JPH10105915A - ガラス封着体及びその製造方法 - Google Patents

ガラス封着体及びその製造方法

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JPH10105915A
JPH10105915A JP8254239A JP25423996A JPH10105915A JP H10105915 A JPH10105915 A JP H10105915A JP 8254239 A JP8254239 A JP 8254239A JP 25423996 A JP25423996 A JP 25423996A JP H10105915 A JPH10105915 A JP H10105915A
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JP
Japan
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glass
temperature
sealing
cooling
retardation
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JP8254239A
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English (en)
Inventor
Hirotaka Yamamoto
浩貴 山本
Takashi Naito
内藤  孝
Takashi Namekawa
滑川  孝
Yasutaka Suzuki
康隆 鈴木
Narihisa Motowaki
成久 元脇
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Hitachi Ltd
Original Assignee
Hitachi Ltd
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Publication date
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    • H01L23/29Encapsulations, e.g. encapsulating layers, coatings, e.g. for protection characterised by the material, e.g. carbon
    • H01L23/291Oxides or nitrides or carbides, e.g. ceramics, glass
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    • C03GLASS; MINERAL OR SLAG WOOL
    • C03CCHEMICAL COMPOSITION OF GLASSES, GLAZES OR VITREOUS ENAMELS; SURFACE TREATMENT OF GLASS; SURFACE TREATMENT OF FIBRES OR FILAMENTS MADE FROM GLASS, MINERALS OR SLAGS; JOINING GLASS TO GLASS OR OTHER MATERIALS
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Abstract

(57)【要約】 【課題】残留応力が少なく、かつ応力が高精度に制御さ
れたガラス封着体を提供し、高歩留まり,高信頼性,高
性能な磁気ヘッド,プラズマディスプレイパネル,半導
体センサー,光デバイスを得る。 【解決手段】封着用ガラスと、基体とからなり、ガラス
部分のレターデーションR1と、再加熱して20℃/分
の平均冷却速度で冷却した後のレターデーションR2と
の間に R1<R2 が成り立つガラス封着体。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はガラス封着体及びそ
の製造方法に係り、特に残留応力が小さく、かつ応力が
高精度に制御されたガラス封着体,高性能な磁気ヘッ
ド,高い封着強度を有するプラズマディスプレイパネ
ル,特性のばらつきの小さい半導体センサー,損失の少
ない光デバイス及びそれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】磁気ヘッド,半導体,電子管等の電子部
品の封着には、各部品の耐熱温度以下で封着可能な封着
ガラスが用いられている。この封着ガラスとして被封着
体の熱膨張係数と適合したものを用いることにより、冷
却後の残留応力の小さいガラス封着体を得ることが可能
である。しかし、昨今、ガラスによる応力が電子部品材
料の特性に及ぼす影響が無視できなくなってきている。
また、ガラスを用いた光デバイス等の光部品において
も、異種のガラスを接合する際に生じる応力によって損
失等が大きくなるといった影響が生じている。この問題
を解決するため、応力を高精度に制御することによっ
て、部品の特性を制御するという必要性が生じてきてい
る。
【0003】ガラス封着体の応力を高精度に制御する技
術として、特開平8−91950号記載のように、ガラスと被
封着体との間に生じる反応層の厚さを変化させることに
より応力を制御している。
【0004】また、特開昭63−69009 号公報には、基材
をガラス封止し、一度室温まで冷却してから、再加熱,
徐冷することによりガラス接合部の応力を緩和する方法
が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記特開平8
−91950号による方法では、反応層が必要であり、さら
に反応層の成分元素を所望の特性を満たすように制御す
る必要があるため、材料系によらない一般的な技術とす
ることが難しい。従って、材料系によらず、一般的なガ
ラス封着体においてガラス材料と被接合体との材料を一
定にしたまま両者間にかかる応力を変化させ、圧縮から
引張りまで、広範囲な応力を高精度に制御することが難
しい。また、特開昭63−69009 号記載の方法では、一度
室温まで冷却するために再加熱しても残留応力がとりき
れなかったり、一度室温に冷却することで、基材または
封着用ガラスにクラックが入る恐れがあった。更に、室
温に冷却してから再加熱するため、製造プロセスに時間
がかかっていた。
【0006】本発明の目的は、従来のものに比べ、ガラ
ス封着体の接合部の応力を、短時間で最も効率よく除去
する方法、及びガラス接合部の応力が小さいガラス封着
体を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明の第1の発明によれば、少なくともガラス
と、それにより封着された基体とからなるガラス封着体
であって、該ガラスの室温でのレターデーションをR1
とし、前記ガラス封着体を該ガラスの変形温度以上まで
再加熱した後、平均冷却速度20℃/分以下で室温まで
冷却した後のレターデーションをR2としたときに、R
1<R2なる関係を有することを特徴とするガラス封着
体が提供される。レターデーションとは、応力がかかっ
ているガラスでは、応力軸方向に光の屈折率が変化する
ために生じる位相差のことである。単色光源による複屈
折法を用いてレターデーションを測定する。この値が大
きい方が応力が大きいことを示している。
【0008】R1<R2なる関係とは、別言すれば、基
材を封着用ガラスで接合した後、単純に徐冷(平均冷却
速度20℃/分以下)した場合にガラスにかかっている
応力よりも、小さい応力で接合されているガラス封着体
であることを特徴とするという意味である。レターデー
ションは接合体のまま、すなわち封着用ガラスと基材を
分離しない状態で、例えば波長650nmのHe−Ne
レーザを光源として、測定を行う。
【0009】上記構成により、長期間使用しても封着用
ガラスにクラックなどが入らず、信頼性の高いガラス封
着体が提供できる。また、封着体が光デバイスの場合、
光エネルギーの損失が少ない光デバイスが提供できる。
【0010】また、上記目的を達成するため、本発明の
第2の発明によれば、封着用ガラスと基体とを接触させ
る工程と、該封着用ガラスを、該ガラスの変形温度以上
に加熱する工程と、該ガラスを平均冷却速度20℃/分
以下で、該変形温度以下、かつ室温以上の温度まで冷却
する工程と、その後、該ガラスを該ガラスのガラス転移
温度±10℃の範囲内の温度で一定時間保持する工程
と、該ガラスを、前記一定時間保持した温度から平均冷
却速度20℃/分以下で室温まで冷却する工程と、を含
むことを特徴とするガラス封着体の製造方法が提供され
る。
【0011】上記構成により、従来より短い時間で接合
部の残留応力がより低減できる封着体の製造方法が提供
できる。
【0012】上記第2の発明において、前記封着ガラス
の熱膨張係数が、前記基体の熱膨張係数の65〜105
%であることが好ましい。ガラスとの接合部の応力低減
が最も期待できる組み合わせである。
【0013】本発明の第3の発明によれば、少なくとも
二つの磁気コアを突合せ、該コアをガラスで封着されて
なる磁気ヘッドにおいて、該ガラスの室温でのレターデ
ーションをR1とし、前記磁気ヘッドを該ガラスの変形
温度以上まで再加熱した後、平均冷却速度20℃/分以
下で室温まで冷却した後のレターデーションをR2とし
た時に、R1<R2なる関係を有することを特徴とする
磁気ヘッドが提供される。上記構成により、接合部にク
ラックの発生が少ない磁気ヘッドが提供される。またガ
ラスの接合強度も大きい。
【0014】本発明の第4の発明によれば、少なくとも
二つの磁気コアを突合せ、該コアに封着用ガラスを接触
させる工程と、該封着用ガラスを該ガラスの変形温度以
上に加熱する工程と、該ガラスを平均冷却速度20℃/
分以下で、該変形温度以下、かつ室温以上の温度まで冷
却する工程と、その後、該ガラスを該ガラスのガラス転
移温度±10℃の範囲内の温度で一定時間保持する工程
と、該ガラスを、前記一定時間保持した温度から平均冷
却速度20℃/分以下で室温まで冷却する工程と、を含
むことを特徴とする磁気ヘッドの製造方法が提供され
る。上記構成によれば、接合部の歪みが少ない磁気ヘッ
ドが短時間に得られる。
【0015】第4の発明において封着ガラスの熱膨張係
数が前記磁気コアの熱膨張係数の70〜95%であるこ
とが好ましい。
【0016】本発明の第5の発明によれば、隔壁によっ
て仕切られ、蛍光体が塗布された放電セルと、該放電セ
ルを挟む、内壁に電極,誘電体膜の形成された二枚のガ
ラス板と、を有し、該二枚のガラス板が該放電セルに封
着用ガラスで封着されてなるプラズマディスプレイパネ
ルにおいて、該ガラス板の封着後のレターデーションを
R1とし、封着後のプラズマディスプレイパネルを、該
封着用ガラスの変形温度以上まで再加熱したのち20℃
/分以下の平均冷却速度で室温まで冷却した場合の該ガ
ラス板のレターデーションをR2とした時に、R2<R
1なる関係を有することを特徴とするプラズマディスプ
レイパネルが提供される。ここで、R2とR1の関係が
逆転しているのは、プラズマディスプレイの封着ガラス
はフィラー材を含み、透光性が悪いため、パネルガラス
部の応力を評価しているからである。すなわち、測定対
象が上記第1の発明と逆転しているため、レターデーシ
ョンの関係も逆転している。
【0017】上記構成により、接合部に欠陥が少ないの
で、不良な放電セルの数が少なく、かつ大画面化が容易
なプラズマディスプレイが提供できる。
【0018】本発明の第6の発明によれば、隔壁を形成
する工程と、該隔壁によって仕切られた放電空間に蛍光
体を塗布する工程と、ガラス板に電極膜と誘電体膜を形
成する工程と、該隔壁板を二枚の該ガラス板で挾み、周
囲に該ガラス板の熱膨張係数の70〜95%の熱膨張係
数を有する封着用ガラスを配する工程と、該封着用ガラ
スの変形温度以上の温度に全体を加熱し、全体を封着す
る工程と、平均冷却速度20℃/分以下で該封着用ガラ
スのガラス転移温度±10℃の範囲内の温度まで冷却す
る工程と、該ガラス転移温度±10℃の範囲内の温度で
一定時間保持する工程と、平均冷却速度20℃/分以下
で室温まで冷却する工程と、を含むことを特徴とするプ
ラズマディスプレイパネルの製造方法が提供される。上
記構成によれば、短時間の製造プロセスで、歩留まりの
高いプラズマディスプレイの製造工程が提供できる。
【0019】本発明の第7の発明によれば、少なくと
も、金属ポストと、センサーの形成された半導体基板
と、この半導体基板裏面に接合されたガラス板と、この
金属ポストとガラス板とを封着する封着ガラスとからな
る半導体センサーにおいて、前記ガラス板の封着後のレ
ターデーションをR1とし、前記半導体センサーを前記
封着用ガラスの変形温度以上まで再加熱した後、20℃
/分以下の平均冷却速度で室温まで冷却した場合の該ガ
ラス板のレターデーションをR2としたときに、R2<
R1なる関係を満たすことを特徴とする半導体センサー
が提供できる。上記構成によれば、使用時にガラス板の
剥離,クラックの発生等が少なく、信頼性の高い半導体
センサーが提供できる。
【0020】本発明の第8の発明によれば、センサーの
形成された半導体基板とガラス板を接合する工程と、金
属ポストとこのガラス板との間に封着用ガラスを配する
工程と、該封着用ガラスの変形温度以上の温度に全体を
加熱し、全体を封着する工程と、20℃/分以下の平均
冷却速度で、該封着用ガラスのガラス転移温度±10℃
の範囲内の温度まで冷却する工程と、該ガラス転移温度
±10℃の範囲内の温度で一定時間保持する工程と、2
0℃/分以下の平均冷却速度で室温まで冷却する工程
と、を含むことを特徴とする半導体センサーの製造方法
が提供される。上記構成により、高い信頼性を有する半
導体センサーを、短時間で製造可能となる。
【0021】本発明の第9の発明によれば、少なくとも
ガラス基板とその上面に形成されたガラス導波路膜と、
そのガラス導波路膜を覆うカバーガラス膜とからなる光
デバイスにおいて、該ガラス導波路膜の室温でのレター
デーションをR1とし、前記光デバイスを該ガラス導波
路膜の変形温度以上まで再加熱した後、20℃/分以下
の平均冷却速度で冷却した場合の該ガラス導波路膜のレ
ターデーションをR2としたとき、R1<R2なる関係
を有することを特徴とする光デバイスが提供される。上
記構成により、ガラス導波路膜に歪みが少なく、従って
光エネルギーの損失の少ない光デバイスが提供される。
【0022】本発明の第10の発明によれば、ガラス基
板上にガラス導波路膜を形成する工程と、該ガラス導波
路膜の変形温度以上に加熱してガラス導波路膜を緻密化
する工程と、20℃/分以下の平均冷却速度で該ガラス
導波路膜のガラス転移温度±10℃の範囲内の温度まで
冷却する工程と、該ガラス転移温度±10℃の範囲内の
温度で一定時間保持する工程と、さらに20℃/分以下
の平均冷却速度で室温まで冷却する工程と、該ガラス導
波路膜を導波路形状に加工する工程と、上面にカバーガ
ラス膜を形成する工程と、を含むことを特徴とする光デ
バイスの製造方法が提供される。上記構成によれば、光
デバイスの製造時の歩留まりが高く、かつ光エネルギー
の損失が少ない光デバイスが、短時間に製造可能とな
る。
【0023】
【発明の実施の形態】本発明を、実施例を用いて詳細に
説明する。熱処理によるガラス封着体の残留応力を、図
5に示すガラス封着体を用いて基板の反りにより評価し
た。図5において、1は封着用ガラス、2は基板であ
る。本実施例では、基板としてa=15mm,b=7.0m
m,c=1.0mmのMn−Znフェライト基板(熱膨張係
数;115×10~7/℃)を用いた。
【0024】図6に、図5のガラス封着体の作製手順を
示す。Mn−Znフェライト基板2の上面にd,eがと
もに0.3mm の溝を多数加工した。その面に、フェライ
ト基板と同サイズに加工した封着用ガラス板1を載せ
た。所定の熱処理を行い、ガラスを溶融させ、封着用ガ
ラスを基板1上の溝に流し込むことによって図5のガラ
ス封着体を得た。
【0025】図7に、基板の反りの方向とガラスにかか
る応力状態の対応を示す。(a)のように基板が凸に反
る場合、ガラスの収縮量がフェライトの収縮量よりも大
きいことがわかる。従って、この場合ガラスの接合界面
にはフェライトによる引張り応力が生じている。この状
態を正で表す。逆に(b)の様に、フェライトが凹に反
る場合、ガラスの接合界面に圧縮応力が働いており、負
で表す。反り量は、基板の中心線を0として±6.8mm
の位置の基板の変形量で表す。
【0026】表1に本発明で用いた封着用ガラスの組成
を、またそれらのガラスの熱膨張係数(α×10~7
℃),ガラス転移温度(Tg/℃),変形温度(Td/
℃),作業点(Tw/℃;logη=4;η;ガラスの粘
度/poise)を表2に示す。表1において、1〜7は鉛
酸化物を主成分とするガラスである。またNo.8は硼珪
酸ガラス、No.9,10はバナジウム酸化物を主成分と
するガラスである。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】ガラスの熱膨張係数は、示差熱膨張計を用
いて測定した。ガラスのガラス転移温度(Tg),変形
温度(Td)は得られた熱膨張曲線より求め、Tgは曲
線の勾配が変化する変曲点、Tdは昇温による測定にお
いて伸びが初めて収縮に転じる点とした。昇温速度は、
5℃/分とした。また、Twは、ガラスの示差熱分析曲
線より求めた。
【0030】図8に、本実施例で行ったガラス封着体の
付着工程の温度プロファイルを示す。昇温速度は5℃/
分とし、最高温度T1で30分間保持した。最高温度は
各ガラスのTwとした。平均冷却速度Vは2℃/分と固
定し、冷却中、温度T2で一定時間t2だけ保持し、こ
のT2,t2を変化させて応力の変化を解析した。この
T2を冷却保持温度、t2を冷却保持時間とよぶ。熱処
理中、フェライトの酸化を抑制するため、窒素雰囲気で
加熱を行った。また、T1では、ガラスに発生する気泡
を脱泡するため、ロータリーポンプにて真空に引いた。
【0031】t2を30分と固定し、冷却保持温度T2
を変化させたときの室温での基板の反り量を図1〜図4
に示す。あわせて、冷却保持を行わず、同じ冷却速度で
冷却した場合の反り量も示す。どのガラスにおいても、
冷却保持を行うことにより冷却保持しない場合よりも反
り量が小さくなった。さらに冷却保持温度を変化させる
と、反り量は各ガラス固有の温度で反りの値が極小値を
示し、その温度前後ではその極小値を交点とする二本の
直線上に乗るV字型となった。
【0032】極小値となる冷却保持温度を各ガラスで比
較すると、それぞれのガラス転移温度Tg付近であるこ
とが分かった。さらに、全体の曲線の位置は、熱膨張係
数の大きいガラスほど上部にあり、ガラス界面に生じる
引張り応力が大きいことを示していた。特に、ガラスN
o.4,8では、冷却保持することにより反り量が負にな
っており、ガラスにかかる応力が圧縮に転じていること
がわかった。またNo.9,10のバナジウム系ガラスで
は、二本の直線の傾きの絶対値が非常に大きく、狭い温
度範囲で大きく反り量が変化することが分かった。
【0033】以上のように、ガラスを各ガラスに適切な
温度において冷却保持することにより、ガラスにかかる
引張り応力を低減できることが分かった。また基板とガ
ラスとの組合せによっては引張り応力から圧縮応力まで
応力状態を変化させることができることが分かった。
【0034】以上に述べた冷却保持による応力の低減
は、どのガラスの場合でも、各ガラスのガラス転移温度
の±10℃の範囲内の温度での冷却保持において顕著な
効果があった。ガラス転移温度−10℃未満の温度で
は、残留応力の低減に非常に長い時間を要したり、また
十分に長い時間保持しても応力が低減できない場合があ
った。またガラス転移温度+10℃を超える温度ではガ
ラスと封着体が固着後、さらに低温の冷却過程で新たな
応力が生じるため、応力緩和の効果が少なかった。本実
施例では、ガラスの熱膨張係数はフェライトの熱膨張係
数の65〜105%の範囲のガラスを用いたが、この範
囲以外の熱膨張係数を有するガラスでは、好ましくない
結果となった。すなわち、105%を超える熱膨張係数
を有するガラスでは、適正な冷却保持を行うことにより
応力を緩和することができた。しかし、最小値でも反り
量が大きく、ガラス部にクラックが生じるガラス封着体
も認められた。このことから、封着ガラスの熱膨張係数
は、基体の熱膨張係数の105%以下であることが好まし
い。
【0035】また、熱膨張係数が基体のそれの65%未
満の封着用ガラスでは、冷却保持を行わなくても応力が
小さく、逆に冷却保持を行うことにより大きな圧縮応力
がガラスに生じた。このことから、熱膨張係数は基体の
熱膨張係数の65%以上であることが好ましい。
【0036】次に以上の検討を行ったガラス封着体を、
再度T1まで加熱し、冷却保持を行わずに2℃/分の冷
却速度で冷却して反り量を測定したところ、一度目に測
定した冷却保持なしでの反り量とほぼ同じ値を示した。
このことから、一度ガラスの粘度を十分に下げて応力を
緩和させた後、炉冷を行うことにより、冷却保持の効果
は打ち消され、最終的な炉冷による応力が残留すること
がわかった。
【0037】また、各ガラスに適当な冷却保持温度で保
持することにより、ガラス封着体の反り量は冷却保持を
行わなかった場合に比べて小さくなることから、一度冷
却保持したガラス封着体を再加熱して適当な冷却速度で
徐冷したとき、再加熱前の反り量よりも大きくなった場
合には、そのガラス封着体は冷却保持を行われていたこ
とを見い出すことができることが分かった。
【0038】次に、冷却速度による反り量の変化を検討
した。図9に、冷却速度に対する反り量を示す。ガラス
は、No.7を用いた。冷却保持は行わなかった。冷却速
度が小さくなるにつれて、反り量も小さくなっていっ
た。しかしながら、その割合は小さく、図1に示したよ
うに大きな反り量の低減は見られなかった。冷却速度が
20℃/分を超えると、ガラス封着体の表面部と内部に
温度差が生じ、ガラス部にクラックが生じた。従って、
冷却速度は、20℃/分以下であることが好ましい。
【0039】以上のように、本発明のガラス封着体の製
法を用いれば、ガラスの種類を変えずにガラス封着体の
応力を引張りから圧縮まで、幅広い応力範囲で制御可能
となる。
【0040】次に、一度2℃/分の冷却速度で冷却した
ガラス接合体を、これまで述べた冷却保持温度と同一温
度まで再加熱し、更に2℃/分で室温まで冷却してガラ
ス接合体の応力を評価した。ガラスには、No.7を用
い、図5に示した反り測定用試料を作製し、その反り量
で評価した。図10に、冷却時に30分冷却保持した場
合と一旦室温まで冷却した後、冷却保持温度まで加熱し
て同一時間保持して室温まで冷却した時の反り量を示
す。
【0041】再加熱した場合には、反りの低減が見られ
たものの、冷却保持した場合に比べ、応力緩和の効果が
小さいことがわかった。このことを、図11を用いて詳
細に説明する。図11は、ガラスと被接合体との接合
を、それぞれの熱膨張曲線を用いて模式的に表した図で
ある。ガラスと被接合体との接合は、ガラスの転移温度
(Tg)から変形温度(Td)までの転移域と呼ばれる
領域内で起こると考えられている。この接合点を、固着
点(Tset)で表す。Tsetは、お互いに応力を及ぼしあ
う点であるので、この点を2つの曲線の交点とすること
により、その後の冷却過程におけるのびの差からはたら
く応力を見積もることができる。
【0042】冷却保持しない場合を考えると、このTse
t で固着した後、室温でののびの差sに対応する応力が
はたらく。これを冷却保持する場合、例えばT2で保持
した場合、転移域中ではガラスは内部応力を除去できる
ほどの粘度を持っているので、応力緩和が起こり、T2
において内部応力0の状態にまで達する。ここから徐々
に冷却すると、この冷却過程に対応したのびの差sが生
じ、s′に対応する応力が加わる。この時、s′<sで
あり、室温において残留する応力は小さい。
【0043】次に冷却プロセスにおいて冷却保持せずに
室温まで冷却した接合体をT2まで再加熱する場合を考
える。室温時においてはsに対応する応力を有してい
る。従って再度Tset 以上まで加熱されれば、その温度
では応力0となるが、また室温におろすとsがかかって
しまう。一方、T2で保持する場合には、応力sを緩和
しなければならないが、温度が低いため、応力は緩和し
きれずに残留する。従って、T2からさらに室温に冷却
した際にはs″(s′<s″<s)の応力が残存する。
【0044】このことから、図10に示したように、冷
却保持した場合の方が、再加熱する場合よりも応力緩和
の効果が高いといえる。
【0045】次に、単色光源による複屈折法を用いてガ
ラス封着体のレターデーションを測定することにより応
力を評価した。レターデーションは、応力が働いている
ガラスに入射した光が応力軸方向の屈折率が変化するた
めに生じる位相差であり、この量を評価することにより
ガラスにかかる応力を見積もることができる。
【0046】図12に、測定に用いたガラス封着体の模
式図を示す。厚さ1mmの基板1を約5mm角に切断した。
さらにその中央部に2mmφの丸貫通穴を加工し、ガラス
充填溝とした。ここに2mm角のガラスキュービックを一
ついれ、アルミニウム薄上で図8に示した接合プロファ
イルを用いてガラスを充填した。充填後、両面を鏡面研
磨し、複屈折測定用の試料とした。光源には波長650
nmのHe−Neレーザーを用いた。ビームのスポット
径は約0.3mmとし、ビームをガラス充填部の直径方向
に約0.1mm の間隔でスキャンさせて測定を行った。
【0047】本実施例では、基板としてMn−Znフェ
ライト基板を用い、ガラスにはNo.6及び7を用いた。
また、冷却は、冷却速度が20℃/分の急冷と、2℃/
分で冷却し、各ガラスの反りの最小値を与える温度で冷
却保持した場合の二つの条件で行った。
【0048】図13に、複屈折法による応力の測定結果
を示す。横軸は、図12に示した試料の直径方向にビー
ムをスキャンさせたときのスキャン距離であり、1.0m
m が試料の中心位置になる。縦軸は、レターデーション
(R/nm)とした。どの条件の場合も、ガラス中央部
でのレターデーションは小さかった。しかし、ガラスと
フェライトとの界面で大きなレターデーションを有して
いた。
【0049】接合界面でのレターデーションを比較する
と、熱膨張係数の小さいNo.6ではNo.5より小さく、
生じている応力が小さかった。また急冷却試料と冷却保
持試料を比較すると、急冷試料の方が界面でのレターデ
ーションが大きく、大きな応力が働いていた。これらの
結果は、図1に示した反りによる応力の評価結果と一致
した結果となった。
【0050】次に、レターデーションとガラスにかかる
応力について検討した。ガラスにかかる応力と、レター
デーションとの関係は、次式で与えられる。
【0051】 R=FCL …(1) (1)式で、Rはレターデーション(nm)、Fはガラ
スに加わっている応力(kg/cm2)、Lは試料の長さ(c
m)である。また、Cはガラスの光弾性定数で、ガラス
固有の比例定数である。No.5,6ガラスのCは、約
0.58(nm/cm)/(kg/cm2)であった。また、L
は実測により0.99cmであった。No.5急冷試料の場
合、界面に生じているレターデーションは約5.8nm
であった。これらの値を(1)式に代入してFを求める
と、9.1MPaであった。一方、No.6冷却保持試料
では、界面のレターデーションは、0.8nmであり、
加わる応力は1.5MPaと求められた。
【0052】界面の曲率半径ρが小さい部分に応力の集
中が起こると考えると、 F∝1/√ρ …(2) である。本実験では、ρ=1.0mm であるが、本発明で
検討した小型の電子部品ではガラス封着部の曲率半径
は、約10μmであった。従って、こうした部位には本
実験の約10倍の応力が生じていると考えられる。従っ
て、No.5急冷試料の場合、91MPa、No.6冷却保
持試料の場合、15MPaの応力がかかることになる。
【0053】図14に、No.5,6ガラスの三点曲げ強
度のワイブルプロットを示す。図14のように、No.5
ガラスでは、91MPaの応力では約40%の試料が破
壊してしまうことが予想される。一方、No.6ガラスで
は15MPaで破壊する確率はほぼ0%である。このこ
とから、このような部品を用いれば、ガラスの破壊を大
きく減少させることができる。
【0054】さらにNo.6のガラスを用いたガラス封着
体(図12)を435℃に再加熱し、2℃/分の平均冷
却速度で室温まで冷却した。この時、冷却保持は行わな
かった。再加熱前のレターデーションは0.8nm であ
ったが、冷却後のガラス部分のレターデーションは1.
7nm で、再加熱前のレターデーションよりも大きく
なっていた。また、No.5ガラスを用いて急冷したガラ
ス封着体のレターデーションは5.8nm であったが、
このガラス封着体を同様に再加熱処理し、再度急冷した
場合には、レターデーションは5.6nm と、再加熱前
とほぼ同じ値であった。
【0055】以上のように、室温でのレターデーション
R1と、ガラス封着体をその封着ガラスの変形温度以上
まで加熱し、炉冷した場合のレターデーションR2の間
に、 R1<R2 が成り立つ場合、再加熱前のガラス封着体にかかってい
る応力は小さかった。また上記のようなガラス封着体を
得るためには、炉冷時に、そのガラスのガラス転移温度
付近の温度で保持することが好ましかった。保持時間
は、ガラス転移温度付近では30分以上保持することが
好ましかった。
【0056】次に、No5,6のガラスを用いて、磁気
ヘッドを作製した。図15に、磁気ヘッドの外観の模式
図を示す。図15において、1は封着用ガラス、11は
磁性膜、2,2′はMn−Znフェライト単結晶基板、
13はギャップ部或はギャップ材である。また14は反
応防止膜、15はコイル巻線窓である。また25,2
5′はコイル、uは摺動面である。図15に示すよう
に、本発明の磁気ヘッドでは、基板に形成された磁性膜
上にギャップ材13,反応防止膜14を順次形成し、こ
の一対を突き合わせてガラスで接合した構造になってい
る。
【0057】図16及び図17に、磁気ヘッドの作製手
順を示す。図16及び図17を参照しながら図15の磁
気ヘッドの作製方法を述べる。まず、Mn−Znフェラ
イト基板2にガラス充填溝16,コイル巻線窓15等を
加工した(a)。その後、加工面側に磁性膜11をスパ
ッタリング法で形成し、その上部にSiO2 ギャップ材
13,金属Cr反応防止膜14をこれもスパッタリング
法で順次形成した(b)。次に、コイル巻線窓6よりも摺
動面側の部分を簡単なマスク10で覆って、コイル巻線
窓よりも下部(リヤ部)に接合用ガラス膜9をスパッタ
リング法により形成した(c)。
【0058】続いてコイル巻線窓15を形成したCコア
2と形成しないIコア2′を互いに突合せ、接合用ガラ
ス棒17を摺動面となる面上に設置し、加熱してガラス
を軟化させ、ガラス接合する(d)。接合後、テープ摺
動面uを円筒研磨し(e),(d)のa−a,b−bに
添って切断し、図15に示す磁気ヘッドを得た。
【0059】表3に、作製した磁気ヘッドのクラック発
生率,ヘッドチップ強度、及び磁気特性を示す。
【0060】
【表3】
【0061】クラック発生率は、作製した磁気ヘッドの
うち、クラックの見られたヘッド数より算出した。ヘッ
ドチップ強度はクラックの生じなかったヘッドチップを
摺動面と垂直な方向から圧力を加え、破壊した荷重を求
めた。磁気特性は、良好な場合には○、良好でない場合
には△を記した。
【0062】No.6ガラスを用いた場合では、380℃
で30分冷却保持を行い、No.5のガラスでは急冷し
た。クラック発生率は、No.6ガラスでは0%と、クラ
ックは生じなかった。一方、No.5ガラスを用いて急冷
した場合には、約40%のヘッドにクラックが発生し
た。ヘッドチップ強度も、No.6ガラスでは54gfと
高い値となったが、No.5ガラスではその約1/2の強
度であった。磁気特性もNo.5を用いた場合には良好な
結果が得られなかった。
【0063】次に、作製した磁気ヘッドのガラス接合部
のコイル巻線窓から上部を切りだし、透過法によりガラ
スのレターデーションを測定した。No.6ガラスを用い
冷却保持を行った磁気ヘッドのレターデーションは、
0.1nm 以下で、検出することが困難であった。これ
は、ガラスに加わる応力が小さく、さらにガラス充填量
が少ないためである。また、No.5ガラスを用いて急冷
した磁気ヘッドでは、レターデーションは0.65nm
であり、大きな応力が加わっていることが分かった。
【0064】さらにNo.6のガラスを用いた磁気ヘッド
を435℃に再加熱し、2℃/分の平均冷却速度で室温
まで冷却した。この時、冷却保持は行わなかった。冷却
後の磁気ヘッドのガラス部分のレターデーションは0.
3nm で、再加熱前のレターデーションよりも大きく
なっていた。また、No.5ガラスを用いて急冷した磁気
ヘッドを同様に再加熱処理し、再度急冷した場合には、
レターデーションは0.65nmと、再加熱前と同じ値であ
った。
【0065】以上のように、室温でのレターデーション
R1と、磁気ヘッドをその接合ガラスの変形温度以上ま
で加熱し、炉冷した場合のレターデーションR2の間
に、 R1<R2 が成り立つ場合、再加熱前の磁気ヘッドにかかっている
応力は小さく、クラック発生率が少なかった。また、ガ
ラス接合強度も高かった。
【0066】また上記のような磁気ヘッドを得るために
は、炉冷時に、そのガラスのガラス転移温度±10℃の
温度範囲内の温度で保持することが好ましかった。保持
時間は、ガラス転移温度付近では30分以上保持するこ
とが好ましかった。
【0067】また、封着ガラスとしてNo.5のように熱
膨張係数がフェライト基板の95%を超える場合には、
クラック不良が多く見い出された。また、70%未満の
場合には、磁気特性が良好でない磁気ヘッドが得られ
た。このため、磁気ヘッド用の封着ガラスとしては、基
体の70〜95%の熱膨張係数を有するガラスが好まし
い。
【0068】以上のように、本発明の磁気ヘッド及びそ
の製造方法により、ガラス部にかかる応力を低減でき、
歩留まり,信頼性,性能を向上できた。
【0069】図18に、本実施例で作製したプラズマデ
ィスプレイパネルの断面の概略図を示す。図18におい
て、31は封着ガラス、32は前面パネルガラス、33
は背面パネルガラス、34は隔壁、35は放電セル、3
6は表示電極、37はバス電極、38は誘電体膜、39
はMgO保護膜、310はアドレス電極、311は蛍光
体である。
【0070】本実施例では、前面,背面のパネルガラス
及び隔壁材として熱膨張係数が85×10~7/℃のソー
ダライムガラス板を用いた。封着ガラスには、PbTi
3をフィラー材として含み、熱膨張係数が70×10~
7/℃のPbO−B23系ガラスを用いた。アドレス電
極の形成された背面パネルに隔壁を形成し、三原色の蛍
光体を塗布した。さらに隔壁を囲むように背面パネルガ
ラスの四辺に封着ガラスを配した。この上面に表示電
極,バス電極,誘電体膜,MgO保護膜を形成した前面
パネルガラスを設置して全体を435℃−30分加熱し
て、封着を行った。
【0071】冷却時、この封着用ガラスのガラス転移温
度である310℃で1時間保持したパネルと保持しない
パネルを作製した。
【0072】各冷却工程で作製したプラズマディスプレ
イパネルのガラス接合部の接合強度を評価した。接合強
度は、パネルから接合部分を切りだし、接合面に平行な
方向に応力を加え、破壊したときの荷重で評価した。
【0073】冷却保持した場合の接合強度は25MP
a、冷却保持しない場合の接合強度は18MPaと、冷
却保持することにより接合強度が約28%向上してい
た。これは、封着用ガラスに働く応力が冷却保持するこ
とにより緩和されるためと考えられる。このことを検証
するため、接合部近傍の前面パネルガラスに波長650
nmのレーザー光を当て、レターデーションを評価し
た。封着ガラスはフィラー材を含むため、透光性が悪か
った。このため、パネルガラス部の応力を評価した。
【0074】冷却保持を行わなかった場合のパネルのレ
ターデーションは−5.0nm で、パネル部には大きな
圧縮応力が働いていることが分かった。このことから、
封着ガラスには逆に5.0nm のレターデーションに相
当する引張り応力が生じていることが分かる。
【0075】一方、冷却保持を行った場合のパネルガラ
スのレターデーションは−2.5nmと約半分に小さくな
っていた。このことから、封着ガラスにかかる引張り応
力も小さくなっていることが分かった。このパネルガラ
スのガラス封着部を、封着用ガラスの変形温度318℃
より高い330℃まで再加熱し、2℃/分で冷却し、レ
ターデーションを測定した。このときレターデーション
は−5.0nm と、冷却保持を行わなかったパネルガラ
スと同じ大きさの圧縮応力が生じていた。
【0076】このように本発明のプラズマディスプレイ
パネルでは、パネルガラスのガラス封着部の室温でのレ
ターデーションR1と、再加熱した後室温まで炉冷した
ときのレターデーションR2との間に、 R2<R1 の関係が成立していた。このようなとき、再加熱前のパ
ネルガラスのガラス封着部にかかる応力が小さく、接合
強度が高かった。さらに、本発明のプラズマディスプレ
イパネルを得るためには、冷却中、封着用ガラスのガラ
ス転移温度付近の温度で一定時間保持することが好まし
かった。保持する温度は、ガラス転移温度±10℃の温
度範囲であることが好ましかった。また、この場合に
も、磁気ヘッドの場合と同様に、封着用ガラスの熱膨張
係数が基体の70〜95%の場合にはクラックの発生等
が見られず、良好な結果が得られた。
【0077】図19に、本発明で作製した半導体センサ
ーの断面の概略図を示す。41はセンサー、42はパイ
レックスガラス、43は封着ガラス、44は金属ポスト
である。Siウエハー上に、センサー回路をパターニン
グし、半導体基板を作製した。この基板と同サイズのパ
イレックスガラス板(熱膨張係数:30×10~7/℃)を
半導体基板の下面に配し、通電することによって、アノ
ーディックボンディングを行った。
【0078】その後、基板を各半導体チップに切断し
た。このチップを封着ガラスプリフォームを介してFe
−Ni−Co系金属ポスト上に配し、440℃−20分
の条件で封着を行った。封着用ガラスには、PbTiO
3 をフィラー材として含有するPbO−B23系接合ガ
ラスを用いた。熱膨張係数は37×10~7/℃である。
冷却条件として、このガラスの転移温度である310℃
で30分保持したものと保持しないものを作製した。
【0079】310℃で保持したチップでは、保持しな
いチップに比べ、各チップごとの特性のばらつきが小さ
く、良好な結果が得られた。パイレックスガラス部の応
力をレターデーションにより評価した結果、冷却保持を
行うことにより、センサー部にかかる応力が低減されて
いることが分かった。さらに、各チップにかかる応力が
均質化されていることが分かった。
【0080】また、冷却保持した半導体センサーを再加
熱し、冷却保持を行わないで冷却してパイレックスガラ
スのレターデーションを測定した結果、再加熱する前の
レターデーションR1と、再加熱後のレターデーション
R2との間に、 R2<R1 の関係が成立していた。したがって、このような半導体
センサーであれば、各チップごとの特性のばらつきの少
ない半導体チップが得られる。
【0081】さらに、このような半導体チップを得るた
めには、冷却中、用いる封着用ガラスのガラス転移温度
±10℃の温度範囲で冷却保持することがよい。この理
由は、ガラス封着体の実施例で述べた理由と同等であ
る。以上のように、本発明の半導体センサーでは、特性
の均質な半導体センサーが得られた。
【0082】図20に本発明で作製した光デバイスの一
例である光導波路の概略図を示す。図20において、5
1はガラス基板、52は導波路のコアガラス、53はカ
バーガラスである。ガラス基板として、熱膨張係数が5
1×10~7/℃の硼珪酸ガラスを用いた。635nmの
単色光に対する屈折率は、1.49 であった。このガラ
ス基板上に導波路用ガラスとして、熱膨張係数が85×
10~7/℃のソーダライムガラスを蒸着法により形成し
た。このガラスの635nmの単色光に対する屈折率
は、1.53であった。
【0083】成膜後、600℃に加熱して、導波路ガラ
ス膜を軟化させ、膜を緻密化させた。その後、冷却過程
として、このガラス膜のガラス転移温度である550℃
で1時間保持したものと保持しないものを作製した。緻
密化後、所望の導波路構造となるようにパターニングを
行った。さらに上面からカバーガラスを蒸着法により形
成し、図20の光導波路を得た。
【0084】導波路長を10cmとし、光の損失を評価し
たところ、冷却保持を行った場合では、冷却保持を行わ
なかった場合に比べ損失量が減少していた。導波路部分
レターデーションを評価したところ、冷却保持を行うこ
とにより、導波路部の応力が減少していることが分かっ
た。このことにより光の損失量が低減されたと考えられ
る。
【0085】冷却保持した試料を、これまでの実施例と
同様に再加熱して冷却保持せずに冷却してレターデーシ
ョンを比較したところ、再加熱前のレターデーションR
1と再加熱後のレターデーションR2との間に R1<R2 の関係が成立していた。このような光デバイスでは、光
損失が少ないことが分かった。また、このような光デバ
イスを得る方法として、冷却中に、導波路のコアガラス
のガラス転移温度±10℃の温度範囲内の温度で冷却保
持することが好ましい。このように、本発明の光デバイ
スでは、応力を低減でき、光損失を減少させることがで
きた。
【0086】さらに本発明は、上記磁気ヘッド,プラズ
マディスプレイパネル,半導体センサー,光デバイス以
外のガラスを用いて接合、封着される部品,製品に対し
ても適用可能である。
【0087】以上のように、本発明のガラス封着体及び
その製造方法によれば、ガラス封着部にかかる応力を低
減させることができ、機械的強度や、各部品の特性を向
上させることができた。また、特性のばらつきを減少さ
せ、部品の歩留まりを向上させることができた。
【0088】
【発明の効果】本発明のガラス封着体及びその製法によ
れば、ガラス封着体のガラス部に生じる応力を引張りか
ら圧縮まで広い応力範囲で制御することができる。ま
た、本発明の磁気ヘッド及びその製法によれば、歩留ま
り,信頼性,性能の高い磁気ヘッドを得ることができ
る。さらに本発明のプラズマディスプレイパネルでは、
接合強度が向上し、パネルの大型化に対応できる。
【0089】本発明の半導体センサーでは、センサー特
性のばらつきを抑え、歩留まりの向上を図ることができ
る。さらに本発明の光デバイスでは、応力による光の損
失を抑え、利得を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のガラス封着体の冷却保持温度に対する
反り量を表す図。
【図2】本発明のガラス封着体の冷却保持温度に対する
反り量を表す図。
【図3】本発明のガラス封着体の冷却保持温度に対する
反り量を表す図。
【図4】本発明のガラス封着体の冷却保持温度に対する
反り量を表す図。
【図5】本発明のガラス封着体の外観の模式図。
【図6】本発明のガラス封着体の作製方法の模式図。
【図7】本発明のガラス封着体における反りと応力との
関係を示す図。
【図8】本発明のガラス封着体のガラス封着プロファイ
ル。
【図9】冷却速度に対する反り量を表す図。
【図10】冷却保持温度または再加熱温度と反り量の関
係を示す図。
【図11】熱膨張曲線を用いてガラス接合の様子を模式
的に示した図。
【図12】本発明の複屈折法を用いた応力測定用試料の
外観の模式図。
【図13】スキャン距離に対するレターデーションを表
す図。
【図14】本発明で検討した封着用ガラスの三点曲げ強
度のワイブルプロット。
【図15】本発明で作製した磁気ヘッドの外観の模式
図。
【図16】本発明で作製した磁気ヘッドの作製方法の模
式図。
【図17】本発明で作製した磁気ヘッドの作製方法の模
式図。
【図18】本発明で作製したプラズマディスプレイパネ
ルの断面の模式図。
【図19】本発明で作製した半導体センサーの断面の模
式図。
【図20】本発明で作製した光デバイスの断面の模式
図。
【符号の説明】
1…封着用ガラス、2,2′…基板もしくは磁気コア、
11…磁性膜、13…磁気ギャップまたはギャップ材、
14…反応防止膜、15…コイル巻線窓、16…ガラス
充填溝、25,25′…コイル、31,43…封着ガラ
ス、32…前面パネルガラス、33…背面パネルガラ
ス、34…隔壁、35…放電セル、36…表示電極、3
7…バス電極、38…誘電体膜、39…MgO保護膜、
41…センサー、42…パイレックスガラス、44…金
属ポスト、51…ガラス基板、52…導波路のコアガラ
ス、53…カバーガラス、310…アドレス電極、31
1…蛍光体。
フロントページの続き (72)発明者 鈴木 康隆 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号 株 式会社日立製作所日立研究所内 (72)発明者 元脇 成久 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号 株 式会社日立製作所日立研究所内

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】少なくともガラスと、それにより封着され
    た基体とからなるガラス封着体であって、該ガラスの室
    温でのレターデーションをR1とし、前記ガラス封着体
    を該ガラスの変形温度以上まで再加熱した後、平均冷却
    速度20℃/分以下で室温まで冷却した後のレターデー
    ションをR2とした場合に、 R1<R2 なる関係を有することを特徴とするガラス封着体。
  2. 【請求項2】封着用ガラスと基体とを接触させる工程
    と、 該封着用ガラスを、該ガラスの変形温度以上に加熱する
    工程と、 該ガラスを平均冷却速度20℃/分以下で、該変形温度
    以下、かつ室温以上の温度まで冷却する工程と、 その後、該ガラスを該ガラスのガラス転移温度±10℃
    の範囲内の温度で一定時間保持する工程と、 該ガラスを、前記一定時間保持した温度から平均冷却速
    度20℃/分以下で室温まで冷却する工程と、を含むこ
    とを特徴とするガラス封着体の製造方法。
  3. 【請求項3】請求項2に記載の封着ガラスの熱膨張係数
    が、前記基体の熱膨張係数の65〜105%であること
    を特徴とするガラス封着体の製造方法。
  4. 【請求項4】少なくとも二つの磁気コアを突合せ、該コ
    アをガラスで封着されてなる磁気ヘッドにおいて、 該ガラスの室温でのレターデーションをR1とし、前記
    磁気ヘッドを該ガラスの変形温度以上まで再加熱した
    後、平均冷却速度20℃/分以下で室温まで冷却した後
    のレターデーションをR2とした時に、 R1<R2 なる関係を有することを特徴とする磁気ヘッド。
  5. 【請求項5】少なくとも二つの磁気コアを突合せ、該コ
    アに封着用ガラスを接触させる工程と、 該封着用ガラスを該ガラスの変形温度以上に加熱する工
    程と、 該ガラスを平均冷却速度20℃/分以下で、該変形温度
    以下、かつ室温以上の温度まで冷却する工程と、 その後、該ガラスを該ガラスのガラス転移温度±10℃
    の範囲内の温度で一定時間保持する工程と、 該ガラスを、前記一定時間保持した温度から平均冷却速
    度20℃/分以下で室温まで冷却する工程と、を含むこ
    とを特徴とする磁気ヘッドの製造方法。
  6. 【請求項6】請求項5記載の封着ガラスの熱膨張係数が
    前記磁気コアの熱膨張係数の70〜95%であることを
    特徴とする磁気ヘッドの製造方法。
  7. 【請求項7】隔壁によって仕切られ、蛍光体が塗布され
    た放電セルと、 該放電セルを挟む、内壁に電極,誘電体膜の形成された
    二枚のガラス板と、を有し、該二枚のガラス板が該放電
    セルに封着用ガラスで封着されてなるプラズマディスプ
    レイパネルにおいて、 該ガラス板の封着後のレターデーションをR1とし、封
    着後のプラズマディスプレイパネルを、該封着用ガラス
    の変形温度以上まで再加熱したのち20℃/分以下の平
    均冷却速度で室温まで冷却した場合の該ガラス板のレタ
    ーデーションをR2とした時に、 R2<R1 なる関係を有することを特徴とするプラズマディスプレ
    イパネル。
  8. 【請求項8】隔壁を形成する工程と、 該隔壁によって仕切られた放電空間に蛍光体を塗布する
    工程と、 ガラス板に電極膜と誘電体膜を形成する工程と、 該隔壁板を二枚の該ガラス板で挾み、周囲に該ガラス板
    の熱膨張係数の70〜95%の熱膨張係数を有する封着
    用ガラスを配する工程と、 該封着用ガラスの変形温度以上の温度に全体を加熱し、
    全体を封着する工程と、 平均冷却速度20℃/分以下で該封着用ガラスのガラス
    転移温度±10℃の範囲内の温度まで冷却する工程と、 該ガラス転移温度±10℃の範囲内の温度で一定時間保
    持する工程と、平均冷却速度20℃/分以下で室温まで
    冷却する工程と、を含むことを特徴とするプラズマディ
    スプレイパネルの製造方法。
  9. 【請求項9】少なくとも、金属ポストと、センサーの形
    成された半導体基板と、この半導体基板裏面に接合され
    たガラス板と、この金属ポストとガラス板とを封着する
    封着ガラスとからなる半導体センサーにおいて、 前記ガラス板の封着後のレターデーションをR1とし、
    前記半導体センサーを前記封着用ガラスの変形温度以上
    まで再加熱した後、20℃/分以下の平均冷却速度で室
    温まで冷却した場合の該ガラス板のレターデーションを
    R2としたときに、 R2<R1 なる関係を満たすことを特徴とする半導体センサー。
  10. 【請求項10】センサーの形成された半導体基板とガラ
    ス板を接合する工程と、金属ポストとこのガラス板との
    間に封着用ガラスを配する工程と、該封着用ガラスの変
    形温度以上の温度に全体を加熱し、全体を封着する工程
    と、20℃/分以下の平均冷却速度で、該封着用ガラス
    のガラス転移温度±10℃の範囲内の温度まで冷却する
    工程と、該ガラス転移温度±10℃の範囲内の温度で一
    定時間保持する工程と、20℃/分以下の平均冷却速度
    で室温まで冷却する工程と、を含むことを特徴とする半
    導体センサーの製造方法。
  11. 【請求項11】少なくともガラス基板とその上面に形成
    されたガラス導波路膜と、そのガラス導波路膜を覆うカ
    バーガラス膜とからなる光デバイスにおいて、 該ガラス導波路膜の室温でのレターデーションをR1と
    し、前記光デバイスを該ガラス導波路膜の変形温度以上
    まで再加熱した後、20℃/分以下の平均冷却速度で冷
    却した場合の該ガラス導波路膜のレターデーションをR
    2としたとき、 R1<R2 なる関係を有することを特徴とする光デバイス。
  12. 【請求項12】ガラス基板上にガラス導波路膜を形成す
    る工程と、該ガラス導波路膜の変形温度以上に加熱して
    ガラス導波路膜を緻密化する工程と、20℃/分以下の
    平均冷却速度で該ガラス導波路膜のガラス転移温度±1
    0℃の範囲内の温度まで冷却する工程と、該ガラス転移
    温度±10℃の範囲内の温度で一定時間保持する工程
    と、さらに20℃/分以下の平均冷却速度で室温まで冷
    却する工程と、該ガラス導波路膜を導波路形状に加工す
    る工程と、上面にカバーガラス膜を形成する工程と、を
    含むことを特徴とする光デバイスの製造方法。
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