JP3048345B2 - 毛細管電気泳動装置 - Google Patents

毛細管電気泳動装置

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JP3048345B2
JP3048345B2 JP10078833A JP7883398A JP3048345B2 JP 3048345 B2 JP3048345 B2 JP 3048345B2 JP 10078833 A JP10078833 A JP 10078833A JP 7883398 A JP7883398 A JP 7883398A JP 3048345 B2 JP3048345 B2 JP 3048345B2
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昭彦 奥村
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は毛細管電気泳動装置
に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、Z. H. FanらによるMicromachin
ing of Capillary ElectrophroresisInjectors and Sep
arators on Glass Chips and Evaluation of Flow at C
apillary Intersections(Anal. Chem. 1994, 66, 177-1
84)には、板状部材に電気泳動用流路とこれに交差する
試料注入用流路を形成した毛細管電気泳動装置が開示さ
れている。この装置では、フォトファブリケーション技
術を用いることにより、極めて細い流路を形成できるた
め、従来のチューブ状毛細管を用いる場合に比べて分離
分解能が向上する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】前記公知例では、図6
に示すように、試料注入用流路100と直交する電気泳
動用流路200を備えており、まず、(a)に示すよう
に、試料注入用流路100の両端に電圧を印加して電気
浸透流を発生させ、試料注入用流路100の一端から試
料液を送液することにより、試料を電気泳動用流路20
0との交差部に注入する。次に、(b)に示すように、
電気泳動用流路200の両端に電圧を印加して電気浸透
流を発生させると、交差部に注入された試料は電気浸透
流によって電気泳動用流路200中を移動し、その間
に、試料中の成分は電気泳動移動度の差に基づいて分離
される。このとき、試料のバンド形状は、図6(b)に
示すように、流路交差部の形状(図では正方形)に等し
いことが理想である。
【0004】しかし実際には、流路を流れる液体は、図
6(c)に示すように、交差部において側路の内部にま
で広がってしまうことが知られている。このため、期待
通りの高分解能が得られない問題があった。
【0005】図7は、T字流路を用い、流路中に微粒子
溶液を充填して電気浸透流を発生させて矢印に示す流れ
の方向に微粒子を流したときの、微粒子の流れの軌跡を
示したものである。この図から分かるように、電気浸透
流による流れは、交差部において側路内部を回り込んで
流れていることがわかる。図はT字流路の場合である
が、交差流路の場合においては、両側の側路を回り込ん
で流れる。
【0006】このため、交差部に試料を導入する際に、
試料注入用流路100と電気泳動路200との交差部で
試料液は一部電気泳動路200中にも流入することにな
り、さらに、この試料を電気泳動する場合、試料注入用
流路100の内部に存在する試料液の一部も泳動される
ことになり、試料のバンド幅はさらに広がることにな
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】交差部において電気浸透
流が側路の内部を回り込んで流れるのは、交差部では前
後の流路中に比べて電気浸透流速が小さく、従って交差
部と流路との境界部に圧力が発生しているためであると
考えられる。この圧力が大きいほど、開口部であるとこ
ろの側路内部への回り込みが大きくなる。交差部におい
てその前後の流路中よりも電気浸透流の流速が小さいの
は、交差部では流路の側壁部分が開口しており、流路の
上下にしか内壁が存在せず、電気浸透流発生の起源であ
るところの内壁表面の電荷量が少ないためであると考え
られる。
【0008】従って、交差部の上下の壁面の電荷量を増
加することによって、開口部における電気浸透流速の低
下を防止することで側路内部への回り込みを低減するこ
とができる。具体的には、板状部材の外面の、交差部の
壁面に対向する位置に電極を配置し電圧を印加して壁面
の表面電位を制御することにより実現される。
【0009】
【発明の実施の形態】図1に、本発明の実施例の電気泳
動装置に用いる板状部材1の構成を示す。板状部材1
は、第1基板11と第2基板12とを接合することによ
って形成されるが、図では分離して斜視図の形で示し
た。第1基板11には、第2基板12との接合面側に、
電気泳動用流路2とこの電気泳動用流路2に交差する試
料注入用流路3とが形成されるように細い溝が形成され
ている。第2基板12には、電気泳動用流路2の両端と
試料注入用流路3の両端に対向する位置に、それぞれ液
溜用の貫通孔4が形成されている。第1基板11と第2
基板12には、これらの基板の接合面とは反対側の面
に、電気泳動用流路2と試料注入用流路3の交差部に対
向する位置に、それぞれ、第1電極21(図示しない)
と、第2電極22が形成されている。また、第1基板1
1と第2基板12には、これらの基板の接合面とは反対
の面に、それぞれ外部電源との接続に用いるコンタクト
電極5が形成されており、これらのコンタクト電極5
は、それぞれ第1電極21と第2電極22とに導線6を
介してつながっている。以下に、この板状部材1の作製
方法について説明する。
【0010】第1基板11と第2基板12には、通常ガ
ラスが用いられる。フォトファブリケーション技術と基
板接合技術を利用することにより、数cm角のガラス基
板表面に任意のパターンの流路を形成することができ
る。電極21と電極22への電圧印加によって誘起され
る電荷量は、交差部上下の内壁部分において均一である
ほうが好ましいので、流路上下の壁面は板状部材の外面
に平行であることが好ましい。流路断面の形状は、例え
ば、幅200μm、深さ10μm程度である。このよう
な形状の流路は、フォトファブリケーション技術を用い
て容易に形成することができる。
【0011】図2には、第2基板12の上面から電気泳
動用流路2と試料注入用流路3の交差部を見た部分図を
示す。第2電極22が各流路の交差部を覆うように第2
基板12の上面に配置され、第2電極22への電圧印加
の効果が交差部の周辺にまでおよばないようにするため
に、第2電極22の形状は、電気泳動用流路2と試料注
入用流路3の交差部のみを覆う形になされる。また、第
2電極22の中心点は交差部の中心点に対向しているこ
とが好ましい。第2電極22は、例えば、ガラス基板表
面に白金を蒸着することにより、1μm以下の位置精度
で形成できる。コンタクト用電極5と接続用の導線6
も、白金蒸着により形成することができる。以上の説明
は図示されていない第1基板11の第1電極21に関し
てもあてはまる。
【0012】液溜用の貫通孔4の形成には、例えば、超
音波加工を用いることができる。貫通孔4の内径は1m
m〜5mm程度が現実的である。
【0013】図3は、本発明の実施例の電気泳動装置に
用いる板状部材1の構成を、電気泳動用流路2に沿った
断面図で示す。第2電極22と流路との間の肉厚t2、
すなわち第2基板12の厚さは、例えば100μmであ
る。一方、第1電極21と流路との間の肉厚t1は、第
1基板11の厚さと流路(溝)の深さ(例えば10μ
m)の差に等しい。t1とt2は等しいことが好まし
い。このようにすれば、複数の電圧源を用いずに、第1
電極21と第2電極22とに同じ値の電圧を印加するこ
とによって、交差部上下の内壁の荷電状態を等しくする
ことができるためである。
【0014】厚さ100μm程度のガラス基板は容易に
入手可能であり、フォトファブリケーションによる溝形
成も可能である。しかしながら、これら2枚の基板を接
合しても、その厚さはせいぜい200μm程度であるた
め、破損し易いという問題がある。この問題は、板状部
材1の下面に、補強用のプラットフォームを取り付ける
ことにより克服できる。このプラットフォームの材質
は、第1基板11と第2基板12の材質と異なっていて
も構わないが、電気浸透流によって流路内に発生するジ
ュール熱をより効率的に放散させる必要から、放熱性の
高い材質であることが好ましい。電気泳動分析の検出方
法として光学的検出方法を用いる場合には、透明材料で
あることが好ましい。板状部材1のプラットフォームへ
の固定方法としては、例えば、接着剤を用いる方法が簡
単である。
【0015】第1電極21と第2電極22への電圧印加
をより低い電圧値でおこなうとともに、電圧印加の効果
が交差部の周辺にまでおよばないようにするために、肉
厚t1およびt2は100μmよりもさらに薄く、例え
ば10μmにすることが好ましい。しかしながら、10
μm程度の厚さのガラス基板は入手し難く、取り扱いも
容易ではない。この場合、図4に示すように、第1基板
11および第2基板12自体としては、例えば100μ
mのものを用いるが、第1電極21と第2電極22を形
成する部位を掘り下げることにより、その部位のみ厚み
を、例えば10μm程度まで薄くすることが可能であ
る。このような加工は、溝形成に用いたのと同様のフォ
トファブリケーション技術を用いておこなうことができ
る。
【0016】次に、第1電極21と第2電極22に印加
する電圧値について説明する。図8(a)および(b)
は電気泳動用流路2および試料注入用流路3の位置を横
軸に採り、両流路端部間に電気泳動用電圧Va、Vcお
よび試料注入用電圧Va’、Vc’を印加したときの電
気泳動用流路2および試料注入用流路3の内部電圧勾配
を示す。内部電圧勾配はほぼ直線であり、電気泳動用流
路2と試料注入用流路3の交差部の位置の電圧がVbお
よびVb’である。流路交差部内壁の電荷を増加するた
めに、第1電極21と第2電極22には、図8(a)お
よび(b)に示すように、交差部における泳動液の電圧
VbおよびVb’よりも低い電圧VsおよびVs’を印
加する。VsとVbの差およびVb’とVs’の差はそ
れぞれ数百〜数kV程度である。VbおよびVb’は、
流路両端に印加する電圧値(図中VaおよびVa’とV
cおよびVa’、Vc’)によって決まるが、Vsおよ
びVs’の具体的な値は、板状部材1の構造に依存する
ので、以下のようにして実験的に定められる。
【0017】泳動液に微粒子を混ぜ、流路および液溜め
の全てに充填する。電気泳動用流路2の両端に電気泳動
用電圧Va、Vcを印加して電気浸透流を発生させ、微
粒子の流れを顕微鏡で観察しながら、電源8を用いて第
1電極21と第2電極22に印加する電圧を走査し、交
差部における微粒子の流れの広がりが最小になる電圧値
1を決定する。同様にして、試料注入用流路3に試料
注入用電圧Va’、Vc’を印加して電気浸透流を発生
させ、微粒子の流れを顕微鏡で観察しながら、電源9を
用いて第1電極21と第2電極22に印加する電圧を走
査し、交差部における微粒子の流れの広がりが最小にな
る電圧値V2を決定する。このとき、第1電極21と第
2電極22として、例えばITO(酸化インジウム錫)
などの透明材料を用いれば、側路内部を流れる微粒子だ
けでなく交差部内部を流れる微粒子についても観察する
ことができる。
【0018】あるいは、V1を決定した後、 V1をかけ
たまま試料注入用流路3の両端に印加する電圧値を設定
すれば、第1電極21と第2電極22に電圧を印加する
ための高圧電源はV1のための電源1台でよい。
【0019】さらに他の方法としては、V1=V2=0V
になるように、まず、第1電極21と第2電極22を接
地した後、電気泳動用流路2と試料注入用流路3の両端
に印加する電圧値をそれぞれ設定すれば、第1電極21
と第2電極22を接地すればよく、第1電極21と第2
電極22に電圧を印加するための高圧電源は必要ない。
【0020】次に本発明にかかわる電気泳動装置の実施
例の構成と操作方法について、図5に基づいて説明す
る。
【0021】板状部材1を用いる電気泳動分析装置の通
常の用途においては、上記のような液溜用の貫通孔4の
みでは液量が十分ではないことが殆どである。そこで、
これを補うために、貫通孔上に筒状部材7を被せ、例え
ば接着剤を用いて、固定する。まず、電気泳動用流路2
の両端と試料導入用流路3の一端の液溜めに泳動液を、
次いで、試料導入用流路3の他端の液溜めに試料液を入
れるとともに、各液溜めの内部に白金電極10を浸せき
する。試料注入は、スイッチ17を電源8側につなぎ、
第1電極21と第2電極22に電圧(V2)を印加した
状態でおこなわれる。この状態でスイッチ16をつな
ぎ、高圧電源14により試料注入用流路3の両端に電圧
を印加する。交差部に試料液が注入されるまでの時間の
経過後スイッチ16を切る。電気泳動は、スイッチ17
を電源9側につなぎ第1電極21と第2電極22に電圧
(V1)を印加した状態でおこなわれる。この状態でス
イッチ15をつなぎ、高圧電源13により電気泳動用流
路2の両端に電圧を印加する。泳動路内で試料中の成分
が分離され、泳動路の下流側にて、例えば光学的方法を
用いて検出される。
【0022】
【発明の効果】本発明によれば、電気泳動用溝に試料導
入用溝が交差する構成の電気泳動分析装置において、交
差部内壁の電荷量を外部電極の電位により調節すること
により交差部における試料バンドの広がりを低減させ、
分離分解能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の毛細管電気泳動装置の板状部
材の構成図。
【図2】本発明の実施例の毛細管電気泳動装置の流路の
交差部の部分拡大図。
【図3】本発明の実施例の毛細管電気泳動装置の板状部
材の断面図。
【図4】本発明の実施例の毛細管電気泳動装置の流路の
交差部分の拡大断面図。
【図5】本発明の実施例の毛細管電気泳動装置の全体
図。
【図6】毛細管電気泳動装置への試料注入過程の模式
図。
【図7】微細流路の流路接続部における流れの様子を示
す実測図。
【図8】毛細管電気泳動装置の各流路両端と両流路の交
差部分に印加する電圧の関係を示す図。
【符号の説明】
1・・・板状部材、2・・・電気泳動用流路、3・・・試料注入
用流路、4・・・貫通孔、5・・・コンタクト電極、6・・・導
線、7・・・筒状部材、8、9・・・高圧電源、10・・・白金
電極、11・・・第1基板、12・・・第2基板、13、14
・・・高圧電源、15〜17・・・スイッチ。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小泉 英明 東京都国分寺市東恋ケ窪一丁目280番地 株式会社日立製作所 中央研究所内 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 27/447 JICSTファイル(JOIS)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】板状部材に、電気泳動用流路と、この電気
    泳動用流路に交差する試料注入用流路が形成されるとと
    もに、前記板状部材の外面の、前記電気泳動用流路と試
    料注入用流路の交差部に対向する位置に、電極が形成さ
    れ、且、所定の電位が付与されたことを特徴とする毛細
    管電気泳動装置。
  2. 【請求項2】前記電極が透明である請求項1記載の毛細
    管電気泳動装置。
  3. 【請求項3】前記所定の電位がアース電位であり、前記
    電気泳動用流路に加える電気泳動用電源電圧および試料
    注入用流路に加える試料注入用電源電圧が前記アース電
    位を基準に設定される請求項1または2に記載の毛細管電
    気泳動装置。
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