JPH0959826A - ポリエステル多層繊維、ポリエステル布帛およびその製造方法 - Google Patents

ポリエステル多層繊維、ポリエステル布帛およびその製造方法

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JPH0959826A
JPH0959826A JP7206905A JP20690595A JPH0959826A JP H0959826 A JPH0959826 A JP H0959826A JP 7206905 A JP7206905 A JP 7206905A JP 20690595 A JP20690595 A JP 20690595A JP H0959826 A JPH0959826 A JP H0959826A
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JP
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alkali
polyester
filament
fiber
polyesters
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JP7206905A
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English (en)
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Tadashi Koyanagi
小柳  正
Toshifumi Uenosono
利文 上之薗
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Asahi Chemical Industry Co Ltd
Original Assignee
Asahi Chemical Industry Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 アルカリ溶解性を異にする二種のポリエ
ステルからなり、フィラメントの断面が、二種のポリマ
ーの積層の一部が一つの開口部を有する湾曲構造をとっ
ており、その中心点がフィラメントの中心から偏心して
いる多層繊維およびこの繊維を編織し、特定のアルカリ
溶解速度定数比のもとでアルカリ減量処理した、特定の
デニール分布を有するフィラメント群からなる布帛。 【効果】 シルク調のソフト感,ふくらみ感とキシミ感
を有し、しかも、染色の耐光堅牢性に優れているので、
衣料用、特に婦人アウター用に好適。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する分野】本発明は、ポリエステル多層繊
維、ポリエステル繊維布帛およびその製造方法に関す
る。更に詳しくは、減量加工した布帛が、シルク調のソ
フト感、ふくらみ感とキシミ感を有し、しかも、染色の
耐光堅牢性に優れた性質を有する衣料用に適したポリエ
ステル多層繊維、およびこのポリエステル多層繊維を製
編織し、アルカリ減量加工を行ったポリエステル布帛お
よびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、シルク調の衣料用ポリエステル繊
維布帛を得るため、異形断面糸やデニールミックス糸を
用いるなど多くの提案がされている。近年、フィラメン
トにフィブリルを生じさせて(以下ミクロフィブリル繊
維という)、ソフト感とキシミ感を付与し、新しい質感
を与える提案がされている。
【0003】例えば、特開平1−272861号公報、
特開平6−41868号公報や特開平6ー287835
号公報には、アルカリ溶解性の異なる二種のポリエステ
ルを、静止系混練素子を用いて紡糸した繊度、横断面形
状、染色性等がイレギュラーであるマルチフィラメン
ト、さらにはこのマルチフィラメントを布帛とした後、
一方のポリエステルを溶解除去して、フィラメント断面
がイレギュラ−で、かつミクロなフィラメントとするこ
とで、産毛調のソフトな風合いやキシミ感を呈するポリ
エステル布帛を得ることが開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、この繊度、横
断面形状、染色性等がイレギュラーであるマルチフィラ
メントは、これを布帛にしてアルカリ減量すると、その
特有なフィラメント断面形状と、ミクロフィブリルによ
り独特の風合いを示すものの、フィラメントを構成する
アルカリ易溶解性ポリエステルの配合比率が高いため
に、かかる特性を発現させるのに過大な減量、重量減量
率にして約30〜50%もの減量処理を施すことが必要
である。このため、得られる布帛はやせ細り、ふくらみ
感に欠けるものになってしまう欠点があった。
【0005】更に、このフィラメントは、構成するアル
カリ難溶解性ポリエステルとアルカリ易溶解性ポリエス
テルのアルカリ溶解度差が小さいことから、減量処理で
一方のポリエステル成分のみが選択的に溶解除去され
ず、他のポリエステル成分までも溶解される。このた
め、過度にフィブリル化が進み、布帛を構成するフィラ
メントの中でも特に0.2d以下のフィラメントの比率
が過大となる。このように0.2d以下のフィラメント
の比率が増すと、染色製品の耐光堅牢性が劣るという欠
点があった。従って、従来のミクロフィブリル繊維は、
婦人用アウタ−のように耐光堅牢性を要求される分野に
は適用できなかった。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、ポリエス
テル繊維、布帛にシルク調のソフト感とキシミ感に加
え、ふくらみ感を有する風合いと、アウタ−に適用可能
な耐光堅牢性を付与することを目的に鋭意検討を重ねた
結果、特殊な層状断面を有する繊維を布帛とした後、特
定のアルカリ減量処理を施すことで前記問題点が解決で
き、本発明の目的が達成できることを見いだし、本発明
を完成するに至った。
【0007】即ち、本願第一発明は、アルカリ溶解性を
異にする二種のポリエステルからなる多層繊維におい
て、構成フィラメントの断面構造が、二種のポリエステ
ルが5層以上積層し、かつ該積層の少なくとも一部が一
つの開口部を有する湾曲構造をとっており、その中心点
がフィラメントの中心から偏心していることを特徴とす
るポリエステル多層繊維であり、第二発明は、このポリ
エステル多層繊維を製編織し、アルカリ処理して得られ
た布帛であって、異なった断面形状、太さを有するフィ
ラメントから布帛が構成されており、かつフィラメント
の平均デニールが0.3〜0.8dであり、かつ太さ
0.2d以下のフィラメント数の含有率が10〜40%
であることを特徴とするポリエステル布帛であって、第
三発明は、アルカリ溶解性を異にする二種のポリエステ
ルを静止系混練素子を用いて、構成フィラメントの断面
構造が二種のポリエステルが5層以上積層し、かつ該積
層の少なくとも一部が一つの開口部を有する湾曲構造を
とっており、その中心点がフィラメントの中心から偏心
していることを特徴とする多層繊維となし、該多層繊維
を製編織した後、アルカリ溶解定数比が50倍以上異な
るアルカリ濃度、または温度でアルカリ溶解処理するこ
とを特徴とするポリエステル布帛の製造方法、である。
【0008】以下、本発明について詳細に説明する。本
願第一発明は、アルカリ溶解性を異にする二種のポリエ
ステルからなる多層繊維において、構成フィラメントの
断面構造が、二種のポリエステルが5層以上積層し、か
つ該積層の少なくとも一部が一つの開口部を有する湾曲
構造をとっており、その中心点がフィラメントの中心か
ら偏心していることを特徴とするポリエステル多層繊維
である。
【0009】本発明において、ポリエステルとは、ポリ
エチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレー
ト、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルや、
これらのポリエステル成分にイソフタル酸、アジピン
酸、ドデカン二酸、スルホイソフタル酸、シクロヘキサ
ンジメタノールなどの酸成分や、ジエチレングリコー
ル、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールな
どのグリコール成分を共重合させたものなどをいう。
【0010】本発明では、用いる二種のポリエステルの
アルカリに対する溶解性が異なることが必要である。ア
ルカリ溶解性が異なるとは、加水分解に使用するアルカ
リに対する抵抗性に差があることをいう。アルカリ溶解
性は、二種のポリエステルの種類と、アルカリ溶解条件
により決定される。しかし、ポリエステル自身に大きな
溶解速度差を有していなければ、アルカリ溶解条件をい
かに選択しても大きな溶解速度差を生じさせることは困
難である。例えば、このような条件を満たすポリエステ
ルの組合せとしては、アルカリ難溶解性のポリエステル
としてポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレ
フタレートなどの単独のポリエステルが用いられる。も
っとも汎用的には、ポリエチレンテレフタレートが用い
られる。
【0011】他方、アルカリ易溶解性のポリエステルと
しては、これらのポリエステルのアルコール成分として
平均分子量600〜6000のポリエチレングリコール
を共重合したブロックポリエーテルエステルや、酸成分
としてスルホイソフタル酸を2モル%以上共重合したポ
リエステル、あるいは、これらの両成分を組合せた共重
合ポリエステルが好ましい。特に、ポリエチレングリコ
ールを10重量%以上、好ましくは15重量%以上共重
合したブロックポリエーテルエステルはそのアルカリ溶
解速度定数が極めて大きい。従って、単独のポリエステ
ルのアルカリ溶解速度定数との比率を本発明の特定範囲
にすることが容易となることから、アルカリ易溶解性ポ
リエステルとして好適である。
【0012】これらのポリエステルには、本発明の目的
を損なわない範囲で少量のつや消剤、着色剤、難燃剤、
安定剤などを含んでいてもよい。本発明の多層繊維は、
構成フィラメントの断面構造が、二種のポリエステルが
5層以上積層し、かつ該積層の少なくとも一部が一つの
開口部を有する湾曲構造をとっており、その中心点がフ
ィラメントの中心から偏心していることに大きな特徴が
ある。
【0013】かかる多層繊維の一例を図1に示す。図1
から判るように、本発明の多層繊維は構成フィラメント
の断面構造が、二種のポリエステルが5層以上積層し、
かつ該積層の少なくとも一部が一つの開口部を有する湾
曲構造をとっており、その中心点がフィラメントの中心
から偏心していることことにより、多層繊維を製織後、
アルカリ処理した場合に、後述するアルカリ溶解処理後
の布帛がやせ細ることなく、むしろ、かさ高となってふ
くらみ感を発揮する。従来公知の多層繊維は、構成フィ
ラメントの断面構造が、二種ポリエステルの積層が平行
状でしかも繊維断面の中心点に対称である。このため、
アルカリ処理後のフィラメントが偏平で、本発明の目的
とするふくらみ感が得られない。フィラメント断面の積
層形状はフィラメント間で同一である必要はなく、むし
ろ、フィラメントごとに不同であるほうが好ましい。
【0014】本発明の多層繊維は、二種のポリエステル
の積層数が5層以上に積層されていることが必要であ
る。5層以上積層されていることにより、多層繊維を製
編織、アルカリ処理した場合に、アルカリ難溶解性ポリ
エステルは溶解せず、アルカリ易溶解性ポリエステルが
選択的に溶解されることにより、アルカリ難溶解性ポリ
エステルが異なった断面、太さを保ったまま分割され
る。
【0015】ここで、積層数は、アルカリ易溶解性ポリ
エステルで区切られる難溶解性ポリエステルの層の数を
指す。積層数が5層未満では、アルカリ処理した場合の
一方の成分を溶解して得られるフィラメントのデニール
が大きく、本発明の目的とするソフト感を得ることがで
きない。好ましい積層数は、10層以上である。本発明
では、アルカリ難溶解性ポリエステルとアルカリ易溶解
性ポリエステルの配合比率は90/10〜60/40重
量比が好ましい。アルカリ易溶解性ポリエステルの比率
が10重量%より少ないと、アルカリ溶解後の布帛のフ
ィブリル化が不十分となり、本発明の目的とするソフト
感が得られない。アルカリ易溶解性ポリエステルの比率
が40重量%を越えると、フィブリルが過大となり布帛
のふくらみ感がなく、また、耐光堅牢性が劣るものとな
る。好ましい配合比率は、90/10〜70/30重量
比である。
【0016】本発明の多層繊維の断面形態は、丸断面で
も三角断面やその他の異形断面であってもよい。本願第
二発明は、上記ポリエステル多層繊維を製編織した後、
アルカリ処理して得られた布帛であって、異なった断面
形状、太さを有するフィラメントから布帛が構成されて
おり、かつフィラメントの平均デニールが0.3〜0.
8dであり、かつ太さ0.2d以下のフィラメント数の
含有率が10〜40%であることを特徴とするポリエス
テル布帛である。
【0017】本発明ポリエステル布帛は、本願第一発明
の多層繊維を製編織した後、特定のアルカリ処理条件で
アルカリ易溶解性ポリエステルを溶解除去することによ
り得られる布帛である。本発明ポリエステル布帛を構成
するフィラメント群は、異なった断面形状、太さを有す
る。図2に本発明ポリエステル布帛を構成するフィラメ
ント群の断面を例示する。一般に、フィラメント群の断
面形状は布帛の編織の密度などの構成によって見掛け上
の形態が異なる。このような断面形状、太さが異なって
いることで、繊維全体としての摩擦係数が高くなり、本
発明布帛の特徴であるシルク調のキシミ感が発現する。
【0018】本発明ポリエステル布帛は、かかるデニー
ルミックスでありながら、フィラメント群の平均デニー
ルが0.3〜0.8dでかつ、太さ0.2d以下のフィ
ラメント数の含有率が10〜40%であることが必要で
ある。フィラメント群のデニール構成は、後述するよう
にその断面を画像解析することにより容易に求めること
ができる。
【0019】平均デニールが0.3d未満では、布帛は
ソフトになるものの、嵩高性が不足し、シルク調になら
ない。一方、0.8dを越えると、シルク特有のソフト
感が得られない。好ましい平均デニールは、0.4〜
0.8dである。本発明ポリエステル布帛は、かかる平
均デニールに加えて、0.2デニール以下のフィラメン
ト数の含有率が10〜40%であることが必要である。
一般に、0.2d以下のフィラメントを含むことで、産
毛調のソフトな風合いを呈するが、このような超極細の
フィラメント群の含有比率が多くなると、染色後の耐光
堅牢性が低下することが、本発明の検討によって初めて
明らかになった。即ち、0.2d以下のフィラメント含
有率がフィラメント群の中で10%未満では、本発明の
目的とする産毛調のソフトな風合いが得られない。一
方、40%を越えると、耐光堅牢性が低下しアウター用
途には適用できない。
【0020】以下、本発明の製造方法について説明す
る。本発明は、アルカリ溶解性を異にする二種のポリエ
ステルを、公知の複合紡糸方法により紡糸される。紡糸
にあたっては、二種のポリエステルを紡口内に設けた静
止系混練素子を通過せしめて混練される。最も好ましい
紡糸装置の概略図を図3に示す。静止系混練素子は4〜
8個のエレメントを用いる。好ましい静止系混練素子数
は、二種のポリエステルの配合比率が90/10と少な
い場合は6〜8個、60/40と多い場合は4〜6個で
ある。図3に基づき、本発明の多層繊維の製造方法につ
いて説明する。アルカリ溶解性を異にする二種のポリマ
ーはA,Bより、各々ろ過部を通過した後、静止系混練
素子1にて混練される。この静止系混練素子1によっ
て、A,B両ポリマーは5層以上に積層される。静止系
混練素子1で多層に積層された後、狭あいな水平流路2
を通ってキャピラリー3に入り、紡糸孔4より流出され
フィラメント群として吐出成型される。
【0021】紡口内で積層流が狭あいな水平流路2から
ほぼ直角に変角されるキャピラリー3に入ることによっ
て、本発明の多層繊維の特徴である、構成フィラメント
の断面構造が、二種のポリエステルが5層以上積層し、
かつ該積層の少なくとも一部が一つの開口部を有する湾
曲構造をとっており、その中心点がフィラメントの中心
から偏心している構造が形成される。この狭あいな水平
流路2では、積層流がせん断力を受ける。せん断速度は
約30(sec-1)以上、好ましくは100(se
-1)以上が採用される。静止混練素子1からキャピラ
リー3までの距離が紡糸孔ごとに異なることで、フィラ
メントごとに受けるせん断力が異なり、フィラメントご
との積層形状が異なったものとなる。
【0022】紡糸に用いる静止系混練素子は、例えばケ
ニックス社製「スタティックミキサー」、東レエンジニ
アリング社製「ミキシングユニット」、スルーザー社製
ミキシングエレメントなど公知のものが用いられる。汎
用的には、ケニックス社の「スタティックミキサー」が
使用される。多層繊維の形状は、紡糸孔の形状により丸
断面,三角断面,偏平,中空などの任意の形状を選択す
ることができる。紡糸孔より吐出成型されたフィラメン
ト群は、合糸後、卷取りを行い延伸される。卷取りと延
伸は別工程で行っても良く、また連続しても良い。ま
た、高速紡糸のよに延伸工程を省略することも可能であ
る。
【0023】本願第三発明は、上記多層繊維を製編織し
た後、アルカリ溶解定数比が50倍以上異なるアルカリ
濃度、または温度でアルカリ溶解処理することを特徴と
するポリエステル布帛の製造方法、である。ポリエステ
ル繊維のアルカリ溶解速度定数kの算出については、橋
本(繊維学会誌、14、510,1958年)によって
示されている。即ち、アルカリ処理に呈するポリエステ
ルフィラメントの処理前の繊維半径をr0(cm)、こ
のフィラメントが完全に溶解消失するまでの処理時間を
t(秒)とすると、k=r0/t(cm/秒)で示され
る。
【0024】アルカリ溶解速度定数kは、アルカリ処理
の条件すなわち、アルカリの種類,濃度,温度によって
異なった値となる。例えば、衣料用に供される通常のポ
リエステル繊維を、水酸化ナトリウムの5%水溶液で9
5℃でアルカリ処理した場合のkは、約2×10-8(c
m/秒)程度である。本発明でいうアルカリ溶解速度定
数比とは、アルカリ難溶解性ポリエステルの溶解速度定
数をk1,アルカリ易溶解性ポリエステルの溶解速度定
数をk2とした場合、k2/k1のことを示す。
【0025】本発明の製造方法では、このアルカリ溶解
速度定数比が50倍以上となる処理条件で溶解処理する
ことが必要である。かかる条件下でアルカリ溶解処理す
ることにより、難溶解性ポリエステル成分が実質的にほ
とんど溶解されることなく、易溶解性ポリエステル成分
のみを選択的に溶解することが可能である。その結果、
多層繊維のフィブリル化が十分に行われ、本発明の目的
が達成される。
【0026】アルカリ溶解速度定数比が50倍未満で溶
解処理した場合は、難溶解性のポリエステル成分と易溶
解性ポリエステル成分の溶解速度差が小さいために、両
者がアルカリ溶解され、多層繊維のフィブリル化が十分
に起こらず、本発明の目的が達成されない。より好まし
いアルカリ溶解速度定数比は、100倍以上である。ア
ルカリ溶解速度定数比を50倍以上となす具体的な方法
には、アルカリ濃度を低くするか、処理温度を低温で実
施するのが好ましい。例えば、アルカリとして水酸化ナ
トリウムを用いる場合は、水溶液の濃度を2重量%以
下、好ましくは1重量%以下とする。または、アルカリ
水溶液の濃度を2重量%以上とし、処理温度約80℃以
下を採用する。
【0027】更に好ましい処理は、炭酸ナトリウム,ケ
イ酸ナトリウムなどの解離定数の小さいアルカリを使用
して、PH12以下で行うことが望ましい。このような
条件下では、通常のポリエチレンテレフタレートは実質
的にほとんど溶解しないので、アルカリ溶解速度定数k
1が極めて小さく、従って溶解速度定数比を本発明の範
囲とすることが容易に可能となる。殊に、炭酸ナトリウ
ムを用いPH約11付近で行うのが好ましい。この場合
には、処理温度として100〜130℃が採用される。
【0028】最も好ましい処理は、PH10〜12のア
ルカリ性条件下に行う。この場合には、染色と同時にア
ルカリ溶解処理を同浴で同時に行うことも可能である。
このような染色と同時にアルカリ溶解処理が可能なの
も、本発明の大きな特徴である。以下、実施例をもって
本発明を更に詳細に説明する。なお、本実施例におい
て、各測定は以下の方法によった。 (アルカリ減量率)アルカリ減量処理前の試料の重量を
1 ,減量処理後の試料の重量をW2 とし、次式により
アルカリ減量率を算出した。 アルカリ減量率(%)=(W1 −W2 )/W1 ×100
【0029】(デニール分布)アルカリ減量処理後の布
帛からフィラメント束を取り出し、常法により断面の顕
微鏡写真を撮影した。この顕微鏡写真をマッキントッシ
ュコンピュ−タ 画像処理ソフト「NIHImage」
によって画像処理し、デニール分布、平均デニールを算
出した。 (風合い)平織物の風合いをベテランの技術者3人で評
価した。シルク調のソフト感、かさ高性とキシミ感を評
価し、極めて優れているものを◎、優れているものを
○、従来のポリエステルと差が認められないものを×と
した。 (耐光堅牢度)JIS−L−0842に準じて染色後、
耐光堅牢度試験を行った。本試験で、堅牢度を1級から
5級にランク付けした。堅牢度が3級以上を合格とし
た。
【0030】
【発明の実施の形態】
【0031】
【実施例1】アルカリ難溶解性ポリエステルとして、固
有粘度0.65(オルソクロロフェノール中、1重量%
で測定)のポリエチレンテレフタレ−トを、アルカリ易
溶解性ポリエステルとして、分子量6000のポリエチ
レングリコールを25重量%共重合した固有粘度0.9
0のブロックポリエ−テルエステルを使用した。これら
のポリエステルの単独繊維をNaOH2重量%の水溶液
で90℃で溶解処理して求めた溶解速度定数は、各々
1.4×10-9(cm/秒)、4.8×10-6(cm/
秒)であった。従って、この条件でのアルカリ溶解速度
定数比は約3000倍であった。
【0032】各々のポリエステルを2軸の複合紡糸機を
用いて計量ポンプで計量し、重量比率で80対20の比
率で図3に示す紡口を用いて紡糸した。紡口内には、ケ
ニックス社製の静止混練素子を8エレメント配置し両成
分を混合した。静止混練素子を通過後の水平流路2での
せん断速度は40(sec-1)であった。 紡糸温度2
85℃で、孔数24ホールを有する紡口より押出し、1
250m/分で未延伸糸を卷取った。この未延伸糸を
3.1倍に延伸し、50d/24fの延伸糸を得た。得
られた繊維の断面形状の透過電子顕微鏡写真から測定さ
れる層数は38であった。この繊維を用いて、経緯糸と
もに250回/mのよりをかけた後、経117本/イン
チ、緯96本/インチの平織物を得た。アルカリ減量処
理は、水酸化ナトリウム2重量%の水溶液で90℃,3
0分間処理を行った。
【0033】染色条件は以下によった。 染料種類: カヤロン ポリエステルブルー3R−SF(日本化薬製) 染料濃度: 6%o.w.f 分散剤 : ニッカサンソルト7000 0.5g/L 酢酸ナトリウム: 1g/L 酢酸 : 0.25g/L 浴比 : 1:50 染色温度/時間:130℃,60分間 得られた布帛は、アルカリ減量率22%で、良好な染色
性を示していた。
【0034】布帛からフィラメント群を取出して撮影し
た顕微鏡写真を画像処理してフィラメント群のデニール
分布を測定した。布帛を構成するフィラメントの平均デ
ニールは、0.3d、0.2d以下のフィラメントの含
有率は37%であった。また、布帛は、シルク調のソフ
ト感とふくらみ感の風合いに加え、キシミ感を有してい
た。耐光堅牢度も3級で良好であった。
【0035】
【実施例2〜5】実施例1と同様の二種のポリエステル
を用い、両者の配合比率と静止混練素子の数を表1に示
すように組合わせて、実施例1と同様に50d/24f
の多層繊維の織物を得た。これらの織物を実施例1と同
様の条件でアルカリ減量処理して得られた織物の特徴を
表1に示す。
【0036】
【実施例6】本実施例ではアルカリ減量処理と染色を同
時に実施する例を示す。実施例1で得た織物を常法によ
り精練した後、以下のアルカリ条件下で染色と同時にア
ルカリ減量加工を行った。これらの二種のポリエステル
の単独繊維をNa2CO3 4g/Lの水溶液(PH=1
1.3)、130℃で溶解処理して求めた溶解速度定数
は、ポリエチレンテレフタレートについては実質的に溶
解せず、ブロックポリエーテルエステルは2.4×10
-7(cm/秒)であり、このときのアルカリ溶解速度定
数比は実質的に無限であった。染色条件は以下によっ
た。 染料種類:カヤロンポリエステルブルー BR−SF 染料濃度:3%o.w.f Na2 CO3 : 4g/L Na2 SO4 :50g/L 浴比 : 1:100 染色温度/時間:130℃,90分間 染色液の染色前のPHは11.0、染色後のPHは1
0.3であった。
【0037】得られた布帛の減量率は20%で、アルカ
リ減量率はほぼ易溶解性ポリエステルの含有率に等し
く、易溶解性ポリエステルが選択的に除去されたことを
裏付けている。また、いずれも良好な発色性を有してい
た。平均デニール0.3d、0.2d以下の含有率は3
8%でシルク調のソフトな感とキシミ感、ふくらみ感に
優れた風合いを有し、耐光堅牢性も3級であった。な
お、これとは別に経緯とも通常のポリエルテルからなる
織物を上記染色条件で染色したもののアルカリ減量率は
1.2%でほとんど減量されていなかった。
【0038】
【比較例1〜3】実施例1と同様にして、ポリエチレン
テレフタレ−ト(A)とブロックポリエ−テルエステル
(B)の配合組成と、静止混練素子の数を表2のように
組合せて、織物の評価を行った。結果を表2に示す。こ
の表からも明らかなよに、比較例1、2はフィブリル化
が不足し、本発明の目的が達成されなかった。また、比
較例3はフィブリルが過度になって、風合いにふくらみ
感がなく、しかも耐光堅牢性が不良であった。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
【発明の効果】本発明のポリエステル多層繊維,布帛に
より、従来得られなかったシルク調のソフト感、ふくら
み感とキシミ感を有し、しかも、染色後の耐光堅牢性に
優れたポリエステル繊維,布はくを得ることが可能とな
った。また、本発明の製造方法により、アルカリ溶解処
理を効率的に行うことが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のポリエステル多層繊維の繊維断面にお
ける積層状態を示す模式図。
【図2】本発明の布帛の断面形状を示す模式図である。
【図3】本発明のポリエステル多層繊維を製造するのに
好ましい紡糸装置の概略図。
【符号の説明】
1・・静止系混練素子 2・・水平流路 3・・キャピラリー 4・・紡糸孔 A,B・・二種のポリマー入口
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 D01F 6/92 307 D01F 6/92 307A 307P D03D 15/00 D03D 15/00 A B H D06M 11/38 D06M 5/02 E

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルカリ溶解性を異にする二種のポリエ
    ステルからなる多層繊維において、構成フィラメントの
    断面構造が、二種のポリエステルが5層以上積層し、か
    つ該積層の少なくとも一部が一つの開口部を有する湾曲
    構造をとっており、その中心点がフィラメントの中心か
    ら偏心していることを特徴とするポリエステル多層繊
    維。
  2. 【請求項2】 請求項1記載のポリエステル多層繊維を
    製編織し、アルカリ処理して得られた布帛であって、異
    なった断面形状、太さを有するフィラメントから布帛が
    構成されており、かつフィラメントの平均デニールが
    0.3〜0.8dであり、かつ太さ0.2d以下のフィ
    ラメント数の含有率が10〜40%であることを特徴と
    するポリエステル布帛。
  3. 【請求項3】 アルカリ溶解性を異にする二種のポリエ
    ステルを静止系混練素子を用いて、構成フィラメントの
    断面構造が二種のポリエステルが5層以上積層し、かつ
    該積層の少なくとも一部が一つの開口部を有する湾曲構
    造をとっており、その中心点がフィラメントの中心から
    偏心していることを特徴とする多層繊維となし、該多層
    繊維を製編織した後、アルカリ溶解定数比が50倍以上
    異なるアルカリ濃度、または温度でアルカリ溶解処理す
    ることを特徴とするポリエステル布帛の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項3記載のアルカリ溶解処理を染色
    時に行うことを特徴とするポリエステル布帛の製造方
    法。
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