JPH0959788A - 外観に優れた電気亜鉛めっき鋼板の製造方法 - Google Patents
外観に優れた電気亜鉛めっき鋼板の製造方法Info
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Abstract
優れた外観を有する電気亜鉛めっき鋼板を効率よく製造
することのできる方法を提供する。 【解決手段】 酸性水溶液中にてカチオンを形成する窒
素含有有機化合物を50〜3000ppm含有する酸洗
浴中で被処理鋼板を酸洗処理した後、電気亜鉛めっき処
理を施すことによって電気亜鉛めっき鋼板を製造する方
法である。
Description
が均一でめっきむらのない優れた外観を有する電気亜鉛
めっき鋼板の製造方法に関する。
鉛めっき皮膜が犠牲防食作用を有する結果、優れた耐食
性を発揮するものであるから、自動車や家庭用電気製品
等の外板材あるいは建築材料等として広く使用されてい
る。この様な亜鉛めっき鋼板を製造するために汎用され
ている方法は、溶融亜鉛めっき浴中に鋼板を浸漬走行さ
せることによって鋼板表面に亜鉛めっき皮膜を形成する
溶融亜鉛めっき法、および亜鉛イオンを含む酸性溶液中
に鋼板を浸漬し、電気化学反応によって鋼板表面に亜鉛
めっき皮膜を析出させる電気亜鉛めっき法である。
性の高い外観が得られるという理由で繁用されている。
ところが、亜鉛めっき鋼板にクロメート処理や透明樹脂
コーティング等の化成処理を施して耐食性、耐指紋性、
潤滑性等を高めた特殊化成処理亜鉛めっき鋼板を裸(未
塗装)のままで使用する風潮が高くなり、この様な裸用
途への適用分野が拡大してくるにつれて亜鉛めっき鋼板
の表面品質に対する需要者の要求は益々厳しくなり、最
近では、従来の電気亜鉛めっき鋼板でも需要者の要求を
満足できなくなっているのが実情である。
大の難点は、電気亜鉛めっき表面に色調や光沢の異なる
部分が不規則に存在し、表面外観を損なっている点であ
る。この原因は、電気めっき条件によって亜鉛めっき層
の結晶の規則性や結晶サイズ等が部分的に異なるものと
なり、それに伴ってめっき表面で反射される光線量に変
化が生じて色調や光沢にむらが生じるためと考えられて
いる。
善するための手段として、めっき浴中に光沢剤を添加す
る方法が周知である。このうち酸性亜鉛系めっき浴中に
添加される光沢剤としては、チオ尿素、芳香族アルデヒ
ド、クマロン、アミン、イミノ化合物、デキストリン、
グルコン酸等の低分子化合物が知られている。その他に
めっき浴中に添加される光沢剤の例として、特公昭46
−38888号公報にはポリアクリルアミド、特開昭6
1−127887号公報には、ポリアクリルアミドを主
成分としカチオン性モノマーを共重合させたポリアクリ
ルアミドが開示されている。
晶の全体が微細化かつ平滑化されるため、金属光沢のあ
る美麗な外観が得られる。ところが、これら光沢剤の作
用は非常に大きいため、光沢剤の添加前後でめっき外観
が激変する。即ち、めっき浴中に添加される光沢剤の量
が若干変化するだけで光沢度が著しく変化してしまうの
である。従って、連続操業時において長時間めっき浴を
電解し続けると、めっき開始時には光沢剤の含有量を適
性範囲に制御しておいたとしても、時間が経つにつれ、
その含有量が変化してしまい、適正な含有範囲を長時間
維持し続けることが非常に困難となる。
が得られると共に、添加による色調変化も少ない添加剤
について種々検討を重ねた結果、めっき浴中にポリオキ
シエチレンポリオキシプロピレングリコールを添加すれ
ば上記目的が達成されることを見出し、既に報告してい
る。
善する方法として、被めっき材の表面結晶粒度をフェラ
イト結晶粒の直径:10μm以上35μm以下に制御す
る方法が開示されている(特開昭61−166992号
公報)。この方法は、亜鉛系めっき結晶が、被めっき材
の表面結晶粒に沿ってエピタキシャルに成長するという
現象を利用するものであり、被めっき材の表面結晶粒径
を小さくすることによって亜鉛系めっき結晶を微細化か
つ平滑化する方法である。しかしながら、被めっき材の
結晶粒度をすべての用途に対して特定範囲に制御するこ
とは困難であり、部分的に結晶粒度が異なる被めっき材
の場合には、結果的に、色調の異なる電気亜鉛系めっき
鋼板が生成するという問題がある。
情に着目してなされたものであって、その目的は、めっ
き表面の色調が均一で優れた外観を有する電気亜鉛めっ
き鋼板を効率よく製造することのできる方法を提供する
ことにある。
のできた本発明に係る電気亜鉛めっき鋼板の製法とは、
酸性溶液中にてカチオンを形成する窒素含有有機化合物
(以下、含窒素化合物と略記する場合がある)を50〜
3000ppm含む酸洗浴中で被処理鋼板を酸洗処理し
た後、電気亜鉛めっきを施すことに要旨を有するもので
ある。
二級アミン、第三級アミン、第四級アンモニウム塩およ
び複素環式化合物よりなる群から選択される少なくとも
1種を用いる方法は本発明の好ましい実施態様である。
これらの中では多環系構造を有する複素環式化合物の使
用が推奨され、より好ましくは多環系化合物の各環に少
なくとも1個の窒素原子を有する化合物(特にヘキサメ
チレンテトラミン)である。
板の外観が部分的に色調・光沢変化(ムラ)を生じる原
因について鋭意検討を重ねた結果、亜鉛めっき結晶の成
長方向あるいは結晶粒のサイズが部分的に変化すると、
これがめっき表面の微細な凹凸の変化となってムラが生
じること、そしてこの亜鉛めっき結晶は素地鋼板の表面
状態の影響を強く受け、素地鋼板表面にNi,Si,
C,Al等の不純物元素が濃化したり、酸化物層の厚さ
が異なる部分が存在すると、その部分では亜鉛の析出過
電圧が異なるために亜鉛めっき結晶形態が変化し、それ
が色調差となって現れることを見出している。
外観を損なう主な原因になっていることから、素地鋼板
表面を何等かの方法によって均一な状態に仕上げること
ができれば、優れためっき外観を得ることが可能にな
る。
表面を均一にする方法について鋭意研究を重ねた結果、
酸性溶液中でカチオンを形成する窒素含有有機化合物を
含む酸洗浴中で被処理鋼板を酸洗処理することにより、
上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した
のである。
含窒素化合物を添加する点に最大の特徴を有する。含窒
素化合物を酸洗溶液中に添加すると、窒素原子に水素、
アルキル基、フェニル基等が結合して4価のカチオンが
形成されるので、後記する素地鋼板表面の均一化作用を
有効に発揮することができる。本発明に用いられる上記
含窒素化合物としては、第一級アミン、第二級アミン、
第三級アミン、第四級アンモニウム塩および複素環式化
合物が好ましい。
(Rは炭化水素残基)で表される含窒素化合物であり、
具体的にはCn H2n+1−NH2 で表される脂肪族第一級
アミン(即ち、Rはアルキル基またはその置換体であ
る)または芳香族アミン[Rの全部または一部が芳香族
炭化水素残基(フェニル基またはその置換体等)]が挙
げられる。
いのは、n=2〜12のエチルアミン〜ドデシルアミン
等であり、芳香族アミンとして好ましいのはアニリン、
o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、ベ
ンジルアニリン、α−ナフチルアミン、β−ナフチルア
ミン等である。
(R及びR’は炭化水素残基)で表される含窒素化合物
であり、脂肪族第二級アミンとして好ましいのはジメチ
ルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソ
プロピルアミン等であり、芳香族アミンとして好ましい
のは、メチルアニリン、エチルアニリン、ジベンジルア
ニリン、ジフェニルアミン等である。
N(R,R’及びR''は炭化水素残基)で表される含窒
素化合物であり、そのうち脂肪族第三級アミンとして好
ましいのは、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ト
リプロピルアミン、トリブチルアミン、トリアミルアミ
ン等が挙げられ、芳香族アミンとして好ましいのはジメ
チルアニリン、ジエチルアニリン、トリベンジルアミ
ン、トリフェニルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジ
エチルベンジルアミン、及びオキシメチレンやオキシエ
チレン等のオキシアルキレン基が好ましくは2〜10個
結合したポリオキシアルキレンを含有するトリ(ポリオ
キシエチレン)アミン等である。
環のピロール、チアゾール等;六員環のピリジン等の様
に窒素原子を1個含有するもの;イミダゾール、ピリミ
ジン、チミン等の様に窒素原子を2個含有するもの;ト
リアゾール等の様に窒素原子を3個含有するもの;これ
らの複素環がベンゼン環と縮合したインドール、キノリ
ン、メルカプトベンズイミダゾール、メルカプトベンゾ
オキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール
等;複素環同士が縮合したプリン、プテリジン等;アザ
ビシクロヘプタン、ヘキサメチレンテトラミン等の多環
系化合物;またはそれらの誘導体が挙げられる。
を有する化合物が好ましく、より好ましくは各環に少な
くとも1個以上の窒素原子を含む化合物であり、最も好
ましくはヘキサメチレンテトラミン(1,3,5,7-テトラア
ザトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン)である。ヘキサメ
チレンテトラミンは、後記する素地鋼板表面性状の均一
化作用に優れており、幅広い添加量範囲内において、安
定して優れためっき表面色調の均一化作用を有するもの
である。
アルキル等を反応させることによって得られる第四級ア
ンモニウム塩[例えば塩化ステアリルトリメチルアンモ
ニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化
ラウリルトリメチルアンモニウム等のハロゲン化アルキ
ルトリメチルアンモニウム;塩化ラウリルジメチルベン
ジルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルア
ンモニウム等のハロゲン化アルキルジメチルベンジルア
ンモニウム;塩化トリペンタオキシエチレンステアリル
アンモニウム、塩化トリペンタオキシエチレンラウリル
アンモニウム等のハロゲン化アルキルトリ(ポリオキシ
エチレン)アンモニウム等]や、上記複素環式化合物に
ハロゲン化アルキル等を反応させることによって得られ
る四級化された化合物(例えば、塩化ピリジニウム等の
ハロゲン化ピリジニウム、塩化ブチルピコリニウムクロ
リド等のハロゲン化アルキルメチルピリジニウム等)等
も用いられる。その他、例えば脂肪酸より合成した第四
級アンモニウム塩(例えばカチオン性界面活性剤、両性
界面活性剤等)も用いられる。このうちカチオン性界面
活性剤としては、ドデシルトリメチルアンモニウムクロ
リド、ヒドロキシエチルセルロース−2−ヒドロキシプ
ロピルトリメチルアンモニウムクロリドエーテル等が挙
げられ、両性界面活性剤としては、N−アルキル−N,
N−ジメチルアンモニウムベタイン、2アルキル−N−
カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニ
ウムベタイン等が挙げられる。
めっき鋼板の光沢度を増す為に、従来より光沢添加剤と
してめっき浴中に添加されていたものもあるが、本発明
では、これら化合物をめっき浴中に添加せずに電気めっ
きラインにおける酸洗処理工程に使用する点で、その使
用形態が全く異なるものである。従来の如く、めっき浴
中に上記含窒素化合物を添加した場合には、該含窒素化
合物は亜鉛めっきの成長点に常に作用し、且つめっき層
中に共析されることから、めっき層全体の亜鉛結晶形
態、或いは光沢度、硬度等の物理的性質を大きく変化さ
せる。この様にめっき浴中への添加は、めっき層全体に
作用することから添加量の僅かな変化に対して、めっき
特性が大きく変化するという問題がある。特にめっき層
中への共析による悪影響として、光沢度の大幅な変化に
よるめっき外観の激変が挙げられる。上述した様に、本
発明の目的は、めっき表面に存在する部分的な色調むら
を無くしてめっき外観を均一にする点にあるが、たとえ
色調むらを無くすことができたとしても、従来の製品外
観とは大幅に異なる外観色調になると、製品の価値その
ものが存在しなくなり、この様な事態は本発明の目的と
するところでは決してない。更に、めっき層中への共析
により亜鉛結晶に強い歪みが生じるため、素地鋼板との
密着性が劣化し、軽度の加工等によりめっき剥離が容易
に生じるという問題もある。従って、適正なめっき特性
を維持するためには、非常に厳格な制御が必要であり、
必然的にその添加量範囲はごく限られた狭い範囲になら
ざるを得ず、製造効率の点で大きな問題がある。更にめ
っき浴中への添加は、前記の如く主に亜鉛めっき層自身
に作用するため、低添加量領域では、本発明の本来の目
的である素地鋼板表面の均一化によるめっき外観不良低
減効果を十分に得ることができない。逆に高添加量領域
では、めっき外観不良改善効果を期待できるものの、前
述した各種めっき特性の劣化および添加量に対する大幅
な変化が問題となる。
物をめっき浴中に添加せずに酸洗浴中に添加しているの
で、めっき前の素地鋼板表面に対してのみ作用する。従
って、亜鉛めっきの初期成長点のみに作用し、後の電析
過程において直接作用することはなく、また、めっき層
中に共析されることも全くない。即ち、前述した光沢
度、硬度などのめっき特性には何等影響を及ぼすことな
く、めっき外観のみを均一にすることが可能である。更
に、後述する作用により素地鋼板表面が均一化されてい
ることから、低添加量領域から高添加量領域まで非常に
広い添加量範囲において、常に安定しためっき外観改善
効果を如何なく発揮することができるものである。この
ことは、後記する実施例において両者を比較検討した結
果からも実証される。
に含窒素化合物を添加する方法は、従来の如く、光沢度
上昇の目的で、めっき浴中に含窒素化合物を添加する方
法とは、その目的および作用が全く異なるものであり、
技術的にも全く新規な知見である。
の素地鋼板表面のpH調整作用(めっき液が酸性のため
表面を酸性にする)および該素地鋼板表面の極薄酸化層
の除去にある。しかしながら、前述した様にめっき前の
素地鋼板表面に不均一な不純物元素の濃化層が存在する
と、その不均一さの程度に対応して、亜鉛めっき結晶の
形態が変化し、外観不良となって顕著に表れる。本発明
の如く、電気亜鉛めっき処理前の酸洗処理液中に含窒素
化合物を添加すると、表面に不均一さを有する素地鋼板
に、上記含窒素化合物が物理的吸着或は化学的吸着(後
述する)を起こして素地鋼板表面を均一な状態にするの
で、めっき表面の色調が均一な外観が得られるのであ
る。
表面が均一化され、優れためっき外観が得られる機構に
ついては、詳細には不明であるが、例えば以下の様な物
理的吸着現象や化学的吸着現象が考えられる。
一例として素地鋼板表面に、素地鋼板(Fe)より貴な
金属が不均一に濃化している場合を考える。勿論、この
素地鋼板表面には、ポーラスな鉄酸化物層が一面に存在
しているものと考えられる。めっき前の酸洗溶液中に、
本発明で用いられる含窒素化合物が存在しない場合、貴
な金属が濃化している部位では、Feとの電位差から局
部電池を形成するため、貴な金属が濃化していない部位
と比較するとFeの溶解が促進される[局部アノード反
応である下式(1)参照]。従って、局部カソード反応
である酸化皮膜の還元反応が一層促進されることになる
[下式(2)参照]。 局部アノード反応:Fe=Fe2++2e …(1) 局部カソード反応:Fe3 O4 +8H+ +2e=3Fe2++4H2 O …(2)
と非濃化部において、素地鋼板表面に形成される酸化物
皮膜の膜厚に格段の差異が生じる。そして、その後連続
して行われる電気亜鉛めっき処理によって、両部位にお
ける亜鉛析出過電圧は有意な差となって現れ、めっき結
晶の形態に差が生じ、最終的にめっき外観不良として認
識されるのである。
上記含窒素化合物を添加した場合を考える。この様な溶
液中においても上記(1)式および(2)式で示される
局部電池反応が起こる。ところが含窒素化合物は酸性溶
液中にてカチオン性基を形成するので、式(2)の如き
反応が生じる局部カソード部に静電気的に移動し吸着す
る結果(物理的吸着)、カソード表面への水素イオンの
供給が阻害され、酸化皮膜の還元反応が抑制される。こ
の様な反応は素地鋼板表面において生じるが、貴金属濃
化部位で一層顕著に発生し、酸洗終了時点では、貴金属
濃化部と非金属濃化部における素地鋼板表面の酸化皮膜
状況の差異は殆どなくなる様になる。従って、酸洗処理
後に行われる電気亜鉛めっき時には、貴金属濃化部と非
濃化部における亜鉛析出過電圧は同程度となり、亜鉛結
晶が均一に形成される結果、優れた外観を有する電気亜
鉛めっき鋼板を得ることが可能になるのである。
発明に用いられる含窒素化合物は、窒素を含有するため
不対電子対(非共有電子対)を有している。この不対電
子対は活性であるため、素地鋼板表面のアノード点にお
いて鉄の空のd軌道と結合し、該含窒素化合物自身が強
く素地鋼板表面に結合される(化学的吸着)。この様な
現象は、素地鋼板表面に無数に存在する局部アノード点
において生じるため、均一な含窒素化合物層を形成する
ことになる。従って、たとえ素地鋼板表面に不均一さ
(不均一な不純物濃化層、不均一な酸化物層等)があっ
たとしても、その上層に均一な含窒素化合物層が存在す
るため、これが亜鉛析出の核となり、不純物層に影響さ
れることなく均一なめっき結晶が形成される。
基本的に素地鋼板表面の一原子層のみについて生じるこ
とから、吸着量は酸洗浴中への添加量によらずほぼ一定
の値となる。即ち、本発明では酸洗浴中に上記含窒素化
合物を添加しているので、その添加量に依らず常に安定
しためっき外観均一化効果を発揮できるという、従来の
めっき浴中への含窒素化合物添加法には見られなかった
非常に優れた特性を有する。
の上記含窒素化合物の共析が生じないため、成膜された
亜鉛結晶の歪みが小さく、優れた加工性およびめっき密
着性を有するが、これは光沢添加材をめっき浴中に添加
する従来例では得られなかったものである。
させるには、酸洗溶液中に50〜3000ppmを添加
することが必要である。50ppm未満では上記作用を
有効に発揮させることができないだけでなく、低添加量
のため鋼板表面への均一吸着性に劣り、新たなめっき外
観不良を招く等の問題もある。好ましいのは80ppm
以上、より好ましくは100ppm以上である。一方、
その上限が3000ppmを超えると、素地鋼板表面へ
の吸着量が著しく増加することから、酸洗処理後に鋼板
表面に過剰に残存した処理液の不均一流れ模様や、水洗
不足に起因する水洗むら模様等の新たなめっき後の外観
不良を生じる。また、酸洗本来の目的である素地鋼板表
面の酸化物除去能力が著しく弱められ、且つ素地鋼板表
面に過剰の有機物層を形成することになることから、め
っき密着性の不良を招く。さらに、素地鋼板表面の過剰
な含窒素化合物が、めっき液中に持ち込まれてめっき液
の汚染を招くため、その上限を3000ppmとする。
好ましいのは2700ppm以下、より好ましくは25
00ppm以下である。なお、上記含窒素化合物は単独
で用いても良いし、あるいは2種以上を併用しても良
く、要するに添加総量が上記範囲内であれば良いのであ
る。
被処理鋼板を浸漬することを意味し、酸性浴としては硫
酸、塩酸、硝酸、フッ化水素酸等、およびこれらの混合
酸等を使用することができるが、本発明の作用を有効に
発揮させるには塩酸、硫酸等の使用が好ましい。次に、
本発明における酸洗処理工程における他の条件(酸洗浴
の濃度、温度、酸洗時間等)について説明する。
%、以下同じ)が好ましい。酸洗浴濃度が1%を下回る
場合には、本来の目的である酸化皮膜除去作用が充分に
発揮できない。一方酸洗濃度が30%を超えると、溶解
力が強すぎて素地荒れ(過酸洗)を招く他、硫酸浴を使
用する場合には、逆に酸化剤として作用するため素地鋼
板表面のスケール除去能力が低下する。
錆、脱スケール能力、発煙等の問題を回避することを目
的として、使用する酸洗浴の種類に適した温度に適宜設
定することが好ましい。例えば塩酸浴を使用する場合に
は、塩酸は揮発性を有するために20〜30℃で使用す
ることが好ましく、一方硫酸浴の場合は不揮発性である
点を考慮して脱錆、脱スケール能力を有効に発揮し得る
至適温度(20〜70℃)で使用することが推奨され
る。
のではないが、酸洗後の表面仕上りの程度(過酸洗、酸
洗不足等)に応じて2〜60秒の範囲で適宜変更するこ
とが可能である。
っても汚染されているため、本発明の酸洗処理を行う前
に、アルカリ脱脂、電解脱脂、有機溶剤脱脂等を単独あ
るいは適宜組合わせて行うことが推奨される。
程に最大の特徴を有するものであり、酸洗処理後に行わ
れる電気亜鉛めっき法は特に限定されず、通常の方法を
採用し得る。また、電気亜鉛めっきを施すことによって
付与される亜鉛めっき付着量については何等制限される
ものではなく、本発明の方法は、亜鉛付着量の如何に拘
らず優れた効果を発揮するものである。ただし、めっき
付着量が1g/m2 未満では、亜鉛めっき本来の耐食性
を十分に発揮させることができず、一方100g/m2
を超えると製造時の電力コストが上昇すること等を考慮
すれば、好ましいめっき付着量は1〜100g/m2 で
ある。
付き性、耐指紋性、加工性等の各種性能の向上を目的と
して、亜鉛めっき層の表面に1層または2層以上の化成
処理を施すことも有効である。上記化成処理層として
は、クロメート皮膜層、有機皮膜層、無機皮膜層、リン
酸塩皮膜層等が挙げられる。このうちクロメート皮膜層
としては、反応型クロメート皮膜や塗布型クロメート皮
膜等が挙げられるが、塗布型クロメート皮膜の場合に
は、耐食性を一層向上させることを目的としてリン酸、
コロイダルシリカ、有機樹脂を添加することが推奨され
る。また、上記有機皮膜層としては、例えばポリエチレ
ン系、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系、ポリエス
テル系、フッ素樹脂系およびこれらの混合物、共重合
体、変性樹脂等を適宜選択して使用することが可能であ
る。更に、耐食性の向上を目的として、該有機皮膜中に
シリカゲル、コロイダルシリカ等を添加したり、塗膜付
与後の加工性の向上を目的として、各種ワックス成分を
微量添加したり、あるいは塗膜密着性の向上を目的とし
てシランカップリング剤を添加することも可能である。
上記無機皮膜層としては珪酸塩等が挙げられる。
されないが、耐食性の観点から5mg/m2 以上が好ま
しい。その上限は特に規定されないが、300mg/m
2 を超えると耐食性改善効果が飽和すると共に、製造コ
ストが上昇するので好ましくない。同様の理由から、上
記有機皮膜層および無機皮膜層の膜厚についても0.5
〜20μmとすることが推奨される。
説明するが、下記実施例は本発明を制限するものではな
く、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施するこ
とは全て本発明の技術的範囲に包含される。
に濃化元素量(Mn,Ni,Al等)の異なる部位を有
するAlキルド冷延鋼板を用い、以下に示す工程にて電
気亜鉛めっき処理を行った。 アルカリスクラパー脱脂(3%オルト珪酸Na,60
℃)→電解脱脂(3%オルト珪酸Na,60℃,50A
/dm2 )→水洗→酸洗→電気亜鉛めっき(詳細は表1
を参照)→水洗
物の種類および量を表2、3に示す。なお、ベースとな
る酸洗浴は60℃の5%硫酸水溶液を用い、該酸洗浴中
に素地鋼板表面を約3〜5秒間浸漬処理した。この様に
して作製された電気亜鉛めっき鋼板について、下記項目
を評価し、その結果を表2、3に併記した。
て不純物元素濃化量の異なる部位(即ち、不純物濃化の
少ない部位と多い部位)について、それぞれめっき後の
光沢度をJIS Z8741に記載のGs60の方法に
準じて測定して光沢度の比を算出し、以下に示す基準で
めっき外観均一性を評価した。 ◎:光沢度比(0.9以上1.0未満)…外観不均一性なし ○:光沢度比(0.8以上0.9未満)…外観不均一性が僅かに認められる △:光沢度比(0.6以上0.8未満)…外観不均一性が認められる ×:光沢度比(0.6未満) …外観不均一性が著しく認められる
に本発明で規定する含窒素化合物を単独で所定量含有し
た本発明例(No.1〜13)は、いずれもめっき後の外
観改善効果に優れていることが分かる。この様な作用
は、上記含窒素化合物を2種類以上混合して添加した場
合(No.14〜18)においても同様に認められた。
合物以外の化合物(ノニオン性またはアニオン性基を有
する界面活性剤)を酸洗浴中に添加した比較例では、顕
著な外観改善作用が見られなかった。更に、アニオン性
界面活性剤を用いた比較例(No.19〜21)では、時
間の経過と共に酸洗浴中で沈殿物が生じ、浴中の安定性
という観点からも使用に適さないことが分かった。
化アニリニウム)、No.11(塩化ピリジニウム)およ
びNo.13(ヘキサメチレンテトラミン)を用いた場合
における酸洗浴中の添加量に対する光沢度比(めっき外
観均一性の指標)を調べた結果を図1に示す。
の場合は光沢度比が0.8以上と非常に優れた外観均一
性を有することが分かる。この様な効果は、添加量が5
0〜3000ppmに至る非常に広い範囲にわたって持
続して見られる。なかでも特にヘキサメチレンテトラミ
ンを使用した場合には、広範囲にわたって高光沢度比が
得られるという点で安定性に優れ、良好な外観均一性効
果を有することが分かる。しかしながら、添加量が本発
明で規定する上限値(3000ppm)を超えると、光
沢度比が再び低下すると共に、酸洗後の水洗能力が不足
するため、新たな外観むらが発生した。なお、この実験
結果は上記化合物に限らず、本発明で用いられる他の含
窒素化合物についても同様の傾向が認められた。
ペンタオキシエチレンステアリルアンモニウム(第四級
アンモニウム塩)を用い、該含窒素化合物を本発明法で
ある酸洗浴に添加した場合と、酸洗浴ではなくめっき浴
に添加した場合における、添加量に対するめっき外観均
一化効果およびめっき外観変化、並びにめっき密着性を
調査した。ここでめっき外観均一化効果の指標としては
前記光沢度比を用い、素地鋼板表面の不均一化に起因す
る光沢度の変化を調べ、その結果を図2に示した。一
方、本実施例におけるめっき外観変化は、素地鋼板表面
の状態に依らず上記含窒素化合物の添加によるめっき鋼
板の色調変化を調べることを目的とするものであり、具
体的には、或る特定部位における外観を目視観察するこ
とにより、上記含窒素化合物を添加しない場合のめっき
鋼板が本来有する外観に比べて、どの程度変化するかを
調べた。めっき外観変化の評価は、元々のめっき鋼板が
有する外観と比較して、同等の外観を有する場合を”
○”、異なる外観を有する場合を”×”、大幅に異なる
外観を有する場合を”××”で表し、その結果を表4に
示した。
側に180度密着曲げ試験を行なった後、曲げ部につい
てセロハンテープ剥離試験を行ない、セロハンテープに
付着した亜鉛めっき層を目視観察し、セロハンテープに
亜鉛めっき層が全く付着していない場合を、”○”、僅
かに付着している場合を”△”、多量に付着している場
合を”×”として表4に併記した。
明法である酸洗浴に添加した場合、低添加量領域から高
添加量領域までの非常に広い範囲で常に優れた外観均一
性を有することがわかる。これに対して、めっき浴中に
添加した場合には、非常に狭い添加量範囲(50〜10
0ppm)でしか外観均一性を得ることはできなかっ
た。
加の場合、上記含窒素化合物の添加によるめっき外観の
変化はほとんど見られず、広い添加量範囲にわたって同
程度のめっき外観が得られることがわかる。これに対し
て含窒素化合物をめっき浴中に添加した場合には、めっ
き外観が大きく変化しており、使用には適さないことが
明らかである。また、めっき密着性についても、含窒素
化合物を酸洗浴中に添加せずにめっき浴中に添加を行な
った場合には、著しく劣化することが判明した。
で、めっき表面の色調が均一でめっきむらのない優れた
外観を有する電気亜鉛めっき鋼板を効率よく製造するこ
とができた。
キサメチレンテトラミンを酸洗浴中に添加した際の添加
量と光沢度比の関係を示すグラフである。
モニウムを酸洗浴中に添加した場合とめっき浴中に添加
した場合における光沢度比の推移を示すグラフである。
Claims (5)
- 【請求項1】 酸性溶液中にてカチオンを形成する窒素
含有有機化合物を50〜3000ppm含む酸洗浴中で
被処理鋼板を酸洗処理した後、電気亜鉛めっきを施すこ
とを特徴とするめっきむらのない外観に優れた電気亜鉛
めっき鋼板の製造方法。 - 【請求項2】 前記窒素含有有機化合物が、第一級アミ
ン、第二級アミン、第三級アミン、第四級アンモニウム
塩および複素環式化合物よりなる群から選択される少な
くとも1種である請求項1に記載の製造方法。 - 【請求項3】 前記窒素含有複素環式化合物が多環系化
合物である請求項2に記載の製造方法。 - 【請求項4】 前記多環系化合物の各環に少なくとも1
個の窒素原子を含有する請求項3に記載の製造方法。 - 【請求項5】 前記多環系化合物がヘキサメチレンテト
ラミンである請求項4に記載の製造方法。
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- 1996-03-29 JP JP07758196A patent/JP3557782B2/ja not_active Expired - Fee Related
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