JP3370618B2 - ステンレス鋼冷間圧延鋼帯の酸洗方法 - Google Patents
ステンレス鋼冷間圧延鋼帯の酸洗方法Info
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圧延鋼帯の酸洗方法に関し、特に良好な表面性状が要求
されるステンレス鋼冷間圧延鋼帯の酸洗方法に関する。
には焼鈍後、スケールを除去するために酸洗処理が施さ
れる。上記した酸洗ラインの構成は、酸洗槽の前にソル
トバス(塩浴槽)または中性塩電解槽を備え、フェライ
ト系ステンレス鋼帯、マルテンサイト系ステンレス鋼帯
の場合は、硝酸酸洗槽により酸洗処理が施され、オース
テナイト系ステンレス鋼帯の場合は、硝酸と弗酸との混
酸槽およびその後工程である硝酸酸洗槽により酸洗処理
が施される。
圧延鋼帯に比較して特に表面性状の良さが求められる。
このため、これらの酸洗の条件を適正に制御することに
より、表面へのスケールの残存をなくし、良好な表面性
状の鋼帯を得るべく、種々の技術が提案されている。
を含有するフェライト系ステンレス鋼帯について、弗酸
濃度が20〜160g/l、硝酸濃度が40〜200g/lの混酸で、Fe
イオン濃度が30g/l 以下の範囲で酸洗することにより、
スケールの残存と過酸洗によるエッチピットが防止でき
る技術が開示されている。しかし、上記混酸によるデス
ケーリングの後、最終処理として硝酸による不動態化処
理を行うと、ステンレス鋼帯の表面にスマットと呼ばれ
る反応物が付着し、鋼帯表面の汚れおよび模様の原因と
なる。
著しく損ね、表面光沢度の劣化により品質不良率が増大
する問題があった。また、上記の汚れおよび模様は、同
一の浴中で再酸洗を行っても十分に除去することができ
ず、さらに再付着が懸念されるため、鋼帯の光沢度改善
として表面研削が必要となり、多大なコストを要すると
いう問題点があった。
来技術の問題点を解決し、特に良好な表面光沢度が得ら
れるステンレス鋼冷間圧延鋼帯の酸洗方法を提供するこ
とを目的とする。
鋼冷間圧延鋼帯を酸洗する硝酸槽におけるスマット汚れ
の発生メカニズムについて調査した結果、硝酸水溶液中
の鉄イオン濃度を一定の範囲内に制御することにより、
ステンレス鋼帯表面へのスマットの付着量が著しく減少
でき、ステンレス鋼帯表面の光沢度を改善することが可
能であることを見出した。
の含有量が15wt%以下であるマルテンサイト系ステンレ
ス鋼などのステンレス鋼において顕著であることを見出
した。本発明は、これらの知見に基づいてなされたもの
である。すなわち、本発明は、ステンレス鋼の冷間圧延
鋼帯を焼鈍した後、硝酸電解酸洗を行うステンレス鋼冷
間圧延鋼帯の酸洗方法において、硝酸電解酸洗槽内の硝
酸水溶液の鉄イオン濃度を2.0wt %以下に制御すること
を特徴とするステンレス鋼冷間圧延鋼帯の酸洗方法であ
る。
鋼帯を焼鈍した後、中性塩電解槽で脱スケールを行い、
得られた鋼帯を硝酸酸洗槽又は硝酸電解酸洗槽で酸洗す
るか、もしくは、上記焼鈍後、中性塩電解槽で脱スケー
ルを行い、得られた鋼帯を硝酸・弗酸混酸槽で酸洗した
後、硝酸酸洗槽又は硝酸電解酸洗槽で酸洗するにあた
り、硝酸酸洗槽又は硝酸電解酸洗槽内の硝酸水溶液の鉄
イオン濃度を2.0wt %以下に制御することを特徴とする
ステンレス鋼冷間圧延鋼帯の酸洗方法である。
15wt%以下のステンレス鋼冷間圧延鋼帯の酸洗方法とし
て用いられ、さらに好ましくは、Cr含有量が15wt%以下
でかつC含有量が0.1 wt%以上のステンレス鋼冷間圧延
鋼帯の酸洗方法として用いられる。
する。図2に、ステンレス鋼冷間圧延鋼帯の焼鈍、酸洗
ラインの一例を工程図(側面図)で示す。なお、図2に
おいて、1はペイオフリール、2は溶接機、3は脱脂装
置、4は入側ルーパ、5は焼鈍炉、6は冷却装置、7は
酸洗設備、8は出側ルーパ、9はシャー、10はテンショ
ンリール、11は鋼帯、fは鋼帯の搬送方向を示す。
酸洗設備7の工程図(側面図)の一例を示す。なお、図
3において、12は中性塩電解槽、13は硝酸・弗酸混酸
槽、14は硝酸電解酸洗槽である硝酸酸洗槽、15はブラシ
スタンドを示し、その他の符号は図2と同一の内容を示
す。
硝酸電解酸洗液に比較して、スケールの除去などの酸洗
能力が優れており、硝酸・弗酸混酸槽13においてはスマ
ットは発生しない。しかし、酸洗ラインの最後に不動態
化処理が施される硝酸酸洗槽14では、Feイオンの溶解度
が上記の混酸に比較して小さいことから、スマットの発
生、鋼帯への付着が生じる。
は、硝酸酸洗槽の硝酸水溶液のFeイオン濃度である。す
なわち、Feイオン濃度が低い程、スマットの発生量を抑
制することが可能である。特にその効果が顕著なのは、
後記する実施例に示されように、2.0 wt%以下のFeイオ
ン濃度範囲である。
超えると、硝酸水溶液中のFeイオンの溶解度が小さいた
め、FeイオンがFeの水酸化物を主成分として溶液中に析
出し易くなる。析出した水酸化物は、スマットとして硝
酸酸洗槽中のステンレス鋼帯表面に付着し易く、鋼帯の
表面に汚れまたは模様として残留する。
ためには、硝酸酸洗槽内の硝酸水溶液のFeイオン濃度を
2.0 wt%以下に制御する必要がある。該Feイオン濃度
は、より好ましくは、1.5 wt%以下である。本発明にお
いては、例えば、硝酸酸洗槽14内の硝酸水溶液のFeイオ
ン濃度を、連続的あるいはバッチ的に機器分析などによ
り分析し、その結果に基づき、硝酸水溶液の入れ替えあ
るいは新硝酸による希釈を行うことによって、Feイオン
濃度を2.0 wt%以下に制御することができる。
特に限定しないが、50g/l 以上が好ましい。50g/l 未満
の場合、Feイオンの溶解度が低いためスマットが発生し
易くなる他、酸洗能力が十分ではなく、不動態皮膜の形
成も十分ではない。逆に、硝酸濃度が高すぎると、硝酸
酸洗槽の排気処理、装置の腐食などの設備上および工程
上の問題が発生する。
酸濃度は、より好ましくは、80〜120g/lの範囲である。
硝酸酸洗槽14の硝酸水溶液の液温は、酸洗効率などに影
響を及ぼす因子である。液温が40℃未満の場合、酸洗が
不十分となり、不動態皮膜の形成も十分ではなく、逆
に、液温が60℃を超える場合、硝酸酸洗槽の排気処理な
どの設備上の問題が生じる。
は40〜60℃とすることが好ましい。本発明におけるステ
ンレス鋼冷間圧延鋼帯の鋼材としては、オーステナイト
系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、マルテン
サイト系ステンレス鋼のいずれにも適用することができ
る。一方、その原因は明確ではないが、ステンレス鋼の
成分により、スマットの発生量は異なり、Cr含有量が15
wt%以下と少なく、C含有量が0.1 wt%以上と多い程、
スマットの発生量が増加する。
が15wt%以下のステンレス鋼冷間圧延鋼帯、さらにはCr
含有量が15wt%以下でかつC含有量が0.1 wt%以上のス
テンレス鋼冷間圧延鋼帯の硝酸酸洗に特に効果的であ
る。また、本発明においては、硝酸酸洗槽が、硝酸電解
酸洗槽であることが好ましい。
かった鋼帯表面のSi酸化物層を電解除去するためであ
る。上記した硝酸電解酸洗槽における電流密度は、200
〜1000mA/cm2が好ましい。これは、電流密度が200mA/cm
2 未満の場合、Si酸化物層の除去が困難となり、電流密
度が1000mA/cm2超えの場合、過電解により表面にエッチ
ピットが発生するためである。
2、図3に例示するように、焼鈍炉の後工程として、中
性塩電解槽、硝酸・弗酸混酸槽および硝酸電解酸洗槽
を、該工程順序で配設するか、もしくは、焼鈍炉の後工
程として、中性塩電解槽および硝酸電解酸洗槽を、該工
程順序で配設し、ステンレス鋼の冷間圧延鋼帯を焼鈍し
た後、中性塩電解槽で予備的に脱スケールを行い、得ら
れた鋼帯を硝酸・弗酸混酸槽で酸洗した後、硝酸電解酸
洗槽で酸洗するか、もしくは上記焼鈍後、中性塩電解槽
で予備的に脱スケールを行い、得られた鋼帯を硝酸電解
酸洗槽で酸洗することが特に好ましい。
有量が0.1 wt%以上のマルテンサイト系ステンレス鋼冷
間圧延鋼帯などのステンレス鋼冷間圧延鋼帯を、焼鈍
後、中性塩電解槽で予備的に脱スケールを行い、必要に
応じて硝酸・弗酸混酸槽で酸洗した後、硝酸電解酸洗槽
内の硝酸水溶液の鉄イオン濃度を2.0wt %以下に制御し
た条件下で硝酸電解酸洗することによって、中性塩電解
槽、硝酸・弗酸混酸槽による脱スケールおよび硝酸電解
酸洗槽におけるスマットの発生を防止した優れた仕上酸
洗の両者の相乗効果によって、極めて良好な表面光沢度
を有するステンス鋼冷間圧延鋼帯を製造することができ
るためである。
的に説明する。 (実施例1)マルテンサイト系ステンレス鋼であるSUS4
20J2(13Cr-0.3C) の冷間圧延鋼帯を、800 ℃で焼鈍後、
図3に示す中性塩電解槽12において予備的に脱スケール
を行い、その後、硝酸電解酸洗槽14により酸洗処理を行
った。
弗酸混酸槽13をバイパスした。硝酸電解酸洗槽14の硝酸
濃度:100g/l、酸洗液液温:50℃、電流密度:400mA/cm
2 の条件下で、硝酸水溶液のFeイオン濃度を0〜4.0wt
%の範囲で変化させ、鋼帯表面へのスマットの付着量に
及ぼすFeイオン濃度の影響を調査した。鋼帯表面へのス
マットの付着量の評価は、酸洗後の鋼帯の表面に対し20
°の角度で光を照射し、160 °の角度で反射してくる光
の反射量に基づき光沢度を測定し、光沢度で評価した。
着量は少なく、良好な表面性状であると言える。得られ
た結果を図1に示す。本発明におけるFeイオン濃度が2.
0 wt%以下の領域では、スマットの発生が抑制され、鋼
帯表面の光沢度が700(Gs20°) 以上の極めて良好な表面
性状が得られた。
サイト系ステンレス鋼であるSUS420J1(13Cr-0.6C) の冷
間圧延鋼帯を、800 ℃で焼鈍後、図3に示す中性塩電解
槽12、硝酸・弗酸混酸槽13により酸洗を施し、仕上酸洗
として硝酸電解酸洗槽14により酸洗処理を行った。すな
わち、電流密度:400mA/cm2 の条件下、硝酸電解酸洗槽
の硝酸水溶液のFeイオン濃度、硝酸濃度および液温を表
1の範囲で変化させ、酸洗後の鋼帯の表面の光沢度を、
前記した実施例1の方法で測定し、下記評価基準に基づ
き評価した。
A〜Cの鋼帯について表面性状が良好であると評価し
た。 〔表面性状評価基準:〕 A:光沢度≧800(Gs20°) B:800(Gs20°) >光沢度≧750(Gs20°) C:750(Gs20°) >光沢度≧700(Gs20°) D:700(Gs20°) >光沢度 得られた結果を、製造条件と併せて表1に示す。
圧延鋼帯を本発明方法によって酸洗することによって、
スマットの付着がなく、良好な表面光沢度を有するステ
ンレス鋼冷間圧延鋼帯を製造することが可能となった。
さらに、本発明によれば、極めて良好な表面性状が得ら
れることから、次工程の表面研削が不要となり、工程の
簡易化が達成でき、製造コストの面から経済性にも優れ
ている。
酸洗後の鋼帯表面の光沢度との関係を示す相関図であ
る。
の一例を示す工程図(側面図)である。
設備の一例を示す工程図(側面図)である。
Claims (3)
- 【請求項1】 ステンレス鋼の冷間圧延鋼帯を焼鈍した
後、硝酸電解酸洗を行うステンレス鋼冷間圧延鋼帯の酸
洗方法において、硝酸電解酸洗槽内の硝酸水溶液の鉄イ
オン濃度を2.0wt %以下に制御することを特徴とするス
テンレス鋼冷間圧延鋼帯の酸洗方法。 - 【請求項2】 ステンレス鋼の冷間圧延鋼帯を焼鈍した
後、中性塩電解槽で脱スケールを行い、得られた鋼帯を
硝酸酸洗槽又は硝酸電解酸洗槽で酸洗するにあたり、硝
酸酸洗槽又は硝酸電解酸洗槽内の硝酸水溶液の鉄イオン
濃度を2.0wt%以下に制御することを特徴とするステン
レス鋼冷間圧延鋼帯の酸洗方法。 - 【請求項3】 ステンレス鋼の冷間圧延鋼帯を焼鈍した
後、中性塩電解槽で脱スケールを行い、得られた鋼帯を
硝酸・弗酸混酸槽で酸洗した後、硝酸酸洗槽又は硝酸電
解酸洗槽で酸洗するにあたり、硝酸酸洗槽又は硝酸電解
酸洗槽内の硝酸水溶液の鉄イオン濃度を2.0wt %以下に
制御することを特徴とするステンレス鋼冷間圧延鋼帯の
酸洗方法。
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1999
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