィルムを
作製した。 実施例7: (B2)ポリイソシアネート化合物:日本ポリウレタン工
業(株)製,コロネートHL,ヘキサメチレンジイソシ
アネート−トリメチロールプロパンアダクト体,固形分
75重量%、イソシアネート含量15% 実施例8: (B3)ポリイソシアネート化合物:ヒュルスAG社製,
ベスタナートT1890L,イソホロンジイソシアネー
トの三量体,固形分70重量%、イソシアネート含量1
2%。
【0062】実施例9 下記のアンカーコート剤を用いる以外、実施例2と同様
にして、厚み2.5μmのバリア性樹脂コーティング層
を有する複合フィルムを得た。 アンカーコート剤(固形分換算): (A1)実施例1の塩化ビニル系共重合体100重量部 (B1)実施例1のポリイソシアネート化合物45重量部
および (C)実施例1の飽和ポリエステル樹脂9重量部。
【0063】実施例10 下記のアンカーコート剤を用いる以外、実施例2と同様
にして、厚み2.5μmのバリア性樹脂コーティング層
を有する複合フィルムを得た。
【0064】アンカーコート剤(固形分換算): (A2)塩化ビニル系共重合体(電気化学工業(株)製,
デンカ1000CM,塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共
重合体、塩素含有量48.8%、平均重合度430、ガラス転
移温度43℃、無水マレイン酸に起因する酸価 約10mgKOH/g)100重量部 (B1)実施例1のポリイソシアネート化合物150重量
部および (C)実施例1の飽和ポリエステル樹脂22.5重量
部。
【0065】実施例11 塩化ビニリデン系共重合体(旭化成工業(株)製、商品
名:サランレジンF216)100重量部に対して、γ
−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(すなわ
ち、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラ
ン)(東芝シリコーン(株)製,商品名:TSL835
0)0.2重量部を添加し、トルエン/テトラヒドロフ
ラン=1/2(重量比)の混合溶媒に溶解し、樹脂濃度
15重量%のバリア性樹脂層用の塗布液を調製した。こ
の塗布液を、無機質層上に乾燥後の厚さ2.5μmとな
るように塗布する以外、実施例1と同様にして、複合フ
ィルムを得た。
【0066】実施例12 塩化ビニリデン系共重合体(旭化成工業(株)製、商品
名:サランレジンF216)100重量部に対して、γ
−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(すなわ
ち、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラ
ン)(東芝シリコーン(株)製,商品名:TSL835
0)5.0重量部を添加し、トルエン/テトラヒドロフ
ラン=1/2(重量比)の混合溶媒に溶解し、樹脂濃度
15重量%のバリア性樹脂層用の塗布液を調製した。こ
の塗布液を、無機質層上に乾燥後の厚さ2.5μmとな
るように塗布する以外、実施例1と同様にして、複合フ
ィルムを得た。
【0067】実施例13 下記のアンカーコート剤を用いる以外、実施例2と同様
にして、厚み2.5μmのバリア性樹脂コーティング層
を有する複合フィルムを得た。 アンカーコート剤(固形分換算): (A1)実施例1の塩化ビニル系共重合体100重量部 (B1)実施例1のポリイソシアネート化合物60重量
部。
【0068】実施例14 下記のアンカーコート剤を用いる以外、実施例2と同様
にして、厚み2.5μmのバリア性樹脂コーティング層
を有する複合フィルムを得た。 アンカーコート剤(固形分換算): (B1)実施例1のポリイソシアネート化合物60重量部
および (C)実施例1の飽和ポリエステル樹脂9重量部。
【0069】比較例1 厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフ
ィルムの一方の面に、ラミネート剤(東洋モートン
(株),AD−588/CAT−10)を用いて、アル
ミニウム箔(7μm)をラミネートし、複合フィルムを
得た。
【0070】そして、実施例及び比較例で得られた複合
フィルムの酸素ガス透過率、水蒸気透過率を次のように
して評価した。 酸素ガス透過率:同圧法(測定器:Morcon社,OXTRAN T
WIN)により、20℃、相対湿度65%の条件で測定し
た。単位はcc/m2 ・24hrである。 水蒸気透過率:測定器(Morcon社,PERMATRAN W200)を
用い、40℃、相対湿度90%の条件で測定した。単位
は、g/m2 ・24hrである。さらに、テストサンプ
ルを調製するため、ドライラミネート法により、前記コ
ーティング層上にヒートシール層を形成した。すなわ
ち、前記コーティング層上に、ラミネート用接着剤(東
洋モートン(株)製,アドコートAD−810/CAT
−RT8,二液硬化性ポリウレタン系接着剤)を乾燥後
の厚み約2μmで塗布し、シーラント(ダイセル化学工
業(株)製,セネシC153#40,未延伸ポリプロピ
レン,厚み40μm)を貼り合わせ、ヒートシール層を
形成した。そして、それぞれのサンプルについて、密着
強度と、透明度を次のようにして測定した。 密着強度:測定器(オリエンテック製,テュシロンRT
M−100)を用い、15mm/幅に調整したサンプル
を300mm/分の速度でT型剥離し、密着強度を測定
した。 透明度:測定器((株)東洋精機製作所、直読ヘイブメ
ータ206型)を用い、透過法により20℃×65%の
条件下で測定した。結果を表1に示す。
【0071】
【表1】 さらに、ヒートシール層を備えた複合フィルムを用い、
安全ピンを含まない袋体(A)と、安全ピンを封入した
袋体(B)とをヒートシールにより調製し、金属探知機
による金属探知試験に供したところ、比較例1の複合フ
ィルムでは、袋体(A)(B)のいずれでも金属が探知
された。これに対して、実施例の複合フィルムでは、袋
体(A)では金属が探知されず、袋体(B)でのみ金属
が探知された。

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複合フィルムで構成された包装材料であ
    って、基材フィルムの少なくとも一方の面に形成された
    透明無機化合物層と、この無機化合物層を被覆するバリ
    ア性樹脂層とで構成されている医療具用包装材料。
  2. 【請求項2】 無機化合物層が、周期表2A族元素、遷
    移元素、2B族元素、3B族元素、4B族元素および6
    B族元素から選ばれた少なくとも1つの金属酸化物で構
    成されている請求項1記載の医療具用包装材料。
  3. 【請求項3】 バリア性樹脂層が、塩化ビニリデン系共
    重合体又はエチレン−ビニルアルコール共重合体を含む
    請求項1記載の医療具用包装材料。
  4. 【請求項4】 バリア性樹脂層が、シランカップリング
    剤を含む請求項1記載の医療具用包装材料。
  5. 【請求項5】 アンカーコート層を介して、基材フィル
    ムに透明無機化合物層が形成されている請求項1記載の
    医療具用包装材料。
  6. 【請求項6】 アンカーコート層が、(i)少くとも塩
    素含有樹脂を含むアンカーコート剤、(ii)ポリイソシ
    アネート化合物と、塩素含有樹脂及び/又は飽和ポリエ
    ステル樹脂とを含むアンカーコート剤で構成されている
    請求項5記載の医療具用包装材料。
  7. 【請求項7】 ポリプロピレン、ポリアルキレンテレフ
    タレート又はポリアミドで構成された基材フィルム層の
    少なくとも一方の面に、(i)少くとも塩素含有樹脂、
    又は(ii)ポリイソシアネート化合物と塩素含有樹脂及
    び/又は飽和ポリエステル樹脂とを含むアンカーコート
    層と、金属酸化物で構成され、かつ透明性を有する無機
    化合物層と、シランカップリング剤と塩化ビニリデン系
    共重合体又はエチレン−ビニルアルコール共重合体とを
    含むバリア性樹脂層とがこの順に形成されている医療具
    用包装材料。
  8. 【請求項8】 基材フィルム層の少くとも一方の面に、
    アンカーコート層、透明無機化合物層、およびバリア性
    樹脂層が順次形成された複合フィルムであって、前記ア
    ンカーコート層の弾性率が0.1×101 〜1×103
    N/mm2 である医療具用包装材料。
  9. 【請求項9】 基材フィルム層の少くとも一方の面に、
    アンカーコート層、透明無機化合物層、およびバリア性
    樹脂層が順次形成された複合フィルムであって、基材フ
    ィルム層の厚さが10〜30μm、アンカーコート層、
    無機化合物層及びバリア性樹脂層で構成された被覆層の
    厚さが0.5〜5μmであるとき、温度25℃で酸素ガ
    ス透過率が1cc/m2 ・24時間以下、温度40℃及
    び90%相対湿度で水蒸気透過率が3g/m2 ・24時
    間以下である医療具用包装材料。
  10. 【請求項10】 基材フィルム層の他方の面又はバリア
    性樹脂層が、ポリマー層で被覆されている請求項1,7
    ないし9のいずれかの項に記載の医療具用包装材料。
  11. 【請求項11】 ポリマー層が、ヒートシール層である
    請求項10記載の医療具用包装材料。
  12. 【請求項12】 基材フィルムの少なくとも一方の面に
    形成された透明無機化合物層と、この無機化合物層を被
    覆するバリア性樹脂層とで構成されている複合フィルム
    で医療具を密封状態で包装する医療具の保存又は保管方
    法。
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