JP3703919B2 - Al−Mg−Si系合金の直接鋳造圧延板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、経時変化の少ない焼付硬化性に優れたAl-Mg-Si系合金の直接鋳造圧延板の製造方法に関するものであり、さらに具体的には自動車部品、家電製品等の曲げ成形、プレス成形等に用いる成形用に好適なAl-Mg-Si系合金の直接鋳造圧延板を、従来技術と比べて廉価な製造コストで製造できる製造方法に関するものである。
なお本明細書において、Al合金の添加元素の含有量は、全てmass%を意味するものであるが、これを単に%と記している。
【0002】
【従来の技術】
自動車の外板、家電用のシャーシ等は、耐食性及び延性に優れ、かつ加熱により時効硬化するAl-Mg-Si系合金板を、所定の形状に成形し、しかる後塗装・焼付け加熱して時効硬化させ、製品にする場合が多い。
しかしながら、従来の製造方法で製造されたAl-Mg-Si系合金板は、溶体化処理後室温に放置(自然時効)により、G.P.ゾーンが析出し、その焼付け加熱時に強度向上に寄与するβ' と称されるMg2Si の中間相またはそれに準ずる強化相の析出を阻害してしまうため、溶体化処理後長時間経過してしまった材料では、塗装・焼付け加熱後の強度が十分に得られなかった。更に、G.P.ゾーンの析出に伴って強度が上昇し、延性が著しく低下するという問題も同時に生じていた。
【0003】
この問題を解決する方法として、特公平05-7460 に示されているような溶体化処理後の予備時効処理、また特開平04-259358 に示されているような復元処理、またそれらを組み合わせた処理などが考案されている。しかし、これらの処理により、延性を損なうことなく塗装・焼付け時の強度上昇を増加させることが可能になるものの、工程が増えることにより製造コストが高くなる問題がある。
従来の成形用Al-Mg-Si系合金圧延板及びその成形品は、前記の改良の製造方法も含めて以下のごとく製造されている。
即ち、これらは、まず所定の合金組成の鋳塊を製造し、これを面削及び均質化処理し、続いて熱間圧延、冷間圧延(必要に応じて焼鈍)、溶体化処理、前記の予備時効処理又は復元処理、成形、時効硬化処理(塗装・焼付け加熱)して製造されている。
このように従来の製造方法は、工程が非常に長く、また大型設備も必要とする等により、製造コストは高くなり、必ずしも工業的な生産に向いているとはいえない状況にある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、室温放置による自然時効時に析出するG.P ゾーンを抑制し、塗装・焼付け加熱時に速やかに強化相が析出して高い焼付け硬化が得られるような、経時変化が小さい成形用Al-Mg-Si系合金板を、工程が極めて短いこと等により低コストで製造できる直接鋳造圧延法による製造方法を提供することである。
また本発明の他の課題は、その直接鋳造圧延法による好ましい製造条件を見出すことである。
なお、ここでいう直接鋳造圧延法とは、図1、図2に示すごとく、双ロール1、2間にノズル3より溶湯4を連続的に供給し、溶湯の鋳造凝固の直後に、前記双ロール1、2で圧延することにより、溶湯から直接に長尺の圧延板を製造し、そのコイルとするものである。この方法は、連続鋳造板のみを得る方法とは異なり一般にはハンター法、直接圧延法等と呼ばれているものであるが、本明細書においては直接鋳造圧延法ということとする。
この製造方法は、従来別工程で行われている鋳塊又は鋳板とする工程、均質化処理工程、熱間及び冷間圧延工程を一工程で行うもので、多くの工程が省略できる。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る Al-Mg-Si 系合金の直接鋳造圧延板の製造方法は、前記課題を解決するため以下のように構成したものである。
すなわち、請求項1の製造方法は、Si 0.2〜3.0%(mass% 、以下同じ )、Mg 0.2〜3.0%、Ti 0.001 〜 0.5% を必須元素として含み、さらに Cu 0 〜 2.5% (ただし、 0 %は含まない場合を意味する。以下同じ。)、 Sn 0 〜 0.2% 、 Zn 0 〜 2.0%の1種若しくは2種以上を含み、Feを1.0%以下に規制し、残部がAlと不可避的不純物からなるAl合金溶湯を、双ロールによる直接鋳造圧延装置を用いて、圧下荷重P(ton)を次の1、2式、
1: P≧2.5 ×10-5・ t ・ w ・ D1/2・ v ・ exp {1600/(T+273)}
2: T≧400
ただし、
t:出側板厚(mm)、w:出側板幅(mm)、D:ロール直径(mm)、
v:ロール周速(mpm) 、T:出側板の表面温度( ℃)
を満足する条件で、板厚0.7 〜3mm の板に直接鋳造圧延した後、2 ℃/s以上の冷却速度で175 ℃以下に急冷し、その後180 〜320 ℃に再加熱するか又は当該再加熱に続いて当該温度で 25 分以下保持することにより、板表層部の金属組織における連続したMg2Si 化合物の最大長さを50μm 以下とすることを特徴としている。
【0006】
請求項2に記載の製造方法は、請求項1の製造方法における AL 合金溶湯と同一の組成
の合金溶湯を、請求項1の製造方法におけるものと同一の方法及び条件で板厚0.7 〜3mm の板に直接鋳造圧延した後、2 ℃/s以上の冷却速度で40〜175 ℃の範囲まで急冷し、当該板を前記温度でコイル状に巻き取ることにより、板表層部の金属組織における連続したMg2Si 化合物の最大長さを50μm 以下とすることを特徴としている。
【0007】
請求項3に記載の製造方法は、Si 0.2〜3.0%、Mg 0.2〜3.0%、Ti 0.001 〜 0.5% を必須元素として含み、さらに Cu 0 〜 2.5% (ただし、 0 %は含まない場合を意味する。以下同じ。)、 Sn 0 〜 0.2% 、 Zn 0 〜 2.0%の1種若しくは2種以上を含み、Feを1.0%以下に規制し、残部がAlと不可避的不純物からなるAl合金溶湯を、双ロールによる直接圧延装置を用いて、圧下荷重P(ton)を次の11式、
11: P≧2.5 ×10-5・ t ・ w ・ D1/2・ v ・ exp {1600/(T+273)}
ただし、
t:出側板厚(mm)、w:出側板幅(mm)、D:ロール直径(mm)、
v:ロール周速(mpm) 、T:出側板の表面温度( ℃)
を満足する条件で、板厚0.7 〜3mm の板に直接鋳造圧延した後、400 ℃〜材料の溶融温度の範囲で溶体化処理を施し、溶体化後の冷却を2 ℃/s以上の冷却速度で175 ℃以下に急冷し、その後180 〜320 ℃に再加熱するか又は当該再加熱に続いて当該温度で 25 分以下保持することにより、板表層部の金属組織における連続したMg2Si 化合物の最大長さを50μm 以下とすることを特徴としている。
【0008】
請求項4に記載の製造方法は、請求項1の製造方法における AL 合金溶湯と同一の組成
の合金溶湯を、請求項1の製造方法におけるものと同一の方法及び条件で板厚0.7 〜3mm の板に直接鋳造圧延した後、400 ℃〜材料の溶融温度の範囲で溶体化処理を施し、溶体化後の冷却を2 ℃/s以上の冷却速度で40〜175 ℃の範囲まで急冷し、当該板を前記温度でコイル状に巻き取ることにより、板表層部の金属組織における連続したMg2Si 化合物の最大長さを50μm 以下とすることを特徴としている。
【0009】
請求項5の製造方法は、請求項1〜4のいずれかの製造方法において、前記Al合金溶湯は、Mn 0.01 〜 0.5% 、 Cr 0.01 〜 0.5% 、 Zr 0.01 〜 0.5% の少なくとも一種以上をさらに含むものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下前記本発明方法を詳しく説明する。
まず、本発明において Al 合金溶湯の組成を前記のように限定した理由を説明する。
Siは、塗装・焼付け加熱時にMgと共にβ' と称されるMg2Si の中間相またはそれに準ずる強化相として析出し強度を向上させる。その添加量を0.2 〜3.0%と限定したのは、0.2%未満ではその効果が小さく、3.0%を越えると溶体化処理後の延性が低下するためである。
Mgは,溶体化処理後にはマトリックス中に固溶しており、延性の向上に寄与する。また、上述のように塗装・焼付け加熱時にSiと共に強化相として析出し強度を向上させる。その添加量を0.2 〜3.0%と限定したのは、0.2%未満ではその効果が小さく、3.0%を越えると溶体化処理後の延性が低下するためである。
以上のようにSi、Mgは塗装・焼付け加熱時に強化相として析出し、強度を向上させる。この両元素の存在比が異なるとその焼付け硬化性も異なり、Si、Mgの重量比がSi>0.6Mg% の場合、Mg2Si 量に対し過剰Siとなり、より優れた焼付け硬化性が得られる。
なお、塗装・焼付け加熱時の時効挙動をコントロールするために、Ag、Cdなどを少量添加しても、本発明の効果を損なうことはない。
【0011】
Ti は、結晶粒の微細化あるいはマトリックス強度を向上させるために添加される。その添加量は、0.001〜0.5%であり、下限未満では効果が少なく、上限を越えると溶体化処理後の延性が低下する。
また、Cu、Sn、Znは、塗装・焼付け加熱時に析出し強度を向上させる。またSnの添加は表面品質を改善する効果もある。その添加は、必要に応じて、Cu 0〜2.5%、Sn 0〜0.2%、Zn 0〜2.0%の1種若しくは2種以上である。
ここで、各元素が0%とは、添加しない場合もあることを意味する。また添加する場合で、各元素をそれぞれ、2.5%以下、0.2%以下、2.0%以下と限定したのは、これらを越えると耐食性が低下する、および焼き入れ感受性が高くなる等の弊害を生じるためである。
Feは、通常Alの不純物として含まれるものである。しかし、FeはSiと化合物を作りやすく、1.0%を越えて含まれると塗装・焼付けの際の加熱時の強度向上を阻害する。
なお、鋳造組織の微細化材として通常添加されるB などは、0.1%以下の添加であれば、特に本発明の効果を損なうことはない。
【0012】
Mn 、 Cr 、 Zr は、それぞれ結晶粒の微細化あるいはマトリックス強度を向上させるために任意的に添加される。その添加は、必要に応じてMn 0.01 〜0.5%、Cr 0.01〜0.5%、Zr 0.01 〜0.5%の1種若しくは2種以上である。
それぞれ下限未満では効果が少なく、上限を越えると溶体化処理後の延性が低下する。
【0013】
本発明方法による直接鋳造圧延を、具体的に図で説明すると、図1及び図2に示すような双ロールによる直接鋳造圧延装置を用いて、前記請求項1に記載のAl合金溶湯4をノズル3を通して、双ロール1、2間に連続的に供給し、ノズル3の先端Bから双ロール1、2の最接近点A間で、鋳造・凝固させ、A点近傍で圧延を行うものである。なお図2において、C点は溶湯の最終凝固点である。
前記のように、鋳造・凝固、圧延を一工程で行って、溶湯から直接圧延板5を製造し、その直後に急冷し、引き続き再加熱処理(請求項1,3)または高温コイル巻き取り(請求項2,4)を行うものである。
なお、直接鋳造圧延による板厚を0.7 〜3mm としたのは、本発明方法により製造された直接鋳造圧延板が、そのまま成形用材料として使用できることを念頭に置いたものだからである。
【0014】
前記の製造方法は、従来法のDC鋳造での造塊、熱間および冷間圧延での塑性加工、さらに最終焼鈍処理での溶体化および再結晶という金属組織を制御するために必要な処理を、一回の双ロールによる直接鋳造圧延で実現させることを特徴としており、この双ロールによる直接鋳造圧延条件を適切に定めることが非常に重要となる。
本発明方法によれば、そのような条件を見いだすために、双ロール直接鋳造圧延の条件と金属組織および機械的特性との関係について、精力的に基礎的観点からの検討を行い、その結果以下のように製造条件を規定することにより、従来法と同等の性能を有する Al-Mg-Si 系合金板を直接鋳造圧延法により製造することが可能であることを見いだしたものである。
【0015】
請求項1,2の製造方法における製造条件
双ロールにかかる圧下荷重P(ton)を次の1、2式、
1: P≧2.5 ×10-5・ t ・ w ・ D1/2・ v ・ exp {1600/(T+273)}
2: T≧400
ただし、
t:出側板厚(mm)、w:出側板幅(mm)、D:ロール直径(mm)、
v:ロール周速(mpm) 、T:出側板の表面温度( ℃)
を満足する条件で、板厚0.7 〜3mm の板に直接鋳造圧延した後、2 ℃/s以上の冷却速度で175 ℃以下に急冷(請求項1)する。
即ち、この方法は、直接鋳造圧延の出側の温度を400 ℃以上の高温で行い、急冷することにより、直接鋳造圧延工程で溶体化処理も兼ねるものである。
【0016】
ここで圧下荷重P(ton)を、前記1式としたのは、これより小さい圧下荷重では凝固終了からの塑性変形量が不足し、晶出相の分断が十分に行われず、従来法で製造した場合に比べ延性が低下してしまうためである。
前記1式中における出側板の表面温度 T を前記2式としたのは、出側板の表面温度が 400 ℃未満の温度では固溶していたMgやSiが析出し始め、塗装・焼付け加熱時に十分な強度向上が期待できないからである。
また、直接鋳造圧延板を前記の条件で製造後、2 ℃/s以上の冷却速度で175 ℃以下の温度まで急冷するのは、冷却前に固溶しているSi、Mg等の添加元素の析出を極力生じさせずに過飽和に固溶させ、この後の塗装・焼付けの際の加熱時に微細な強化相を析出させて強度を向上させるためである。なお、2 ℃/sec未満の冷却速度または175 ℃以上の温度への冷却では、冷却中に粗大な化合物が析出してくるため、延性の低下を招いてしまう。
【0017】
請求項1の製造方法では、前記の如く直接鋳造圧延後、175 ℃以下の温度に急冷し、引き続き再加熱処理(復元処理)を行う。
この処理は、180 〜320 ℃に再加熱して0 〜25分の保持を行い、その後室温まで放冷するものである。
ここで0 分の保持とは、保持しないこと即ち180 〜320 ℃の温度に到達したら、保持することなく冷却することも含む意味である。
この再加熱処理は、通常連続焼鈍ライン(CAL)で実施するのが好ましい。
【0018】
請求項2の製造方法では、前記の如く直接鋳造圧延した後の板を、40〜175 ℃の温度に急冷し、この温度範囲でコイルに巻き取り(高温コイル巻き取り)を行い、その後室温に放置等の処理を行うものである。
なお、高温コイル巻き取り後の処理は、巻き取りコイルをそのまま室温に放置して放冷してもよいし、巻き取り温度(40〜175 ℃)で炉中に36時間以内保持し、その後放冷してもよい。また、更に高温コイル巻き取り後、しばらく室温に放置し、続いて40〜175 ℃の炉中に36時間以内保持し、その後放冷してもよい。
これらの高温巻き取り後の処理は、Al-Mg-Si系合金材について従来から知られているもので、いずれを適用してもよい。
【0019】
請求項1,2の製造方法においては、前記のように直接鋳造圧延続いて急冷後、再加熱処理(復元処理)もしくは40〜175 ℃での高温コイル巻き取り処理を必要とする。この処理が必要な理由は、上述の双ロールによる直接鋳造圧延板は、従来の製造工程で得られる板材とほぼ同等の性能が得られるものの、従来法で製造した板と同様に自然時効によりG.P.ゾーンが析出し、塗装・焼付けの際の加熱で、強度が十分に得られなかったり、強度が上昇して延性が著しく低下するという問題が生じるからである。
本発明の双ロールによる直接鋳造圧延の場合も、従来法と同様に上述の復元処理あるいは高温コイル巻き取り処理により、自然時効によるG.P.ゾーン生成を抑制する必要がある。
この復元処理及び高温コイル巻き取り処理の熱処理条件に範囲があるのは、下限未満でも又上限を越えても所定の性能が得られないからである。
なお、溶体化処理続いて急冷から復元処理実施までの室温放置時間については特に制限する必要はなく、数カ月以上放置した後に復元処理を行ってもその効果が損なわれることはない。
【0020】
請求項3,4の製造方法における製造条件
Al 合金溶湯を、双ロールによる直接鋳造圧延装置を用いて、圧下荷重 P(ton) を請求項1,2の製造方法に適用された1の条件で前記板厚の板を直接鋳造圧延した後、 400 ℃〜材料の溶融温度の範囲で後溶体化処理する。
これらの製造方法は、前記請求項1および2に記載の方法よりも直接鋳造圧延時の出側表面温度が低い場合(400℃未満) 、或いは400 ℃以上の場合であってもその後の冷却速度が遅い場合( 冷却速度2℃/s未満)の製造方法である。即ち直接鋳造圧延工程(その後の冷却も含む)だけでは、溶体化処理が不十分な場合に適用され、別に溶体化処理それに続く急冷は、後の工程で行うものである。
従って、本製造方法では、直接鋳造圧延工程での板の出側の温度、冷却条件は特に規定しない。
なお、本製造法では、直接鋳造圧延後に溶体化処理続いて急冷を行うため、直接鋳造圧延後の冷却速度は、特に制限する必要はないが、早い速度で冷却すれば粗大な化合物の析出が抑制され、その後の溶体化処理がより速やかに行われるため好ましいと言えよう。
【0021】
前記溶体化処理の温度を400 ℃以上としたのは、これ未満の温度ではMgやSiを十分に固溶させることができないからである。その後2 ℃/s以上の冷却速度で175 ℃以下の温度まで急冷するのは、冷却前に固溶しているSi、Mg等の添加元素の析出を極力生じさせずに過飽和に固溶させ、この後の塗装・焼付けの際の加熱時に微細な強化相を析出させて強度を向上させるためである。2 ℃/sec未満の冷却速度または175 ℃以上の温度への冷却では冷却中に粗大な化合物が析出してくるため、延性の低下も招いてしまう。
本製造方法は、この後前記の請求項1,2と同様に、再加熱処理(請求項3)または高温コイル巻き取り(請求項4)を行うものである。
この再加熱処理または高温コイル巻き取りの条件、意義、効果等は、前記の請求項1、 2の製造方法について説明したことと同様である。
【0022】
前記本発明方法により製造された Al-Mg-Si 系合金の直接鋳造圧延板は、その表層部の金属組織において、連続した Mg 2 Si 化合物の最大長さが 50 μ m 以下となる。前記の最大長さが 50 μ m を越えるような Mg や Si を含む粗大な主溶質系化合物が、塗装・焼付け前にすでに析出しているような場合には、固溶量が不足しており、塗装・焼付け加熱時の強度向上が十分でなくなる。
本発明方法により製造された圧延板は以上のとおりであであるので、後に記す実施例でも明らかなごとく、塗装・焼付け加熱前の伸びが27%以上で成形性に優れ、また成形後の塗装・焼付け時の加熱において、強度(YS)の向上が加熱前に比し、100MPa以上高くなり、前述のような各種用途の成形材料に適している。
また、前記本発明に係る製造方法によれば、経時変化の小さい焼付け硬化性に優れるAl-Mg-Si系合金の直接鋳造圧延板を低コストで製造することが可能となる。従来法と同様に自然時効を抑制するための復元処理あるいは高温巻き取りが必要となるものの、その前段階までの造塊、面削、均質化処理、熱間圧延、冷間圧延等の工程が大幅に簡略化されるため、トータルの製造コストは大幅に低減される。
【0023】
【実施例】
次に、本発明の実施例(本発明例)を、比較例とともに、さらに詳細に説明する。
表1に示す組成のAl-Mg-Si系合金溶湯を、図1及び図2に示す横型の双ロールによる直接鋳造圧延装置で、厚さ0.7 〜3mm の圧延板を製造した。この製造条件の詳細を表2に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
このように製造された直接鋳造圧延板について、表層部の金属組織における連続したMg2Si 化合物の最大長さを、走査型電子顕微鏡を用いて反射電子像の観察を行って、測定した。
また、製造後1、5、20、60 日間、室温に放置した後、引張試験を実施した。さらに塗装・焼付けの際の加熱をシミュレートした 175℃で60分の加熱を施した後にも引張試験を行った。なお、引張試験はJIS5号引張試験片により、引張強さ、耐力、伸びを測定した。これらの結果を表3に示す。
【0027】
【表3】
【0028】
表3より明らかなように、本発明の圧延板及びその製造方法(A-G) では、
塗装・焼付けの際の加熱による耐力上昇が大きく(100MPa以上)、加熱前の延性(伸び)も優れ(27% 以上)、さらにこれらの特性の室温放置による安定性に優れていることがわかる。
これに対して、本発明で規定した組成をはずれるか又は本発明の製造条件を外れる比較例(H-M) は、加熱前後の耐力上昇が小さく、または加熱前の延性(伸び)の点でも劣っていることがわかる。
【0029】
【発明の効果】
このように本発明に係る直接鋳造圧延板その製造方法によれば、自然時効時のG.P.ゾーンの析出を抑制し、塗装・焼付けの際の加熱で速やかに強化相が析出し、経時変化が小さく高い時効硬化性を有するAl-Mg-Si系合金板を低コストで得ることができるもので、工業上顕著な効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 横型双ロールによる直接鋳造圧延装置(断面)の概略説明図である。
【図2】 図1のD部を拡大した詳細図である。
【符号の説明】
1 上ロール
2 下ロール
3 ノズル
4 金属溶湯
5 直接鋳造圧延板
A 双ロールのセンターライン(ロールの最接近点)
B ノズルの先端
C 溶湯の最終凝固点
Claims (5)
- Si 0.2〜3.0%(mass% 、以下同じ )、Mg 0.2〜3.0%、Ti 0.001 〜 0.5% を必須元素として含み、さらに Cu 0 〜 2.5% (ただし、 0 %は含まない場合を意味する。以下同じ。)、 Sn 0 〜 0.2% 、 Zn 0 〜 2.0%の1種若しくは2種以上を含み、Feを1.0%以下に規制し、残部がAlと不可避的不純物からなるAl合金溶湯を、双ロールによる直接鋳造圧延装置を用いて、圧下荷重P(ton)を次の1、2式、
1: P≧2.5 ×10-5・ t ・ w ・ D1/2・ v ・ exp {1600/(T+273)}
2: T≧400
ただし、
t:出側板厚(mm)、w:出側板幅(mm)、D:ロール直径(mm)、
v:ロール周速(mpm) 、T:出側板の表面温度( ℃)
を満足する条件で、板厚0.7 〜3mm の板に直接鋳造圧延した後、2 ℃/s以上の冷却速度で175 ℃以下に急冷し、その後180 〜320 ℃に再加熱するか又は当該再加熱に続いて当該温度で 25 分以下保持することにより、板表層部の金属組織における連続したMg2Si 化合物の最大長さを50μm 以下とすることを特徴とする、Al-Mg-Si系合金の直接鋳造圧延板の製造方法。 - Si 0.2〜3.0%、Mg 0.2〜3.0%、Ti 0.001 〜 0.5% を必須元素として含み、さらに Cu 0 〜 2.5% (ただし、 0 %は含まない場合を意味する。以下同じ。)、 Sn 0 〜 0.2% 、 Zn 0 〜 2.0%の1種若しくは2種以上を含み、Feを1.0%以下に規制し、残部がAlと不可避的不純物からなるAl合金溶湯を、双ロールによる直接鋳造圧延装置を用いて、圧下荷重P(ton)を次の1、2式、
1: P≧2.5 ×10-5・ t ・ w ・ D1/2・ v ・ exp {1600/(T+273)}
2: T≧400
ただし、
t:出側板厚(mm)、w:出側板幅(mm)、D:ロール直径(mm)、
v:ロール周速(mpm) 、T:出側板の表面温度( ℃)
を満足する条件で、板厚0.7 〜3mm の板に直接鋳造圧延した後、2 ℃/s以上の冷却速度で40〜175 ℃の範囲まで急冷し、当該板を前記温度でコイル状に巻き取ることにより、板表層部の金属組織における連続したMg2Si 化合物の最大長さを50μm 以下とすることを特徴とする、Al-Mg-Si系合金の直接鋳造圧延板の製造方法。 - Si 0.2〜3.0%、Mg 0.2〜3.0%、Ti 0.001 〜 0.5% を必須元素として含み、さらに Cu 0 〜 2.5% (ただし、 0 %は含まない場合を意味する。以下同じ。)、 Sn 0 〜 0.2% 、 Zn 0 〜 2.0%の1種若しくは2種以上を含み、Feを1.0%以下に規制し、残部がAlと不可避的不純物からなるAl合金溶湯を、双ロールによる直接圧延装置を用いて、圧下荷重P(ton)を次の1式、
1: P≧2.5 ×10-5・ t ・ w ・ D1/2・ v ・ exp {1600/(T+273)}
ただし、
t:出側板厚(mm)、w:出側板幅(mm)、D:ロール直径(mm)、
v:ロール周速(mpm) 、T:出側板の表面温度( ℃)
を満足する条件で、板厚0.7 〜3mm の板に直接鋳造圧延した後、400 ℃〜材料の溶融温度の範囲で溶体化処理を施し、溶体化後の冷却を2 ℃/s以上の冷却速度で175 ℃以下に急冷し、その後180 〜320 ℃に再加熱するか又は当該再加熱に続いて当該温度で 25 分以下保持することにより、板表層部の金属組織における連続したMg2Si 化合物の最大長さを50μm 以下とすることを特徴とするAl-Mg-Si系合金の直接鋳造圧延板の製造方法。 - Si 0.2〜3.0%、Mg 0.2〜3.0%、Ti 0.001 〜 0.5% を必須元素として含み、さらに Cu 0 〜 2.5% (ただし、 0 %は含まない場合を意味する。以下同じ。)、 Sn 0 〜 0.2% 、 Zn 0 〜 2.0%の1種若しくは2種以上を含み、Feを1.0%以下に規制し、残部がAlと不可避的不純物からなるAl合金溶湯を、双ロールによる直接圧延装置を用いて、圧下荷重P(ton)を次の1式、
1: P≧2.5 ×10-5・ t ・ w ・ D1/2・ v ・ exp {1600/(T+273)}
ただし、
t:出側板厚(mm)、w:出側板幅(mm)、D:ロール直径(mm)、
v:ロール周速(mpm) 、T:出側板の表面温度( ℃)
を満足する条件で、板厚0.7 〜3mm の板に直接鋳造圧延した後、400 ℃〜材料の溶融温度の範囲で溶体化処理を施し、溶体化後の冷却を2 ℃/s以上の冷却速度で40〜175 ℃の範囲まで急冷し、当該板を前記温度でコイル状に巻き取ることにより、板表層部の金属組織における連続したMg2Si 化合物の最大長さを50μm 以下とすることを特徴とする、Al-Mg-Si系合金の直接鋳造圧延板の製造方法。 - 前記Al合金溶湯は、Mn 0.01 〜 0.5% 、 Cr 0.01 〜 0.5% 、 Zr 0.01 〜 0.5% の少なくとも一種以上をさらに含む、請求項1〜4のいずれかに記載の Al-Mg-Si 系合金の直接鋳造圧延板の製造方法。
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