JPH10110300A

JPH10110300A - 鋼材の表面清浄化方法および鋼材

Info

Publication number: JPH10110300A
Application number: JP26299596A
Authority: JP
Inventors: Kagehiro Kageyama; 景弘影山; Minoru Takuwa; 実多久和
Original assignee: Hitachi Metals Ltd
Current assignee: Proterial Ltd
Priority date: 1996-10-03
Filing date: 1996-10-03
Publication date: 1998-04-28

Abstract

(57)【要約】【課題】炭化物を多量に含む鋼を、炭化物の脱落やピ
ットの発生を抑制しつつ高生産性にてスケールや潤滑剤
等表面付着物の除去を可能とする表面清浄化方法とそれ
による表面性状が優れた鋼材を提供する。【解決手段】塩素濃度０．１５ｍｏｌ／ｌ以上と腐食
抑制剤を添加した液で電解表面清浄化処理する。清浄化
された表面におけるＣｒ、Ｍｏ、ＶおよびＷの１種また
は２種以上の炭化物の面積率が、前記鋼材の内部の前記
清浄化作用を受けない断面におけるＣｒ、Ｍｏ、Ｖおよ
びＷの１種または２種以上の炭化物の面積率に対する比
が０．５以上であることを特徴とする鋼材である。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は圧延鋼材や引抜鋼材
等のスケールや潤滑剤等の付着物を除去する鋼材の表面
清浄化の技術に属し、特に炭化物を多量に含む鋼材の電
解法による表面清浄化を行う時に生じ易い表面の炭化物
の脱落およびピットの発生を防止または抑制する鋼材の
表面清浄化方法、およびこれにより得られる表面性状に
優れた鋼材の技術に属する。

【０００２】

【従来の技術】鋼材の熱間圧延時または冷間圧延や引抜
きの後に行う焼鈍時に発生するスケールまたは引抜き等
に伴う潤滑剤等の付着物を除去する方法としては、一般
に塩酸、硫酸等の酸による酸洗や電解による表面清浄化
が用いられている。このうち、特に電解によって表面清
浄化を行う方法としては、鋼線材の電解脱スケールにお
ける酸性電解方法(特公昭６０−４７９１７号)や線条材
の電解酸洗い方法(特公平５−４８３１６号)、ステンレ
ス冷延・焼鈍鋼帯の脱スケール方法(特公平５−２７５
９号)等の提案がされているが、これらの提案において
処理される材料は、炭素鋼（特公昭６０−４７９１７
号）、軟鋼、１〜９％Ｃｒ低合金鋼、ステンレス鋼（特
公平５−４８３１６号）、ＳＵＳ４３０、ＳＵＨ４０９
（特公平５−２７５９号）であり、いずれも炭素含有量
（Ｃ量）が低いステンレス鋼や炭素含有量が多くてもＣ
ｒ、Ｍｏ、Ｖ、Ｗの低い低合金鋼を主たる対象としてい
る。

【０００３】前記に挙げられたＣ量が低く、Ｃｒ、Ｍ
ｏ、Ｖ、Ｗ等を多く含有しない鋼に関しては組織中の炭
化物量および固溶している元素量も少ない。そのために
焼鈍時に発生したスケールを比較的容易に電解によって
除去することが可能であるが、Ｃ量が高く、Ｃｒ、Ｍ
ｏ、Ｖ、Ｗ等を多く含有する鋼の電解による表面清浄化
方法については、電解時における表面炭化物の脱落が発
生するために、酸浴中での電解酸洗および電解整面処理
は不適当であった。そこで本発明者らはＣ量が高く、Ｃ
ｒ、Ｍｏ、Ｖ、Ｗ等を多く含有する鋼の電解による表面
清浄化方法について検討を行い、電解液中に塩素を適量
含有させることにより、炭化物の脱落を防止または抑制
して脱スケールすることが可能であることを見出し、鋼
材の表面清浄化方法および鋼材(特願平７−１２７３２
２号)として提案した。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかし、前記提案され
た方法を用いて電解による表面清浄化を行うと、表面炭
化物の脱落は抑制されるが、高生産性とするために電流
密度を上昇させて処理を行ったり酸濃度を高めたりする
と、鋼種によっては局所的に腐食が進み、鋼にピットが
発生することが分かり、その対策が強く望まれていた。
本発明の目的はかかる従来技術の欠点を解消し、炭化物
を多量に含む鋼を炭化物の脱落を抑制しつつピットの発
生を防止して高生産性にてスケールや潤滑剤等の表面付
着物の除去を可能とする表面清浄化方法とそれによる表
面性状が優れた鋼材を提供することを目的とする。

【０００５】

【課題を解決するための手段】Ｃｒ、Ｍｏ、Ｖ、Ｗ等の
炭化物を多量に含む鋼において、表面炭化物の脱落およ
び局所的なピットの発生を防止し、スケールおよび表面
に付着した潤滑油等を除去する方法について検討を重ね
た結果、塩素濃度０．１５ｍｏｌ／ｌ以上含有した電解
液に腐食抑制剤を添加させた液で電解表面清浄化処理す
ることにより、電流密度を高めるかもしくは酸濃度を高
めて処理を行った場合でも脱スケール後の表面炭化物の
脱落が無く、かつピットの発生も抑制できることを見出
した。即ち、本発明の第１は、重量％でＣ：０．５〜
２．５％、Ｃｒ：５％以上、かつＣｒ、Ｍｏ、Ｖおよび
Ｗの１種または２種以上を１０％以上含む鋼材の表面酸
化皮膜または表面付着物を除去する鋼材の表面清浄化方
法であって、前記表面清浄化の方法が塩素濃度：０．１
５ｍｏｌ／ｌ（リットル）以上と腐食抑制剤を含んだ電
解液により電解されるものであることを特徴とする鋼材
の表面清浄化方法である。

【０００６】本発明の清浄化方法において、添加される
腐食抑制剤がＣＳ基を含む腐食抑制剤の場合はその効果
が高い。また、本発明の第２は、上記の方法発明により
得られる、炭化物の脱落およびピットの発生による肌あ
れや耐摩耗性、耐衝撃性、耐疲労性の低下等の問題がな
い表面性状に優れた鋼材である。すなわち、第２発明は
重量％でＣ：０．５〜２．５％、Ｃｒ：５％以上、かつ
Ｃｒ、Ｍｏ、ＶおよびＷの１種または２種以上を含み、
かつ電解法により表面を清浄化された鋼材であって、そ
の前記清浄化された表面におけるＣｒ、Ｍｏ、Ｖおよび
Ｗの１種または２種以上の炭化物の面積率の、前記鋼材
の内部の前記清浄化作用を受けない断面におけるＣｒ、
Ｍｏ、ＶおよびＷの１種または２種以上の炭化物の面積
率に対する比が０．５以上であることを特徴とする鋼材
である。

【０００７】前述の本発明者らの提案の鋼材の表面清浄
化方法および鋼材(特願平７−１２７３２２号)により電
解液にＣｌイオンを含有させると、Ｃが高く、Ｃｒ、Ｍ
ｏ、Ｖ、Ｗ等を多量に含む鋼材の電解による表面清浄化
においても、表面炭化物の脱落が少ない脱スケールが可
能である。しかし、生産性を高めるには電解速度を早く
する必要があり、対応として電流密度を高くするか、も
しくは酸濃度を高くして処理すると、被処理材によって
は局所的に腐食が進展してピットが発生する。腐食抑制
剤はピットの発生を防止し、高い生産性を保ちつつ鋼材
の脱スケールを可能にする。また、上記の腐食抑制剤を
含む液による電解は本来、腐食抑制剤を含まない液で処
理してもピットを発生しない鋼材に対して悪影響を与え
ないことが証明されている。

【０００８】次に本発明の数値限定理由を述べる。本発
明における電解液中のＣｌは大部分が電離してＣｌイオ
ンとなっており、他が未電離のＣｌである。本発明で塩
素濃度は両者の合計を意味し、この濃度は電解液の組成
で重要な値である。前述のようにＣｌ恐らくＣｌイオン
の存在により、炭化物を多く含む鋼材に対して、電解に
よる表面清浄化中に炭化物の脱落を防止または抑制でき
る。その効果を得るためには塩素濃度が最低０．１５ｍ
ｏｌ／ｌ必要である。塩素濃度が０．１５ｍｏｌ／ｌ未
満では炭化物の脱落が生ずる。また、本発明に係る電解
液における腐食抑制剤は電解酸洗時に発生するピットの
防止に効果がある。特にＣＳ基を含んだ腐食抑制剤、例
えばチオ尿素、エチルチオ尿素等はＣＳ基のＳ原子およ
びアミノ基のＮ原子の鋼材表面への化学吸着の効果によ
り炭化物を多量に含む鋼材の電解表面清浄化時にピット
の発生防止により効果的に作用する。

【０００９】本発明が対象とする鋼材はＣ：０．５〜
２．５ｗｔ％、Ｃｒ：５ｗｔ％以上かつＣｒ、Ｍｏ、Ｖ
およびＷの１種または２種以上を１０ｗｔ％以上含むも
のであるが、その理由は、この範囲の組成の鋼材は炭化
物を多量に含み、また鋼種によっては相当大きな炭化物
をも含むため、前述のように電解による表面清浄化は炭
化物を脱落させるので、従来は酸洗程度しか表面清浄化
の工業的手段が確立されていなかったためである。本発
明の方法が適用できる具体的な実用鋼の例として、ＪＩ
Ｓ鋼で言えば、ＳＵＳ４４０Ａ、４４０Ｂ、４４０Ｃな
どに代表されるマルテンサイト系ステンレス鋼およびそ
の改良鋼、ＳＫＤ１、ＳＫＤ１１などに代表される合金
工具鋼およびその改良鋼などをあげることができる。な
お、被処理材には、前処理として、ショットブラスト等
のスケールブレーキングを適用するとスケールの剥離性
が向上し、使用電力を低下させ、コストの削減にもつな
がるので望ましい。

【００１０】本発明の鋼材は炭化物の電解表面清浄化処
理に伴う炭化物の脱落の程度を規定したものである。す
なわち、本発明の鋼材は、その電解表面清浄化処理した
面をその面に直角方向から見た時の全面積に対するＣ
ｒ、Ｍｏ、Ｖ、Ｗの１種または２種以上の炭化物の面積
が占める割合と、その鋼材を例えば研磨して新たに作り
出した鋼材内部の表面清浄化されていない面を前記処理
面と同様に見た時の全面積に対する前記元素の炭化物の
面積に占める割合との比が０．５以上の鋼材である。こ
の比が０．５未満であると、表面粗さの低下、錆の発生
傾向の増加を起こすほか、本来存在すべき炭化物が不足
することにより耐摩耗性、耐衝撃性、耐疲労性が低下
し、その鋼材の有用性を低下させる。本発明の方法発明
によれば、この比を０．５以上にすることが極めて容易
である。

【００１１】本発明で適当な腐食抑制剤は次のようなも
のがある。チオ尿素、エチルチオ尿素、ブチルチオ尿素
等のＮ置換アルキルチオ尿素、ジトリルチオ尿素、さら
に酢酸等が挙げられ、これらを単独、または複合して用
いることができる。

【００１２】

【発明の実施の形態】次に本発明の実施の形態を実施例
で示す。対象材料としては多種多量の炭化物を有する代
表鋼種としてＳＵＳ４４０Ｃ、ＳＫＨ５９、ＳＫＤ１１
を用いた。試料の化学成分を表１に示す。この内ＳＫＨ
５９はＣｒが５％未満であり、本発明の成分規定を満足
しないものである

【００１３】

【表１】

【００１４】これらの材料を熱間圧延、冷間圧延、焼鈍
の一連の工程によりSUS440Cは直径1ｍｍの線材に仕上
げ、SKH59およびSKD11は直径2.5ｍｍの線材に仕上げ
た。線材表面にはスケールや潤滑剤が付着している。こ
の試料を用いて図１に示す間接通電方式の連続電解実験
装置により種々の電解液、電解条件にて実験を行い、従
来の硫酸、Na₂SO₄中性塩浴および腐食抑制剤のない塩酸
浴による場合との比較を行った。尚、スケール残存の確
認は×２４の拡大鏡を用いて行い、炭化物脱落状況およ
びピットの発生については走査電子顕微鏡を用いて行っ
た。

【００１５】(実施例１)SUS440Cを種々の電解液および
腐食抑制剤を用いて電解テストを行った。その結果を表
２に示す。本発明例はいずれも脱スケール状況は良好で
あり、かつ処理後の肌面において炭化物脱落はなく、ピ
ットの発生は認められないか少量である。一方、比較例
も脱スケール状況は良好であるもののNo.11、12、14、1
5は腐食抑制剤が添加されていないためにピットの発生
が激しく、またNo.12、13、15はClを含まないために炭
化物が多量に脱落しており、このうちNo.13はピット発
生も激しく起こるのでいずれも好ましくない。

【００１６】

【表２】

【００１７】(実施例２)SKH59を種々の電解液および腐
食抑制剤を用いて電解テストを行った。その結果を表３
に示す。本実施例は腐食抑制剤の副作用について調べた
ものである。すなわち、実施例は表3のNo.11および14の
ように腐食抑制剤を含まない液で電解しても、本来ピッ
トが発生しないような材質に対して腐食抑制剤を含む液
で電解した場合の障害の有無を検証したものである。そ
の結果によると、本発明による電解液(腐食抑制剤含有)
は、比較電解液(腐食抑制剤不含)によるNo.11およびNo.
14と同様にスケール残存、表面炭化物脱落およびピット
発生の状況に対して障害を与えないことが分かる。な
お、No.12および13はClを含まないので炭化物の脱落が
激しく、これに伴ってピットの発生も激しいことが分か
る。

【００１８】

【表３】

【００１９】(実施例３)SKD11を種々の電解液および腐
食抑制剤を用いて電解テストを行った。その結果を表４
に示す。本発明例はいずれも脱スケール状態は良好であ
り、かつ処理後の肌面において炭化物脱落はなく、ピッ
トの発生は認められない。一方、比較例も脱スケール状
況は良好であるもののNo.11、12、14は腐食抑制剤が添
加されていないためにピットが激しく発生し、No.12、1
3は所定量のClを含まないために炭化物が多量に脱落し
ており、No.13はこれに伴ってピットの発生も激しく起
こるのでいずれも好ましくない。

【００２０】

【表４】

【００２１】

【発明の効果】以上、詳述した様に本発明によれば、
Ｃ：０．５〜２．５ｗｔ％、Ｃｒ：５ｗｔ％以上Ｍｏ＋
Ｖ＋Ｗ(添加しない元素は０として計算する)が５ｗｔ％
以上含む鋼材に対して、Ｃｌ濃度が０．１５ｍｏｌ／ｌ
以上かつ腐食抑制剤を含んだ電解液にて電解処理するこ
とにより、炭化物の脱落がなくてピットの発生が起こす
ことなく、高い生産性にて鋼の表面を清浄化することが
可能になった。また上記Ｃｌを腐食抑制剤を含む電解液
は本来ピットを発生しない鋼類に対して悪影響を与えな
い。

【図面の簡単な説明】

【図１】テストに使用した連続電解実験装置の断面図で
ある。

【符号の説明】

１陽極、２陰極、３電解液、４ワイヤー

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】重量％でＣ：０．５〜２．５％、Ｃｒ：
５．０％以上、かつＣｒ、Ｍｏ、ＶおよびＷの１種また
は２種以上を１０％以上含む、鋼材の表面酸化皮膜また
は表面付着物を除去する鋼材の表面清浄化方法であっ
て、前記表面清浄化の方法が塩素濃度：０．１５ｍｏｌ
／ｌ以上と腐食抑制剤を含んだ電解液により電解される
ものであることを特徴とする鋼材の表面清浄化方法。
【請求項２】腐食抑制剤はＣＳ基を含有するものであ
る請求項１の鋼材の表面清浄化方法。
【請求項３】重量％でＣ：０．５〜２．５％、Ｃｒ：
５％以上かつＣｒ、Ｍｏ、ＶおよびＷの１種または２種
以上を含み、かつ電解法により表面を清浄化された鋼材
であって、その前記清浄化された表面におけるＣｒ、Ｍ
ｏ、ＶおよびＷの１種または２種以上の炭化物の面積率
が、前記鋼材の内部の前記清浄化作用を受けない断面に
おけるＣｒ、Ｍｏ、ＶおよびＷの１種または２種以上の
炭化物の面積率に対する比が０．５以上であることを特
徴とする鋼材。
【請求項４】電解法は腐食抑制剤を含むものである請
求項３の鋼材。