JPH0995557A - セルロースアセテート溶液、その調製方法およびセルロースアセテートフイルムの製造方法 - Google Patents
セルロースアセテート溶液、その調製方法およびセルロースアセテートフイルムの製造方法Info
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Abstract
素以外の有機溶媒に安定な状態で溶解している溶液を得
る。 【解決手段】 58.0乃至62.5%の平均酢化度を
有するセルロースアセテートが溶媒中に溶解しているセ
ルロースアセテート溶液において、該溶媒がハロゲン化
炭化水素を実質的に含まず、アセトンと他の有機溶媒と
の混合溶媒とし、該他の有機溶媒を、炭素原子数が3乃
至12のエーテル類、炭素原子数が4乃至12のケトン
類、炭素原子数が3乃至12のエステル類および炭素原
子数が1乃至6のアルコール類から選ぶ。
Description
ート溶液、その調製方法およびセルロースアセテートフ
イルムの製造方法に関する。
強靭性と難燃性から各種の写真材料や光学材料に用いら
れている。セルロースアセテートフイルムは、代表的な
写真感光材料の支持体である。また、セルロースアセテ
ートフイルムは、その光学的等方性から、近年市場の拡
大している液晶表示装置にも用いられている。液晶表示
装置における具体的な用途としては、偏光板の保護フイ
ルムおよびカラーフィルターが代表的である。セルロー
スアセテートの酢化度や重合度(粘度と相関関係あり)
は、得られるフイルムの機械的強度や耐久性と密接な関
係がある。酢化度や重合度が低下するにつれて、フイル
ムの弾性率、耐折強度、寸度安定性および耐湿熱性も低
下する。写真用支持体や光学フイルムとして要求される
品質を満足するためには、セルロースアセテートの酢化
度は58%以上(好ましくは59%以上)が必要である
とされる。酢化度が58%以上のセルロースアセテート
は、一般にトリアセチルセルロース(TAC)に分類さ
れる。重合度は、粘度平均重合度として270以上が好
ましく、290以上がさらに好ましいと考えられてい
る。
ソルベントキャスト法またはメルトキャスト法により製
造する。ソルベントキャスト法では、セルロースアセテ
ートを溶媒中に溶解した溶液(ドープ)を支持体上に流
延し、溶媒を蒸発させてフイルムを形成する。メルトキ
ャスト法では、セルロースアセテートを加熱により溶融
したものを支持体上に流延し、冷却してフイルムを形成
する。ソルベントキャスト法の方が、メルトキャスト法
よりも平面性の高い良好なフイルムを製造することがで
きる。このため、実用的には、ソルベントキャスト法の
方が普通に採用されている。ソルベントキャスト法につ
いては、多くの文献に記載がある。最近のソルベントキ
ャスト法では、ドープを支持体上へ流延してから、支持
体上の成形フイルムを剥離するまでに要する時間を短縮
して、製膜工程の生産性を向上させることが課題になっ
ている。例えば、特公平5−17844号公報には、高
濃度ドープを冷却ドラム上に流延することにより、流延
後、剥ぎ取りまでの時間を短縮することが提案されてい
る。
にセルロースアセテートを溶解することだけでなく、様
々な条件が要求される。すなわち、平面性に優れ、厚み
の均一なフイルムを、経済的に効率よく製造するために
は、適度な粘度とポリマー濃度を有する保存安定性に優
れた溶液(ドープ)を調製する必要がある。ドープにつ
いては、ゲル化が容易であることや支持体からの剥離が
容易であることも要求される。そのようなドープを調製
するためは、溶媒の種類の選択が極めて重要である。溶
媒については、蒸発が容易で、フイルム中の残留量が少
ないことも要求される。セルロースアセテートの溶媒と
して、様々な有機溶媒が提案されているが、以上の要求
を全て満足する溶媒は、実質的にはメチレンクロリドに
限られていた。言い換えると、メチレンクロリド以外の
溶媒は、ほとんど実用化されていない。メチレンクロリ
ド以外のセルロースアセテートの有機溶媒としては、エ
ピクロルヒドリン(沸点:116℃)、N−メチルピロ
リドン(沸点:202℃)、テトラヒドロフラン(沸
点:65.4℃)、1,4−ジオキサン(沸点:101
℃)、1,3−ジオキソラン(沸点:75℃)やニトロ
メタン(沸点:101℃)が知られている。これらの溶
剤は、メチレンクロリド(沸点:41℃)よりも沸点が
高いため、乾燥工程における負荷が大きくなる。エーテ
ル化合物は、過酸化物生成による爆発の危険性がある。
ニトロ化合物も爆発性がある。
ない非常に優れた有機溶媒である。しかしながら、メチ
レンクロリドのようなハロゲン化炭化水素は、近年、地
球環境保護の観点から、その使用は著しく規制される方
向にある。また、メチレンクロリドは、低沸点(41
℃)であるため、製造工程において揮散しやすい。この
ため、作業環境においても問題である。これらの問題を
防止するため、製造工程のクローズド化が行なわれてい
るが、密閉するにしても技術的な限界がある。従って、
メチレンクロリドの代替となるような、セルロースアセ
テートの溶媒を捜し求めることが急務となっている。
(沸点:56℃)は、適度の沸点を有し、乾燥負荷もそ
れほど大きくない。また、人体や地球環境に対しても、
塩素系有機溶剤に比べて問題が少ない。しかし、アセト
ンは、セルロースアセテートに対する溶解性が低い。置
換度2.70(酢化度58.8%)以下のセルロースア
セテートに対しては、アセトンは若干の溶解性を示す。
セルロースアセテートの置換度が2.70を越えると、
アセトンの溶解性がさらに低下する。置換度2.80
(酢化度60.1%)以上のセルロースアセテートとな
ると、アセトンは膨潤作用を示すのみで溶解性を示さな
い。
romol,chem.,143巻、105頁(197
1年)は、置換度2.80(酢化度60.1%)から置
換度2.90(酢化度61.3%)のセルロースアセテ
ートを、アセトン中で−80℃から−70℃に冷却した
後、加温することにより、アセトン中にセルロースアセ
テートが0.5乃至5重量%に溶解している希薄溶液が
得られたことを報告している。以下、このように、セル
ロースアセテートと有機溶媒との混合物を冷却して、溶
液を得る方法を「冷却溶解法」と称する。また、セルロ
ースアセテートのアセトン中への溶解については、上出
健二他の論文「三酢酸セルロースのアセトン溶液からの
乾式紡糸」、繊維機械学会誌、34巻、57〜61頁
(1981年)にも記載がある。この論文は、その標題
のように、冷却溶解法を紡糸方法の技術分野に適用した
ものである。論文では、得られる繊維の力学的性質、染
色性や繊維の断面形状に留意しながら、冷却溶解法を検
討している。この論文では、繊維の紡糸のために10乃
至25重量%の濃度を有するセルロースアセテートの溶
液を用いている。
法を用いて、セルロースアセテートがアセトン中に溶解
している溶液を調製することが可能になった。しかし、
セルロースアセテートがアセトン中に溶解している溶液
は、安定性が乏しいとの問題がある。溶液の安定性は、
フイルムのような製品製造における重要な条件である。
溶液の移送時に、配管中で未溶解物が発生したり、製造
装置の保守管理のための停止期間中に凝固が起きること
は避けねばならない。セルロースアセテート(酢化度:
60.9%、粘度平均重合度:299)を、アセトンを
溶媒として冷却溶解法により調製した溶液について、セ
ルロースアセテート濃度と溶液の保存温度との関係を図
1に示す。図1に示すように実用的な保存温度範囲(−
10℃から30℃)において、高温域でLCST型、低
温域でUCST型の2つの相分離領域が認められた。こ
の溶液を安定に保存するためには、図1に示す均一相領
域の温度を維持する必要がある。この領域範囲を外れる
と、溶液は相分離によるゲル化を生じて乳白色の固体と
なる。
が、ハロゲン化炭化水素以外の有機溶媒に安定な状態で
溶解している溶液を提供することである。また本発明の
目的は、メチレンクロリドのようなハロゲン化炭化水素
系有機溶剤を使用せずに、安定なセルロースアセテート
溶液を調製することでもある。さらに本発明の目的は、
メチレンクロリドのようなハロゲン化炭化水素系有機溶
剤を使用せずに、平面性が良好なセルロースアセテート
フイルムを製造することすることでもある。
(1)のセルロースアセテート溶液により達成された。 (1)58.0乃至62.5%の平均酢化度を有するセ
ルロースアセテートが溶媒中に溶解しているセルロース
アセテート溶液であって、該溶媒がハロゲン化炭化水素
を実質的に含まない、アセトンと他の有機溶媒との混合
溶媒であり、該他の有機溶媒が、炭素原子数が3乃至1
2のエーテル類、炭素原子数が4乃至12のケトン類、
炭素原子数が3乃至12のエステル類および炭素原子数
が1乃至6のアルコール類から選ばれることを特徴とす
るセルロースアセテート溶液。本発明は、下記(2)〜
(5)の態様で実施することができる。 (2)セルロースアセテートが10乃至40重量%の濃
度で溶解している(1)に記載のセルロースアセテート
溶液。 (3)混合溶媒中のアセトンの割合が、10乃至99.
5重量%である(1)に記載のセルロースアセテート溶
液。 (4)セルロースアセテートが、250乃至400の粘
度平均重合度を有する(1)に記載のセルロースアセテ
ート溶液。 (5)さらに可塑剤が、セルロースアセテート100重
量部に対して0.1乃至20重量部の量で溶解している
(1)に記載のセルロースアセテート溶液。
アセテート溶液の調製方法および下記(7)のセルロー
スアセテートフイルムの製造方法も提供する。 (6)58.0乃至62.5%の平均酢化度を有するセ
ルロースアセテート、アセトンおよび他の有機溶媒との
混合物であって、ハロゲン化炭化水素を実質的に含ま
ず、かつ該他の有機溶媒が、炭素原子数が3乃至12の
エーテル類、炭素原子数が4乃至12のケトン類、炭素
原子数が3乃至12のエステル類および炭素原子数が1
乃至6のアルコール類から選ばれる混合物を−100乃
至−10℃に冷却する工程、および冷却した混合物を0
乃至50℃に加温して、溶媒中にセルロースアセテート
を溶解する工程からなるセルロースアセテート溶液の調
製方法。
度を有するセルロースアセテートが溶媒中に溶解してい
るセルロースアセテート溶液であって、該溶媒がハロゲ
ン化炭化水素を実質的に含まない、アセトンと他の有機
溶媒との混合溶媒であり、該他の有機溶媒が、炭素原子
数が3乃至12のエーテル類、炭素原子数が4乃至12
のケトン類、炭素原子数が3乃至12のエステル類およ
び炭素原子数が1乃至6のアルコール類から選ばれるこ
とを特徴とするセルロースアセテート溶液を支持体上に
流延する工程および溶媒を蒸発させてフイルムを形成す
る工程からなるセルロースアセテートフイルムの製造方
法。上記(7)のセルロースアセテートフイルムの製造
方法は、下記(8)の態様で実施することができる。 (8)セルロースアセテートを流延する支持体が、10
℃以下の表面温度を有している(7)に記載の製造方
法。
セテートは、平均酢化度(アセチル化度)が58.0か
ら62.5%である。酢化度とは、セルロース単位重量
当たりの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:
D−817−91(セルロースアセテート等の試験法)
におけるアセチル化度の測定および計算に従う。このセ
ルロースアセテートの酢化度の範囲は、前述したよう
に、写真用支持体や光学フイルムとして要求される品質
を満足するために必要とされる値である。また、酢化度
が58.0未満のセルロースアセテートは、本発明の冷
却溶解法を用いなくても、アセトンやアセトンを含む混
合溶媒中に溶解することができる。
たは木材パルプから合成することができる。綿花リンタ
ーと木材パルプを混合して用いてもよい。一般に木材パ
ルプから合成する方が、コストが低く経済的である。た
だし、綿花リンターを混合することにより、剥ぎ取り時
の負荷を軽減できる。また、綿花リンターを混合する
と、短時間に製膜しても、フイルムの面状があまり悪化
しない。セルロースアセテートは、一般に、酢酸−無水
酢酸−硫酸でセルロースを酢化して合成する。工業的に
は、メチレンクロリドを溶媒とするメチクロ法あるいは
セルロースアセテートの非溶媒(例、ベンゼン、トルエ
ン)を添加して繊維状で酢化する繊維状酢化法が用いら
れる。
(DP)は、250以上であることが好ましく、290
以上であることがさらに好ましい。重合度が250未満
のセルロースアセテートでは、得られるフイルムの強度
が悪化する。粘度平均重合度は、オストワルド粘度計に
て測定したセルロースアセテートの固有粘度[η]か
ら、下記の式により求める。 (1) DP=[η]/Km 式中、[η]は、セルロースアセテートの固有粘度であ
り、Kmは、定数6×10-4である。
る場合、粘度平均重合度と落球式粘度法による濃厚溶液
粘度(η)とが下記式(2)の関係を満足することが好
ましい。 (2)2.814×ln(DP)−11.753≦ln(η)≦6.2
9×ln(DP)−31.469 式中、DPは290以上の粘度平均重合度の値であり、
ηは落球式粘度法における標線間の通過時間(秒)であ
る。上記式(2)は、本発明者が行なった実験のデータ
から、粘度平均重合度と濃厚溶液粘度をプロットし、そ
の結果から算出したものである。粘度平均重合度が29
0以上のセルロースアセテートにおいては、一般に重合
度が高くなると濃厚溶液の粘度が指数的に増加する。こ
れに対して、上記式を満足するセルロースアセテートで
は、粘度平均重合度に対する濃厚溶液粘度の増加が直線
的である。言い換えると、高い粘度平均重合度を有する
セルロースアセテートの場合は、上記式(1)を満足す
るように濃厚溶液粘度の増加を抑制することが好まし
い。
ートは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによ
るMw/Mn(Mwは重量平均分子量、Mnは数平均分
子量)の分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なM
w/Mnの値としては、1.0乃至1.7であることが
好ましく、1.3乃至1.65であることがさらに好ま
しく、1.4乃至1.6であることが最も好ましい。M
w/Mnの値が1.7を越えると、ドープ粘度が大きく
なり過ぎて、フイルムの平面性が低下する場合がある。
なお、Mw/Mnの値が1.0乃至1.4の値のセルロ
ースアセテートは、一般に製造が困難である。この範囲
の値のセルロースアセテートを得ようとしても、実際に
は分子量が著しく低いものしか得られない。従って、そ
のようなセルロースアセテートから製造したフイルム
は、分子量の低下によりフイルムの機械物性も低下する
場合が多い。
小さい値であることが好ましい。結晶化は発熱量が小さ
いことは、結晶化度が小さいことを意味する。具体的な
結晶化発熱量(ΔHc)は、5乃至17J/gであるこ
とが好ましく、6乃至16J/gであることがさらに好
ましく、10乃至16J/gであることが最も好まし
い。結晶化発熱量が17J/gを越えると、フイルム中
に多くの微結晶成分が存在することになる。微結晶があ
ると、溶媒であるアセトンへの溶解性が低下する。ま
た、得られた溶液(ドープ)の安定性も低く、再び微結
晶が生じやすい。さらに、得られるフイルムの加工適性
や光学特性も低下する。一方、結晶化発熱量が5J/g
未満であると、得られるフイルムの機械的強度が低下す
る。また、結晶化発熱量が低いと、ドープのゲル化に時
間を要するとの問題もある。
は、以上述べたような粘度平均重合度(DP)と濃厚溶
液粘度(η)の関係、Mw/Mnの分子量分布あるいは
結晶化発熱量の範囲を、容易に満足することができる。
低分子成分が除去されると、平均分子量(重合度)が高
くなるが、粘度は通常のセルロースアセテートよりも低
くなる。従って、前記のDPとηの関係を満足すること
ができる。また、低分子成分が除去されると、分子量の
分布も均一になる。さらに、低分子成分は結晶化しやす
いため、これを除去することにより、結晶化発熱量を低
下させることができる。低分子成分の少ないセルロース
アセテートは、通常の方法で合成した(例えば、市販
の)セルロースアセテートから低分子成分を除去するこ
とにより得ることができる。
トを適当な有機溶媒で洗浄することにより実施できる。
有機溶媒の例としては、ケトン類(例、アセトン)、酢
酸エステル類(例、メチルアセテート)およびセロソル
ブ類(例、メチルセロソルブ)が含まれる。本発明にお
いては、ケトン類、特にアセトンを用いることが好まし
い。通常の方法により得られるセルロースアセテートを
有機溶媒で一回洗浄すると、原料重量に対して10乃至
15重量%程度の低分子セルロースアセテートが洗浄液
中に除去される。洗浄後のセルロースアセテートに2回
目の洗浄を実施すると、洗浄液中に除去される低分子セ
ルロースアセテートは、一般に10重量%以下になる。
アセトン抽出分が10重量%以下であれば、低分子成分
が充分に少ないセルロースアセテートである。従って、
通常は、一回の洗浄で低分子成分が充分に少ないセルロ
ースアセテートが得られる。アセトン抽出分は、5重量
%以下であることがさらに好ましい。
洗浄前に、セルロースアセテートの粒子を粉砕あるいは
篩にかけることで、粒子サイズを調節することが好まし
い。具体的には、20メッシュを通過する粒子が70%
以上となるように調節することが好ましい。洗浄方法と
しては、ソックスレー抽出法のような溶剤循環方式を採
用することができる。また、通常の攪拌槽にて溶媒と共
に攪拌し、溶媒と分離することにより洗浄を実施するこ
ともできる。なお、一回目の洗浄では、10乃至15%
程度の低分子成分が溶媒中に溶解するため、液が粘稠に
なりやすい。このため、処理の操作を考慮し、溶媒に対
するセルロースアセテートの割合は、10重量%以下の
することが好ましい。
を製造する場合、酢化反応における硫酸触媒量を、セル
ロース100重量部に対して10乃至15重量部に調整
することが好ましい。硫酸触媒の量を上記範囲(比較的
多量)にすると、分子量部分布の点でも好ましい(分子
量分布の均一な)セルロースアセテートを合成すること
ができる。
テート溶液の調製に、アセトンと他の有機溶媒との混合
溶媒を使用する。この混合溶媒は、メチレンクロリドの
ようなハロゲン化炭化水素を実質的に含まない。「実質
的に含まない」とは、混合溶媒中のハロゲン化炭化水素
の割合が5重量%未満(好ましくは2重量%未満)であ
ることを意味する。アセトン以外の有機溶媒は、炭素原
子数が3乃至12のエーテル類、炭素原子数が4乃至1
2のケトン類、炭素原子数が3乃至12のエステル類お
よび炭素原子数が1乃至6のアルコール類から選ばれ
る。エーテル、ケトン、エステルおよびアルコールは、
環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトン、エス
テルおよびアルコールの官能基(すなわち、−O−、−
CO−、−COO−および−OH)のいずれかを二つ以
上有する化合物も、有機溶剤として用いることができ
る。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その
炭素原子数は、いずれかの官能基を有する化合物の規定
範囲内であればよい。
には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジ
メトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキ
ソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネ
トールが含まれる。炭素原子数が4乃至12のケトン類
の例には、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイ
ソブチルケトン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロ
ヘキサノンが含まれる。炭素原子数が3乃至12のエス
テル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメー
ト、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルア
セテートおよびペンチルアセテートが含まれる。炭素原
子数が1乃至6のアルコール類の例には、メタノール、
エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−ブ
タノール、t−ブタノール、2−メチル−2−ブタノー
ルおよびシクロヘキサノールが含まれる。二種類以上の
官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチル
アセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキ
シエタノールが含まれる。
乃至20.0MPa1/2 の溶解度パラメーターを有する
ことが好ましい。溶解度パラメーターは、下記式(3)
で定義される。 (3)δ=(E/v)1/2 式中、δは溶解度パラメーター(MPa1/2 )であり、
Eは蒸発エネルギー(J/モル)であり、そしてvはモ
ル容積(ml/モル、20℃)である。溶解度パラメー
ターが19.0乃至20.0MPa1/2 である有機溶媒
の例としては、メチルアセテート(19.6MPa
1/2 )、シクロヘキサノン(19.7MPa1/2 )、エ
チルホルメート(19.4MPa1/2 )および2−メチ
ル−2−ブタノール(19.0MP1/2 )を挙げること
ができる。アセトンと併用する有機溶媒としては、メチ
ルアセテートが最も好ましい。混合溶媒中のアセトンの
割合は、10乃至99.5重量%であることが好まし
く、20乃至95重量%であることがより好ましく、4
0乃至90重量%であることがさらに好ましく、50乃
至80重量%であることが最も好ましい。
冷却溶解法により、以上のような混合有機溶媒中にセル
ロースアセテートを溶解して、溶液(ドープ)を形成す
る。溶液の調製においては、最初に、室温で混合溶媒中
にセルロースアセテートを攪拌しながら徐々に添加す
る。この段階では、セルロースアセテートは、混合溶媒
中で膨潤するが、溶解していない。セルロースアセテー
トの量は、この混合物中に10乃至40重量%含まれる
ように調整する。セルロースアセテートの量は、10乃
至30重量%であることがさらに好ましい。混合溶媒中
には、後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
次に、混合物を−100乃至−10℃(好ましくは−8
0乃至−10℃、さらに好ましくは−50乃至−20
℃、最も好ましくは−50乃至−30℃)に冷却する。
冷却は、例えば、ドライアイス・メタノール浴(−75
℃)や冷却したジエチレングリコール溶液(−30℃乃
至−20℃)中で実施できる。このように冷却すると、
セルロースアセテートと混合溶媒の混合物は固化する。
と、混合溶媒中にセルロースアセテートが溶解する。昇
温は、室温中に放置するだけでもよし、温浴中で加温し
てもよい。このようにして、均一な溶液が得られる。な
お、溶解が不充分である場合は、冷却、加温の操作を繰
り返してもよい。溶解が充分であるかどうかは、目視に
より溶液の外観を観察するだけで判断することができ
る。冷却溶解方法においては、冷却時の結露による水分
混入を避けるため、密閉容器を用いることが望ましい。
また、冷却加温操作において、冷却時に加圧し、加温時
の減圧すると、溶解時間を短縮することができる。加圧
および減圧を実施するためには、耐圧性容器を用いるこ
とが望ましい。
ステル溶液は、フイルムの製造に用いることができる。
具体的には、溶液をソルベントキャスト法におけるドー
プとして利用する。ドープは、支持体上に流延し、溶媒
を蒸発させてフイルムを形成する。流延前のドープは、
固形分量が18乃至35%となるように濃度を調整する
ことが好ましい。支持体表面は、鏡面状態に仕上げてお
くことが好ましい。支持体としては、ドラムまたはバン
ドが用いられる。ソルベントキャスト法における流延お
よび乾燥方法については、米国特許2336310号、
同2367603号、同2492078号、同2492
977号、同2492978号、同2607704号、
同2739069号、同2739070号、英国特許6
40731号、同736892号各明細書、特公昭45
−4554号、同49−5614号、特開昭60−17
6834号、同60−203430号、同62−115
035号各公報に記載がある。ドープは、表面温度が1
0℃以下の支持体上に流延することが好ましい。流延し
た2秒上風に当てて乾燥することが好ましい。得られた
フイルムを支持体から剥ぎ取り、さらに100から16
0℃まで逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶剤を
蒸発させることもできる。以上の方法は、特公平5−1
7844号公報に記載がある。この方法によると、流延
から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。
この方法を実施するためには、流延時の支持体表面温度
においてドープがゲル化することが必要である。本発明
に従い製造したドープは、この条件を満足する。
ンのみを溶媒として使用する場合と比較して、溶液を支
持体上に流延したときの溶液表面の平面性が優れてい
る。その結果として、平面性が優れているフイルムを製
造することができる。この理由としては、溶液粘度の低
下によって、高圧押し出しによる乱流から生じる流延ビ
ードの乱れ(高粘度の溶融物を用いるメルトキャスト法
に起きるメルトフラクチャー現象に相当)が抑制される
ことが考えられる。さらに、高沸点あるいは親水性の溶
媒の添加による溶解性や溶液の安定性の向上も、平面性
の向上に寄与していると考えられる。なお、この溶液の
安定性は、乾燥時において溶液組成が刻々と変化する状
況下での安定性が特に問題である。また、溶液が高濃度
になると溶液の安定性が特に要求される。一方、溶液が
高濃度であると、乾燥効率が良く、フイルムの製造にお
いて有利である。本発明に従い製造するフイルムの厚さ
は、5乃至500μmであることが好ましく、20乃至
200μmであることがさらに好ましく、60乃至12
0μmであることが最も好ましい。
フイルムには、機械的物性を改良するため、または乾燥
速度を向上するために、可塑剤を添加することができ
る。可塑剤としては、リン酸エステルまたはカルボン酸
エステルが用いられる。リン酸エステルの例には、トリ
フェニルフォスフェート(TPP)およびトリクレジル
ホスフェート(TCP)が含まれる。カルボン酸エステ
ルとしては、フタル酸エステルおよびクエン酸エステル
が代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチル
フタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DE
P)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタ
レート、(DOP)およびジエチルヘキシルフタレート
(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、
クエン酸アセチルトリエチル(OACTE)およびクエ
ン酸アセチルトリブチル(OACTB)が含まれる。そ
の他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチ
ル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチ
ル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。フタル
酸エステル系可塑剤(DMP、DEP、DBP、DO
P、DEHP)が好ましく用いられる。DEPが特に好
ましい。
I)で示される化合物を添加してもよい。
4のアルキル基である。上記化合物は、一般に結晶核形
成剤(核剤)として知られている。結晶核形成剤は、従
来から、結晶性高分子(特にポリプロピレン)を溶融成
型する場合に、その光学的性質、機械的性質、熱的性質
や成型性の向上するための改質剤として使用されてい
る。本発明では、上記化合物を結晶核形成剤として使用
するのではなく、ドープのゲル化温度を高くするために
使用することができる。上記化合物は、その両親媒性の
ある化学構造から、セルロースアセテートとの相互作用
を有する。一方、上記化合物の自己凝集作用がアセチル
セルロースよりも高いため、結果としてアセチルセルロ
ースの凝集を促し、ゲル化温度が高くなると考えられ
る。上記化合物は、ドープの粘度を下げる効果がある。
上記化合物は、混合溶媒とセルロースアセテートの水酸
基との溶媒和を妨害するため、ポリマーの広がりを抑え
るためであると考えられる。
れる化合物の例には、リン酸2,2’−メチレンビス
(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム(アデ
カスタブNA−11、旭電化(株)製)、リン酸ビス
(4−t−ブチルフェニル)ナトリウム(アデカスタブ
NA−10、旭電化(株)製)、ビス(p−メチルベン
ジリデン)ソルビドール(ゲルオールMD、新日本理化
(株)製)およびビス(p−エチルビンジリデン)ソル
ビトール(NC−4、三井東圧化学(株)製)が含まれ
る。セルロースアセテートフイルムには、劣化防止剤
(例、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化
剤、酸捕獲剤)や紫外線防止剤を添加してもよい。劣化
防止剤については、特開平5−1907073号公報に
記載がある。紫外線防止剤については、特開平7−11
056号公報に記載がある。
溶液およびフイルムの化学的性質および物理的性質は、
以下のように測定および算出した。
(%) 酸化度はケン化法により測定した。乾燥したセルロース
アセテートを精秤し、アセトンとジメチルスルホキシド
との混合溶媒(容量比4:1)に溶解した後、所定量の
1N−水酸化ナトリウム水溶液を添加し、25℃で2時
間ケン化した。フェノールフタレインを指示薬として添
加し、1N−硫酸(濃度ファクター:F)で過剰の水酸
化ナトリウムを滴定した。また、上記と同様の方法によ
り、ブランクテストを行った。そして、下記式に従って
酢化度(%)を算出した。 酢化度(%)=(6.005×(B−A)×F)/W 式中、Aは試料の滴定に要した1N−硫酸量(ml)、
Bはブランクテストに要した1N−硫酸量(ml)、F
は1N−硫酸のファクター、Wは試料重量を示す。
および分子量分布 ゲル濾過カラムに、屈折率、光散乱を検出する検出器を
接続した高速液体クロマトグラフィーシステム(GPC
−LALLS)を用い測定した。測定条件は以下の通り
である。 溶媒: メチレンクロリド カラム: GMH×1(東ソー(株)製) 試料濃度: 0.1W/v% 流量: 1ml/min 試料注入量:300μl 標準試料: ポリメタクリル酸メチル(Mw=188,200) 温度: 23℃
合度(DP) 絶乾したセルロースアセテート約0.2gを精秤し、メ
チレンクロリド:エタノール=9:1(重量比)の混合
溶媒100mlに溶解した。これをオストワルド粘度計
にて25℃で落下秒数を測定し、重合度を以下の式によ
り求めた。 ηrel =T/T0 T: 測定試料の落下秒数 [η]=(1nηrel )/C T0 :溶剤単独の落下秒数 DP=[η]/Km C: 濃度(g/l) Km:6×10-4
度(η) セルロースアセテートを15重量%となるように、メチ
レンクロリド:メタノール=8:2(重量比)の混合溶
媒に溶解し、溶液を内径2.6cmの粘度管に注入し、
25℃に調温後、溶液中に直径3.15mm、0.13
5gの剛球を落下させて、間隔10cmの標線管を通過
する時間(秒)を粘度とした。
100重量部のセルロースエステル試料を投入し、常温
(23℃)で3時間攪拌する。得られた溶液またはスラ
リーの状態を常温(23℃)で静置保存したまま観察
し、以下のA、B、Cの三段階に等級付けした。 A:10日間経時しても、透明性と均一性を保持し、良
好な溶解性と溶液安定性を示す。 B:攪拌終了時には透明性と均一性を呈して良好な溶解
性を示すが、一日経時すると相分離を生じ、不均一な状
態となる。 C:攪拌終了直後から不均一なスラリーを形成し、透明
性と均一性のある溶液状態を示さない。
の平面性 溶液を実際に支持体上に流延した際の流延ビード、およ
び乾燥後に得られたフイルムの平面性を観察し、以下の
AおよびBの2段階で評価した。 A:流延ビードそのものの表面が平滑であり、乾燥後に
得られたフイルムも平滑である。 B:流延ビードそのものに粒子状の固まり、またはひび
割れが認められ、乾燥後得られたフイルムに粒状のの固
まり、ひび割れ、しわなどの平面性不良が生じる。
定 粘度計(HAAKE社製)により、下記アンドレードの
式における係数Aの変化点を求めた。変化点と到達粘度
からゲル化を判断した。 ローター:sv−DIN 剪断速度:0.1(1/sec) 降温速度:0.5℃/min η=Aexp(B/T) 式中、Tは測定温度、AおよびBは、それぞれポリマー
の状態により決まる任意の定数である。ゲル化の有無
は、係数Aの変化点の有無(粘度と温度のグラフが屈曲
点を有するか否か)で判断できる。
4時間放置した後、平衡に達した試料の水分量をカール
フィッシャー法で測定した。得られた水分量(g)を試
料重量(g)で除して、平衡水分率を算出した。測定装
置としては、三菱化学(株)製の水分測定装置CA−0
3、同試料乾燥装置VA−05を用いた。カールフィッ
シャー試薬としては、同社製のAKS、CKSを用い
た。
−1983の規格に従い、初期試料長50mm、引張速
度20mm/minにて測定し、弾性率および破断伸度
を求めた。
3/2−1983の規格に従い、引裂に要した引裂荷重
を求めた。
988の規格に従い、折り曲げよって切断するまでの往
復回数を求めた。
温度90℃、相対湿度100%条件下で調湿した後、密
閉した。これを90℃で経時して200時間後に取り出
した。フイルムの状態を目視で確認し、以下の判定をし
た。 A:特に異常が認められない B:分解臭または分解による形状の変化が認められる
e)値 エリプソメーター(偏光解析計AEP−100:島津製
作所(株)製)を用いて、波長632.8nmにおける
フイルム面に垂直方向から測定した正面レターデーショ
ン値を求めた。
用いて測定した。
0.9%、粘度平均重合度299のセルロースアセテー
ト100重量部、アセトン380重量部、1−ブタノー
ル10重量部およびジエチルフタレート(DEP、可塑
剤)10重量部を混合した。混合物中のセルロースアセ
テートの割合は、20重量%である。室温では、セルロ
ースアセテートは溶解せずにアセトンと1−ブタノール
アセトンとの混合溶媒中で膨潤した。得られた膨潤混合
物は、溶解せずにスラリーを形成していた。次に、膨潤
混合物を二重構造の容器に入れた。混合物をゆっくり攪
拌しながら外側のジャケットに冷媒として水/エチレン
グリコール混合物を流し込んだ。これにより内側容器内
の混合物を−30℃まで冷却した。混合物が均一に冷却
されて固化するまで(30分間)、冷媒による冷却を継
続した。
し、代わりに温水をジャケットに流し込んだ。内容物の
ゾル化がある程度進んだ段階で、内容物の攪拌を開始し
た。このようにして、30分間かけて室温まで加温し
た。さらに、以上の冷却および加温の操作をもう一回繰
り返した。得られたドープを目視により観察したとこ
ろ、セルロースアセテートが全て混合溶媒中に溶解して
おり、均一なドープが得られた。ドープを(7)の測定
方法で、ゲル化の有無の判定したところ、低温でのゲル
化が認められた。
いて、乾燥膜厚が100μmになるように流延した。バ
ンド温度は0℃とした。乾燥のため、2秒風に当てた
後、フイルムをバンドから剥ぎ取り、さらに100℃で
3分、130℃で5分、そして160℃で5分、フイル
ムの端部を固定しながら段階的に乾燥して、残りの溶剤
を蒸発させた。このようにして、セルロースアセテート
フイルムを製造した。
合度299のセルロースアセテート100重量部、アセ
トン380重量部、t−ブタノール10重量部およびク
エン酸アセチルトリエチル(OACTE、可塑剤)10
重量部に変更した以外は実施例1と同様にして、ドープ
を形成した。得られたドープを目視により観察したとこ
ろ、セルロースアセテートが全て混合溶媒中に溶解して
おり、均一なドープが得られた。また、低温でのゲル化
も認められた。ドープを実施例1と同様に流延、乾燥
し、セルロースアセテートフイルムを製造した。
合度299のセルロースアセテート100重量部、アセ
トン370重量部、2−メチル−2−ブタノール10重
量部およびクエン酸アセチルトリブチル(OACTB、
可塑剤)10重量部に変更した以外は実施例1と同様に
して、ドープを形成した。得られたドープを目視により
観察したところ、セルロースアセテートが全て混合溶媒
中に溶解しており、均一なドープが得られた。また、低
温でのゲル化も認められた。ドープを実施例1と同様に
流延、乾燥し、セルロースアセテートフイルムを製造し
た。
合度299のセルロースアセテート100重量部、アセ
トン250重量部およびメチルアセテート50重量部に
変更した以外は実施例1と同様にして、ドープを形成し
た。得られたドープを目視により観察したところ、セル
ロースアセテートが全て混合溶媒中に溶解しており、均
一なドープが得られた。また、低温でのゲル化も認めら
れた。ドープを実施例1と同様に流延、乾燥し、セルロ
ースアセテートフイルムを製造した。
合度299のセルロースアセテート100重量部、アセ
トン300重量部およびシクロヘキサノン50重量部に
変更した以外は実施例1と同様にして、膨潤混合物を調
製した。次に、膨潤混合物を二重構造の容器に入れた。
混合物をゆっくり攪拌しながら外側のジャケットに冷媒
としてメタノール/ドライアイス混合物を流し込んだ。
これにより内側容器内の混合物を−30℃まで冷却し
た。混合物が均一に冷却されて固化するまで(30分
間)、冷媒による冷却を継続した。容器の外側のジャケ
ット内の冷媒を除去し、代わりに温水をジャケットに流
し込んだ。内容物のゾル化がある程度進んだ段階で、内
容物の攪拌を開始した。このようにして、30分間かけ
て室温まで加温した。さらに、以上の冷却および加温の
操作をもう一回繰り返した。得られたドープを目視によ
り観察したところ、セルロースアセテートが全て混合溶
媒中に溶解しており、均一なドープが得られた。また、
低温でのゲル化も認められた。ドープを実施例1と同様
に流延、乾燥し、セルロースアセテートフイルムを製造
した。以上の実施例1〜5の結果を下記第1表にまとめ
て示す。
セテート(平均酢化度:60.9%、粘度平均重合度:
299)100重量部、アセトン375重量部、t−ブ
タノール10重量部およびジエチルフタレート(DE
P)15重量部を混合した。混合物を、実施例1と同様
に、水/エチレングリコール系の冷媒(−30℃)を用
いた冷却溶解法で処理して、ドープを形成した。得られ
たドープについて、(7)の測定方法に従い、粘度とゲ
ル化温度を測定したところ、粘度は240Pas(25
℃)、ゲル化温度は−12℃であった。ドープを実施例
1と同様に流延、乾燥し、セルロースアセテートフイル
ムを製造した。
セテート(平均酢化度:60.9%、粘度平均重合度:
299)100重量部、アセトン375重量部、t−ブ
タノール10重量部、ジエチルフタレート(DEP)1
5重量部およびリン酸2,2’−メチレンビス(4,6
−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム(アデカスタブ
NA−11、旭電化(株)製)20重量部を混合した。
混合物を、実施例3と同様に、水/エチレングリコール
系の冷媒(−30℃)を用いた冷却溶解法で処理して、
ドープを形成した。得られたドープについて、(7)の
測定方法に従い、粘度とゲル化温度を測定したところ、
粘度は100Pas(25℃)、ゲル化温度は−8℃で
あった。ドープを実施例1と同様に流延、乾燥し、セル
ロースアセテートフイルムを製造した。実施例6および
7の結果を下記第2表に示す。第2表に示される結果か
ら明らかなように、リン酸2,2’−メチレンビス
(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム(NA
−11)を添加すると、ゲル化温度の上昇とドープ粘度
の低下が認められる。
れたセルロースアセテートフイルムについて、前記の測
定方法に従い、(8)平衡水分率の測定、(9)引張試
験、(10)引裂試験、(11)耐折試験、(12)耐
湿熱性、(13)レターデーション(Re)値の測定お
よび(14)ヘイズの測定を行なった。結果を下記第3
表に示す。第3表に示される結果は、本発明に従い製造
したセルロースアセテートフイルムは、良好な物理的お
よび化学的性質を有していることを示している。
セテート(平均酢化度:60.9%、粘度平均重合度:
299)100重量部、アセトン350重量部およびメ
チルアセテート60重量部を混合した。混合物を実施例
1と同様に、水/エチレングリコール系の冷媒(−30
℃)を用いた冷却溶解法で処理して、ドープを形成し
た。得られたドープについて、(7)の測定方法に従
い、粘度とゲル化温度を測定した。結果を図2に示す。
セテート(平均酢化度:60.9%、粘度平均重合度:
299)100重量部、アセトン200重量部およびメ
チルアセテート236重量部を混合した。混合物を実施
例1と同様に、水/エチレングリコール系の冷媒(−3
0℃)を用いた冷却溶解法で処理して、ドープを形成し
た。得られたドープについて、(7)の測定方法に従
い、粘度とゲル化温度を測定した。結果を図2に示す。
セテート(平均酢化度:60.9%、粘度平均重合度:
299)100重量部およびアセトン400重量部を混
合した。混合物を実施例1と同様に、水/エチレングリ
コール系の冷媒(−30℃)を用いた冷却溶解法で処理
して、ドープを形成した。得られたドープについて、
(7)の測定方法に従い、粘度とゲル化温度を測定し
た。結果を図2に示す。
セテート(平均酢化度:60.9%、粘度平均重合度:
299)100重量部およびメチルアセテート473重
量部を混合した。混合物を実施例1と同様に、水/エチ
レングリコール系の冷媒(−30℃)を用いた冷却溶解
法で処理して、ドープを形成した。得られたドープにつ
いて、(7)の測定方法に従い、粘度とゲル化温度を測
定した。結果を図2に示す。図2に示される結果から明
らかなように、本発明に従い混合溶媒を使用すると、ア
セトン(比較例1)またはメチルアセテート(比較例
2)と比較して粘度が低いドープ(溶液)が得られる。
粘度が低いドープを用いると、ドープの送液が容易で、
ドープの曳糸が少なく、フイルムのようなセルロースエ
ステル製品の製造に好都合である。
アセテート(平均酢化度:60.9%、粘度平均重合
度:299)100重量部、アセトン380重量部、1
−ブタノール10重量部およびトリフェニルホスフェー
ト(TPP)10重量部を混合した。混合物を実施例1
と同様に、水/エチレングリコール系の冷媒(−30
℃)を用いた冷却溶解法で処理して、ドープを形成し
た。ドープを実施例1と同様に流延、乾燥し、セルロー
スアセテートフイルムを製得られたドープについて、前
記の測定方法に従い(8)平衡水分率の測定、(4)引
張試験、(10)引裂試験、(11)耐折試験、(1
2)耐湿熱性、(13)レターデーション値の測定およ
び(14)ヘイズの測定を行なった。結果を下記第4表
に示す。第4表に示される結果から明らかなように、本
発明に従い製造したセルロースアセテートフイルムは、
良好な物理的および化学的性質を有している。
施例1と比較すると、耐湿熱性(12)の点で、性能が
少し劣る。従って、特に耐湿熱性が要求される光学フイ
ルムの用途においては、実施例2のフイルムを適用する
ことが望ましい。
物の組成を、平均酢化度60.9%、粘度平均重合度2
99のセルロースアセテート100重量部、下記第5表
(使用量の数字は重量部)に示す有機溶媒およびジエチ
ルフタレート(DEP、可塑剤)15重量部に変更した
以外は実施例1と同様にして、ドープを形成した。ドー
プ(溶液)の安定性を、前記(5)の方法に従い評価し
た。得られたドープを実施例1と同様に流延、乾燥し、
セルロースアセテートフイルムを製造した。流延ビード
および乾燥後のフイルムの平面性を前記、(6)の方法
に従い評価した。結果を第5表に示す。
用いたセルロースアセテート(平均酢化度:60.9
%、平均年度:299)100重量部、アセトン470
重量部およびメチルアセテート85重量部を混合した。
混合物を実施例1と同様に、水/エチレングリコール系
の冷媒(−30℃)を用いた冷却溶解法を用いて、ドー
プを形成した。さらに、得られたドープを用いて実施例
1と同様にして、厚さが100μmのセルロースアセテ
ートフイルムを製造した。
ースアセテートを、10倍量のアセトン中、室温で30
分間攪拌し、脱液および乾燥させた。得られた(低分子
成分を除去した)セルロースアセテート(平均酢化度:
60.9%、粘度平均重合度:322)を用い、混合物
中のセルロースアセテートの割合を18.5重量%に変
更した以外は、実施例27と同様にして、冷却溶解法に
よりドープを形成した。さらに、得られたドープを用い
て実施例1と同様にして、厚さが100μmのセルロー
スアセテートフイルムを製造した。
0重量部を、硫酸11.7重量部、無水酢酸260重量
部および酢酸450重量部を用いて、通常の方法により
エステル化および加水分解を行ない、平均酢化度:6
0.2%、粘度平均重合度:313のセルロースアセテ
ートを合成した。得られた(低分子成分の少ない)セル
ロースアセテートを用いた以外は、実施例27と同様に
して、冷却溶解法によりドープを形成した。さらに、得
られたドープを用いて実施例1と同様にして、厚さが1
00μmのセルロースアセテートフイルムを製造した。
粘度平均重合度:291のセルロースアセテートをを用
いた以外は、実施例27と同様にして、冷却溶解法によ
りドープを形成した。さらに、得られたドープを用いて
実施例1と同様にして、厚さが100μmのセルロース
アセテートフイルムを製造した。
7、実施例28、実施例29および実施例30で用いた
セルロースアセテートについて、前記の測定方法に従
い、(1)酢化度、(2)分子量分布(Mw/Mn)、
(3)粘度平均重合度(DP)、(4)濃厚溶液粘度
(η:秒)、(5)結晶化発熱量(ΔHc)および
(6)アセトン抽出分を測定した。さらに(15)とし
て、(4)の粘度の結果から、ln(η)の実測値を計
算した。別に、(3)の重合度の結果および前記(2)
の式で定義する重合度と濃厚溶液粘度との関係から、l
n(η)の好ましい値の下限(16)と好ましい値の上
限(17)を求めた。以上の結果を第6表に示す。
0で得られたドープを、45℃の恒温槽に保存して経時
変化を観察した。その結果、実施例27および30で得
られたドープは、製造後長時間、均一な溶液相を保って
いたが、96時間保存後にセルロースアセテートの不溶
化により相分離が生じた。これに対して、実施例28お
よび29で得られたドープは、240時間保存しても、
均一な溶液相を保っていた。
スエステル溶液を得ることができる。また、本発明のセ
ルロースエステル溶液は、粘度が低く、取り扱いが容易
であるとの効果もある。さらに、本発明に従うと、メチ
レンクロリドのようなハロゲン化炭化水素系有機溶媒を
使用しなくても、平面性が良好なセルロースアセテート
フイルムを製造することができる。
トン中に溶解した溶液について、濃度と保存温度との関
係を示したグラフである。
ープについて、ドープ温度(1/K×103 )とドープ
粘度(Logη)との関係を示すグラフである。
Claims (8)
- 【請求項1】 58.0乃至62.5%の平均酢化度を
有するセルロースアセテートが溶媒中に溶解しているセ
ルロースアセテート溶液であって、該溶媒がハロゲン化
炭化水素を実質的に含まない、アセトンと他の有機溶媒
との混合溶媒であり、該他の有機溶媒が、炭素原子数が
3乃至12のエーテル類、炭素原子数が4乃至12のケ
トン類、炭素原子数が3乃至12のエステル類および炭
素原子数が1乃至6のアルコール類から選ばれることを
特徴とするセルロースアセテート溶液。 - 【請求項2】 セルロースアセテートが10乃至40重
量%の濃度で溶解している請求項1に記載のセルロース
アセテート溶液。 - 【請求項3】 混合溶媒中のアセトンの割合が、10乃
至99.5重量%である請求項1に記載のセルロースア
セテート溶液。 - 【請求項4】 セルロースアセテートが、250乃至4
00の粘度平均重合度を有する請求項1に記載のセルロ
ースアセテート溶液。 - 【請求項5】 さらに可塑剤が、セルロースアセテート
100重量部に対して0.1乃至20重量部の量で溶解
している請求項1に記載のセルロースアセテート溶液。 - 【請求項6】 58.0乃至62.5%の平均酢化度を
有するセルロースアセテート、アセトンおよび他の有機
溶媒との混合物であって、ハロゲン化炭化水素を実質的
に含まず、かつ該他の有機溶媒が、炭素原子数が3乃至
12のエーテル類、炭素原子数が4乃至12のケトン
類、炭素原子数が3乃至12のエステル類および炭素原
子数が3乃至6のアルコール類から選ばれる混合物を−
100乃至−10℃に冷却する工程、および冷却した混
合物を0乃至50℃に加温して、溶媒中にセルロースア
セテートを溶解する工程からなるセルロースアセテート
溶液の調製方法。 - 【請求項7】 58.0乃至62.5%の平均酢化度を
有するセルロースアセテートが溶媒中に溶解しているセ
ルロースアセテート溶液であって、該溶媒がハロゲン化
炭化水素を実質的に含まない、アセトンと他の有機溶媒
との混合溶媒であり、該他の有機溶媒が、炭素原子数が
3乃至12のエーテル類、炭素原子数が4乃至12のケ
トン類、炭素原子数が3乃至12のエステル類および炭
素原子数が1乃至6のアルコール類から選ばれることを
特徴とするセルロースアセテート溶液を支持体上に流延
する工程および溶媒を蒸発させてフイルムを形成する工
程からなるセルロースアセテートフイルムの製造方法。 - 【請求項8】 セルロースアセテートを流延する支持体
が、10℃以下の表面温度を有している請求項7に記載
の製造方法。
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