JPH0989840A - 小型電気泳動装置 - Google Patents

小型電気泳動装置

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JPH0989840A
JPH0989840A JP7249251A JP24925195A JPH0989840A JP H0989840 A JPH0989840 A JP H0989840A JP 7249251 A JP7249251 A JP 7249251A JP 24925195 A JP24925195 A JP 24925195A JP H0989840 A JPH0989840 A JP H0989840A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 シリコン又はガラス基板に溝を形成して得ら
れる液流路で電気泳動を行わせるようにするとともに、
その流路を所望物質で部分的に修飾し得て、目的に合わ
せたより高感度な分析が効率よく行える小型電気泳動装
置を提供する。 【解決手段】 基板の片面に溝を形成し、別の基板で該
溝を覆い液流路6を形成し電気泳動を行う構成とされ、
かつ流路6の途中に部分的に液を流す為の液の流入、流
出口1,2,8,9を持つ。電気泳動が行われる流路6
の流入出の経路と別に独立して液の出し入れを行うため
の液の流入、流出口を備える構成で、例えば口1と口9
間でアミノ基を有するシラン処理剤を流通させ処理部分
12での領域にのみ流路内壁をアミノ基で処理でき、同
様に口2と口8間で処理部分7の領域をカルボキシル基
で処理できる。流路6は多種類の物質で部分的に修飾さ
れ、目的に合わせたより高感度な分析が効率よく行え
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電気泳動を利用し
た液体試料の分析や、液体試料中の成分の分離、分取等
に好適に用いることのできる電気泳動装置、特に小型電
気泳動装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】電気泳動は、液体試料の分析、及び液体
試料中の成分の分離、分取に用いられるが、近年、キャ
ピラリ電気泳動がその分離能力の高さから注目を集めて
いる。キャピラリ電気泳動装置は、キャピラリと高電圧
装置と検出器(光学的検出系)から構成することができ
る。
【0003】キャピラリは本電気泳動の心臓部であり、
一般に、溶融石英ガラスを中空円筒状に細長く引き延ば
し、更に、その周囲をポリイミド樹脂でコーティングす
ることにより補強したものが用いられる。この方法の特
徴は直径が150μ以下の細管の中で分析が行われるた
め、体積に比し界面の面積の影響が強い場での分析であ
る。これにより、キャピラリ電気泳動は界面での電気浸
透流を有効に利用した分析方法といわれている。図8
は、その心臓部を示したものであり、キャピラリ74、
電圧を印加するための電極75及びキャピラリ74に導
入する緩衝液部76を図示してある。
【0004】また、近年のマイクロマシン技術の発達に
より、上述のキャピラリを使わずにシリコン基板やガラ
ス基板にリソグラフィ技術を用いて溝を形成し、そこで
電気泳動を行うことも試みられるようになっている。特
開平4−191634号公報(文献1)の「液体試料分
析装置」に、このような例が開示されている。この技術
を用いることにより自由な形状のキャピラリを形成する
ことができ、その応用範囲が拡大することが期待されて
いる。
【0005】更に、分析感度を向上させるため電気浸透
流を積極的に制御することも試みられている。これは外
部電場の印加により表面電位を制御し、それにより電気
浸透流を制御しようとするものである。例えば、「アナ
リティカル ケミストリー(Analytical C
hemistry)」Vol.65,No.1,第27
〜31頁(1993年1月)(文献2)に述べられてい
るように、径の異なるキャピラリを同心円状に2重に配
列したシステムを作製し、内側管内は分離用に、外側管
には分離用と同じ緩衝液を満たすようにし、内側キャピ
ラリに放射状電場を印加できるようになっている。この
ような構成にすることにより内側管内の表面電位を電場
印加により変化させ、電気浸透流を制御できるようにな
る。
【0006】一方、電気泳動を利用した試料の前処理シ
ステムにも、マイクロマシン技術の応用が試みられるよ
うになってきている。「アナリティカル ケミストリー
(Analytical Chemistry)」Vo
l.66,No.18,第2858〜2865頁(19
94年9月)(文献3)には、フリーフロー電気泳動を
応用した試料の前処理システムが述べられている。この
装置は、図9に示す如き構成のものとして説明でき、緩
衝液導入口78と、電気泳動を行うための緩衝液を連続
的に流すための流路と、その流路に対し直角に電場を印
加する電極79が配置されている。
【0007】緩衝液導入口78から緩衝液を連続的に流
し込み、同時に試料導入口77から試料を導入すると、
試料は緩衝液によって運ばれてゆくが、同時に流れと直
角方向に電場を印加することにより泳動が行われ、矢印
81のように試料が分離される。泳動の終了する地点の
流路80を更に細分化し、分離された目的の成分のみを
取り出すことにより前処理が行われる。このように連続
的に前処理が行うことができるため、マイクロマシン技
術を用いた微小なシステムでも、システムのサイズを変
えることなく必要な試料量に応じて処理を行うことが可
能になる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上記において、キャピ
ラリ電気泳動においては界面の状態が強く影響すると述
べたが、キャピラリ内面を化学修飾することにより電気
浸透流を制御する試みもかなり行われている。化学修飾
する物質はその目的により適宜選択されるが、一般のキ
ャピラリは非常に細いため単管のみで構成されており、
一種類の物質を表面処理することは可能であるが、キャ
ピラリ表面を部分的に多種類の表面処理をすることは困
難である。また、マイクロマシン技術のリソグラフィと
エッチングを用いてガラスまたはシリコン基板に溝を形
成してキャピラリとする方法も提案されているが、しか
し、多種類の物質を部分的に修飾することは考えられて
いない。
【0009】更に、付言すると、電気泳動を行う際に電
極からは電気分解により気泡が発生するが、この気泡が
電極表面を覆ったり、キャピラリの流路を遮ると良好な
泳動を行うことができなくなる。従って、一般には、図
8に示すように、キャピラリ74の一端及び電極75を
緩衝液の入った容器に差し込み、電極で発生する気泡が
キャピラリ中に入らないようになっている。しかし、こ
のような構成では全体を小型化することは難しい。
【0010】また、一般のキャピラリ電気泳動におい
て、試料の導入は緩衝液の導入部と共用ぜざるを得ない
が、リソグラフィとエッチングを用いてガラスまたはシ
リコン基板に溝を形成してキャピラリとする方法はま
た、試料の導入部を独立に任意に形成することができ
る。しかし、その際には試料の導入時に気泡の混入をで
きるだけ少なくする必要がある。
【0011】また、キャピラリ電気泳動の検出は光学的
に行われるが、キャピラリの径が細いため光路長も小さ
く検出も高感度が要求される。また、内側管内の表面電
位を電場印加により変化させ、電気浸透流を制御する方
法としては、前記に述べたように文献2に記載の方法が
考えられるが、構成が複雑である。
【0012】一方、フリーフロー電気泳動では、前記文
献3に述べられているような試料の前処理システムが提
案されている。しかして、分離された成分をできるだけ
純粋に取り出すためには流路の末端を細分化する必要が
あるが、細分化すればするほど細分化された流路から試
料の成分を取り出すことが困難になる。この点に関して
の考慮も、従来なされてはいない。
【0013】電気泳動を行う際に電極からは電気分解に
より気泡が発生して、その気泡により悪影響が生じるこ
とについては、上記で既に述べたが、これはフリーフロ
ー電気泳動でも同じである。従って、発生した気泡が電
極付近のそこに滞留せずまた、泳動される流路に拡散し
ないような対策が必要となる。また、フリーフロー電気
泳動では、泳動が行われる流路では液が層流となって流
れる必要があるが、注入される試料も、層流となって流
れている緩衝液中に導入される必要がある。もし、緩衝
液が拡散または乱流となって流れているところに試料が
導入されると、成分の分離が悪くなる。
【0014】本発明は、上述のような考察に基づき、2
つの基板を用いて電気泳動を行う液流路を構成する小型
な電気泳動装置でも、効果的にその液流路を所望の物質
で所要領域のみ対象として部分的に修飾も可能な、この
種電気泳動装置に好適な小型電気泳動装置を実現しよう
というものである。
【0015】また、他の目的は、フリーフロー電気泳動
に適用して好適で、分離された成分を純度良く、かつ確
実に採取することのできる、しかも流路末端の細分化と
も両立を図ることのできる小型電気泳動装置を提供する
ことである。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明の小型電気泳動装
置は、シリコン基板またはガラス基板のいずれかからな
る第1の基板と、ガラス基板またはシリコン基板のいず
れかからなる第2の基板とを有し、少なくともこれら第
1,第2の基板のうちの一方の基板の片面に溝が形成さ
れるとともに、その他方の基板で該溝を覆うことにより
液流路を形成し、その流路で電気泳動を行うものであっ
て、その電気泳動を行う流路の途中に部分的に液を流す
ようにするための液の流入、流出口を少なくとも1組以
上設けてなる、ことを特徴とするものである。
【0017】よって、本発明においては、その第1の基
板または第2の基板に溝を形成して得られる液流路で電
気泳動を行わせるようにすることができるとともに、電
気泳動が行われる流路の流入出の経路と別に独立して液
の出し入れを行えるその液の流入、流出口を備えて、電
気泳動を利用した分析を行うことができる。これによ
り、電気泳動を行う流路の途中を多種類の物質で部分的
に修飾することにも容易に応え得て、目的に合わせたよ
り高感度な分析が効率よく行え、上記した如くこの種電
気泳動装置に好適な小型電気泳動装置の実現を可能なら
しめる。
【0018】また、本発明の小型電気泳動装置は、シリ
コン基板またはガラス基板のいずれかからなる第1の基
板と、ガラス基板またはシリコン基板のいずれかからな
る第2の基板とを有し、少なくともこれら第1,第2の
基板のうちの一方の基板の片面に溝が形成されるととも
に、その他方の基板で該溝を覆うことにより液流路を形
成し、その流路でフリーフロー電気泳動を行う装置であ
って、流路の流出口が複数の流路に分割され、該分割さ
れた流路の液分取口での流路の間隔が広がっている、こ
とを特徴とするものである。
【0019】よって、本発明によれば、その第1の基板
または第2の基板に溝を形成して得られる液流路でフリ
ーフロー電気泳動を行わせるようにすることができるの
に加え、その分割された流路の液分取口での流路の間隔
は広がっており、その液分取口では間隔を十分にとる構
成とし得て、容易に目的の成分を取り出すことができる
とともに、フリーフロー電気泳動において、分離される
成分をできるだけ純粋に取り出すために流路の末端を分
割、細分化する場合であっても、細分化すればするほど
細分化された流路から試料の成分を取り出すことが困難
になるといったことも回避して、分離された成分を純度
良くかつ確実に採取することができ、上記した如くのフ
リーフロー電気泳動に適用して好適な小型電気泳動装置
の提供を可能ならしめる。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に基づき説明する。図1,2は、本発明の小型電気泳動
装置の第1の実施の形態を示す。図1は、本実施形態に
従い、第1の基板の片面に形成した溝を第2の基板で覆
うことで液流路を形成しその流路で電気泳動を行うよう
にする場合における、液流路、液流入口、液流出口等の
主要な要素の配置構成の一例を示すものであり、図2
は、かかる配置構成の場合における本実施形態に係る装
置の、図1のA−A線相当断面を示したものである。
【0021】図において、参照符号1,2,3,5,
8,9,10を付して示すものは、液流入、流出の用に
供することのできる液路口を、また4,6は流路を、そ
れぞれ表す。また、16,17はそれぞれ2枚の使用基
板を示す。図示例では、本装置は、第1の基板17とし
てのシリコン基板、第2の基板16としてのガラス基板
を備えるものとする。
【0022】シリコン基板17には、例えばエッチング
により図1の直線で表されるが如き溝が形成されてい
る。溝の形態の一例は、図2に断面で示される。本例に
おいては、基本的には、このようにシリコン基板17の
片面に溝を形成するものであり、そして、その後、ガラ
ス基板16で溝を覆うことにより電気泳動を行う液流路
6を形成することができる。
【0023】ここに、適用するシリコン基板としては、
P型、N型どちらでも使用でき、結晶面も[100]、
[110]等種々のものが使用できる。なお、異方性エ
ッチングを使うこともできるが、もっとも、その場合に
は[111]面のシリコン基板を用いることはできな
い。
【0024】電気泳動が行われる流路6は、図1の流路
の口3から流路の口10(ここでは、例えば前者を流入
口(注入口)とし、後者を流出口とする)に至る経路で
あるが、その経路とは別に電気泳動の行われる流路6の
一部を独立して液の出し入れを行うための液の流入、流
出口が形成される。図示例では、流路6はその一部に液
を流し、その一部分のみに表面処理(後述の処理部分
7,12における処理)ができるように流入、流出口
1,9及び2,8の組が配置されている。そして、これ
らを、電気泳動を行う流路6の途中に部分的に液を流す
ための液の流入、流出口として機能させる。
【0025】ここで、図1では一部分のみに液を流しや
すいように流路6を屈曲させて形成しているが、直線状
でもよい。また、上記で触れた異方性エッチングで溝を
形成する場合には、流路が直線の組み合わせとなるが、
ICPプラズマエッチング、エキシマレーザによるエッ
チング等の技術で溝を形成する場合には、曲線的な加工
も可能である。従って、流路6の形状は一部分のみに前
記表面処理ができるように流入、流出口1,9及び2,
8が配置されていればこの限りではない。また、より多
くの流入、流出口を設けることも可能である。更にま
た、液の流入、流出口を適宜変更することも可能であ
る。従って、例えば流出口9の方から液を入れ、流入口
2の方から液を出すことも可能であるので、流入口、流
出口といった言葉でその機能を限定するものではない。
【0026】更に、上述のような流路6、流路口1,
2,3,5,8,9,10のほかに、電気泳動を行う流
路6の途中に試料を注入するための流路4及び注入口5
(試料導入口)を設ける。ここに、基本的には、流路形
成のための溝の深さ、幅についても特に制限はないが、
本例の装置では、後述の如き観点から、上記流路4の占
める体積が流路6の径R(r=R/2)に関し、(4/
3)×(πr3)以下(もしくは、ほぼ(4/3)×(π
3)以下)のものとなるようにする。こうした関係にす
る必要があるので、流路4の径は流路6の径の1/2以
下にした方が装置として使いやすくなる。また、キャピ
ラリの効果を発揮させるためには流路6の径を150μ
以下にすることが望ましい。
【0027】上記シリコン基板17は、表面を保護する
ためにシリコン酸化膜、窒化シリコン膜、アルミナ、酸
化タンタル等の絶縁膜で被覆されている(図2では、図
示を省略してあるが、この点については、後記第2,第
3実施態様を参照)。被覆膜の厚さは、絶縁を確実に行
うため1000Å以上が望ましい。
【0028】エッチングされた基板17を覆う基板16
には、液の流入、流出口(1,2,3,5,8,9,1
0)に対応する箇所に貫通孔が形成されており、図2で
は、流入口3側と流出口10側の2箇所での、基板16
に形成の貫通孔部分が参照符号16aで表されている。
こうした貫通孔の径は、形成する流路の径に合わせるこ
とが望ましいが、基板16が厚くなるほど加工が困難に
なる。従って、かかる貫通孔は液の出し入れ口としての
み用い、泳動のための流路として用いないようにした方
が現実的である。その観点からすると、サイズの制限は
なくなるが1mm以下にした方が現実的である。
【0029】上述した2つの基板、即ち基板16と基板
17は、加工部分の位置が合わされ、例えば陽極接合で
接着されている。ここに、陽極接合は、2つの基板を重
ねた状態で500℃程度に加熱し、その状態で基板の両
側から800V程度の電圧を印加することにより接着す
る方法であり、接着剤を用いないため精密加工した部品
を接合する場合に適した方法である。
【0030】上述した基板16の各貫通孔には、更に、
図2に如くに、例えばジョイント15を接着し、液の流
入、流出口(1,2,3,5,8,9,10)を形成す
るものとする。具体的には、ここでは、それらの流入、
流出口には配管の用に供するチューブを接続するものと
し、そして、電気泳動を行う流路6の両端の液流入、流
出口3,10側に関しては、図2のように、更に電極1
4を配設し、かつ電極14を含む各配管13部分がそれ
ぞれ垂直になるよう構成する。従って、流入口3及び流
出口10にはチューブが接続され、それぞれ電極14が
垂直に接続されている。そして、上記電極14は、電気
泳動を行わせるため電圧を印加する電源15(高圧電源
装置)に接続されている。
【0031】ここに、電極14としては通常白金が用い
ることができるが、電気化学的に安定であるならば、こ
れ以外に金や白金/イリジウム等の金属も使用可能であ
る。また、その形状も円筒状、板状、ワイヤー状等、形
状や大きさに限定されることはない。また、電極14の
配置を、ここでは垂直としたが、実用的には90°±1
0°の範囲で許容される。従って、ほぼ垂直でもよい。
【0032】更に、図1には、泳動によって分離された
成分を測定するためのウインドー11が配置されてい
る。光学的な検出部分は、かかるウインドー11を含ん
で構成されるが、この部分の詳細な構成例のいくつかに
ついては、後記の第2の実施の形態で触れる。
【0033】次に、上記第1の実施の形態による小型電
気泳動装置の作用、使用例等について説明する。本装置
によれば、上述のような構成とされているので、例えば
流入口1、流出口9との間でアミノ基を有するシラン処
理剤を流通させることにより処理部分12で示される領
域にのみ流路6内壁をアミノ基で処理することができ
る。同様に例えば流入口2と流出口8間で処理部分7に
相当する領域をカルボキシル基で処理することができ
る。このように電気泳動を行う流路6を多種類の物質で
部分的に修飾できるので目的に合わせたより高感度な分
析が効率よく行えるものである。
【0034】具体的な手順を含めて説明すると、まず、
電気泳動に先立ち、分析目的に合わせて流入口1と流出
口9との間に感応基を有するシランカップリング剤を流
し、処理部分12を感応基で被覆する。同様に流入口2
と流出口8の間も、上記感応基と異なった感応基を有す
るシランカップリング剤で処理をし、処理部分7での表
面処理を実施する。なお、シランカップリング剤として
は、上記に例示したアミノ基、カルボキシル基のほか、
エポキシ基等種々の感応基を有するものが市販されてお
り、それらが利用できる。
【0035】しかして、こうした表面処理が終了した
ら、流路内部を洗浄乾燥してから流入口3と流出口10
の間を緩衝液で満たす。次いで、試料用の流入口5から
試料を、流路4を介し流路6に導入し、かくして、電源
18を用いて電極14間に電圧を印加すると電気泳動が
行われる。
【0036】このように、例えば処理部分12をアミノ
基で処理し、処理部分7をカルボキシル基で処理するこ
とができれば、電気泳動による分離に更に、処理表面と
分離物質とのアフィニティによる分離効果を重畳させる
ことができるため、より高感度な分析が効率より行える
ようになる。
【0037】また、本装置によれば、以下のような点で
も効果的である。図2からも分かるように、上記電極1
4は、電気泳動を行う流路6の上部に設けられ、かつ流
入、流出口3,10に対し垂直方向に配管がされてい
る。このような構造とすることによって、電極14は垂
直(もしくは、ほぼ垂直)に配置されるため、電極14
に電圧が印加されて電気分解により気泡が発生しても、
その気泡は電気泳動が行われる流路6に拡散することは
なく、また、電極14の上部に気泡が抜けて行くため電
極表面に気泡が滞留することもない。従って、安定な電
気泳動が行えるようになる。
【0038】それ故に、気泡が電極表面を覆ったり、流
路6を遮る等が原因で良好な泳動が妨げられといったこ
とが回避されるとともに、既述の図8の構成の場合であ
れば小型化するのに難点があるといったような不利もな
く、上記を実現できる。
【0039】更に、試料流路4の体積を、流路6の径R
(r=R/2)の(4/3)×(πr3 )以下の関係の
ものにすることにより試料の導入時に気泡が混入して流
路を閉鎖することがないので、この点からも、より安定
な泳動が可能である。この考えで、流路4の径を流路6
の径Rの半分(=r)にすると、そのRの4倍の長さの
流路を設けることができるので、必要量以上に試料が混
入することも少なくなるという効果もある。
【0040】上記のように選定するのは、次のような理
由に基づくものである。本発明に従う小型電気泳動装置
では、その一つの特徴は、リソグラフィ技術とエッチン
グにより電気泳動を行う流路6の形状を任意に設定する
ことが可能なことである。そのため、試料の導入のため
の流路(4)や導入口(5)を設けることが可能であ
り、容易に試料を導入することができる。その一方、前
述の手順のように、試料の導入は電気泳動を行う流路6
に緩衝液を満たした後に行うため、もし、試料の導入時
に気泡が混入して流路を閉鎖してしまうとすると、良好
な泳動が行えなくなる。ここで、図1をみるに、その試
料導入口5から流路4を介入して試料を導入する場合、
流路4の体積に相当する気泡が混入するといったことが
考えられる。しかして、この場合、流路6の径R(r=
R/2)に球状に気泡が生成すると考えると、その球の
体積は(4/3)×(πr3)である。従って、上記不利
を回避すべく、流路4の体積をそれ以下(または、ほぼ
それ以下)にすることが必要であり、本例では、既述の
如く、そのように設定することとしたものである。そし
て、この考えで、流路4の径を流路6の径Rの半分にす
るとRの4倍の長さの流路を設けることができる。この
ように形状を設定することにより、本装置では、より安
定な泳動を行うことがきるようになり、必要量以上に試
料が混入することも少なくなる。
【0041】なお、本実施の形態の各構成は、当然、既
に触れてきた事項をも含めて、各種の変形、変更が可能
である。 〔第1実施形態の変形例1〕例えば、本実施の形態で
は、基板17をシリコン基板、基板16をガラス基板と
したが、基板17をガラス基板、基板16をシリコン基
板とすることも可能である。
【0042】〔第1実施形態の変形例2〕従って、シリ
コン基板同士またはガラス基板同士で流路を形成するこ
とも、可能であり、また、両方の基板に溝を形成し、流
路とすることも可能である。
【0043】〔第1実施形態の変形例3〕また、図示例
では、処理部分に関し、処理部分7及び処理部分12の
2箇所による例を示したが、これに限らず、既述の如き
より多くの流入、流出口を設けることで、より多くの処
理部分を設けることも可能である。
【0044】次に、図3(A),(B),(C)を参照
して、本発明の小型電気泳動装置の第2の実施の形態を
説明する。本実施の形態によるものは、光学的な検出部
の流路の厚さを電気泳動を行うための流路のそれより
大、好ましくは約2倍以上、約10倍以下のものにしよ
うというものである。図3(A),(B),(C)は、
上記第2の実施の形態に従って構成される装置の場合に
おいて用いることのできる前記図1の光学的検出部部分
11近傍の好適例の拡大断面図を示している。ここに、
図3(A),(B),(C)の各具体例の各々における
基板23a,23b,23cは、図2の基板17に対応
し、また、各例の各々における基板25a,25b,2
5cは図2の基板16に対応する。2枚の基板の具体的
な組合せ態様については、更に後記で述べる。
【0045】また、それらの各例(A),(B),
(C)において、電気泳動の行われる流路24a,24
b,24c(24)は、図示の如くに光学検出部21
a,21b,21cで流路の幅(図中上下方向の高さ方
向寸法(光学検出部21a,21b,21cの厚さ寸
法))が広がっている。そして、分離された成分を検出
するための入射光19a,19b,19cは、光学検出
部21a,21b,21cを通過し、出射光20a,2
0b,20cは検出器(不図示)に導かれるようになっ
ている。
【0046】ここで、図3(A),(B),(C)各々
の例は、本発明に従う小型電気泳動装置における光学的
な検出部の構造の例であると同時に、その使用第1,第
2基板の組合せをも例示している。そのひとつは、図3
(A)に示すように、ガラス基板25a(25)と、片
面からエッチングして形成したシリコン基板23aとを
組み合わせる構造であり、また他は、図3(B)に示す
ように、ガラス基板25b(25)と、両面からエッチ
ングして形成したシリコン基板23bとを組み合わせる
構造であり、そして、図3(C)に示すように、各々が
両面からエッチングして形成したシリコン基板23cと
シリコン基板25cとを組み合わせる構造である。
【0047】更に、具体的に説明すると、次のようであ
る。図3(A)の場合は、基板23a側がシリコン基板
であって、シリコン酸化膜で覆われたそのシリコン基板
23aをリソグラフィ技術とエッチング技術を用い片面
から異方性エッチングして、図の如くに酸化膜22を残
したものである。これにより、光学検出部21aが形成
される。図3(B)の場合は、図3(A)の場合の構成
を更に発展させており、同様に基板23aにシリコン基
板を用いるが、そのシリコン基板23bを片面づつエッ
チングしてその酸化膜27を図示のように残すようにし
たものである。このような形成方法を用いると、光学検
出部21bの厚さ21を任意に設定することができる。
【0048】図3(C)の構成の場合は、更に上記構成
を発展させており、基板23c及び25c双方に、シリ
コン基板を用いて、図示の如くに酸化膜29,30を残
すようにして光学検出部21cを形成した例である。こ
の場合の装置構成は、前記〔第1実施形態の変形例2〕
における、シリコン基板同士で流路を形成する場合に相
当する。なお、ここでは、本実施形態に係る小型電気泳
動装置の要部部分について述べたが、上記で特に言及し
た以外の構成、事項等に関しては、基本的に、前記第1
の実施の形態で内容、説明(変形例等も含む)と同様で
あってよい(この点は、後記の実施の形態の場合も、こ
れに準ずる)。
【0049】以下、本実施の形態による場合の装置の作
用等について説明する。既述のように、キャピラリ電気
泳動の検出は光学的に行われるが、キャピラリの径が細
いが故に光路長も小さく検出も高感度が要求されるとこ
ろ、本装置によれば、上述のような構成に基づき、これ
にも容易に応えられる。
【0050】即ち、電気泳動によって分離された成分
は、上記各例において流路24(24a,24b,24
c)の延長上に分布している。これを例えば図1の流入
口3の方から流出口10に向かってポンプで液を送り出
すか、または泳動を続けると、各成分が順次光学検出部
(21a,21b,21c)に送り込まれる。これを測
定するわけであるが、図3(A),(B)または(C)
で示すように、光学的な検出部21a,21bまたは2
1cを、流路24(電気泳動を行うための流路)よりも
厚くすることにより、光路長を増やすことができ、ま
た、泳動によって分離された成分の分布の幅も検出部2
1a,21bまたは21cを厚くした分だけ狭くするこ
とができる。従って、検出感度の向上実現と分離パター
ンのピークも急峻にすることができる。このことにより
高感度の検出が期待できる。もっとも、検出部21a,
21b,21cの厚さをあまり厚くすると、分離された
成分が重くなってしまうので、この厚さとしては2倍以
上、10倍以下(または、ほぼ2倍以上〜ほぼ10倍以
下)であることは望ましい態様である。そして、流路2
4に合わせて、既述のようにその検出部の厚さも任意に
設定することも容易に可能である。また、使用基板とし
て、シリコン基板を使用する場合においては、シリコン
は可視、紫外光に対しては不透過性なので検出部に対す
るスリットとしても用いることができる。本実施形態で
は、前記第1の実施の形態で奏し得る既述の作用効果に
加え、更に、上記のことを実現できるものである。
【0051】なお、本実施の形態の各構成についても、
当然、既に触れてきた事項を含め(第1の実施の形態で
の変形、変更を含む)、各種の変形、変更が可能であ
る。 〔第2実施形態の変形例1〕例えば、ガラス基板同士で
このような加工も行うことが可能である。もっとも、そ
のような場合には外部にスリットが必要となる。
【0052】〔第2実施形態の変形例2〕また、本実施
の形態では、透過光の測定について述べたが、例えば図
3(A)の光の入射方向を逆にして斜めに傾いたエッチ
ング面に光を入射するようにし、多重反射を繰り返した
後、反対側の斜めのエッチング面から出てくる光を測定
するようにすることによって、より光路長を稼ぐことも
可能である。この場合、流路の内面を液体より屈折率の
低い薄膜で覆うことが必要である。
【0053】図4、図5は、本発明の小型電気泳動装置
の第3の実施の形態を示す。本実施の形態は、使用基板
に共にシリコン基を用いるようにし、かつまた、シリコ
ン基板に電圧を印加するための電極を設けることで、簡
単な構成をもって、該電極と、電気泳動を行うための電
圧印加電極対のうちのどちらか片方との間に電気浸透流
制御のための電圧を印加する構成を更に付加する態様と
するか、あるいは、かかる内容を更に発展させ、液流路
に面するシリコン基板にPN接合を用いて電気的に絶縁
された微小領域を当該流路に沿って複数設けて、各々の
領域と、上記電気泳動用の電極対のどちらか片方との間
で独立に電圧印加することができるようにしようという
ものである。本実施形態は、第1,第2の基板の組合せ
をシリコン基板同士とする場合の変形例にも相当する。
【0054】図4,5は、各々その一例の構成を示すも
のであり、前記第1実施形態における断面を示した図2
と同様の断面を示す図である。この図4,5では、説明
を分かりやすくするために図1の流路を直線状に簡略化
したものであるが、図1で示す形状やその他の形状な
ど、いかような流路の形状にも適用可能であることはい
うまでもない。
【0055】図4は、本実施形態に従う装置での電気泳
動を行う流路に沿った断面図であるが、ここでは、前記
図2の基板16と基板17が、各々図4の基板34及び
基板37に相当し、両基板34,37にシリコン基板を
用いている。なお、シリコン基板37の片面に溝を形成
し、その後、別のシリコン基板34で溝を覆うことによ
り液流路を形成してその流路で電気泳動を行う構成につ
いては、前記各実施形態のものと同様である(この点
は、図5のものも同様である)。また、それらシリコン
基板34,37の表面は、各々絶縁膜35,40で覆わ
れている。絶縁膜35は、上側の位置するシリコン基板
34の貫通孔相当部分(図2貫通孔部分参照)内面をも
含むその基板34表面絶縁膜であり、絶縁膜40は、下
側基板となるシリコン基板37側の流路形成用溝内面を
も含むその基板37表面絶縁膜40である(この点は、
図5の場合も、これに準ずる)。
【0056】本例では、基板34,37の一方の面に
は、絶縁膜35及び40の一部が除去されて電極33,
39が形成されており、この電極(33,39)は電気
泳動を行うための電極41,41aのうちの片方の電極
41との間に電源42(可変電源)を用いて電圧が印加
できるようになす。更に、電気泳動を行うためのその片
方の電極41は、もう一方の電極41aとの間に電源4
2aを用いて電圧が印加できるようになっている。そし
て、上述の2つの電圧は独立に制御できるようになって
いる。
【0057】図5の構成の例は、これを更に発展させた
ものである。上記した図4の場合は、シリコン基板は半
導体なので基板の一面に電極を形成し、電気泳動を行う
ための電極の片方との間に電源42により電圧を印加す
ることにより容易に電気泳動を行う流路の内表面の荷電
状態を変化させ得て、かかる手段で電気浸透流の制御を
可能にしより精密な分析を達成せしめるようにするもの
であるが、図5では、以下の改良も加えてある。
【0058】図5では、図示の如く、既知の半導体技術
を用いて、液流路に面するシリコン基板43,51にP
N接合を形成し、電気的に絶縁された微小領域を流路に
沿って複数(図中は、3箇所を図示)設ける。これは、
ここでは、本実施形態の使用基板43及び基板51を例
えばN型とすると、図示の基板43,51の絶縁層44
a,44b,44c,52a,52b,52cはP型と
なるようにドーピングされ、分離層45a,45b,4
5c,53a,53b,53cはN型となるようにドー
ピングされようにすることによって行い、かくしてそれ
らの微小領域を得ることができる。従って、各々の領域
(45a,45b,45c,53a,53b,53c)
は、互いに絶縁されており、かつ、電気泳動を行うため
の電極41との間で独立に電圧印加できるよう、各々の
領域は図示の如くの結線関係で電源56、電源55、電
源58(可変電源)に接続するものである。図中、46
a,46b,46c,54a,54b,54cは、それ
ら電源と接続される電極を表す。
【0059】なお、図5中の絶縁膜47及び絶縁膜49
は、各々図4の場合の絶縁膜35及び絶縁膜40と同等
のものであり、電源57は図4の場合の電源42aに対
応する。また、図4,5中の他の構成要素については、
前記図2の場合と同様であってよく、符号3,10,1
3,15は各対応要素を表す。
【0060】以下、本実施の形態による場合の作用等に
ついて説明するに、本例の場合の装置は、次のようにし
て使用することができる。まず、図4の構成の装置の場
合にあっては、電気泳動は電極41及び電極41aとの
間に電圧を印加することにより行われるが、同時に電極
41と電極33との間にも電圧を印加することにより、
既述の如く、絶縁膜35及び絶縁膜40の表面の荷電の
状態を変化させることができる。このことにより電気浸
透流を制御できるようになるため、電気泳動で分離され
る成分の分離がより精密に行えるようになる。しかも、
電気浸透流を制御するに当たり、図2との対比でも理解
できるように、構成の複雑化を招くことなくこれを実現
できている。
【0061】図5の場合はまた、基板43,51にシリ
コンを用いているため、半導体技術を用いることにより
液流路に面する該シリコン基板にPN接合を形成し、電
気的に絶縁された微小領域を流路に沿って複数設け、各
々の領域と電気泳動を行うための電極(41,41a)
のどちらか片方との間で独立に電圧印加できる構成の小
型電気泳動装置が可能である。それ故に、更に図5によ
る装置においては、上記の効果に加え、流路に沿って流
路表面の荷電の状態を連続的に変化させることができる
ので、浸透流を加速または抑制することが期待できる。
このことにより電気浸透流をより能動的に制御すること
が可能になり、前述のように精密な泳動が可能になると
ともに、それがより一層効果的に行える。
【0062】本実施形態では、前記第1の実施の形態で
奏し得る既述の作用効果に加え、更に、上記のことを実
現できるものである。なお、図5においては電圧を印加
するための電極46a,46b,46c,54a,54
b,54cの具体的な形態は示していないが、絶縁層4
4a,44b,44c,52a,52b,52c、分離
層45a,45b,45c,53a,53b,53c
は、通常の半導体技術により任意の形状に形成すること
ができるため、流路の周囲に形成したこれら絶縁層、分
離層を伸長させ流路から離れた位置に当該電極を形成す
ることができるので、構成上で問題とはならない。
【0063】なお、本実施の形態の各構成についても、
当然、既に触れてきた事項を含め(第1,2の実施の形
態での変形、変更を含む)、各種の変形、変更が可能で
ある。以下の変形は、図4,5による態様のものに、と
もに適用可能である。 〔第3実施形態の変形例1〕例えば、シリコン基板表面
の絶縁膜としては、シリコンの酸化膜、窒化膜、アルミ
ナ、酸化タンタル等、絶縁性のあるものであれば何でも
使用できる。また、その膜の単独膜、複合膜でも良い。
更に、前記第1の実施の態様で述べたように、それらの
膜の表面を有機物で修飾したものにも適用可能である。
【0064】〔第3実施形態の変形例2〕その他、本構
成では、流路の周囲をシリコン基板で覆った構成となっ
ているが、内表面の一部の状態を変化させるとそれが周
囲に伝播し、効果を発揮するとの報告もある。この観点
からすると片側がガラス基板でも効果が期待できる。
【0065】次に、本発明の小型電気泳動装置の第4の
実施の形態について、図6、及び図7(A),(B),
(C)を参照して説明する。本実施の形態によるもの
は、前記各実施形態と同様、例えば第1の基板の片面に
溝を形成し、その後、別の第2の基板でその溝を覆うこ
とにより液流路を形成するものであるが、その流路でフ
リーフロー電気泳動を行う小型電気泳動装置の態様のも
のであって、図6は、本実施形態での主要な要素の配置
構成の一例を示す。また、図7(A),(B),(C)
は、かかる配置構成の場合の小型フリーフロー電気泳動
装置における図6のA−A線相当断面、B−B線相当断
面、C−C線相当断面を示す。
【0066】本例では、図7(A),(B),(C)に
示す第1の基板としてのシリコン基板72にエッチング
により、図6に見られる形状に溝が形成されている。第
2の基板(例えばガラス基板)としての基板71は、該
シリコン基板72と図7の如くに組み合わせることがで
きる。以下、本実施形態の要部につき、主に、図6をも
とに液の流れ(図6中、矢印方向)に沿って図6中手前
側(図中下部)から反対側(図中上部)向かって説明す
る。
【0067】装置の流路は、緩衝液流入口(注入口)6
8を頂点としてそこから徐々に扇状に広がり、当幅の流
路73に到達する(図7(C))。該流路73の部分で
は、液が流れると同時に泳動が行われ、泳動の終了する
地点には流路を細分割した複数のチャネル58a,59
a,60a,61a,・・・62aが形成されている
(図7(B))。ここでは、細分割された流路は扇状に
広がり、複数のチャネル58a,59a,60a,61
a、・・・62aは、更に図中上方へ流れて行くに従っ
てチャネルの間隔が広がり、液取り出し口58,59,
60,61・・・62近傍では相互に十分の間隔がとら
れている(図7(A))。
【0068】こうして、流路73の流出口(等幅流路7
3末端のB−B線付近部分)を複数の流路としてのチャ
ンネルに更に分割し、斯く分割された流路が扇状に広が
り、液取り出し口部分(B−B線より更に下流のA−A
線近傍部分)でのかかる流路の間隔(隣接チャンネル相
互間の間隔)は広げてある。
【0069】この液取り出し口部分での流路間隔の設定
を含めた構成の採用は、以下のような観点からのもので
ある。適用する基板上の溝の形成については、前記各実
施形態と同様にして、リソグラフィとエッチング技術を
用いることができ、よって、1μレベルの微細な加工が
可能である。このため電気泳動により分離された成分
を、上記の流路(74)流出口部分で細分割されたチャ
ネル(59a,60a・・・61a等)に導いた後、そ
の成分を各チャネルから適切に取り出すためには、その
液分取口となる上記の取り出し口(59,60・・・6
1等)の間隔が十分に広がっていることが必要である。
従って、これらを踏まえ、分離された成分を純度良くか
つ確実に採取することができるようにすべく、本例装置
では、上述の如き構成を採用することとしたものであ
る。もっとも、上記では扇状に広がった流路としたが、
取り出し口の間隔が、分離された成分を純度良くかつ確
実に採取するのに必要な程度に十分広がった構造であれ
ば、扇状でなくともよい。
【0070】また、本例において、上記流路73、チャ
ネル58a,59a,60a,61a,・・・62a、
及び液取り出し口55,59,60,61,・・・62
の断面積(断面図で白抜きの部分)は、互いに等しくな
るように(もしくは、実質的に、ほぼ等しくなるよう
に)形成されている。なお、チャネルの幅は、目的に合
わせて10μから1mmの範囲で設定することが可能で
あり、深さも10μの範囲とすることが可能である。
【0071】更に、流路73の両側近傍には、図6及び
図7(C)に示すように、細長い電極65,69が設け
られる、好ましくは、電極65,69は流路73に平行
に配設され、これが電源に接続される。泳動は、その電
源からこれら電極65,69に電圧が印加されることに
より行われる。また、かかる電極65,69の各内側
(流路73の中央側)位置において、その電極65,6
9に沿ってガイド64,70が配置され、かつ、好まし
くは、ガイド64,70は液路の上面に位置させ、これ
らガイド64,70の突起部分と反対側基板72との間
にはスペースが設けられている(図7(C))。ここ
に、ガイド64,70の幅はできるだけ狭い方が望まし
いが、実用的には1mm以下であればよい。
【0072】また、試料の注入口67は、流路が等幅と
なった地点において、上側の基板71に設けられている
(図7(C))。注入口67は、好ましくは、平行な壁
面を形成している流路73の一部に配置する。
【0073】本例の小型フリーフロー電気泳動装置は、
上述のような構成を基本とするが、ここで、上記断面積
の設定について、更に説明を加えておくと、以下のよう
である。かかる断面積についての設定は、基本的には、
基板部分63による平行な壁面を有する上記等幅の流路
73箇所での断面積と、その流路73の末端において更
に扇状に分割された上記チャネル58a,59a,60
a,61a・・・62a部分の断面積の和と、及び液取
り出し口58,59,60,61・・・62での断面積
の和との、3者を対象としてみたとき、それらが等しい
ということを意味する。即ち、図7(A),図7
(B),図7(C)で示される液流路の部分(白抜き)
の面積が等しくなるように流路及びチャネルを形成する
ものである。
【0074】このようにするのは、次の理由に基づくも
のである。層流となって流れている流路中で分離された
成分を各チャネル(59,60・・・61等)に導く
際、分割された流路の断面積の和(チャンネル断面積の
総和)と、電気泳動が行われる流路73の断面積とが異
なると、チャネル内の流速と泳動が行われる流路での流
速が異なり、更には圧力の分布が生じる。この不均衡は
チャネルと電気泳動が行われる流路73の境界(B−B
線付近部分)で顕著であるため、分離された成分が乱さ
れることになる。従って、これを回避しようと、上述の
如くに断面積を等しくする構成を採用することとしてあ
り、これにより、前記の液取り出し口部分での流路間隔
の設定に加えれて、より一層、分離されたものが精度よ
く分取され、取り出せる。
【0075】以下、本実施の形態による小型電気泳動装
置の作用等について、更に具体的に説明する。本装置に
よれば、上述のような構成とされているので、次のよう
にして分離された成分を純度良くかつ確実に適切に取り
出すことができる。本装置においては、緩衝液を注入口
68から連続的に流し続ける。電極65と電極69の間
に電圧を印加し泳動を開始する。試料を注入口67より
連続的に注入する。ここに、注入される液量は、例えば
緩衝液の1/10以下とする。
【0076】かくして、注入された試料は、緩衝液の流
れによって運ばれてゆくが、流れと直角に泳動が行われ
るため、運ばれるに従って成分の分離が進む。分離され
た成分は、各々細分されたチャネル58a,59a,6
0a,61a,・・・62aに流れ込み、それらチャネ
ルを流れる液体には単独の成分のみが含まれるため、液
取り出し口58,59,60,61・・・62から必要
な成分を取り出すことができる。
【0077】この場合において、図7(B)で表される
チャネル58a,59a,60a,61a,・・・62
aは、成分を取り込むところなので、細分化されかつ狭
い領域にチャネルが密集しているが、一方、図7(A)
にみるように、本装置では、前述の如くに、その成分を
各チャネルから取り出す上記液取り出し口の間隔が十分
に広がっており、その取り出し口では間隔を十分に取る
ことができるため容易に目的の成分を取り出すことがで
きる。よって、フリーフロー電気泳動でも、分離された
成分をできるだけ純粋に取り出すために流路の末端を細
分化する場合であっても、細分化すればするほど細分化
された流路から試料の成分を取り出すことが困難になる
といったことも解消し得て、分離された成分を純度良く
かつ確実に採取することができる。
【0078】また、本装置では、上記の試料の分離の過
程で、図7(A)、図7(B)、図7(C)で示される
流路の部分(白抜き部分)の面積が等しくなるように流
路、チャネル及び液取り出し口が形成されているため、
既述の如くに各部分での流速が等しくなり、圧力の分布
が生じることがないので、分離された成分が乱されるこ
ともない。従って、この点でも、分離された物を精度良
く分取できるようになる。フリーフロー電気泳動では、
泳動が行われる流路73では液が層流となって流れる必
要があり、注入される試料も層流となって流れている緩
衝液中に導入されるが、この場合において、緩衝液が拡
散または乱流となって流れているところに試料が導入さ
れれば、それだけ成分の分離も悪くなるところ、本装置
では、これも良好に解消されるものである。
【0079】また、本装置によれば、以下のような点で
も効果的である。既述のように、フリーフロー電気泳動
でも電気泳動時には気泡が発生する。しかるに、本例で
は、泳動が行われる流路73に平行した電極65,69
に沿ってそれを囲むよう内側には図6図示の如きガイド
64,70を設けられているため、泳動の行われる流路
73に気泡が流れ込むことが少なくなり、より確実な泳
動が可能となる。従って、発生した気泡を電極65,6
9付近のそこに滞留させず、泳動される流路に拡散させ
ないようにする対策として、かかる構成は有用なものと
なり、しかもまた、かかるガイドを設けることでより確
実な泳動を可能にせしめるよう導入することとした当該
ガイド64,70は、本例の場合、そのガイド64,7
0の突起部分と反対側基板72との間にはスペースを有
して設けるよう構成してあり(図7(C))、かかるス
ペースがあるため、泳動の行われる流路73には均等に
電圧が印加されるので泳動の支障とはならない。
【0080】更に、かかる構成は、そのガイド64,7
0が上面側(基板71側)に位置することを構造となる
結果、ガイド64,70を上面(基板71)に配置する
ことにより(図7(C))、泳動の行われる流路73に
気泡が流れ込むことがより少なくなり、この点でから
も、より一層確実な泳動が可能となり、効果的なものと
なる。
【0081】また、本装置において、注入口68から導
入された緩衝液は流路の形状に従って拡散し、その後流
路73の幅が等しいところでは層流となって流れる。一
方、試料注入口67は、前述の如くに、平行な壁面を形
成している流路73の一部に配置するものであり、従っ
て、平行な壁面を形成している流路73から試料を注入
することにより、試料の拡散をできるだけ抑えることが
でき、泳動による分離をより確実に行うことができる。
試料注入口67は、より好ましくは、流路73の幅が等
しく緩衝液が層流となって流れる地点、即ち流路73が
等幅となった地点に設けるとよく、この地点から試料を
注入することにより、より効果的に試料の拡散をできる
だけ抑えることができるので、泳動による分離をより精
密に行うことができ、本例ではそのように選定してあ
る。
【0082】なお、本実施の形態の各構成は、当然、既
に触れてきた事項をも含めて、各種の変形、変更が可能
である。 〔第4実施形態の変形例1〕例えば、シリコン基板72
としてはP型、N型どちらでも使用でき、結晶面も[1
00]、[110]等種々のものが使用できる。なお、
異方性エッチングを使う場合には、[111]面のシリ
コン基板を用いることはできない。また、異方性エッチ
ングで溝を形成する場合には、流路が直線の組み合わせ
となるが、ICPプラズマエッチング、エキシマレーザ
によるエッチング等の技術で溝を形成する場合には、曲
線的な加工も可能である(これらの点は、前記実施形態
の場合と同様である)従って、このフリーフロー電気泳
動の場合も、緩衝液を注入し、それが拡散し、層流とな
り最後に複数のチャネルに分割されそのチャネルが発散
する構造を取ることができれば、形状に限定されること
はない。
【0083】〔第4実施形態の変形例2〕また、例え
ば、上記したガイド64,70は、両サイドのチャネル
58a,62aを構成する外壁と一体でも別に形成され
てもよい。また、流路に沿って配設することとなる電極
(65,69)全体またはそれ以上に渡ってガイドが形
成されることは望ましい態様である。もっとも、その電
極全体またはそれ以上に渡ってガイドが直線的に形成さ
れれば、大きさに限定されることはない。
【0084】〔第4実施形態の変形例3〕また、ガイド
64,70の突起部分と反対側基板72とのスペース
は、電気的な導通が確保できればその大きさに制限はな
いが、そのスペースを確実にするためにガイドの突起の
上に更にスペースに相当する厚みのポッチを複数設ける
ことも可能である。
【0085】〔第4実施形態の変形例4〕また、試料の
注入口67については、その配置は流路の中心でなくと
も良い。分離される目的の泳動方向が電極のプラスまた
はマイナス方向に限定されるのであれば、泳動方向と反
対側の電極付近に試料注入口を配置することにより泳動
の距離を有効に利用でき、流路の幅を小さくすることが
できる。このような態様で、実施してもよい。
【0086】〔第4実施形態の変形例5〕また、前記
〔第1実施形態の変形例1〕、〔第1実施形態の変形例
2〕に準じた変形で実施することもできることはいうま
でもない。
【0087】以上の各実施の形態、変形例等に記載され
た内容は、以下の発明として捉えることもできるもので
ある。 〔1〕 シリコン基板またはガラス基板の片面に溝を形
成し、その後、別のガラス基板またはシリコン基板で溝
を覆うことにより液流路を形成してその流路で電気泳動
を行う小型電気泳動装置(以下、これを、付記項〔2〕
以下において、「電気泳動装置」と略す)であり、電気
泳動を行う流路の途中に部分的に液を流すための液の流
入、流出口(1,2,8,9)を少なくとも1組以上配
設することを特徴とする小型電気泳動装置(図1)。こ
の構成によれば、電気泳動が行われる流路に係る経路と
は別に、電気泳動の行われる流路の一部を独立して液の
出し入れを行うための液の流入、流出口(1,2,8,
9)が形成される。これにより、例えば流入口、流出口
(1,9)間で液路途中の部分的な領域にのみ流路内壁
をアミノ基で処理することができ、あるいはこれと同様
に他の流入口、流出口(2,8)間で液路途中の対応す
る部分的な領域をカルボキシル基で処理することができ
る。このように電気泳動を行う流路を多種類の物質で部
分的に修飾も容易にでき、目的に合わせたより高感度な
分析が効率よく行えるようになる。
【0088】〔2〕 前記「電気泳動装置」において、
電気泳動を行う流路の両端の液流入、流出口に電極が配
設され、かつ電極(14)を含む配管(13)が垂直に
なっていることを特徴とする小型電気泳動装置(図
2)。この場合は、電極(14)は電気泳動を行う流路
の上部に設けられ、かつ、その流入、流出口(3,1
0)に対し垂直方向に配管される。このような構造とす
ることにより、電極に電圧が印加されて電気分解により
気泡が発生してもその気泡は電気泳動が行われる流路に
拡散することはなく、また、電極の上部に気泡が抜けて
行くため電極表面に気泡が滞留することもない。従っ
て、安定な電気泳動が行えるようになる。
【0089】〔3〕 前記「電気泳動装置」において、
電気泳動を行う流路の途中に試料を注入するための流路
(4)及び注入口(5)が形成され、試料を注入するた
めの流路(4)の占める体積が電気泳動を行うための流
路6の径R(r=R/2)の4/3(πr3)以下である
ことを特徴とする小型電気泳動装置(図1)。この場合
は、リソグラフィ技術とエッチングにより電気泳動を行
う流路の形状を任意に設定することが可能であるととも
に、試料の導入のための流路や導入口を設けることが可
能であり、容易に試料を導入することができ、しかも、
そのような試料の導入部を独立に任意に形成し、そこか
ら試料の導入を行うようにしても、その試料の導入時の
気泡の混入をできるだけ少なくすることができ、安定な
泳動を行うことがきるようになる。試料を注入するため
のその流路(4)の径を電気泳動を行う流路(6)の径
Rの半分にするとRの4倍の長さの流路を設けることが
できる。
【0090】〔4〕 前記「電気泳動装置」において、
光学的な検出部の流路の厚さ(21)が電気泳動を行う
ための流路(24)の2倍以上、10倍以下であること
を特徴とする小型電気泳動装置(図3)。キャピラリ電
気泳動の検出は光学的に行われ、この場合、キャピラリ
の径が細いため光路長も小さく、検出も高感度が要求さ
れるが、上記の構成によって、光学的な検出部を厚くす
ることにより光路長を増やすことができ、また、泳動に
よって分離された成分の分布の幅も検出部を厚くした分
だけ狭くすることができる。従って、検出感度の向上と
分離パターンのピークも急峻にすることができる。この
ことにより高感度の検出が期待できる。しかも、検出部
の厚さをあまり厚くすることが原因で、分離された成分
が重なってしまうといったことも回避しつつ上記のこと
を実現できる。光学的な検出部の構造としても、ガラス
基板(25)と片面からエッチングして形成したシリコ
ン基板(23a)を組み合わせる構造やガラス基板(2
5)と両面からエッチングして形成したシリコン基板
(23b)を組み合わせる構造、両面からエッチングし
て形成したシリコン基板(23c)とシリコン基板(2
6)を組み合わせる構造等、種々の構造が考えられ、検
出部の厚さも任意に設定することが可能である(図3
(A)〜(C))。
【0091】〔5〕 シリコン基板の片面に溝を形成
し、その後、別のガラス基板で溝を覆うことにより液流
路を形成してその流路で電気泳動を行う小型電気泳動装
置であり、シリコン基板に電圧を印加するための電極
(33)と電気泳動を行うための電極(41,41a)
のどちらか片方との間で電圧を印加する手段を有するこ
とを特徴とする小型電気泳動装置(図4)。この場合
は、基板にはシリコン基板(34,37)が用いられ
る。シリコン基板の表面は絶縁膜で覆われる。シリコン
基板は半導体なので、基板の一端に電極(33,39)
を形成し、電気泳動を行うための電極の片方との間に電
圧を印加することにより、容易に電気泳動を行う流路の
内表面の荷電状態を変化させることができる。このこと
により電気浸透流を制御できるようになり、より精密な
分析が行えるようになる。
【0092】〔6〕 シリコン基板の片面に溝を形成
し、その後、別のガラス基板で溝を覆うことにより液流
路を形成してその流路で電気泳動を行う小型電気泳動装
置であり、液流路に面するシリコン基板にPN接合を用
いて電気的に絶縁された微小領域を流路に沿って複数設
け、各々の領域(45a,45b,45c,53a,5
3b,53c)と電気泳動を行うための電極(41,4
1a)のどちらか片方との間で独立に電圧印加する手段
を有することを特徴とする小型電気泳動装置(図5)。
これは、上記付記項〔5〕の内容を更に発展させたもの
で、基板にシリコン(43,51)を用いているため、
半導体技術を用いることにより液流路に面するシリコン
基板にPN接合を形成し、電気的に絶縁された微小領域
を流路に沿って複数設け、各々の領域(45a,45
b,45c,53a,53b,53c)と電気泳動を行
うための電極(41,41a)のどちらか片方との間で
独立に電圧印加できる構成の電気泳動装置が可能であ
る。よって、この場合は、更に、例えば、流路に沿って
流路表面の荷電の状態を連続的に変化させることにより
浸透流を加速または抑制することが期待できる。このこ
とにより電気浸透流をより能動的に制御することが可能
になり、精密な泳動が可能になる。
【0093】〔7〕 シリコン基板またはガラス基板の
片面に溝を形成し、その後、別のガラス基板またはシリ
コン基板で溝を覆うことにより液流路を形成してその流
路でフリーフロー電気泳動を行う小型電気泳動装置(以
下、これを、付記項〔8〕以降において、「フリーフロ
ー電気泳動装置」と略す)であり、流路の流出口を複数
の流路に更に分割し、分割された流路が扇状に広がり、
液分取口(59,60,61)での流路の間隔が広がっ
ていることを特徴とする小型フリーフロー電気泳動装置
(図6)。基板上の溝の形成はリソグラフィとエッチン
グ技術を用いるため1μレベルの微細な加工が可能であ
り、このため電気泳動により分離された成分を細分割さ
れたチャネル(59a,60a,61a等)に導いた
後、その成分をチャネルから取り出すためには取り出し
口(59,60,61等)の間隔が十分に広がっている
ことが重要となるが、上記の構造とすることにより分離
された成分を純度良くかつ確実に採取することができる
ようになる。また、この場合、取り出し口の間隔が十分
広がった構造であれば扇状でなくともよい。
【0094】〔8〕 前記「フリーフロー電気泳動装
置」において、流路に平行して配設された電極(65,
69)の内側に沿ってガイド(64,70)が設けられ
ており、ガイドの突起部分は反対側基板(72)との間
にスペースを有していることを特徴とする小型フリーフ
ロー電気泳動装置(図6,図7(C))。この場合は、
上記構成のように電極(65,69)に沿ってガイド
(64,70)を設けることにより、電気泳動時に気泡
が発生するものの、泳動の行われる流路に気泡が流れ込
むことが少なくなり、より確実な泳動が可能となる。ま
た、ガイドの突起部分と反対側基板との間にはスペース
があるため、泳動の行われる流路には均等に電圧が印加
されるので泳動の支障とはならない。
【0095】
〔9〕 前記「フリーフロー電気泳動装
置」において、ガイド(64,70)が流路の上面に配
置されていることを特徴とする小型フリーフロー電気泳
動装置(図7(C))。これは、上記付記項〔8〕の発
展型で、ガイド(64,70)を上面に配置することに
より泳動の行われる流路に気泡が流れ込むことが、より
少なくなる。
【0096】〔10〕 前記「フリーフロー電気泳動装
置」において、試料注入口(67)は平行な壁面を形成
している流路の一部に配置されていることを特徴とする
小型フリーフロー電気泳動装置(図6)。緩衝液注入口
(68)から導入された緩衝液は流路の形状に従って拡
散し、その後流路の幅が等しいところでは層流となって
流れるが、この場合、上記構成にようにすると、平行な
壁面を形成している流路から試料を注入することにより
試料の拡散をできるだけ抑えることができ、泳動による
分離をより確実に行うことができる。また、分離される
目的成分の泳動方向が電極のプラスまたはマイナス方向
に限定されるのであれば泳動方向と反対側の電極付近に
試料注入口を配置することにより泳動の距離を有効に利
用でき、流路の幅を小さくすることができる。
【0097】〔11〕 前記「フリーフロー電気泳動装
置」において、平行な壁面を有する流路(73)の断面
積とその流路の末端において更に扇状に分割されたチャ
ネルの(58a,59a,60a,61a・・・62
a)断面積の和及び液取り出し口(58,59,60,
61・・・62)が等しいことを特徴とする小型フリー
フロー電気泳動装置(図7(A),(B),(C))。
この場合は、液が流れる液流路の部分の面積が等しくな
るようにその流路及びチャネルが形成される。層流とな
って流れている流路中で分離された成分を各チャネル
(59,60,61等)に導く際、分割された流路の断
面積の和と電気泳動が行われる流路の断面積が異なる
と、チャネル内の流速と泳動が行われる流路での流速が
異なり更には圧力の分布が生じる。この不均衡はチャネ
ルと電気泳動が行われる流路の境界で顕著であるため、
分離された成分が乱されることになる。従って、上記構
成のように断面積を等しくすることにより分離されたも
のを精度よく分取できるようになる。
【0098】
【発明の効果】本発明によれば、第1の基板または第2
の基板に溝を形成して得られる液流路で電気泳動を行わ
せるようにすることができるとともに、電気泳動が行わ
れる流路の流入出の経路と別に独立して液の出し入れを
行えるその液の流入、流出口を備えて、電気泳動を利用
した分析を行うことができる。これにより、電気泳動を
行う流路の途中を多種類の物質で部分的に修飾すること
にも容易に応え得て、目的に合わせたより高感度な分析
が効率よく行え、この種電気泳動装置に好適な小型電気
泳動装置を実現することができる。
【0099】また、本発明になる小型フリーフロー電気
泳動装置にあっては、第1の基板または第2の基板に溝
を形成して得られる液流路でフリーフロー電気泳動を行
わせるようにすることができるのに加え、その分割され
た流路の液分取口での流路の間隔は広がっており、その
液分取口では間隔を十分にとる構成とし得て、容易に目
的の成分を取り出すことができるとともに、フリーフロ
ー電気泳動において、分離される成分をできるだけ純粋
に取り出すために流路の末端を分割、細分化する場合で
あっても、細分化すればするほど細分化された流路から
試料の成分を取り出すことが困難になるといったことも
回避して、分離された成分を純度良くかつ確実に採取す
ることができ、フリーフロー電気泳動に適用して好適な
小型電気泳動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の小型電気泳動装置の第1の実施の形態
を示すもので、主要な要素の配置構成の一例を示す図で
ある。
【図2】その配置構成の場合における本実施形態に係る
装置の、図1A−A線相当断面を示す図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る小型電気泳動
装置の要部構成を示すもので、光学検出部の例を示す拡
大断面図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態に係る小型電気泳動
装置の説明に供するもので、その一例の構成を示す図で
ある。
【図5】同じく、他の例の構成を示す図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態に係る小型フリーフ
ロー電気泳動装置の説明に供するもので、図1に相当す
る配置構成の一例を示す図である。
【図7】その配置構成の場合における、図6A−A線相
当断面、B−B線相当断面、及びC−C線相当断面を示
す図である。
【図8】従来例を示す図である。
【図9】同じく、他の従来例を示す図である。
【符号の説明】
1,2,3,5,8,9,10 流路口(流入口(注入
口),流出口) 4,6 流路 7,12 処理部分 11 ウインドー(光学的検出部分) 13 配管(チューブ) 14 電極 15 ジョイント 16 基板(ガラス基板) 16a 貫通口 17 基板(シリコン基板) 18 電源(高電圧装置) 19a,19b,19c 入射光 20a,20b,20c 出射光 21a,21b,21c 光学検出部 22,27,29,30 シリコン酸化膜 23a,23b,23c 基板(シリコン基板) 24,24a,24b,24c 流路 25,25a,25b 基板(ガラス基板) 25c 基板(シリコン基板) 33,39 電極 34,37 シリコン基板 35,40 絶縁膜 41,41a 電極 42,42a 電源 43,51 シリコン基板 44a,44b,44c,52a,52b,52c 絶
縁層 45a,45b,45c,53a,53b,53c 分
離層 46a,46b,46c,54a,54b,54c 電
極 47,49 絶縁膜 55,56,58 電源 57 電源 58,59,60,61,62 液取り出し口 58a,59a,60a,61a,62a 液取り出し
口 64,70 ガイド 65,69 電極 67 試料注入口 68 緩衝液流入口(注入口) 71 基板 72 基板(シリコン基板) 73 流路

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 シリコン基板またはガラス基板のいずれ
    かからなる第1の基板と、ガラス基板またはシリコン基
    板のいずれかからなる第2の基板とを有し、少なくとも
    これら第1,第2の基板のうちの一方の基板の片面に溝
    が形成されるとともに、その他方の基板で該溝を覆うこ
    とにより液流路を形成し、その流路で電気泳動を行う装
    置であって、 その電気泳動を行う流路の途中に部分的に液を流すよう
    にするための液の流入、流出口を少なくとも1組以上設
    けてなる、ことを特徴とする小型電気泳動装置。
  2. 【請求項2】 シリコン基板またはガラス基板のいずれ
    かからなる第1の基板と、ガラス基板またはシリコン基
    板のいずれかからなる第2の基板とを有し、少なくとも
    これら第1,第2の基板のうちの一方の基板の片面に溝
    が形成されるとともに、その他方の基板で該溝を覆うこ
    とにより液流路を形成し、その流路でフリーフロー電気
    泳動を行う装置であって、 流路の流出口が複数の流路に分割され、該分割された流
    路の液分取口での流路の間隔が広がっている、ことを特
    徴とする小型電気泳動装置。
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