JPH10136994A - L−ベラトリルグリシンの製造法 - Google Patents

L−ベラトリルグリシンの製造法

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JPH10136994A
JPH10136994A JP30304096A JP30304096A JPH10136994A JP H10136994 A JPH10136994 A JP H10136994A JP 30304096 A JP30304096 A JP 30304096A JP 30304096 A JP30304096 A JP 30304096A JP H10136994 A JPH10136994 A JP H10136994A
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veratryl
glycine
amidase
reaction
acetyl
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JP30304096A
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English (en)
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Masatoshi Inukai
正俊 犬飼
Koji Maeda
考二 前田
Takashi Kobayashi
小林  孝
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SANKYO KASEI KOGYO KK
Sankyo Co Ltd
Original Assignee
SANKYO KASEI KOGYO KK
Sankyo Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 L−ドーパの製造中間体である(L)−ベラ
トリルグリシンの新規な製造法を提供する。 【解決手段】 式(I) 【化1】 で表わされるN−アセチル−(DL)−ベラトリルグリ
シンを、アミダーゼが固定化された不溶性担体と接触さ
せることにより、式(II) 【化2】 で表わされる(L)−ベラトリルグリシンを生成させ、
次いで、(L)−ベラトリルグリシンを回収することを
特徴とする(L)−ベラトリルグリシンの製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】 本発明は、L−ドーパの製
造中間体として有用な(L)−ベラトリルグリシンおよ
び/またはN−アセチル−(D)−ベラトリルグリシン
の新規な製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】 L−3,4−ジオキシフェニルアラニ
ン(L-3,4-dihydroxyphenylalanine;以下「L−ドー
パ」という)は、パーキンソン病治療薬として有用な物
質である。一般にL−ドーパは中間体(L)−ベラトリ
ルグリシンを脱メチル化することにより製造される。さ
らに、(L)−ベラトリルグリシンは、ラセミ体である
N−アセチル−(DL)−ベラトリルグリシンを不斉加
水分解することにより製造することができる。この不斉
加水分解反応にあっては、基質特異性が広く、アミノ酸
のラセミ分割に利用されている酵素アミダーゼ(アシラ
ーゼ)が使用される。
【0003】しかしながら、該酵素を反応時に毎回投入
・消費すると、製造コストが高くなるばかりでなく、反
応終了後の(L)−ベラトリルグリシンの回収工程にお
いて酵素が混入することにより、(L)−ベラトリルグ
リシンの品質の低下の原因ともなっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】 本発明の目的は、
(L)−ベラトリルグリシンの製造工程において、反応
終了後のアミダーゼを効率よく(L)−ベラトリルグリ
シンおよび反応液から分離することにより、該酵素を繰
り返し再利用することを可能にし、かつ(L)−ベラト
リルグリシンの品質を向上せしめる、(L)−ベラトリ
ルグリシンの新規製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】 本発明は、(1) 式
(I)
【0006】
【化5】
【0007】で表わされるN−アセチル−(DL)−ベ
ラトリルグリシンを、アミダーゼが固定化された不溶性
担体と接触させることにより、式(II)
【0008】
【化6】
【0009】で表わされる(L)−ベラトリルグリシン
を生成させ、次いで、(L)−ベラトリルグリシンを分
離・回収することを特徴とする(L)−ベラトリルグリ
シンの製造方法、(2) 式(I)
【0010】
【化7】
【0011】で表わされるN−アセチル−(DL)−ベ
ラトリルグリシンを、アミダーゼが固定化された不溶性
担体と接触させることにより、式(III)
【0012】
【化8】
【0013】で表わされるN−アセチル−(D)−ベラ
トリルグリシンを生成させ、次いで、N−アセチル−
(D)−ベラトリルグリシンを分離・回収することを特
徴とするN−アセチル−(D)−ベラトリルグリシンの
製造方法、(3) 不溶性担体がキトサン樹脂、イオン
交換樹脂、ポリビニルアルコール、光架橋樹脂、セライ
ト、ケイソウ土およびセラミックスからなる群より選択
されるものであることを特徴とする、(1)または
(2)記載の方法、(4) 不溶性担体がキトサン樹脂
であることを特徴とする、(1)または(2)記載の方
法、(5) 不溶性担体がキトパールBCW−2610
(商標名;富士紡績(株)社製)またはキトパールBC
W−2620(商標名;富士紡績(株)社製)であるこ
とを特徴とする、(1)または(2)記載の方法、
(6) アミダーゼがアミノアシラーゼ(EC3.5.
1.14)またはペニシリンアミダーゼ(EC3.5.
1.11)であることを特徴とする、(1)ないし
(5)のいずれかに記載の方法、(7) アミダーゼが
アミノアシラーゼ(EC3.5.1.14)であること
を特徴とする、(1)ないし(5)のいずれかに記載の
方法、(8) アミノアシラーゼ(EC3.5.1.1
4)が固定化されたキトパールBCW−2610(商標
名;富士紡績(株)社製)またはキトパールBCW−2
620(商標名;富士紡績(株)社製)を用いることを
特徴とする、(1)または(2)に記載の方法、に関す
る。
【0014】本発明者らは、アミダーゼを不溶性担体に
吸着させた後、多官能試薬で架橋補強をしたものを用い
て、N−アセチル−(DL)−ベラトリルグリシンを立
体選択的に不斉加水分解して光学分割すると、(L)−
ベラトリルグリシンおよびN−アセチル−(D)−ベラ
トリルグリシンを効率よく製造できることを見出し、本
発明を完成させた。一般には、酵素を担体に固定化する
と、活性および反応速度が低下する傾向がある[B.ア
トキンソン著、福井三郎ら訳、バイオリアクター/微生
物・生化学の反応器 第9章 産業図書刊]が、本発明
の方法では従来法よりも短い時間で(L)−ベラトリル
グリシンを効率よく製造することが可能である。
【0015】本発明において、「アミダーゼが固定化さ
れた不溶性担体」または「アミダーゼ固定化担体」と
は、アミダーゼを不溶性担体に吸着させた後、多官能試
薬で架橋補強をしたものをいう。
【0016】アミダーゼは、アミド基のC−N結合を加
水分解する酵素の総称であり、アシルアミダーゼ、アシ
ラーゼまたはデアミダーゼ等とも呼ばれるが、本発明に
おいては特に、光学特異性が高く、L−アミノ酸のみに
作用するアミダーゼを「アミダーゼ」という。そのよう
なアミダーゼとして好適なものはアミノアシラーゼ(E
C3.5.1.14)およびペニシリンアミダーゼ(E
C3.5.1.11)であり、中でもアミノアシラーゼ
が最も好適であるが、本発明の方法において使用される
アミダーゼはこれらに限定されず、光学特異性が高く、
L−アミノ酸のみに作用するアミダーゼであればいずれ
も使用することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】 アミダーゼが固定化された水不
溶性の担体は、例えば水不溶性の担体とアミダーゼを水
中で接触させることによりアミダーゼを担体に吸着さ
せ、担体をろ過、洗浄後、2〜13%の架橋剤を含む水
溶液中で、2〜5時間架橋補強を行なってから、担体を
再度濾過・洗浄して架橋剤を除去することにより調製す
ることができる。
【0018】本発明の方法において用いるアミダーゼと
しては、具体的には例えばアミノアシラーゼ(天野製薬
(株)社製)、アミノアシラーゼ(ナガセ産業(株)社
製)、アシラーゼI(ブタ腎由来;シグマ社製)、ペニ
シリンアミダーゼ(シグマ社製)、アシラーゼI(アス
ペルギルス・メレウス由来;シグマ社製)を挙げること
ができる。これらのうち、アミノアシラーゼ(3万単位
/g;天野製薬 (株)社製)が最も好適である。
【0019】また、担体としては、水に不溶性の担体、
例えばセライト、ケイソウ土、多孔質ガラス、セラミッ
クス等の無機担体;ポリビニルアルコール、キトサン、
イオン交換樹脂、吸着樹脂、光架橋樹脂等の有機高分子
のような、アミダーゼ活性に影響を与えず、かつ本発明
の工程において物理的、化学的に安定なものであればい
ずれも使用することができる。特に、不溶性担体内に
1、2または3級アミンを持つイオン結合モードの担体
が、酵素の吸着性や基質との相性からも好ましい。
【0020】担体の形状としては、例えば粉末状、顆粒
状、スポンジ状等、種々のものがあるが、そのいずれで
も使用できる。工程および操作上の面からは、300な
いし2500μmの粒径を有する、比表面積20ないし
200m2 /g の多孔性の担体が好適である。特に好適
な担体としては、例えばキトサン樹脂、より具体的に
は、孔径0.1〜0.2μmの多孔性樹脂であるキトパ
ールBCW−2610または同BCW−2620(商標
名;富士紡績 (株) 社製)を例示できる。
【0021】アミダーゼを担体に吸着させる際の温度
は、アミダーゼの失活が起こらない温度であればよく、
0ないし50℃、好ましくは20ないし40℃である。
またアミダーゼ溶液のpHは、アミダーゼの変性が起こ
らないような範囲であればよく、pH3ないし9であれ
ばよい。特に最大活性を得るにはpH5ないし8の範囲
内が好適である。アミダーゼ溶液に用いる溶媒の種類
は、特に規定しないが、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液等の
緩衝液、または精製水等、アミダーゼの変性が起こらな
いような溶媒であればよい。また、溶媒中のアミダーゼ
濃度は特に限定されないが、固定化効率の点から、アミ
ダーゼの溶解度以下で、かつ充分な濃度であることが望
ましい。アミダーゼと担体の使用割合は、担体1重量部
に対して、アミダーゼ0.005ないし0.2重量部、
特に0.016ないし0.05重量部が好適であるが、
特にこの範囲に限定されるものではない。
【0022】アミダーゼを担体に吸着させた後、以下に
記載する方法を用いて架橋補強を行う。架橋剤として
は、エチレングリコール・ジグリシジルエーテル、ネオ
ペンチルグリコール・ジグリシジルエーテル、1,6−
ヘキサンジオール・ジグリシジルエーテル、1,4−ブ
タンジオール・ジグリシジルエーテル等のジグリシジル
エーテル類またはグルタルアルデヒドが好適であるが、
最も好適なものとしてはエチレングリコール・ジグリシ
ジルエーテルを挙げることができる。架橋剤の2ないし
13%水溶液に、上記のごとく作製したアミダーゼ吸着
担体を懸濁し、攪拌しながら0ないし50℃(好適には
25ないし40℃)で2ないし5時間保温する。次い
で、担体を水で洗浄して未反応の架橋剤を除去すること
により、アミダーゼ固定化担体を得る。
【0023】上記のごとくして調製されたアミダーゼ固
定化担体は、(L)−ベラトリルグリシンおよび/また
はN−アセチル−(D)−ベラトリルグリシンの製造に
おいて、繰り返し使用することができる。
【0024】まず、本発明の方法における原料化合物、
すなわち(D)体と(L)体の等量混合物であるラセミ
体のN−アセチル−(DL)−ベラトリルグリシンは、
例えば以下に記載するような方法で合成することができ
る[江井仁ら、平成7年度バイオエンジニアリング講演
会講演要旨集((財)バイオインダストリー協会)1頁
参照]。まず、バニリンおよびヒダントインを出発原料
として、常法に従ってメチル化、脱水縮合反応をさせる
ことによりベラトリルヒダントインを合成する。次い
で、ベラトリルヒダントインに水素添加し、加水分解を
行った後、生成した(DL)−ベラトリルグリシンをア
セチル化することによりN−アセチル−(DL)−ベラ
トリルグリシンを得る。
【0025】以下、本発明の方法を具体的に説明する
が、本発明の方法はこれらに限定されるものではない。
【0026】1)バッチ法: 水1重量部に対して、溶解度以下(好ましくは0.2な
いし0.3重量部)のN−アセチル−(DL)−ベラト
リルグリシン、0.09ないし0.3重量部(好ましく
は0.15ないし0.18重量部)のアミダーゼ固定化
担体および0.002ないし0.004重量部(好まし
くは0.0025ないし0.003重量部)のリン酸水
素2ナトリウムを加えて反応液を調製する。反応液のp
Hは、リン酸水素2ナトリウムにより5ないし8、好適
には7.0ないし7.2に調整する。また、該反応液に
は塩化コバルトを0.0001ないし0.00015重
量部および/または37%ホルマリンを0.0006な
いし0.0008重量部添加することもできる。
【0027】反応温度は20ないし50℃、好適には3
8ないし40℃である。一回の反応は2.5ないし96
時間行われる。
【0028】酵素固定化担体と基質との接触機会を増大
させることにより反応効率を高めるためには、反応液を
機械的に攪拌することが好ましい。その際、容器ごと回
転させる方法(ロータリー法)の場合の回転数としては
100ないし400rpm、容器中に攪拌羽根を入れる
方法の場合の回転数としては50ないし400rpmが
好適である。反応終了後のアミダーゼ固定化担体は、例
えば、晶出する(L)−ベラトリルグリシンを通過さ
せ、アミダーゼ固定化担体を通過させないような金網等
の濾別器具を使用して回収し、次の反応へ繰り返し使用
することができる。晶出した(L)−ベラトリルグリシ
ンは、濾別により溶解液中のN−アセチル−(D)−ベ
ラトリルグリシンと分離し、回収することができる。
【0029】2)流動化装置を使用する方法[白井隆
(1965) 化学装置便覧(丸善刊)78頁参照]: 水1重量部に対して、0.3重量部以下のN−アセチル
−(DL)−ベラトリルグリシン、0.09ないし0.
3重量部のアミダーゼ固定化担体および0.002ない
し0.004重量部のリン酸水素2ナトリウムを加えて
反応液を調製する。反応液のpHは、リン酸水素2ナト
リウムにより5ないし8、好適には7.0ないし7.2
に調整する。反応液を攪拌するために、空気または窒素
を、1分間当たり反応液量の0.1ないし10容、反応
液中に送り込む。反応温度は20ないし50℃、好適に
は38ないし40℃である。一回の反応は2ないし96
時間行われる。その間に蒸発する水分は適宜補充する。
反応終了後のアミダーゼ固定化担体は、例えば上記1)
に記載した方法で回収することにより、繰り返し使用す
ることができる。晶出した(L)−ベラトリルグリシン
は、濾別により溶解液中のN−アセチル−(D)−ベラ
トリルグリシンと分離し、回収することができる。
【0030】3)カラム法: カラムを使用して反応を行う場合は、逆流式(アップフ
ロー式)でN−アセチル−(DL)−ベラトリルグリシ
ンを含む溶媒を循環させることによりカラム内に繰り返
し送液する方法が好適である。水1重量部に対し、0.
25重量部以下のN−アセチル−(DL)−ベラトリル
グリシン、0.09ないし0.3重量部のアミダーゼ固
定化担体および0.002ないし0.004重量部のリ
ン酸水素2ナトリウムを加えて反応液を調製し、カラム
内に入れる。反応液のpHは、リン酸水素2ナトリウム
により5ないし8、好適には7.0ないし7.2に調整
する。流速は1分間当たり総反応液量の3倍量以下に調
節する。反応温度は20ないし50℃、好適には38な
いし40℃である。一回の反応は2.5ないし120時
間行われる。反応終了後のアミダーゼ固定化担体は、例
えば上記1)に記載した方法で回収することにより、繰
り返し使用することができる。晶出した(L)−ベラト
リルグリシンは、濾別により溶解液中のN−アセチル−
(D)−ベラトリルグリシンと分離し、回収することが
できる。
【0031】反応中、または反応終了後のN−アセチル
−(DL)−ベラトリルグリシンから(L)−ベラトリ
ルグリシンへの不斉加水分解率は、反応液の一部を採取
して、アミダーゼ固定化担体および晶出した(L)−ベ
ラトリルグリシンを濾別により除去した後、高速液体ク
ロマトグラフィー法により反応液中の溶解成分を定量す
ることにより調べることができる。
【0032】例えば、定量機器として高速液体クロマト
グラフィー装置L−6250型(日立(株)社製)を用
い、以下の条件で高速液体クロマトグラフィーを実施す
る。
【0033】カラム:キラルセル−OD(CHIRALCEL-O
D;ダイセル化学工業 (株) 社製) カラムサイズ:φ0.46×25cm 移動相:(ヘキサン:イソプロピルアルコール:ギ酸)
=(75:25:1) 流速 : 0.3ml/分 温度 : 23℃ 検出 : 277nm チャート速度 : 1.0ml/分 N−アセチル−(L)−ベラトリルグリシンの保持時
間: 約32分 N−アセチル−(D)−ベラトリルグリシンの保持時
間: 約38分。
【0034】晶出した(L)−ベラトリルグリシンは、
反応液から濾別により除去してあるので、この方法で直
接定量することはできないが、以下の計算式により不斉
加水分解率を算出することができる: 不斉加水分解率(%)=100×(A0 −At )/Ao (式中、A0 およびAt はそれぞれ反応開始時および反
応開始から時間t経過後の一定量の反応液中のN−アセ
チル−(L)−ベラトリルグリシン量を表わす)。
【0035】なお、濾別後の反応液中に溶解しているN
−アセチル−(D)−ベラトリルグリシンは、例えば無
水酢酸とともに加熱することによりラセミ化してN−ア
セチル−(DL)−ベラトリルグリシンとし、再利用す
ることができる。本発明の方法においては反応液中に酵
素が残留しないため、N−アセチル−(DL)−ベラト
リルグリシンの製造中間体であるN−アセチル−(D)
−ベラトリルグリシンも混入物の少ない状態で回収する
ことができる。
【0036】
【実施例】 以下に実施例をあげて、本発明をさらに詳
細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものでは
ない。
【0037】実施例1.市販のキトサン樹脂(キトパー
ルBCW−2620;富士紡績(株)社製)3gを50
mlのイオン交換水にてろ過洗浄を3回行い、付着水を
除去した。
【0038】アミノアシラーゼ(3万単位/g;天野製
薬(株)社製)100mgをイオン交換水20mlに加
え、室温にて20分間撹拌した。この溶液にキトサン樹
脂を全量加え、ロータリー振盪機を用いて150rpm
で攪拌しながら40℃で2.5時間保温した。
【0039】次に、該懸濁液よりキトサン樹脂を濾別し
水で洗浄した。なお、この時、濾液中のアミノアシラー
ゼ活性を測定した結果、使用したアミノアシラーゼのほ
とんどがキトサン樹脂に吸着されていることが判明し
た。
【0040】次いで、エチレングリコール・ジグリシジ
ルエーテルの6%水溶液にアミノアシラーゼ吸着樹脂を
全量加え、ロータリー振盪機を用いて150rpmで攪
拌しながら40℃で2.5時間保温した。その後、樹脂
を水で洗浄して濾別する操作を、濾液の吸光度(280
nm)が0.01以下になるまで繰り返し、アミノアシ
ラーゼ固定化キトサン樹脂を得た。
【0041】原料化合物であるN−アセチル−(DL)
−ベラトリルグリシンは、以下に記載する方法に従って
調製した。
【0042】バニリン152gを85℃で溶融し、攪拌
しながらジメチル硫酸189gと34%水酸化ナトリウ
ム水溶液とを同時に、この反応液が常にアルカリ性を保
つように滴下した後、100℃で1時間加熱した。この
反応混合物を冷却し、10%硫酸を用いて中和した後、
ヒダントイン125gおよびジエタノールアミン31.
5gを加え、100℃で15時間加熱した。この反応混
合物を冷却することにより、析出したベラトラルヒダン
トインを得た。このベラトラルヒダントインをメタノー
ルに溶解し、パラジウムカーボン触媒を5%(w/v)
となるように加えたものに、常圧下で水素を2日間送り
込むことにより、ベラトリルヒダントインを得た。この
ベラトリルヒダントインをアルカリ溶液中で130℃で
3時間加水分解することにより、(DL)−ベラトリル
グリシンを得た。さらに、この(DL)−ベラトリルグ
リシンをアルカリ溶液に溶解し、無水酢酸を添加して常
温で3時間反応させることにより、N−アセチル−(D
L)−ベラトリルグリシンを得た。
【0043】アミノアシラーゼ固定化キトサン樹脂3g
を、N−アセチル−(DL)−ベラトリルグリシン
(3.53g)、pH調整液16.7ml(リン酸水素
2ナトリウム47mg、塩化コバルト1.77mgを含
む)と混合し、ロータリー振盪機を用いて150rpm
で40℃にて24時間撹拌しながら不斉加水分解反応を
行なった。
【0044】反応終了後、アミノアシラーゼ固定化キト
サン樹脂を32メッシュ(タイラー標準ふるい)の金網
にて濾別・回収し、新たにN−アセチル−(DL)−ベ
ラトリルグリシンおよびpH調整液を加えて、上記の条
件で反応を行った。以上の操作を計20回繰り返した。
【0045】反応により生成・晶出した(L)−ベラト
リルグリシンは、濾別により反応液から分離・回収し
た。
【0046】反応液の一部を採取し、以下に記載する条
件で高速液体クロマトグラフィーを行なった。
【0047】機器 :高速液体クロマトグラフィー装置
L−6250型(日立(株)社製) カラム:キラルセル−OD(CHIRALCEL-OD;ダイセル化
学工業 (株) 社製) カラムサイズ:φ0.46×25cm 移動相:(ヘキサン:イソプロピルアルコール:ギ酸)
=(75:25:1) 流速 : 0.3ml/分 温度 : 23℃ 検出 : 277nm チャート速度 : 1.0ml/分 保持時間: N−アセチル−(L)−ベラトリルグリシ
ン 32分 N−アセチル−(D)−ベラトリルグリシン 38分 上記各成分のピーク面積から反応液中の各成分の含量を
計算し、さらに以下の計算式により(L)−ベラトリル
グリシンへの不斉加水分解率を算出した: 不斉加水分解率(%)=100×(A0 −At )/Ao (式中、A0 およびAt はそれぞれ反応開始時および反
応開始から時間t経過後の一定量の反応液中のN−アセ
チル−(L)−ベラトリルグリシン量を表わす)。
【0048】その結果、1回目の反応における、反応開
始24時間後の不斉加水分解率は98.3%であった。
また、20回目の反応における、反応開始48時間後の
不斉加水分解率は97.4%であった。すなわち、濾別
後の反応液中にはN−アセチル−(D)−ベラトリルグ
リシンが高い光学的純度で回収された。
【0049】上記と同様の操作を、別のキトサン樹脂
(キトパールBCW−2610;富士紡績 (株) 社製)
を用いて実施した結果、1回目の反応における反応開始
24時間後の不斉加水分解率は98.6%であった。ま
た、19回目の反応における反応開始72時間後の不斉
加水分解率は88.7%であった。
【0050】実施例2.実施例1と同様の方法で調製し
たアミノアシラーゼ固定化キトサン樹脂(BCW−26
10を用いて調製)16gを、20gのN−アセチル−
(DL)−ベラトリルグリシンおよび塩化コバルト1×
10-4Mを含む溶液100mlを混合し、ロータリー振
盪機を用いて110rpmで攪拌しながら40℃で24
時間不斉加水分解反応を行った。反応終了後のアミノア
シラーゼ固定化キトサン樹脂は、実施例1と同様の方法
で回収し、繰り返し使用した。また、反応により生成・
晶出した(L)−ベラトリルグリシンは、濾別により反
応液から分離・回収した。以上の操作を15回繰り返し
た。
【0051】実施例1と同様にして反応液中の溶解成分
の定量を行い、不斉加水分解率を算出した結果、1回目
の反応の不斉加水分解率は100%、15回目の反応の
不斉加水分解率は72.4%であった。
【0052】参考例.アミノアシラーゼ(3万単位;天
野製薬製)55mgを、20gのN−アセチル−(D
L)−ベラトリルグリシンを含むpH調整液100ml
(リン酸水素2ナトリウム 282mgおよび塩化コバ
ルト1×10-4Mを含む)を混合し、110rpmで攪
拌しながら40℃で不斉加水分解を行った。反応により
生成・晶出した(L)−ベラトリルグリシンは、濾別に
より反応液から分離・回収した。
【0053】実施例1と同様にして反応液中の成分の定
量を行ない、不斉加水分解率を算出した結果、反応開始
24時間後の不斉加水分解率は75.9%、反応開始4
8時間後の不斉加水分解率は97.2%であった。
【0054】試験例.上記参考例の反応後に(L)−ベ
ラトリルグリシンを濾別した濾液、および実施例2の第
5回目と第15回目の反応後に(L)−ベラトリルグリ
シンを濾別した濾液中のアミノ酸分析を行った。
【0055】その結果を表1に示した。
【0056】
【表1】
【0057】参考例の反応系では濾液中の各アミノ酸値
が高く、反応液中にアミノアシラーゼが多量に残留して
いることが明らかである。一方本発明の反応系では、ア
ミノアシラーゼ固定化キトサン樹脂を繰り返し再利用し
た場合でも、濾液中にグリシンのピーク以外はほとんど
検出されなかった。グリシン以外のアミノ酸がほとんど
検出されなかったことから、本発明の反応系の濾液中で
高値を示すグリシンのピークは少なくともアミノアシラ
ーゼ由来のものではないことが明らかであり、反応液中
にアミノアシラーゼが遊離していないことが判明した。
【0058】
【発明の効果】 本発明の方法により、(L)−ベラト
リルグリシンの製造工程においてアミダーゼの反復使用
が可能になった。また、反応終了後のアミダーゼ固定化
担体と反応液との分離が容易になり、さらに反応液中の
酵素の混入がなくなったことにより、(L)−ベラトリ
ルグリシンおよび/またはN−アセチル−(D)−ベラ
トリルグリシンの品質向上が実現した。そのうえ、従来
法よりも短い反応時間で効率よく(L)−ベラトリルグ
リシンを製造することが可能となった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小林 孝 神奈川県平塚市西八幡4丁目4番8号 三 共化成工業株式会社研究所内

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 式(I) 【化1】 で表わされるN−アセチル−(DL)−ベラトリルグリ
    シンを、アミダーゼが固定化された不溶性担体と接触さ
    せることにより、式(II) 【化2】 で表わされる(L)−ベラトリルグリシンを生成させ、
    次いで、(L)−ベラトリルグリシンを分離・回収する
    ことを特徴とする(L)−ベラトリルグリシンの製造方
    法。
  2. 【請求項2】 式(I) 【化3】 で表わされるN−アセチル−(DL)−ベラトリルグリ
    シンを、アミダーゼが固定化された不溶性担体と接触さ
    せることにより、式(III) 【化4】 で表わされるN−アセチル−(D)−ベラトリルグリシ
    ンを生成させ、次いで、N−アセチル−(D)−ベラト
    リルグリシンを分離・回収することを特徴とするN−ア
    セチル−(D)−ベラトリルグリシンの製造方法。
  3. 【請求項3】 不溶性担体がキトサン樹脂、イオン交換
    樹脂、ポリビニルアルコール、光架橋樹脂、セライト、
    ケイソウ土およびセラミックスからなる群より選択され
    るものであることを特徴とする、請求項1または2記載
    の方法。
  4. 【請求項4】 不溶性担体がキトサン樹脂であることを
    特徴とする、請求項1または2記載の方法。
  5. 【請求項5】 不溶性担体がキトパールBCW−261
    0(商標名;富士紡績(株)社製)またはキトパールB
    CW−2620(商標名;富士紡績(株)社製)である
    ことを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
  6. 【請求項6】 アミダーゼがアミノアシラーゼ(EC
    3.5.1.14)またはペニシリンアミダーゼ(EC
    3.5.1.11)であることを特徴とする、請求項1
    ないし5のいずれかに記載の方法。
  7. 【請求項7】 アミダーゼがアミノアシラーゼ(EC
    3.5.1.14)であることを特徴とする、請求項1
    ないし5のいずれかに記載の方法。
  8. 【請求項8】 アミノアシラーゼ(EC3.5.1.1
    4)が固定化されたキトパールBCW−2610(商標
    名;富士紡績(株)社製)またはキトパールBCW−2
    620(商標名;富士紡績(株)社製)を用いることを
    特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7881118B2 (en) 2007-05-25 2011-02-01 Cypress Semiconductor Corporation Sense transistor protection for memory programming
US8036032B2 (en) 2007-12-31 2011-10-11 Cypress Semiconductor Corporation 5T high density NVDRAM cell

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US7881118B2 (en) 2007-05-25 2011-02-01 Cypress Semiconductor Corporation Sense transistor protection for memory programming
US8036032B2 (en) 2007-12-31 2011-10-11 Cypress Semiconductor Corporation 5T high density NVDRAM cell

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