【発明の詳細な説明】
腫瘍サプレッサ遺伝子、並びに癌の検出、腫瘍進行のモニタおよび
癌処置のための方法発明の背景
1. 発明の技術分野
本発明は、ヒトにおける或る種の癌に対する感受性を付与する遺伝子異常性の
検出に関する。より詳細には本発明は、腫瘍サプレッサをコードする新たに見出
された遺伝子における欠失もしくは多型性の検出方法に関するものである。
2. 従来技術の説明
近年、或る種の腫瘍の発育は細胞増殖を阻害する遺伝子産物(「腫瘍サプレッ
サ」)により抑圧されるという理論を裏付ける多くの証拠が拡大している[たと
えばマルクス(Marx)、Science、第263巻、第319〜320頁(1994)
参照]。逆に、一般に細胞に存在する腫瘍サプレッサが存在しなければ(たとえ
ば遺伝子欠失に基づき)或いは活性が低ければ(たとえば遺伝子突然変異に基づ
く)、そうでなければ、抑制されるであろう腫瘍成長は妨害されずに進行する。
しかしながら、或る種の腫瘍の成長は腫瘍サプレッサ発現遺伝子の欠失に関連す
ることが積極的に示されているが、同じ遺伝子における突然変異が異常な細胞増
殖を生ぜしめることはまだ示されていない。
真核性細胞の成長サイクルは、サイクリン依存性キナーゼ(「CDK」)とし
て知られるプロテインキナーゼファミリーにより調整される。図1に示したよう
に、サイクリンおよびその関連CDKは、細胞を有糸分裂期(M)での分裂を導
く成長サイクルの3つの期間(それぞれG1、SおよびG2)に移動させる。細胞
増殖における役割が現在まで最も明瞭に規定されているサイクリン/CDK複合
体はサイクリンD/CDK酵素であって、G1成長サイクル期の進行を支援する
と思われる。これら酵素のうちサイクリンD1はオンコジーンであると思われ、
その過剰発現はキナーゼの連続産生を介し過度の細胞分裂を刺激し、したがって
たとえば乳癌および食道癌の発達に関与する。サイクリンD1は、p21として
知られるタンパク質と細胞核抗原とで構成されるマルチタンパク質複合体の一部
分としてCDK4により特異的に結合される。
この種のサイクリン/CDK過剰発現の公知阻害物質は腫瘍サプレッサタンパ
ク質p53および網膜芽細胞(Rb)遺伝子のタンパク質産生物を包含する。最
近、他の推定阻害物質(p16)が単離され、この阻害物質のためのcDNAが
セラノ等により部分的に配列決定された[Nature、第366巻、第704〜71
0頁(1993)]。著者等は、p16がCDK4を結合してCDK4/サイク
リンD酵素の活性を阻害することを示した。p16が或る種のRb成長サイクル
タンパク質のCDK/サイクリンDによるリン酸化を妨げることを示すデータに
基づき、著者等はp16がRbの上流および下流にてインビボで作用して細胞増
殖を調整するネガティブフィードバックループを形成することを提唱している。
しかしながら、p16と特定癌の発生もしくは阻害との関連については何も示唆
されず、p16をコードする遺伝子のゲノム構造に関し何らの情報も開示されて
いない。
発明の概要
上記セラノ等の論文が刊行される前、本発明者等は腫瘍サプレッサ遺伝子(以
下「CDK4I」と称する)を見出し、そのゲノム構造(配列番号1〜2参照)
を同定した。非悪性細胞にてCDK4Iは染色体9p21に対してマップされ、
メチルチオアデノシンホスホリラーゼ(MTAse)の遺伝子に物理的に隣接す
る(図4(b)参照)。MTAseのための遺伝子の欠失またはその突然変異か
ら生ずるMTAse欠損は、或る種の癌の発生に直接関係することが示されてい
る[ノボリ等、Cancer Res.、第53巻、第1098〜1101頁(1993)
参照]。その開示を癌発達におけるMTAseの役割に関する引例として援用す
る。また、配列番号14、すなわちゲノムMTAseのヌクレオチド配列を参照
のこと)。
現在までCDK4Iを欠如し或いはCDK4I遺伝子の突然変異もしくは再編
成(総合して「多型性」)を有すると同定されている全腫瘍細胞の約半数はMT
Aseを欠如する。さらに本発明者等は、或る種の癌を有する患者の腫瘍細胞に
存在するCDK4I遺伝子における突然変異をも同定した。したがって本発明は
、(a)細胞におけるCDK4I遺伝子の欠失および(b)多型性を検出する方
法に向けられ、前記欠失および多型性は或る種の癌に対する感受性を示す。
より詳細には、ある態様において本発明は、CDK4I遺伝子の点突然変異も
しくは欠失を検出する方法を含む。この種の方法はポリメラーゼ連鎖反応(PC
R)に基づくアッセイ、一本鎖コンフォーメーション多型性のゲル電気泳動、直
接的配列決定および制限エンドヌクレアーゼ切断を包含する。CDK4I遺伝子
欠失の検出は好ましくは独特な競合性PCR技術によって行われる。
他の態様において本発明は、生物学的細胞試料におけるCDK4Iタンパク質
およびその生物学上活性な断片(総合して「CDK4I」)の検出方法を含む。
他の態様において本発明は、癌の発生に関連した多型性の検出に基づく特定癌
に対する感受性のスクリーニング法をも含む。
他の態様において本発明は、CDK4IおよびMTAseの両者の遺伝子の多
型性もしくは欠失の検出に基づく特定の癌に対する感受性のスクリーニング法と
、遺伝子の産物における欠損の検出とを含む。
他の態様において本発明はゲノムCDK4I、CDK4I遺伝子の発現産物、
CDK4Iおよびその断片、並びにCDK4I遺伝子発現産物、CDK4Iおよ
びCDK4I断片を特異的に結合する抗体をも含む。
図面の簡単な説明
図1は、哺乳動物細胞の成長サイクルにおけるG1から有糸分裂(M)までの
各期間を示す。
図2(a〜b)は、ヒトCDK4I遺伝子の全長ゲノム配列を示し、ここでエ
クソンCDK4I5′、CDK4I′およびCDK4I3′には下線を施す。
図3は、図2(下側ライン)に示したゲノムDNA配列の5′領域をセラノ等
、Nature、第366巻、第704〜710頁(1993)に報告されたcDNA
配列(上側ライン)と比較し、相違点は各配列間における縦線がないことによっ
て
示す。
図4(a〜b)は、MTAseおよびINF−α遺伝子座の間の染色体9P2
1の領域を示し、これはT98Gにおいて欠失セグメントが集中している。図4
(a)は、欠失セグメントのヌクレオチド配列を示し、図4(b)は染色体9に
おけるMTAseに対する領域とINF−α遺伝子との関係を示し、
図5は、MTAseおよびINF−αの各遺伝子座間の領域における54F領
域と5BS領域との間の欠失部位をマップ化する。ここでCDK4Iの遺伝子の
部位は最も頻繁に欠失した領域内に存在する。
図6は、CDK4I遺伝子の通常のDNA配列(下側ライン)と家族性的黒色
腫を有するヒト患者からの細胞に見られる1つの塩基置換を有する遺伝子の突然
変異配列(上側ライン)とを比較する。
図7は、CDK4I遺伝子の通常のDNA配列(下側ライン)と白血病細胞株
に見られる遺伝子内の微小欠失を有する遺伝子の突然変異配列(上側ライン)と
を比較する。
図8は、数種のヒト悪性細胞株におけるCDK4I遺伝子に対するPCR系ア
ッセイの結果を示す。ここでレーン1=胎盤細胞、レーン2=SK−MEL−3
1(ATCC HTB73;黒色腫細胞株)、レーン3=WM266−4(AT
CC CRL 1676;黒色腫細胞株)、レーン4=T98G(膠腫細胞株)
、レーン5=BV173(ATCC ; )、レーン6=CE
M(ATCC CCL 119;リンパ芽球白血病細胞株)、レーン7=MOL
T−4(ATCC 1582;リンパ芽球白血病)、レーン8=A−549(A
TCC CCL 185;非−小細胞肺癌細胞株)、レーン9=SK−MES−
1(ATCC HTB 58;非小型細胞肺癌細胞株)である。レーン10はテ
ンプレートがないものであり、レーン11はDNAマーカーである。
図9は、数種の悪性細胞株におけるCDK4I遺伝子に対応するmRNAにつ
き逆転写酵素PCR系アッセイの結果を示す。レーン1=WIL2−NS(AT
CC CRL 8155:正常リンパ芽球細胞株)、レーン2=U937(AT
CC CRL 1593;白血病細胞株)、レーン3=T 98G(ATCC
CRL 1690;膠腫細胞株)、レーン4=H661(ATCC ;
非小型細胞肺癌細胞株)、レーン5=A−549(ATCC CCL 185;
非小型細胞肺癌細胞株)およびレーン6=SK−MES−1(ATCC HTB
58;非−小細胞肺癌細胞株);M=DNAマーカーである。
図10はMTAseの全長ゲノムヌクレオチド配列であり、エクソンに下線を
施す。発明の詳細な説明
I. ゲノムCDK4Iの同定および特性化
ここに添付する配列リストにおいて、ヒトCDK4I遺伝子の全長ゲノムヌク
レオチド配列を配列番号1および2に示す(さらに図2(a〜b)に再掲する)
。配列番号3〜5はCDK4I遺伝子エクソンのヌクレオチド配列を含む。これ
らエクソンには図2(a〜b)にて下線を施し、したがって各エクソン(以下「
CDK4I′」、「CDK4I3′」および「CDK4I5′」)間の境界、並
びに遺伝子の各イントロンを示す。CDK4I′エクソンは、発現されたCDK
4Iタンパク質の構造安定性に寄与すると思われる4個の逆方向繰り返しのパリ
ンドローム領域を有する。報告されたp16cDNA配列(セラノ(Serrano)等
、Nature、上記)に対する比較は、報告された配列が大腸菌(E.Coli)のタンパク
質をコードする領域を有し、また、CDK4I遺伝子とは数個の塩基対だけ5′
領域にて相違することを示し、5′コード化領域の中間に停止コドンを形成する
1つ間違ったヌクレオチドを含む[図3に含まれる比較参照;ゲノムCDK4I
の該当部分を下側ラインに沿って示し、セラノ等の部分配列(5′領域)を上側
ラインに沿って示す。これら配列における相違を縦線がないことにより示す]。
ゲノムCDK4Iを下記するように同定および特性化した。CDK4I遺伝子
はMTAseの座とα−インターフェロン(「INF−α」)遺伝子クラスター
の座との間の染色体9p上に存在すると思われた。この位置は、染色体9pに欠
失を伴う多くの悪性細胞株がMTAseを欠如し或いはINF−αのヘミ接合型
もしくはホモ接合型の欠失を有するという事実により示唆される。特にINF−
α座に対し動原体的であるT98G膠腫細胞株(ATCC受託番号CRL 16
90)で同定された小9p欠失はCDK4Iのための可能性のある位置として注
目された。
実施例1に一層詳細に説明するように、CDK4Iの推定位置をMTAse
cDNAで探索した。これはヒト胎盤λファージライブラリをプローブ処理する
ために用いられた(配列番号5はMTAseのゲノムヌクレオチド配列を含む;
ATCC受託番号55536〜5540号をも参照)。2キロベースHindI
II断片(MTAse クローン7−2;ATCC受託番号55540号)から
開始して、染色体歩行を行い、その後のλファージライブラリのスクリーニング
によって、T98G細胞内の欠失領域を包含するクローンを単離した。MTAs
e遺伝子座とINF−α遺伝子座との間における染色体9p21の領域を、T9
8Gにおける欠失セグメントに注目して配列決定した。この配列を図4(a)に
示す。
45種の癌細胞株をスクリーニングして、推定の腫瘍サプレッサ遺伝子および
図4(a)で同定された領域における他の部位での欠失頻度を決定した。このア
ッセイから得られたデータを図8に示す。2種の最も頻繁に欠失した部位からの
イントロンを配列標識部位(STS)54FおよびSTS 5BSとして図4(
b)に同定した。これらの部位は50キロベース領域で離れている。各プローブ
はSTS 54FおよびSTS 5BS(配列番号6〜7)の間の50キロベー
ス領域の部分に特異的に結合するよう設計した。最も頻繁に欠失した領域を19
キロベースλファージクローン(10B1−10)により同定した(図4(a)
参照)。実施例1に説明するように、CDK4I遺伝子はクローン10B1〜1
0(CDK4I3′およびCDK4I′)並びに関連クローン10A1(CDK
415′)に対応する染色体9の領域に存在するとわかった。
CDK4I遺伝子は、1994年4月14日付けで寄託されて受託番号
を受けたアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(「ATCC」)
に対する寄託物における2種の大腸菌株(それぞれ10B1−10および10A
1を有する)に含まれる。しかしながら、本発明の開示に、この寄託物を必要と
すると言う要請は認められない。
図2および配列番号3〜5に示したように、CDK4I遺伝子のCDK4Iエ
クソンは306塩基対のオープンリーディングフレームを有し、CDK4I3′
エクソンはCDK4Iのコード化領域における最後の15塩基対に対応する短い
オープンリーディングフレームを有し、さらにCDK4I5′エクソンは139
塩基対のオープンリーディングフレームを有する。
II. 癌細胞株におけるCDK4I遺伝子の欠失頻度
多くの癌は家族性に密集する。たとえば米国にて年間に診断される約30,0
00種の皮膚黒色腫の新たな症例のうち、約5〜10%が家族性に由来する[キ
ャノン−アルブライト(Cannon-Albright)等、Science、第258巻、第1148
〜1152頁参照]。家族性黒色腫の位置は染色体9p21、すなわち散発性黒
色腫で再現的に欠失する領域として従来同定されている[ファウンテン(Fountai
n)等、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA.、第89巻、第10557〜10561頁(1
992)]。さらに、たとえば紫外線に対する露出および喫煙のような環境因子
も先の症例における黒色腫、並びに肺、膀胱、頭部、首および喉頭の各癌の発達
の主たる危険因子と同定されている。たとえば染色体9p21の異常は肺癌細胞
にて極めて一般的である[ノボリ(Nobori)等、Cancer Res.、第53巻、第10
98〜1101頁(1993)]。
実施例IIに説明するように、CDK4I遺伝子が既知の癌細胞株に存在する
か或いはそこから欠失しているかどうかを判定するため、CDK4I遺伝子に対
応するプローブを用いて上記45種の癌細胞株を再スクリーニングした。このア
ッセイの結果を図9に示す(ハイブリダイゼーションブロットによる)。参考の
ためMTAse、INF−αおよびINF−β遺伝子、並びに染色体9における
3.21、2F、54F、71Fおよび3.3Bの各領域に対応するプローブ(
図4(b)および図5参照)を用いて、同じ細胞株におけるこれら領域の存在に
つきスクリーニングした。試験した全ての遺伝子の領域に関する本アッセイの完
全な結果を下表1に欠失%によって示し、黒色腫の61%、膠腫の87%、非小
型肺細胞癌の36%および白血病の64%がCDK4I遺伝子のホモ接合欠失を
有すると同定された。これらデータは、ヒト細胞が黒色腫、膠腫および白血病の
大部分にて並びに非小型細胞肺癌の1/3以上において、欠失もしくは再編成し
た単一のCDK4I遺伝子を有することを示す。
III. 腫瘍細胞におけるCDK4I遺伝子の点突然変異の頻度および同一性
上記背景にて検討したように、腫瘍サプレッサp53をコードする遺伝子は或
る種の癌で欠失して、妨害されない細胞増殖を起こすことが判明した。理論的に
、腫瘍サプレッサをコードする遺伝子がこのサプレッサの活性を相殺する多型性
を有すれば、腫瘍はサプレッサをコードする遺伝子の欠失がなくても、経時的に
発達し得る。CDK4I遺伝子の特定例において、染色体9p21におけるその
存在は、遺伝子の欠失および多型性の両方が特定の家族性および環境の各癌の発
生に関与し得ることを示唆する。
より詳細には、CDK4に結合して、阻害する際のCDK4Iの役割は、過剰
レベルのキナーゼが、CDK4を阻害するCDK4Iの能力を相殺するCDK4
I遺伝子の欠失もしくは多型性を有する細胞内で見出されると予想しうることを
示す。したがって、CDK4I遺伝子の欠失は前癌性もしくは悪性を示唆する一
方、遺伝子における多型性(特に9p21−関連癌の家族性を有する人間の生殖
系細胞における多型性)は「癌症状」(すなわちCDK4の過剰細胞レベルに起
因する症状)を発生する感受性を示唆する。
最も広義において本発明は、診断もしくは治療適性におけるCDK4I標的核
酸配列の多型性または欠失を可能にし、ここで標的核酸配列はたとえば光学顕微
鏡の治療を用いて組織病理学検査を受けたような生物学的細胞試料(たとえば一
次腫瘍もしくは局部的リンパ結接の境界部)に存在する。たとえば標的核酸配列
は突然変異ヌクレオチド、制限断片長さ多型性(RFLP)、ヌクレオチド欠失
、ヌクレオチド置換またはこの種の組織試料にて対象となる他の哺乳動物の核酸
配列とすることができる。ここで用いる標的CDK4Iヌクレオチド配列に適用
される「多型性」という用語は突然変異制限断片長さ多型性、核酸欠失または核
酸置換を包含すると了解すべきである。
たとえば家族性黒色腫(特に異形成母斑症候群)に罹患したと診断されたヒト
患者からの細胞は、CDK4I mRNAの166位にナンセンス突然変異(す
なわちC→T移行)を有すると同定された。さらに、既知の白血病細胞株(U9
37;ATCC受託番号1593)からの細胞をスクリーニングして、CDK4
15′エクソンに18塩基対の遺伝子内微小欠失を有することが判明した(図7
および実施例VI参照)。配列番号1〜2に含まれる情報および当業界で周知で
あり、本文で説明される遺伝子の点突然変異を同定する技術を用いて、当業者は
、特定の9p21関連腫瘍からの細胞試料をCDK4Iの再現可能な多型性およ
び/または欠失につきスクリーニングして、上記癌症状に対する遺伝的感受性お
よび存在を判定することができる(特に黒色腫、膠腫、非小型細胞肺癌および白
血病)。
欠失および多型性の場合、この情報を用いて前癌症状または現存する癌症状を
診断することができる。さらに、人体における別々の位置でおよび/または経時
的に、欠失もしくは多型性を生じまたは獲得した連続する細胞試料中の細胞数を
定量することにより、癌症状の進行をモニタすることもできる。同様に、欠失も
しくは多型性が未だに癌症状が発症していない患者(特に生殖系細胞に異常性を
有するおよび/または特定癌症状の家族歴を有する者)に見られる場合、欠失も
しくは多型性は癌症状を発生する遺伝的感受性の指標となる。このような感受性
はさらに、もしあるならば、患者の家族歴における癌罹患率および他の危険因子
の存在(たとえば環境因子へ晒されること、並びに患者がさらにMTAseの遺
伝子が欠失している細胞を有するかどうか)の存在に関する情報に基づいて定性
的に評価することもできる。
この目的で好適診断技術につき下記に説明し、その使用につき後記の実施例で
例示する。
IV. CDK4I遺伝子における欠失および多型性の検出方法
生物学的細胞試料に存在する検出可能な量の遺伝子を産生させるには、一般に
CDK4I遺伝子の増幅が必要とされる。たとえば生殖系細胞の試料(たとえば
血液、皮膚もしくは毛髪小泡から)または悪性もしくは前癌性病巣における体細
胞の試料(たとえば組織バイオプシー、啖もしくは尿試料から)を包含する液体
もしくは組織試料を生物学的試料とする。増幅の後、点突然変異はたとえば直接
的配列決定または1つの塩基対の変化を検出することができる条件下でのオリゴ
ヌクレオチドハイブリダイゼーションのような当業者に知られた手段により検出
することができる。さらに、一本鎖コンフォーメーション多型性のゲル電気泳動
(「SSCP」として当業界で知られる;たとえばオリタ(Orita)等、Proc.Natl
.Acad.Sci.,USA.、第86巻、第2766〜2770頁(1989)参照]、二
本鎖DNAの間のミスマッチを検出するヘテロデュープレックス分析(この方法
に適するキットはAT Biochem.of Malvern、PAにより販売される「MDEヘテ
ロデュープレックス キット」がある)、対立遺伝子特異的PCR[たとえばウ
ー(Wu)等、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA.、第86巻、第2757〜2760頁参照
]および制限断片長さ多型性分析[「RFLP」として当業界で知られる;たと
えばノールトン(Knowlton)等、Nature、第318巻、第380〜382頁(19
85)参照]のための技術も適している。CDK4I遺伝子における多型性を検
出するためのこれら技術の適用例を以下に示す。一層詳細には、先の説明で挙げ
た引例の開示を援用して本文の一部とする。
CDK4I遺伝子のホモ接合型欠失の検出は、下記に例示する公知のPCR技
術により容易に検出することができる。しかしながら、CDK4I遺伝子につき
ヘミ接合型とすることも可能であり、この場合は各エクソンに対する遺伝子投与
量分析を行う。当業界で知られた定量的PCR技術を用いて、この分析を行うこ
とができる。好適技術は下記するようにコーサカ(Kohsaka)等、Nuc.Acids Res.
、第21巻、第3469〜3472頁(1993)に記載されている。CDK4
I遺伝子における点突然変異を検出する好適技術の使用を示す例を以下に参考の
ため示し、コウサカ等の論文および上記に挙げた同時出願の開示を援用して本文
の一部とする。
CDK4I遺伝子の欠失および多型性を検出するための定性的PCRを行うの
に最も好適な方法は、以下説明しかつコウサカ等(上記)に記載されたPCR−
ELISA技術の使用を含む。この種のPCR−ELISA法が感度および簡便
のため好適であるが、当業者は他の適するPCR分析を十分に知り、または容易
に確認しうるであろう[たとえば「PCR法」、イニス(Innis)等編、アカデミ
ック・プレス社(1990)に記載]。
A. PCRおよびPCR系分析に使用する一般的方法
検出前にCDK4I標的ヌクレオチド配列、たとえば多型性を有するCDK4
Iヌクレオチド配列を増幅することを所望する場合、これは増幅用のプライマー
であるオリゴヌクレオチドを用いて行うことができる。これら独特のオリゴヌク
レオチドプライマーは、多型性を有するCDK4Iヌクレオチド配列に隣接する
整列領域の同定に基づいている。
一般に、PCR系アッセイに使用するプライマーは、プライマーを用いる反応
に対して厳密な条件下で、標的核酸を含有する有意な量の核酸分子の重合を特異
的に開始させるのに、充分な長さおよび適する配列を持ったオリゴヌクレオチド
を包含する。このようにして、対象となる核酸を持った特定の標的核酸配列を選
択的に増幅することができる。特に、ここで用いる「プライマー」という用語は
2個もしくはそれ以上(好ましくは少なくとも8個)のデオキシリボヌクレオチ
ドもしくはリボヌクレオチドからなる配列を意味し、この配列は標的となる核酸
のストランド(鎖)に対し実質的に相補性であるプライマー伸長産物の合成を開
始することができる。オリゴヌクレオチドプライマーは典型的には15〜22個
もしくはそれ以上のヌクレオチドを含有するが、それ以下のヌクレオチドを含有
することもでき、ただしプライマーは特に所望の標的ヌクレオチド配列の増幅の
みを実質的に可能にするのに充分な特異性を有するものとする(すなわちプライ
マーは実質的に相補性である)。
合成を行う実験条件はヌクレオシド三リン酸および重合用試薬、たとえばDN
Aポリメラーゼの存在、並びに好適な温度およびpHが含まれる。好ましくはプ
ライマーは最大の増幅効率のため一本鎖とするが、二本鎖とすることもできる。
二本鎖の場合は、先ず最初にプライマーを処理して各ストランドを分離させた後
、伸長産物を作製するために使用する。好ましくはプライマーはオリゴデオキシ
リボヌクレオチドである。重合誘発剤の存在下で伸長産物の合成を開始させるた
めに、プライマーは充分な長さでなければならない。プライマーの正確な長さは
多くの因子、たとえば温度、緩衝剤およびヌクレオチド組成に依存する。
本発明のPCR系アッセイに使用するためのプライマーは、増幅すべき突然変
異ヌクレオチド配列の各ストランドに対し「実質的」に相補的となるよう設計さ
れる。実質的に相補的という用語は、プライマーがその各ストランドに対し重合
用薬剤が機能しうる条件下でハイブリダイズするよう充分な相補性を持たねばな
らないことを意味する。換言すれば、プライマーはハイブリダイズするのに充分
な整列(フランキング)配列との相補性を有し、突然変異ヌクレオチド配列を増
幅させるべきである。好ましくは、延長されるプライマーの3′末端は相補性整
列ストランドに対し完全に塩基対相補性を有する。
本発明により使用されるオリゴヌクレオチドプライマーは、標的核酸を増加さ
せて生成する任意の増幅法で用いられる。典型的には一方のプライマーを突然変
異ヌクレオチド配列のマイナス(−)ストランドに対し相補性にすると共に、他
方のプライマーをプラス(+)ストランドに対し相補性にする。変性した核酸に
対してプライマーをアニーリングして、酵素たとえばDNAポリメラーゼI(ク
レノウ)またはTaq DNAポリメラーゼのラージ断片およびヌクレオチドも
しくはリガーゼを用いて伸長することにより、標的核酸を含有する新たに合成さ
れた+および−ストランドが得られる。これら新たに合成された核酸もテンプレ
ートであるため、変性、プライマーアニーリングおよび伸長の繰り返しサイクル
の結果、プライマーにより規定される領域(すなわち標的突然変異ヌクレオチド
配列)の対数的な生成が得られる。増幅反応の産物は、用いた特定プライマーの
端部に対応する各末端を持った個々の核酸デュープレックスである。当業者は、
標的核酸のコピー数を増大させるべく用いうる他の増幅法を分かるだろう。
本発明に使用するためのオリゴヌクレオチドプライマーは、全ての好適な方法
、たとえば慣用のホスホトリエステルおよびホスホジエステル法もしくはその自
動化形態を用いて作製しうる。この種の自動化形態では、ボウケージ(Beaucage)
等[Tetrahedron Letters、第22巻、第1859〜1862頁(1981)]
により記載されたように、ジエチルホスホルアミダイトを出発物質として使用し
、合成することができる。改良固相支持体にてオリゴヌクレオチドを合成する方
法の1つが米国特許第4,458,066号に記載されている。本発明により使
用することができる増幅法の1つはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)であって、
米国特許第4,683,202号および第4,683,195号に記載されてい
る。
精製形態または非精製形態の全ての生物学的細胞試料からの核酸を、出発核酸
として用いることができる。ただしこれは標的核酸を含有する特定の核酸配列を
含むかまたは含むと思われるものとする。従ってこの方法は、たとえばDNAま
たは、メッセンジャーRNA(mRNA)を含むRNAを用いることができ、こ
こでDNAまたはRNAは一本鎖もしくは二本鎖としうる。RNAをテンプレー
トとして使用すべき場合は、DNAまでテンプレートを逆転写するのに最適な酵
素および/または条件を用いることができる。さらに、それぞれの1ストランド
を有するDNA−RNAハイブリッドを用いることもできる。核酸の混合物も使
用することができ、或いは前の増幅反応で同一もしくは異なるプライマーを用い
て生成された核酸も使用することができる。増幅すべき突然変異ヌクレオチド配
列は大型分子のフラクションとすることができ、或いは最初に個々の分子として
存在させて特定配列を全核酸で構成することもできる。増幅すべき配列を最初に
純粋な形で存在させることは必ずしも必要でない;これは、全ヒトDNAに含有
されるような複合混合物の小フラクションとすることもできる。
試料の標的腫瘍性(neoplastic)ヌクレオチド配列が2本のストランドを含有す
る場合は、テンプレートとして使用する前に核酸の各ストランドを分離させるこ
とが必要である。ストランド分離は別途の工程として或いはプライマー伸長産物
の合成と同時に行うことができる。このストランド分離は種々の好適な変性条件
、たとえば物理的、化学的もしくは酵素的手段を用いて行うことができる。「変
性」という用語はこれら全ての手段を包含する。核酸ストランドを分離する1つ
の物理的方法は、核酸を変性するまで加熱することを含む。典型的な加熱変性は
約80〜105℃の範囲の温度および約1〜10分間の範囲の時間を含む。スト
ランド分離はさらに、ヘリカーゼとして知られた種類の酵素から得られた酵素ま
たはヘリカーゼ活性を有する酵素RecAによって、また、DNAを変性させる
ことが知られているリボATPの存在下で、誘発させることもできる。ヘリカー
ゼによる核酸のストランド分離に適する反応条件はクーン・ホフマン−ベルリン
グ(Kuhn Hoffmann-Berling)、CSH-Quantitative Biology、第43巻、第63頁
(1978)に記載され、さらにRecAの使用技術はC.ラジング(Radding)
、Ann.Rev.Genetics、第16巻、第405〜437頁(1982)]に記載され
ている。
増幅すべき標的核酸を含有する核酸が一本鎖であれば、1種もしくは2種のオ
リゴヌクレオチドプライマーを添加して相補体を合成する。単一プライマーを使
用する場合は、プライマー伸長産物をプライマーと重合用試薬と後述する4種の
ヌクレオシド三リン酸との存在下で合成する。この産物は一本鎖核酸に対し相補
性であり、一本鎖核酸とハイブリダイズして、不揃いな長さのストランドの二重
物(デュープレックス)を形成する。これは、次いで一本鎖に分離して2本の分
離された単一相補性ストランドを生成しうる。或いは、2種のプライマーを一本
鎖核酸に添加して、反応を上記のように行うこともできる。
核酸の相補性ストランドを分離する場合は、核酸が最初に二本鎖であるか或い
は一本鎖であるかに拘らず、分離されたストランドは直ちにさらに核酸ストラン
ドを合成するためのテンプレートとしてすぐにでも用いられる。この合成はプラ
イマーをテンプレートにハイブリダイズさせることができる条件下で行われる。
一般に合成は緩衝水溶液にて、好ましくは7〜9、特に好ましくは約8のpHに
て行われる。好ましくは過剰モル(ゲノム核酸に対して一般に約108:1のプ
ライマー:テンプレート)の2つのオリゴヌクレオチドプライマーを、分離され
たテンプレート鎖を含有する緩衝液に添加する。しかしながら本発明の方法を診
断用途に使用する場合は相補性ストランドの量はわかっていなくても良く、相補
性ストランド量に対するプライマー量は正確に決定することができなくても良い
。しかしながら実用上、プライマーの添加量は一般に、増幅すべき配列が複雑な
長鎖の核酸ストランドの混合物に含有される場合は、相補性ストランド(テンプ
レート)の量よりも過剰モルとする。この方法の効率を向上させるには、かなり
の過剰モルであることが好適である。
幾つかの増幅具体例においては、基質、たとえばデオキシリボヌクレオチド三
リン酸dATP、dCTP、dGTPおよびdTTPを合成混合物に別々に或い
はプライマーと一緒に充分量で添加し、得られた溶液を約90〜100℃まで約
1〜10分間、好ましくは1〜4分間にわたり加熱する。この加熱時間の後、溶
液を室温まで冷却させる。この温度はプライマーハイブリダイゼーションに好適
である。冷却混合物にプライマー伸長反応を行うのに適する薬剤(ここでは「重
合用薬剤」と称する)を添加し、反応を当業界で知られた条件下で行わせる。重
合用薬剤は、熱安定性であれば他の試薬と一緒に添加することもできる。この合
成(もしくは増幅)反応は室温から重合用薬剤がもはや作用しない温度に至る範
囲で行うことができる。したがって、たとえばDNAポリメラーゼを薬剤として
使用する場合、温度は一般に約40℃以下である。
重合用薬剤は、プライマー伸長産物の合成を行うよう機能する任意の化合物も
しくはシステムとすることができ、酵素が含まれる。この目的に適する酵素はた
とえば大腸菌DNAポリメラーゼI、Taqポリメラーゼ、大腸菌DNAポリメ
ラーゼIのクレノウ断片、T4 DNAポリメラーゼ、他の入手しうるDNAポ
リメラーゼ、ポリメラーゼムテイン、逆転写酵素、リガーゼおよび他の酵素、た
とえば熱安定性酵素(すなわち変性が生じるように充分に高くされた温度に付さ
れた後、プライマー伸長を行うような酵素)を包含する。適する酵素は適切にヌ
クレオチドの結合を容易化させて、各突然変異ヌクレオチド鎖に対し相補性であ
るプライマー伸長産物を形成する。一般に合成は各プライマーの3′末端で開始
され、テンプレート鎖に沿って5′方向に合成が終了するまで進行して種々異な
る長さの分子を生成する。しかしながら、合成を5′末端で開始させると共に他
方向に進行する上記と同じ方法を用いる重合用薬剤も存在する。いずれにせよ、
本発明の方法はここに説明した増幅の具体例のみに限定されない。
新たに合成された突然変異ヌクレオチド鎖およびその相補的核酸ストランドは
上記ハイブリダイゼーション条件下で二本鎖分子を形成し、このハイブリッドを
その後の工程で使用する。次の工程にて、新たに合成された二本鎖分子を、上記
した任意の方法を用いて一本鎖分子を生成させるために変性条件に付す。
上記過程を一本鎖分子につき反復する。重合用の他の薬剤、すなわちヌクレオ
シドおよびプライマーを必要に応じ添加して上記条件下で反応を進行させること
ができる。この場合も合成は各オリゴヌクレオチドプライマーの一端で開始して
、1つのテンプレート鎖に沿って進行し、さらに核酸を得る。この工程の後、伸
長産物の半数は、2つのプライマーが結合した特定核酸配列で構成される。
変性および伸長産物合成の各工程は、必要とされるたびに繰り返されて、検出
に必要な程度まで標的突然変異ヌクレオチド配列を増幅することができる。生成
される突然変異ヌクレオチド配列の量は対数的に蓄積する。
増幅された産物は、放射性プローブを用いることなくサザン・ブロット分析に
より検出することができる。この種の方法においては、たとえば極めて低レベル
の突然変異ヌクレオチド配列を含有するDNAのわずかな試料を増幅させ、サザ
ン・ブロッティング技術によって分析する。非放射性プローブもしくは標識の使
用は、高レベルの増幅シグナルによって容易化される。
本発明の方法で検出された突然変異を有する核酸に対して、溶液にて或いは固
相支持体に結合させた後に、たとえばPCR、オリゴマー制限[サイキ(Saiki)
等、Bio/Technology、第3巻、第1008〜1012頁(1985)]、対立遺
伝子特異性オリゴヌクレオチド(ASO)プローブ分析[コナー(Conner)等、Pr
oc.Natl.Acad.Sci.,USA.、第80巻、第278頁(1983)]、オリゴヌクレ
オチド連結分析(OLAs)[ランデグレン(Landegran)等、Science、第241
巻、第1077頁(1988)]などの特定DNA配列の検出につき一般に用い
られる任意の方法により、さらに評価、検出、クローン化、配列決定などを行う
ことができる。DNA分析のための分子技術についても検討されている[ランデ
グレン等、Scinece、第241巻、第229〜237頁(1988)]。
B. 標識プローブを用いたハイブリダイゼーション
本発明の他の診断方法においては、介入配列または10〜50塩基対のオリゴ
ヌクレオチド配列を有する精製された核酸断片を放射能標識する。標識された調
製物を使用して、サザン・ハイブリダイゼーション技術により生物学的細胞試料
からの核酸をプローブ処理する。増幅前もしくは増幅後の生物学的試料からのヌ
クレオチド断片を異なる分子量の断片までゲル電気泳動によって分離し、核酸を
結合するフィルタに移す。標的核酸配列を含有するヌクレオチド断片にハイブリ
ダイズする標識プローブに晒した後、標的核酸断片に対する放射性プローブの結
合をオートラジオグラフィ[Genetic Enfineering、第1版、ロバート・ウィリ
アムソン、アカデミック・プレス(1981)、第72〜81頁参照]により同
定する。或いは、試料からの核酸を直接結合させ、対象となる配列を含む核酸に
結合することによって、放射性プローブをこのフィルタに選択的に付着させるこ
とができる。特定配列および結合程度は放射能放出を直接に計測して定量される
。
標的核酸が増幅されない場合は、適するハイブリダイゼーションプローブを用
いる検出を分離された哺乳動物核酸において直接に行いうる。標的核酸が増幅さ
れるような場合は、適するハイブリダイゼーションプローブを用いた検出を増幅
の後に行う。
本発明のプローブは、検出される特定断片の分布および特定の強結合の(ハイ
ブリダイズしている)配列の発生を決定するためのプローブの定量的(相対的)
結合程度の検査に用いることができ、したがって、個人が家族性黒色腫のような
癌症状に対する低い危険性または高い危険性となる傾向が示される。
大抵の場合、プローブは原子もしくは無機のラジカルで検出可能に標識され、
これには最も一般的には放射性核を用いるが、重金属も使用することができる。
都合上、放射性標識を用いることができる。放射性標識は32P、125I、3H、14
C、111In、99mTcなどを包含する。充分なシグナルを与えると共に充分な半
減期を有する任意の放射性標識を用いることができる。他の標識は、標識された
リガンドにつき特異的結合対メンバーとして作用しうるリガンドなどを包含する
。免疫分析に一般的に用いられる広範な種類の標識を本発明の分析に容易に用い
ることができる。
標識の選択は、ハイブリダイゼーションの速度および標的ヌクレオチド配列へ
のプローブの結合に対する標識の作用によって支配される。標識は、ハイブリダ
イゼーションに有効な標的ヌクレオチド配列の量を検出するのに充分な感度を与
えることが必要である。他の配慮はプローブの合成の容易さ、機器の入手性、自
動化の可能性、利便性などである。
標識をプローブに結合させる方法は、標識の性質に応じて変化する。放射性標
識の場合、広範な種類の技術を用いることができる。32P−dNTPを用いたニ
ックトランスレーションまたはアルカリホスファターゼを用いた末端リン酸加水
分解に続く放射性32Pでの32P−NTPおよびT4ポリヌクレオチドキナーゼを
用いる標識が一般的に用いられる。或いは、存在する元素の1種もしくはそれ以
上が放射性同位元素で置換されたヌクレオチド、たとえば水素をトリチウムで置
換されたヌクレオチドを合成することもできる。所望ならば、相補的な標識済ス
トランドをプローブとして用いることにより、ハイブリダイズされる標識の濃度
を増大させることもできる。
他の放射性ヌクレオチド標識を含む場合は、各種の連結基を用いることができ
る。末端ヒドロキシルを無機酸、たとえば32Pリン酸塩もしくは14C有機酸でエ
ステル化したり、或いは各連結基を標識に付与するようエステル化することがで
きる。或いは、中間体塩基を活性化可能な連結基で置換し、次いでこれを標識に
結合させることもできる。
レポータ基としての対象の酵素は主としてヒドロラーゼ、特にエステラーゼお
よびグリコシダーゼ、またはオキシドレダクターゼ、特にペルオキシダーゼであ
る。蛍光性化合物はフルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘
導体、ダンジル、ウムベリフェロンなどを包含する。化学発光剤はルシフェリン
および2,3−ジヒドロフタラジンジオン(たとえばルミノール)を包含する。
このプローブを用いて、水不溶性の多孔質支持体に固体されたヌクレオチド配
列にハイブリダイズさせることができる。核酸の供給源に応じ、核酸を支持体に
固定させる方法を変更しうる。当業者は、本発明の方法に使用しうる種々異なる
支持体を既に知っており或いは容易に確認することができる。
生物学的細胞試料からの核酸をクローン化させ、次いでフィルタ上にスポット
化もしくは広げて複数の個々の部分(プラーク)を得る。フィルタは不活性な多
孔質固体支持体、たとえばニトロセルロースである。試料に存在する如何なる細
胞(もしくはファージ)をも処理して、その核酸を放出させる。核酸の溶解およ
び変性、並びにその後の洗浄は、細胞を溶解し、核酸を変性するのに充分な時間
にわたり適する溶液で行うことができる。溶解には溶解緩衝液について既述よう
な化学溶解が便利に用いられる。他の変性作用因子には、高温度、有機試薬、た
とえばアルコール、アミド、アミン、尿素、フェノールおよびスルホキシドまた
は或る種の無機イオン、たとえばチオシアンネートおよび過塩酸が含まれる。
変性の後、フィルタを水性緩衝溶液、たとえば一般に約6〜8のpHであり、
通常pH7のトリスで洗浄する。1回もしくはそれ以上の洗浄を行うことができ
、便利には溶解および変性に用いられた場合と同じ手順を用いる。溶解、変性お
よび洗浄が行われた後、核酸をスポットしたフィルタを、高温度、一般に約50
〜70℃で乾燥させる。この過程で、核酸は所定位置に固定され、都合よければ
プローブを用いてアッセイすることができる。
プレハイブリダイゼーションは、フィルタをプローブなしのハイブリダイゼー
ション溶液と共に若干高められた温度にてフィルタをすっかり濡らすのに充分な
時間にわたりインキュベートすることにより行うことができる。各種のハイブリ
ダイゼーション溶液を用いることができ、これは約20〜60容量%、好ましく
は30%の不活性な極性有機溶剤を含む。一般的なハイブリダイゼーション溶液
は約50%のホルムアミドと約0.5〜1Mの塩化ナトリウムと約0.05〜0
.1Mのクエン酸ナトリウムと約0.05〜0.2%のドデシル硫酸ナトリウム
と少量のEDTAとフィコール(約300〜500kD)とポリビニルピロリド
ン(約250〜500kD)と血清アルブミンとを用いる。さらに、ハイブリダ
イゼーション溶液には一般に約0.5〜5mg/mLの音波処理して変性された
DNA、たとえば牛胸腺もしくは鮭精子と必要に応じ約0.5〜2%wt/vo
lのグリシンとをも含ませる。さらに、たとえば約100〜1,000kDの硫
酸デキストランのような他の添加剤をもハイブリダイゼーション溶液に対し約8
〜15重量%の量にて含ませることもできる。
特定ハイブリダイゼーション技術は本発明に必須でない。他のハイブリダイゼ
ーション技術についてはゴール(Gall)およびパルジュー(Pardue)により記載され
ている[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA.、第63巻、第378頁(1969);およ
びジョーン(John)等、Nature、第223巻、第582頁(1969)]。ハイブ
リダイゼーション技術にて改良がなされると、これらは本発明の方法に容易に適
用することができる。
ハイブリダイゼーション溶液に存在させる標識プローブの量は、この標識の性
質、フィルタに程よく結合することができる標識プローブの量、およびハイブリ
ダイゼーションの厳密度(ストリンジェンシー)に応じ広範に変化する。一般に
、化学量論的濃度よりも相当過剰のプローブを用いて、固定標的核酸に対するプ
ローブの結合の割合を増大させる。
ハイブリダイゼーションの種々の厳密度を用いることができる。条件が苛酷に
なる程、プローブと一本鎖標的核酸配列との間のデュープレックス形成のための
ハイブリダイゼーションに必要とされる相補性も大となる。厳密度は、温度、プ
ローブ濃度、プローブ長さ、イオン強度、時間などにより制御することができる
。都合上、ハイブリダイゼーションの厳密度は、ホルムアミドの濃度を20〜5
0%の範囲に操作することにより反応物溶液の極性を変化させて変動させる。用
い
られる温度は一般に約20〜80℃、通常30〜75℃の範囲である[一般には
Current Protocols in Molecular Biology、アウスウーベル(Ausubel)編、ウィ
リー・アンド・サンズ(1989)参照]。
フィルタを中程度の温度にてハイブリダイズさせるのに充分な時間でハイブリ
ダイゼーション溶液と接触させた後、フィルタを同様濃度の塩化ナトリウムとク
エン酸ナトリウムとドデシル硫酸ナトリウムとを有する上記ハイブリダイゼーシ
ョン溶液で用いたような第2溶液に導入する。フィルタを第2溶液中に維持する
時間は5分間〜3時間もしくはそれ以上の範囲で変化することができる。第2溶
液は厳密度を決定し、クロスデュープレックスおよび短い相補性配列を溶解させ
る。フィルタを希クエン酸ナトリウム−塩化ナトリウム溶液で洗浄した後、この
フィルタは標識の性質に応じてデュープレックスの存在についてアッセイするこ
とができる。標識が放射性であれば、フィルタを乾燥させてX線フィルムに露光
する。
さらに標識は蛍光性部分を含むこともでき、次いでこれを特定の抗蛍光抗体で
調べることができる。たとえば西洋ワサビペルオキシダーゼ酵素をこの抗体に結
合させて、化学発光性反応を触媒することができる。次いで、光の発生をフィル
ムに対する急速露光で見ることができる。
C. 好適な競合性PCR系アッセイ
本発明における定量的PCRの好適実施方法は、標的CDK4I遺伝子テンプ
レートとは配列が異なる(サイズは異ならない)競合体をもたらす1個以上の塩
基対の誘発突然変異を含んだ競合体テンプレートを用いて行われる競合性PCR
技術である。一方のプライマーのをビオチン化し或いは好ましくはアミノ化して
、得られるPCR産物の一方のストランド(一般にアンチセンス鎖)をアミノ−
カルボキシル結合、アミノ−アミノ結合、ビオチン−ストレプトアビジン結合ま
たは他の適する緊密結合によって、予め適する反応体が緊密結合している固相支
持体に固定化することができる。特に好ましくは、PCR産物と固相支持体と反
応体との間の結合は共有結合であって、確実に変性条件下で各結合を結合解除に
対し耐性にする。
PCR産物のアミノ化もしくはビオチン化されたストランドを固定化した後、
未結合の相補性ストランドをアルカリ変性洗浄で分離し、反応環境から除去する
。標的核酸および競合体核酸に対応する配列特異性オリゴヌクレオチド(「SS
O」)を検出タグで標識する。次いでSSOを、除去された未結合センス鎖に由
来する競合物がない状態でアンチセンス鎖にハイブリダイゼーションさせる。適
する分析試薬を添加し、ハイブリダイゼーションの程度を検出タグおよび使用す
る固相支持体手段に適するELISA測定手段、好ましくはELISAマイクロ
プレートリーダーによって測定する。測定値を比較して標的核酸含有量を知り、
これには標的テンプレートと競合体テンプレートとを含むテンプレートを増幅す
るPCR反応から別途に得られた標準曲線を用いる。
この方法は、定量的であってPCRサイクルの回数には依存せず、しかもSS
OプローブとPCR産物における相補性ストランドとの間の競合により影響され
ない点で有利である。
或いは、重合工程の1部およびハイブリダイゼーション工程の全部を固相支持
体にて行うこともできる。この方法では、固相支持体に捕獲されるのは、PCR
産物のストランドでなくヌクレオチド重合プライマー(好ましくはオリゴヌクレ
オチド)である。次いで、標的および競合体核酸PCR産物を溶液として固相支
持体に添加し、重合工程を行う。重合生成物の未結合センス鎖を上記の変性条件
下で除去する。
標的と競合体核酸との比は、適当な測定手段(好ましくはELISAリーダー
)および上記標準曲線を用いて標識オリゴヌクレオチドSSOプローブを検出す
ることにより決定することができる。この方法の効率は、重合工程における連鎖
反応が不必要となって方法を実施するのに要する時間を短縮するように、大とす
ることができる。この方法の精度も増大させることができる。何故なら、最終重
合生成物は反応チューブから重合用の固相支持体まで移す必要がなく、したがっ
て損失もしくは損傷の可能性を制限するからである。しかしながら特定試料につ
き必要であれば、PCRを別途の反応チューブにて標的および競合体核酸を増幅
すべく使用し、次いで固相支持体にて最終的重合を行うこともできる。
上記技術の他の代案は、重合工程を固相支持体にて単一工程で行う。この方法
においては、PCRを標的(および定量的分析が望ましければ競合体)核酸を固
相支持体上で増幅させるよう行う。PCRを行う前、プライマー(これは標的お
よび競合体核酸に対応する)を固相支持体に緊密結合させる。他の2つのプライ
マーを標的核酸(または競合性テンプレートが存在すれば3つのプライマー)と
共に溶液に入れる。
PCRが開始する際、テンプレートは相当程度まで結合プライマーと相互作用
することはなく、これは、テンプレート濃度が比較的低く、結合プライマーが容
易には接近しえないからである。しかしながら、テンプレートが増幅されるにつ
れてPCR産物の多くが結合プライマーとのハイブリダイゼーションにより固相
に結合されるようになる。したがって、要するに結合プライマーは、標的核酸お
よび競合体核酸の処理により形成されたPCR産物のためのハイブリダイゼーシ
ョンプローブとして作用する。ハイブリダイゼーションが生ずると、ハイブリダ
イゼーションプライマーはPCRを介して伸長する。
当業者に知られた結合PCR産物の形成を示唆する種々異なる検出可能なシグ
ナル(たとえば上記標識、並びに標的および競合体PCR産物の成形を示唆する
種々異なる色を形成する標識ヌクレオチド発色団)を与えうる分子を、最後の数
サイクルの反応に際し反応溶液に添加することができる。標的核酸と競合体核酸
との比も、ELISAもしくは他の適する測定手段および固定化ハイブリダイゼ
ーションプライマーの3′末端に結合した検出タグに対し反応性の試薬を用いて
決定することができる。この方法は、特定遺伝子が試料中に存在するかどうか(
定量でない)につき慣用の非競合性PCR法を行って検出するにも適用すること
ができる。
当業者はどのように上記方法で使用するのに適するプライマーを選択するかを
良く知っており、或いは容易に確認することができる。たとえばCDK4I遺伝
子を増幅しかつCDK4I′、CDK4I3′およびCDK4I5′エクソンに
対応するプライマーを配列番号8〜13に記載する。
D. 一本鎖コンフォーメーション多型性分析
制限断片長さ多型性分析(RFLP)および一本鎖DNAにおける単一ヌクレ
オチド置換(SSCP)により生じた電気泳動ゲル移動性シフトに基づきDNA
多型性を検出する技術は、染色体座における対立遺伝子変動を区別するのに有用
な方法であることが判明した。たとえばRFLPを用いて、嚢胞性繊維症および
他の遺伝障害に存在する遺伝的異常[たとえばノールトン等、Nature、第318
巻、第380〜382頁(嚢胞性繊維症を検出するためのRFLPの使用)、並
びにシライシ等、Jpn.J.Cancer Res.、第78巻、第1302〜1308頁(1
987)(一般的なRFLPの実施)、これらの開示をRFLPの使用に関する
当業界の知識を例示するためここに援用する]を検出している。しかしながらR
FLPは、対象となる多型性が対応する制限エンドヌクレアーゼのための認識配
列内に存在することを必要とし、或いは短い配列の欠失もしくは挿入が特定プロ
ーブにより検出される領域内に存在する場合を必要とする。したがって、SSC
Pは対立遺伝子特異性の多型性を検出するのに好適な技術である。
SSCPを行う技術は当業界で周知である[たとえばオリタ(Orita)等、Genet
ics、第86巻、第2766〜2770頁(1989)を参照のこと、その開示
をSSCPの使用に関する当業界の知識を例示すべくここに援用する)]。一般
に、対象となる遺伝子断片もしくは対立遺伝子を変性させ、中性ポリアクリルア
ミドゲルでの電気泳動にかける。一本鎖DNA(またはそのRNAコピー)をメ
ンブレンに移動させ(ブロッティングによる)、次いで対象となる断片/対立遺
伝子のための検出可能に標識されたDNAプローブにハイブリダイズさせる。対
象となる断片/対立遺伝子がゲル中を移動する相対速度(「移動度シフト」)が
塩基置換の存在または不存在を示す。
特に適するSSCP技術はPCRを使用するものであり、これは、標的配列を
増幅すると同時にこれを放射性同位元素または好ましくはフルオレセイン分子で
標識する(PCRでは標識プライマーを使用する。すなわち「F−PCR−SS
CP」である)。特に好ましくはポリアクリルアミドゲルにおけるDNAバンド
の検出を自動DNA配列決定装置で行い、これは如何なる所望温度においてもゲ
ルの厳密な制御を可能にし、得られるデータの定量的解析を可能にする(標識D
NAにより発生した蛍光の強度に対するフルオログラムにおけるピークの高さの
比例性に基づく)。F−PCR−SSCPを実施するための公知方法の要約につ
いては、当業者はマキノ(Makino)等、PCR Methods and Applns.、第2巻、第1
0〜13頁(コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー)(1992)を
参照することができ、その開示をF−PCR−SSCPに関する当業界での知識
を例示するためここに援用する。
E. ゲノムDNAの対立遺伝子特異的酵素的増幅
ゲノムDNAにおける多型性を検出する簡単かつ好適な方法は、対立遺伝子特
異的PCR(ASPCR)に基づく技術である。ASPCRにおいては、2つの
対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプライマー(たとえば配列番号8〜13に
記載されたもの)、即ち、一方が予想および/または既知の突然変異対立遺伝子
に対して特異的であり、他方が「正常」対立遺伝子に対して特異的であるものを
、ゲノムDNAテンプレートおよび両方の対立遺伝子に対し相補的である他のプ
ライマーと共にPCRで使用する。適正なアニール温度およびPCR条件の下で
、これらプライマーはその相補的対立遺伝子の増幅のみに向けられて、ヒト組織
から得られた核酸試料における遺伝子型の判定を可能にする。より詳細には、こ
のPCRに適する温度はアニーリングサイクルにつき約55℃、重合サイクルに
つき約72℃および熱変性サイクルにつき約94℃である。
ASPCRの実施に関する詳細については、当業者はウー等、Proc.Natl.Acad
.Sci.,USA.、第86巻、第2757〜2767頁(1989)を参照すること
ができ、その開示を参考のためここに援用する。
F. 生物学的細胞試料におけるCDK4Iの不存在に基づく遺伝子欠失の間接 的検出
正常な非悪性細胞においても、CDK4Iは、一般には結合型、すなわちCD
K4I、CDK4、サイクリンDおよび他の分子、たとえば細胞核抗原の複合体
で存在すると予想することができる。CDK4タンパク質の不存在(好ましくは
免疫アッセイにより決定)に基づいたCDK4Iの遺伝子の欠失を間接的に検出
する方法についてはセクションVIIIにて以下詳細に説明する。
V. CDK4Iの単離および精製
ここで用いる「実質的に純粋」という用語は、一般にインビボにて結合しうる
他の化合物を実質的に含まないタンパク質を意味する。本発明の意味で、この用
語はホモ接合型CDK4Iを意味し、その相同性(homogenicity)は当業者に知ら
れた純度標準を参照して決定される(たとえばタンパク質のN−末端アミノ酸配
列を得るのに充分な純度)。
実質的に純粋なCDK4Iは組織ホモジネート物(「正常」細胞、すなわちC
DK4I遺伝子を含有するような細胞を含む)から微生物的発現により、合成に
より或いは当業者に知られた精製手段、たとえば親和性クロマトグラフィーによ
り得ることができる。この種の技術を用いてCDK4Iの生物学上活性なペプチ
ド断片を得ることができる。本明細書において、「生物学上活性なペプチド断片
」と言う用語は、CDK4のための結合ドメインを有する断片を意味する。
CDK4I断片がCDK4結合ドメインを有するという判定は、当業者に知ら
れた数種の方法のうちのいずれかを用いて行うことができ、これには、たとえば
結合動態(binding kinetics)およびCDK4に対する断片の親和性の決定、並び
に抗CDK4抗体を用いる阻害試験が含まれる[たとえばキシオング(Xiong)等
、Genes Dev.、第7巻、第1572〜1583頁(1993)参照;その開示を
抗CDK4抗体を産生させるための標準的方法を例示すべくここに援用し、抗C
DK4抗体を産生させるのに適用しうる抗体産生の他の適する方法については以
下説明する]。
CDK4Iの一次アミノ酸配列の僅かな改変(これは配列番号1〜2から容易
に得ることができる)は、ここに説明した特定CDK4Iタンパク質と比較して
、実質的に同等な活性を有する変種をもたらしうる。この種の改変は、たとえば
部位指向性の突然変異によるように故意とすることができ、或いは自然的とする
こともできる。これら改変により生成される変種は全て、最初のタンパク質に存
在する生物学活性がまだ存在する限り本発明に包含される。この開示の目的にお
いて、この種の変種は一般に「機能的変種」と考えるべきである。CDK4Iの
機能的アミノ酸配列変種は3種類、すなわち置換、挿入もしくは欠失変種の1種
もしくはそれ以上に分別しうる。一般に、この種の変種は、CDK4Iをコード
するDNAにおけるヌクレオチドの部位特異性突然変異によって作製され、これ
により、変種をコードするDNAを生成し、次いでDNAを組換え細胞培養物中
で発現させる。しかしながら、変種CDK4Iおよび約100〜150残基まで
を有するCDK4I断片を、都合上、インビボ合成により作製することができる
。
アミノ酸配列変種は一般に変動の所定の性質により特性化されるが、この種の
変種はCDK4Iアミノ酸配列の天然対立遺伝子もしくは種類間変動をも包含す
る。これら変種は典型的には天然由来(naturally-occuring)アナログと同じ性質
の生物学活性を示すが、これらはさらに以下詳細に説明するようにCDK4Iの
特性を改変すべく選択することもできる。
アミノ酸配列変化を導入する部位を予備決定することもできるが、突然変異自
体は予備決定する必要がない。たとえば所定部位における突然変異の性能を最適
化させるには、ランダム突然変異を標的コドンもしくは領域に指向させ、発現し
たCDK4I変種を所望活性の最適な組合せについてスクリーニングすることが
できる。既知配列を有するDNA中の特定部位において置換突然変異を行う技術
は、たとえばM13プライマー突然変異のように周知である。アミノ酸置換は典
型的には1つの残基であり、挿入は一般に約1〜10アミノ酸残基の程度であり
、さらに欠失は一般に約1〜30残基の範囲である。欠失もしくは挿入は好まし
くは隣接する対で行われ、すなわち2残基の欠失または2残基の挿入である。置
換、欠失、挿入またはその任意の組合せを併用して、最終構築物(コンストラク
ション)に到達することができる。明かに、変種CDK4IをコードするDNA
で行われる突然変異は配列をオープンリーディングフレームから外してはならな
い(配列番号1〜2参照)。
置換変種は、配列番号2における少なくとも1個の残基を除去されると共に異
なる残基がその位置に挿入されたものである。これらは、配列内のグリコシル化
部位を除去し、pHを変化させ、タンパク質の安定性を増大させ、或いはタンパ
ク質における他の所望の改変を行うためにすることができ、これら改変は当業者
に明かである。たとえばCDK4Iの酸化安定性は、システイン残基または他の
不安定残基の欠失により達成することができる。有力なタンパク質分解部位の欠
失もしくは置換も、この種の残基の欠失またはグルタミニルもしくはヒスチジル
残基の置換によって達成することができる。
CDK4Iの挿入アミノ酸配列変種は、アミノ酸残基の1個もしくはそれ以上
が標的リセプタにおける所定部位に導入されたものである。最も一般的には、変
化させるべきタンパク質のアミノもしくはカルボキシル末端に対する異型タンパ
ク質もしくはポリペプチドの融合体である。たとえば免疫原性CDK4I誘導体
は、免疫原性ポリペプチドを標的配列にインビトロ架橋により或いは融合をコー
ドするDNAで形質転換された組換細胞培養物により融合させて作製することが
できる。この種の免疫原性ポリペプチドは好ましくはたとえばtrpLE、β−
ガラクトシダーゼなどの細菌ポリペプチドであり、その免疫原性断片をも含む。
本発明のCDK4Iはさらにアミノ酸配列突然変異体、グリコシル化変種、並
びに他の化学的成分との共有もしくは凝集結合体を包含する。CDK4Iの共有
誘導体は、リセプタのアミノ酸側鎖に存在する或いはNもしくはC−末端におけ
る各基に当業界で知られた手段により官能基を結合させて作製することもできる
。これら誘導体はたとえばカルボキシル末端もしくはカルボキシル側鎖を有する
残基の脂肪族エステルもしくはアミド、ヒドロキシル基含有残基のO−アシル誘
導体およびアミノ末端アミノ酸もしくはアミノ基含有残基のN−アシル誘導体、
たとえばリジンもしくはアルギニンを包含する。
他の誘導体の群はCDK4IおよびCDK4I断片と他のタンパク質もしくは
ポリペプチドとの共有結合体である。これら誘導体は組換え培養における当業者
によりNもしくはC−末端融合体として、或いは反応性側鎖基を介して不溶性マ
トリックスに対しタンパク質を架橋させる際に使用するとしてそれ自体知られて
いる機能障害剤を用いて合成することができる。共有もしくは凝集誘導体は免疫
原、免疫アッセイにおける試薬として或いはCDK4Iの親和性精製につき有用
である。たとえば公知方法により臭化シアノゲン活性化「セファロース」(アガ
ロースの商標)に対する共有結合によって、或いはポリオレフィン表面への吸着
によって不溶化されたCDK4Iを、抗CDK4I抗体もしくはCDK4Iリガ
ンドのアッセイもしくは精製に使用することができる。
配列番号1〜2を参照して、CDK4Iタンパク質およびペプチドは、α−ア
ミノ基のt−BOCもしくはFMOC保護のような一般的に使用される方法によ
り同定および合成することができる。これら両方法は、ペプチドのC−末端から
出発して、1つのアミノ酸を各工程で添加する段階的合成を含む[コリガン(Col
igan)等、Current Protocols in Immunology、ウィリー・インターサイエンス(
1991)、ユニット9参照]。本発明のペプチドは各種の周知された固相ペ
プチド合成法、たとえばメリーフィールド(Merrifield)[J.Am.Cehm.Soc.、第8
5巻、第2149頁(1962)]、並びにスチュアート(Stewart)およびヤン
グ(Young)[Solid Phase Pepetides Synthesis、フリーマン、サンフランシスコ
(1969)、第27〜62頁]に記載されたように合成することができ、これ
は、0.1〜1.0mMolのアミン/gポリマーを含有するコポリ(スチレン
−ジビニルベンゼン)を用いる。化学合成が完了した後、ペプチドを保護解除し
、液体HF−10%アニソールで0℃にて約1/4〜1時間にわたり処理してポ
リマーから切除することができる。試薬を蒸発させた後、ペプチドを1%酢酸溶
液によりポリマーから抽出し、次いでこれを凍結乾燥して粗製物質を得る。一般
に、これは「セファデックスG−15」もしくは「セファロース」親和性カラム
でのゲル濾過のような技術で精製することができる。カラムにおける適するフラ
クションの凍結乾燥は均質なペプチドもしくはペプチド誘導体をもたらし、次い
でこれをたとえばアミノ酸分析、薄層クロマトグラフィー、高性能液体クロマト
グラフィー、紫外線吸収分光測定、分子旋光度、溶解性のような標準技術により
特性化することができ、固相エドマン分解により定量することができる。
CDK4Iを含む組成物はたとえば下記する安定剤および賦形剤のような物質
、CDK4I遺伝子の供給源として作用する細胞もしくは生物からの予定量のタ
ンパク質、CDK4I供給源細胞もしくは生物以外からのタンパク質、並びにた
とえばポリ−L−リジンのような合成ポリペプチドなどを含むことができる。勿
論、異種異型宿主で発現される組換えCDK4Iは、遺伝子供給源タンパク質を
完全に全く含まずに発現される。たとえばチャイニーズハムスター卵巣(CHO
)細胞または他の非ヒト高等哺乳動物細胞におけるヒトCDK4Iの発現は、リ
セプタが汚染物質およびヒトタンパク質を含まない組成物をもたらす。
VI. CDK4I DNA配列および発現産物
さらに本発明は、CDK4Iをコードするポリヌクレオチドをも提供する。こ
こで用いる「ポリヌクレオチド」とは、独立した断片の形態で或いは大型の構築
物の成分として、一本鎖(センス鎖およびアンチセンス鎖を包含する)および二
本鎖の両者でのデオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドのポリマー
を意味する。本発明のペプチドをコードするDNAは、cDNA断片からまたは
、組換え転写ユニット中で発現することができる合成遺伝子を提供するオリゴヌ
クレオチドから組立てることができる。本発明のポリヌクレオチド配列はゲノム
DNA、RNAおよびcDNAの各配列を包含する。ポリヌクレオチド配列は遺
伝子コードから推定しうるが、コードの縮退を考慮せねばならない。本発明のポ
リヌクレオチドは、遺伝子コードの結果として縮退する配列を包含する。
以下詳細に説明するように、CDK4Iをコードするポリヌクレオチド配列は
原核生物もしくは真核生物のいずれかで発現させることができる。宿主は微生物
酵母、昆虫および哺乳動物の各生物を包含する。原核生物における真核性もしく
はウィルス性配列を有するDNA配列の発現方法は当業界で周知である。宿主に
て発現および複製しうる生物学上機能的なウィルス性およびプラスミドDNAベ
クターも当業界にて公知である。この種のベクター(すなわち「組換え発現ベク
ター」)を用いて本発明のDNA配列を組み込む。さらに、これら配列は「宿主
細胞」(すなわち、たとえばCHO細胞およびCOS細胞(たとえばATCC受
託番号CRL 1651))のような遺伝子発現に使用する形質転換(トランス
フォーム)細胞にも含まれる。
CDK4IをコードするDNAは、(a)哺乳動物組織からDNAライブラリ
を得、(b)ヒト成長ホルモンリセプタをコードする標識DNAおよびその結合
タンパク質もしくはその断片(一般に100bpより大)を用いてハイブリダイ
ゼーション分析を行い、相同配列を含むcDNAライブラリ中のクローンを検出
し、次いで(c)これらクローンを制限酵素分析および核酸配列決定により分析
して全長クローンを同定することによって、ヒト以外の供給源から得られる。全
長クローンがライブラリに存在しなければ、適する断片を各種のクローンから回
収し、クローンに共通の制限部位で連結させて全長クローンを組立て得る。
CDK4IをコードするDNAは、化学合成により或いは胎盤細胞もしくは細
胞株培養物からのmRNAの逆転写物をスクリーニングすることにより或いは任
意の細胞からのゲノムライブラリをスクリーニングすることにより得られる。さ
らにCDK4Iをコードしないが低厳密度条件下でCDK4IをコードするDN
Aとハイブリダイズすることができる核酸(たとえば「プライマー」もしくは「
プローブ」)も本発明の範囲に包含される。本発明のプローブおよびプライマー
は一般にオリゴヌクレオチドであり、すなわち、化学合成されうる一本鎖ポリデ
オキシヌクレオチドまたは、2本の相補的ポリデオキシヌクレオチド鎖である。
この種の合成オリゴヌクレオチドは5′ホスフェートを持たず、したがってホス
フェートをキナーゼの存在下でATPと共に添加しなければ他のオリゴヌクレオ
チドに連結しない。合成オリゴヌクレオチドは脱リン酸化されていない断片に連
結する。この種のオリゴヌクレオチドはたとえば蛍光性基、放射性原子または化
学発光性基のような検出可能な物質を用いて公知方法で検出可能に標識して慣用
のハイブリダイゼーションアッセイに使用することができる。この種のアッセイ
は、たとえば組織試料中のCDK4I DNAもしくはmRNAの検出のような
インビトロ診断で使用される。
一般に、CDK4Iを発言する組換え発現ベクターを構築する際に、DNA配
列をクローン化するには原核生物が使用される。たとえば大腸菌K12菌株29
4(ATCC受託番号31446)が特に有用である。さらに発現には原核生物
も使用される。上記菌株、並びに大腸菌W3110(ATCC受託番号2732
5)、たとえばBacillus subtilus のようなバチルス属および、たとえばSalmon
ella typhimuriumもしくはSeratia marcescansのような他の腸内細菌科、並びに
各種のpseudomonas 種も発現に用いることができる。
一般に本発明に使用しうるプラスミドベクターは、宿主細胞に対し適合しうる
生物種類から得られるプロモータおよび制御配列を含む。一般にベクターは複製
部位、並びにトランスフォームされた細胞にて表現型選択を行うことができるマ
ーカー配列を有する。たとえば大腸菌は典型的にはpBR322、すなわち大腸
菌種から得られるプラスミド[ボリバー(Bolivar)等、Gene、第2巻、第95頁
(1977)]を用いてトランスフォームされる。pBR322はアンピシリン
およびテトラサイクリンの耐性遺伝子を有し、したがってトランスフォームされ
た細胞を同定するための容易な手段を提供する。pBR322プラスミドまたは
他の微生物プラスミドも、組換えDNA構築に一般的に使用されるプロモータお
よび他の制御要素を含有せねばならず或いは含有するよう改変せねばならない。
例示すれば原核性宿主と共に使用するのに適したプロモータには、β−ラクタ
マーゼおよびラクトースプロモータシステム[チャング(Chang)等、Nature、第
275巻、第615頁(1978);およびゲデル(Goeddel)等、Nature、第2
81巻、第544頁(1979)]、アルカリホスファターゼ、トリプトファン
(trp)プロモータ系[ゲデル、Nucleic Acids Res.、第8巻、第4057頁
(1980)]および、たとえばtaqプロモータのようなハイブリッドプロモ
ータ[デボア(de Boer)等、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA.、第80巻、第21〜2
5頁(1983)]が含まれる。しかしながら、他の機能的細菌プロモータも適
している。そのヌクレオチド配列は一般に当業界にて公知であり、したがって当
業者はこれらを任意の必要な制限部位を供給するためのリンカーもしくはアダプ
タを用いて、CDK4IをコードするDNAに結合させることができる[シーベ
ンリスト(Siebenlist)等、Cell、第20巻、第269頁(1980)]。
原核性生物の他に、たとえば酵母培養物のような真核性微生物も使用すること
ができる。Saccharobyces cerebisiaeまたは一般的なパン酵母が最も一般的に使
用される真核性微生物であるが、多数の他の菌株も一般的に入手しうる。
酵母宿主と共に使用するのに適したプロモータ配列には、3−ホスホグリセレ
ートキナーゼのためのプロモータ[ヒッツェマン(Hitzeman)等、J.Biol.Chem.、
第255巻、第2073頁(1980)]または他のグリコール分解酵素[ヘェ
ス(Hess)等、J.Adv.Enzyme Reg.、第7巻、第149頁(1968);およびホ
ーランド(Holland)、Biochemistry、第17巻、第4900頁(1978)]で
あり、たとえばエノラーゼ、グリセロアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲ
ナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフラクトキナ
ーゼ、グルコース−6−ホスフェートイソメラーゼ、3−ホスホグリセレートム
ターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースホスフェートイソメラーゼ、ホスホグ
ルコースイソメラーゼおよびグルコキナーゼのプロモータが含まれる。
成長条件により制御される他の転写の利点をも有する誘発性プロモータである
他の酵母プロモータはアルコールデヒドロゲナーゼ2、イソチトクロームC、酸
ホスファターゼ、窒素代謝に関連する分解酵素(degraded enzyme)、メタロチオ
ニン、グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼおよびマルトー
スとガラクトースとの利用に寄与するプロモータ領域である。酵母エンハンサー
も酵母プロモータと共に有利に使用される。
「制御領域」とは、転写もしくは翻訳のいずれかの制御に関与しうる真核性遺
伝子の5′末端および3′末端における特定配列を意味する。ほぼ全ての真核性
遺伝子は、転写が開始する部位から約25〜35塩基の上流に位置するATリッ
チな領域を有する。多くの遺伝子の転写開始部から70〜80塩基上流に存在す
る他の配列はCCAAT領域であり、ここでXは任意のヌクレオチドとすること
ができる。大抵の真核性遺伝子における3′末端にはAATAAA配列が存在し
、これは転写mRNAの3′末端に対しポリAテールを付加するためのシグナル
となりうる。
哺乳動物宿主細胞にてベクターからの転写を制御する好適プロモータは各種の
供給源から得ることができ、これには、たとえばポリオーマ、シミアンウィルス
40(SV40)、アデノウィルス、レトロウィルス、B型肝炎ウィルスおよび
特に好ましくはサイトメガロウィルスのようなウィルスのゲノムであり、或いは
異種哺乳動物プロモータ、たとえばβアクチンプロモータ由来のものがある。S
V40ウィルスの早期および後期プロモータは、都合上、SV40ウィルスの複
製起源をも有するSV40制限断片として得られる[ファイエルス(Fiers)等、N
ature、第273巻、第113頁(1978)]。ヒトサイトメガロウィルスの
早期プロモータは便利にはHindIII E制限断片として得られる[グリー
ンアウェイ(Greenaway)等、Gene、第18巻、第355〜360頁(1982)
]。宿主細胞もしくは関連生物からのプロモータもここでは有用である。
高等真核生物によるCDK4IをコードするDNAの転写は、エンハンサー配
列をベクター中に挿入することにより増大される。エンハンサーはDNAのci
s−作用性エレメントであり、これは一般に約10〜300pbであって、転写
を増大させるようプロモータに作用する。エンハンサーは比較的、方向および一
非依存性であって、転写ユニットに対し5′[レイミンス(leimins)等、Proc.Na
tl.Acad.Sci.,USA.、第78巻、第993頁(1981)]および3′[ラスキ
ー(Lusky)等、Mol.Cell Bio.、第3巻、第1108頁(1983)]、並びに
イントロン内[バネルジー(Banarji)等、Cell、第33巻、第729頁(198
3)]、さらにコード化配列自身の内部[オスボーン(Osborne)等、Mol.Cell B
io.、第4巻、第1293頁(1984)]に位置することが判明した。多くの
エンハンサー配列が哺乳動物遺伝子から知られている(グロビン、エラスターゼ
、アルブミン、α−フェト−タンパク質およびインシュリン)。しかしながら、
典型的には真核細胞ウィルスからのエンハンサーが使用される。その例には、複
製起源の後期側におけるSV40エンハンサー(bp100〜270)、サイト
メガロウィルス早期プロモータエンハンサー、複製起源の後期側におけるポリオ
ーマエンハンサーおよびアデノウィルスエンハンサーが含まれる。
真核性宿主細胞(酵母、真菌類、昆虫、植物、動物、ヒトまたは他の多細胞生
物からの核形成細胞)に使用される発現ベクターは、mRNA発現に影響を与え
うる転写の停止に必要な配列をも有する。さらに発現ベクターは選択可能マーカ
ーとも呼ばれる選択遺伝子をも含有することができる。当業界で知られた哺乳動
物細胞のための適する選択マーカーの例には、ジヒドロフォレートレダクターゼ
(DHFR)、チミジンキナーゼまたはネオマイシンが含まれる。この種の選択
マーカーが哺乳動物宿主細胞に首尾よく移行すれば、トランスフォームされた哺
乳動物宿主細胞は選択圧力下に置かれると生存することができる(すなわち薬物
耐性または宿主細胞の栄養要求を変化させる遺伝子が付与されることによる)。
高等真核生物にてCDK4Iをコードする本発明のベクターのトランスフォー
メーションおよび発現に適する宿主細胞には次のものが含まれる:SV40によ
りトランスフォームされたサル腎CVI株(ATCC CRL 1651);ヒ
ト胚腎株[F.L.グラハム(Graham)等、J.Gen Viro.、第36巻、第59頁(
1977);ベビーハムスター腎細胞(ATCC CCL 10);チャイニー
ズハムスター卵巣細胞−DHFR[ウルラウブ(Urlaub)およびチャシン(chasin)
、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA.、第77巻、第4216頁(1980)];マウス
セルトリ細胞[J.P.マザー(Mather)、Biol.Reprod.、第23巻、第243〜
251頁(1980)];サル腎細胞(ATCC CCL 70):アフリカ
ミドリザル腎細胞(ATCC CRL−1587);ヒト頚部癌細胞(ATCC
CCL 2);イヌ腎細胞(ATCC CCL 34);バッファロー・ラッ
ト肝細胞(ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(ATCC CCL 7
5);ヒト肝細胞(HB 8065);マウス乳腫瘍(ATCC CCL 51
);
およびTRI細胞[マザー等、Annals N.Y.Acad.Sci.、第383巻、第44〜6
8頁(1982)]。
「トランスフォーメーション(形質転換)」とは、DNAを生物に導入してD
NAが染色体外の要素として或いは染色体移入(インテグレーション)により複
製可能にすることを意味し、たとえばグラハム(Graham)等、Virology、第52巻
、第456〜457頁(1973)に記載されている。しかしながら、たとえば
核注入により或いはプロトプラスト融合によりDNAを細胞中へ導入する他の方
法も使用することができる。原核細胞または実質的な細胞壁構造を有する細胞を
使用する場合は、たとえばF.N.コーヘン(Cohen)等[Proc.Natl.Acad.Sci.,U
SA.、第69巻、第2110頁(1972)]により記載されたように、塩化カ
ルシウムを用いるカルシウム処理のような当業界で周知の手段によりトランスフ
ェクションを達成することができる。宿主細胞をトランスフォームさせる特に便
利な方法は、たとえばリポソーム物質またはDOTMA[ベセスダ・リサーチ・
ラボラトリース、ガイサースベルグ、MDの登録商標製品である]を用いるリポ
フェクションである。
「トランスフェクション」とは、コード化配列が実際に発現されてもされなく
ても、宿主細胞による発現ベクターの取り込みを意味する。トランスフェクショ
ンの多くの方法が当業者に知られ、たとえばCaPO4もしくはエレクトロポレ
ーションを用いる。有利なトランスフェクションは一般に、トランスフェクトさ
れたベクターの操作の指標が宿主細胞内で生ずる場合に認められる。
所望のコード化配列と制御配列とを含む好適なベクターの構築は標準的な連結
(ライゲーション)技術を用いる。単離されたプラスミドもしくはDNA断片を
切断し、処理し、次いで所要のプラスミドを形成するよう所望された形態まで再
連結させる。
たとえば、構築されるプラスミド中の正確な配列を確認する分析については、
連結混合物を用いて宿主細胞をトランスフォームさせ、成功したトランスフォー
マント(トランスフォームしたもの)を必要に応じアンピシリン耐性もしくはテ
トラサイクリン耐性により選択することができる。トランスフォーマントからの
プラスミドを調製し、たとえばメッシング(Mssing)等の方法[Nucleic Acids Re
s.、第9巻、第309頁(1981)]、マキシム(Maxam)等の方法[Methods i
n Enzymology、第65巻、第499頁(1980)]または当業者に知られる他
の適する方法によって調製し、制限により分析し、かつ/または配列決定する。
切断された断片のサイズ分離は、たとえばマニアチス(Maniatis)等により記載さ
れたような慣用のゲル電気泳動[Molecular Cloning、第133〜134頁(1
982)]を用いて行われる。
宿主細胞は本発明の発現ベクターでトランスフォームすることができ、必要に
応じ改変された慣用の栄養培地で培養してプロモータを誘発させ、トランスフォ
ーマントを選択し或いは遺伝子を増幅させることができる。たとえば温度、pH
などの培養条件は、発現につき選択される宿主細胞と共に従来使用されているも
のであり、当業者には明かである。
配列番号1〜2を参照し、上記技術によるポリヌクレオチドの生成は当業者の
知識の範囲内である。したがって本発明は、この種の技術により得られるCDK
41ポリヌクレオチドを包含する。
VII. CDK4I抗体
さらに本発明は、CDK4Iに特異的に結合するポリクローナル抗体およびモ
ノクローナル抗体をも包含する。この種の抗体は、CDK4I(その抗原性断片
および融合タンパク質を包含する)(以下、これを「免疫原性CDK4I」と称
する)の免疫化によって生物学的に産生させることができる。
動物を免疫原性CDK4Iで免疫処理する際に使用するには多段注入免疫化法
が好適である[たとえばランゴーン(Langone)等編、「少量の免疫原による抗血
清の産生:多段皮膚内注射」、Methods of Enzymology、アカデミック・プレス
(1981)参照]。たとえば、完全フロイントアジュバントに乳化された1m
gの免疫原性CDK4Iを皮膚内注射してから数週間後に不完全フロイントアジ
ュバントにおける同じ抗原を1回以上ブーストして、良好な抗体反応をウサギで
得ることができる。
所望するならば、免疫原性CDK4I分子を当業界で周知の技術を用いる結合
によりキャリヤタンパク質にカップリングさせることができる。分子に化学的に
カップリングされるこのような一般的に使用されるキャリヤはキーホールリンペ
ットヘモシアニン(KLH)、サイログロブリン、牛血清アルブミン(BSA)
および破傷風毒素を包含する。次いで、結合した分子を用いて動物(たとえばマ
ウスもしくはウサギ)を免疫処理する。
免疫処理された動物により産生されるポリクローナル抗体を、たとえば抗体を
生じさせるペプチドが結合されたマトリックスに結合して、溶出させることによ
り、さらに精製することができる。当業者はポリクローナル抗体およびモノクロ
ーナル抗体の精製および/または濃縮に関する免疫技術に共通の各種の技術を周
知している[たとえばコリガン(Coligan)等、Current Protocols in Immunology
、ユニット9、ウィリー・インターサイエンス(1991)参照]。
特異性および産生容易性のため、分析物試料(たとえば組織試料および細胞株
)にてCDK4Iを検出する際に使用するにはモノクローナル抗体が好適である
。モノクローナル抗体の作製には、マウスもしくはラットの免疫処理が好適であ
る。本発明で用いる「抗体」という用語は、たとえばFabおよびF(ab′)2
のようなエピトープ決定基を結合することができる無傷な(intact)分
子およびその断片を包含する。さらに、この意味で「本発明のmAb′」という
表現はCDK4Iに対する特異性を持ったモノクローナル抗体を意味する。
モノクローナル抗体(「mAb′」)を分泌するハイブリドーマの作製につき
使用される一般的方法は周知である[コーラーおよびミルスタイン、Nature、第
256巻、第495頁(1975)]。要するに、コーラーおよびミルスタイン
により記載されたように、この技術は黒色腫、奇形癌または頚部、グリオーマも
しくは肺の癌を有する5人の別々の癌患者における局部排液リンパ節からリンパ
球を単離することからなっている。リンパ球は外科試料から得られ、収集し、次
いでSHFP−1と融合させた。ハイブリドーマを、癌細胞株に結合した抗体の
産生につきスクリーニングした。同等な技術を用いてCDK4Iに対し特異性を
持ったmAbを産生および同定することができる。
本発明のmAbにおけるCDK4I特異性の確認は、対象となるmAbの基本
的反応パターンを決定するための比較的日常的なスクリーニング技術(たとえば
酵素結合免疫収着アッセイ、すなわち「ELISA」)を用いて行うことができ
る。
さらにmAbを評価して、無用な実験をすることなく、試験されているmAb
が、本発明のmAbがCDK4Iに対して結合することを妨げるかどうかを決定
することにより、本発明のmAbと同じ特異性を有するかどうかを判定すること
も可能である。試験されているmAbが本発明のmAbに対し競合すれば、これ
は本発明のmAbによる結合の低下によって示されるが、2種のモノクローナル
抗体は同一もしくはかなり関連したエピトープに結合すると思われる。
mAbが本発明のmAbの特異性を有するかどうかを判定する他の方法は、本
発明のmAbを、一般に反応性である抗原と共にプレインキュベートし、試験さ
れているmAbが、この抗原を結合する能力について阻害されるかどうかを判定
することである。試験されているmAbが阻害されれば、恐らくこれは本発明の
mAbと同じ或いはかなり関連したのエピトープ特異性を有する。以下説明する
ようにこの同じ一般的技術を、有力なCDK4Iリガンドをスクリーニングする
ため使用することもできる。
当業界で既知の方法は、所定のリガンドを特異的に結合する抗体を同定し、抗
体発現ライブラリから単離することを可能にする。たとえば、本発明のペプチド
に対する結合を示す抗体結合性ドメインの同定および単離の方法はバクテリオフ
ァージγベクター系である。このベクター系は、大腸菌におけるマウス抗体レパ
ートリー[ヒユース(Huse)等、Science、第246巻、第1275〜1281頁
(1989)]から、およびヒト抗体レパートリー[ムリナックス(Mullinax)等
、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA.、第87巻、第8095〜8099頁(1990)
]からFab断片の組合せライブラリを発現すべく使用されている。ここに説明
したように、所定のリガンドを結合した抗体をこれら抗体発現ライブラリから同
定し、単離した。この方法は、所定リガンドに結合するモノクローナル抗体を発
現するハイブリドーマ細胞株にも適用することができる。
さらに本発明は、上記CDK4I特異的抗体またはその生物学上活性な断片の
キメラ抗体をも提供する。ここで用いる「キメラ抗体」という用語は、1種類の
生物から得られた抗体の可変領域を他の生物から得られた抗体の定常領域と組合
せた抗体を意味し、或いはCDRグラフト化抗体を意味する。キメラ抗体は組換
えDNA技術により構築され、たとえばショー(Shaw)等、J.Immun.、第138巻
、第4534頁(1987)およびL.K.サン(Sun)等、Proc.Natl.Acad.Sci.
,USA.、第84巻、第214〜218頁(1987)に記載されている。
さらに「ヒト適合化」抗体の種々の組合せを有するキメラ抗体分子を産生させ
る方法は当業界で公知であり、マウス可変領域とヒト定常領域との組合せ[キャ
ビリー(Cabily)等、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA.、第81巻、第3273頁(19
84)]またはヒトフレームワークに対するマウス−抗体相補性決定領域(CD
R)のグラフト化[リーチマン(Riechmann)等、Nature、第322巻、第323
頁(1988)]を包含する。
上記抗体またはその生物学上活性な抗体断片を用いて、CDRグラフト化抗体
およびキメラ抗体を創製することができる。「CDR」または「相補性決定領域
」もしくは「超可変域」はそれぞれ、抗原結合性部位の形成に寄与する三次元の
ループ構造を形成する抗体の軽鎖および重鎖におけるアミノ酸配列として規定さ
れる。
ここで用いる「CDRグラフト化」抗体という用語は、軽ドメインおよび/ま
たは可変ドメインにおける1つ以上のCDR配列の少なくとも1部が、所定の抗
原もしくはリセプタに対して異なる結合特異性を有する抗体からのCDR配列の
アナログ部分により置換されているアミノ酸配列を持った抗体を意味する。
「軽鎖可変領域」および「重鎖可変領域」という用語は、各抗体の変化した一
次アミノ酸配列を有するそれぞれ軽鎖および重鎖のN−末端部分の領域もしくは
ドメインを意味する。抗体の可変領域は軽鎖および重鎖のアミノ末端ドメインで
構成される。何故なら、これらは互いに折り畳まれて、抗体に対する三次元結合
部位を形成するからである。
アナログのCDR配列は、基質またはレシピエント抗体に「グラフト化」する
と言われる。「ドナー」抗体はCDR配列を与える抗体であり、置換配列を受け
入れる抗体は「基質」抗体である。当業者は、ここに示した教示を当業界で周知
の方法[ボレベック(Borrebaeck)、Antibody Engineering:A Practical Giode、
W.H.フリーマン・アンド・カンパニー、ニューヨー(1992)参照]と組
み合わせて、これらCDRグラフト化抗体を容易に産生させることができる。
或る種の状況下で、あるアイソタイプのモノクローナル抗体はその診断もしく
は治療効果の意味で他のアイソタイプの抗体よりも好適である。たとえば、抗体
介在の細胞分解に関する研究から知られるように、アイソタイプγ−2aおよび
γ−3の未改変マウス モノクローナル抗体は一般に標的細胞の溶解に際しγ−
1アイソタイプの抗体よりも効果的である。この異なる効果は、γ−2αおよび
γ−3アイソタイプが標的細胞の細胞破壊に一層活発に関与した能力に基づくと
思われる。異なるアイソタイプのモノクローナル抗体における特定アイソタイプ
は、クラススイッチ変種を単離するsib選択技術を用いて単離される[ステッ
プレウスキー(Steplewski)等、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA.、第82巻、第865
3頁(1985);スピラ(Spira)等、J.Immunol.Methods、第74巻、第307
頁(1984)]。
さらに本発明は、本発明のモノクローナル抗体を産生する細胞株をも包含する
。本発明のモノクローナル抗体を産生する細胞株の単離は、対象となるモノクロ
ーナル抗体の基本的反応パターンの決定を可能にする日常のスクリーニング技術
によって行うことができる。すなわち、試験されているモノクローナル抗体が特
定ペプチドに結合してそれに関連する活性を中和し、たとえばCDK4Iを結合
して、CDK4I介在の生物学的活性をブロックすれば、試験されているモノク
ローナル抗体および本発明の細胞株により産生されるモノクローナル抗体は等価
である。
本発明のモノクローナル抗体を使用することにより、モノクローナル抗体をス
クリーニングして抗体が本発明のモノクローナル抗体と同じ結合特異性を有する
かどうかを同定するため使用しうる抗イディオタイプ抗体を産生させることがで
きる。これら抗体は免疫処理の目的にも使用することができる[ハーリン(Herly
n)等、Science、第232巻、第100頁(1986)]。この種の抗イディオ
タイプ抗体は、周知のハイブリドーマ技術を用いて産生させることができる[コ
ーラーおよびミルスタイン、Nature、第256巻、第495頁(1975)]。
抗イディオタイプ抗体は、対象となる細胞株により産生されたモノクローナル
抗体に存在する独特の決定基を認識する抗体である。これら決定基は、抗体の超
可変領域に存在する。所定のエピトープに結合し、したがって抗体の特異性をも
たらしうるのはこの領域(パラトープ)である。抗イディオタイプ抗体は、動物
を対象となるモノクローナル抗体で免疫処理して作製することができる。免疫処
理された動物は免疫処理用抗体のイディオタイプ決定基を認識して反応し、これ
らイディオタイプ決定基に対する抗体を産生する。第2の動物を免疫処理するた
めに使用された細胞株により産生された、本発明のモノクローナル抗体に対し特
異的である免疫処理動物の抗イディオタイプ抗体を使用することにより、免疫処
理に使用されたハイブリドーマの抗体と同じイディオタイプを持った他のクロー
ンを同定することが今や可能である。2種の細胞株におけるモノクローナル抗体
間のイディオタイプ同一性は、2種のモノクローナル抗体が同じエピトープ決定
基の認識に関し同一であることを示す。たとえば抗イディオタイプ抗体を使用す
ることにより、同じエピトープ特異性を持ったモノクローナル抗体を発現する他
のハイブリドーマを同定することができる。
さらに、抗イディオタイプ技術を用いてエピトープを模倣(mimic)するモノク
ローナル抗体を産生させることも可能である。たとえば、一次モノクローナル抗
体に対して作製された抗イディオタイプモノクローナル抗体は、一次モノクロー
ナル抗体により結合されたエピトープの「イメージ」である超可変域における結
合ドメインを有する。かくして抗イディオタイプモノクローナル抗体は、その結
合性ドメインが抗原として効果的に作用するので、免疫処理につき使用すること
ができる。VIII. 抗CDK4I抗体の免疫学的使用
上記のように産生された後、抗CDK4I抗体を診断に使用することができる
(たとえば生物学的細胞試料におけるCDK4Iを検出するため、或いはその発
現レベルをモニタするため)。好ましくは前癌性体細胞におけるCDK4Iタン
パク質を検出するには、適する細胞試料を皮膚バイオプシー、啖試料または尿試
料から得る。生殖系細胞はたとえば皮膚、血液もしくは毛髪小胞のような任意便
利な供給源から得ることができる。
CDK4Iは液相もしくは固相の免疫アッセイ方式(キャリヤに結合させた場
合)にて抗CDK4I抗体を用いて検出しおよび/または結合させることができ
る。固相アッセイ方式の使用に周知なキャリヤの例には、ガラス、ポリスチレン
、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然
および改質セルロース、ポリアクリルアミド、アガロースおよびマグネタイトが
含まれる。キャリヤの性質は、本発明の目的には可溶性でも不溶性でも良い。当
業者は抗体を結合させるための他の適するキャリヤを既に知っており、或いは日
常の実験を用いて確認することもできる。本発明のモノクローナル抗体を用いう
る種類の免疫アッセイの例は、直接的もしくは間接的方式における競合性および
非競合性の免疫アッセイである。
この種の免疫アッセイの特定例は放射性免疫アッセイ(RIA)およびサンド
イッチ(免疫測定)分析である。本発明の抗CDK4I抗体を用いるCDK4I
の結合は、生理学的試料に対する免疫組織化学分析を含む順、逆もしくは同時モ
ードで行われる免疫アッセイを用いて行うことができる。当業者は、不用な実験
を行うことなく、他の免疫アッセイ方式を容易に知ることができる。
本発明の抗CDK4I抗体はさらに検出可能に標識することもできる。当業者
に知られた多くの異なる標識および標識方法が存在する。本発明に使用しうる種
類の標識の例は酵素、放射性同位元素、蛍光性化合物、コロイド金属、化学発光
性化合物および生物発光性化合物を包含する。当業者は、本発明の抗CDK4I
抗体に結合させるための他の適する標識を既に知っており、或いは日常の実験を
用いて確認することができる。さらに、本発明の抗CDK4I抗体に対するこれ
ら標識の結合は、当業者に一般的な標準技術を用いて行うことができる。一層高
い感度をもたらしうる他の標識技術は、抗体を低分子量ハプテンに結合させるこ
とよりなっている。次いで、これらのハプテンを二次反応法により特異的に検出
することができる。たとえば、この目的にはアビジンと反応するビオチンのよう
なハプテンを使用するのが一般的である。
本発明の抗CDK4I抗体は、たとえば感染もしくは炎症の部位を同定し或い
は特定の療法をモニタするようなインビボ診断に使用することもできる。本発明
のペプチドを有する抗原のインビボ検出に本発明の抗CDK4I抗体を使用する
場合、検出可能に標識されたモノクローナル抗体を診断上有効な投与量で与える
。「診断上有効」という用語は、検出可能に標識された抗CDK4I抗体の量が
C
DK4Iを発現する細胞を有する部位の検出を可能にするのに充分な量で投与さ
れることを意味する。
投与される検出可能に標識された抗CDK4I抗体の濃度は、本発明のペプチ
ドに対する結合をバックグランドと比較して検出しうるのに充分とすべきである
。さらに、検出可能に標識された抗体は最良の標的とバックグランドとのシグナ
ル比を与えるには循環系から急速に除去されることが望ましい。
一般に、インビボ診断につき検出可能に標識された抗CDK4I抗体の投与量
はたとえば個人の年令、性別および病気の程度のような因子に応じて変化する。
抗体の投与量は約0.01〜約500mg/m2、好ましくは0.1〜約200
mg/m2、特に好ましくは約0.1〜約10g/m2の範囲で変化することがで
きる。この種の投与量は、たとえば複数回の注射を行うかどうか或いは組織およ
び当業者に知られた他の因子に応じて変化することができる。
インビボ診断画像形成には、入手可能な検出機器のタイプが所定の放射性同位
元素を選択する際の主たる因子である。選択される放射性同位元素は、所定種類
の機器につき検出可能である減衰のタイプを持たねばならない。インビボ診断に
つき放射性同位元素を選択する際の他の重要な因子は、放射性同位元素の半減期
が、標的による取り込みが最大となるときにまだ検出可能であるよう充分長くす
ると共に、宿主に対する有害な照射が最小となるよう充分短くすることである。
理想的には、インビボ画像形成につき使用される放射性同位元素は、粒子放出を
欠如するが140〜250keV範囲にて多数のフォトンを発生するものであり
、これは慣用のγカメラにより容易に検出することができる。
本発明の抗CDK4I抗体は、病気治療の経過をモニタすべくインビトロおよ
びインビボにて使用することができる。たとえば、本発明のCDK4Iタンパク
質およびペプチド断片を生物学的体液および組織で診断的に使用して下記するよ
うに治療的に使用した抗CDK4I抗体の運命をモニタすることができる。
IX. CDK4Iの治療的使用
A. 医薬組成物の投与
CDK4Iのための遺伝子の欠失またはその多型性に関する癌はCDK4Iの
阻害活性の喪失または低下を原因とするので、治療上有効量のCDK4Iの投与
はこの種の癌の進行もしくは発生をさらに妨げないとしても遅延させる。さらに
、多くのCDK4I遺伝子の欠失および多型性はMTAse産生能を遺伝的に欠
如した細胞に存在するので、治療上有効量のCDK4IおよびMTAseの両者
を患者に与えるよう指示される合併療法もこの種の癌の進行もしくは発生を、予
防していなくても、遅延するのに有利である。
これら目的は精製、合成もしくは組換えCDK4Iおよび、適当ならばMTA
seの直接的投与を介して行い得る。或いは、これら目的は遺伝子療法、特に遺
伝子置換療法により達成することができる。
精製、合成もしくは組換えCDK4Iおよび/またはMTAseの生成手段は
、この開示(すなわち配列番号1〜5および14;図2(a〜b)も参照。(C
DK4I遺伝子に関するゲノムヌクレオチド配列を示し、エクソンには下線を施
し、さらに図10はMTAse遺伝子のゲノムヌクレオチド配列を示し、エクソ
ンには下線を施す)に示されたCDK4IおよびMTAseに関する情報と組合
せて当業者に知られ、或いは容易に確認することができる。
CDK4I組成物は、所望程度の純度を有するCDK4Iを生物学上許容しう
るキャリヤと混合することにより、投与用に調製される。この種のキャリヤは、
用いる投与量および濃度においてレシピエントに対し無毒である。通常、この種
の組成物の調製は特定タンパク質を緩衝剤、たとえばアスコルビン酸のような酸
化防止剤、低分子量(約10残基未満)のポリペプチド、タンパク質、アミノ酸
、グルコースもしくはデキストリンを含む炭水化物、たとえばEDTAのような
キレート化剤、グルタチオン、並びに他の安定剤および賦形薬と組合せることを
含む。この種の組成物は凍結乾燥することもでき、医薬上許容しうるものである
。すなわち好適に調製され、所望用途に使用すべく承認することができる。
CDK4Iが悪性もしくは前癌性細胞に存在しない或いは効率が低下している
ものであれば、この状態を有する細胞が本発明のCDK4I組成物の導入に好適
な標的である。しかしながら処理すべきCDK4I異常性が他の検出可能な悪性
徴候を持たない生殖系細胞もしくは体細胞に存在する場合は、投与を任意の経腸
もしくは非経口ルートにより行うことができ、その投与量は患者の症状および達
成すべき治療目的に応じて臨床医により変化させることができる。
この点に関し、CDK4の「生物学的活性」という用語は、ヒト細胞の成長期
のサイクリンDおよび関連分子に対するCDK4の結合から生ずる酵素反応を意
味する。さらに、CDK4Iの「生物学的活性」とは、CDK4IがCDK4に
結合することから生ずるCDK4の生物学的活性の阻害をも意味する。
したがって一般に、CDK4I組成物の「治療上有効量」は、CDK4Iが存
在しないか或いはその生物学的活性が低下した(その結果、たとえばCDK4I
のための遺伝子における多型性の)ヒト細胞におけるCDK4の生物学的活性を
阻害するのに充分な投与量である。この目的で、CDK4Iの投与量は、1日あ
たり1回もしくはそれ以上で1日間〜数日間にわたり、約0.1〜約300mg
/kg、好ましくは約0.2〜約200mg/kgの範囲で変えることができる
。
B. 遺伝子療法
本発明は、患者から単離された一次腫瘍および一次腫瘍から誘導された転移部
位につき独特であるCDK4Iの標的配列における突然変異を同定する。腫瘍細
胞にて、突然変異ヌクレオチド配列は正常細胞における発現と対比し、異なって
発現される。したがって、この特定配列に向けられる適する治療(並びに診断)
技術を設計することが可能である。たとえば細胞増殖障害が特定の突然変異腫瘍
抑圧遺伝子核酸配列の発現に関連すれば、転写もしくは翻訳レベルにて突然変異
遺伝子の特異的発現を阻害するヌクレオチド配列を使用することができる。たと
えば、この手法はアンチセンスオリゴヌクレオチドおよび/またはリボザイムを
用いて特定の突然変異mRNAの転写もしくは翻訳を阻止し、これはmRNAを
アンチセンス核酸でマスクし或いはリボザイムで切断して行われる。
アンチセンス核酸は、特定mRNA分子の少なくとも1部に対し相補性である
DNAもしくはRNA分子である[ワイントラウブ(Weintraub)、Scientific Am
erican、第262巻、第40頁(1990)]。現在まで、数種の腫瘍サプレッ
サ遺伝子およびオンコジーンが抑圧またはダウンレギュレーションを目標として
おり、これには、p53[V.S.プラソロフ(Prasolov)等、Mol.Biol.(Moscow
)、第22巻、第1105〜1112頁(1988);ras[S.K.アンダ
ーソン(Anderson)等、Mol.Immunol.、第26巻、第985〜991頁(198
9);D.ブラウン(Brown)等、Oncogene Res.、第4巻、第243〜249頁
(1989)];fos[B.レビ(Levi)等、Cell.Differ.Dev.、第25巻(補
遺)、第95〜102頁(1988);D.メルコーラ(Mercola)等、Gene、第
72巻、第253〜265頁(1988)];およびmyc[S.O.フレイタ
グ(Freytag)、Mol.Cell.Biol.、第8巻、第1614〜1624頁(1988)
;E.V.プロコウニック(Prochownik)等、Mol.Cell.Biol.、第8巻、第368
3〜3695頁(1988);S.L.ローク(Loke)等、Curr.Top.Microbiol.I
mmunol.、第141巻、第282〜288頁(1988)]が含まれるが、これ
らに限定されない。
全ての場合、標的突然変異遺伝子の生成をブロックすることは充分でない。A
.J.レビン(Levine)等[Biochimica et Biophisica Acta.、第1032巻、第
119〜136頁(1990)]に記載されたように、腫瘍表現型に寄与しうる
少なくとも5種類の突然変異が存在する。要するに、タイプIの突然変異は、積
極的に優性作用する異常なタンパク質産生物をもたらすような遺伝子における突
然変異である。この種の突然変異の例は、タンパク質における12位もしくは6
1位のアミノ酸変化をもたらすようなH−rasおよびK−ras遺伝子に存在
して、GTPを結合すると共に細胞成長に関する一定シグナルとなるタンパク質
をもたらすものである。タイプIIの突然変異は、たとえば正常mycタンパク
質および変化したablタンパク質の過剰産生をもたらすbcr−ablトラン
スロケーションのようなオンコプロテインの過剰産生をもたらすものである。タ
イプIIIの突然変異は機能突然変異の喪失であって、腫瘍は両方の対立遺伝子
の喪失の結果として生じ、たとえばヒト染色体13q14における網膜芽細胞腫
感受性遺伝子(Rb)および11q13に存在するウィルムス腫瘍感受性遺伝子
によって生ずる。結腸癌の75%においてはp53遺伝子を有する染色体17の
p12〜p13.3座における1つの対立遺伝子が共通して欠失し、或る場合に
は結腸癌細胞に残存する他のp53対立遺伝子は恐らく腫瘍発生に寄与する突然
変異体p53タンパク質を生成することが示されている。タイプIVの突然変異
は、細胞の成長には直接的に寄与しないが癌細胞の生存能力を向上させるタンパ
ク質の発現をもたらすものである。たとえば、v−erb−A遺伝子に対する突
然変
異は、複製サイクル中に維持される変化した遺伝子によりトランスフォームされ
た赤芽球をもたらす。タイプVの突然変異は腫瘍細胞への新たな遺伝情報の付加
から生じ、一般にウィルスによりもたらされる。或る種の場合、ウィルスはその
DNAを細胞ゲノムに組込んで、成長の細胞ネガティブレギュレータに結合する
タンパク質(たとえばRBおよびp53)を生成し、したがって効果的に機能突
然変異メカニズムのタイプIII喪失に類似する。
たとえばタイプIII、タイプIVおよびタイプIIIに類似するタイプV型
の突然変異のメカニズムにおけるような新形成細胞を生成する確率を増大するよ
う直接的に作用する突然変異タンパク質の生成をブロックするため、アンチセン
ス療法を使用することができる。アンチセンスは、突然変異が優性でない場合、
たとえば適切なタンパク質をコードする非突然変異対立遺伝子が残存する場合に
治療上有効である。しかしながら、突然変異がタイプIの突然変異におけるよう
に優性である場合およびたとえば或る種のタイプIII型突然変異のように両対
立遺伝子が欠失するか或いは一方が欠失して他方が突然変異体である場合、アン
チセンス療法は好ましくは置換療法を伴う。置換療法においては、野生型遺伝子
を突然変異腫瘍サプレッサ遺伝子もしくはプロトオンコジーンを有すると確認さ
れた標的細胞に導入して、同定された突然変異遺伝子に関連する新形成の発達に
先回りするのに必要な野生型タンパク質の生成をもたらす。
腫瘍サプレッサ遺伝子の場合、培養細胞への抑圧遺伝子の導入は細胞死滅をも
たらすか或いは識別しえない変化をもたらすことも知られているが、細胞はもは
や動物にて腫瘍形成性でない。たとえばリボザイムおよび/またはアンチセンス
療法が遺伝子置換療法を伴う場合、リボザイムもしくはアンチセンスオリゴヌク
レオチドが特異的な突然変異遺伝子を有する細胞集団が、処置される患者におけ
る新形成の発達にもはや寄与しないことが多くなる。
合成アンチセンスオリゴヌクレオチドは一般に長さ15〜25塩基対の範囲で
ある。ヒトゲノムのランダム構成を仮定して、統計は17量体がヒトDNAにお
ける細胞mRNAにおける独特な配列を規定し、15量体が細胞mRNA成分に
おける独特な配列を規定することを示唆する。すなわち、選択された遺伝子標的
に対する相当な特異性が、本発明の合成オリゴマーを用いて容易に得られる。
細胞において、アンチセンス核酸は対応のmRNAにハイブリダイズして二本
鎖分子を形成する。アンチセンス核酸は、二本鎖であるmRNAを細胞が翻訳し
ないので、mRNAの翻訳を阻害する。約15ヌクレオチドのアンチセンスオリ
ゴマーが好適である。何故なら、これらは容易に合成されると共に、標的ヌクレ
オチド突然変異体生産細胞に導入した際に大型分子よりも問題を起こす傾向が低
いからである。遺伝子のインビトロ翻訳を阻害するアンチセンス法の使用は当業
界にて周知である[マルクス−サクラ(Marcus-Sakura)、Anal.Biochem.、第1
72巻、第289頁(1988)]。大して一般的でないが、DNAに直接結合
するアンチセンス分子も使用することができる。
リボザイムは、他の一本鎖RNAをDNA制限エンドヌクレアーゼと同様に特
異的に切断する能力を持ったRNA分子である。これらRNAをコードするヌク
レオチド配列の改変により、RNA分子における突然変異プロトオンコジーンも
しくは腫瘍サプレッサ遺伝子の生成に関連した特定ヌクレオチド配列を認識する
分子を処理してこれを切断することができる[セッチ(Cech)、J.Amer.Med.Assn.
、第260巻、第3030頁(1988)]。この手法の主たる利点は、これら
が配列特異性であるため特定の突然変異配列を有する標的mRNAのみが失活さ
れる点にある。
2つの基本的種類のリボザイムが存在し、すなわちテトラヒメナ型[ハッセル
ホッフ(Hasselhoff)、Nature、第334巻、第585頁(1988)]および「
ハンマーヘッド型」である。テトラヒメナ型リボザイムは長さ4塩基である配列
を認識するのに対し、「ハンマーヘッド」型リボザイムは長さ11〜18塩基の
塩基配列を認識する。認識配列が長いほど、配列が専ら標的mRNA種類で生ず
る傾向も大となる。その結果、ハンマーヘッド型リボザイムは特定mRNA種類
を失活させるのにテトラヒメナ型リボザイムよりも好適であり、18塩基の認識
配列はより短い認識配列よりも好適である。
未改変のオリゴデオキシリボヌクレオチドは血清および細胞ヌクレアーゼによ
り容易に分解される。したがって当業界で周知であるように、リン酸骨格(バッ
クボーン)の或る種の改変はアンチセンスDNAに対するヌクレアーゼ耐性を付
与する。たとえばホスホロチオエート、メチルホスホネートおよびα−アノマー
糖ホスフェート、骨格改変オリゴマーは血清および細胞ヌクレアーゼに対する向
上した耐性を有する。さらに、メチルホスホネートは非イオン性であり、増大し
た脂質親和性を与えて、細胞膜を介しての取り込みを向上させる。アンチセンス
剤としての改変オリゴヌクレオチドの使用は、分子構造における化学変化がハイ
ブリダイゼーションに影響を与えるので、若干長いまたは短い配列を必要とする
[L.A.クリセイ(Chrisey)等、BioPharm、第4巻、第36〜42頁(199
1)]。これら骨格改変オリゴは標的配列に結合して、特定RNAに対する細胞
翻訳機構の結合をブロックすることにより或いはRNA/DNAデュープレック
ス構造の形成によってリボヌクレアーゼH活性を誘発させることにより阻害作用
を発揮する。
さらに本発明は癌症状、すなわちCDK4I遺伝子の欠失または多型性により
媒介される細胞増殖障害を処置するための遺伝子療法をも提供する。この種の療
法は、突然変異遺伝子により生じた増殖障害を有すると本発明の方法により確認
された細胞へ特定アンチセンスポリヌクレオチドおよび/または置換野生型遺伝
子を導入して作用を達成する。細胞がCDK4I遺伝子をコードする野生型遺伝
子の置換、および多型性を有するCDK4I遺伝子の複製を阻止するアンチセン
ス療法を必要とするかどうかはケースバイケースで決定せねばならず、突然変異
が優性効果を有するかどうかに依存し、すなわち野生型遺伝子の両方の対立遺伝
子が破壊されて遺伝子の完全な不存在が細胞増殖作用を有するかどうかに依存す
る。
突然変異遺伝子に対して特異的なアンチセンス腫瘍サプレッサポリヌクレオチ
ドおよび置換野生型遺伝子の供給(デリバリー)は、たとえばキメラウィルスま
たはコロイド分散系のような組換え発現ベクターを用いて達成することができる
。アンチセンス配列の治療供給にはリポソーム、特に目標とするリポソームの使
用が好適である。
ここに教示した遺伝子療法につき用いうる各種のウィルスベクターはアデノウ
ィルス、ヘルペスウィルス、ワクチンまたは好ましくはたとえばレトロウィルス
のようなRNAウィルスを包含する。好ましくはレトロウィルスベクターはマウ
スもしくは鳥類レトロウィルスの誘導体である。1つの外来遺伝子を挿入しうる
レトロウィルス ベクターの例には、これらに限定されないが、次のものが含ま
れる:モロニー・ネズミ白血病ウィルス(MoMuLV)、ハーベイ・ネズミ肉
腫ウィルス(HaMuSV)、ネズミ乳腫瘍ウィルス(MuMTV)およびラウ
ス肉腫ウィルス(RSV)。他の多数のレトロウィルスベクターは複数の遺伝子
を組み込むことができる。これらベクターは全て選択性マーカーに関する遺伝子
を移動し或いは組込んで、移入(トランスデュース)された細胞を同定および発
生させることができる。対象となる1個もしくはそれ以上の配列をウィルスベク
ター中へ、たとえば特定標的細胞上のリセプタに対するリガンドをコードする他
の遺伝子と一緒に挿入することにより、ベクターは標的特異的となる。レトロウ
ィルスベクターは、たとえば糖、糖脂質もしくはタンパク質をコードするポリヌ
クレオチドを挿入することにより標的特異性にすることができる。好適な標的化
はレトロウィルス ベクターを標的とする抗体を使用して達成される。当業者は
、不用な実験を行うことなく、レトロウィルスゲノム中に挿入して対象となるポ
リヌクレオチドを含有したレトロウィルスベクターの標的特異的な供給を可能に
する特定ポリヌクレオチド配列を周知し、或いは容易に確認することができる。
必要に応じ、細胞に対する置換遺伝子の目標供給につき別のベクターを用いるこ
ともでき、或いはアンチセンス オリゴヌクレオチドおよび置換遺伝子を必要に
応じ同じベクターを介して供給することもできる。何故なら、アンチセンス オ
リゴヌクレオチドは多型性を有する標的遺伝子に対してのみ特異性であるからで
ある。
組換えレトロウィルスは欠点を有するので、これらは感染性ベクター粒子を生
成するには援助を必要とする。この援助は、たとえばレトロウィルスの全構造遺
伝子をLTR内の調整配列の制御下でコードするプラスミドを持ったヘルパー細
胞株を用いて提供することができる。これらプラスミドはパッケージメカニズム
をRNA転写物の包封のために認識しうるようなヌクレオチド配列を喪失してい
る。パッケージングシグナルの欠失を有するヘルパー細胞株は、限定はしないが
Ψ2、PA317およびPA12を包含する。これら細胞株はエンプティービリ
オンを生成する。何故なら、ゲノムが包封されないからである。パッケージング
シグナルが無傷であるこの種のヘルパー細胞にレトロウィルスベクターが導入さ
れても構造遺伝子が対象となる他の遺伝子により置換されれば、ベクターを包封
すると共にベクタービリオンを生成させることができる。
アンチセンスポリヌクレオチドのための他の目標とする供給システムはコロイ
ド分散系である。コロイド分散系は巨大分子複合体、ナノカプセル、微小球、ビ
ーズおよび脂質に基づく系、たとえば水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセ
ルおよびリポソームを包含する。本発明の好適コロイド系はリポソームである。
リポソームは人工膜小胞であって、インビトロおよびインビボにて供給ベヒクル
として有用である。寸法0.2〜4.0μmの範囲である大型単ラメラ小胞(L
UV)は、大型巨大分子を含有する水性緩衝剤の相当割合を包封することができ
る。RNA、DNAおよび無傷ビリオンを水性内部に包封して、生物学上活性型
にて細胞に供給することができる[フレーリー(Fraley)等、TrendsBiochem.Sci.
、第6巻、第77頁(1981)]。哺乳動物細胞の他、リポソームは植物、酵
母および細菌の各細胞においてポリヌクレオチドの供給に使用されている。リポ
ソームが効率的な遺伝子移動ベヒクルとなるには、次の特徴が存在せねばならな
い:(1)アンチセンス ポリヌクレオチドを高効率にてコードするが、その生
物学的活性を相殺しない遺伝子の包封;(2)非標的細胞と対比し標的細胞に対
する優先かつ相当な結合;(3)高効率における標的細胞の細胞質に対する小胞
の水性内容物の供給;および(4)遺伝子情報の正確かつ効果的な発現[マニノ
(Mannino)等、Biothechniques、第6巻、第682頁(1988)]。
リポソームの組成は、一般にステロイド(特にコレステロール)と組合せたリ
ン脂質、特に高い相転移温度のリン脂質の組合せ物である。他のリン脂質もしく
は他の脂質も使用することができる。リポソームの物理的特性はpH、イオン強
度および二価陽イオンの存在に依存する。
リポソーム生成に有用な脂質の例はホスファチジル化合物、たとえばホスファ
チジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファ
チジルエタノールアミン、スフィンゴリピド、セレブロシドおよびガングリオシ
ドを包含する。脂質部分が14〜18個の炭素原子、特に16〜18個の炭素原
子を有すると共に飽和されているジアシルホスファシジル グリセロールが特に
有用である。リン脂質の例は卵ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファ
チジルコリンおよびジステアロイルホスファチジルコリンを包含する。
リポソームの標的化は、解剖的因子および機械的因子に基づいて分類すること
ができる。解剖的分類は選択性、たとえば器官特異性、細胞特異性およびオルガ
ネラ特異性のレベルに基づく。機械的標的化は、受動的または能動的のいずれで
あるかに基づいて区別することができる。受動的標的化は、リポソームが洞様毛
細管を含む各器官における網膜内皮系(RES)の細胞に分布する自然傾向を利
用する。他方、能動的標的化はたとえばモノクローナル抗体、糖、糖脂質もしく
はタンパク質のような特定リガンドに結合させることにより或いはリポソームの
組成もしくは寸法を変化させて天然の局在部位以外の器官および細胞の標的化を
達成することにより、リポソームを変化させることを含む。
標的供給システムの表面は各種の方法で改変することができる。リポソーム標
的供給系の場合、リピド基をリポソームの脂質二重層に組込んで、標的化リガン
ドをリポソーム二重層との安定関係に維持することができる。各種の結合基を用
いて、リピド連鎖を目標リガンドに結合させることができる。
遺伝子療法を行う他の手段は当業界で周知されている;たとえばフェルグナー
(Felgner)等、Science、第247巻、第1465頁(1990);スティブリン
グ(Stibling)等、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA.、第89巻、第11277〜112
81頁(1992);およびタング(Tang)等、Nature、第356巻、第152〜
154頁(1992)(これらの開示を、遺伝子療法を実施する方法に関する当
業界の知識を例示するため、ここに援用する)。しかしながら、本発明の遺伝子
療法を実施する好適手段は、「裸」の非複製型(すなわちウィルス ベクター、
リポソーム、宿主細胞または核酸を発現させる均等手段と連携しない)における
前記遺伝子の投与である。さらに、この種の裸ヌクレオチドの好適な投与ルート
は骨格筋への注射、特に好ましくは比較的高濃度の抗原提供細胞を含有する組織
への導入である。
X. CDK4Iキットおよび製品
上記の診断研究および治療用途に使用するため、本発明によりキットも提供さ
れる。診断および研究の用途において、この種のキットは次のような全てのもの
を包含する:アッセイ試薬、緩衝剤、CDK4Iタンパク質および/または断片
、CDK4I組換え発現ベクター、CDK4Iオリゴヌクレオチドおよび他のハ
イブリダイゼーションプローブおよび/またはプライマー、および/または適す
るアッセイ装置。治療用製品は、凍結乾燥されたCDK4Iもしくは抗CDK4
I懸濁物の再編成に使用するための無菌塩水もしくは他の医薬上許容しうるエマ
ルジョンおよび懸濁ベース、好適には標識および承認されたCDK4Iもしくは
抗CDK4I組成物の容器、並びにこれら物質を含むキットを上記診断キット部
品に関連して使用するために含む。
この種のキットはさらに1種もしくはそれ以上のたとえば小瓶、チューブなど
の収容手段を狭い空間に収容すべく分室化されたキャリヤ手段を備え、これら収
容手段のそれぞれはこの方法に使用すべき別々の手段の1つを備える。
たとえば収容手段の1つは検出可能に標識され或いは標識しうるハイブリダイ
ゼーションプローブを含むことができる。第2容器は細胞溶解緩衝剤を含む。さ
らにキットは標的核酸配列を増幅するためのヌクレオチドを保持する容器および
/または、たとえば酵素、蛍光もしくは放射性核標識のようなレポータ分子に結
合された、たとえばビオチン結合性タンパク質、たとえばアビジンもしくはスト
レプトアビジンのような、レポータ手段を含む容器をも備えることができる。
以上、本発明を詳細に説明したが、以下の実施例によりさらに説明する。しか
しながら、本発明はこれら実施例のみに限定されないことが了解されよう。
実施例I
CDK4I遺伝子の同定および特性化
MTAse cDNA(配列番号14)を単離すると共に、ヒト胎盤λファー
ジライブラリを検査すべく使用した。2キロベースのHindIII断片は、配
列分析によりMTAse遺伝子の3′末端を有した。染色体操作を、MTAse
の3′末端から出発して行った。既知のP1ファージ[たとえばピアス(Pierce)
等、Meth.Enzymol.、第216巻、第549〜574頁(1992)]の数回の
スクリーニングサイクルおよびその後のλファージライブラリのスクリーニング
は、T98Gにおける欠失領域を含むクローンの単離をもたらした。これらファ
ージの制限断片をサブクローン化し、部分的に配列決定し、サザン・ブロッティ
ングおよびパルス・フィールド・ゲル電気泳動により地図化した。図4は、MT
APとインターフェロン−β(IFNB)遺伝子座との間のヒト染色体9p21
の地図を示し、T98Gグリオーマ細胞株における欠失セグメントに注目した。
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて、46種の異なるヒト悪性細胞株に
おける染色体9pからの数種の配列標識部位(STS)の欠失頻度を測定した(
表1)。細胞種類に応じ、STS 54FもしくはSTS 5BSのいずれかが
最も頻繁に欠失した。これらの結果は、STS 54FとSTS 5BSとの間
の50キロベース領域に注目を集めた。
54Fと5BSとの間に破断点を有する8種の悪性細胞株を次いでSTS−P
CRにより分析し、これには介入領域からの新たなプローブを用いた。その欠失
マップを図5に示す。19キロベースのλファージクローン(10B1)は最も
頻繁に欠失された部位を確認した(図4(a)参照)。クローン10B1のファ
ージDNAをECO RIにより切断すると共にECO−RI−カットpブルー
SCRIPT II SK+[ストラタジーン、ラ・ホイヤ、CA]にサブクロ
ーン化させた。ヒト胎盤および黒色腫細胞株からのDNAをEcoRIで切断し
、0.8%アガロースゲルで分け、次いでナイロン膜にトランスファーさせた。
これらサブクローンを自動化DNA配列決定にかけた。4.2kbのサブクロー
ン10B1〜10はCDK41とCDK413′との両ヌクレオチド配列(配列
番号1〜2および4〜5)を含有する一方、CDK415′のヌクレオチド配列
は10A1サブクローンに含まれる。
クローン10B1(図4(a))からの10B1〜10サブクローンの配列は
306塩基対のオープンリーディングフレームを有する。コード化領域の3′末
端および3′−非コード化領域はMTAse遺伝子の方向に2.6キロベースに
て位置するのに対し、遺伝子の5′末端はT98Gにおける欠失領域に対しテロ
メア的である。
PCR増幅反応を、0.1μgのDNAと1×PCR緩衝液(10mM)トリ
ス−HCl(pH8.3)と50mMのKClと1.5mMのMgCl2と0.
01%のゼラチンと200μMの各dNTPと20ngの各センスおよびアンチ
センスプライマーと0.5単位のTaq DNAポリメラーゼとを含有する全容
積20μLで行った。35サイクルを行い(64℃のアニールおよび72℃の伸
長)、次いでゲル電気泳動を行った。CDK4I5(配列番号3)は、センスプ
ライマー(5′−AATTCGGCACGAGGCAGCAT−3′)およびア
ンチセンスプライマー(5′−TTATTTGAGCTTTGGTTCTG−3
′)を用いて細胞株H661(ATCC受託番号 )における逆転写
酵素−PCRにより発生した139bpの産物である。これらPCR産物をサブ
クローン化させると共に配列決定した。クローンp7−4(ATCC受託番号5
5540)はCDK4阻害物質cDNAの5′配列を有した。139bpの産物
をクローンp7−4からセンスプライマーおよび新たなアンチセンスプライマー
(5′−TCGGCCTCCGACCGTAACTA−3′)により増幅させて
、サザン・ブロッティングにつき使用した。これらブロットを65℃にて1晩ハ
イブリダイゼーションさせ、65℃にて0.1%SDSを含有する0.1×SS
Cで洗浄し、次いでX線フィルムに露光させた。
実施例II
癌細胞株におけるCDK41遺伝子の欠失または多型性
図9に示したように、最初にスクリーニングされた46種の悪性細胞株(表1
)をSTS−PCRプライマーで再スクリーニングし、これらはCDK4I′お
よびCDK4I3′エクソン(配列番号8〜11)に対応した。黒色腫の61%
、膠腫の87%、非−小細胞肺癌の45%および白血病の64%はCDK41遺
伝子断片のホモ接合型欠失を有する(表1)。
黒色腫細胞株WM226−4はCDK4抑制遺伝子の5′末端のみを欠失した
(配列番号3)。これはCDK4I′につき陽性、STS 5BSにつき陰性で
あり、EcoRI切断、電気泳動およびCDK4阻害遺伝子の5′−領域からの
プローブに対するハイブリダイゼーションの後、異常な7.0キロベースのバン
ドを形成した。他方、黒色腫細胞株SK−MEL−31はCDK4I遺伝子の3
′末端のみを欠失した(配列番号5)。デトロイト462細胞株(咽頭癌)はC
DK4I遺伝子内に29キロベースの欠失を有する。これは、CDK4I3′に
つき陽性であり、CDK4I′につき陰性であったが、STS−5BSおよびS
TS−71Fにつき陽性であった。後者2種のSTSはCDK4抑制遺伝子の5
′末端に対しセントロメア的に配置していた。
ヒト細胞における逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)アッセ
イは正常細胞にてCDK4阻害遺伝子転写物を示したが、CDK4阻害遺伝子の
確認された欠失を有する癌では示されなかった(図9)。
これら分析を行うため、mRNAを「ファーストトラック」キット[インビト
ロゲン社、サンジエゴ、CA]で精製し、RNアーゼフリーのDNアーゼ(ファ
ルマシア社)で処理し、その際ヒト胎盤DNAを比較として用いることにより完
全DNアーゼI切断を確保した。ストラタスクリプトRT−PCRキット[スト
ラタジーン・ラ・ホイヤ、CA]での第1ストランドcDNA合成の後、cDN
AをCDK4I3′プライマーにより増幅させた(58℃のアニールおよび70
℃の伸長)。
比較G3PDH遺伝子(5′−TGGTATGGTGGAAGGACTCAT
GAC−3′および5′−ATGCCAGTGAGCTTCCCGTTCAGC
−3′)のプライマーは190bp産物を増幅した(55℃のアニールおよび7
2℃の伸長)。CDK4I3′エクソンおよびG3PDHのRT−PCRを別々
に行い、2%アガロースゲルにて分けた。図9のレーン1、2および4で見られ
る355bpのRT−PCR産物がcDNAから得られた。これらの結果は、ヒ
ト細胞が単一のCDK4阻害遺伝子を含有し、これが黒色腫、膠腫および白血病
の大部分、並びに多くの非小型細胞肺癌にてホモ接合的に欠失もしくは再編成さ
れることを示す。
実施例III
CDK4I遺伝子の欠失の検出
A. PCR−ELISAのための固体支持材料の作製
50mMの2−[N−モルフォリノ]エタンスルホン酸におけるCDK4I遺
伝子に特異性の2.5pモル/mLのアミノ化オリゴヌクレオチドと1mMのE
DTA(pH5.5)との20μLをポリカーボネートで作成された96穴マイ
クロタイター板(コスター・ケンブリッジ、MA)の各穴に入れた。次いで4m
g/mLの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノ−プロピル)カルボジイミド
塩酸塩[EDC、ピアス・ケミカル社]の20μLを添加し、プレートを37℃
にて2時間にわたりインキュベートした。次いで各穴をリン酸塩緩衝塩水(PB
S)により1回洗浄し、次いで1%牛血清アルブミン(BSA)により1時間ブ
ロッキングした。
B. トリプルプライマPCR増幅
配列番号8〜13に記載したプライマーを用い、上記表1に同定した細胞株か
ら得られたゲノムDNAを次のように増幅させた。0.1μgのゲノムDNAを
10mMのトリス−HCl(pH8.3)と50mMのKClと1.5mMのM
gCl2と0.01%のゼラチン(PCR緩衝液)と200μMのそれぞれdN
TP、20ngの各プライマーおよび0.5単位のTaq DNAポリメラーゼ
とよりなる増幅混合物に添加した。パーキン・エルマー・セタスDNAサーマル
・サイクラーにて30サイクルを行い、各サイクルは変性(94℃、1分間とア
ニール(50〜55℃、1分間)と伸長(72℃、1分間)とで構成した。
C. 固定化プライマーのハイブリダイゼーションおよび伸長の検出
各穴をHW緩衝液(3×SSC、0.1%N−ラウロイルサルコシン)で3回
およびブロッキング用緩衝液(10mMのトリス−HCl(pH7.5)および
800mMのNaClにおける0.5%のGENIUSブロッキング試薬、ベー
リンガー・マンハイム登録商標)で1回洗浄し、次いで80μLのテトラメチル
ベンチジンおよび西洋ワサビペルオキシダーゼ[キケガード・アンド・ペリー・
ラボラトリース]と共にインキュベートした。反応を80μLの1M O−ホス
フェートにより適する時点で停止させた。それぞれ150μLを他のマイクロタ
イター板に移し、ODをモレキュラ・デバイシス社、メンロ・パーク、CAから
のマイクロタイター解読装置により450nmにて測定した。このアッセイの結
果を表1に要約する。
実施例V
形成不全母斑症候群細胞における生殖系ナンセンス突然変異の検出
CDK4I′(配列番号8〜9)の各プライマーを作成すると共に逆転写酵素
ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を用いてCDK4I遺伝子転写物をヒト
リンパ芽細胞株[GM06921;ATCC受託番号 )にて増幅さ
せ、このリンパ芽細胞株は形成不全母斑症候群(家族性黒色腫)を有する患者か
ら得た。オリタ等(上記)により記載された技術および/またはウー等(上記)
により記載された技術を用い、CDK4I遺伝子転写物の突然変異型をGM06
9321細胞株にて同定した。転写物の配列分析はmRNAの166位にC→T
転移を示し、これはナンセンス突然変異をもたらす(図6参照)。
実施例VI
白血病細胞株におけるCDK4I5′遺伝子微小欠失の検出
CDK4I5′(配列番号12〜13)の各プライマーを構築すると共に逆転
写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を用いてヒト白血病細胞株U93
7(ATCC受託番号CRL 1593)にてCDK4I遺伝子転写物を増幅さ
せた。オリタ等により記載された技術(上記)および/またはウー等により記載
された技術(上記)を用い、突然変異型のCDK4I5′遺伝子転写物をU93
7細胞株にて同定すると共に配列決定し、19塩基対の微小欠失を示した(図7
参照)。
配列の要約
配列番号1は、ヒトゲノムCDK4Iの5′領域のヌクレオチド配列およびC
DK4Iの5′領域の対応する予想アミノ酸配列である。
配列番号2は、ヒトゲノムCDK4Iの内部領域および3′領域のヌクレオチ
ド配列である。
配列番号3〜5は、それぞれCDK4I5′、CDK4I′およびCDK4I
3′エクソンである。
配列番号6および7は、9p21染色体の54Fと5BSとの間の領域(すな
わちクローン10B1に対応する)のオリゴヌクレオチドプライマーの配列であ
る。
配列番号8〜13は、それぞれCDK4I′、CDK4I3′およびCDK4
15′エクソンのオリゴヌクレオチドプライマーの配列である。
配列番号14は、MTAseの全長ゲノムヌクレオチド配列である。
【手続補正書】特許法第184条の7第1項
【提出日】1995年9月12日
【補正内容】
請求の範囲
1. 単離されたCDK4Iポリヌクレオチド。
2. 少なくとも1種のCD4KIエクソンから実質的になり、そのヌクレオチ
ド配列が配列番号3〜5に含まれる請求の範囲第1項に記載のポリヌクレオチド
。
3. 請求の範囲第2項に記載の少なくとも1種のポリヌクレオチドを機能的に
コードする組換え発現ベクター。
4. CDK4に対する特異的結合部位を有し、請求の範囲第3項の組換え発現
ベクターにより発現されるCDK4Iもしくはその断片。
5. CDK4に対する特異的結合部位を有する単離された実質的に純粋なCD
K4Iもしくはそのペプチド断片。
6. ポリヌクレオチドが多型性を有する請求の範囲第2項に記載のポリヌクレ
オチド。
7. 多型性が、少なくとも1つのヌクレオチドの欠失もしくは置換よりなる請
求の範囲第6項に記載のポリヌクレオチド。
8. ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が配列番号4よりなり、166位に
おけるシトシンがチミンにより置換されるCDK4Iポリヌクレオチド。
9. ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が配列番号4よりなり、約110位
から198位までのヌクレオチドが欠失するCDK4Iポリヌクレオチド。
10. 請求の範囲第1項に記載のポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズ
するオリゴヌクレオチド。
11. 請求の範囲第2項に記載のポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズ
するオリゴヌクレオチド。
12. CDK4Iもしくはその生物学上活性な断片を特異的に結合する抗体。
13. 請求の範囲第4項に記載のポリペプチドを特異的に結合する抗体。
14. 少なくとも1種の請求の範囲第5項に記載のポリペプチドを特異的に結
合する抗体。
15. 実質的に純粋なCDK4Iもしくはその生物学上活性な断片と医薬上許
容しうるキャリヤとを含有する医薬組成物。
16. 実質的に純粋形態での請求の範囲第4項に記載のポリペプチドと医薬上
許容しうるキャリヤとを含む医薬組成物。
17. 実質的に純粋形態での請求の範囲第5項に記載のポリペプチドと医薬上
許容しうるキャリヤとを含む医薬組成物。
18. ヒトにおける癌症状の診断方法であって、ヒトからの生物学的細胞試料
にてCDK4Iポリヌクレオチドを検出することを含む方法。
19. 生物学的細胞試料が体細胞を含む請求の範囲第18項に記載の方法。
20. 生物学的細胞試料が生殖系細胞を含む請求の範囲第18項に記載の方法
。
21. 癌症状が黒色腫、膠腫、非小型細胞肺癌および白血病を含む請求の範囲
第18項に記載の方法。
22. MTAseをコードするポリヌクレオチドを検出することをさらに含む
請求の範囲第18項に記載の方法。
23. PCRを用いて、生物学的細胞試料において、存在するならば、CDK
41ポリヌクレオチドを増幅する請求の範囲第18項に記載の方法。
24. PCRが競合性PCRである請求の範囲第23項に記載の方法。
25. 生物学的細胞試料に存在するCDK4IポリヌクレオチドをELISA
により検出する請求の範囲第24項に記載の方法。
26. ヒトにおける癌症状の診断方法であって、ヒトからの生物学的細胞試料
であって、前癌性もしくは悪性細胞を含有すると疑われる試料におけるCDK4
Iを検出することを含む方法。
27. CDK4Iを免疫アッセイにより検出する請求の範囲第26項に記載の
方法。
28. 癌症状に対する感受性の決定方法であって、CDK4Iポリヌクレオチ
ド多型性を検出することを含み、ここで、この多型性がCDKに対する結合親和
性を有するCDK4Iタンパク質のコード化を不能にする方法。
29. 生物学的細胞試料が体細胞を含む請求の範囲第28項に記載の方法。
30. 生物学的細胞試料が生殖系細胞を含む請求の範囲第28項に記載の方法
。
31. 癌症状が黒色腫、膠腫、非小型細胞肺癌および白血病を含む請求の範囲
第28項に記載の方法。
32. MTAseをコードするポリヌクレオチドを検出することをさらに含む
請求の範囲第28項に記載の方法。
33. PCRを用いて、生物学的細胞試料において、存在するならば、CDK
41ポリヌクレオチドを増幅する請求の範囲第28項に記載の方法。
34. PCRが競合性PCRである請求の範囲第33項に記載の方法。
35. 生物学的細胞試料に存在するCDK4IポリヌクレオチドをELISA
により検出する請求の範囲第34項に記載の方法。
36. 多型性がCDK4I遺伝子エクソンにおけるヌクレオチド置換もしくは
欠失よりなる請求の範囲第28項に記載の方法。
37. 癌症状が異形成型母斑症候群である請求の範囲第36項に記載の方法。
38. 癌症状が白血病である請求の範囲第36項に記載の方法。
【手続補正書】特許法第184条の8
【提出日】1996年7月9日
【補正内容】
請求の範囲
1. 単離されたサイクリン依存性キナーゼ4阻害物質(CDK4I)ポリヌク
レオチド。
2. 少なくとも1つのCD4KIエクソンよりなり、そのヌクレオチド配列が
配列番号3〜5に含まれる請求の範囲第1項に記載のポリヌクレオチド。
3. 請求の範囲第2項に記載の少なくとも1つのポリヌクレオチドを機能的に
コードする組換え発現ベクター。
4. CDK4に対する特異的結合部位を有し、請求の範囲第3項に記載の組換
え発現ベクターにより発現されるCDK4Iポリペプチドもしくはその断片。
5. CDK4に対する特異的結合部位を有する単離された実質的に純粋なCD
K4Iもしくはそのペプチド断片。
6. ポリヌクレオチドが多型性を有する請求の範囲第2項に記載のポリヌクレ
オチド。
7. 多型性が、少なくとも1つのヌクレオチドの欠失もしくは置換よりなる請
求の範囲第6項に記載のポリヌクレオチド。
8. ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が配列番号4よりなり、166位に
おけるシトシンがチミンにより置換されるCDK4Iポリヌクレオチド。
9. ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が配列番号4よりなり、約180位
から198位までのヌクレオチドが欠失するCDK4Iポリヌクレオチド。
10. 請求の範囲第1項に記載のポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズ
するオリゴヌクレオチド。
11. 請求の範囲第2項に記載のポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズ
するオリゴヌクレオチド。
12. CDK4Iもしくはその生物学上活性な断片を特異的に結合する抗体。
13. 請求の範囲第4項に記載のポリペプチドを特異的に結合する抗体。
14. 請求の範囲第5項に記載の少なくとも1種のポリペプチドを特異的に結
合する抗体。
15. 実質的に純粋なCDK4Iもしくはその生物学上活性な断片と医薬上許
容しうるキャリヤとを含有する医薬組成物。
16. 実質的に純粋形態での請求の範囲第4項に記載のポリペプチドと医薬上
許容しうるキャリヤとを含む医薬組成物。
17. 実質的に純粋形態での請求の範囲第5項に記載のポリペプチドと医薬上
許容しうるキャリヤとを含む医薬組成物。
18. ヒト細胞の集団におけるサイクリン依存性キナーゼ4抑制剤(CDK4
I)機能の喪失を同定する方法であって、ヒト由来の生物学的細胞試料における
CDK4Iポリヌクレオチドの喪失を検出することを含み、ここで、機能の喪失
が細胞集団の過剰成長を促進しうる方法。
19. 生物学的細胞試料が体細胞を含む請求の範囲第18項に記載の方法。
20. 生物学的細胞試料が生殖系細胞を含む請求の範囲第18項に記載の方法
。
21. 細胞の集団が黒色腫、膠腫、非小型細胞肺癌および白血病よりなる群か
ら選択される種類の悪性腫瘍に見られる請求の範囲第18項に記載の方法。
22. メチルチオアデノシンホスホリラーゼ(MTAse)をコードするポリ
ヌクレオチドの喪失を検出することをさらに含む請求の範囲第18項に記載の方
法。
23. PCRを用いて、生物学的細胞試料において、存在するならば、CDK
41ポリヌクレオチドを増幅させる請求の範囲第18項に記載の方法。
24. PCRが競合性PCRである請求の範囲第23項に記載の方法。
25. 生物学的細胞試料に存在するCDK4IポリヌクレオチドをELISA
により検出する請求の範囲第24項に記載の方法。
26. ヒトにおける癌症状の診断方法であって、ヒトからの生物学的細胞試料
であって、前癌性もしくは悪性細胞を含有すると疑われる試料におけるCDK4
Iを検出することを含む方法。
27. CDK4Iを免疫アッセイにより検出する請求の範囲第26項に記載の
方法。
28. ヒト細胞の集団におけるサイクリ依存性キナーゼ4抑制剤(CDK4I
)機能の喪失を同定する方法であって、CDK4Iポリヌクレオチド多型性を検
出
することを含み、ここで、多型性がCDKに対する結合親和性によりCDK4I
タンパク質のコード化を不能し、細胞集団の過剰成長を促進する方法。
29. 生物学的細胞試料が体細胞を含む請求の範囲第28項に記載の方法。
30. 生物学的細胞試料が生殖系細胞を含む請求の範囲第28項に記載の方法
。
31. 細胞の集団が黒色腫、膠腫、非小型細胞肺癌および白血病よりなる群か
ら選択される種類の悪性腫瘍に見られる請求の範囲第28項に記載の方法。
32. メチルチオアデノシンホスホリラーゼ(MTAse)をコードするポリ
ヌクレオチドを検出することをさらに含む請求の範囲第28項に記載の方法。
33. PCRを用いて、生物学的細胞試料において、存在するならば、CDK
41ポリヌクレオチドを増幅させる請求の範囲第28項に記載の方法。
34. PCRが競合性PCRである請求の範囲第33項に記載の方法。
35. 生物学的試料に存在するCDK4IポリヌクレオチドをELISAによ
り検出する請求の範囲第34項に記載の方法。
36. 多型性が、CDK4I遺伝子エクソンにおけるヌクレオチド置換もしく
は欠失よりなる請求の範囲第28項に記載の方法。
37. 細胞の集団が悪性腫瘍に見られ、ヒトにおけるその存在が異形成型母斑
症候群に関連する請求の範囲第36項に記載の方法。
38. 細胞の集団が悪性腫瘍に見られ、ヒトにおけるその存在が白血病に関連
する請求の範囲第36項に記載の方法。
39. 配列番号3〜5に含まれるヌクレオチド配列を持った少なくとも1種の
CDK4Iポリヌクレオチドエクソンと、生物学的細胞試料におけるCDK4I
ポリヌクレオチドの喪失を検出するのに有用な試薬および反応体とを含む請求の
範囲第18項に記載の方法を行う際に使用するキット。
40. 配列番号3〜5に含まれるヌクレオチド配列を持った少なくとも1種の
CDK4Iポリヌクレオチドエクソンと、CDK4Iポリヌクレオチド多型性を
検出するのに有用な試薬および反応体とを含む請求の範囲第28項に記載の方法
を行う際に使用するキット。
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(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
C12Q 1/68 0276−2J G01N 33/53 D
G01N 33/53 9637−4B C12P 21/02 A
// C12P 21/02 9637−4B C
9358−4B 21/08
21/08 9051−4C A61K 37/02 ADU
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AP(KE,MW,SD,SZ,UG),
AM,AT,AU,BB,BG,BR,BY,CA,C
H,CN,CZ,DE,DK,ES,FI,GB,GE
,HU,IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,
LK,LT,LU,LV,MD,MG,MN,MW,M
X,NO,NZ,PL,PT,RO,RU,SD,SE
,SG,SI,SK,TJ,TT,UA,UG,UZ,
VN
(72)発明者 ノボリ、ツトム
アメリカ合衆国 92126 カリフォルニア
州 サンディエゴ ブルックホロウ コー
ト 10666