JPH10130742A - 準安定オーステナイト系ステンレス鋼帯の熱処理方法 - Google Patents

準安定オーステナイト系ステンレス鋼帯の熱処理方法

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JPH10130742A
JPH10130742A JP28561896A JP28561896A JPH10130742A JP H10130742 A JPH10130742 A JP H10130742A JP 28561896 A JP28561896 A JP 28561896A JP 28561896 A JP28561896 A JP 28561896A JP H10130742 A JPH10130742 A JP H10130742A
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JP
Japan
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steel strip
heat treatment
speed
stainless steel
precipitation hardening
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JP28561896A
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Inventor
Nobukazu Tsukuda
宣和 佃
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Nippon Steel Nisshin Co Ltd
Original Assignee
Nisshin Steel Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 α′量測定センサの出力に基づいて熱処理条
件を適正化し、生産性を向上させる。 【解決手段】 オンライン上に配置される加工誘起マル
テンサイト(α′)量センサ4から出力されるα′量測
定値とを材質測定値に変換し、予め設定される材質目標
値とを比較し、その比較結果である材質偏差を算出す
る。前記材質偏差に応じて、通板速度、炉温などの熱処
理条件を制御することによって所望の機械的性質を有す
る準安定オーステナイト系ステンレス鋼帯あるいは析出
硬化型準安定オーステナイト系ステンレス鋼帯を得るこ
とができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、冷間圧延後の準安
定オーステナイト系ステンレス鋼帯(以後、「γ′鋼
帯」と略称することがある)の熱処理方法に関し、特に
加工誘起マルテンサイト(以後、「α′」と略称するこ
とがある)相を消失させることによって、前記γ′鋼帯
を軟質化させる熱処理方法、ならびにα′相によって硬
化した析出硬化型準安定オーステナイト系ステンレス鋼
帯(以後、「析出硬化型γ′鋼帯」と略称することがあ
る)をさらに析出硬化処理によって硬質化させる熱処理
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、冷間圧延後のステンレス鋼帯
は、連続熱処理設備において鋼種に応じて再結晶焼鈍あ
るいは析出硬化処理などの熱処理が施されている。
【0003】前記再結晶焼鈍は、冷間圧延によって加工
硬化したステンレス鋼帯を再結晶温度以上に加熱し、引
続き急速冷却を行う熱処理である。これによってステン
レス鋼帯は、再結晶ならびに再結晶粒の成長が生じて軟
質化するとともに、クロム炭化物の析出が防止される。
一般にステンレス鋼帯は、板厚の厚い熱延鋼帯から、板
厚の薄い最終製品になるまでの工程で、数回あるいは数
十回に及ぶ冷間圧延が施される。薄手のステンレス鋼帯
を圧延する場合には、加工硬化によって圧延不能になる
ことがあるので、加工硬化の程度に応じて、中間焼鈍が
施される。特にγ′鋼帯は、圧延によってオーステナイ
ト相の一部がα′相に変態する相変化が生じ、他の鋼種
(フェライト系、マルテンサイト系)と比較して冷間圧
延による加工硬化が著しいので、より多くの中間焼鈍が
施されることがある。
【0004】また一般にγ′鋼帯は、延性および靭性に
富み、深絞り、曲げ加工などの冷間加工性が良好であ
る。このような機械的性質を有し、かつ所定の板厚に形
成されたγ′鋼帯を得るためには、冷間圧延によって所
定の板厚に圧延し、さらにその後、加工硬化した前記
γ′鋼帯を軟質化させる必要がある。したがって鉄鋼メ
ーカでは、冷間圧延後の加工硬化したγ′鋼帯に、上述
した再結晶焼鈍を施している。
【0005】また前記析出硬化処理は、冷間圧延後の析
出硬化型γ′鋼帯を析出硬化処理温度まで加熱し、その
温度で所定の時間だけ保持する熱処理である。析出硬化
型γ′鋼帯は、たとえばAl、Ti、Cuなどの析出硬
化元素が添加されたγ′鋼帯であり、冷間圧延後、前記
析出硬化処理を施されることによって、さらに硬質化す
る。このような析出硬化型γ′鋼帯は、ばね材などに用
いられる。
【0006】前記γ′鋼帯および析出硬化型γ′鋼帯
(以後、γ′鋼帯および析出硬化型γ′鋼帯を総称して
「各鋼帯」とすることがある)は、上述したような再結
晶焼鈍あるいは析出硬化処理などの熱処理を施された
後、調質圧延工程あるいはテンションレベリング工程な
どで形状矯正され、製品出荷される。したがって鉄鋼メ
ーカでは、前記調質圧延あるいはテンションレベリング
などによる加工硬化分を考慮して需要家と取決めた製品
仕様要求を満たすための熱処理条件を決定する必要があ
る。このような熱処理条件は、前記製品仕様要求に基づ
いて算出される熱処理後に必要な前記各鋼帯の機械的性
質の目標値と、熱処理前の前記各鋼帯が有する各機械的
性質(主に硬さ)の正確な測定値との偏差によって決定
することができる。しかしながら、オンライン上の前記
各鋼帯の全長にわたる機械的性質(主に硬さ)を測定
し、その測定値と前記目標値との偏差値に基づいて前記
熱処理条件を制御する技術は、未だ確立されていない。
【0007】一般に鉄鋼メーカでは、前記機械的性質
(主に硬さ)の測定を、前記各鋼帯の一部分を試験片と
して切取り、前記試験片の機械的性質(主に硬さ)を測
定することによって行っている。
【0008】図10は、冷間圧延後のγ′鋼帯の硬さと
位置との関係を示すグラフであり、縦軸はたとえばJI
S Z2244に規定されるビッカース硬さ試験方法で
測定された前記鋼帯の硬さを示し、横軸は鋼帯の長手方
向一端部からの長さ位置を示す。曲線90は、γ′鋼帯
の1コイル分の全長にわたる硬さの分布の一例を表した
ものであり、析出硬化型γ′鋼帯の前記関係も、このよ
うな略U字状の曲線90に追従する。またHaは再結晶
焼鈍後のγ′鋼帯の目標硬さを、Hbは析出硬化処理後
の析出硬化型γ′鋼帯の目標硬さを表す。熱処理前の前
記各鋼帯の全長にわたる機械的性質(主に硬さ)は、通
常、各鋼帯の一端部の試験片Aから推定されている。
【0009】試験片Aの測定値に基づきγ′鋼帯の場合
は、試験片Aが目標硬さHaまで軟質化するように、ま
た析出硬化型γ′鋼帯の場合は、試験片Aの測定値と操
業実績とに基づいて推定される前記鋼帯の最も軟らかい
部分Bが、目標硬さHbまで硬質化するように各熱処理
条件が決定される。すなわちγ′鋼帯はその全長にわた
って一様に、最も硬いA領域が目標硬さHaまで軟質化
するような熱処理条件で再結晶焼鈍が施され、析出硬化
型γ′鋼帯はその全長にわたって一様に、最も軟らかい
B領域が目標硬さHbまで硬質化されるような熱処理条
件で析出硬化処理が施される。全体的には過剰な熱処理
が施されることになるけれども、前記各熱処理によって
前記各鋼帯が全長にわたって確実に製品仕様要求を満た
すようにするために、余裕を持たせた熱処理条件を設定
している。これによってγ′鋼帯および析出硬化型γ′
鋼帯の各機械的性質は需要家と取決められた値を満たす
ための信頼性が確保されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】上述したように従来の
技術では、オンライン上のγ′鋼帯あるいは析出硬化型
γ′鋼帯の全長にわたる機械的性質が未知の状態で、再
結晶焼鈍あるいは析出硬化処理などの熱処理を行うの
で、信頼性を確保するために、過剰な熱処理を施さなけ
ればならいという問題がある。すなわち過剰な熱処理に
よって、所望の機械的性質を有するγ′鋼帯および析出
硬化型γ′鋼帯を確実に得ることはできるけれども、生
産性が大幅に低下するという問題が生じる。また前記各
熱処理は、前記各鋼帯の全長にわたって一様な熱処理条
件で施されるので、熱処理後の各鋼帯の硬さも図10に
示すような略U字型の曲線が平行移動した分布になる。
このために、前記各熱処理後の各鋼帯の硬さ、言い換え
れば機械的性質を、コイルの全長にわたって目標値に一
致させることができないという問題が生じる。本発明者
らは、前記問題を解決するために多くの研究を重ねた結
果、加工誘起マルテンサイト量測定センサを用いること
によって、γ′鋼帯および析出硬化型γ′鋼帯の熱処理
条件を適正化できることを見い出した。
【0011】本発明の目的は、連続熱処理設備における
機械的性質のオンライン測定値に基づいて熱処理条件を
適正化し、生産性を向上することができる、準安定オー
ステナイト系ステンレス鋼帯ならびに析出硬化型準安定
オーステナイト系ステンレス鋼帯の熱処理方法を提供す
ることである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は冷間圧延後の準
安定オーステナイト系ステンレス鋼帯を熱処理炉を備え
る連続熱処理設備に通板して熱処理を行う準安定オース
テナイト系ステンレス鋼帯の熱処理方法において、熱処
理炉の上流側および下流側の少なくとも一方に配置され
る加工誘起マルテンサイト量測定センサによって、前記
ステンレス鋼帯の加工誘起マルテンサイト量を測定し、
前記求めた測定値に基づいて前記ステンレス鋼帯の熱処
理条件を制御することを特徴とする準安定オーステナイ
ト系ステンレス鋼帯の熱処理方法である。本発明に従え
ば、加工誘起マルテンサイト量測定センサは、熱処理炉
の上流側および下流側の少なくとも一方に配置される。
したがって前記センサに、連続熱処理設備内を通板され
る熱処理前あるいは熱処理後もしくは熱処理前後の準安
定オーステナイト系ステンレス鋼帯の加工誘起マルテン
サイト量を、前記ステンレス鋼帯の全長にわたって連続
的に測定させることができる。一般に加工誘起マルテン
サイト量と前記ステンレス鋼帯の機械的性質とは強い相
関を有しており、たとえば測定された加工誘起マルテン
サイト量に所定の影響係数を乗算することによって、機
械的性質の測定値を、前記ステンレス鋼帯の全長にわた
って連続的に算出することができる。また熱処理条件
は、連続熱処理設備内を通板される前記ステンレス鋼帯
の全長にわたって連続的に、かつ正確に測定される機械
的性質の測定値に基づいて制御される。熱処理炉の上流
側に配置される前記センサによる測定値に基づいて前記
熱処理条件を制御する場合、たとえば予め求められる高
温雰囲気中の機械的性質の変化量と時間との関係に従っ
て、炉温および前記ステンレス鋼帯の在炉時間などの熱
処理条件がフィードフォワード制御される。また熱処理
炉の下流側に配置される前記センサによる測定値に基づ
いて熱処理条件を制御する場合、たとえば熱処理後の前
記ステンレス鋼帯の機械的性質の測定値が、予め定める
目標値と一致するように、前記熱処理条件がフィードバ
ック制御される。このようなフィードフォワード制御あ
るいはフィードバック制御によって、前記ステンレス鋼
帯は熱処理され、機械的性質が予め定める目標値と一致
するように制御される。前記熱処理条件の制御は、前記
ステンレス鋼帯の機械的性質に直接的な影響を与えるの
で、前記ステンレス鋼帯の機械的性質を応答性よく制御
することができる。このような熱処理条件の制御によっ
て、全長にわたって一様に所望の機械的性質を有する前
記ステンレス鋼帯を高い信頼性で得ることができる。ま
た本発明では、前記センサの出力に応じて前記熱処理条
件を制御することが可能なので、過剰な熱処理が防止さ
れ、生産性を向上させることができる。
【0013】また本発明は前記熱処理炉内における前記
ステンレス鋼帯の通板速度が予め定める下限速度を超え
るときには、炉温を予め定める温度に保持して通板速度
の制御を行い、前記通板速度が前記下限速度以下である
ときには、通板速度を前記下限速度に保持して炉温の制
御を行うことを特徴とする。本発明に従えば、前記ステ
ンレス鋼帯の熱処理条件の制御は、熱処理炉内雰囲気の
温度である炉温あるいは熱処理炉内における前記鋼帯の
通板速度を制御することによって行われる。前記ステン
レス鋼帯の通板速度が予め定める下限速度を超えるとき
には、前記熱処理条件の制御は通板速度の制御によって
行われる。このとき熱処理炉内の雰囲気温度、すなわち
炉温は前記鋼帯の再結晶温度以上の所定の温度を保持す
るように制御される。前記通板速度の制御は、前記ステ
ンレス鋼帯が前記所定の温度に保たれた雰囲気内に滞在
する時間を制御することを目的としたものである。前記
滞在する時間の制御は、前記鋼帯に付与される熱負荷量
を制御することを目的としたものであり、加工誘起マル
テンサイトの変化量に直接的な影響を与えるので、前記
ステンレス鋼帯の機械的性質を制御することができる。
また通板速度が予め定める下限速度以下になるときに
は、前記熱処理条件の制御は、通板速度を前記下限速度
に維持させたまま、炉温を制御することによって行われ
る。炉温の制御も、前記ステンレス鋼帯に付与させる熱
負荷量を制御することを目的としたものである。通板速
度が一定のとき、炉温が高いほど、前記鋼帯に付与させ
る熱負荷量を多くすることができるので、加工誘起マル
テンサイトの変化量の範囲を拡大させることができる。
したがって前記鋼帯の機械的性質を制御するために、前
記通板速度を前記下限速度以下に減速する必要がある場
合であっても、前記通板速度を下限速度に保持させたま
ま、機械的性質を所定の目標値に一致させるように制御
することが可能である。これによって予め定める下限速
度を超える通板速度で、前記鋼帯を所定の時間内に熱処
理させることができ、生産性の低下を防止することがで
きる。
【0014】また本発明は冷間圧延後の析出硬化型準安
定オーステナイト系ステンレス鋼帯を熱処理炉を備える
連続熱処理設備に通板して析出硬化処理を行う析出硬化
型準安定オーステナイト系ステンレス鋼帯の熱処理方法
において、熱処理炉の上流側に配置されるセンサによっ
て、前記ステンレス鋼帯の加工誘起マルテンサイト量を
連続的に測定し、前記求めた測定値に基づいて、前記ス
テンレス鋼帯の析出硬化処理後の強度が目標値と一致す
るように析出硬化処理時間を制御することを特徴とする
析出硬化型準安定オーステナイト系ステンレス鋼帯の熱
処理方法である。本発明に従えば、加工誘起マルテンサ
イト量を測定するセンサは、熱処理炉の上流側に配置さ
れるので、連続熱処理設備内を通板される熱処理前の析
出硬化型準安定オーステナイト系ステンレス鋼帯の加工
誘起マルテンサイト量を、前記ステンレス鋼帯の全長に
わたって連続的に測定することができる。前記センサの
出力から求められる加工誘起マルテンサイト量測定値
は、強度に変換される。強度変換値は、たとえば前記鋼
帯の硬さを数値化したものであり、前記加工誘起マルテ
ンサイト量測定値に所定の影響係数を乗算することによ
って算出される。強度目標値は、析出硬化処理後の前記
ステンレス鋼帯に要求される強度であり、予め設定され
る。また熱処理炉内の雰囲気温度、すなわち炉温は、前
記鋼帯の析出硬化温度以上の所定の温度と一致するよう
に制御される。したがって前記鋼帯は、炉内に滞在する
時間に応じて析出硬化される。炉内に滞在する時間、す
なわち熱処理時間は、前記強度変換値と前記強度目標値
との偏差分だけ前記鋼帯が析出硬化するために必要な時
間に一致するように制御される。したがって前記鋼帯
は、前記所定の温度に保たれた熱処理炉内で前記熱処理
時間、熱処理される。これによって、その全長にわたっ
て一様に、要求される強度を有する前記鋼帯を高い信頼
性で、過剰な熱処理をすることなく、確実に得ることが
できる。また強度目標値と一致するように、前記鋼帯の
強度を精度よく制御することができるので、熱処理後の
前記鋼帯の全長にわたる品質を確実に保証することがで
きる。
【0015】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の実施の一形態で
ある準安定オーステナイト系ステンレス鋼帯1の再結晶
焼鈍を好適に実施することができる連続焼鈍酸洗設備2
の構成を示す系統図である。連続焼鈍酸洗設備(以後、
「AP設備」と略称することがある)2は、連続熱処理
設備の一例であり、熱処理炉3と、加工誘起マルテンサ
イト(以後、「α′」と略称することがある)量測定セ
ンサ4と冷却装置5と、速度制御ブライドルロール6
と、第1〜第4ブライドルロール7〜10と、入側およ
び出側ループ11,12と、連続酸洗装置13と、ペイ
オフリール14a,14bと、テンションリール15
と、通板速度制御装置37と、炉温制御装置50とを含
んで構成される。またAP設備2は、通板されるγ′鋼
帯を接続するためのウエルダ16、図示しないけれども
前記鋼帯を切断するためのシャーなどを備える。
【0016】熱処理炉3は、たとえばカテナリ炉であ
り、炉内には準安定オーステナイト系ステンレス鋼帯
(以後、「γ′鋼帯」と略称することがある)1の通板
経路に沿って複数の加熱室が設けられる。複数の加熱室
の雰囲気は全て大気であり、その雰囲気温度は上流側
(図1の左側)から下流側(図1の右側)になるほど順
次高くなっている。最上流側の加熱室は予熱帯と呼ば
れ、その雰囲気温度は、たとえば500〜800℃であ
る。またその他の加熱室は加熱帯と呼ばれ、その雰囲気
温度は、たとえば800〜1100℃である。前記各加
熱室内の雰囲気は、燃料ガスが空気によって燃焼されて
加熱される。前記燃料ガスは、たとえば天然ガスと空気
の混合ガスであり、図示しないバーナのノズルから前記
各加熱室へ供給される。その供給量を制御することによ
って、前記各雰囲気温度を制御することができる。γ′
鋼帯1は、前記各加熱室を上流側から順次通過し、所定
の温度まで加熱される。前記カテナリ炉は、熱効率の良
好な直火式であり、通板されるγ′鋼帯1の材温は雰囲
気温度程度まで昇温される。
【0017】冷却装置5は、熱処理炉3の下流側に設け
られており、高温のγ′鋼帯1に水を噴射することによ
って冷却する。連続酸洗装置13は、たとえば中性塩電
解槽、硫酸電解槽、混酸(たとえば硝酸10%〜20
%,弗酸1%〜4%などを含む)槽とを含んで構成さ
れ、熱処理炉3内でγ′鋼帯1の表面上に発生したスケ
ールを除去するために設けられる(本発明において、冷
却装置5および連続酸洗装置13は特に制限されないの
で、詳細な図および説明は略す)。またα′量測定セン
サ4は、速度制御ブライドルロール6と酸洗装置13と
の間に、γ′鋼帯1の表面から所定の間隔をあけて設け
られ、熱処理後のγ′鋼帯1のα′量を正確に測定す
る。なお前記α′量測定センサ4の詳細な説明は後述す
る。
【0018】次にAP設備2の構成をγ′鋼帯1の通板
経路に沿って説明する。冷間圧延後にコイル状に巻取ら
れたγ′鋼帯1は、ペイオフリール14a,14bに装
着される。γ′鋼帯1はペイオフリール14aあるいは
14bのいずれか一方から巻戻されて第1ブライドルロ
ール7へ搬送される。AP設備2では、熱処理工程の効
率化を図るために、γ′鋼帯1は連続供給される。すな
わち前記一方のペイオフリールから巻戻された先行γ′
鋼帯1の終端部に、前記他方のペイオフリールから巻戻
される後行γ′鋼帯1の先端部が溶接などの手段によっ
て接続される。これによって前記γ′鋼帯1を連続的
に、熱処理炉3へ供給することができる。ペイオフリー
ル14aあるいは14bから巻戻されたγ′鋼帯1は、
第1ブライドルロール7と、上述したウエルダ16によ
るγ′鋼帯1の接続作業の際に、貯留されたγ′鋼帯1
を熱処理炉3へ搬送する入側ループ11と、第2ブライ
ドルロール8とを経た後、前記熱処理炉3へ通板され、
後述する熱処理条件で熱処理される。熱処理を施された
γ′鋼帯1は、冷却装置5へ搬送され、材温が常温近く
になるまで冷却される。前記冷却後γ′鋼帯1は、速度
制御ブライドルロール6を経て、連続酸洗装置13へ搬
送され、脱スケール処理が施される。前記脱スケール処
理後、γ′鋼帯1は、第3ブライドルロール9と、後述
する切断および巻取り作業の際に搬送されてくるγ′鋼
帯1を貯留する出側ループ12と、第4ブライドルロー
ル10とを経てテンションリール15に巻取られる。テ
ンションリール15にコイル状に巻取られた先行γ′鋼
帯コイルは通常1コイル毎に図示しないシャーによって
切断され、前記先行γ′鋼帯1のコイルが抜取られた
後、後行γ′鋼帯の先端部がテンションリール15に巻
取られる。
【0019】次にγ′鋼帯1に付与される張力について
説明する。ペイオフリール14aあるいは14bのいず
れか一方(図1は14a)を回転駆動させるペイオフリ
ール駆動モータ21および第1ブライドルロール7を回
転駆動させる第1モータ23には、第1および第2張力
指令器22,24から指令信号が与えられる。これによ
ってペイオフリール駆動モータ21および第1モータ2
3の各回転数は、その回転数の偏差によって、ペイオフ
リール14a,14bと第1ブライドルロール7との間
のγ′鋼帯1に所定の張力が付与されるように制御され
る。また上述した接続作業が行われる直前では、前記各
回転数は、入側ループ11に貯留されるγ′鋼帯1の貯
留量が所定の量に達するまで、増大される。これによっ
て、前記接続作業中は前記各回転数は停止されるけれど
も、入側ループ11に貯留されているγ′鋼帯1を連続
的に熱処理炉3へ供給することができる。
【0020】また同様に第4ブライドルロール10およ
びテンションリール15は、(1)前記切断、巻取り作
業が行われないときは、第4ブライドルロール10とテ
ンションリール15との間のγ′鋼帯に所定の張力が付
与されるように、(2)前記切断、巻取り作業が行われ
る直前は、出側ループ12内のγ′鋼帯1の貯留量が予
め定める最小の量となるように、(3)前記切断、巻取
り作業中は、第4ブライドルロール10とテンションリ
ール15との間のγ′鋼帯1の通板が停止されるよう
に、第5張力指令器32および第6張力指令器34から
の指令信号に基づいて回転駆動する。これによって切
断、巻取り作業中であっても、熱処理炉3から搬送され
るγ′鋼帯1を連続的に出側ループ12内に貯留させる
ことができる。
【0021】第2ブライドルロール8と速度制御ブライ
ドルロール6との間のγ′鋼帯1には、第3張力指令器
26が第2ブライドルロール8を回転駆動させる第2モ
ータ25の回転数を制御することによって、所定の張力
が付与されている。同様に速度ブライドルロール6と第
3ブライドルロール9との間のγ′鋼帯1には、第4張
力指令器30が第3ブライドルロール9を回転駆動させ
る第3モータ29の各回転数を制御することによって、
所定の張力が付与されている。
【0022】次に熱処理炉3に通板されるγ′鋼帯1の
通板速度について説明する。γ′鋼帯1の通板速度は、
速度指令器48から出力される速度指令信号に基づいて
制御される。すなわち前記速度指令信号に基づいて速度
制御モータ27は速度制御ブライドルロール6を回転駆
動させる。なお上述した第1〜第4ブライドルロール7
〜10、ペイオフリール14a,14bおよびテンショ
ンリール15は、前記速度制御ブライドルロール6の回
転に応じて、それぞれの所定の張力制御および通板速度
制御が実施されるように制御される。
【0023】次に通板速度制御装置37について説明す
る。通板速度制御装置37は、α′量測定センサ4の出
力に応じて、γ′鋼帯1の通板速度を制御するために設
けられ、速度制御スイッチ38と、材質演算器42と、
比較器43と、材質設定器44と、変換器45と、加算
器46と、速度設定器47と、速度指令器48とを含ん
で構成される。速度制御スイッチ38が電気的に接続さ
れているとき、α′量測定センサ4の出力は、速度制御
スイッチ38を介して材質演算器42に与えられる。材
質演算器42では、前記α′量測定センサ4の出力は、
前記センサ4の設置位置におけるγ′鋼帯1の機械的性
質(以後、「材質」と略称することがある)が、予め求
められているα′と材質との対応関係から算出され材質
測定値として、比較器43および図示しない表示記録装
置へ出力される。また材質設定器44では、前記予め求
められるα′と材質との対応関係に基づいて所望の機械
的性質に対応する目標値が設定されている。前記目標値
である材質目標値は、比較器43へ出力される。比較器
43では、材質演算器42から出力された材質測定値
と、前記材質目標値とが比較され、材質偏差が求められ
る。前記材質偏差は、変換器45へ出力され、通板速度
に対する材質の影響係数が乗算され、速度偏差ΔVに変
換される。前記変換後、速度偏差ΔVは、加算器46へ
出力される。また速度設定器47には、操業実績から定
められる速度設定値Vが設定されており、加算器46へ
出力される。加算器46では前記速度偏差ΔVに、前記
速度設定値Vが加算され、速度指令値V1が求められ
る。前記速度指令値V1は、速度指令器48へ出力され
る。速度指令器48は、前記速度指令値V1に基づき
γ′鋼帯1が速度V1で通板されるように、速度制御モ
ータ27へ速度指令信号を与え、速度制御ブライドルロ
ール6の回転数を制御する。その回転数の制御は、たと
えばパルスジェネレータ35の出力に応じて、実際の通
板速度と指令速度V1とが一致するように、前記速度指
令信号を補正する、いわゆるフィードバック制御によっ
て行われてもよい。このような通板速度制御装置37に
よってγ′鋼帯1の通板速度は、材質目標値と比較して
材質測定値の方が小さい場合は、大きくなるように、ま
た逆に前記材質測定値の方が大きい場合は小さくなるよ
うに、制御される。また速度制御スイッチ38が電気的
に切断されているときには、通板速度は後述する下限速
度と一致するように調整される。
【0024】次に炉温制御装置50について説明する。
炉温制御装置50は、α′量測定センサ4の出力に応じ
て熱処理炉3内の雰囲気温度を制御するために設けら
れ、材質演算器53と、比較器54と、材質設定器55
と、変換器56と、炉温制御スイッチ52と、加算器5
7と、炉温設定器58と、炉温指令器59と、炉温測定
器60と、炉温演算器61と、比較器62と、スイッチ
51とを含んで構成される。炉温制御スイッチ52が電
気的に接続されているとき、スイッチ51は電気的に切
断される。前記α′量測定センサ4の出力は材質演算器
53へ出力される。材質演算器53、比較器54および
材質設定器55は、それぞれ前記材質演算器42、比較
器43および材質設定器44と同一の構成であり、前記
センサ4の出力を材質測定値へ数値変換し、材質目標値
との偏差である材質偏差を変換器56へ出力することが
できる。変換器56では、前記材質偏差は、炉温に対す
る材質の影響係数を乗算され、材質偏差ΔTに変換され
る。前記変換後、炉温偏差ΔTは、炉温制御スイッチ5
2を介して加算器57に出力される。加算器57では、
前記炉温偏差ΔTに、炉温設定器58で予め定めた炉温
設定値Tが加算され、炉温指令値T1が求められる。前
記炉温指令値T1は炉温指令器59へ出力される。炉温
指令器59は、前記炉温指令値T1に基づき炉温がT1
になるように、前記熱処理炉3に供給される燃料ガスの
流量を制御する。
【0025】また炉温制御スイッチ52が電気的に接続
していないとき、スイッチ51が電気的に接続される。
このとき熱電対などで構成される炉温測定器60の出力
は、炉温演算器61に送られる。炉温演算器61では、
前記出力は数値に変換される。前記変換結果、すなわち
炉温測定値は比較器62に出力される。比較器62で
は、前記炉温測定値と、炉温設定器58で定めた炉温設
定値Tとが比較され、炉温偏差ΔTが求められる。前記
炉温偏差ΔTは、スイッチ51を介して加算器57へ出
力される。加算器57では、前記炉温偏差ΔTは、前記
炉温設定値Tに加算され、炉温指令値T2が求められ
る。前記炉温指令値T2は炉温指令器59へ出力され
る。炉温指令器59は、上述したように炉温がT2とな
るように燃料ガス流量を制御する。
【0026】上述した速度制御スイッチ38、スイッチ
51および炉温制御スイッチ52を電気的に接続および
切断する操作は、表1に基づいて行われる。
【0027】
【表1】
【0028】表1中の下限速度は、予め定める通板速度
の下限値を示す。また表1中の通板速度は、上述したパ
ルスジェネレータ35の出力から求められる通板速度の
測定値を示す。通板速度測定値および下限速度は図示し
ない判定装置に送られ、比較される。判定装置は、前記
比較された結果と表1とに基づいて前記各スイッチ3
8,51,52を操作する。このように前記各スイッチ
38,51,52が表1に従って操作されることによっ
てAP設備2では、通板速度が下限速度を超えるときに
は、炉温が炉温設定値T1に保持されたまま通板速度の
制御が行われ、通板速度が下限速度以下のときには、通
板速度が下限速度に保持されたまま、炉温の制御が行わ
れる。AP設備2では、再結晶焼鈍は熱処理炉3の炉温
が、γ′鋼帯1の再結晶温度以上の範囲内で予め設定さ
れる前記炉温設定値T1に達した後に、開始される。ま
た再結晶焼鈍開始時の材質制御は、通板速度制御によっ
て行われるように初期設定される。
【0029】図2は、γ′鋼帯1の再結晶焼鈍を好適に
実施する熱処理方法を説明するためのフローチャートで
ある。ステップa1からγ′鋼帯1の再結晶焼鈍を行う
ための準備作業が開始される。ステップa2では、製造
指令が発令される。製造指令の内容は、ペイオフリール
14a,14bに装着されたγ′鋼帯1の素材コイル情
報、および機械的性質などの製品仕様要求などである。
ステップa3では、前記製造指令に基づき、熱処理条件
が設定される。設定される条件は、材質目標値、速度設
定値V、下限速度設定値Vmin、炉温設定値T、各張力
設定値および各影響係数などである。下限速度設定値V
minは、生産性を考慮して通板速度の下限値に設定され
る。炉温設定値Tは、γ′鋼帯1の材温が短時間で再結
晶温度まで到達することができるような炉温雰囲気温度
に設定される。速度設定値Vは、温度Tに保持された炉
温雰囲気中で、γ′鋼帯1の材質制御が好適に行われる
ように、かつ前記下限速度設定値Vminよりも大きい範
囲内で設定される。
【0030】ステップa4では、炉温の調整が行われ
る。前記炉温はステップa3で設定された炉温設定値T
と一致するように調整される。炉温がTに達した後、ス
テップa5に進む。ステップa5では熱処理炉3内にお
けるγ′鋼帯1の通板速度の調整が行われる。前記通板
速度は、ステップa3で設定された速度設定値Vと一致
するように調整される。通板速度が速度Vに達した後、
ステップa6に進む。ステップa6では、熱処理が開始
される。熱処理が開始される際、γ′鋼帯1は炉温T1
で保持されている熱処理炉3内の雰囲気中を、速度Vで
通板される。ステップa7では、通板速度が測定され
る。通板速度は、上述したようにパルスジェネレータ3
5の出力に基づいて求められる。前記測定後、ステップ
a8に進む。
【0031】ステップa8では、前記通板速度の測定値
がステップa3で設定された下限速度Vminを超えてい
るか否かが判断される。この判断が肯定であればステッ
プa9へ進む。ステップa9では、炉温指令値T1とし
て前記炉温設定値Tが設定される。ステップa10で
は、γ′鋼帯1のα′量が測定される。前記測定後、ス
テップa11に進む。ステップa11では、材質演算が
行われる。前記α′量の測定結果に所定の影響係数が乗
算され、α′量測定センサ4の設置位置におけるγ′鋼
帯1の材質測定値が算出される。材質算出後、ステップ
a12に進む。ステップa12では、前記材質測定値
と、ステップa3で設定された材質目標値とが比較演算
され、材質偏差が算出される。ステップa13では、前
記材質偏差が速度偏差ΔVに変換される。前記変換は、
前記材質偏差に、所定の影響係数が乗算されることによ
って行われる。ステップa14では、前記速度偏差ΔV
に、ステップa3で設定された速度設定値Vが加算さ
れ、速度指令値V1が算出される。前記算出後、ステッ
プa21に進む。
【0032】ステップa8における判断が否定であれ
ば、ステップa15に進む。ステップa15では、速度
指令値V1として前記下限速度Vminが設定される。ス
テップa16,a17およびa18は前記ステップa1
0,a11およびa12と同様であり、説明は省略す
る。ステップa19では、ステップa18で算出された
材質偏差は炉温偏差ΔTに変換される。前記変換は、前
記材質偏差に所定の影響係数が乗算されることによって
行われる。前記変換後、ステップa20に進む。ステッ
プa20では、前記炉温偏差ΔTに、ステップa3で設
定された炉温設定値Tが加算され、炉温指令値T1が算
出される。前記算出後、ステップa21に進む。
【0033】ステップa21では、各ステップa9,a
14あるいは各ステップa15,a20において算出さ
れた速度指令値V1および炉温指令値T1に基づいて通
板速度制御および炉温制御が行われる。前記通板速度お
よび炉温は、パルスジェネレータ35および炉温測定器
60などでそれぞれ測定された各測定値と、前記各指令
値とが一致するように、速度制御モータ28の回転数、
および燃料ガスの流量を制御することによって、制御さ
れる。
【0034】ステップa22ではコイルエンドか否かが
判断される。この判断が否定の場合には、ステップa6
に戻り、前記判断が肯定になるまで、ステップa6〜ス
テップa22の処理が繰返される。前記判断が肯定であ
れば、ステップa23に進み、他のステンレス鋼帯を熱
処理するかあるいは熱処理を停止する。
【0035】このようにして本実施の形態では、熱処理
条件の制御が行われる。熱処理条件の制御は、熱処理炉
3へ供給されるγ′鋼帯1の材質の制御が目的であり、
α′量測定センサ4の出力に対応した通板速度制御およ
び炉温制御によって行われる。前記通板速度の制御は、
γ′鋼帯1が熱処理炉3に滞在する時間を制御すること
ができ、結果的にγ′鋼帯1に付与される熱負荷量を制
御することができる。γ′鋼帯1に付与される熱負荷量
の変化は、α′相の変化量に大きな影響を与えるので、
前記通板速度制御によってα′量を応答性よく制御する
ことができる。AP設備2では、γ′鋼帯1の通板速度
は、速度制御ブライドルロール6の回転数によって直接
的に制御される。前記回転数は、オンラインで測定され
たγ′鋼帯1の材質測定値に基づいて通板速度制御装置
37によって制御されるので、γ′鋼帯1の材質を応答
性よくかつ正確に前記材質設定値に一致させるように制
御することができる。
【0036】また炉温の制御は、γ′鋼帯1が搬送され
る熱処理炉3内の雰囲気温度を制御するので、結果的に
γ′鋼帯1に付与される熱負荷量を制御することができ
る。AP設備2では、前記オンラインで測定された材質
測定値に基づいて炉温制御装置50によって制御される
ので、γ′鋼帯1の材質を正確に前記材質設定値に一致
させるように制御することができる。
【0037】また前記材質設定値は任意に選ぶことがで
き、さらに上述したようにAP設備2ではγ′鋼帯1の
材質を正確に、前記材質設定値に一致するように制御す
ることができるので、所望の材質を有するγ′鋼帯1
を、高い信頼性で得ることができる。また前記熱処理条
件の制御は、オンラインで測定された材質測定値に基づ
いて行われるので、過剰な熱処理を阻止し、生産性の向
上を図ることができる。
【0038】また本実施の形態では、速度設定値Vは下
限速度設定値Vminよりも大きく設定されているので、
前記熱処理条件の制御は、主に通板速度制御によって行
われる。一般に熱処理炉の炉温制御は、通板速度制御に
比べて応答性が悪く、特に前記炉温を小さくする制御
は、時間遅れが著しいので、前記材質を正確に制御する
ことは困難であるという問題を有する。本実施の形態で
は、このような問題を回避することができる。
【0039】また材質を制御するために、通板速度を前
記下限速度以下に減速する必要がある場合であっても、
前記通板速度を下限速度に維持させたまま、炉温制御に
よって材質を所定の目標値に一致させるように制御する
ことができる。これによって前記γ′鋼帯1の再結晶焼
鈍は、下限速度Vmin以上の通板速度で、所定の時間内
に行うことができるので生産性の低下を回避することが
できる。
【0040】図1に示すAP設備2では、材質制御は、
熱処理炉3よりも下流側に配置されるα′量測定センサ
4の出力を取込むことによって、フィードバック制御に
よって行われるけれども、さらに他の実施の形態として
熱処理炉3よりも上流側に配置される他のα′量測定セ
ンサの出力に基づいて、材質を制御する、いわゆるフィ
ードフォワード制御によって材質制御を行ってもよい。
さらに前記材質制御は、フィードバックあるいはフィー
ドフォワード制御単独による制御の外に、前記フィード
バック、フィードフォワード制御を組合わせた制御であ
ってもよい。これによって前記単独の制御と比較して、
高精度に材質を制御することができる。
【0041】また第4ブライドルロール10を通過した
γ′鋼帯1は、そのままテンションリール15に巻取ら
れるけれども、前記第4ブライドルロール10と、テン
ションリール15との間にスキンパスミルを設け、調質
圧延を施した後にテンションリール15に巻取らせるよ
うな構造であってもよい。
【0042】図3は、本発明の他の実施形態である析出
硬化型準安定オーステナイト系ステンレス鋼帯63の析
出硬化処理を好適に実施することができるAP設備64
の構成を示す系統図である。なお図1と対応する部分に
ついては同一の参照符号を付し、説明は省略する。析出
硬化型準安定オーステナイト系ステンレス鋼帯(以後、
「析出硬化型γ′鋼帯」と略称することがある)63は
冷間圧延によって加工硬化された状態であり、その鋼成
分は、たとえばC:0.098,Si:0.56,M
n:0.78,P:0.032,S:0.001,N
i:6.52,Cr:16.5,Mo:0.1,Cu:
0.13,N:0.033,残部Feである(重量
%)。AP設備64では、図1に示すAP設備2の通板
速度制御装置37および炉温制御装置50の代わりに通
板速度制御装置65および炉温制御装置66が設けられ
る。
【0043】通板速度制御装置65は材質演算器67
と、比較器68と、材質設定器69と、変換器70と、
加算器71と、速度設定器72と、速度指令器73とを
含んで構成される。また析出硬化型γ′鋼帯63のα′
量を測定するα′量測定センサ74は、熱処理炉3の上
流側に設けられる。具体的にはペイオフリール14a,
14bと第1ブライドルロール7との間に、前記析出硬
化型γ′鋼帯63の表面上に所定の間隔をあけて設けら
れる。
【0044】前記炉温制御装置66は、炉温指令器76
と、炉温演算器77と、比較器78と、炉温設定器79
とを含んで構成される。熱処理炉3内の雰囲気温度は、
炉温測定器60からの出力が炉温演算器77によって演
算され、炉温測定値が算出される。また炉温設定器79
には、熱処理炉3内で析出硬化処理が好適に実施される
ために必要な炉温が炉温設定値Tとして設定される。前
記炉温の測定値および炉温の設定値Tは比較器78に送
られ比較演算される。前記比較演算結果、すなわち炉温
偏差ΔTは、炉温指令器76へ出力される。炉温指令器
76では、前記炉温偏差ΔTが補正されるように前記燃
料ガス流量を調整する。このように熱処理炉3内の雰囲
気温度は常に前記炉温設定値Tに一致するように炉温制
御装置66によって補正制御される。
【0045】次にAP設備64における熱処理時間の制
御について説明する。α′量測定センサ74の出力は材
質演算器67へ送られる。材質演算器67では、前記出
力は、予め求められるα′と材質との対応関係から材質
に変換される。前記変換後、前記材質のうち強度(特に
硬さ)が強度測定値として比較器68へ出力される。ま
た材質設定器69からは強度設定値が設定される。前記
強度設定値は、後述する製造指令に基づき、析出硬化型
γ′鋼帯63が析出硬化処理後に要求される強度の目標
値であり、比較器68へ出力される。比較器68では、
前記強度測定値と前記強度設定値とが比較される。その
比較演算結果、すなわち強度偏差が算出される。前記強
度偏差は、変換器70へ出力される。変換器70では、
前記強度偏差は、通板速度に対する強度の影響係数が乗
算されて、速度偏差ΔVに変換される。前記変換後、速
度偏差ΔVは加算器71へ出力される。また速度設定器
72には操業実績から定められる速度設定値Vが設定さ
れており、加算器71へ出力される。加算器71では、
速度偏差ΔVに、前記速度設定値Vが加算され、速度指
令値V1が求められる。前記速度指令値V1は、速度指
令器73へ出力される。速度指令器73は、前記速度指
令値V1に基づき析出硬化型γ′鋼帯63が速度V1で
通板されるように速度制御モータ27へ速度指令信号を
与え、速度制御ブライドルロール6の回転数を制御す
る。速度制御ブライドルロール6の回転数制御は、たと
えばパルスジェネレータ35の出力に応じて、速度制御
ブライドルロール6の回転数を補正する、いわゆるフィ
ードバック制御によって行われる。このような通板速度
制御装置65によって熱処理炉3に搬送される析出硬化
型γ′鋼帯63の通板速度が制御される。AP設備64
では析出硬化処理は前記熱処理炉3の炉内雰囲気温度が
前記炉温設定値Tに達した後に開始される。
【0046】図4は、析出硬化型準安定オーステナイト
系ステンレス鋼帯63を析出硬化処理したときの硬さの
増分と時間との関係を示すグラフである。このような図
4は操業実績に基づいて求めることができる。前記析出
硬化型γ′鋼帯63に析出硬化処理を行うと、硬さは時
間の経過とともに増加する。また一定の時間t2を経る
と、時間の経過とともに硬さが減少していく。本実施の
形態では、このような過時効を回避しながら析出硬化処
理が行われる。
【0047】前記析出硬化型γ′鋼帯63のα′量を
α′量測定センサ74によって測定すると、その測定値
は機械的性質、たとえば強度(特に硬さ)に変換され
る。前記変換された強度の設定値である測定硬さと、前
記析出硬化型γ′鋼帯63の強度目標値である目標硬さ
との偏差ΔHvを求め、図4の関係から目標硬さを得る
ために必要な析出硬化処理時間t1を得ることができ
る。
【0048】前記析出硬化処理時間t1と、熱処理炉3
内の有効熱処理経路の長さとが求められたとき、析出硬
化型γ′鋼帯63の通板速度は容易に算出することがで
きる。たとえば本実施の形態では、変換器70において
行われる強度偏差から通板速度への変換および速度設定
器72に設定される速度設定値Vの算出は、図4に基づ
いて、必要な熱処理時間を求め、さらに前記熱処理経路
の長さを、前記時間で乗算することによって算出するこ
とができる。
【0049】図5は、析出硬化型γ′鋼帯63の析出硬
化処理を好適に実施する熱処理方法を説明するためのフ
ローチャートである。ステップb1から前記析出硬化型
γ′鋼帯63の析出硬化処理を行うための準備作業が開
始される。ステップb2では製造指令が発令される。製
造指令の内容は、ペイオフリール14a,14bに装着
された析出硬化型γ′鋼帯63の素材コイル情報たとえ
ば鋼成分、板厚、形状、寸法、圧延率などおよび機械的
性質などの製品仕様要求などである。ステップb3で
は、前記製造指令に基づき、熱処理条件が設定される。
設定される条件は、材質設定値、速度設定値V、炉温設
定値T、各張力設定値などおよび各影響係数などであ
る。材質設定値は、析出硬化型γ′鋼帯63が析出硬化
処理後に要求される強度(たとえば硬さ)が設定され
る。炉温設定値Tは、析出硬化型γ′鋼帯63の材温が
析出硬化処理温度に迅速に到達するために必要な炉温雰
囲気温度が設定される。速度設定値Vは、好適に析出硬
化処理が行われるように、図4と、前記材質設定値とに
基づいて、算出された通板速度が設定される。ステップ
b4では炉温の調整が行われる。前記炉温はステップb
3で設定された炉温設定値Tと一致するように調整され
る。炉温が温度Tに到達した後、ステップb5に進む。
ステップb5では通板速度の調整が行われる。前記通板
速度は、ステップb3で設定された通板速度設定値Vと
一致するように調整される。前記通板速度が速度Vに到
達した後、ステップb6に進む。
【0050】ステップb6から熱処理時間の制御が開始
される。ステップb6では、オンライン上で析出硬化型
γ′鋼帯63の析出硬化処理前のα′量が測定される。
前記測定後、ステップb7へ進む。ステップb7では材
質演算が行われる。前記演算によって、ステップb6で
測定されたα′量測定値に所定の影響係数が乗算され、
析出硬化型γ′鋼帯63の材質測定値が算出され、その
うち強度測定値が求められる。前記演算後、ステップb
8に進む。ステップb8では、強度偏差が算出される。
前記強度偏差は、前記強度測定値と、ステップb3で設
定された材質設定値との比較演算によって算出される。
前記算出後ステップb9に進む。ステップb9では、前
記強度偏差が速度偏差ΔVに変換される。前記変換は、
前記強度偏差に所定の影響係数が乗算されることによっ
て行われる。前記変換後ステップb10に進む。ステッ
プb10では、前記変換された速度偏差ΔVに、ステッ
プb3で設定された速度設定値Vが加算され、速度指令
値V1が算出される。前記算出後、ステップb11に進
む。ステップb11では、前記速度指令値V1に基づい
て、通板速度制御が行われる。通板速度は、パルスジェ
ネレータ35からの出力である測定値と、前記速度指令
値V1とが一致するように、速度制御モータ27の回転
数を制御することによって制御される。ステップb12
では、析出硬化型γ′鋼帯63が温度T1に炉温雰囲気
中に、速度V1で通板される。ステップb13ではコイ
ルエンドか否かが判断される。この判断が否定の場合に
は、ステップb6に戻り、前記判断が肯定になるまで、
ステップb6〜ステップb13の処理が繰返される。前
記判断が肯定の場合には、ステップb14に進み、他の
ステンレス鋼帯の熱処理が行われるか、あるいは熱処理
が停止される。
【0051】このようにして本実施の形態では、通板速
度の制御が行われる。上述したように通板速度の制御
は、析出硬化型γ′鋼帯63が熱処理炉3内を通過する
時間、すなわち熱処理時間を制御することができる。図
4に示すように析出硬化型γ′鋼帯63は、その材温が
析出硬化温度で保持される前記熱処理時間に応じて析出
硬化する。AP設備64では、析出硬化型γ′鋼帯63
の通板速度は、速度制御ブライドルロール6の回転数に
よって直接的に制御される。前記回転数は、オンライン
で測定された前記鋼帯63の強度に応じて通板速度制御
装置65によって制御されるので、前記鋼帯63の強度
を応答性よく、かつ正確に制御することができる。これ
によって所望の強度を有する析出硬化型γ′鋼帯63を
高い信頼性で得ることができ、前記鋼帯63の全長にわ
たる品質保証を確実にすることができる。また過剰な熱
処理を回避し、生産性の向上を図ることができる。
【0052】図6は、本発明のさらに他の実施形態であ
る光輝焼鈍設備100の構成を示す系統図である。光輝
焼鈍設備(以後、「BA設備」と略称することがある)
100の電気的構成は、図1に示すAP設備2の電気的
構成と同一であり、対応する部分には同一の参照符号を
付して説明は省略する。BA設備100は基本的に、熱
処理炉101と、ペイオフリール104a,104b
と、第1ブライドルロール105と、入側ルーパ106
と、第2ブライドルロール107と、速度制御ブライド
ルロール108と、出側ルーパ109と、第3ブライド
ルロール110と、テンションリール111と、α′量
測定センサ4と、通板速度制御装置37と、炉温制御装
置50とを含んで構成される。
【0053】このようなBA設備100は、連続熱処理
設備の一例であり、AP設備2と大きく異なる部分は熱
処理炉の構成および連続酸洗装置の有無である。なお本
実施の形態では、γ′鋼帯1が後述する通板速度に従っ
て連続的に熱処理炉101へ搬送され、かつ熱処理後に
連続的に巻取られるような機械的構成であればよく、ペ
イオフリール104a,104bと第2ブライドルロー
ル107との間、および速度制御ブライドルロール10
8とテンションリール111との間に構成される設備
は、図1および図3に示すAP設備2およびAP設備6
4のペイオフリール14a,14bと第2ブライドルロ
ール8との間および第3ブライドルロール9とテンショ
ンリール15との間に構成される設備であってもよく特
に制限されないので、説明は省略する。
【0054】BA設備100の熱処理炉101は、たと
えばタテ型炉であり、γ′鋼帯1は各デフレクタロール
125〜128に支持されつつ通板される。熱処理炉1
01の内部空間には、加熱帯102と、冷却帯103と
が設けられており、雰囲気はたとえばアンモニア分解ガ
スなどの還元性ガスが供給されている。γ′鋼帯1はデ
フレクタロール127からデフレクタロール128まで
通板される間に加熱され、その後、冷却される。上述し
た実施形態であるAP設備2のうち熱処理炉3は、γ′
鋼帯1が水平方向へ通板されることから、炉内にγ′鋼
帯1を支持するハースロールが設けられている。前記ハ
ースロールは、高温のγ′鋼帯1を支持しているので、
連続的に使用するとハースロールの表面が損傷する恐れ
がある。表面が損傷したハースロールをそのまま使用し
続けると、通板するγ′鋼帯1の表面を損傷させるとい
う問題が生じるので、ハースロールは定期的に交換する
必要がある。しかしながら、本実施の形態であるBA設
備100の熱処理炉101は、タテ型炉であり、γ′鋼
帯1を垂直方向に通板しているので、高温に加熱された
加熱帯102内にγ′鋼帯1を支持するロールを設ける
必要がなく、前記問題を回避することができる。また一
般的にAP設備は、スケールを除去するための酸洗装置
が設けられているので、γ′鋼帯1の表面が酸に浸され
ダル仕上げとなる。これによって前記AP設備で再結晶
焼鈍されたγ′鋼帯1は用途上の制約を受けるという問
題が生じる。BA設備100は、γ′鋼帯1を還元性ガ
ス雰囲気内で熱処理することで、スケールの発生自体を
極力押さえることができるので、前記問題を回避するこ
とができる。
【0055】α′量測定センサ4は速度制御ブライドル
ロール8と出側ルーパ109との間に、搬送されるγ′
鋼帯1の表面から所定の間隔をあけて設けられる。第2
ブライドルロール107と出側ルーパ109との間に搬
送されるγ′鋼帯1の通板速度は、通板速度制御装置3
7によって制御される。熱処理炉101を構成する加熱
帯102の雰囲気温度は、炉温制御装置50によって制
御される。
【0056】前記通板速度制御装置37および炉温制御
装置50による材質制御は、図1および図2に示す実施
形態の熱処理条件の制御によって行うことができ、全く
同一の効果を得ることができる。したがって本実施の形
態における熱処理条件の制御、およびその効果について
詳細な説明は省略する。
【0057】またさらに他の実施形態として入側ルーパ
106と第2ブライドルロール107との間に、α′量
測定センサ74を搬送される析出硬化型γ′鋼帯63の
表面に所定の間隔をあけて設けて、さらに前記センサ7
4の出力を取込む通板速度制御装置65と、炉温制御装
置66とを、前記BA設備に組込んでもよい。これによ
って図3〜図6に示す実施の形態の熱処理条件の制御に
よって、析出硬化処理を好適に実施することができ、全
く同一の硬化を得ることができる。
【0058】なお上述したAP設備は、再結晶焼鈍が実
施されるAP設備2および析出硬化処理が実施されるA
P設備64として独立しているけれども、さらに他の実
施形態として、通板速度制御装置37および65がスイ
ッチなどを間に設けて合成され、同様に炉温制御装置5
0および66が合成されたAP設備を構成することもで
きる。これによって1のAP設備によって再結晶焼鈍あ
るいは析出硬化処理を行うことができる。BA設備にお
いても同様に再結晶焼鈍あるいは析出硬化処理が1の設
備で実施するように構成することも可能である。
【0059】次に各α′量測定センサ4,74による
γ′鋼帯1および析出硬化型γ′鋼帯63(以後、γ′
鋼帯1および析出硬化型γ′鋼帯63を総称して「各鋼
帯1,63」とすることがある)の材質の測定方法につ
いて説明する。
【0060】図7は、α′量測定センサ4,74の外観
を示す拡大正面図であり、図8はα′量測定センサ4,
74によるα′量の測定のための概略的構成を示すブロ
ック図である。
【0061】α′量測定センサ4,74は、一対の車輪
131a,131bによって支持されるセンサ本体13
2を有し、センサ本体132は、その下端面132aが
鋼帯1,63の表面1b,63bから間隔ΔLをあけて
設けられ、この間隔ΔLは、1〜4mmに選ばれる。こ
の間隔ΔLは1mm未満であれば、鋼帯1,63の表面
1b,63bに生じた異物にセンサ本体132の下端面
132aが接触して測定が困難となり、また間隔ΔLが
4mmを超えると、正常な測定範囲を超えてしまい、正
確なα′量を測定することができなくなってしまう。こ
のような間隔を1〜4mmに選ぶことによって高精度で
α′量を測定することが可能である。
【0062】センサ本体132は、強磁性材料から成る
探触子133と、探触子133の軸線方向両端部付近に
装着される上下2段の励磁コイル134と、励磁コイル
134の内側に同軸上に配置される検出コイル135と
を有し、これらのコイル134,135は差動変圧器を
構成している。励磁コイル134は、測定時に5kHz
〜2MHzの交流電流によって励磁され、検出コイル1
35の巻線中に一定の起電力が発生する。測定しないと
きは、励磁コイル134と検出コイル135との各巻線
には電圧が等しくなるようにバランスされるが、測定時
にはこのバランスが崩れ、検出コイル135の巻線中に
異なった大きさの起電力が誘起され、この電圧差はα′
相の絶対量に支配される。
【0063】α′量測定センサ4,74には、励磁コイ
ル134に励磁電流を供給し、また検出コイル135に
よって誘起された検出電流を検出する検出装置136が
設けられる。センサ本体132と鋼帯1,63との間隔
ΔLを一定とした状態で、検出電流を検出することによ
って、磁気特性、すなわち鋼帯1,63の材質をα′量
として測定することができる。このα′量測定センサ
4,74からの出力は材質演算器42,53,67に与
えられる。
【0064】α′量測定センサ4,74のα′量の測定
については、鋼帯1,63の張力の影響因子による誤差
が発生することが知られている。上述した実施の形態で
ある各AP設備2,64および各BA設備100(以
後、「各設備2,64,100」と略称することがあ
る)には、α′量測定センサ4,74は熱処理炉3,1
01から離反して設置されているので、温度の影響によ
るα′量の測定誤差を回避することができる。また前記
各設備2,64,100には、鋼帯1,63の張力を検
出する図示しない張力計が設けられており、その張力計
の出力がα′材質演算器42,53,67に与えられ
る。
【0065】材質演算器42,53,67では、前記
α′量測定センサ4,74によるα′量測定値、および
前記張力による張力測定値に基づいて、α′量測定セン
サ4,74によるα′量測定値の鋼帯1,63の張力の
影響因子による誤差を補正する。このようにして、鋼帯
1,63のα′量を正確に測定することができる。
【0066】図9は、冷間圧延後のγ′鋼帯1および析
出硬化型γ′鋼帯63のα′量と硬さとの関係を示すグ
ラフである。上述した各実施形態では、材質演算器4
2,53,67から出力される材質のうち硬さを、図9
と、α′量測定センサ4,74の出力とから求めること
ができる。前記各設備2,64,100では、前記α′
量測定センサ4,74は、熱処理炉3および熱処理炉1
01から搬送されてくる再結晶焼鈍5のγ′鋼帯1の
α′量あるいはペイオフリール14から搬送されてくる
冷間圧延後の析出硬化型γ′鋼帯63のα′量を連続的
に測定するので、材質測定値を表示する表示装置を目視
することによって、鋼帯1,63の材質を鋼帯1,63
の全長にわたって、容易にかつ正確に把握することがで
きる。
【0067】
【発明の効果】本発明によれば、準安定オーステナイト
系ステンレス鋼帯の熱処理条件は、オンライン上の前記
ステンレス鋼帯の全長にわたって加工誘起マルテンサイ
ト量を測定する加工誘起マルテンサイト量測定センサの
出力に応じて制御されるので、全長にわたって一様に、
所望の機械的性質を有する準安定オーステナイト系ステ
ンレス鋼帯を高い信頼性で得ることができる。また過剰
な熱処理を回避することができるので、生産性を向上さ
せることができる。さらに下流側に配置される加工誘起
マルテンサイト量測定センサの出力を取込むことによっ
て、簡単に熱処理後の前記鋼帯の機械的性質を把握する
ことができるので、前記ステンレス鋼帯の全長にわたる
品質保証を確実に行うことができる。
【0068】また本発明によれば、前記熱処理条件の制
御は、準安定オーステナイト系ステンレス鋼帯の機械的
性質に大きな影響を与える通板速度および炉温の制御に
よって行われるので、機械的性質を正確に、かつ応答性
よく制御することができる。また通板速度は、下限速度
以上に制御されるので、熱処理時間を所定の時間内に止
どめることができ、生産性の低下を回避することができ
る。
【0069】また本発明によれば析出硬化型準安定オー
ステナイト系ステンレス鋼帯の熱処理時間は、オンライ
ン上の析出硬化型準安定オーステナイト系ステンレス鋼
帯の全長にわたって析出硬化処理前の加工誘起マルテン
サイト量を測定する加工誘起マルテンサイト量測定セン
サの出力に応じて制御されるので、全長にわたって一様
に所望の強度を有する析出硬化型準安定オーステナイト
系ステンレス鋼帯を高い信頼性で確実に得ることができ
る。また過剰な熱処理を回避することができるので生産
性を向上させることができる。このような前記熱処理時
間の制御は、析出硬化型準安定オーステナイト系ステン
レス鋼帯の強度に大きな影響を与えるので、前記強度を
応答性よく、かつ確実に制御することができ、析出硬化
処理後の前記鋼帯の品質保証を確実に行うことができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態である準安定オーステナイ
ト系ステンレス鋼帯の再結晶焼鈍を好適に実施すること
のできる連続焼鈍酸洗設備2の構成を示す系統図であ
る。
【図2】準安定オーステナイト系ステンレス鋼帯1の再
結晶焼鈍を好適に実施する熱処理方法を説明するための
フローチャートである。
【図3】本発明の他の実施形態である析出硬化型準安定
オーステナイト系ステンレス鋼帯63の析出硬化処理を
好適に実施することができる連続焼鈍酸洗設備64の構
成を示す系統図である。
【図4】析出硬化型準安定オーステナイト系ステンレス
鋼帯を析出硬化処理したときの硬さの増分と時間との関
係を示すグラフである。
【図5】析出硬化型準安定オーステナイト系ステンレス
鋼帯63の析出硬化処理を好適に実施する熱処理方法を
説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明のさらに他の実施の形態である光輝焼鈍
設備100の構成を示す系統図である。
【図7】加工誘起マルテンサイト量測定センサ4,74
の外観を示す拡大正面図である。
【図8】加工誘起マルテンサイト量測定センサ4,74
によるα′量の測定のための概略的構成を示すブロック
図である。
【図9】準安定オーステナイト系ステンレス鋼帯1およ
び析出硬化型準安定オーステナイト系ステンレス鋼帯6
3のα′量と硬さとの関係を示すグラフである。
【図10】冷間圧延後の準安定オーステナイト系ステン
レス鋼帯の硬さと位置との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 準安定オーステナイト系ステンレス鋼帯 2 連続焼鈍酸洗設備 3,101 熱処理炉 4,74 加工誘起マルテンサイト量測定センサ 5 冷却装置 6 速度制御ブライドルロール 13 連続酸洗装置 27 速度制御モータ 37,65 通板速度制御装置 38 速度制御スイッチ 42,53 材質演算器 43,54,62 比較器 44,55 材質設定器 45,56 変換器 46,57 加算器 47 速度設定器 48 速度指令器 50,66 炉温制御装置 51 スイッチ 52 炉温制御スイッチ 58,60 炉温設定器 59 炉温指令器 61 炉温演算器 63 析出硬化型準安定オーステナイト系ステンレス鋼
帯 100 光輝焼鈍設備
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C21D 11/00 101 C21D 11/00 101

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 冷間圧延後の準安定オーステナイト系ス
    テンレス鋼帯を熱処理炉を備える連続熱処理設備に通板
    して熱処理を行う準安定オーステナイト系ステンレス鋼
    帯の熱処理方法において、 熱処理炉の上流側および下流側の少なくとも一方に配置
    される加工誘起マルテンサイト量測定センサによって、
    前記ステンレス鋼帯の加工誘起マルテンサイト量を測定
    し、 前記求めた測定値に基づいて前記ステンレス鋼帯の熱処
    理条件を制御することを特徴とする準安定オーステナイ
    ト系ステンレス鋼帯の熱処理方法。
  2. 【請求項2】 前記熱処理炉内における前記ステンレス
    鋼帯の通板速度が予め定める下限速度を超えるときに
    は、炉温を予め定める温度に保持して通板速度の制御を
    行い、前記通板速度が前記下限速度以下であるときに
    は、通板速度を前記下限速度に保持して炉温の制御を行
    うことを特徴とする請求項1記載の準安定オーステナイ
    ト系ステンレス鋼帯の熱処理方法。
  3. 【請求項3】 冷間圧延後の析出硬化型準安定オーステ
    ナイト系ステンレス鋼帯を熱処理炉を備える連続熱処理
    設備に通板して析出硬化処理を行う析出硬化型準安定オ
    ーステナイト系ステンレス鋼帯の熱処理方法において、 熱処理炉の上流側に配置されるセンサによって、前記ス
    テンレス鋼帯の加工誘起マルテンサイト量を連続的に測
    定し、 前記求めた測定値に基づいて、前記ステンレス鋼帯の析
    出硬化処理後の強度が目標値と一致するように析出硬化
    処理時間を制御することを特徴とする析出硬化型準安定
    オーステナイト系ステンレス鋼帯の熱処理方法。
JP28561896A 1996-10-28 1996-10-28 準安定オーステナイト系ステンレス鋼帯の熱処理方法 Withdrawn JPH10130742A (ja)

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