JPH10122963A - ラマン分光測定用キャピラリーチューブ、その製造方法、及びかかるラマン分光測定用キャピラリーチューブを用いたラマン分光測定方法 - Google Patents

ラマン分光測定用キャピラリーチューブ、その製造方法、及びかかるラマン分光測定用キャピラリーチューブを用いたラマン分光測定方法

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JPH10122963A
JPH10122963A JP27268796A JP27268796A JPH10122963A JP H10122963 A JPH10122963 A JP H10122963A JP 27268796 A JP27268796 A JP 27268796A JP 27268796 A JP27268796 A JP 27268796A JP H10122963 A JPH10122963 A JP H10122963A
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raman
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Yoshimasa Nakatani
善昌 中谷
Yoshimoto Matsui
良幹 松井
Kimihiro Ogino
公大 荻野
Haruo Shimada
治男 島田
Masaaki Hachinohe
昌秋 八戸
Ryujiro Nanba
隆二郎 難波
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Shiseido Co Ltd
Original Assignee
Shiseido Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ラマン分光測定用キャピラリーチューブにお
いて、簡便で安価に、試料から発生する散乱光の集光効
率を高め、SN比の高いラマン分光測定を可能とするこ
とを課題とする。 【解決手段】 ラマン分光測定時、ラマン分光測定用キ
ャピラリーチューブ16の内部に充填された試料から発
生する散乱光20、21を集光する銀の反射膜12を、
銀鏡反応によって、ラマン分光測定用キャピラリーチュ
ーブ16の外壁上に設け、さらに反射膜12内にレーザ
ー光18が入射し、散乱光20,21が出射する窓部1
5を設け、銀反射膜とキャピラリーチューブと窓部から
なるラマン分光測定用キャピラリーチューブ16を構成
し、かかるラマン分光測定用キャピラリーチューブ16
を用いてラマン分光測定を行なう。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ラマン分光測定に
おいて、被測定試料を保持するためのキャピラリーチュ
ーブ、その製造方法、及び前記キャピラリーチューブを
用いるラマン分光の測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】試料に光を照射し、散乱光を測定する
と、試料に入射した光と同じ振動数を有し、圧倒的に強
い強度を有するレイリー散乱光とともに、入射した光と
異なる振動数を有する弱い散乱光が観測される。この弱
い散乱光をラマン散乱光と呼ぶ。
【0003】ラマン散乱の散乱光と入射光の振動数の差
は、測定試料の分子振動の振動数に等しいので、ラマン
散乱の散乱光を測定することにより、分子の振動スペク
トルが得られる。その点で赤外分光法における赤外吸収
で得られる情報に近い。しかし、ラマン散乱の測定に
は、光源としてレーザーを使用できるという特徴があ
る。レーザー光は輝度が高いため、顕微鏡に利用した微
小サイズのスポットの測定を可能とし、また、指向性が
高いため、数km離れた物の様子や、高温で近づけない
プラズマを調べたりすることを可能とする。
【0004】そのため、赤外吸収では得にくい情報がラ
マン散乱で得られることとなり、化学の分野における未
知化合物の構造解析のみならず、半導体などの固体物
性、生命科学、環境科学、医学にも応用されるに至って
いる。ラマン散乱の測定に用いる従来装置に共通する測
定系の原理的な部分を図7に示す。
【0005】測定系は測定試料23を励起するための光
源であるレーザー24と、試料23から発生した散乱光
25を集光する凹面鏡26と、集光された散乱光を分光
する干渉系27と、分光された光を検出する検出器28
と、光の光路を変更させるための鏡29とからなる。図
7においては散乱光25を集光する手段として凹面鏡2
6を用いた系を示したが、この手段は、光の集光をする
ものであるなら如何なるものでも良く、カメラレンズ等
が用いられることも多い。
【0006】測定の概略を説明する。先ず、測定試料2
3をそのまま、もしくは試料容器に入れ、試料照射部と
して、凹面鏡26の前に置く。そして、レーザー24よ
り凹面鏡26に設けられた穴を通して、レーザー光30
を試料に照射する。レーザー光30の照射された試料2
3は励起され、散乱光25,31を発生する。散乱光2
5は凹面鏡26で捕捉され、集光され、干渉系27に導
かれる。この干渉系27で散乱光は、散乱光を構成する
各波長成分に分けられ、検出器28に送られる。検出器
28では散乱光を構成する各波長成分が検知される。そ
して、ある波長の光がどれほど検出器28に到達したか
を記録すると測定試料のラマンスペクトルが得られる。
【0007】ラマン散乱は、気体であるか、液体である
か、固体であるか等の測定する試料の状態を問わない。
それらのラマンスペクトルの良否、つまり、構造解析等
が十分に行なえる程度のスペクトルの明確さは、試料照
射部によって大きく影響を受ける。従って、それぞれの
測定目的、試料に応じて試料照射部に工夫が必要とな
る。
【0008】この試料を照射する方法を工夫をする際、
考慮すべき事項としては、先ず第一にラマン散乱光は非
常に弱いので、できるだけ有効に散乱光を発生させるこ
とである。次に、レーザーによる励起光は試料点で直径
1mm以下、おおよそ0.1mm程度の細いものであ
り、光路に沿って2mm乃至3mmの長さ分からの散乱
光しか検出器には到達しないことである。従って、試料
はあまり大きいものである必要はない。さらに、微量し
かない試料の測定を可能とすることを考慮すると、試料
照射部は前記の細いレーザー光の有効光励起領域をカバ
ーする程度の小さな物が望ましいことになる。
【0009】そして、測定中に測定を妨害するような試
料の汚染が起こらないことである。これらの事項を考慮
して、従来から用いられている試料を照射する方法とし
ては、キャピラリーチューブを試料照射部に用いるキャ
ピラリー法がある。キャピラリー法とは、毛細管現象が
起きる程度の太さのキャピラリーで、固体の有機物の融
点を測定する際等に用いられるものを、ラマン散乱測定
用として試料照射部に流用したものであり、内径1mm
程度、外径1mm乃至1.5mm程度の円柱状の細長い
ガラス管に、試料を充填して試料照射部としたものであ
る。
【0010】キャピラリー法は、充填された試料にレー
ザー光を照射して、散乱光を発生させる。この時、試料
の量と形状は、キャピラリーの内径に由来する容積と内
部の形状によって決められている。その結果、測定に用
いられる試料の量は極少量でありながら、レーザーによ
る励起光は試料点で直径1mm以下、おおよそ0.1m
m程度の細いものであり、光路に沿って2mm乃至3m
mの長さ分からの散乱光しか検出器に到達しないという
レーザー光の限界を示す事項に、簡便に効率良く対応で
きる。
【0011】つまり、少ない試料中で、効率良く試料の
励起が行なわれ、効率良い散乱光の発生が起きる。この
時、試料の量は10μlで十分であり、従って、極微量
の試料の測定に対応でき、また密閉することも可能であ
り、汚染の防止も十分に行なえる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】ラマン散乱測定は、キ
ャピラリー法を用いるなどして、微量な試料の測定にも
有効である。しかし、ラマン散乱測定は微弱な散乱光を
観測するため、試料が極々微量である場合などで、特
に、ノイズが少なく、高い分解能を有する等の満足なス
ペクトルを得る必要が有る場合、キャピラリー法をその
まま用いてもうまくいかないことがある。
【0013】その場合は何らかの工夫が必要となる。何
故なら、試料を多く、大きくすることにより、試料から
の散乱光量を増大させることは、レーザー光の細さによ
って、つまり、試料の光励起を可能とするレーザー光の
有効領域の制約により限界があるからである。
【0014】このような場合には、現在、複数回の測定
結果を合算することが行なわれている。つまり、測定結
果を合算し、スペクトルを積算すると、スペクトル上の
ノイズは本来がランダムな現象であるため、平均化によ
って減少していく。一方試料に由来するシグナルの方は
毎回同じ場所に出現するため、ノイズ(N)に対する信
号(S)の比であるSN比は向上することになる。
【0015】しかし、スペクトルのSN比は、積算に用
いられた測定回数の平方根に比例して増加するため、1
00回の積算により、SN比の向上は10倍だけという
ことになる。従って、極微量の試料を測定し、満足な質
のよいスペクトルを得ようとする場合、その積算回数は
膨大なものとなり、測定時間の長時間化という問題が生
じる。
【0016】そこで、この測定結果の合算とあわせ、S
N比の向上を可能にする手段が求められている。そのた
めの手段の一つとして、散乱光をできるだけ有効に集光
することが挙げられる。図8には、内部に測定試料が充
填された従来のラマン分光測定用キャピラリーチューブ
32にレーザー光33が照射され、試料から散乱光34
が発生している様子の概略を示されている。図8のAに
は内部に測定試料が充填された従来のラマン分光測定用
キャピラリーチューブ32の試料点を含む縦断面と、レ
ーザー光33と、散乱光34が散乱する様子が示されて
おり、図8のBには内部に測定試料が充填された従来の
ラマン分光測定用キャピラリーチューブ32の試料点を
含む横断面と、干渉系35と、レーザー光33と、散乱
光34が散乱する様子が示されている。
【0017】図8に示すように、散乱光34はレーザー
光33が試料に当たる試料点を中心に、全方位に向かっ
て発生している。従って、図8のBに示す位置に干渉系
35が置かれた場合、干渉系に導かれる散乱光は、散乱
光中のごく一部であることがわかる。
【0018】そこで、従来のラマン分光測定装置では、
図7に示したように、散乱光を多く干渉系27に導くた
め、凹面鏡26を設け、散乱光25を集光し、測定して
いる。確かに集光される散乱光は、凹面鏡26により増
大しているが、凹面鏡26に到達しない散乱光31を干
渉系27に導くことはできない。よって、従来のラマン
分光測定装置で、図8に示す従来のラマン分光測定用キ
ャピラリーチューブ32を試料照射部に用いた場合、凹
面鏡26による散乱光集光の効率は十分でなく、散乱光
の多くが測定に用いられないままとなっている。
【0019】従って、この集光手段を改善すれば、一回
の測定におけるラマン散乱光強度は上昇することが考え
られる。そこで、凹面鏡を2つ設けることが考えられ
た。図9は、内部に測定試料が充填された従来のラマン
分光測定用キャピラリーチューブ32の試料点を含む横
断面と、凹面鏡36及び凹面鏡37の横断面と、レーザ
ー光33と、散乱光38とを示し、内部に測定試料が充
填された従来のラマン分光測定用キャピラリーチューブ
32にレーザー光33が照射され、試料から散乱光38
が発生している様子の概略を示している。
【0020】凹面鏡36は図の下方から試料を通り抜け
たレーザー光33が正しくもとの光路にもどるように調
節され、凹面鏡37は後方に散乱された光が散乱点に戻
るように調節されている。このように、凹面鏡をもう一
つさらに設け、集光効率を高めることは確かに効果があ
る。しかし、実際に効果を得るには、凹面鏡の向き等に
精度の高い調節が必要であり、また精度高く、そして数
多く凹面鏡を設けることは、測定にかかる費用の大きな
増大要因となる。
【0021】従って、集光効率を高めるため、もっと簡
便で、安価な方法が求められている。本発明の目的は、
簡便で安価に、試料から発生する散乱光の集光効率を高
めることを可能とするラマン分光測定用キャピラリーチ
ューブ、その製造方法およびかかるラマン分光測定用キ
ャピラリーチューブを用いたラマン分光測定方法を提供
することである。
【0022】また本発明の他の目的は、ラマン分光測定
時、内部に充填された測定試料から発生する散乱光を集
光する集光手段として銀等の反射膜をその外壁上に備え
たことを特徴とするラマン分光測定用キャピラリーチュ
ーブ、その製造方法をおよびかかるラマン分光測定用キ
ャピラリーチューブを用いたラマン分光測定方法を提供
することである。
【0023】
【課題を解決するための手段】図1は、本発明のラマン
分光測定用キャピラリーチューブの基本構成を示す図で
ある。図1のAは本発明のラマン分光測定用キャピラリ
ーチューブの正面図であり、図1のBは、そのAA断面
図である。
【0024】キャピラリーチューブ1の外壁上に、反射
膜2を有している。そして、未コート部位3が、ラマン
分光測定時、測定試料を励起するレーザー光を入射さ
せ、さらに励起された測定試料から発生した散乱光を外
部に出射させる窓部となっている。
【0025】図2は、本発明のラマン分光測定用キャピ
ラリーチューブの使用形態を示す図であり、反射膜2を
外壁上に有した本発明のラマン分光測定用キャピラリー
チューブ4の横断面、および散乱光の集光の様子の概略
を示している。ラマン分光測定に用いられるキャピラリ
ーチューブ1は円筒状の形状を有することから、反射膜
2は散乱光を反射する機能を有するとともに、キャピラ
リーチューブ1の外壁の形状に由来する、内部に向かっ
て凹の彎曲した形状を全体に有することになる。その結
果、反射膜2は、外壁に接する反射膜2の鏡面からキャ
ピラリーチューブ1の内部に向かって、試料点7から散
乱する散乱光9を集光する集光機能を有することにな
る。
【0026】従って、本発明のラマン分光測定用キャピ
ラリーチューブを、従来のラマン散乱測定装置に用いた
場合、凹面鏡5に設けられたレーザー光通過用の穴を通
ってラマン分光測定用キャピラリーチューブに入射した
レーザー光6は、試料点7で試料を励起する。励起され
た試料は散乱光を発生するが、凹面鏡5に到達した散乱
光はそのまま凹面鏡5で集光され、干渉系10に導かれ
る。そして、凹面鏡に直接到達しない散乱光の内の一部
で、反射膜2に到達した散乱光9は、反射膜2で反射、
集光され、凹面鏡5に到達する。そして、結果的に干渉
系10に導かれる。
【0027】よって、本発明のラマン分光測定用キャピ
ラリーチューブを、従来のラマン散乱測定装置に用いた
場合、従来測定では捕捉できず、測定に用いることので
きなかった散乱光9を捕捉でき、そして凹面鏡5に集め
ることができ、従って干渉系10に導かれる散乱光の量
を従来のラマン分光測定用キャピラリーチューブに比
べ、増大させることができる。つまり、試料からの散乱
光の集光効率が向上し、測定結果として、強いラマン散
乱を得ることができる。
【0028】請求項1記載の発明は、ラマン分光測定を
行なう際、キャピラリーチューブ本体内に被測定試料が
充填されるラマン分光測定用キャピラリーチューブを、
前記キャピラリーチューブと、前記キャピラリーチュー
ブの外壁上に形成された光反射膜とよりなる構成とした
ことを特徴とする。
【0029】請求項2記載の発明は、請求項1記載のラ
マン分光測定用キャピラリーチューブにおいて、前記光
反射膜が、前記キャピラリーチューブの外壁上の一部に
形成された光反射膜であることを特徴とする。
【0030】請求項3記載の発明は、請求項1または請
求項2のいずれかのラマン分光測定用キャピラリーチュ
ーブにおいて、前記光反射膜が、前記キャピラリーチュ
ーブの被測定試料が充填された部位の全周面にコートさ
れたものであり、かつ、一部に、励起光及び散乱光の通
過口となる窓部を形成していることを特徴とする。
【0031】請求項4記載の発明は、請求項3記載のラ
マン分光測定用キャピラリーチューブにおいて、前記窓
部の大きさが、前記励起光の全てを、前記ラマン分光測
定用キャピラリーチューブ内に入射させることを可能と
する大きさであることを特徴とする。
【0032】請求項5記載の発明は、請求項3または請
求項4のいずれかのラマン分光測定用キャピラリーチュ
ーブにおいて、前記窓部の形状が、前記ラマン分光測定
用キャピラリーチューブの横断面において、中心角が1
0°から90°の範囲で形成された形状であることを特
徴とする。
【0033】請求項6記載の発明は、請求項1乃至5の
いずか1項記載のラマン分光測定用キャピラリーチュー
ブにおいて、前記光反射膜が、銀からなる銀反射膜また
は金からなる金反射膜のいずれか一つであることを特徴
とする。請求項7記載の発明は、請求項6記載のラマン
分光測定用キャピラリーチューブにおいて、前記銀反射
膜が銀鏡反応によって成膜されたものであることを特徴
とする。
【0034】請求項8記載の発明は、キャピラリーチュ
ーブ内部に充填された被測定試料から発生する散乱光を
集光する反射膜を設けたラマン分光測定用キャピラリー
チューブの製造方法であって、前記反射膜を、銀鏡反応
により前記キャピラリーチューブの外壁上に銀をコート
して形成する工程を有することを特徴とする。
【0035】請求項9記載の発明は、請求項8記載のラ
マン分光測定用キャピラリーチューブの製造方法におい
て、キャピラリーチューブを銀鏡反応液に浸し、銀鏡反
応によって前記キャピラリーチューブの外壁上に銀の膜
を成膜し、銀コートする工程と、銀鏡反応により銀コー
トされたキャピラリーチューブの外壁から銀の膜を一部
剥離し、前記外壁において所望の形状を有する、銀の未
コート部位を形成する工程と、を有することを特徴とす
る。
【0036】請求項10記載の発明は、キャピラリーチ
ューブに被測定試料を充填し、前記充填試料に励起光を
照射し、励起された被測定試料から散乱光を発生させ、
ラマン散乱を測定する、ラマン分光測定方法において、
一部に窓部が形成された光反射膜により覆われたキャピ
ラリーチューブに、被測定試料を充填し、前記窓部を通
して励起光を入射させるとともに、被測定試料から発生
する散乱光を検出部に導くことよりなることを特徴とす
る。
【0037】請求項1および請求項2および請求項10
記載の発明によれば、ラマン分光測定時、キャピラリー
チューブ内部に被測定試料が充填され、光励起されたと
き、前記被測定試料から発生する散乱光を集光する光反
射膜をラマン分光測定用キャピラリーチューブ自身が外
壁上に有している。
【0038】従って、本発明のラマン分光測定用キャピ
ラリーチューブを、従来のラマン散乱測定装置に用い、
従来方法と同様に測定を行なった場合、従来測定では捕
捉できず、測定に用いることのできなかった散乱光を捕
捉でき、有効に集光して、干渉系に導くことができる。
よって、試料からの散乱光の集光効率が向上し、測定結
果として、強いラマン散乱を得ることができる。そし
て、SN比の高いラマン分光測定を行なうことができ
る。
【0039】請求項3記載の発明によれば、前記光反射
膜が、前記キャピラリーチューブの被測定試料が充填さ
れた部位の全周面にコートされたものであり、レーザー
光が入射する部位の周辺において、反射膜の面積は試料
点にくらべ十分大きく、試料からの散乱光を殆ど逃がす
ことなく捕捉する形状を有しており、被測定試料から発
生し、前記ラマン分光測定用キャピラリーチューブの外
壁に到達する散乱光の殆ど全部に作用を及ぼすことがで
き、有効に集光することができる。
【0040】また、前記光反射膜の内部に、反射膜のコ
ートされていない未コート部位である窓部を形成し、前
記窓部を前記散乱光の前記ラマン分光測定用キャピラリ
ーチューブの外部への出射口とし、さらに、被測定試料
を励起する励起光の入射口とすることにより、前記散乱
光が散乱光の出射口以外の部位から、前記ラマン分光測
定用キャピラリーチューブの外部へ出射することを効率
良く抑制できる。
【0041】従って、有効に集光された前記散乱光を望
みの方向、例えば従来ラマン分光測定装置の集光用の凹
面鏡に効率良く導くことができる。よって、本発明のラ
マン分光測定用キャピラリーチューブを、従来のラマン
散乱測定装置に用いた場合、従来測定では捕捉できず、
測定に用いることのできなかった散乱光を捕捉でき、有
効に集光して、干渉系に導くことができる。よって、試
料からの散乱光の集光効率が向上し、測定結果として、
強いラマン散乱を得ることができる。
【0042】請求項4記載の発明によれば、ラマン分光
測定用キャピラリーチューブの外壁上の反射膜の内部
に、またはその反射膜に囲まれるようにして、反射膜の
未コート部位として窓部があるが、ここからレーザー光
が入射する際、レーザー光の全てを、反射膜に妨げられ
ることなく、測定試料中に入射できる。従って、レーザ
ー光の試料に対する励起効率を高めることができ、測定
結果として、強いラマン散乱を得ることができる。
【0043】請求項5記載の発明によれば、ラマン分光
測定用キャピラリーチューブの外壁上の反射膜の内部に
設けられ、ラマン分光測定時、充填された被測定試料の
励起光の入射口となり、さらに、被測定試料から発生す
る散乱光の出射口となる窓部の形状が、ラマン分光測定
用キャピラリーチューブの前記窓部を有する部位の横断
面において、前記ラマン分光測定用キャピラリーチュー
ブの外壁上、前記窓部の一方の末端と前記横断面の中心
を結ぶ直線と、前記窓部もう一方の末端と前記中心を結
ぶ直線とのなす角である中心角が、10°から90°の
範囲で形成された形状となる。
【0044】従来ラマン分光測定用キャピラリーチュー
ブは、毛細管現象が起きる程度の太さのキャピラリー
で、融点測定用に用いられるもの等を、ラマン散乱測定
用として流用したものであり、内径1mm程度、外径1
mm乃至1.5mm程度の円柱状の細長いガラス管であ
る。また、レーザーによる励起光は試料点で直径1mm
以下、おおよそ0.1mm程度の細いものである。
【0045】よって、本発明のラマン分光測定用キャピ
ラリーチューブを、例えば図7の従来ラマン分光測定装
置に用いたとき、窓部からレーザー光が入射する際、レ
ーザー光の全てを、反射膜に妨げられることなく、被測
定試料中に入射できる。また、窓部から出射する散乱光
が、効率良く凹面鏡に集光される。
【0046】従って、レーザー光の試料に対する励起効
率を高めることができ、さらに試料からの散乱光の集光
効率が向上し、測定結果として、強いラマン散乱を得る
ことができる。請求項6記載の発明によれば、反射膜
に、散乱光の反射率が高く、薄膜を成膜することが比較
的容易である銀または金を用いることにより、簡便で安
価に集光効率を高めることを可能とするラマン分光測定
用キャピラリーチューブを提供することができる。
【0047】請求項7記載の発明によれば、銀鏡反応を
銀の反射膜の成膜に用いている。銀鏡反応が、安価な材
料から簡便に生起させることのできる反応であり、さら
に、銀の薄膜を所望の部位にコートすることも可能であ
ることから、散乱光の反射率が高い銀を安価に、そして
簡便にラマン分光測定用キャピラリーチューブ外壁上に
コートできる。また、銀鏡反応によってガラス上にコー
トされた銀膜は比較的簡単に剥離することができる。従
って、ラマン分光測定用キャピラリーチューブ外壁上の
全面に銀の膜を成膜し、反射膜を設けた後、この反射膜
の所望の部位を、所望の大きさで剥離する。そして、こ
の剥離部分を、レーザー光の入射口および散乱光の出射
口たる反射膜の未コート部位としての所望の窓部とする
ことができる。
【0048】よって、簡便で安価に集光効率を高めるこ
とを可能とするラマン分光測定用キャピラリーチューブ
を提供することができる。請求項8および請求項9記載
の発明によれば、ラマン分光測定用キャピラリーチュー
ブの製造工程において、銀の反射膜をコートする際、銀
鏡反応を利用している。
【0049】銀鏡反応は、安価な材料から簡便に生起さ
せることのできる反応であり、さらに、銀の薄膜を所望
の部位にコートすることも可能であることから、散乱光
の反射率が高い銀を安価に、そして簡便にラマン分光測
定用キャピラリーチューブ外壁上にコートできる。
【0050】また、銀鏡反応によってガラス上にコート
された銀膜は比較的簡単に剥離することができる。従っ
て、ラマン分光測定用キャピラリーチューブ外壁上の全
面に銀の膜を成膜し、反射膜を設けた後、この反射膜の
所望の部位を、所望の大きさで剥離し、所望の形状を有
する、銀の未コート部位を形成するという工程を用いる
ことにより、安価に簡便に、レーザー光の入射口および
散乱光の出射口たる反射膜の未コート部位としての所望
の窓部を形成することができる。
【0051】よって、集光効率の高いラマン分光測定用
キャピラリーチューブの安価で簡便な製造方法を提供す
ることができる。
【0052】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図を
用いて説明する。図3は本発明によるラマン分光測定用
キャピラリーチューブの一実施例の構成を示す正面図で
あり、図4はそのAA断面図である。
【0053】本発明よるラマン分光測定用キャピラリー
チューブはキャピラリーチューブと、キャピラリーチュ
ーブの外壁上の反射膜と、反射膜中設けられた反射膜の
未コート部位である窓部とから構成されている。内径1
mm程度、外径1mm乃至1.5mm程度の円柱状で長
さ約10cmの細長いガラス管であるキャピラリーチュ
ーブ11の外壁上に、反射膜12のコートされたコート
部位13を有し、その反射膜12内部に反射膜のコート
されていない未コート部位14を有している。そして、
この未コート部位14が、ラマン分光測定時、測定試料
を励起するレーザー光を入射させ、さらに集光された散
乱光を外部へ出射させる窓部15となっている。従っ
て、窓部15はレーザー光が測定試料を効率良く励起で
きる位置にある必要がある。
【0054】そして、さらに、窓部からレーザー光が入
射する際、レーザー光の全てを、反射膜12に妨げられ
ることなく、測定試料中に入射できる大きさを有してい
る必要がある。また、後に説明するが、図5に示すよう
に、従来のラマン分光測定装置に本発明のラマン分光測
定用キャピラリーチューブ16を用いた場合、窓部15
から出射する散乱光が、効率良く凹面鏡17に集光され
る必要がある。
【0055】よって、窓部15は、図4において示され
るように、窓部15を有するキャピラリーチューブ11
の横断面において、キャピラリーチューブ11の外壁
上、窓部15の一方の末端と前記横断面の中心を結ぶ直
線と、前記窓部もう一方の末端と前記中心を結ぶ直線と
のなす角である中心角d1が、10°から90°の範囲
で形成された形状であることが必要である。図3には窓
部が長方形をなす発明の例が示されているが、本発明の
窓部15の形状は長方形である必要はなく、前記の10
°<d1<90°という関係満たす部分さえその形状内
に有していれば、その形状は、正方形でも、円形でも、
楕円形でも、また如何なる形状でも構わない。
【0056】反射膜としては、散乱光を反射し、集光す
るものであればいかなるものでも良いが、反射率の高い
もので、測定試料のラマンスペクトルに影響を与えず、
また、コーティングの容易なものが望ましい。従って、
銀または金等の膜の中から選択されることが望ましい。
【0057】次に、本発明よるラマン分光測定用キャピ
ラリーチューブの製造方法について説明する。本発明よ
るラマン分光測定用キャピラリーチューブの製造におい
ては、反射膜を設ける工程が重要な工程となっている。
反射膜のコーティング方法であるが、銀鏡反応を利用す
る方法、メッキ法、蒸着法、スパッタ法など、薄膜を成
膜し、コーティングする方法であるなら如何なるもので
もよい。しかし、安価で、簡便に、高い反射性能を有す
る反射膜を細いガラス管外壁に形成できる方法が、ラマ
ン散乱測定におけるコストを考慮すると望ましい。
【0058】また、さらに、コーティング後に窓部を設
ける際の作業が容易であることを考慮すると、銀鏡反応
を利用する方法が望ましい。以下で、銀鏡反応を利用す
る方法を説明する。内径1mm程度、外径1mm乃至
1.5mm程度の円柱状で長さ約10cmの細長いガラ
ス管であるキャピラリーチューブの開口部を粘土等で封
じ、アンモニア、銀イオン、還元性物質からなる銀鏡反
応薬液中に静置する。前記キャピラリーチューブの外壁
に反射膜となる銀鏡が作成されたのち、前記反応薬液よ
り取り出す。そして、乾燥後、所望の位置で所望の形状
に銀の反射膜を削りとり、ラマン分光測定時、被分析試
料を励起するレーザー光を入射させ、さらに集光された
散乱光が外に出射する窓部を形成する。
【0059】次に、本発明よるラマン分光測定用キャピ
ラリーチューブの使用方法について図5を用いて説明す
る。図5中では、従来のラマン分光測定装置に本発明の
ラマン分光測定用キャピラリーチューブを用いた場合を
示しており、本発明のラマン分光測定用キャピラリーチ
ューブ16は試料点19を含んだ横断面として図示され
ている。
【0060】凹面鏡17に設けられたレーザー光通過用
の穴を通ってラマン分光測定用キャピラリーチューブ1
6に入射したレーザー光18は、窓部15を通り、試料
点19でラマン分光測定用キャピラリーチューブ16内
部に充填された試料を励起する。励起された試料は散乱
光を発生するが、凹面鏡17に到達した散乱光20はそ
のまま凹面鏡17で集光され、干渉系22に導かれる。
そして、凹面鏡17に直接到達しない散乱光の内の一部
で、銀反射膜12に到達した散乱光21は、銀反射膜1
2で反射、集光され、凹面鏡17に到達する。そして、
結果的に干渉系22に導かれる。
【0061】従って、本発明のラマン分光測定用キャピ
ラリーチューブを、従来のラマン散乱測定装置に用いた
場合、従来測定では捕捉できず、測定に用いることので
きなかった散乱光21を捕捉でき、そして凹面鏡17に
集めることができ、従って干渉系22に導かれる散乱光
を従来のラマン分光測定用キャピラリーチューブに比
べ、増大させることができる。つまり、試料からの散乱
光の集光効率が向上し、測定結果として、強いラマン散
乱を得ることができる。
【0062】なお、本実施例においては、キャピラリー
チューブ上に光反射膜を形成する方法として、銀鏡反応
を用いる方法の例を示したが、前記反射膜の形成方法
は、当然、銀鏡反応を用いる方法に限られない。例え
ば、所望の形状の銀のテープをキャピラリーチューブ上
に張りつける方法や、所望の形状の銀箔をキャピラリー
チューブ上に巻き付ける方法なども、前記反射膜の形成
方法としては有効であり、使用可能である。
【0063】
【実施例1】本発明のラマン分光測定用キャピラリーチ
ューブの一実施例の製造と前記ラマン分光測定用キャピ
ラリーチューブを用いたラマン分光測定 内径1mm、外径1.3mmの円柱状で、長さ10cm
の細長いガラス管であるキャピラリーチューブの外壁上
に、銀鏡反応を用いる方法によって銀反射膜をコート
し、窓部を形成する。この時、窓部は、図4を用いて説
明すると、窓部15を有するキャピラリーチューブ11
の横断面において、キャピラリーチューブ11の外壁
上、窓部15の一方の末端と前記横断面の中心を結ぶ直
線と、前記窓部もう一方の末端と前記中心を結ぶ直線と
のなす角である中心角d1が、45°である部分を有す
る形状とした。
【0064】これに、粉末状のカフェインを充填し、ラ
マン分光測定を行なった。ラマン分光測定には、レーザ
ー光の直径が0.7mmであり、図7に示す光学系を有
したニコレー製のFT−ラマン分光測定装置を用いた。
散乱光の発生は、図5に示すように、窓部15を通して
カフェインをレーザー光18で励起し、行なった。そし
て、発生したカフェインの散乱光20、21は、窓部1
5を通って、ラマン分光測定用キャピラリーチューブ1
6の外部に出て、凹面鏡17に集められ、干渉系22に
送られた。
【0065】ラマン散乱の評価は、得られるラマンスペ
クトルにおいて、740cm−1に現れるピークにより
行い、本発明の効果は、他の実施例および比較例とこの
ピークの強度を比較することにより行なった。結果は4
5degとして、他の実施例および比較例の結果と合わ
せて、図6に示したが、後に説明する比較例で、内径1
mm、外径1.3mmの円柱状で、長さ10cmの細長
いガラス管であるキャピラリーチューブをそのままラマ
ン分光測定に用いた場合に比べ、3倍のラマン強度が得
られた。
【0066】
【実施例2】本発明のラマン分光測定用キャピラリーチ
ューブの一実施例の製造と前記ラマン分光測定用キャピ
ラリーチューブを用いたラマン分光測定 内径1mm、外径1.3mmの円柱状で、長さ10cm
の細長いガラス管であるキャピラリーチューブの外壁上
に、銀鏡反応を用いる方法によって銀反射膜をコート
し、窓部を形成する。この時、窓部は、図4において示
した中心角d1が、50°である部分を有する形状とし
た。
【0067】これに、粉末状のカフェインを充填し、ラ
マン分光測定を行なった。ラマン分光測定方法、散乱光
の発生、およびラマン散乱の評価は、実施例1と全く同
様に行なった。結果は50degとして、他の実施例お
よび比較例の結果と合わせて、図6に示したが、後に説
明する比較例に比べ、3.5倍のラマン強度が得られ
た。
【0068】
【実施例3】本発明のラマン分光測定用キャピラリーチ
ューブの一実施例の製造と前記ラマン分光測定用キャピ
ラリーチューブを用いたラマン分光測定 内径1mm、外径1.3mmの円柱状で、長さ10cm
の細長いガラス管であるキャピラリーチューブの外壁上
に、銀鏡反応を用いる方法によって銀反射膜をコート
し、窓部を形成する。この時、窓部は、図4において示
した中心角d1が、70°である部分を有する形状とし
た。
【0069】これに、粉末状のカフェインを充填し、ラ
マン分光測定を行なった。ラマン分光測定方法、散乱光
の発生、およびラマン散乱の評価は、実施例1と全く同
様に行なった。結果は70degとして、他の実施例お
よび比較例の結果と合わせて、図6に示したが、後に説
明する比較例に比べ、3倍のラマン強度が得られた。
【0070】
【実施例4】本発明のラマン分光測定用キャピラリーチ
ューブの一実施例の製造と前記ラマン分光測定用キャピ
ラリーチューブを用いたラマン分光測定 内径1mm、外径1.3mmの円柱状で、長さ10cm
の細長いガラス管であるキャピラリーチューブの外壁上
に、銀鏡反応を用いる方法によって銀反射膜をコート
し、窓部を形成する。この時、窓部は、図4において示
した中心角d1が、10°である部分を有する形状とし
た。
【0071】これに、粉末状のカフェインを充填し、ラ
マン分光測定を行なった。ラマン分光測定方法、散乱光
の発生、およびラマン散乱の評価は、実施例1と全く同
様に行なった。結果は10degとして、他の実施例お
よび比較例の結果と合わせて、図6に示したが、後に説
明する比較例に比べ、2倍のラマン強度が得られた。
【0072】
【実施例5】本発明のラマン分光測定用キャピラリーチ
ューブの一実施例の製造と前記ラマン分光測定用キャピ
ラリーチューブを用いたラマン分光測定 内径1mm、外径1.3mmの円柱状で、長さ10cm
の細長いガラス管であるキャピラリーチューブの外壁上
に、銀鏡反応を用いる方法によって銀反射膜をコート
し、窓部を形成する。この時、窓部は、図4において示
した中心角d1が、20°である部分を有する形状とし
た。
【0073】これに、粉末状のカフェインを充填し、ラ
マン分光測定を行なった。ラマン分光測定方法、散乱光
の発生、およびラマン散乱の評価は、実施例1と全く同
様に行なった。結果は20degとして、他の実施例お
よび比較例の結果と合わせて、図6に示したが、後に説
明する比較例に比べ、2.5倍のラマン強度が得られ
た。
【0074】
【実施例6】本発明のラマン分光測定用キャピラリーチ
ューブの一実施例の製造と前記ラマン分光測定用キャピ
ラリーチューブを用いたラマン分光測定 内径1mm、外径1.3mmの円柱状で、長さ10cm
の細長いガラス管であるキャピラリーチューブの外壁上
に、銀鏡反応を用いる方法によって銀反射膜をコート
し、窓部を形成する。この時、窓部は、図4において示
した中心角d1が、30°である部分を有する形状とし
た。
【0075】これに、粉末状のカフェインを充填し、ラ
マン分光測定を行なった。ラマン分光測定方法、散乱光
の発生、およびラマン散乱の評価は、実施例1と全く同
様に行なった。結果は30degとして、他の実施例お
よび比較例の結果と合わせて、図6に示したが、後に説
明する比較例に比べ、3倍のラマン強度が得られた。
【0076】
【実施例7】本発明のラマン分光測定用キャピラリーチ
ューブの一実施例の製造と前記ラマン分光測定用キャピ
ラリーチューブを用いたラマン分光測定 内径1mm、外径1.3mmの円柱状で、長さ10cm
の細長いガラス管であるキャピラリーチューブの外壁上
に、銀鏡反応を用いる方法によって銀反射膜をコート
し、窓部を形成する。この時、窓部は、図4において示
した中心角d1が、180°である部分を有する形状と
した。
【0077】これに、粉末状のカフェインを充填し、ラ
マン分光測定を行なった。ラマン分光測定方法、散乱光
の発生、およびラマン散乱の評価は、実施例1と全く同
様に行なった。結果は180degとして、他の実施例
および比較例の結果と合わせて、図6に示したが、後に
説明する比較例に比べ、1.4倍のラマン強度が得られ
た。
【0078】
【比較例】本発明の比較例である反射膜を有しないキャ
ピラリーチューブを用いたラマン分光測定 内径1mm、外径1.3mmの円柱状で、長さ10cm
の細長いガラス管であるキャピラリーチューブに、粉末
状のカフェインを充填し、ラマン分光測定を行なった。
【0079】ラマン分光測定には、レーザー光の直径が
0.7mmであり、図7に示す光学系を有したニコレー
製のFT−ラマン分光測定装置を用いた。散乱光の発生
は、キャピラリーチューブ中のカフェインをレーザー光
で励起し、発生させた。そして、発生したカフェインの
散乱光は、キャピラリーチューブの外に出て、凹面鏡に
集められ、干渉系に送られた。
【0080】ラマン散乱の評価は、得られるラマンスペ
クトルにおいて、740cm−1に現れるピークにより
行った。結果はno silver mirrorとし
て図6に示したが、ピークの強度は約2であった。本発
明の実施例により、ラマン分光測定時、内部に充填され
た被分析試料から発生する散乱光を集光する集光手段と
して銀等の反射膜をその外壁上に備えたことを特徴とす
る本発明のラマン分光測定用キャピラリーチューブは、
前記散乱光の集光効率を高めることを可能にすることが
確かめられた。
【0081】また、窓部は、図4において示されるよう
に、中心角d1が、10°から90°である部分を有す
る形状である場合、そのラマン分光測定時、内部に充填
された被分析試料から発生する散乱光を集光する集光効
率を、特に高めることがわかった。
【0082】そして、その集光効率の向上効果の程度
は、得られるラマンスペクトルのラマン強度によって比
較すると、従来のラマン分光測定用キャピラリーチュー
ブに対し3倍であった。ラマン強度が3倍になることに
よって、得られるラマンスペクトルのSN比は向上し、
測定試料の構造解析等の評価を容易にする。
【0083】また、極々微量の試料を評価するため等、
スペクトルの積算をし、さらにSN比を向上させる必要
がある場合、積算回数を1/9に減少させることがで
き、従って、積算時間を1/9に短縮できる。よって、
ラマン散乱測定の時間を大きく短縮でき、測定にかかる
コストを減少することができる。
【0084】
【発明の効果】請求項1及び請求項2記載の発明によれ
ば、試料からの散乱光の集光効率が向上したラマン分光
測定用キャピラリーチューブを提供することができ、そ
れを従来のラマン散乱測定装置に用いた場合、測定結果
として、強いラマン散乱を得ることができる。
【0085】請求項3記載の発明によれば、試料からの
散乱光の集光効率が向上したラマン分光測定用キャピラ
リーチューブを提供することができ、それを従来のラマ
ン散乱測定装置に用いた場合、測定結果として、強いラ
マン散乱を得ることができる。
【0086】請求項4記載の発明によれば、レーザー光
の、ラマン分光測定用キャピラリーチューブの内部に充
填された試料に対する励起効率を高めることができ、そ
れを従来のラマン散乱測定装置に用いた場合、測定結果
として、強いラマン散乱を得ることができる。
【0087】請求項5記載の発明によれば、試料からの
散乱光の集光効率が向上したラマン分光測定用キャピラ
リーチューブを提供することができ、さらに、レーザー
光の、ラマン分光測定用キャピラリーチューブの内部に
充填された試料に対する励起効率を高めることができ
る。よって、これを従来のラマン散乱測定装置に用いた
場合、測定結果として、強いラマン散乱を得ることがで
きる。
【0088】請求項6記載の発明によれば、簡便で安価
に集光効率を高めることを可能とするラマン分光測定用
キャピラリーチューブを提供することができる。請求項
7記載の発明によれば、散乱光の反射率が高い銀を安価
に、そして簡便にラマン分光測定用キャピラリーチュー
ブ外壁上にコートできる。また、簡便で安価に集光効率
を高めることを可能とするラマン分光測定用キャピラリ
ーチューブを提供することができる。
【0089】請求項8および請求項9記載の発明によれ
ば、散乱光の反射率が高い銀を安価に、そして簡便にラ
マン分光測定用キャピラリーチューブ外壁上にコートで
きる。また、安価に簡便に、レーザー光の入射口および
散乱光の出射口たる反射膜の未コート部位としての所望
の窓部を形成することができる。
【0090】よって、集光効率の高いラマン分光測定用
キャピラリーチューブの安価で簡便な製造方法を提供す
ることができる。請求項10記載の発明によれば、キャ
ピラリーチューブを試料照射部として用いるラマン分光
測定方法において、簡便で安価に強いラマン散乱を試料
照射部から発生させることができ、精度の高い測定がで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のラマン分光測定用キャピラリーチュー
ブの基本構成を示す図である。
【図2】本発明のラマン分光測定用キャピラリーチュー
ブの使用形態を示す図である。
【図3】本発明の実施例に係るラマン分光測定用キャピ
ラリーチューブの正面図である。
【図4】ラマン分光測定用キャピラリーチューブのAA
断面図である。
【図5】ラマン分光測定用キャピラリーチューブの使用
方法を示す図である。
【図6】本発明の実施例1乃至7によるラマン分光測定
用キャピラリーチューブのラマン強度を、従来のラマン
分光測定用キャピラリーチューブのものと比較して示す
図である。
【図7】従来のラマン分光測定装置の構成の概略を示す
図である。
【図8】散乱光の発生の様子の概略を示す図である。
【図9】凹面鏡を2つ設けた場合の散乱光の集光の様子
を示す図である。
【符号の説明】
1,11 キャピラリーチューブ 2,12 反射膜 3,14 未コート部位 4,16 ラマン分光測定用キャピラリーチューブ 5,17 凹面鏡 6,18 レーザー光 7,19 試料点 8,9,20,21 散乱光 10,22 干渉系 13 コート部位 15 窓部 d1 中心角
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 島田 治男 神奈川県横浜市金沢区福浦2丁目12番1号 株式会社資生堂第二リサーチセンター内 (72)発明者 八戸 昌秋 神奈川県横浜市金沢区福浦2丁目12番1号 株式会社資生堂第二リサーチセンター内 (72)発明者 難波 隆二郎 神奈川県横浜市金沢区福浦2丁目12番1号 株式会社資生堂第二リサーチセンター内

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ラマン分光測定を行なう際、キャピラリ
    ーチューブ本体内に被測定試料が充填されるラマン分光
    測定用キャピラリーチューブにおいて、 前記キャピラリーチューブの外壁上に光反射膜を形成し
    たことを特徴とするラマン分光測定用キャピラリーチュ
    ーブ。
  2. 【請求項2】 前記光反射膜が、 前記キャピラリーチューブ本体の外壁上の一部に形成さ
    れた光反射膜であることを特徴とする請求項1記載のラ
    マン分光測定用キャピラリーチューブ。
  3. 【請求項3】 前記光反射膜は前記キャピラリーチュー
    ブ本体の前記被測定試料が充填される部位の全周面にコ
    ートされると共に、 前記光反射膜の一部に、励起光及び散乱光の通過口とな
    る窓部を形成したことを特徴とする請求項1または請求
    項2のいずれかのラマン分光測定用キャピラリーチュー
    ブ。
  4. 【請求項4】 前記窓部の大きさが、 前記励起光の全てを前記キャピラリーチューブ本体内に
    入射させることを可能とする大きさであることを特徴と
    する請求項3記載のラマン分光測定用キャピラリーチュ
    ーブ。
  5. 【請求項5】 前記窓部の形状が、 前記キャピラリーチューブ本体の横断面において、 中心角が10°から90°の範囲で形成された形状であ
    ることを特徴とする請求項3または請求項4のいずれか
    のラマン分光測定用キャピラリーチューブ。
  6. 【請求項6】 前記光反射膜が、銀からなる銀反射膜ま
    たは金からなる金反射膜のいずれか一つであることを特
    徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のラマン分
    光測定用キャピラリーチューブ。
  7. 【請求項7】 前記銀反射膜が銀鏡反応によって成膜さ
    れたものであることを特徴とする請求項6記載のラマン
    分光測定用キャピラリーチューブ。
  8. 【請求項8】 キャピラリーチューブ本体内部に充填さ
    れる被測定試料から発生する散乱光を集光する反射膜を
    設けたラマン分光測定用キャピラリーチューブの製造方
    法であって、 前記反射膜を、銀鏡反応により前記キャピラリーチュー
    ブ本体の外壁上に銀をコートして形成することを特徴と
    するラマン分光測定用キャピラリーチューブの製造方
    法。
  9. 【請求項9】 キャピラリーチューブ本体を銀鏡反応液
    に浸し、銀鏡反応によって前記キャピラリーチューブの
    外壁上に銀の膜を成膜し、銀コートする工程と、 銀鏡反応により銀コートされたキャピラリーチューブ本
    体の外壁から銀の膜を一部剥離し、前記外壁において所
    望の形状を有する、銀の未コート部位を形成する工程
    と、よりなることを特徴とする請求項8記載のラマン分
    光測定用キャピラリーチューブの製造方法。
  10. 【請求項10】 キャピラリーチューブ本体に被測定試
    料を充填し、 前記充填試料に励起光を照射し、励起された被測定試料
    から散乱光を発生させ、ラマン散乱を測定する、ラマン
    分光測定方法において、 一部に窓部が形成された光反射膜により覆われたキャピ
    ラリーチューブ本体に、被測定試料を充填し、前記窓部
    を通して励起光を入射させるとともに、被測定試料から
    発生する散乱光を検出部に導くことを特徴とするラマン
    分光測定方法。
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