JPH0978880A - 三次元免震構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 地震発生時に建物等の構造物に作用する水平
方向の地震力を低減でき、しかも、上下方向の地震力に
ついても低減することができる三次元免震構造を提供す
る。 【解決手段】 建物２を支持する為の基礎１に免震支持
空間３を凹設し、該免震支持空間３の底面上に、上下方
向に弾性変位可能な空気ばね４を介して前記免震支持空
間３内に収まる中間スラブ１５を支持し、該中間スラブ
１５上面に、水平方向に弾性変位可能な積層ゴム１６を
介して建物２を支持し、前記中間スラブ１５の側面と該
側面に対向する免震支持空間３の側面との間に、前記中
間スラブ１５の水平方向の移動を拘束し且つ上下方向の
移動は許容する水平ストッパ１７を設ける。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、三次元免震構造に
関するものである。

【０００２】

【従来の技術】図５は従来の免震構造の一例を示すもの
で、ゴム板と金属板とを上下方向に交互に積層して構成
した多数の積層ゴムａを基礎ｂ上に配置し、各積層ゴム
ａ上に建物ｃを支持させるようにしたものであり、前記
各積層ゴムａが有する上下方向載荷能力と水平方向のば
ね力とによって、大重量の建物ｃを水平方向に移動可能
な状態で安定性良く支持し且つ地震発生時には建物ｃに
作用する水平方向の地震力を低減し得るようにしてあ
る。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、地震発
生時に建物ｃに作用する地震力は水平方向だけでなく上
下方向にも作用することになるが、前述した如き従来構
造における積層ゴムａでは、その積層方向において十分
な振動吸収能力を有していない為、上下方向の地震力を
低減することができなかった。

【０００４】本発明は上述の実情に鑑みてなしたもの
で、地震発生時に建物等の構造物に作用する水平方向の
地震力を低減でき、しかも、上下方向の地震力について
も低減することができる三次元免震構造を提供すること
を目的としている。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明は、構造物を支持
する為の基礎に免震支持空間を凹設し、該免震支持空間
の底面上に、上下方向に弾性変位可能な上下免震アイソ
レータを介して前記免震支持空間内に収まる中間スラブ
を支持し、該中間スラブ上面に、水平方向に弾性変位可
能な水平免震アイソレータを介して構造物を支持し、前
記中間スラブの側面と該側面に対向する免震支持空間の
側面との間に、前記中間スラブの水平方向の移動を拘束
し且つ上下方向の移動は許容する水平ストッパを設けた
三次元免震構造であって、前記上下免震アイソレータ
が、一端側を受圧プレートにより閉塞され且つ他端側を
オリフィスを有する中間プレートにより閉塞されて内部
に空気室を形成した内筒と、一端側を前記内筒に遊嵌し
且つ他端側を別の受圧プレートにより閉塞されて内部に
前記空気室にオリフィスを介し連通する別の空気室を形
成した外筒と、重合された外筒と内筒との隙間を気密に
閉塞し得るよう外筒側空気室内で受圧プレートに一端を
固着されて前記隙間に入り込み且つ該隙間内で折り返さ
れて他端を前記中間プレートに固着した筒状ゴム膜とに
より構成された空気ばねであり、前記水平免震アイソレ
ータが、ゴム板と金属板とを積層して構成され且つ積層
方向を上下方向に向けた積層ゴムであり、前記水平スト
ッパが、ゴム板と金属板とを積層して構成され且つ積層
方向を水平方向に向けて前記免震支持空間及び中間スラ
ブの何れか一方の側面に固着された積層ゴムと、該積層
ゴムの他端側に浅く凹設されたガイド穴に抜脱自在に嵌
挿され且つ前記免震支持空間及び中間スラブの他方の側
面に固着された位置合せ用ピンとにより構成されている
ことを特徴とするものである。

【０００６】地震が発生した場合、免震支持空間内の中
間スラブは、水平ストッパにより水平方向の移動を拘束
されているので、水平方向の地震力によって基礎と共に
横揺れするが、前記中間スラブと構造物との間に介在さ
れている積層ゴムが水平方向に弾性変位することによ
り、前記構造物に作用する水平方向の地震力が大幅に低
減される。

【０００７】このとき、水平方向の移動を拘束されてい
る中間スラブは、慣性の作用によって、基礎の揺れ方向
における一側で水平ストッパに圧縮荷重を与え且つ他側
では引張り荷重を与えることになるが、前記中間スラブ
の側面と免震支持空間の側面とは、水平ストッパにより
直接連結されているわけではなく、積層ゴムの前面に浅
く凹設したガイド穴に位置合せ用ピンを抜脱自在に嵌挿
したダウエルピン構造で実質的に切り離された状態とし
てある為、前記中間スラブによる圧縮荷重は、積層方向
の圧縮に強い積層ゴムにより安定性良く受け止められ、
また、前記中間スラブによる引張り荷重は、積層方向の
引張りに弱い積層ゴムに直接作用することがない。

【０００８】一方、上下方向の地震力によって基礎が縦
揺れするが、該基礎と中間スラブとの間に介在されてい
る空気ばねが上下方向に弾性変位することにより、前記
構造物に作用する上下方向の地震力が大幅に低減され
る。

【０００９】このとき、前記空気ばねは、内筒に対し外
筒が相対的に昇降して両者の重合状態が深くなったり浅
くなったりすることにより上下方向に拡縮するが、この
拡縮に追従して前記外筒内に形成されている上側の空気
室が拡縮され、該空気室と前記内筒内に形成されている
下側の空気室との間でオリフィスを介して空気の移動が
行われることになり、該空気がオリフィスを通過する際
の通気抵抗によって、振動エネルギーの減衰が図られ
る。

【００１０】また、中間スラブの水平方向の移動を拘束
する水平ストッパは、積層ゴムの上下方向の弾性変位に
より、前記中間スラブの上下方向の移動を許容するが、
同時に、各積層ゴムの復元力の作用によって、前記中間
スラブが免震支持空間の底面に対しシーソーの如く往復
傾動するロッキング挙動を抑制するようにも働く。

【００１１】更に、前述した如く、前記中間スラブが水
平ストッパにより水平方向の移動を拘束され且つ上下方
向にはロッキング挙動を抑制された状態で移動を許容さ
れるので、空気ばねを構成する外筒と内筒の重合した部
分における隙間は、その全周をゴム膜内に抱持された空
気によって確実に保持され、前記外筒と内筒とが座屈し
たり、或いは前記隙間内で折り返されたゴム膜の内面同
士が接触して大きな摺動抵抗を生じたりする等の不具合
が未然に回避されることになり、空気ばねの上下方向の
正常な拡縮作動が良好に保持される。

【００１２】

【発明の実施の形態】以下本発明の実施の形態を図面を
参照しつつ説明する。

【００１３】図１〜図４は本発明の実施の形態の一例を
示すもので、図１において１は免震すべき構造物である
建物２を支持する為の基礎を示し、該基礎１には免震支
持空間３が凹設されており、該免震支持空間３の底面上
には、上下方向に弾性変位可能な多数の空気ばね４が上
下免震アイソレータとしてバランス良く配置されてい
る。

【００１４】図２及び図３に示す如く、前記空気ばね４
は、下側の受圧プレート５上に立設された内筒６の上面
を、中央部にオリフィス７を開口した中間プレート８に
より閉塞して前記内筒６内に空気室９を形成し、且つ前
記内筒６上部に受圧プレート１０により上面を閉塞され
た外筒１１を遊嵌して該外筒１１内に前記空気室９にオ
リフィス７を介して連通する空気室１２を形成し、更
に、重合された外筒１１と内筒６との隙間１３を気密に
閉塞する為に、前記上側の受圧プレート１０下面に一端
を固着して外筒１１内周面に沿い下方向きに延びる筒状
のゴム膜１４を前記隙間１３内で内筒６外周面に沿うよ
う上向きに折り返して前記ゴム膜１４の他端を前記中間
プレート８上面に固着した構造となっている。

【００１５】更に、前記各空気ばね４上には、前記免震
支持空間３内に収まる中間スラブ１５が載置されてお
り、該中間スラブ１５の上面には、ゴム板と金属板とを
上下方向に交互に積層して構成した多数の積層ゴム１６
が、水平免震アイソレータとしてバランス良く配置され
ており、これらの各積層ゴム１６上には、免震すべき構
造物である建物２が載置されている。

【００１６】また、前記中間スラブ１５の側面と該側面
に対向する免震支持空間３の側面との間には、前記中間
スラブ１５の水平方向の移動を拘束し且つ上下方向の移
動は許容する水平ストッパ１７が設けられている。

【００１７】図４に示す如く、前記水平ストッパ１７
は、ゴム板と金属板とを積層して構成した多数の積層ゴ
ム１８を、その積層方向を水平方向に向け前記免震支持
空間３の側面に台座１９を介して固着すると共に、前記
中間スラブ１５の側面に台座２０を介して水平方向に向
け固着した多数の位置合せ用ピン２１を、前記積層ゴム
１８の前面に浅く凹設したガイド穴２２に抜脱自在に嵌
挿した構造となっている。

【００１８】而して、地震が発生した場合、免震支持空
間３内の中間スラブ１５は、水平ストッパ１７により水
平方向の移動を拘束されているので、水平方向の地震力
によって基礎１と共に横揺れするが、前記中間スラブ１
５と建物２との間に介在されている積層ゴム１６が水平
方向に弾性変位することにより、前記建物２に作用する
水平方向の地震力が大幅に低減される。

【００１９】このとき、水平方向の移動を拘束されてい
る中間スラブ１５は、慣性の作用によって、基礎１の揺
れ方向における一側で水平ストッパ１７に圧縮荷重を与
え且つ他側では引張り荷重を与えることになるが、前記
中間スラブ１５の側面と免震支持空間３の側面とは、水
平ストッパ１７により直接連結されているわけではな
く、積層ゴム１８の前面に浅く凹設したガイド穴２２に
位置合せ用ピン２１を抜脱自在に嵌挿したダウエルピン
構造で実質的に切り離された状態としてある為、前記中
間スラブ１５による圧縮荷重は、積層方向の圧縮に強い
積層ゴム１８により安定性良く受け止められ、また、前
記中間スラブ１５による引張り荷重は、積層方向の引張
りに弱い積層ゴム１８に直接作用することがない。

【００２０】一方、上下方向の地震力によって基礎１が
縦揺れするが、該基礎１と中間スラブ１５との間に介在
されている空気ばね４が上下方向に弾性変位することに
より、前記建物２に作用する上下方向の地震力が大幅に
低減される。

【００２１】このとき、前記空気ばね４は、内筒６に対
し外筒１１が相対的に昇降して両者の重合状態が深くな
ったり浅くなったりすることにより上下方向に拡縮する
が、この拡縮に追従して前記外筒１１内に形成されてい
る上側の空気室９が拡縮され、該空気室９と前記内筒６
内に形成されている下側の空気室１２との間でオリフィ
ス７を介して空気の移動が行われることになり、該空気
がオリフィス７を通過する際の通気抵抗によって、振動
エネルギーの減衰が図られる。

【００２２】また、中間スラブ１５の水平方向の移動を
拘束する水平ストッパ１７は、積層ゴム１８の上下方向
の弾性変位により、前記中間スラブ１５の上下方向の移
動を許容するが、同時に、各積層ゴム１８の復元力の作
用によって、前記中間スラブ１５が免震支持空間３の底
面に対しシーソーの如く往復傾動するロッキング挙動を
抑制するようにも働く。

【００２３】更に、前述した如く、前記中間スラブ１５
が水平ストッパ１７により水平方向の移動を拘束され且
つ上下方向にはロッキング挙動を抑制された状態で移動
を許容されるので、空気ばね４を構成する外筒１１と内
筒６の重合した部分における隙間１３は、その全周をゴ
ム膜１４内に抱持された空気によって確実に保持され、
前記外筒１１と内筒６とが座屈したり、或いは前記隙間
１３内で折り返されたゴム膜１４の内面同士が接触して
大きな摺動抵抗を生じたりする等の不具合が未然に回避
されることになり、空気ばね４の上下方向の正常な拡縮
作動が良好に保持される。

【００２４】尚、大重量の建物２を免震支持する際に、
一個当りの空気ばね４の荷重支持能力として数百トンも
の要求があるとすると、空気ばね４の空気圧は数十Ｋｇ
／ｃｍ²にもなるものと考えられるが、本実施の形態の
如く、重合された外筒１１と内筒６との隙間１３にゴム
膜１４を入り込ませて折り返すようにした場合、この折
り返し位置におけるゴム膜１４の円弧部分に作用する円
周応力σは、ゴム膜１４の肉厚をｔ、内半径をｒ、内圧
をｐとして、

【数１】σ＝ｒｐ／ｔ と表され、ゴム膜１４の肉厚ｔと内圧ｐとが同一条件で
あれば内半径ｒが小さくなるほど円周応力σが小さく抑
えられることになり、本実施の形態の如きゴム膜１４の
配置によれば、前記内半径ｒを極めて小さくすることが
できるので、現状技術の繊維強化ゴム等から成るゴム膜
１４を使用した空気ばね４でも大重量の建物２を免震支
持することが可能となるのである。

【００２５】従って上記実施の形態によれば、中間スラ
ブ１５と建物２との間に水平免震アイソレータとして介
在されている積層ゴム１６，１８が水平方向に弾性変位
することにより、建物２に作用する水平方向の地震力を
大幅に低減することができ、しかも、基礎１と中間スラ
ブ１５との間に上下免震アイソレータとして介在されて
いる空気ばね４が上下方向に弾性変位することにより、
前記建物２に作用する上下方向の地震力も大幅に低減す
ることができる。

【００２６】尚、本発明の三次元免震構造は、上述の実
施の形態にのみ限定されるものではなく、図示されてい
る空気ばね４の天地を逆にして配置するようにしても良
いこと、また、水平ストッパ１７を構成する積層ゴム１
６，１８と位置合せ用ピン２１の配置を、図示する例と
は逆に中間スラブ１５の側面に積層ゴム１６，１８を固
着し且つ免震支持空間３の側面に位置合せ用ピン２１を
固着するようにしても良いこと、その他、本発明の要旨
を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは
勿論である。

【００２７】

【発明の効果】上記した本発明の三次元免震構造によれ
ば、中間スラブと構造物との間に水平免震アイソレータ
として介在されている積層ゴムが水平方向に弾性変位す
ることにより、構造物に作用する水平方向の地震力を大
幅に低減することができ、しかも、基礎と中間スラブと
の間に上下免震アイソレータとして介在されている空気
ばねが上下方向に弾性変位することにより、前記構造物
に作用する上下方向の地震力も大幅に低減することがで
きるという優れた効果を奏し得る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施の形態の一例を示す全体概略図で
ある。

【図２】図１における空気ばねの一例を示す断面図であ
る。

【図３】図２におけるＩＩＩ部の拡大図である。

【図４】図１における水平ストッパの詳細図である。

【図５】従来例を示す全体概略図である。

【符号の説明】

１ 基礎 ２ 建物（構造物） ３ 免震支持空間 ４ 空気ばね（上下免震アイソレータ） ５ 受圧プレート ６ 内筒 ７ オリフィス ８ 中間プレート ９ 空気室 １０ 受圧プレート １１ 外筒 １２ 空気室 １３ 隙間 １４ ゴム膜 １５ 中間スラブ １６ 積層ゴム（水平免震アイソレータ） １７ 水平ストッパ １８ 積層ゴム ２１ 位置合せ用ピン ２２ ガイド穴

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 構造物を支持する為の基礎に免震支持空
   間を凹設し、該免震支持空間の底面上に、上下方向に弾
   性変位可能な上下免震アイソレータを介して前記免震支
   持空間内に収まる中間スラブを支持し、該中間スラブ上
   面に、水平方向に弾性変位可能な水平免震アイソレータ
   を介して構造物を支持し、前記中間スラブの側面と該側
   面に対向する免震支持空間の側面との間に、前記中間ス
   ラブの水平方向の移動を拘束し且つ上下方向の移動は許
   容する水平ストッパを設けた三次元免震構造であって、 前記上下免震アイソレータが、一端側を受圧プレートに
   より閉塞され且つ他端側をオリフィスを有する中間プレ
   ートにより閉塞されて内部に空気室を形成した内筒と、
   一端側を前記内筒に遊嵌し且つ他端側を別の受圧プレー
   トにより閉塞されて内部に前記空気室にオリフィスを介
   し連通する別の空気室を形成した外筒と、重合された外
   筒と内筒との隙間を気密に閉塞し得るよう外筒側空気室
   内で受圧プレートに一端を固着されて前記隙間に入り込
   み且つ該隙間内で折り返されて他端を前記中間プレート
   に固着した筒状ゴム膜とにより構成された空気ばねであ
   り、 前記水平免震アイソレータが、ゴム板と金属板とを積層
   して構成され且つ積層方向を上下方向に向けた積層ゴム
   であり、 前記水平ストッパが、ゴム板と金属板とを積層して構成
   され且つ積層方向を水平方向に向けて前記免震支持空間
   及び中間スラブの何れか一方の側面に固着された積層ゴ
   ムと、該積層ゴムの他端側に浅く凹設されたガイド穴に
   抜脱自在に嵌挿され且つ前記免震支持空間及び中間スラ
   ブの他方の側面に固着された位置合せ用ピンとにより構
   成されていることを特徴とする三次元免震構造。