JPH10121775A - 制震用オイルダンパ - Google Patents

制震用オイルダンパ

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JPH10121775A JP28380496A JP28380496A JPH10121775A JP H10121775 A JPH10121775 A JP H10121775A JP 28380496 A JP28380496 A JP 28380496A JP 28380496 A JP28380496 A JP 28380496A JP H10121775 A JPH10121775 A JP H10121775A
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直幹 丹羽
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元一 高橋
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 制震用オイルダンパについて、特に風荷重等
に対するオイルダンパ小振幅時の減衰性能の低下を、効
果的にかつ効率良く改善する。 【解決手段】 耐震要素を介して構造物の柱梁架構内に
設置される制震用オイルダンパについて、アキュムレー
タ18による初期圧を通常のオイルダンパに比べかなり
高い値である10kg/cm2以上に設定する。初期圧を10
kg/cm2以上に設定しておくことで、剛性を低下させる原
因である空気をあらかじめつぶすことができ、作動油の
圧縮率βを低く抑え、微小振幅レベルから所期の効果が
得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本願発明は、風や地震による
構造物の振動を抑制するために、構造物の柱梁架構内に
耐震要素を介して設置される制震用オイルダンパに関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】特開平4−371679号公報には、受
動型の制震構造物を実現するための高減衰装置として、
減衰性能を高めたシリンダー形式のオイルダンパが記載
されている。
【0003】上記オイルダンパは、構造物の柱梁架構内
に耐震要素を介して設置し、これを構造物内に適切に配
置することで、地震や風等の振動外力による構造物の応
答について、高い減衰性を与え、振動を低減することが
できる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】オイルダンパを構造物
の柱梁架構内に耐震要素を介して設置する場合におい
て、再現期間1年程度の風によるダンパの振幅は小さな
ものである。これについて、高層建物モデルで行ったシ
ミュレーション結果は以下の通りである。
【0005】図2は対象建物の骨組の水平断面図、図3
は鉛直断面図であり、オイルダンパが合計80台(1階
から16階の各階4構面に、1階から4階は1構面に2
台ずつ、5階から16階は1構面に1台ずつ)設置され
ている。なお、図中、符号10はオイルダンパ、符号A
はオイルダンパを設置した構面を示す。
【0006】この建物の想定される再現期間1年の風荷
重によるオイルダンパの発生減衰力を示したものが図4
である。図4において、(a) は16階、(b) は10階、
(c)は4階のそれぞれオイルダンパ1台の発生減衰力を
示している。なお、使用したオイルダンパのピストン面
積は250cm2 、ストロークは6cmであり、ピストン面
積から、図4の発生減衰力の最大値1.0tは内圧で4
kg/cm2ということになる。
【0007】オイルダンパの力学モデルは、ダッシュポ
ットとバネが直列に配置されたマックスウェル型モデル
となる。このうち、バネは油の圧縮率βに依存し、この
バネが低下すると図5に示すように構造物に付加される
減衰定数h1 が低下する。これにより振幅が大きな状態
で期待できるオイルダンパの振動低減効果が損なわれ
る。
【0008】図5は複素固有値解析によって求まる1次
振動成分に関する減衰定数h1 について、バネの低下が
ない場合(実線)に対し、バネの低下によりダンパ剛性
が1/2、1/3になったときの減衰定数(点線)を示
したもので、特に減衰係数の大きい範囲ではダンパ剛性
の低下により減衰定数h1 も低下する。
【0009】このことは、実際の建物を用いた振動実験
によっても確認されている。図6は上記の高層建物での
実験結果を示したもので、オイルダンパの設置により減
衰定数Δhが約2.2%増加している。しかし、バネの
低下、すなわちダンパ剛性の低下がない場合、解析上
は、6%の付加減衰(Δh)が確保されることになる。
【0010】オイルダンパでは、油の圧縮率βが気泡混
入量a(%)により影響を受けるため、特に微小振幅で
は剛性低下が生じる。次式(1) は混合流体の平均圧縮率
β’を求める式である。
【0011】 β’=β+a(P0 /P−β)/100 … (1) ここで、P0 は大気圧、Pは圧力である。
【0012】十分に空気を除去すれば、気泡混入量aを
0.1%程度まで減少させることができるが、それでも
油の平均圧縮率β’は図7のように減少する。なお、図
7は初期圧を3kg/cm2に設定した状態であり、通常、オ
イルダンパは1(大気開放)〜5kg/cm2に設定されてい
る。
【0013】本願発明は制震用オイルダンパにおける上
述のような問題、特に風荷重等に対するオイルダンパ小
振幅時の減衰性能の低下を、効果的にかつ効率良く改善
することを目的としたものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】本願発明は、構造物の柱
梁架構内に耐震要素を介して設置される制震用オイルダ
ンパにおいて、通常のオイルダンパで1〜5kg/cm2程度
に設定されているアキュムレータによる初期圧を10kg
/cm2以上に設定してあることを特徴とするものである。
【0015】これは、本願発明では正常な状態における
オイルダンパの通常の下限値が10kg/cm2以上であるこ
とを意味し、地震や風等の振動外力が入力され、オイル
ダンパが高減衰装置として機能している際にはオイルダ
ンパの内圧が上昇する。
【0016】なお、この場合のオイルダンパの内圧の上
昇は、ピストン面積の大小によっても異なるが、初期圧
を通常の1〜5kg/cm2程度に設定した場合に比べ、同程
度の余裕をみると装置性能として必要とされる上限値も
大きくなる。したがって、アキュムレータもそれに応じ
た性能のものを用いたり、バネによって初期圧を調整す
る場合にはバネについても作動範囲を十分カバーできる
ようなバネ値を有するものに交換することが必要となる
場合もある。
【0017】
【発明の実施の形態】図1は本願発明の制震用オイルダ
ンパ10の概要を示したもので、シリンダ11内に両ロ
ッド形式のピストン12が組み込まれている。ただし、
ピストンロッドは一方向のみシリンダ11から突出し、
その突出する側のロッド12aおよびシリンダ11の反
対側に、耐震要素または柱梁架構と連結するための取付
部15、16を設けている。
【0018】高減衰、高剛性を確保するための条件とし
ては、ピストン12移動方向と反対側の油圧室(14a
または14b)を負圧としないことが必要で、そのため
ピストン12a,12bに調圧弁17a、17bを設
け、移動油量が直接的に反対側の油圧室(14aまたは
14b)へ流れる構造としている。
【0019】また、作動中の油の圧縮を考慮して不足油
量を補償する必要があるので、補給用のアキュムレータ
18が必要となり、バイパス19にはチェック弁20
a、20bを設けている。さらに停止すると、油が元の
状態に戻る(膨張)ので、補償された油をアキュムレー
タ18に戻す必要があり、チェック弁20a、20bと
並列にオリフィス(絞り)21a、21bを設けてい
る。
【0020】本願発明では、このアキュムレータ18に
ついて、初期圧を通常のオイルダンパに比べかなり高い
値である10kg/cm2以上に設定している。
【0021】前述した図7は、通常の初期圧を3kg/cm2
に設定したオイルダンパにおける圧力Pと油の平均圧縮
率β’との関係を示したものであるが、図7における圧
力P=10kg/cm2に初期圧を設定した場合、本願発明の
圧縮率範囲は例えば10kg/cm2以上、14kg/cm2以下と
いった範囲になる。もちろん、初期圧は10kg/cm2より
大きく設定することもでき、また圧縮率範囲の上限はピ
ストン面積あるいは1台のオイルダンパ10の負担する
力等によっても変わってくる。
【0022】初期圧の設定方法は、アキュムレータ18
の構造により、種々の方法があるが、図に代表するよう
に初期圧をスプリング25で設定する場合には、作動域
が高圧側にずれる分、スプリング25としてバネ値の高
いものを用いることが望ましい。
【0023】また、初期圧は常時作用するシリンダ内の
油圧となるため、あまり高い値に設定すると油漏れに対
するシール性を劣化させる。シール性からは、50kg/c
m2以下の初期圧とすることが好ましい。
【0024】
【発明の効果】制震用オイルダンパについて、アキュム
レータにより初期圧を10kg/cm2以上に設定しておくこ
とで、作動油の圧縮率βの増加率の大きい領域を最初か
ら越えることができる。つまり、初期圧により剛性を低
下させる原因である空気をあらかじめつぶすことによ
り、微小振幅レベルから所期の効果が発揮できる。
【0025】気泡混入量を減少させることには限界があ
り、調整が難しくなるのに対し、効率がよく、また確実
な効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の制震用オイルダンパの概念図であ
る。
【図2】制震用オイルダンパの高層建物における配置例
を示す水平断面図である。
【図3】制震用オイルダンパの高層建物における配置例
を示す鉛直断面図である。
【図4】図2、図3の高層建物における再現期間1年の
風荷重によるオイルダンパの発生減衰力を示したもの
で、(a) は16階、(b) は10階、(c) は4階のそれぞ
れオイルダンパ1台の発生減衰力を示すグラフである。
【図5】ダンパ剛性の低下と構造物に付加される減衰定
数h1 の低下の関係を示すグラフである。
【図6】図2、図3の高層建物におけるオイルダンパの
設置により減衰定数Δhの増加に関する実験結果を示す
グラフである。
【図7】初期圧を3kg/cm2に設定した場合の圧力Pと油
の平均圧縮率β’との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
A…オイルダンパを設置した構面、1…高層建物、2…
柱、3…梁、4…ブレース、10…高減衰装置、11…
シリンダ、12…ピストン、12a,12b…ピストン
ロッド、14a,14b…油圧室、15、16…取付
部、17a,17b…調圧弁、18…アキュムレータ、
19…バイパス、20a,20b…チェック弁、21
a,21b…オリフィス、24…シール、25…スプリ
ング

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 構造物の柱梁架構内に耐震要素を介して
    設置される制震用オイルダンパにおいて、アキュムレー
    タによる初期圧を10kg/cm2以上に設定してあることを
    特徴とする制震用オイルダンパ。
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