JPH10127040A - 渦電流減速装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 制動トルクの向上と冷却効率の向上を同時に
実現する。 【解決手段】 回転軸に結合した磁性体からなる制動ド
ラム１３と、制動ドラム１３の内部に配置した磁石支持
筒１９と、磁石支持筒１９に制動ドラム１３の内周面と
対向するように結合した多数の磁石２０とを有する渦電
流減速装置において、制動ドラム１３の外周部分２３を
鉄などの透磁率の大きい材料で構成し、内周部分３５を
銅、アルミニウムなどなどの熱伝導率と導電率の大きい
材料で構成し、内周部分３５の材料の一部を制動ドラム
１３の外周部分２３へ延長する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は主として大型車両の
摩擦ブレーキを補助する渦電流減速装置、特に制動ドラ
ムの制動能力を高めるようにした渦電流減速装置に関す
るものである。

【０００２】

【従来の技術】渦電流減速装置は制動ドラムと永久磁石
または電磁石（以下、これらを総称して磁石という）と
の相対運動により、制動ドラムに渦電流に基づく制動力
を発生する。同寸法の渦電流減速装置で制動トルクを高
めると、制動ドラムの内部に発生する渦電流が増加し、
発熱量も増加し、制動ドラムの温度が急速に上昇する。
制動ドラムの温度上昇は制動ドラムの強度を低下させる
だけでなく、制動トルクの低下をも来す。このため、制
動トルクの向上には制動ドラムの冷却効率を高める必要
がある。

【０００３】特開昭63-274,357号公報に開示される電磁
石式渦電流減速装置では、回転軸に結合した１対の制動
円板の間に多数の電磁石を支持する不動の磁石支持体が
配設され、制動円板の電磁石と対向する内面に、電気伝
導度の大きい金属層が接着されているが冷却性に難があ
る。また、実開平3-3178号公報に開示される永久磁石式
渦電流減速装置では、回転軸に結合した制動円板の両側
に、多数の磁石を支持する不動の磁石支持体が配設さ
れ、制動円板の内部から径外方へ突出する熱伝導率の高
い放熱板が制動円板に結合されているが、制動トルクの
向上については格別考慮されていない。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は上述の
問題に鑑み、制動トルクの向上と冷却効率の向上を同時
に実現できる渦電流減速装置を提供することにある。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明の構成は回転軸に結合した磁性体からなる制
動ドラムと、該制動ドラムの内部に配置した磁性体から
なる磁石支持筒と、該磁石支持筒に前記制動ドラムの内
周面と対向するように結合した多数の磁石とを有する渦
電流減速装置において、前記制動ドラムは外周部分と内
周部分とからなり、前記外周部分は前記内周部分よりも
透磁率の大きい材料で構成し、前記内周部分は前記外周
部分よりも熱伝導率と導電率の大きい材料で構成し、前
記内周部分の一部を前記外周部分へ突出させたことを特
徴とするものである。

【０００６】

【発明の実施の形態】本発明では熱伝導率と導電率の大
きな銅、アルミニウムなどの材料を制動ドラムの内周部
分に、透磁率の高い鉄などの材料を制動ドラムの外周部
分にそれぞれ配置し、かつ内周部分の材料の一部を外周
部分へ突出させた複合構造とし、制動トルクの向上と冷
却効率の向上を同時に実現する。

【０００７】

【実施例】図１は本発明が適用される磁石式渦電流減速
装置の正面断面図、第２図は同側面断面図である。本発
明による磁石式渦電流減速装置は、制動ドラム１３を回
転軸４に結合される。このため、変速機の歯車箱２の端
壁に軸受３により支持されかつ端壁から突出する出力回
転軸４に、スプライン孔５ａを有する取付フランジ５が
嵌合され、かつ抜け出ないようにナツト６により締結さ
れる。取付フランジ５に駐車ブレーキの制動ドラム７の
端壁と、渦電流減速装置の制動ドラム１３のボス部９と
一体のフランジ部９ａとが重ね合され、複数のボルト１
０とナツト１０ａにより締結される。

【０００８】制動ドラム１３は後述するように鉄などの
材料からなり、内周面に銅、アルミニウムなどなどの薄
板からなる筒体３５を結合される。制動ドラム１３は基
端部を、ボス部９から放射方向へ延びる多数のスポーク
１２に結合される。制動ドラム１３の外周壁に周方向等
間隔に、多数の冷却フイン１３ａが一体に備えられる。

【０００９】制動ドラム１３の内部に、断面箱形の内空
部を有する案内筒１８が同軸に配設される。非磁性体か
らなる不動の案内筒１８は、歯車箱２の突壁２ａに外嵌
固定した枠板３１に、ボルト３２，３３により固定され
る。案内筒１８は外周壁部１８ａと内周壁部１８ｂとの
両端に環状の端壁板を結合して構成してもよいが、図示
の案内筒１８は鉄などの磁性体からなる左半部の断面コ
字形をなす筒部分と、アルミニウムなどの非磁性体から
なる右半部の断面逆Ｌ字形をなす筒部分とを、多数のボ
ルト１４により結合して構成される。

【００１０】制動ドラム１３の内周面と対向する案内筒
１８の外周壁部１８ａに、周方向等間隔に多数の開口が
設けられ、各開口に強磁性板（ポールピース）２１が嵌
合固定される。実際には、強磁性板２１は外周壁部１８
ａをアルミニウムから鋳造する際に鋳ぐるまれる。

【００１１】補強リブ３１ａを有する枠板３１に、周方
向等間隔に複数のアクチユエータ（図示せず）が支持さ
れる。アクチユエータはシリンダにピストンを嵌合して
流体圧室を区画し、ピストンから案内筒１８の内空部へ
突出するロツド１７の端部に磁石支持筒１９を結合され
る。磁石支持筒１９は案内筒１８の内空部に軸方向移動
可能に支持される。磁石支持筒１９の外周壁に、各強磁
性板２１と対向する磁石２０が、極性が周方向に交互に
異なるように結合される。

【００１２】制動時、磁石支持筒１９は図１に示すよう
に、アクチユエータのロツド１７により制動ドラム１３
の内部へ突出される。回転する制動ドラム１３が磁石２
０から強磁性板２１を経て制動ドラム１３の内周面へ及
ぶ磁界を横切る時、制動ドラム１３に渦電流が発生し、
制動ドラム１３が制動トルクを発生する。制動ドラム１
３は渦電流により発熱し、直接または冷却フイン１３ａ
を介して外気により冷却される。この時、図２に示すよ
うに、磁石支持筒１９と制動ドラム１３との間に磁気回
路４０が形成される。非制動時、アクチユエータにより
磁石支持筒１９を図１の左方へ移動し、制動ドラム１３
から引退させれば、磁石２０は制動ドラム１３へ磁界を
及ぼさなくなり、制動ドラム１３は制動トルクを発生し
ない。

【００１３】上述のように、磁石式渦電流減速装置は磁
石２０と制動ドラム１３の相対運動により発生する渦電
流に基づく制動力を発生するので、渦電流と磁界が大き
いほど制動トルクは大きくなる。

【００１４】図３に示すように、本発明は制動ドラムの
制動トルクを高めるために、制動ドラム１３の外周部分
つまり本体２３に、鉄のように透磁率の大きい材料を用
いて磁束密度を大きくし、渦電流の発生部位となる制動
ドラム１３の内周部分つまり筒体３５に、銅、アルミニ
ウムなどのように導電率の大きい材料を用いて渦電流を
増加させる。

【００１５】しかし、制動ドラム１３の内周部分に導電
率の大きな銅、アルミニウムなどからなる筒体３５を結
合するだけでは、制動トルクは増加するが渦電流が多く
なり、外周部分の鉄からなる本体２３の熱伝達率が小さ
く熱が逃げにくいので、制動ドラム１３の内周部分の材
料の熱伝達率を有効に利用できるように、制動ドラム１
３の内周部分の筒体３５から、外周部分の本体２３の内
部を経て径外方へ突出する、環状板からなる冷却フイン
３５ａを一体に形成した複合構造にする。本実施例で
は、銅製の筒体３５はこれを予め成形したうえ、鉄製の
本体２３に鋳物ぐるまれる。そして、制動ドラム１３は
本体２３と冷却フイン３５ａに設けた複数の軸方向の通
孔２５へ挿通したボルトにより、ボス部９から延びるス
ポーク１２へ締結される。

【００１６】図４に示す実施例は、制動ドラム１３の内
周部分の銅製の筒体３５の両端に、環状板からなる冷却
フイン３５ａを一体に形成し、１対の冷却フイン３５ａ
の間に、鉄製の本体２３を結合したものであり、図３に
示す実施例と同様の作用効果が得られる。冷却フイン２
３ａは図１に示すような軸方向へ延びる羽根でもよい。

【００１７】なお、比較例として、図７，８に示すよう
に、制動ドラム１３の外周部分つまり本体２３に、鉄の
ように透磁率の大きい材料を用い、制動ドラム１３の内
周部分つまり筒体３５に、銅、アルミニウムなどのよう
に導電率の大きい材料を用い、本体２３に径外方へ突出
する複数の環状板からなる冷却フイン２３ａを一体に形
成し、かつ複数の軸方向の通孔２５を周方向等間隔に設
けた。

【００１８】図３，４に示した本発明による制動ドラム
１３と、図７，８に示した比較例と、従来の鉄材だけか
らなるものとの性能を比べるために、制動ドラム１３の
内周面から深さ１ｍｍ，５ｍｍ，９ｍｍの各部分に、温
度センサ２６，２７，２８（図７を参照）をそれぞれ配
設し、制動開始後の制動ドラム１３の温度変化を測定し
た。

【００１９】本発明による制動ドラム１３を備えた磁石
式渦電流減速装置は、後述するように比較例や従来の制
動ドラムを備えたものよりも、制動トルクが増加する。

【００２０】図５に制動ドラム１３の内周面から深さ１
ｍｍの部分の温度変化を、図６に各制動ドラム１３の制
動トルクの経時変化をそれぞれ表す。図３，４に示した
本発明による複合制動ドラム１３と、図７，８に示した
比較例による複合制動ドラム１３との温度変化の違いを
見ると、本発明のものでは制動ドラム１３の温度が１２
０℃に達するまでに２２秒かかるのに対し、比較例のも
のでは２５秒と温度が高くなりにくい。図６に示すよう
に、本発明の渦電流減速装置の制動開始直後の制動トル
クは同じことから、冷却効率が約１割も向上したものと
いえる。

【００２１】図６に鎖線で示すように、従来の鉄材だけ
からなる制動ドラムと類似の特性を有する鉄材Ｓ１５Ｃ
からなる制動ドラムの制動トルクに比べて、本発明によ
る複合制動ドラム１３は従来の制動ドラムの約３倍の制
動トルクを発生することから、本発明は制動トルクの向
上と冷却効率の向上の両方に役立つといえる。

【００２２】上述の実施例は、制動ドラムに対し磁石支
持筒を軸方向に往復移動させて、磁石が強磁性板と対向
する制動位置と、磁石が強磁性板と対向しない非制動位
置とに切り換える形式の磁石式渦電流減速装置の場合に
ついて説明したが、本発明はこれに限定されるものでは
なく、特開平4-88,867号公報に開示されるような制動ド
ラムに対し１つの磁石支持筒を回動させて、極性が同じ
２つの磁石が共通の強磁性板に対向する制動位置と、極
性が異なる２つの磁石が共通の強磁性板に対向する非制
動位置とに切り換える形式の磁石式渦電流減速装置や、
特開平4-12,659号公報に開示されるような制動ドラムの
内部に不動の磁石支持筒と可動の磁石支持筒を配設し、
一方の磁石支持筒を回動させて、両方の磁石支持筒の極
性が同じ磁石が共通の強磁性板と全面的に対向する制動
位置と、両方の磁石支持筒の極性が異なる１対の磁石が
共通の強磁性板と全面的に対向する非制動位置とに切り
換える形式の磁石式渦電流減速装置にも適用できる。

【００２３】また、本発明は永久磁石式渦電流減速装置
の制動ドラムだけでなく、特開昭63-274,359号公報に開
示されるような電磁石式渦電流減速装置の制動ドラムに
も適用できる。

【００２４】

【発明の効果】本発明は上述のように、回転軸に結合し
た磁性体からなる制動ドラムと、該制動ドラムの内部に
配置した磁性体からなる磁石支持筒と、該磁石支持筒に
前記制動ドラムの内周面と対向するように結合した多数
の磁石とを有する渦電流減速装置において、前記制動ド
ラムは外周部分と内周部分とからなり、前記外周部分は
前記内周部分よりも透磁率の大きい材料で構成し、前記
内周部分は前記外周部分よりも熱伝導率と導電率の大き
い材料で構成し、前記内周部分の一部を前記外周部分へ
突出させたから、制動ドラムへ到達する磁束密度が大き
く、制動ドラムの内部に発生する渦電流が増加し、制動
トルクが増加する。

【００２５】制動ドラムの内周部分と同じ材料からな
り、かつ内周部分から外周部分へ突出する冷却フインを
設けたから、制動ドラムの冷却効率が向上し、制動ドラ
ムの温度上昇による制動ドラムの強度低下と、制動トル
クの低下を抑制できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明が適用される磁石式渦電流減速装置の正
面断面図である。

【図２】同渦電流減速装置の側面断面図である。

【図３】本発明に係る渦電流減速装置の制動ドラムを示
す正面断面図である。

【図４】本発明の変更実施例に係る制動ドラムの要部を
示す正面断面図である。

【図５】本発明に係る制動ドラムと比較例との冷却性能
を表す線図である。

【図６】本発明に係る制動ドラムと比較例との制動能力
を表す線図である。

【図７】比較例に係る制動ドラムを示す側面図である。

【図８】同制動ドラムを示す正面断面図である。

【符号の説明】

９：ボス部 １２：スポーク １３：制動ドラム １３
ａ：冷却フイン １８：案内筒 １９：磁石支持筒 ２
０：永久磁石 ２１：強磁性板 ２３：本体 ２３ａ：
冷却フイン ２５：通孔 ３５：筒体 ３５ａ：冷却フ
イン

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】回転軸に結合した磁性体からなる制動ドラ
   ムと、該制動ドラムの内部に配置した磁性体からなる磁
   石支持筒と、該磁石支持筒に前記制動ドラムの内周面と
   対向するように結合した多数の磁石とを有する渦電流減
   速装置において、前記制動ドラムは外周部分と内周部分
   とからなり、前記外周部分は前記内周部分よりも透磁率
   の大きい材料で構成し、前記内周部分は前記外周部分よ
   りも熱伝導率と導電率の大きい材料で構成し、前記内周
   部分の一部を前記外周部分へ突出させたことを特徴とす
   る渦電流減速装置。
2. 【請求項２】前記磁石は周方向等間隔にかつ前記制動ド
   ラムに対向する極性が周方向に交互に異なるように前記
   磁石支持筒に結合され、前記磁石支持筒は前記磁石が前
   記制動ドラムに対向する制動位置と前記磁石が前記制動
   ドラムに対向しない非制動位置との間で軸方向に移動可
   能である、請求項１に記載の渦電流減速装置。
3. 【請求項３】前記制動ドラムの内部に非磁性体からなる
   不動の案内筒を同軸に配設し、該案内筒に前記磁石と周
   方向同間隔にかつ前記磁石の外面を覆う強磁性板を結合
   し、前記磁石支持筒は前記案内筒の内部に回動可能に支
   持した磁石支持筒と、前記案内筒の内部に回動不能に支
   持した磁石支持筒とからなり、前記磁石は周方向等間隔
   にかつ前記強磁性板に対向する極性が周方向に交互に異
   なるように前記磁石支持筒に結合され、前記可動の磁石
   支持筒を前記磁石の配列間隔分だけ回動することにより
   制動位置と非制動位置とに切り換える、請求項１に記載
   の渦電流減速装置。
4. 【請求項４】前記制動ドラムの内部に非磁性体からなる
   不動の案内筒を同軸に配設し、該案内筒に前記磁石の周
   方向間隔の２倍の間隔にかつ前記２つの磁石の外面を覆
   う強磁性板を結合し、前記磁石支持筒は前記案内筒の内
   部に回動可能に支持され、前記磁石は前記磁石支持筒に
   周方向等間隔にかつ前記強磁性板に対向する極性が周方
   向に２つずつ異なるように配設され、前記磁石支持筒を
   前記磁石の周方向間隔分だけ回動することにより制動位
   置と非制動位置とに切り換える、請求項１に記載の渦電
   流減速装置。
5. 【請求項５】前記磁石は電磁石である、請求項１に記載
   の渦電流減速装置。