JP3755034B2 - 全反射蛍光x線分析法およびその装置 - Google Patents

全反射蛍光x線分析法およびその装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、全反射蛍光X線分析法およびその装置に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、エネルギー分解能および検出効率ともに優れ、超微量分析に極めて有用な、波長分散型の全く新しい全反射蛍光X線分析法および全反射蛍光X線分析装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、物質の定性分析および定量分析の一手法として蛍光X線分析が知られており、特に微量物質の分析には全反射蛍光X線分析が有用である。
【0003】
全反射蛍光X線分析では、試料表面に平行に近い浅い角度、つまり全反射臨界角近傍の非常に浅い角度でX線を入射させるので、入射X線の試料内への侵入がほとんど生じないため、バックグランドとなる試料内部からの散乱X線を低減させることができ、試料表面近傍の目的の微量物質から発生する蛍光X線を良い信号対バックグランド比で得ることができて、微量物質の定性・定量分析が可能となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このように優れた分析能力を実現する全反射蛍光X線分析にあっても、分析対象である微量物質の濃度レベルの希薄化が進み、超微量になると、蛍光X線の検出限界、つまり検出器のエネルギー分解能に起因して、分析が困難になるといった問題があった。すなわち、超微量物質の場合、散乱X線のスペクトルの裾野の広がりが軽視できなくなり、その低エネルギー側の裾に目的とする蛍光X線が埋もれ易くなってしまうのである。
【0005】
従来、全反射蛍光X線分析における検出器としてはSi(Li)やGeの半導体検出器が用いられており、これらの半導体検出器はたとえば4〜15keV程度のX線に対し、およそ130〜200eV程度のエネルギー分解能を有しているものの、環境分析や半導体ウェハの表面汚染評価などの各種分野においては、このエネルギー分解能では分析が困難となる程の超微量分析が必要となる場合があり、その技術の実現が切望されている。
【0006】
そこで、この超微量分析を実現すべく、検出器として、半導体検出器よりもさらにエネルギー分解能を高めた固体検出器、たとえば超伝導トンネル接合検出器や超伝導遷移端検出器を採用する方法が既に提案されている。しかしながら、この方法は、素子の有効面積が小さいため、検出効率の犠牲が深刻な問題となっている。
【0007】
この出願の発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、従来技術の問題点を解消し、エネルギー分解能および検出効率ともに優れた、超微量分析を実現することのできる、新しい全反射蛍光X線分析法およびその装置を提供することを課題としている。
【0008】
【課題を解決する手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、全反射条件またはその近傍において試料から放出される蛍光X線の分光を湾曲結晶により行うこと、湾曲結晶として、ローランド円半径Rが120mm以下のものを用いること、及び、試料上の30μm(ミクロン)平方以下の領域から発生する蛍光X線に限定して分光することを特徴とする全反射蛍光X線分析法(請求項1)を提供し、また、全反射条件またはその近傍において試料から放出される蛍光X線の分光を湾曲結晶により行うこと、湾曲結晶として、ローランド円半径Rが120mm以下のものを用いること、及び、試料上の、ローランド円の面と垂直な方向に平行に延び、かつ30μm(ミクロン)幅以下の線状の領域から発生する蛍光X線に限定して分光することを特徴とする全反射蛍光X線分析法(請求項2)も提供する。これらの方法において、湾曲結晶として、ローランド円半径Rが90mm〜120mmのものを用いること(請求項3)を提供する。
【0009】
また、この出願の発明は、全反射条件またはその近傍において試料から放出される蛍光X線を分光する湾曲結晶が備えられていて、蛍光X線が湾曲結晶により分光されて受光スリットを通して検出器で測定される全反射蛍光X線分析装置であって、湾曲結晶が、ローランド円半径Rが120mm以下のものであり、試料上の30μm(ミクロン)平方以下の領域から発生する蛍光X線に限定して分光するようになっていることを特徴とする全反射蛍光X線分析装置(請求項4)と、全反射条件またはその近傍において試料から放出される蛍光X線を分光する湾曲結晶が備えられていて、蛍光X線が湾曲結晶により分光されて受光スリットを通して検出器で測定される全反射蛍光X線分析装置であって、湾曲結晶が、ローランド円半径Rが120mm以下のものであり、試料上の、ローランド円の面と垂直な方向に平行に延び、かつ30μm(ミクロン)幅以下の線状の領域から発生する蛍光X線に限定して分光するようになっていることを特徴とする全反射蛍光X線分析装置(請求項5)をも提供し、これらの装置において、湾曲結晶のローランド円半径Rが90mm〜120mmであること(請求項6)や、検出器として湾曲結晶からの蛍光X線を計数するYAP:Ceシンチレーション検出器が備えられていること(請求項7)や、試料と湾曲結晶との距離、湾曲結晶と受光スリットおよび検出器との距離、湾曲結晶の回転角度、ならびに、受光スリットおよび検出器が搭載されたアーム部の回転角度の4軸が制御可能であること(請求項8)や、入射X線の試料上の照射領域が30μm(ミクロン)幅以下であること(請求項9)や、試料と湾曲結晶との間に蛍光X線パスを限定するコリメータが設けられていること(請求項10)や、試料と湾曲結晶との間に蛍光X線パスを限定する円筒状または円錐筒状のコリメータが設けられていること(請求項11)や、分光結晶が見込む試料上の範囲が30μm(ミクロン)幅以下に制限されていること(請求項12)や、試料と湾曲結晶との間にローランド円に平行な薄板群から形成されたソーラースリットが設けられていること(請求項13)や、湾曲結晶の回転軸が、入射X線の試料上の照射領域の長辺方向に対し平行である配置となっていること(請求項14)や、試料基板が、全反射配置を満たす条件で、その観察面が入射X線ビームの直交断面の長辺軸と平行となるように配置され、且つ、入射X線ビームが幅250μmのビームであって、湾曲結晶が、試料基板をその観察面に対して6.9°の角度から見込むように配置されていること(請求項15)や、試料と湾曲結晶との間および湾曲結晶と受光スリットとの間のいずれか一方もしくは両方に、真空パスが設けられていること(請求項16)や、湾曲結晶が、半径2R(Rはローランド円半径)の曲率で曲げられ、さらにその直交方向にも曲げられているものであること(請求項17)をも提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
[1.湾曲結晶]
この出願の発明は、全反射配置を取らない通常の蛍光X線分析装置にて定着している結晶分光器の技術に着目し、それを、これまで半導体検出器の技術しか採用されていなかった全反射蛍光X線分析へ初めて導入したものである。すなわち、エネルギー分散型のみであった全反射蛍光X線分析に、波長分散型を全く新しく導入した画期的な発明なのである。
【0011】
通常の蛍光X線分析における結晶分光器による蛍光X線分光は、多くの場合、X線を試料上の広い面積に照射し、発生する蛍光X線を発散ソーラースリットにより平行化させた後、平板結晶により分光して、受光ソーラースリットを通してシンチレーションカウンターや比例計数管等の検出器で測定しており、分解能の高いことが知られている。
【0012】
ところが、この技術は、エネルギー分解能を高めるには有効であっても、検出効率の犠牲が著しいため、微量物質の検出能力に関しては半導体検出器等を用いる技術には及ばないとするのが蛍光X線分析全般における常識であった。また、高感度な全反射蛍光X線分析においては、なおのこと、結晶分光器ではなく、半導体検出器を用いるのが普通であり、いかにエネルギー分解能を向上させ、そのこと自体が1つの付加価値であったとしても、超微量分析の能力を高めるには有用ではないと考えられていた。
【0013】
しかしながら、この出願の発明の発明者等は、このような従来の常識にとらわれることなく、結晶分光器を適用する技術の研究を進め、高エネルギー分解能はそのままに、検出効率を増大させることに遂に成功したのである。それが、分光結晶として、通常の蛍光X線分析装置に定着している平板結晶ではなく、湾曲結晶を用いることである。湾曲結晶を用いることで全反射蛍光X線分析において、検出限界をさらに向上させ、優れた超微量分析を実現できるようになる。
【0014】
湾曲結晶としては、ヨハン型湾曲結晶やヨハンソン型湾曲結晶などがある。たとえばGe(220)ヨハンソン型湾曲結晶は、ゲルマニウム単結晶の(220)面(面間隔2d=4.005Å)を反射面としたブラッグ反射を利用した分光結晶であって、結晶面を半径2Rの曲率で曲げ、さらに表面を半径Rの円柱曲面に削ったものである。この表面に接する円がローランド円であり、その半径Rがローランド円半径と呼ばれる。
【0015】
図1および図2は、各々、この出願の発明の全反射蛍光X線分析装置を例示したものであり、図10は、従来の全反射蛍光X線分析装置を例示したものである。図1および図2に例示したように、この出願の発明の装置は、全反射条件またはその近傍において試料(3)から放出される蛍光X線(B)を測定するために、図10に示した従来用いられていた半導体検出器(ア)の代わりに、湾曲結晶(1)および検出器(2)を備えて、波長分散型の全反射蛍光X線分析を行うようになっている。
【0016】
より具体的には、図2の装置構成で説明すると、まず入射X線(A)は、入射スリット(6)を通り、真空チャンバ(5)内の基板(4)上にセットされた試料(3)表面に対して、全反射臨界角近傍の非常に浅い角度で入射される。これにより試料(3)の表面近傍から放出される蛍光X線(B)は、まず湾曲結晶(1)により分光され、次いで受光スリット(7)を通して検出器(2)で測定される。図中の(8)は半径Rのローランド円である。
【0017】
図2の全反射蛍光X線分析装置における検出効率およびエネルギー分解能は、各々、公知の次式(P.Georgopoulos and G.S. Knapp, J. Appl. Cryst, 14, 3-7
(1981)を参照)により求めることができる。
【0018】
【数1】
Figure 0003755034
【0019】
一例として、図2の全反射蛍光X線分析装置において湾曲結晶(1)にGe(220)ヨハンソン型湾曲結晶を用い、上式の各パラメータを下記表1とした場合にて、コバルトKα(6930.32eV)に対する検出効率およびエネルギー分解能とローランド円半径Rとの関係を求めたところ、図3に示したような結果が得られた。
【0020】
【表1】
Figure 0003755034
【0021】
この図3から明らかなように、湾曲結晶(1)のローランド円半径Rを約120mm以下まで小さくすることで、エネルギー分解能は半導体検出器よりも著しく高く保ったまま、検出効率を著しく増大させる効果を得ることができるのである。同様な効果は、Ge(220)ヨハンソン型湾曲結晶以外の他の湾曲結晶の場合にも現れ、そのときのローランド円半径Rは約120mm以下の範囲となる。
【0022】
なお、約120mmとは、ちょうど120mmを含むことはもちろんのこと、上記効果が得られる程度で120mm前後のことを意味する。また、下限については、特に限定はないが、約90mmより小さい半径Rではエネルギー分解能が極端に劣化してしまう場合がしばしばであるので、約90mm〜約120mmがより好ましい範囲とも言える。
【0023】
[2.検出器]
この出願の発明では、高輝度放射光などの明るい光源を使用した場合に得られる強度の強い蛍光X線スペクトルを計測するために、検出器としてYAP:Ceシンチレーションカウンターを搭載した構成とするなど、従来の結晶分光技術には見られない新規な特徴をも導入している。
【0024】
検出器としては、比例計数管やNaI:Tlシンチレーションカウンターを用いることも当然できるが、高い計数率のX線をより少ない数え落としで計数するためにYAP:Ceシンチレーションカウンターを用いることが、この出願の発明ではより好ましい実施形態となる。
【0025】
NaI:Tlは、発光寿命が230nsecと長いので一度に多くのフォトンを計数することが難しく、つまり単位時間当たりの計数上限が低いためにダイナミックレンジが狭いという問題があるのに対し、YAP:Ceは、発光寿命が25nsecとNaI:Tlより一桁短いので、これをシンチレーションカウンターとして用いれば、高計数率域のX線計数が可能な検出器を実現することができる。これにより、たとえば、高輝度放射光などの輝度の高い光源を用いたときに強度の強い蛍光X線が発生しても計測できるようになる。このYAP:Ceは、Y,Alの複酸化物でペロブスカイト型構造をとるYAlOにCeをドープしたものである。
【0026】
[3.集光光学系]
この出願の発明では、高分解能を維持して、蛍光X線の検出限界をさらに一層高めるべく、試料上の約30μm(ミクロン幅以下または約30μm(ミクロン平方以下の領域から発生する蛍光X線に限定して分光し、それを検出するようにすることも考えている。
【0027】
なお、約30ミクロンとは、約30μmのことであり、ちょうど30μmを含むことはもちろんのこと、上記効果が得られる程度で30μm前後のことを意味する。また、下限については、約30μm以下であれば顕著な上記効果を得ることができるので特に限定はないが、約1μmより狭くすると逆に検出が困難になってしまうので、約1μm〜約30μmがより好ましい範囲とも言える。
【0028】
[3−1a 蛍光X線光源の絞り]
まず、蛍光X線を発生する試料上の領域の上記サイズへの制限は、試料上のX線照射領域を上記サイズにまで制限することによって、あるいは発生する蛍光X線のうち分光結晶が見込むものに試料上の範囲として上記サイズの制限を設けることなどによって実現され、蛍光X線の光源を絞ることに主眼がある。このことは、分光結晶として平板結晶ではなく、湾曲結晶を用いていることと密接に関係する。
【0029】
前述したように平板結晶を用いる通常の蛍光X線分析では、X線を試料上広い面積に照射し、蛍光X線は発散を抑えるソーラースリットにより平行化させる平行光学系になっている。これに対し、湾曲結晶は、ブラッグ反射を起こさせる結晶面を曲率半径2R(R=ローランド円半径)の円柱状に曲げることにより、集光光学系をつくり、検出効率を高める効果を上げている。
【0030】
この集光光学系では、図4(a)に例示したように、試料(3)、湾曲結晶(1)、受光スリット(7)および検出器(2)の間に厳密な幾何配置(距離や角度)が要求され、ローランド円(8)の円周上の点状の光源から出た蛍光X線(B)、つまり円周上の試料(3)からの蛍光X線(B)が、受光スリット(7)位置で焦点を結ぶようになる(厳密には試料(3)より発生し湾曲結晶(1)へ入射する蛍光X線(B)の光路と湾曲結晶(1)により分光されて検出器(2)へ向かうX線の光路とは対称的になり、▲1▼光路の湾曲結晶(1)に対する角度と▲2▼ローランド円(8)上の点から湾曲結晶(1)までの距離は湾曲結晶(1)の前後で等しくなる。▲1▼または▲2▼のいずれか一方について上記条件を満たすようにすると、他方も必然的に満たされる)。したがって、光源(=試料(3))がローランド円(8)上よりはみ出した広い面積になっていると、受光スリット(7)に届く蛍光X線に焦点を結ばない成分が入り込み、その結果得られるスペクトルは分解能の悪いものになってしまう。
【0031】
そこで、照射面積を制限したり微小試料を用いたりすることによって蛍光X線(B)の発生する面積を小さくすること、または、湾曲結晶(1)の見込む試料範囲を制限することによって発生する蛍光X線(B)のうち湾曲結晶(1)に届くものを制限することで、分解能を高める効果が実現できるのである。
【0032】
具体的には、たとえば入射X線(A)(図1,2参照)を集光すると輝度を高めつつ照射面積を小さくできるので、信号強度を高めると同時に分解能を向上させることができ、微量分析がいっそう有利となる。また、濃度が希薄であるだけでなく、微小な物質あるいは微小領域に存在する元素について効果的に分析ができるというメリットもある。入射X線(A)の集光やビームサイズの制限は、たとえばキャピラリ光学系を用いて実現できる。
【0033】
また、蛍光X線が基板全体など広面積から発生している場合に、そのなかから湾曲結晶(1)の見込む試料上の蛍光X線発生領域を制限する蛍光X線視野制限手段として、たとえば図5に例示したように、試料(3)と湾曲結晶(1)との間に蛍光X線パスを限定するコリメータ(9)を設けることもできる。図5の例では、試料(3)の湾曲結晶(1)に面したすぐ前方、真空チャンバ(5)内にコリメータ(9)を取り付けており、たとえばこのコリメータ(9)としては、一例として、100μmφ×長さ40mmなどといった円筒状のものや、試料側50μmφ・真空チャンバ出口側500μmφ×長さ35mmなどといった円錐筒状のものなどを用いることができ、これによって、湾曲結晶(1)の見込む試料範囲を制限し、湾曲結晶(1)により分光する蛍光X線を約30μm(ミクロン平方以下の領域から発生するものに制限することができる。
【0034】
さらにまた、湾曲結晶の見込む試料範囲を制限することに類似した効果の得られる手法として、湾曲結晶が試料基板に正面から対向するのではなく、斜めから見ることによって、見かけ上絞られた蛍光X線光源としてとらえる配置とすることも有効である。すなわち、湾曲結晶を、試料基板をその観察面に対し浅い角度から見込むように配置させて、試料から発せられる蛍光X線を狭い出射角で受けるようにすることで、蛍光X線の光源の絞り込みを効果的に実現できる。
[3−1b.蛍光X線光源の線状領域への制限]
上述した図4(a)の集光光学系についてさらに説明すると、その集光光学系においては、図4(b)に例示したように、湾曲結晶(1)は、ローランド円(8)の面と垂直な方向(湾曲結晶表面を円柱曲面と表現するならば、その円柱の高さ方向)にも有限の大きさをもっており(以下、その大きさのことを湾曲結晶の高さと呼ぶことにする)、そのどの部分でも蛍光X線(B)を受け分光を行うことができる。すなわち、ローランド円(8)として、厚みをもたない平面上に存在するものをイメージするのではなく、それに垂直な方向に高さ(厚み)をもつもの(言うならば円筒のイメージになる)が存在すると考えることができる。そうすると、光源(試料(3))は円筒面上にあればいいことになるので、点状に限定されず、湾曲結晶(1)の高さの方向に平行な線状でもよいことになる(図4(b)参照)。この線状の光源とは、点状の光源が線状に集合したものと言うこともできる。このような配置関係の約30μm(ミクロン幅以下の線状の光源とすることにより、エネルギー分解能を損なうことなく、かつ湾曲結晶(1)の広い有効面積を活用することができる。
【0035】
もちろん、線状の蛍光X線光源(試料(3))が上記の配置関係を満たす条件に、必ずしも限定する必要はない。その場合でも、線状を形成する方向がいずれであっても、蛍光X線光源が絞られていることは、分解能を劣化させない効果が多少なりとも認められる。
【0036】
蛍光X線発生領域の約30μm(ミクロン幅以下への制限は、試料上のX線照射領域を上記形状にまで制限することによって、あるいは、発生する蛍光X線のうち分光結晶が見込むものを試料上の範囲として上記形状に制限することによって実現される。
【0037】
たとえば図11に示すように、試料基板の観察面が紙面平行方向である場合に、スリット(6)として入射X線(A)の紙面平行方向の幅を約30μm(ミクロン幅以下に制限する配置のものを使用すると、試料上のX線照射領域を制限することができる。なお、試料基板とは、試料(3)をセットした基板(4)および基板状のものでそれ自身が試料(3)である場合の両者を含めた概念である(以下同じ)。
【0038】
また、蛍光X線が基板全体など広い面積から発生している場合に、湾曲結晶(1)の見込む、試料上の蛍光X線発生領域を線状に制限する蛍光X線視野制限手段として、試料(3)と湾曲結晶(1)との間に蛍光X線パスを限定するコリメータ(9)を設けることもでき、ここでコリメータ(9)としては、細長い断面形状をもつ筒状のものを用いることが好ましい。
【0039】
さらにまた、線状の蛍光X線光源をこの長辺方向に高さをもつ湾曲結晶で受ける場合には、当該光源(試料)を構成する点と湾曲結晶の高さにおける位置が一対一に対応しているほうが分解能を劣化させないためには好ましい。なぜならば、集光光学系の原理にしたがえば、線状光源を構成する特定の点光源からの蛍光X線は、同一ローランド円上にある湾曲結晶部分で分光することが求められるからである。ゆえに試料と湾曲結晶との間に蛍光X線の発散を制限するソーラースリットを設けることも有効である。このソーラースリットは、ローランド円に平行な薄板群から形成され、ローランド円垂直方向成分を含む蛍光X線の湾曲結晶への到達を制限する働きを担い、これによってブラッグ角のずれた波長(エネルギー)の異なるX線が湾曲結晶によって回折されるのを制限し、分解能劣化を防ぐ。
【0040】
なお、蛍光X線光源が点状である場合にも、上記のようなソーラースリットを設けることが可能であることは言うまでもなく、同様に分解能劣化を防ぐ効果がある。
【0041】
[3−2.試料サイズの制限]
続いて、蛍光X線発生領域の前記サイズへの制限は、上述したとおりの各種手法によって試料上のX線照射領域を制限することによるだけでなく、試料自体を約30μm(ミクロン幅以上または約30μm(ミクロン平方以下のサイズにすることによっても実現できる。
【0042】
この場合、基板全体に試料を分布させるのではなく、試料自体を上記サイズのものとし、X線照射領域にかかわらず、観察対象としている蛍光X線の発生が上記サイズの領域のみからとなるようにする。より具体的には、たとえば、希薄な濃度の元素を含む微小な液滴を基板(たとえばクリーンなSiウェハなど)上に1滴滴下し、乾燥させることによって、微小サイズの試料を得ることができ、この手法により直径約30μmのたとえば円形に析出した試料から、分解能の優れた蛍光X線スペクトルを得ることができるようになる。
【0043】
[4.回転軸の配置]
この出願の発明の全反射蛍光X線分析装置の運動機構としては、たとえば、試料を基準として考えるときに湾曲結晶の角度回転軸および検出器の角度回転軸が垂直または鉛直に向き、つまり垂直回転軸配置とされ、試料(=蛍光X線光源)、湾曲結晶、検出器が同一高さにあって運動するようにされたものを用いることができる。これは、ローランド円、つまり回折面が水平面内にある配置を意味する。たとえば図2で言うならば、図示した装置が垂直回転軸配置とされている場合では、図2は分析装置全体を上から眺めたものであることになる。
【0044】
他方、分析装置は垂直回転軸配置に限られるものではなく、水平回転軸配置も採用することができる。水平回転軸配置では、ローランド円は垂直面内にある。すなわち、湾曲結晶と検出器は試料を含む垂直面内に位置し、ローランド円上で集光条件を満たす配置をとる。例えば図2においては、図示した装置が水平回転軸配置とされている場合では、図2は装置全体を横(水平方向)から眺めたものであることになる。ここで、たとえば図6(a)に例示したように、入射X線(A)が、放射光や多くのX線発生装置からのものがそうであるように、光軸を水平方向にもっていると、試料上の照射は水平方向に沿った細長い照射になり(全反射条件を満たすような低角の入射であるため入射方向に沿っては試料上の照射領域は長く伸びる。それに対し入射X線の垂直方向の幅はそれほど大きくはないため)、水平回転軸配置であれば、湾曲結晶(1)を試料上の細長い照射の方向に平行な方向に高さを持つように配置できる。これにより、線状の蛍光X線光源に対し、発生する蛍光X線(B)を分解能に遜色なく、かつ無駄なく集めることが可能となる。これに対し、垂直回転軸配置では、たとえば図6(b)に例示したように、もともとの入射X線(A)が垂直方向に幅の太いもの(特に放射光では稀である)でない限り、湾曲結晶(1)はその高さのうちの中央部分しか利用されない。また、分解能を高く維持するためには、入射X線(A)に沿って細長く広がった照射領域に対し、点状に制限して湾曲結晶(1)へ蛍光X線(B)を導くような構成とする必要があり、分析面積も狭く限定される。
【0045】
すなわち、湾曲結晶の回転軸が、入射X線の試料上の照射領域の長辺方向に対し平行または概平行となる配置をとるようにすることで、発生する蛍光X線を無駄なく効率的に集めることができ、かつ分解能も優れた条件となり得る。
【0046】
このように、この出願の発明では、湾曲結晶(1)および検出器(2)の角度回転軸について、垂直回転軸配置および水平回転軸配置を使い分けることが可能なのである。図2に例示した分析装置にて説明すると、たとえば、試料(3)と湾曲結晶(1)との距離、湾曲結晶(1)と受光スリット(7)および検出器(2)との距離、湾曲結晶(1)の回転角度、ならびに、受光スリット(7)および検出器(2)が搭載されたアーム部の回転角度の4軸が制御可能に備えられており、それらの内の回転角度を決める2つの回転軸が垂直配置あるいは水平配置とされるのである。もちろん、いずれの配置であっても、試料(3)の位置決めや全反射を生じさせるための微調整機構を備えていることは言うまでもない。
【0047】
なお、ちょうど垂直もしくはちょうど水平でなく、それらの間の任意の回転軸の向きをとる配置も可能であり、各種の構成条件や制限などに従って設定し、水平に近い配置では水平軸配置、垂直に近い配置では垂直軸配置に寄った特徴が生じることになる。
【0048】
[5.試料基板の配置]
この出願の発明では、入射X線として、超微量分析のために有効な放射光を用いることができる。その場合、放射光はその発生原理から、本来、光軸を水平方向にもち、また、光軸と直交する断面は、水平方向には長く垂直方向には細く、横長の断面形状をもっているが、入射X線としてこの光束すべてを利用できると有利である。
【0049】
ここで、試料基板を垂直に立てて、これにX線を非常に浅い角度から入射(すなわち斜入射)させると、横幅の広い入射X線は基板表面の照射幅として、さらに幅が広がってはみ出し、大部分が無駄になることがある。
【0050】
これに対し、略水平(X線を斜入射させるために、試料基板の方を光軸を水平方向にもつ入射X線に向かって微小角傾けることがある)に置かれた試料基板を用いると、横に幅の広いX線を入射させることができ、放射光の幅いっぱいを有効に使うことが可能になる。また、試料基板上の広い面積の分析が可能となる。なお、このとき蛍光X線光源は長さも幅も広いものになっているので、これらの蛍光X線を無駄なく効果的に取り込み、かつ、分解能に優れた配置にしようとするならば、この試料基板面に平行に近い浅い角度で湾曲結晶を対向させると、湾曲結晶において見かけ上蛍光X線光源が絞られて蛍光X線を受けられることになり、都合がよい。たとえば、SPring−8のBL40XUを使用するときの一例として、幅250μmのビームを使う場合、幅30μmの蛍光X線光源としてとらえるためには、湾曲結晶は0.12rad(6.9°)の角度から試料基板面を見込めばよいことになる。ここでは、湾曲結晶を試料に対し水平より微小角傾けた方向に配置してもよいし、試料基板を水平方向に置かれた湾曲結晶に向けて少し傾ける配置としてもよい。また、放射光は水平方向に幅の広い光源であるが、光軸を水平方向にもち、断面形状が縦長の光源の場合には、試料基板を垂直に立て、湾曲結晶は垂直方向から見込む配置とすることもできる。
【0051】
したがって、試料基板を、全反射または類似の配置を満たす条件で、その観察面が入射X線ビームの直交断面の長辺軸とおよそ平行となるように配置させ、且つ、湾曲結晶を、試料基板をその観察面に平行に近い浅い角度から見込むように配置させることで、言い換えると、試料基板を、全反射または類似の配置を満たす条件で、その観察面が入射X線ビーム断面全体を極力カバーするように配置させ、且つ、湾曲結晶を、試料基板をその観察面に平行に近い浅い角度から見込むように配置させることで、入射X線が放射光である場合などにおいて、放射光の光速全体の有効利用および蛍光X線光源の絞りを実現し、検出効率および分解能の向上を図ることができるのである。
ここで、湾曲結晶および検出器の角度回転軸の向きと、試料基板の配置関係について可能な組合せを列挙、整理する。試料基板は、試料セットの都合上、1)水平向き、すなわち観察面が水平となるよう置かれることが多い。放射光や多くの×線発生装置からのX線は光軸を水平方向にもっているため、このように置かれた試料基板面に対しほぼ平行な方向から斜入射させることができるが、斜入射させるために、入射×線に微小量の角度をつけるか、もしくは試料基板側を微小角傾けた略水平向きに置く。このように置かれた試料基板配置に対し、湾曲結晶は、A)垂直(鉛直)方向、すなわち真上(実用性の観点からは少ないと思われるが真下も有り得る)から、基板に対向することができる。
この場合、湾曲結晶(および検出器)の角度回転軸は水平に向き、a)水平回転軸となる。このときローランド円は垂直面内にあることになる。この水平回転軸は、入射×線の光軸方向にア)平行方向である場合と、イ)直交方向である場合とがとられ得る。
【0052】
試料基板に対し、湾曲結晶をB)水平方向(すなわち横)から対向させる配置もある。この場合、基板面を見込むことができるように、基板面に厳密に平行な(すなわち真横)方向ではなく、基板を湾曲結晶に向かってわずかに傾けるか、湾曲結晶を水平方向より、基板観察面側を覗くようにわずかに角度をつけた配置とする。湾曲結晶は略水平面内で、試料との位置関係が入射X線光軸のI)直交方向か、光軸のII)平行方向に位置できる。湾曲結晶の角度回転軸は、a)水平回転軸、b)垂直回転軸の2通りがある。a)水平回転軸の向きにはさらに種類があり、湾曲結晶と試料との位置関係が入射×線光軸のI)直交方向である場合は、a)水平回転軸は、その軸が入射×線の光軸方向にア)平行方向となり、湾曲結晶が入射X線光軸のII)平行方向に位置する場合は、その軸が入射×線の光軸方向にイ)直交方向となる。
【0053】
試料基板は2)垂直向きに、すなわち基板を立て、観察面が垂直となるよう置かれることも可能である。この基板配置に対し、湾曲結晶をA)垂直方向から対向させると、湾曲結晶回転軸はa)水平回転軸をとることになり、このとき、水平回転軸の向きは、入射×線の光軸方向にア)平行方向と、イ)直交方向とがとられ得る。
【0054】
湾曲結晶をB)水平方向から対向させる場合、湾曲結晶の試料との位置関係は、入射×線光軸のI)直交方向か、光軸のII)平行方向になる。湾曲結晶の角度回転軸は、a)水平回転軸、b)垂直回転軸の2通りがあり、a)水平回転軸のときは、その向きにはさらに種類があり、湾曲結晶の試料との位置関係が入射X線光軸のI)直交方向である場合は、水平回転軸は、入射×線の光軸方向にア)平行方向となり、湾曲結晶の試料との位置関係が光軸のII)平行方向である場合には、回転軸は、入射×線の光軸方向にイ)直交方向となる。
【0055】
なお、検出器は、試料と湾曲結晶の位置関係が決めるローランド円周上の位置に配置する.
上記試料基板と湾曲結晶(検出器)の各々の配置の種簸を整理すると、下記表2のようになる。
【0056】
【表2】
Figure 0003755034
【0057】
配置の組み合わせとしては、上記の通り、1−A−a−ア、1−A−a−イ、1−B−I−a−ア、1−B−II−a−イ、1−B−I−b、1−B−II−b、2−A−a−ア、2−A−a−イ、2−B−I−a−ア、2−B−II−a−イ、2−B−I−b、2−B−II−b、の12通りが考えられる。なお、各々の配置は、ちょうど垂直もしくはちょうど水平や、ちょうど平行、もしくは、ちょうど直交でなく、それらの間の任意の向きをとる配置も可能であり、各種の構成条件や制限などに従って設定し、水平に近い配置では、水平配置、垂直に近い配置では垂直配置、平行に近い配置では平行配置、直交に近い配置では、直交配置に寄った特徴が生じることになる。
【0058】
特に、湾曲結晶と試料との位置関係について、入射X線光軸のII)平行方向に配置する場合は、湾曲結晶が試料に対して入射X線上流側にあるときは光路をきらないように、一方下流側にあるときは基板観察面を見込める角度で配置するため、厳密な意味での入射X線光軸の平行方向とすることは考えられず、概平行方向への配置ということになる。
【0059】
[6.真空パス延長管]
図7は、この出願の発明の全反射蛍光X線分析装置のさらに別の一例を示したものであり、この図7の例では、試料(3)と湾曲結晶(1)の間や、湾曲結晶(1)と検出器(2)の間に、真空パスが設けられている。
【0060】
より具体的には、試料(3)と湾曲結晶(1)との間の真空パスは、真空チャンバ(5)の出口に、湾曲結晶(1)手前までの長さをもち、出口窓としてカプトン膜を張った真空パス延長管(10a)をとりつけ、真空チャンバ(5)と同時に真空引きすることにより、形成されている。また、湾曲結晶(1)と検出器(2)との間の真空パスは、図7の例では受光スリット(7)が検出器(2)の前方に設けられているので、当該受光スリット(7)の入口に、湾曲結晶(1)手前までの長さをもち、入口窓としてカプトン膜を張った真空パス延長管(10b)を取り付け、真空引きすることにより、形成されている。
【0061】
蛍光X線(B)は通過する経路の空気によってある程度吸収・散乱されて強度ロスを生じるので、真空パスを設けることによって、吸収・散乱を低減させ、強度を維持することができる。また、空気によって蛍光X線(B)が散乱され、蛍光X線(B)の本来の光路とは別の角度から、湾曲結晶(1)に入射したり、直接、検出器(2)に入り込んだりすると、不要なバックグランドとなるので、空気による散乱を防いで分解能を高めることもできる。また、延長管をもうけることは、同時に、特に管の材質が金属などである場合、入射X線(A)等に起因する強い散乱光が、外側から分光光路に入り込むのをガードし、バックグランドとなることを防ぐ効果もある。
【0062】
なお、図7の例では、試料(3)と湾曲結晶(1)との間および湾曲結晶(1)と検出器(2)との間の両方に真空パス延長管(10a)(10b)による真空パスが設けられているが、前者のみ、もしくは後者のみに真空パスを設けるようにしてもよいことは言うまでもない。
【0063】
[7.2次元湾曲結晶]
ところで、この出願の発明において用いる湾曲結晶については、上述の[1.湾曲結晶]にて、結晶面を半径2Rの曲率で曲げてなるヨハン型湾曲結晶、および、さらに表面を半径Rの円柱曲面に削ってなるヨハンソン型湾曲結晶を例示しているが、これ以外にも、2次元湾曲した結晶も使用可能である。
【0064】
この2次元湾曲結晶は、半径2Rの曲率で曲げた結晶を、さらにその曲げの方向に直交する方向にも若干曲げたものであり、これによって、分光されたX線を、その回折面垂直方向への広がりを抑えて集光させることができるため、受光スリットおよび検出器に取り込むときのロスが少なくなり、さらに一層検出効率を上げる効果が得られるのである。
【0078】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明によって、エネルギー分解能および検出効率ともに優れ、超微量分析に極めて有用な、波長分散型の全く新しい全反射蛍光X線分析法および全反射蛍光X線分析装置が提供される。
【0079】
これにより、ナノテクノロジーやライフサイエンスなどの先端科学技術のさらなる超微量物質を対象とする新たな研究領域への展開が可能となる。たとえば、超微量物質の濃度レベルを制御した先端材料・デバイスの開発は、この出願の発明の重要な応用分野である。電子産業においては、シリコンウェハ表面の超微量物質による汚染を分析・管理する技術が次期超高集積回路の開発において決定的に重要であり、これまでは256メガビッド〜1ギガビットのDRAM開発に対応した汚染評価までが限界であったが、この出願の発明によって今後は1テラビットのDRAM開発に対応可能である。材料科学技術においては、対象とする研究領域の微小化が進んでおり、その探求の重要かつ必須のツールとしての超微量物質の役割評価にもこの出願の発明は適用可能である。さらには、大気・土壌・水の環境汚染レベルの評価や環境ホルモンの本題、あるいは宇宙塵等、地球外からの物質に含まれる超微量物質についての研究、生体の特定の部位に存在する超微量物質の濃度変化と代謝・疾病等の関連についての研究、宇宙・航空機事故等や犯罪現場の遺留品や芸術文化遺産の分析等、測定試料の量が限られる貴重試料の分析など、様々な分野への応用が可能なのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】この出願の発明の全反射蛍光X線分析装置を説明するための図である。
【図2】この出願の発明の全反射蛍光X線分析装置の一例を示した概略構成図である。
【図3】検出効率およびエネルギー分解能とローランド円半径Rとの関係を例示した図である。
【図4】(a)(b)は、各々、湾曲結晶による集光光学系を説明するための図である。
【図5】この出願の発明の全反射蛍光X線分析装置の別の一例を示した概略構成図である。
【図6】(a)(b)は、各々、湾曲結晶の配置例を説明するための図である。
【図7】この出願の発明の全反射蛍光X線分析装置のさらに別の一例を示した概略構成図である。
【図10】従来の全反射蛍光X線分析装置を説明するための図である。
【図11】試料上のX線照射領域を所望の幅の線状に制限する方法の一例を示した図である。
【符号の説明】
1 湾曲結晶
2 検出器
3 試料
4 基板
5 真空チャンバ
6 入射スリット
7 受光スリット
8 ローランド円
9 コリメータ
10a、10b 真空パス延長管
100 全反射蛍光X線分析装置
200a、200b KBミラー
300 クリーンブース
400 実験ハッチ
A 入射X線
B 蛍光X線

Claims (17)

  1. 全反射条件またはその近傍において試料から放出される蛍光X線の分光を湾曲結晶により行うこと、湾曲結晶として、ローランド円半径Rが120mm以下のものを用いること、及び、試料上の30μm平方以下の領域から発生する蛍光X線に限定して分光することを特徴とする全反射蛍光X線分析法。
  2. 全反射条件またはその近傍において試料から放出される蛍光X線の分光を湾曲結晶により行うこと、湾曲結晶として、ローランド円半径Rが120mm以下のものを用いること、及び、試料上の、ローランド円の面と垂直な方向に平行に延び、かつ30μm幅以下の線状の領域から発生する蛍光X線に限定して分光することを特徴とする全反射蛍光X線分析法。
  3. 湾曲結晶として、ローランド円半径Rが90mm〜120mmのものを用いる請求項1または2の全反射蛍光X線分析法。
  4. 全反射条件またはその近傍において試料から放出される蛍光X線を分光する湾曲結晶が備えられていて、蛍光X線が湾曲結晶により分光されて受光スリットを通して検出器で測定される全反射蛍光X線分析装置であって、湾曲結晶が、ローランド円半径Rが120mm以下のものであり、試料上の30μm平方以下の領域から発生する蛍光X線に限定して分光するようになっていることを特徴とする全反射蛍光X線分析装置。
  5. 全反射条件またはその近傍において試料から放出される蛍光X線を分光する湾曲結晶が備えられていて、蛍光X線が湾曲結晶により分光されて受光スリットを通して検出器で測定される全反射蛍光X線分析装置であって、湾曲結晶が、ローランド円半径Rが120mm以下のものであり、試料上の、ローランド円の面と垂直な方向に平行に延び、かつ30μm幅以下の線状の領域から発生する蛍光X線に限定して分光するようになっていることを特徴とする全反射蛍光X線分析装置。
  6. 湾曲結晶のローランド円半径Rが90mm〜120mmである請求項4または5の全反射蛍光X線分析装置。
  7. 検出器として湾曲結晶からの蛍光X線を計数するYAP:Ceシンチレーション検出器が備えられている請求項4ないし6のいずれかの全反射蛍光X線分析装置。
  8. 試料と湾曲結晶との距離、湾曲結晶と受光スリットおよび検出器との距離、湾曲結晶の回転角度、ならびに、受光スリットおよび検出器が搭載されたアーム部の回転角度の4軸が制御可能である請求項4ないし7のいずれかの全反射蛍光X線分析装置。
  9. 入射X線の試料上の照射領域が30μm幅以下である請求項4ないし8のいずれかの全反射蛍光X線分析装置。
  10. 試料と湾曲結晶との間に蛍光X線パスを限定するコリメータが設けられている請求項4ないし9のいずれかの全反射蛍光X線分析装置。
  11. 試料と湾曲結晶との間に蛍光X線パスを限定する円筒状または円錐筒状のコリメータが設けられている請求項4の全反射蛍光X線分析装置。
  12. 分光結晶が見込む試料上の範囲が30μm幅以下に制限されている請求項5に記載の全反射蛍光X線分析装置。
  13. 試料と湾曲結晶との間にローランド円に平行な薄板群から形成されたソーラースリットが設けられている請求項4ないし9のいずれかの全反射蛍光X線分析装置。
  14. 湾曲結晶の回転軸が、入射X線の試料上の照射領域の長辺方向に対し平行である配置となっている請求項4ないし13のいずれかの全反射蛍光X線分析装置。
  15. 試料基板が、全反射配置を満たす条件で、その観察面が入射X線ビームの直交断面の長辺軸と平行となるように配置され、且つ、入射X線ビームが幅250μmのビームであって、湾曲結晶が、試料基板をその観察面に対して6.9°の角度から見込むように配置されている請求項4ないし14のいずれかの全反射蛍光X線分析装置。
  16. 試料と湾曲結晶との間および湾曲結晶と受光スリットとの間のいずれか一方もしくは両方に、真空パスが設けられている請求項4ないし15のいずれかの全反射蛍光X線分析装置。
  17. 湾曲結晶が、半径2R(Rはローランド円半径)の曲率で曲げ、さらにその直交方向にも曲げられているものである請求項4ないし16のいずれかの全反射蛍光X線分析装置。
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