JPH0963902A - 電解コンデンサ用電解液 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 比抵抗が低く、電解コンデンサの高温特性を
改善でき、高圧で使用できる電解コンデンサ用電解液を
提供すること。 【構成】 多価アルコールに、二重結合及び側鎖に水酸
基を有する高級モノカルボン酸又はその塩のうち一種類
以上を含有することを特徴とする電解コンデンサ用電解
液。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は電解コンデンサ用電解液
に関する。

【０００２】

【従来の技術】アルミ電解コンデンサ等の電解コンデン
サは電解液を含浸剤として用いている。例えば、高圧用
の電解液は、エチレングリコール等の多価アルコールか
らなる溶媒にホウ酸やホウ酸アンモニウムを溶解した組
成になっている。

【０００３】また、近年、アルミ電解コンデンサは、低
インピーダンス化や長寿命化が強く要求されている。そ
のため電解液の溶質として高級二塩基酸を用いることが
検討されている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかし、前者のホウ酸
等を用いた電解液は、比抵抗が高く、しかも高温におい
てエチレングリコールと反応してエステル化を生じ、同
時に発生した多量の水によって電極の陽極酸化皮膜を劣
化させる欠点がある。そのため、この電解液を用いた電
解コンデンサは、漏れ電流が増大し易く、そしてそれに
よってガスが多量に発生し、内圧が上昇し易く、容易に
防爆弁が作動する。

【０００５】また、後者の高級二酸基酸を用いた電解液
は、定格電圧が４００〜４５０Ｖ程度までの電解コンデ
ンサにしか用いることが出来ない欠点がある。

【０００６】本発明の目的は、以上の欠点を改良し、比
抵抗が低く、高温において電解コンデンサの漏れ電流特
性を改良でき、高耐圧の電解コンデンサに用いることの
できる電解コンデンサ用電解液を提供するものである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明は、上記の目的を
達成するために、多価アルコールに、二重結合及び側鎖
に水酸基を有する高級カルボン酸又はその塩のうちの一
種類以上を含有することを特徴とする電解コンデンサ用
電解液を提供するものである。

【０００８】多価アルコールはエチレングリコールやエ
チレングリコール，１，４−ブタンジオール、グリセリ
ン等を用いる。

【０００９】また、二重結合及び側鎖に水酸基を有する
高級モノカルボン酸又はその塩は、１０−オキミ−７−
ドデセン酸や１０−オキシ−５−テトラデセン酸、１２
−オキシ−９−ペンタデセン酸、７−オキシ−１２−ヘ
キサデセン酸、１２−オキシ−９−オクタデセン酸、９
−オキシ−１５−エイコセン酸、１２，１８−ジオキシ
−９−ドコセン酸等及びそれらの塩を用いる。なお、こ
の高級モノカルボン酸又はその塩は、総炭素数が１２〜
２２の範囲が好ましい。すなわち、総炭素数が１１以下
の場合には耐圧を高める効果が低下する。また、総炭素
数が２３以上になると、疎水性の影響が大きくなり、多
価アルコールに溶解し易いという効果が低下する。

【００１０】

【作用】本発明に用いる高級モノカルボン酸又はその塩
は、二重結合を有しているため、分子の回転が規制され
ることで、単結合に比較して、主電解質であるイオンの
移動に対する障害が少なくなる。そのため電解液の比抵
抗があまり大きくならない。

【００１１】また、この高級モノカルボン酸等は、側鎖
に水酸基を有しているため、親水性を示し、エチレング
リコール等の多価アルコール類に溶解し易く、高分子量
でありながら、比抵抗を低下でき、耐圧を高めることが
できる。

【００１２】

【実施例】以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
多価アルコールとして、エチレングリコールやジエチレ
ングリコール、１，４−ブタンジオール、グリセリンを
用い、これを溶媒とする。また、二重結合及び側鎖に水
酸基を有する高級カルボン酸として、１２−オキシ−９
−オクタデセン酸（総炭素数１８）や９−オキシ−１５
−エイコセン酸（総炭素数２０）を用いる。そして高級
カルボン酸塩として、１０−オキシ−５−テトラデセン
酸アンモニウム（総炭素数１４）や７−オキシ−１２−
ヘキサデセン酸アンモニウム（総炭素数１６）、１０−
オキシ−７−ドデセン酸アンモニウム（総炭素数１
２）、１２−オキシ−９−ペンタデセン酸アンモニウム
（総炭素数１２）、１２，１８−ジオキシ−９−ドコセ
ン酸アンモニウム（総炭素数２２）を用いる。そしてこ
れらの物質を溶質として溶解する。さらに、ホウ酸アン
モニウムやマンニット、アンモニア水を溶解する。

【００１３】次に表１に示す組成の実施例及び従来の電
解液について比抵抗及び火花発生電圧を測定した。

【００１４】〔表１〕

【００１５】この表１から明らかな通り、実施例１〜実
施例７は、比抵抗が６７０〜７５０Ω・cm、火花発生電
圧が５１０〜５３０Ｖとなる。また、従来例１及び従来
例３は、比抵抗が７５０〜１５００Ω・cm、火花発生電
圧が４６０〜５１０Ｖとなる。そして従来例２はドデカ
ン二酸アンモニウムが溶媒に溶けず、比抵抗等を測定で
きなかった。すなわち、実施例１〜実施例７の方が従来
例１及び従来例３に比較して、全体的に比抵抗が低く、
火花発生電圧が高くなっている。

【００１６】また、表１に示した組成の各電解液を含浸
した、定格５００Ｖ、８２μＦのアルミ電解コンデンサ
について、初期特性と高温負荷試験後の特性を測定し
た。高温負荷試験は、各試料に定格電圧５００Ｖを印加
し、温度１０５℃の雰囲気中に２０００ｈ放置して行っ
た。試料数は各々２０個とする。測定結果は表２に示し
た。

【００１７】〔表２〕

【００１８】この表２から明らかな通り、初期値は、実
施例１〜実施例７の電解液を用いた電解コンデンサが容
量７０〜７３μｍ、tanδ ０．０５５〜０．０６２、漏
れ電流３９〜４４μＡそして従来例１を用いた電解コン
デンサが容量７５μＦ、tanδ０．０９１、漏れ電流５
３μＡとなる。なお、従来例２の電解液を用いた電解コ
ンデンサは試作できず、従来例３の電解コンデンサはエ
ージング処理の際に全数パンクしたためいずれも特性を
測定できなかった。すなわち、実施例１〜実施例７を用
いた電解コンデンサは、従来例１を用いた電解コンデン
サに比較して、tanδ が約６０．４〜６８．１％そして
漏れ電流が約７３．６〜８３．０％の大きさになる。

【００１９】また、高温負荷試験後、実施例１〜実施例
７は、tanδ 及び漏れ電流とも従来例１の初期特性より
も低い値を示した。なお、従来例１は２０００ｈ放置
後、全数とも防爆弁が作動したため、特性の測定が出来
なくなった。これに対し、実施例１〜実施例７は全数と
も防爆弁が作動しなかった。

【００２０】

【発明の効果】以上の通り、本発明によれば、二重結合
及び側鎖に水酸基を有する高級モノカルボン酸又はその
塩のうち一種類以上を含有しているため、比抵抗が低
く、火花電圧が高いため高圧で使用でき、電解コンデン
サの高温特性を改善できる電解コンデンサ用電解液が得
られる。

【表１】

【表２】

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 多価アルコールに、二重結合及び側鎖に
   水酸基を有する高級モノカルボン酸又はその塩のうち一
   種類以上を含有することを特徴とする電解コンデンサ用
   電解液。