JPH10110032A - 改質されたポリイミドフィルム - Google Patents

改質されたポリイミドフィルム

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JPH10110032A
JPH10110032A JP26476196A JP26476196A JPH10110032A JP H10110032 A JPH10110032 A JP H10110032A JP 26476196 A JP26476196 A JP 26476196A JP 26476196 A JP26476196 A JP 26476196A JP H10110032 A JPH10110032 A JP H10110032A
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polyimide film
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誠一郎 高林
Takuji Takahashi
卓二 高橋
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Abstract

(57)【要約】 【課題】物性低下が少なく撥水性のポリイミドフィルム
を提供する。 【解決手段】フィルム全体として高弾性でポリイミドか
らなるフィルムであってフィルム表面の水滴接触角が8
0°以上で、有機基と結合したSiに基づくSiの表面
原子濃度が1%以上である改質されたポリイミドフィル
ム。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、高弾性で表面の
水滴接触角が80°以上で、撥水性のポリイミドフィル
ムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】通常の芳香族ポリイミドフィルムは、表
面の水滴接触角が約70°であり、撥水性が不十分であ
る。フィルム表面の撥水性が不十分であると、水により
フィルム表面に濡れが生じる(特に酸、アルカリ、顔料
を含む水溶液の場合にはフィルム表面に汚れが生じ
る。)ことになり好ましくない。このため、芳香族ポリ
イミドフィルムなどの基材表面に撥水性の樹脂を塗布し
て撥水性膜を形成することが知られている。撥水性樹脂
として、例えば、特開平4−246544号公報にはポ
リイミド−シロキサン−ブロック共重合体が記載されて
おり、特開平5−124199号公報にはフっ素化感光
性ポリイミドが記載されている。
【0003】しかし、これら公知の撥水性の樹脂は、ポ
リイミドフィルムとの密着性が良くなく、ポリイミドフ
ィルムの表面を活性化処理して撥水性の樹脂との密着性
を改良する必要があり、フィルム全体としてのコストア
ップおよび物性低下が免れなかったのである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】この発明の目的は、前
記の問題点を有しない撥水性のポリイミドフィルムを提
供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】すなわち、この発明は、
フィルム全体としてポリイミドからなる高弾性フィルム
であって、フィルムの少なくとも一つの表面において水
滴接触角が80°以上であるとともに有機基と結合した
Siに基づくSiの表面原子濃度が1%(重量%、以下
同じ)以上であることを特徴とする改質されたポリイミ
ドフィルムに関するものである。
【0006】この発明の改質されたポリイミドフィルム
は、好適には厚みが10〜125μmであり、引張弾性
率が500kg/mm2 以上、特に550〜1200k
g/mm2 、線膨張係数が25×10-6cm/cm/℃
以下、特に7×10-6〜25×10-6 cm/cm/
℃、吸水率が2.O%以下、特に0.2〜1.8%であ
る撥水性のポリイミドフィルムが好ましい。前記のポリ
イミドフィルムの水滴接触角が80°未満であると、撥
水性が不十分である。また、Siの表面原子濃度が1%
未満であると、フィルムの撥水性が大きくてしかも引張
弾性率が大きく線膨張係数の小さいポリイミドフィルム
を得ることが困難になる。また、Siの表面原子濃度が
1%以上であっても、有機基と結合したSiに基付くも
のでないとポリイミドフィルムの撥水性が不十分であ
る。この有機基と結合したSiは、好適にはポリイミド
シロキサンに基づくものである。さらに、フィルム全体
として高弾性でないと、電子部品や印刷部品などの用途
に使用が困難である。前記の高弾性ポリイミドフィルム
としては、いわゆる芳香族ポリイミドや芳香族ポリアミ
ド(エステル、あるいはエ−テル)イミドのフィルムも
含まれる。
【0007】この発明の改質されたポリイミドフィルム
は、好適には、高弾性の芳香族ポリイミドフィルムを与
えるポリアミック酸の有機極性溶媒溶液またはポリイミ
ド溶液に、フィルム表面に前記の水滴接触角を与えるポ
リイミドシロキサンを加え、得られた溶液を流延、乾燥
して自己支持性のフィルム状物を得、ついでさらに加熱
するなどしてポリイミドフィルムを形成する方法によっ
て、好適に製造することができる。この方法によって製
造されるポリイミドフィルムは特に耐磨耗性が良好であ
り好ましい。
【0008】あるいは、高弾性のポリイミドフィルムを
与えるポリアミック酸またはポリイミドの有機極性溶媒
溶液を流延、乾燥して自己支持性のフィルム状物を得、
このフィルム状物の表面に、前記の水滴接触角を与える
ポリイミドシロキサンの溶液を塗布した後、乾燥し、つ
いでさらに加熱するなどしてポリイミドフィルムを形成
する方法によっても好適に製造することができる。
【0009】前記の高弾性ポリイミドの構成単位である
芳香族テトラカルボン酸成分としては、剛直な分子構造
を有する芳香族テトラカルボン酸類、例えば3,3’,
4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,
3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、ピロメリッ
ト酸、それらの酸の二無水物、あるいはそれらの酸のエ
ステル、あるいはこれらと柔軟な分子構造を有する芳香
族テトラカルボン酸類、例えば、3,3’,4,4’−
ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’
−ジフェニルエ−テルテトラカルボン酸、ビス(3,4
−ジカルボキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,
4−ジカルボキシフェニル)プロパン、それらのハロゲ
ン化物(特にフッ素化物)や、その酸の二無水物、ある
いはその酸のエステル化物とを組み合わせて使用するこ
とができる。特に3,3’,4,4’−ビフェニルテト
ラカルボン酸二無水物30〜100モル%、特に70〜
100モル%と2,3,3’,4’−ビフェニルテトラ
カルボン酸二無水物0〜70モル%、特に0〜30モル
%とからなるものが好ましい。
【0010】前記のポリイミドの構成単位であるジアミ
ン成分としては、剛直な分子構造を有する芳香族ジアミ
ン、好適にはパラフェニレンジアミン30〜100モル
%と柔軟な分子構造を有する芳香族ジアミン(例えば、
主鎖中にO、メチレン、プロピレンなどのアルキレン
基、SO2 、Sなどの基を有する芳香族ジアミン)0〜
70モル%とからなるものが好ましい。
【0011】前記の高弾性のポリイミドフィルムを与え
るポリアミック酸またはポリイミドの有機極性溶媒溶液
は、例えば、前記の芳香族テトラカルボン酸、その酸二
無水物またはその酸のエステル、例えば3,3’,4,
4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と前記の芳
香族ジアミン、例えばパラフェニレンジアミンとをN,
N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリド
ン(ポリアミック酸の場合)やパラクロロフェノ−ル
(ポリイミドの場合)などのポリイミドフィルムの製造
に通常使用される有機極性溶媒中で、ポリアミック酸の
場合には、好ましくは10〜80℃で1〜30時間重合
して得られた、好適にはポリマ−の対数粘度(測定温
度:30℃、濃度:0.5g/100ml溶媒、溶媒:
N−メチル−2−ピロリドン)が1〜5、ポリマ−濃度
が15〜35重量%であり、回転粘度(30℃)が50
0〜4500ポイズであるポリアミック酸(イミド化
率:5%以下)溶液として得られる。
【0012】この溶液に、好適にはポリアミック酸10
0重量部に対して0.01〜1重量%の(ポリ)リン酸
エステルおよび/またはリン酸エステルのアミン塩など
のリン含有化合物および、ポリアミック酸100重量部
に対して0.1〜3重量部のコロイダルシリカのような
無機フィラ−(好適には平均粒径0.005〜2μm)
を添加してポリアミック酸溶液組成物を調製する。この
無機フィラ−の添加によりフィルム作製時にブロッキン
グの発生が防止できるので好ましい。
【0013】この発明の改質されたポリイミドフィルム
を製造する好適な一例である前記の方法により、ポリア
ミック酸の有機極性溶媒溶液に、ポリイミドシロキサン
を添加し、得られた溶液を流延、乾燥して自己支持性の
フィルム状物とする。
【0014】前記のポリイミドシロキサンとしては、前
記の芳香族テトラカルボン酸類(酸、その酸二無水物ま
たはその酸のエステル)と、ジアミノポリシロキサン1
0〜80モル%および前記の柔軟な分子構造を有する芳
香族ジアミン20〜90モル%からなるジアミン成分と
から得られるポリイミドシロキサンが好適に使用され
る。
【0015】前記のジアミノポリシロキサンとしては、
下記一般式(1)
【0016】
【化1】
【0017】(但し、式中のRは2価の炭化水素残基を
示し、R1 、R2 、R3 およびR4 は置換あるいは非置
換の低級アルキル基、またはフッ素、アルキル基などに
よる置換あるいは非置換のフェニル基を示し、nが3〜
60の整数を示す)で示されるジアミノポリシロキサン
が好適に使用される。
【0018】前記のジアミノポリシロキサンの具体的例
としては、ω,ω’−ビス(2−アミノエチル)ポリジ
メチルシロキサン、ω,ω’−ビス(3−アミノプロピ
ル)ポリジメチルシロキサン、ω,ω’−ビス(3−ア
ミノブチル)ポリジメチルシロキサン、ω,ω’−ビス
(4−アミノフェニル)ポリジメチルシロキサン、ω,
ω’−ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)ポリジ
メチルシロキサン、ω,ω’−ビス(3−アミノプロピ
ル)ポリジフェニルシロキサン等を好適に挙げることが
できる。これらは単独、あるいは2種以上を併用するこ
とができる。
【0019】前記の柔軟な分子構造を有する芳香族ジア
ミンとしては、例えば、ジフェニルスルホン系ジアミン
化合物、ジフェニルメタン系ジアミン、ジフェニルプロ
パン系ジアミン、ジフェニルチオエ−テル系ジアミン、
ビス(フェノキシ)ベンゼン系ジアミン、ビス(フェノ
キシフェニル)スルホン系ジアミン、ビス(フェノキシ
フェニル)ヘキサフルオロプロパン系ジアミン、ビス
(フェノキシフェニル)プロパン系ジアミンなどを挙げ
ることができる。これらは単独、あるいは2種以上を併
用することができる。
【0020】前記の柔軟な分子構造を有する芳香族ジア
ミンの具体例としては、1,3−ビス(3−アミノフェ
ノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキ
シ)ベンゼン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノ
キシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(3−
アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、ビス〔4−
(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフォン、ビス
〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフォン
などを好適に挙げることができる。
【0021】前記のポリイミドシロキサンは、好適には
次の方法で製造される。(1)芳香族テトラカルボン酸
成分とジアミノポリシロキサンおよび芳香族ジアミンの
ジアミン成分とを、略等モル使用して有機極性溶媒中で
連続的に温度15〜250℃で重合及びイミド化させて
ポリイミドシロキサンを得る方法。
【0022】(2)ジアミン成分を分けて、まず芳香族
テトラカルボン酸成分の過剰量とジアミノポリシロキサ
ンとを有機極性溶媒中で温度15〜250℃で重合及び
イミド化させて、平均重合度1〜10程度の末端に酸又
は無水物基を有するイミドシロキサンオリゴマ−を調製
し、別に芳香族テトラカルボン酸成分と過剰量の芳香族
ジアミンとを有機極性溶媒中で温度15〜250℃で重
合及びイミド化させて、平均重合度1〜10程度の末端
にアミノ基を有するイミドオリゴマ−を調製し、次いで
この両者を酸成分とジアミン成分とが略等モルになるよ
うに混合して温度15〜60℃で反応させて、更に温度
を130〜250℃に昇温してブロックタイプのポリイ
ミドシロキサンを得る方法。
【0023】(3)芳香族テトラカルボン酸成分とジア
ミノポリシロキサン及び芳香族ジアミン成分とを略等モ
ル使用して、有機極性溶媒中で先ず温度20〜80℃で
重合させて一度ポリアミック酸を得た後に、イミド化し
てポリイミドシロキサンを得る方法等がある。
【0024】前記のポリイミドシロキサンは前記(1)
〜(3)等いずれの方法で得られたものを使用してもよ
いが、できるだけ高分子量でイミド化率が高く、有機極
性溶媒に溶解させることができるものが好適である。
【0025】前記のポリイミドシロキサンには、他の樹
脂や添加剤等を加えて使用してもよい。例えば、樹脂と
しては、エポキシ樹脂、フェノ−ル樹脂、ポリアミド樹
脂、ポリエステル樹脂等が、添加剤としては、ジランカ
ップリング剤、チタンカップリング剤、無機フィラ−
(シリカ、アルミナ、タルク、マイカ、硫酸バリウム、
カ−ボン等)、有機顔料等が挙げられる。これらの添加
量は、物性の低下しない範囲で選択される。特にコロイ
ダルシリカをポリイミドシロキサン100重量部に対し
て0.1〜10重量部程度添加すると、改質ポリイミド
フィルムの巻き取り時にブロッキングが防止できるので
好ましい。
【0026】前記のポリアミック酸溶液あるいはポリイ
ミド溶液、好適にはポリアミック酸溶液に、前記のポリ
イミドシロキサンを添加し、得られた溶液組成物を製膜
用ド−プとして使用し、流延、製膜し、自己支持性の固
化フィルムを製造し、このフィルムを加熱してポリイミ
ドフィルムを製造する。ポリイミドシロキサンの添加量
は、ポリアミック酸(またはポリイミド)100重量部
に対して0.2〜8重量部が好ましい。添加する方法
は、ポリアミック酸の重合のどの段階でもよい。すなわ
ち、モノマ−の段階でもよく、ポリアミック酸の重合中
でも、重合終了後でもよい。ポリイミドシロキサンを直
接、重合溶液に添加してもよく、あるいは、予めポリイ
ミドシロキサンを溶剤に溶解しておきその溶液であるポ
リイミドシロキサン溶液を添加してもよい。この溶剤と
しては特に制限はないが前記の有機極性溶媒が好適に使
用される。
【0027】前記の自己支持性の固化フィルムは、例え
ば、前記のポリイミドシロキサンを含む製膜用ド−プ
を、好ましくは約150℃以下の流延温度、特に好まし
くは0〜120℃の流延温度で平滑な表面を有するガラ
ス板、金属製のドラムまたはベルトなどの支持体表面に
流延して前記溶液の薄膜を形成し、その薄膜を支持体上
で好ましくは約150℃以下の乾燥温度、特に好ましく
は20〜140℃程度の乾燥温度で、好ましくは約0.
05〜1時間乾燥する溶液流延法などの製膜法で形成さ
れる自己支持性の固化フィルムが使用できる。
【0028】また、前記のポリアミック酸の自己支持性
フィルムは、例えば、前述のポリイミドシロキサンを含
む高分子量の芳香族ポリアミック酸溶液組成物に、ピリ
ジンやベ−タピコリンなどの第3アミン化合物、無水酢
酸のような脂肪酸無水物などの化学変換剤、および前述
のリン化合物を加えて溶解させて得られた(これら各成
分の添加順序には特に制限はなく、組成物の安定性等か
ら適宜選択すればよい)組成物を、製膜用ド−プ液とし
て使用して好ましくは約0〜150℃の流延温度、特に
好ましくは5〜120℃程度の流延温度で支持体面上に
液状の薄膜を形成し、その薄膜を支持体上で好ましくは
約150℃以下の乾燥温度、特に好ましくは20〜14
0℃程度の乾燥温度で、好ましくは約0.05〜1時間
乾燥する溶液流延法などの製膜法で形成される自己支持
性の固化フィルムが好適に使用できる。
【0029】前記自己支持性フィルムを加熱して、前記
溶媒などの揮発成分を蒸発し除去するとともに、ポリア
ミック酸をイミド化率95%以上にイミド化することに
よってポリイミドフィルムとすることが好ましい。
【0030】前記の加熱処理は、最初に約100〜40
0℃での温度においてポリアミック酸のイミド化および
溶媒の蒸発・除去を約0.1〜5時間、特に0.2〜3
時間で徐々に行うことが好ましい。特に、加熱処理を約
100〜170℃の比較的低い温度で約1〜30分間第
一次加熱処理し、次いで170〜220℃の温度で約1
〜30分間第二次加熱処理し、そして220〜400℃
の高温で約1〜30分間第三次加熱処理するように段階
的に行うことが好ましい。また、自己支持性フィルムは
加熱時に、好適には自己支持性表面から剥離後、100
g/mm2 以下の低張力下に約80〜250℃で乾燥し
て溶媒及び生成水を約5〜25重量%の範囲に含む固化
フィルムを形成後、フィルムの両端を固定して加熱して
もよい。250℃以上の連続加熱処理においては、ピン
テンタ−、クリップ、枠などで少なくとも長尺のフィル
ムの長手方向に直角の方向の両端を固定して行うことが
好ましい。前記加熱に加えて400〜550℃の高い温
度で第四次高温加熱してもよい。
【0031】また、この発明の改質されたポリイミドフ
ィルムは、高弾性のポリイミドフィルムを与えるポリア
ミック酸の有機極性溶媒溶液を製膜用ド−プとして使用
し、前記と同様にして流延、製膜して得た自己支持性の
固化フィルムの表面に、好適にはポリイミドシロキサン
濃度が0.1〜20重量%の前記のポリイミドシロキサ
ン溶液(通常0.1〜100ポイズ)を、グラビヤ、リ
バ−ス、コンマ等でのコ−ティング法によって塗布して
0.5〜50μmの厚さのポリイミドシロキサンの溶液
層を塗布し、50〜200℃程度の温度で1〜60分間
程度加熱して高弾性のポリイミドフィルムの少なくとも
一面に0.1〜5μmの塗布乾燥膜である芳香族ポリイ
ミドシロキサン層を形成することによっても製造するこ
とができる。
【0032】前記の方法によって、好適には厚みが10
〜125μmであり、フィルムの少なくとも一つの表面
における水滴接触角が80°以上、特に80〜120°
であり、有機基と結合したSiに基づくSiの表面原子
濃度が1%以上、特に1〜15%であり、好適には引張
弾性率が500kg/mm2 以上、特に550〜120
0kg/mm2 、線膨張係数が25×10-6cm/cm
/℃以下、特に7×10-6〜25×10-6cm/cm/
℃、好適には吸水率が2.O%以下、特に0.2〜1.
8%である改質されたポリイミドフィルムを製造するこ
とができる。この改質されたポリイミドフィルムはその
ままで使用できるが、製造後保存する場合にはよごれ防
止のため保護材層(カバ−フィルム)を設けてもよい。
【0033】この発明の改質されたポリイミドフィルム
は、芳香族ポリイミドフィルムが本来有する高弾性とポ
リイミドシロキサンなどの有機基と結合したSiの有す
る撥水性を兼ね備えて一体化したものであり、耐磨耗性
もある程度有しており種々の用途、例えば電子部品用、
電気部品用、印刷部品用に使用することができる。
【0034】
【実施例】以下にこの発明の実施例を示す。以下の各例
において、ポリイミドフィルムにおける各成分の分析
は、例えば、フィルム表面の各元素の重量割合は、X線
光電子分光装置(VG社ESCALAB・200型)で
Mg KaのX線源(300W)を用い、2×3mmの
フィルムの極く表面(約数10Å)に存在する元素を調
べることにより求めた。(なお、無機フィラ−としてシ
リカを使用しても、シリカはフィルム表面に剥き出しに
ならないのでこのSiは実質的にカウントされない。)
【0035】吸水率測定:ASTM D570−63に
従って測定(23℃×24時間) 引張弾性率測定:ASTM D882−64Tに従って
測定(MD) 線膨張係数(50〜200℃)測定:300℃で30分
加熱して応力緩和したサンプルをTMA装置(引張りモ
−ド、2g荷重、試料長10mm、20℃/分)で測定
【0036】参考例1 温度計、仕込・留出口及び攪拌機を備えた内容積500
ミリリットルのガラス製フラスコに、3,3’,4,
4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BP
DA)14.71g(50ミリモル)、ω,ω’−ビス
(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(BA
PSi 信越シリコン株式会社製、X−22−161A
S、n:9)26.40g(30ミリモル)、及びN−
メチル−2−ピロリドン(NMP)200gを仕込み、
窒素気流中で50℃の温度に高め溶解させた後に、更に
2,2−ビス〔4−(4−ジアミノフェノキシ)フェニ
ル〕プロパン(BAPP)8.21g(20ミリモル)
を添加して、この温度で1時間で攪拌して、その後この
溶液を200℃に昇温して3時間攪拌して、ポリイミド
シロキサンが18重量%均一に溶解しているポリマ−溶
液が得られた。次に、室温に戻し、イオン交換水を使用
して析出、洗浄して、ポリイミドシロキサンを回収し
た。250℃で5時間乾燥して粉末状のポリイミドシロ
キサン45g(イミド化率:100%、対数粘度:1.
10)が得られた。
【0037】参考例2 s−BPDA20.60g(70ミリモル)、BAPS
i52.80g(60ミリモル)、及びNMP294g
をそれぞれ使用した他は、参考例1と同様にして窒素気
流中で50℃の温度に高め溶解させた後に、200℃に
昇温して3時間攪拌して、末端に酸無水基を有するイミ
ドシロキサンオリゴマ−(イミド化率:100%、対数
粘度:0.05)が20重量%均一に溶解しているポリ
マ−溶液が得られた。
【0038】参考例3 2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無
水物(a−BPDA)8.82g(30ミリモル)、B
APP16.42g(40ミリモル)、及びNMP10
0gをそれぞれ使用した他は、参考例1と同様にして窒
素気流中で50℃の温度に高め溶解させた後に、200
℃に昇温して3時間攪拌して、末端にアミン基を有する
イミドシロキサンオリゴマ−(イミド化率:100%、
対数粘度:0.05)が21重量%均一に溶解している
ポリマ−溶液が得られた。
【0039】参考例4 参考例2で得られた末端に酸無水基を有するイミドシロ
キサンオリゴマ−と参考例3で得られた末端にアミン基
を有するイミドシロキサンオリゴマ−とをそれぞれ、ガ
ラス製2リットルフラスコに全量加え、窒素気流中で5
0℃の温度に高め溶解させた後に、200℃に昇温して
3時間攪拌して、ブロックコポリイミドシロキサンが2
2重量%均一に溶解しているポリマ−溶液が得られた。
次に、参考例1と同様に処理して粉末状のポリイミドシ
ロキサン90g(イミド化率:100%、対数粘度:
0.90)が得られた。
【0040】参考例5 a−BPDA11.77g(40ミリモル)、BAPS
i21.10g(24ミリモル)、及びBAPP6.6
0g(16ミリモル)をそれぞれ使用した他は、参考例
1と同様にして窒素気流中,昇温して50℃の温度で1
時間攪拌して、次いで、昇温して200℃で3時間攪拌
してポリイミドシロキサンが18重量%均一に溶解して
いるポリマ−溶液を生成させた。次に、参考例1と同様
に処理して、粉末状のポリイミドシロキサン34g(イ
ミド化率:100%、対数粘度:0.80)を得た。
【0041】参考例6 重合槽に、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)
2470重量部を加え、次いでs−BPDA294.2
2重量部とパラフェニレンジアミン108.14重量部
とを加え、30℃で10時間重合反応させてポリマ−の
対数粘度(測定温度:30℃、濃度:0.5g/100
ml溶媒、溶媒:N−メチル−2−ピロリドン)が2.
66、ポリマ−濃度が14重量%であるポリアミック酸
(イミド化率:5%以下)溶液を得た。このポリアミッ
ク酸溶液組成物の回転粘度は3100ポイズであった。
【0042】参考例7 重合槽に、N−メチル−2−ピロリドン1980重量部
を加え、次いでs−BPDA147.2重量部、ピロメ
リット酸二無水物100.1重量部、パラフェニレンジ
アミン75.7重量部、4,4’−ジアミノジフェニル
エ−テル60.6重量部を加え、30℃で6時間重合反
応させてポリマ−の対数粘度(測定温度:30℃、濃
度:0.5g/100ml溶媒、溶媒:N−メチル−2
−ピロリドン)が2.51、ポリマ−濃度が16.2重
量%であるポリアミック酸(イミド化率:5%以下)溶
液を得た。このポリアミック酸溶液組成物の回転粘度は
2900ポイズであった。
【0043】実施例1 参考例6で調製したポリアミック酸溶液に、コロイダル
シリカ(日産化学工業株式会社製、ZL、1次粒子平均
径:70nm)のDMAc混合物(濃度:8重量%)を
ポリアミック酸100重量部に対してコロイダルシリカ
0.7重量%になるように添加し混合し、さらにポリア
ミック酸100重量部に対する割合でモノステアリルリ
ン酸エステルトリエタノ−ルアミン0.1重量部を加
え、約25℃で6時間攪拌してポリアミック酸溶液組成
物を得た。この溶液組成物のポリアミック酸100重量
部に対して、参考例1のポリイミドシロキサンのDMA
c溶液(濃度10重量%、粘度2ポイズ/30℃)を1
0重量部(ポリイミドシロキサン/ポリアミック酸=
1:100、重量比)添加し、攪拌し、均一な溶液を調
製した。この溶液をステンレスベルト上に流延塗布し、
120℃で20分間乾燥した後、ステンレスベルト面よ
り剥がし自己支持性フィルムを得た。剥離はスム−ズで
あった。
【0044】得られた自己支持性フィルムを150℃で
5分間加熱し、次いで200℃に昇温してその温度で7
分間加熱し、さらに250℃に昇温し、その温度で9分
間加熱し、最後に450℃にまで昇温し、その温度で7
分間加熱して、ポリマ−のイミド化およびフィルムの乾
燥を行って厚さ75μmの改質されたポリイミドフィル
ムを製造した。このポリイミドフィルムは、表面の水滴
接触角が100°、Siの表面原子濃度が5.2%であ
り、引張弾性率が650kg/mm2 、線膨張係数が1
8×10-6cm/cm/℃であり、吸水率が1.4%で
あった。
【0045】実施例2 ポリアミック酸溶液のポリアミック酸単位に対して無水
酢酸50モル%およびベ−タピコリン10モル%を加
え、ド−プ温度を5℃に変えた他は実施例1と同様にし
て、改質ポリイミドフィルムを得た。実施例1と同様の
結果が得られた。
【0046】実施例3 参考例1のポリイミドシロキサンのDMAc溶液(濃度
10重量%、粘度2ポイズ/30℃)を3重量部添加し
た以外は、実施例1と同様にして改質されたポリイミド
フィルムを製造した。得られたポリイミドフィルムは、
表面の水滴接触角が98°、Siの表面原子濃度が2.
7%であり、引張弾性率が650kg/mm2 、線膨張
係数が18×10-6cm/cm/℃であり、吸水率が
1.4%であった。
【0047】実施例4 参考例4のポリイミドシロキサンのDMAc溶液(濃度
10重量%、粘度2ポイズ/30℃)を添加した以外
は、実施例1と同様にして改質されたポリイミドフィル
ムを製造した。得られたポリイミドフィルムは、表面の
水滴接触角が101°、Siの表面原子濃度が4.8%
であり、引張弾性率が640kg/mm2 、線膨張係数
が18×10-6cm/cm/℃であり、吸水率が1.4
%であった。
【0048】実施例5 参考例7のポリアミック酸溶液を使用し、さらに参考例
5のポリイミドシロキサンのDMAc溶液(濃度10重
量%、粘度2ポイズ/30℃)を添加した以外は、実施
例1と同様にして改質されたポリイミドフィルムを製造
した。得られたポリイミドフィルムは、表面の水滴接触
角が102°、Siの表面原子濃度が4.9%であり、
引張弾性率が540kg/mm2 、線膨張係数が20×
10-6cm/cm/℃であり、吸水率が1.7%であっ
た。
【0049】実施例6 参考例6で調製したポリアミック酸溶液に、ポリアミッ
ク酸100重量部に対する割合でモノステアリルリン酸
エステルトリエタノ−ルアミン0.1重量部を加え、室
温(約25℃)で6時間攪拌してポリアミック酸溶液組
成物を得た。この溶液組成物をステンレスベルト上に流
延塗布し、120℃で20分間乾燥した。この自己支持
性フィルムの片面に、参考例1で得られたポリイミドシ
ロキサンのテトラヒドロフラン(THF)溶液(濃度:
10重量%、粘度2ポイズ/30℃)にコロイダルシリ
カ(日産化学工業株式会社製、ZL、1次粒子平均径:
70nm)のイソプロピルアルコ−ル混合物(濃度:1
0重量%)をポリイミドシロキサン100重量部に対し
てコロイダルシリカが2重量部になるように添加、攪拌
した後、5μmの塗布厚みでグラビアコ−タ−を用いて
塗布した。塗布後、乾燥温度100℃、乾燥時間2分間
の条件で乾燥した。次いで、ステンレスベルト面より剥
がし自己支持性フィルムを得た。剥離はスム−ズであっ
た。
【0050】得られた自己支持性フィルムについて、実
施例1と同様に加熱処理して、乾燥塗布層の厚み0.5
μm、全体の厚み75μmの改質されたポリイミドフィ
ルムを製造した。このポリイミドフィルムは、表面の水
滴接触角が103°、Siの表面原子濃度が13.5%
であり、引張弾性率が670kg/mm2 、線膨張係数
が17×10-6cm/cm/℃であり、吸水率が1.5
%であった。
【0051】比較例1 ポリイミドシロキサンに代えて、アミノシランカップリ
ング剤であるN−フェニル−γ−アミノプロピルトリメ
トキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名:KB
M573のDMAc溶液(濃度5重量%)を添加した以
外は、実施例6と同様にして改質されたポリイミドフィ
ルムを製造した。得られたポリイミドフィルムは、表面
の水滴接触角が72°、Siの表面原子濃度が2.1%
であり、引張弾性率が680kg/mm2 、線膨張係数
が18×10-6cm/cm/℃であり、吸水率が1.5
%であった。
【0052】比較例2 ポリイミドシロキサンを添加しない以外は実施例1と同
様にしてポリイミドフィルムを製造した。得られたポリ
イミドフィルムは、表面の水滴接触角が71°、Siの
表面原子濃度が0.1%であり、引張弾性率が670k
g/mm2 、線膨張係数が17×10-6cm/cm/℃
であり、吸水率が1.4%であった。
【0053】参考例8 この発明の改質ポリイミドフィルムの評価を以下のよう
にして行った。実施例1〜6、比較例1のポリイミドフ
ィルムの改質面をゴム状の棒で拭っても変化が生じず、
ある程度の耐磨耗性を有していることを示す。さらに、
水滴除去性を以下のようにして評価した。垂直に維持し
たフィルムサンプル面(改質面)から20cmの距離に
保持したノズルから水を全面に約5分スプレ−した後、
表面に残存する水滴を目視で観察し、評価した。評価レ
ベルは次の通りである。 A:サンプル表面に水がほとんど残らない。 B:サンプル表面に水が少し残る。 C:サンプル表面に水がかなり残る。 評価結果は次の通りである。 実施例1〜6: A 比較例1 : C 比較例2 : C
【0054】
【発明の効果】この発明は以上説明したように構成され
ているので、高弾性と撥水性を兼ね備えている。
フロントページの続き (72)発明者 園山 研二 山口県宇部市西本町一丁目12番32号 宇部 産株式会社高分子研究所(宇部)内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 フィルム全体としてポリイミドからなる
    高弾性フィルムであって、フィルムの少なくとも一つの
    表面において水滴接触角が80°以上であるとともに有
    機基と結合したSiに基づくSiの表面原子濃度が1%
    以上であることを特徴とする改質されたポリイミドフィ
    ルム。
  2. 【請求項2】 フィルム全体として引張弾性率が500
    kg/mm2 以上であり、線膨張係数が25×10-6
    m/cm/℃以下であり、吸水率が2.0%以下である
    請求項1記載の改質されたポリイミドフィルム。
  3. 【請求項3】 フィルムの少なくとも一つの表面の水滴
    接触角が80°〜120°である請求項1記載の改質さ
    れたポリイミドフィルム。
  4. 【請求項4】 フィルムの少なくとも一つの表面の有機
    基と結合したSiに基づくSiの表面原子濃度が1〜1
    5%である請求項1記載の改質されたポリイミドフィル
    ム。
  5. 【請求項5】 芳香族ポリイミド溶液または芳香族ポリ
    イミド前駆体溶液に、芳香族ポリイミドまたはその前駆
    体100重量部に対して0.2〜8重量部のポリイミド
    シロキサンを添加し、得られた溶液を流延、製膜し、自
    己支持性の固化フィルムとし、この固化フィルムを加熱
    して製造したものである請求項1記載の改質されたポリ
    イミドフィルム。
  6. 【請求項6】 芳香族ポリイミド溶液または芳香族ポリ
    イミド前駆体溶液を流延、製膜して得た自己支持性の固
    化フィルムの少なくとも一つの表面に、乾燥後の塗布膜
    が0.1〜5μmの厚みになるようにポリイミドシロキ
    サンの溶液を塗布、加熱乾燥して芳香族ポリイミドシロ
    キサンの層を形成してなる請求項1記載の改質されたポ
    リイミドフィルム。
  7. 【請求項7】 フィルム中のポリイミド構成単位の、芳
    香族テトラカルボン酸成分が3,3’,4,4’−ビフ
    ェニルテトラカルボン酸、その酸二無水物またはその酸
    エステルを30モル%以上含む芳香族テトラカルボン酸
    成分から導かれ、ジアミン成分がパラフェニレンジアミ
    ンを30モル%以上含むジアミンから導かれるものであ
    る請求項1記載の改質されたポリイミドフィルム。
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