JPH10102178A - Al−Mg−Si系合金の直接鋳造圧延板とその製造方法 - Google Patents
Al−Mg−Si系合金の直接鋳造圧延板とその製造方法Info
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- JPH10102178A JPH10102178A JP25327196A JP25327196A JPH10102178A JP H10102178 A JPH10102178 A JP H10102178A JP 25327196 A JP25327196 A JP 25327196A JP 25327196 A JP25327196 A JP 25327196A JP H10102178 A JPH10102178 A JP H10102178A
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Abstract
鋳造圧延の条件、熱処理条件等の制御により、経時変化
が小さく時効硬化性の高いAl-Mg-Si系合金の圧延板を得
ること。 【解決手段】 必須元素としてSi 0.2〜3.0%(mass%、以
下同じ) 、Mg 0.2〜3.0%を含み、Mn 0.01 〜0.5%、Cr
0.01 〜0.5%、Zr 0.01 〜0.5%、Ti 0.001〜0.5%の1種
若しくは2種以上を含み、更にCu 0〜2.5%、Sn 0〜0.2
%、Zn 0〜2%の1種若しくは2種以上を含み、Feを1.0%
以下に規制し、残部がAlと不可避的不純物からなるAl合
金であり、板厚が0.7 〜3mm の直接鋳造圧延板であっ
て、板表層部の金属組織におけるMg2 Si化合物の最大長
さが50μm 以下であることを特徴とするAl-Mg-Si系合金
の直接鋳造圧延板。
Description
焼付硬化性に優れたAl-Mg-Si系合金の直接鋳造圧延板お
よびその製造方法に関するものであり、さらに具体的に
は自動車部品、家電製品等の曲げ成形、プレス成形等に
用いる成形用に好適なAl-Mg-Si系合金の圧延板を、従来
技術と比べて廉価な製造コストで製造できる直接鋳造圧
延板およびその製造方法に関するものである。なお本明
細書において、Al合金の添加元素の含有量は、全てm
ass%を意味するものであるが、これを単に%と記し
ている。
耐食性及び延性に優れ、かつ加熱により時効硬化するAl
-Mg-Si系合金板を、所定の形状に成形し、しかる後塗装
・焼付け加熱して時効硬化させ、製品にする場合が多
い。しかしながら、従来の製造方法で製造されたAl-Mg-
Si系合金板は、溶体化処理後室温に放置(自然時効)に
より、G.P.ゾーンが析出し、その焼付け加熱時に強度向
上に寄与するβ' と称されるMg2Si の中間相またはそれ
に準ずる強化相の析出を阻害してしまうため、溶体化処
理後長時間経過してしまった材料では、塗装・焼付け加
熱後の強度が十分に得られなかった。更に、G.P.ゾーン
の析出に伴って強度が上昇し、延性が著しく低下すると
いう問題も同時に生じていた。
-7460 に示されているような溶体化処理後の予備時効処
理、また特開平04-259358 に示されているような復元処
理、またそれらを組み合わせた処理などが考案されてい
る。しかし、これらの処理により、延性を損なうことな
く塗装・焼付け時の強度上昇を増加させることが可能に
なるものの、工程が増えることにより製造コストが高く
なる問題がある。従来の成形用Al-Mg-Si系合金圧延板及
びその成形品は、前記の改良の製造方法も含めて以下の
ごとく製造されている。即ち、これらは、まず所定の合
金組成の鋳塊を製造し、これを面削及び均質化処理し、
続いて熱間圧延、冷間圧延(必要に応じて焼鈍)、溶体
化処理、前記の予備時効処理又は復元処理、成形、時効
硬化処理(塗装・焼付け加熱)して製造されている。こ
のように従来の製造方法は、工程が非常に長く、また大
型設備も必要とする等により、製造コストは高くなり、
必ずしも工業的な生産に向いているとはいえない状況に
ある。
放置による自然時効時に析出するG.P ゾーンを抑制し、
塗装・焼付け加熱時に速やかに強化相が析出して高い焼
付け硬化が得られるような、経時変化が小さい成形用Al
-Mg-Si系合金板を、工程が極めて短いこと等により低コ
ストで製造できる直接鋳造圧延法によって得ることであ
る。また本発明の他の課題は、その直接鋳造圧延法によ
る好ましい製造条件を見出すことである。なお、ここで
いう直接鋳造圧延法とは、図1、図2に示すごとく、双
ロール1、2間にノズル3より溶湯4を連続的に供給
し、溶湯の鋳造凝固の直後に、前記双ロール1、2で圧
延して、溶湯から直接に長尺の圧延板、そのコイルとす
るものである。この方法は、連続鋳造板のみを得る方法
とは異なり一般にはハンター法、直接圧延法等と呼ばれ
ているものであるが、本明細書においては直接鋳造圧延
法ということとする。この製造方法は、従来別工程で行
われている鋳塊又は鋳板とする工程、均質化処理工程、
熱間及び冷間圧延工程を一工程で行うもので、多くの工
程が省略できる。
の請求項1の発明は、必須元素としてSi 0.2〜3.0%、Mg
0.2〜3.0%を含み、Mn 0.01 〜0.5%、Cr 0.01 〜0.5%、
Zr 0.01 〜0.5%、Ti 0.001〜0.5%の1種若しくは2種以
上を含み、更にCu 0〜2.5%、Sn 0〜0.2%、Zn 0〜2.0%の
1種若しくは2種以上を含み、Feを1.0%以下に規制し、
残部がAlと不可避的不純物からなるAl合金であり、板厚
が0.7 〜3mm の直接鋳造圧延板であって、板表層部の金
属組織において、連続したMg2Si 化合物の最大長さが50
μm 以下であることを特徴とするAl-Mg-Si系合金の直接
鋳造圧延板であり、
Si 0.2〜3.0%、Mg 0.2〜3.0%を含み、Mn 0.01 〜0.5%、
Cr 0.01 〜0.5%、Zr 0.01 〜0.5%、Ti 0.001〜0.5%の1
種若しくは2種以上を含み、更にCu 0〜2.5%、Sn 0〜0.
2%、Zn 0〜2.0%の1種若しくは2種以上を含み、Feを1.
0%以下に規制し、残部がAlと不可避的不純物からなるAl
合金溶湯を、双ロールによる直接鋳造圧延装置を用い
て、圧下荷重P(ton)を次の、式、 : P≧2.5 ×10-5・ t ・ w ・ D1/2・ v ・ exp {1600/
(T+273)} : T≧400 ただし、t:出側板厚(mm)、w:出側板幅(mm)、D:ロール直
径(mm)、v:ロール周速(mpm) 、T:出側板の表面温度(
℃) を満足する条件で、板厚0.7 〜3mm の板に直接鋳造圧延
した後、2 ℃/s以上の冷却速度で175 ℃以下に急冷し、
その後180 〜320 ℃に再加熱して0 〜25分保持して、板
表層部の金属組織における連続したMg2Si 化合物の最大
長さを50μm 以下とすることを特徴とするAl-Mg-Si系合
金の直接鋳造圧延板の製造方法であり、
金溶湯及び圧延条件と同様の条件で、板厚0.7 〜3mm の
板に直接鋳造圧延した後、2 ℃/s以上の冷却速度で40〜
175℃の範囲まで急冷し、前記温度でコイル状に巻き取
り、板表層部の金属組織における連続したMg2Si 化合物
の最大長さを50μm 以下とすることを特徴とするAl-Mg-
Si系合金の直接鋳造圧延板の製造方法であり、
Si 0.2〜3.0%、Mg 0.2〜3.0%を含み、Mn 0.01 〜0.5%、
Cr 0.01 〜0.5%、Zr 0.01 〜0.5%、Ti 0.001〜0.5%の1
種若しくは2種以上を含み、更にCu 0〜2.5%、Sn 0〜0.
2%、Zn 0〜2.0%の1種若しくは2種以上を含み、Feを1.
0%以下に規制し、残部がAlと不可避的不純物からなるAl
合金溶湯を、双ロールによる直接圧延装置を用いて、圧
下荷重P(ton)を次の式、 P≧2.5 ×10-5・ t ・ w ・ D1/2・ v ・ exp {1600/(T+
273)} ただし、t:出側板厚(mm)、w:出側板幅(mm)、D:ロール直
径(mm)、v:ロール周速(mpm) 、T:出側板の表面温度(
℃) を満足する条件で、板厚0.7 〜3mm の板に直接圧延した
後、400 ℃〜材料の溶融温度の範囲で溶体化処理を施
し、溶体化後の冷却を2 ℃/s以上の冷却速度で175℃以
下に急冷し、その後180 〜320 ℃に再加熱して0 〜25分
保持して、板表層部の金属組織における連続したMg2Si
化合物の最大長さを50μm 以下とすることを特徴とする
Al-Mg-Si系合金の直接鋳造圧延板の製造方法であり、
金溶湯及び圧延条件と同様の条件で、板厚0.7 〜3mm の
板に直接鋳造圧延した後、400 ℃〜材料の溶融温度の範
囲で溶体化処理を施し、溶体化後の冷却を2 ℃/s以上の
冷却速度で40〜175 ℃の範囲まで急冷し、前記温度でコ
イル状に巻きり、板表層部の金属組織における連続した
Mg2Si 化合物の最大長さを50μm 以下とすることを特徴
とするAl-Mg-Si系合金の直接鋳造圧延板の製造方法であ
る。
項1の発明は、直接鋳造圧延法によって得られた板に関
するものであり、請求項2〜5の発明は、前記板の製造
方法に関するものである。以下、前記各発明について詳
細に説明する。
した理由について説明する。Siは、塗装・焼付け加熱時
にMgと共にβ' と称されるMg2Si の中間相またはそれに
準ずる強化相として析出し強度を向上させる。その添加
量を0.2 〜3.0%と限定したのは、0.2%未満ではその効果
が小さく、3.0%を越えると溶体化処理後の延性が低下す
るためである。Mgは,溶体化処理後にはマトリックス中
に固溶しており、延性の向上に寄与する。また、上述の
ように塗装・焼付け加熱時にSiと共に強化相として析出
し強度を向上させる。その添加量を0.2 〜3.0%と限定し
たのは、0.2%未満ではその効果が小さく、3.0%を越える
と溶体化処理後の延性が低下するためである。以上のよ
うにSi、Mgは塗装・焼付け加熱時に強化相として析出
し、強度を向上させる。この両元素の存在比が異なると
その焼付け硬化性も異なり、Si、Mgの重量比がSi>0.6Mg
% の場合、Mg2Si 量に対し過剰Siとなり、より優れた焼
付け硬化性が得られる。なお、塗装・焼付け加熱時の時
効挙動をコントロールするために、Ag、Cdなどを少量添
加しても、本発明の効果を損なうことはない。
化あるいはマトリックス強度を向上させるために添加さ
れる。その添加は、必要に応じてMn 0.01 〜0.5%、Cr
0.01〜0.5%、Zr 0.01 〜0.5%、Ti 0.001〜0.5%の1種若
しくは2種以上である。それぞれ下限未満では効果が少
なく、上限を越えると溶体化処理後の延性が低下する。
また、Cu、Sn、Znは、塗装・焼付け加熱時に析出し強度
を向上させる。またSnの添加は表面品質を改善する効果
もある。その添加は、必要に応じて、Cu 0〜2.5%、Sn 0
〜0.2%、Zn 0〜2.0%の1種若しくは2種以上である。こ
こで、各元素が0%とは、添加しない場合もあることを
意味する。また添加する場合で、各元素をそれぞれ、2.
5%以下、0.2%以下、2.0%以下と限定したのは、これらを
越えると耐食性が低下する、および焼き入れ感受性が高
くなる等の弊害を生じるためである。Feは、通常Alの不
純物として含まれるものである。しかし、FeはSiと化合
物を作りやすく、1.0%を越えて含まれると塗装・焼付け
の際の加熱時の強度向上を阻害する。なお、鋳造組織の
微細化材として通常添加されるB などは、0.1%以下の添
加であれば、特に本発明の効果を損なうことはない。
としたのは、本発明の直接鋳造圧延板が、そのまま成形
用材料として使用できることを念頭に置いたものだから
である。また、本発明に係わる直接鋳造圧延板の表層部
の金属組織において、連続したMg2Si 化合物の最大長さ
が50μm 以下としたのは、前記の最大長さが50μm を越
えるようなMgやSiを含む粗大な主溶質系化合物が、塗装
・焼付け前にすでに析出しているような場合には、固溶
量が不足しており、塗装・焼付け加熱時の強度向上が十
分でなくなるからである。本発明に係わる直接鋳造圧延
板の内容は以上のとおりであであるが、かかる圧延板
は、後に記す実施例でも明らかなごとく、塗装・焼付け
加熱前の伸びが27%以上で成形性に優れ、また成形後
の塗装・焼付け時の加熱において、強度(YS)の向上
が加熱前に比し、100MPa以上高くなり、前述のよ
うな各種用途の成形材料に適している。
接鋳造圧延板の製造方法に関するものである。本発明の
製造方法を、具体的に図で説明すると、図1及び図2に
示すような双ロールによる直接鋳造圧延装置を用いて、
前記請求項1に記載のAl合金溶湯4をノズル3を通し
て、双ロール1、2間に連続的に供給し、ノズル3の先
端Bから双ロール1、2の最接近点A間で、鋳造・凝固
させ、A点近傍で圧延を行うものである。なお図2にお
いて、C点は溶湯の最終凝固点である。このことは、鋳
造・凝固、圧延を一工程で行って、溶湯から直接圧延板
5を製造し、その直後に急冷し、引き続き再加熱処理
(請求項2)または高温コイル巻き取り(請求項3)を
行うものである。これらの製造方法は、従来法のDC鋳造
での造塊、熱間および冷間圧延での塑性加工、さらに最
終焼鈍処理での溶体化および再結晶という金属組織を制
御するために必要な処理を、一回の双ロールによる直接
鋳造圧延で実現させることを特徴としており、この双ロ
ールによる直接鋳造圧延条件を適切に定めることが非常
に重要となる。そのような条件を見いだすために、双ロ
ール直接鋳造圧延の条件と金属組織および機械的特性と
の関係について、精力的に基礎的観点からの検討を行
い、その結果双ロールにかかる圧下荷重P(ton)を次の
、式、 : P≧2.5 ×10-5・ t ・ w ・ D1/2・ v ・ exp {1600/
(T+273)} : T≧400 ただし、t:出側板厚(mm)、w:出側板幅(mm)、D:ロール直
径(mm)、v:ロール周速(mpm) 、T:出側板の表面温度(
℃) を満足する条件で、板厚0.7 〜3mm の板に直接鋳造圧延
した後、2 ℃/s以上の冷却速度で175 ℃以下に急冷する
ことにより、従来法と同等の性能を有するAl-Mg-Si系合
金板を製造することが可能であることを見いだした。即
ち、この方法は、直接鋳造圧延の出側の温度を400 ℃以
上の高温で行い、急冷することにより、直接鋳造圧延工
程で溶体化処理も兼ねるものである。
(T+273)} としたのは、これより小さい圧下荷重では凝固終了から
の塑性変形量が不足し、晶出相の分断が十分に行われ
ず、従来法で製造した場合に比べ延性が低下してしまう
ためであり、 また、: T≧400 即ち、出側板の表面温度を400 ℃以上としたのは、これ
未満の温度では固溶していたMgやSiが析出し始め、塗装
・焼付け加熱時に十分な強度向上が期待できないからで
ある。また、直接鋳造圧延板を前記の条件で製造後、2
℃/s以上の冷却速度で175 ℃以下の温度まで急冷するの
は、冷却前に固溶しているSi、Mg等の添加元素の析出を
極力生じさせずに過飽和に固溶させ、この後の塗装・焼
付けの際の加熱時に微細な強化相を析出させて強度を向
上させるためである。なお、2 ℃/sec未満の冷却速度ま
たは175 ℃以上の温度への冷却では、冷却中に粗大な化
合物が析出してくるため、延性の低下を招いてしまう。
造圧延後、175 ℃以下の温度に急冷し、引き続き再加熱
処理(復元処理)を行うものである。この処理は、180
〜320 ℃に再加熱して0 〜25分の保持を行い、その後室
温まで放冷するものである。ここで0 分の保持とは、保
持しないこと即ち180 〜320 ℃の温度に到達したら、保
持することなく冷却することも含む意味である。この再
加熱処理は、通常連続焼鈍ライン(CAL)で実施する
のが好ましい。
直接鋳造圧延後、40〜175 ℃の温度に急冷し、この温度
範囲でコイルに巻き取り(高温コイル巻き取り)を行
い、その後室温に放置等の処理を行うものである。な
お、高温コイル巻き取り後の処理は、巻き取りコイルを
そのまま室温に放置して放冷してもよいし、巻き取り温
度(40〜175 ℃)で炉中に36時間以内保持し、その後
放冷してもよい。また、更に高温コイル巻き取り後、し
ばらく室温に放置し、続いて40〜175 ℃の炉中に36時
間以内保持し、その後放冷してもよい。これらの高温巻
き取り後の処理は、Al-Mg-Si系合金材について従来から
知られているもので、いずれを適用してもよい。
のように直接鋳造圧延続いて急冷後、再加熱処理(復元
処理)もしくは40〜175 ℃での高温コイル巻き取り処理
を必要とする。この処理が必要な理由は、上述の双ロー
ルによる直接鋳造圧延板は、従来の製造工程で得られる
板材とほぼ同等の性能が得られるものの、従来法で製造
した板と同様に自然時効によりG.P.ゾーンが析出し、塗
装・焼付けの際の加熱で、強度が十分に得られなかった
り、強度が上昇して延性が著しく低下するという問題が
生じるからである。本発明の双ロールによる直接鋳造圧
延の場合も、従来法と同様に上述の復元処理あるいは高
温コイル巻き取り処理により、自然時効によるG.P.ゾー
ン生成を抑制する必要がある。この復元処理及び高温コ
イル巻き取り処理の熱処理条件に範囲があるのは、下限
未満でも又上限を越えても所定の性能が得られないから
である。なお、溶体化処理続いて急冷から復元処理実施
までの室温放置時間については特に制限する必要はな
く、数カ月以上放置した後に復元処理を行ってもその効
果が損なわれることはない。
接鋳造圧延板の別の製造方法に関するものである。即
ち、前記と同様に双ロールによる直接鋳造圧延装置を用
いて圧延板を製造するが、この後溶体化処理して急冷
し、引き続き再加熱処理(請求項4)または高温コイル
巻き取り(請求項5)を行うものである。これらの製造
方法は、前記請求項2および3に記載の方法よりも直接
鋳造圧延時の出側表面温度が低い場合(400℃未満) 、或
いは400 ℃以上の場合であってもその後の冷却速度が遅
い場合( 冷却速度2℃/s未満)の製造方法である。即
ち直接鋳造圧延工程(その後の冷却も含む)だけでは、
溶体化処理が不十分な場合に適用され、別に溶体化処理
それに続く急冷は、後の工程で行うものである。従っ
て、本製造方法では、直接鋳造圧延工程での板の出側の
温度、冷却条件は特に規定しない。本発明の製造法の適
用圧下荷重P(ton)の式は、前記請求項2および3と同様
であるが、出側表面温度(T)は、400 ℃以上の場合も
400 ℃未満の場合いずれにも適用される。これを再度記
すと、この製造方法は、次の式、 : P≧2.5 ×10-5・ t ・ w ・ D1/2・ v ・ exp {1600/
(T+273)} ただし、t:出側厚さ(mm)、w:出側幅(mm)、D:ロール直径
(mm)、v:ロール周速(mpm) 、T:出側表面温度( ℃) を満足する条件で、板厚0.7 〜3mm の板に直接鋳造圧延
した後、別に溶体化処理続いて急冷することが特徴であ
る。なお、本製造法では、直接鋳造圧延後に溶体化処理
続いて急冷を行うため、直接鋳造圧延後の冷却速度は、
特に制限する必要はないが、早い速度で冷却すれば粗大
な化合物の析出が抑制され、その後の溶体化処理がより
速やかに行われるため好ましいと言えよう。
℃〜材料の溶融温度の範囲で溶体化処理を施し、2 ℃/s
以上の冷却速度で175 ℃以下の温度まで急冷する。この
溶体化処理の温度を400 ℃以上としたのは、これ未満の
温度ではMgやSiを十分に固溶させることができないから
である。その後2 ℃/s以上の冷却速度で175 ℃以下の温
度まで急冷するのは、冷却前に固溶しているSi、Mg等の
添加元素の析出を極力生じさせずに過飽和に固溶させ、
この後の塗装・焼付けの際の加熱時に微細な強化相を析
出させて強度を向上させるためである。2 ℃/sec未満の
冷却速度または175 ℃以上の温度への冷却では冷却中に
粗大な化合物が析出してくるため、延性の低下も招いて
しまう。本製造方法は、この後前記の請求項2、3と同
様に、再加熱処理(請求項4)または高温コイル巻き取
り(請求項5)を行うものである。この再加熱処理また
は高温コイル巻き取りの条件、意義、効果等は、前記の
請求項2、3で説明したことと同様である。
変化の小さい焼付け硬化性に優れるAl-Mg-Si系合金の直
接鋳造圧延板を低コストで製造することが可能となる。
従来法と同様に自然時効を抑制するための復元処理ある
いは高温巻き取りが必要となるものの、その前段階まで
の造塊、面削、均質化処理、熱間圧延、冷間圧延等の工
程が大幅に簡略化されるため、トータルの製造コストは
大幅に低減される。
例とともに、さらに詳細に説明する。表1に示す組成の
Al-Mg-Si系合金溶湯を、図1、図2に示す横型の双ロー
ルによる直接鋳造圧延装置で、厚さ0.7 〜3mm の圧延板
を製造した。この製造条件の詳細を表2に示す。
いて、表層部の金属組織における連続したMg2Si 化合物
の最大長さを、走査型電子顕微鏡を用いて反射電子像の
観察を行って、測定した。また、製造後1、5、20、60 日
間、室温に放置した後、引張試験を実施した。さらに塗
装・焼付けの際の加熱をシミュレートした 175℃で60分
の加熱を施した後にも引張試験を行った。なお、引張試
験はJIS5号引張試験片により、引張強さ、耐力、伸びを
測定した。これらの結果を表3に示す。
及びその製造方法(A-G) では、塗装・焼付けの際の加熱
による耐力上昇が大きく(100MPa以上)、加熱前の延性
(伸び)も優れ(27% 以上)、さらにこれらの特性の室
温放置による安定性に優れていることがわかる。これに
対して、本発明で規定した組成をはずれるか又は本発明
の製造条件を外れる比較例(H-M) は、加熱前後の耐力上
昇が小さく、または加熱前の延性(伸び)の点でも劣っ
ていることがわかる。
板及びその製造方法によれば、自然時効時のG.P.ゾーン
の析出を抑制し、塗装・焼付けの際の加熱で速やかに強
化相が析出し、経時変化が小さく高い時効硬化性を有す
るAl-Mg-Si系合金板を低コストで得ることができるもの
で、工業上顕著な効果を奏するものである。
の概略説明図である。
Claims (5)
- 【請求項1】 必須元素としてSi 0.2〜3.0%(mass%、以
下同じ) 、Mg 0.2〜3.0%を含み、Mn 0.01 〜0.5%、Cr
0.01 〜0.5%、Zr 0.01 〜0.5%、Ti 0.001〜0.5%の1種
若しくは2種以上を含み、更にCu 0〜2.5%、Sn 0〜0.2
%、Zn 0〜2.0%の1種若しくは2種以上を含み、Feを1.0
%以下に規制し、残部がAlと不可避的不純物からなるAl
合金であり、板厚が0.7 〜3mm の直接鋳造圧延板であっ
て、板表層部の金属組織において、連続したMg2Si 化合
物の最大長さが50μm 以下であることを特徴とするAl-M
g-Si系合金の直接鋳造圧延板。 - 【請求項2】 必須元素としてSi 0.2〜3.0%、Mg 0.2〜
3.0%を含み、Mn 0.01 〜0.5%、Cr 0.01 〜0.5%、Zr 0.0
1 〜0.5%、Ti 0.001〜0.5%の1種若しくは2種以上を含
み、更にCu 0〜2.5%、Sn 0〜0.2%、Zn 0〜2.0%の1種若
しくは2種以上を含み、Feを1.0%以下に規制し、残部が
Alと不可避的不純物からなるAl合金溶湯を、双ロールに
よる直接鋳造圧延装置を用いて、圧下荷重P(ton)を次の
、式、 : P≧2.5 ×10-5・ t ・ w ・ D1/2・ v ・ exp {1600/
(T+273)} : T≧400 ただし、 t:出側板厚(mm)、w:出側板幅(mm)、D:ロール直径(mm)、 v:ロール周速(mpm) 、T:出側板の表面温度( ℃) を満足する条件で、板厚0.7 〜3mm の板に直接鋳造圧延
した後、2 ℃/s以上の冷却速度で175 ℃以下に急冷し、
その後180 〜320 ℃に再加熱して0 〜25分保持して、板
表層部の金属組織における連続したMg2Si 化合物の最大
長さを50μm 以下とすることを特徴とするAl-Mg-Si系合
金の直接鋳造圧延板の製造方法。 - 【請求項3】 請求項2に記載のAl合金溶湯及び圧延条
件と同様の条件で、板厚0.7 〜3mm の板に直接鋳造圧延
した後、2 ℃/s以上の冷却速度で40〜175 ℃の範囲まで
急冷し、前記温度でコイル状に巻き取り、板表層部の金
属組織における連続したMg2Si 化合物の最大長さを50μ
m 以下とすることを特徴とするAl-Mg-Si系合金の直接鋳
造圧延板の製造方法。 - 【請求項4】 必須元素としてSi 0.2〜3.0%、Mg 0.2〜
3.0%を含み、Mn 0.01 〜0.5%、Cr 0.01 〜0.5%、Zr 0.0
1 〜0.5%、Ti 0.001〜0.5%の1種若しくは2種以上を含
み、更にCu 0〜2.5%、Sn 0〜0.2%、Zn 0〜2.0%の1種若
しくは2種以上を含み、Feを1.0%以下に規制し、残部が
Alと不可避的不純物からなるAl合金溶湯を、双ロールに
よる直接圧延装置を用いて、圧下荷重P(ton)を次の
式、 : P≧2.5 ×10-5・ t ・ w ・ D1/2・ v ・ exp {1600/
(T+273)} ただし、 t:出側板厚(mm)、w:出側板幅(mm)、D:ロール直径(mm)、 v:ロール周速(mpm) 、T:出側板の表面温度( ℃) を満足する条件で、板厚0.7 〜3mm の板に直接鋳造圧延
した後、400 ℃〜材料の溶融温度の範囲で溶体化処理を
施し、溶体化後の冷却を2 ℃/s以上の冷却速度で175 ℃
以下に急冷し、その後180 〜320 ℃に再加熱して0 〜25
分保持して、板表層部の金属組織における連続したMg2S
i 化合物の最大長さを50μm 以下とすることを特徴とす
るAl-Mg-Si系合金の直接鋳造圧延板の製造方法。 - 【請求項5】 請求項4に記載のAl合金溶湯及び圧延条
件と同様の条件で、板厚0.7 〜3mm の板に直接鋳造圧延
した後、400 ℃〜材料の溶融温度の範囲で溶体化処理を
施し、溶体化後の冷却を2 ℃/s以上の冷却速度で40〜17
5 ℃の範囲まで急冷し、前記温度でコイル状に巻きり、
板表層部の金属組織における連続したMg2Si 化合物の最
大長さを50μm 以下とすることを特徴とするAl-Mg-Si系
合金の直接鋳造圧延板の製造方法。
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