【発明の詳細な説明】
アルコール産生酵母に用いる解糖経路の酵素をコードするDNA
発明の分野
本発明はアルコール発酵に用いる組換えDNAおよび遺伝的に改良された酵母
に関する。
発明の背景
Saccharomyces cerevisiaeのよく知られた糖をアルコールに変換する解糖経路
(Embden-Meyerhof経路、後述の反応工程A参照)は、醸造、蒸留、ワイン製造
、および製パン産業における重要性とそれが持つ本来の学問的魅力から多年にわ
たり精力的に研究されている。過去において、より多くのアルコールを産生する
酵母を得る方法をみいだすために多大の努力が払われてきた。このためには、(
1)生産物を最適化するためのモニター法と制御手順の開発と、(2)菌株の選
択および改良プログラムの主に2つの方向がある。ベンチャーは、応々にして解
糖経路そのものにしか関心がないため、酵母におけるこの経路の生理学的重要性
を説明できていない。
Cuskeyらの、J.Bacteriol.(1985年、6月)162(3):865-871は、Pseudomonas
の菌株への炭水化物の異化を特定する種々の遺伝子のクローニングを開示してい
る。P.aeruginosaは、Entner-Doudoroff経路(後述の反応工程B参照)を介して
炭水化物を代謝し、グルコース−6−ホスフェート脱水素酵素(ZWF)、6−
ホスホグルコネートデヒドラターゼ(PGD)および2−ケト−3−デオキシ−
6−ホスホグルコネートアルドラーゼ(KGA)の遺伝子を持っている。Cuskey
らは、PGDおよびグルコキナーゼ(GLK)の遺伝子を含む組換えプラスミド
を製造したが、クローンした断片上にZWFおよびKGAの構造遺伝子は存在し
なかったと報告している。
Kawasakiらの、Biochem.Biophys.Res.Comm.(1982)108(3):1107-1112は、相補
法による種々の酵母の解糖遺伝子のクローニングを開示している。
Banerjeeらの、J.Gen.Microbiol.(1987)133:1099-1107は、P.aeruginosaの糖
新生突然変異体とフルクトース−ビスホスフェートアルドラーゼ(FBA)、3
−ホスホグリセレートキナーゼ(PGK)、NADP連結グリセルアルデヒド−
3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ(GAP)またはKGAの遺伝子を有する組
換えプラスミドを開示している。
WO-A-8703006は、CO2、エタノール、および他の発酵産物の産生を増強し、
バイオマスの産生を減少させるための解糖率を改善した酵母を開示している。
大腸菌のedaおよびedd遺伝子(PGDとKGAをコードしている)の配
列はEganらの、J.Bacteriol.174:4638-4646(1992)に記載されている。これら配
列の訂正されたものがCarterらの、Gene 130:155-6(1993)に開示されている。
細菌系、例えばXymomonasによる燃料アルコールの生成は知られている。その
ような系は基質の範囲が狭く、アルコールトレランスが低い。
本発明は、より効率的に糖をエタノールに変換することができるように酵母を
改良することにより、酵母細胞に利用されるエネルギーの減少を改良することを
目的とするものである。
発明の要約
本発明の最初の目的は、PGD(酵素委託番号4.2.1.12)およびKGA(酵素
委託番号4.1.2.14)を発現することできるように酵母を遺伝的に改良することで
ある。
改良されていない酵母は、少なくとも反応工程Aに示す酵素を発現することに
より糖をエタノールに変換することができるのに加えて、反応工程Aと異なる反
応工程Bの最初の2つの酵素であるZWFとホスホグルコネートラクトナーゼ(
PGL)を発現することができる。したがって、本発明の酵母は、酵母が触媒す
る発酵の一般的な基質である糖を反応工程B、すなわち、Entner-Dounoroff経路
を介してピルベートに変換することができる手段を提供する。
本発明の第二の目的は、PGDとKGAをコードし、さらに酵母における酵素
の転写と翻訳を促進する1またはそれ以上の配列を含有する新規組換えDNAを
提供することである。
発明の説明
本発明は、酵母細胞はエタノールを産生するために存在しているのではないと
いう観察結果に基づいている。エタノールは、酵母の増殖と分裂を可能にする低
酸素圧または高糖濃度の条件下で行われるエネルギー生成工程から生じる排泄産
物である。
酵母の培養によって生成されるプリンヌクレオシド三リン酸(ATPのような
の形のエネルギーは細胞の生合成に向けられる。しかしながら、本発明において
は増殖は必須ではない。醸造ならびに蒸留産業、および例えば燃料アルコールの
生成において、バイオマスの生成は単なる原料物質の無駄な転換でしかない。
反応工程AおよびBにおいて、*は1モルのATPが使われる反応を示し、†
は1モルのATPが生成する反応をを示す(すなわち、反応工程Aのグルコース
1モルあたり2モル)。反応工程Aの正味のエネルギー生成量はATP2モルで
ある。これは通常の生合成に用いられるエネルギーである。反応工程Bでは、正
味のエネルギー生成量は1モルATPだけなので、与えられた量の出発物質に関
してより効率的にエタノールが生成される。
後記の反応工程は、グルコース−6−ホスフェートを介するグルコースの変換
を示す。もちろんグルコースは、改良されていない酵母と本発明に従って改良さ
れた酵母によって変換することができる糖の一例に過ぎない。
遺伝的な改良がなされていないSaccharomyces cerevisiaeを用いる発酵では、
95%以上のグルコース−6−ホスフェートがPGIを介してフルクトース−6
−ホスフェートに変換され、ZWFを介して6−ホスホグルコノラクトン(およ
びそこから五炭糖に)に変換されるのはほんのわずかである。反応工程Bおよび
反応工程Aの酵素すべてを発現するように遺伝的に改良された酵母が、Aよりも
Bを介してグルコースのような糖をエタノールに変換するかは明らかでなく、En
tner-Doudoroff経路を介する変換を支持する物質や条件の使用が望ましい場合が
ある。
反応工程Bによる変換を増強し得る一つの方法はZWFの翻訳を促進すること
である。反応工程Aを中断することが好ましく、すなわち、本発明の酵母はEmbd
en-Meyerhof経路を介してグルコース−6−ホスフェートをピルベートに変換す
る酵素群の1つを発現することができないことが好ましい。これは、酵母ゲノム
から適切な遺伝子配列を欠失させるか、または酵素のアンチセンスメッセージを
転写するDNA配列を酵母中に導入することによって最も都合よく達成される。
発現されない酵素はPFKであることが好ましい。反応工程Aの他の反応はす
べて当該酵素を用いて可逆的(糖新生において)であるが、フルクトース−1,
6−ビスホスフェートのフルクトース−6−ホスフェートへの変換はPFKでは
なくフルクトースビスホスファターゼ(FBP)によって触媒される。したがっ
て、PFKの遺伝子を除去するとEmden-Meyerhof経路による解糖が阻害されるが
、糖新生は阻害されない。
あるいはまた、用いられている関連酵素を化学的に阻害してもよい。例えば、
PFKはATPまたはクエン酸を用いて阻害してもよい。反応工程Aは(正味)
2モルのNADHを生成する。反応工程Bは同じ正味の量の「還元力」を生じる
が、1モルNADHおよび1モルNADPHの形である(後者はグルコース−6
−ホスフェートの6−ホスホグリコノラクトンへの変換において生じる)。NA
DHはADHの特異的コファクター(共同因子)であるがNADPHはそうでは
ないので、本発明の酵母はさらにNADPHをコファクターとして利用できるA
DH(例えば、Thermoanaerobium brockiiにみられるようなNADPH特異的A
DH)を発現することが好ましい。そのような酵素はZymomonas sppまたは隠れ
てS.cerevisiaeに存在していてもよい、後者であれば最も好ましい。本発明の酵
母は、既知の改良/形質転換技術によって製造してもよい。さらに本発明の一局
面を構成するこの目的のための組換えDNAは関連酵素をコードするか、または
適切であれば、関連酵素の欠失を含む。そのようなDNAは発現を誘導するプロ
モーター配列を含むことが好ましいが、この配列が酵母中に天然に存在していれ
ばその必要はない。このDNAは既知の技術によって構築してよい。このDNA
は動物、例えば、ヒトまたは家畜、食物連鎖において物質から誘導することが好
ましい。
本発明のDNAは、例えば、PGDとKGA両方の転写および翻訳情報と選択
的マーカーを包含するヌクレオチドを含み、酵母中に挿入可能なプラスミド上に
あることが好ましい。ゲノム中の不要な/望ましくないDNAを含まないように
、所望の配列を酵母ゲノム中に組み込むことが好ましく、これは既知の手順(例
えば、EP-A-0231608に記載)によって行うことができる。
本発明の形質転換酵母は、市販用の蒸留酒のより効率的な製造や燃料アルコー
ルの製造に用いてよい。既知の燃料アルコール製造システムに対する本発明の利
点は、基質の範囲がはるかに広く、アルコールトレランスが増大していることで
ある。
本発明の形質転換酵母は、ビール、りんご酒、およびワインのようなアルコー
ル飲料の発酵に使用してよい。またこの酵母はジンやウォッカのような飲用蒸留
酒の発酵段階に使用してもよい。これらのどの目的にも、この酵母を固定化した
形で提供することが好ましいであろう。通常の支持体および通常の固定化技術を
使用してよい。
本発明の酵母は、高いアルコールトレランス(例えば、15%までかまたはそ
れ以上の)を持っている。したがって、この酵母は、例えば、水分含有量を減ら
すことによって使用および輸送が容易になる。
この新規酵母またはDNAは、試薬や条件を選択することによって各経路のい
ずれかのスイッチを入れるかまたは切る、切り替え可能な/条件付き発現系、例
えば、既知のタイプの制御可能なプロモーターを含んでいてよい。例えば、既知
のタイプの制御可能なプロモーターには、例えば、熱感受性の非天然のプロモー
ターを用いてよい。そのような系の存在によって、酵母が培養中に反応工程Bを
、そして発酵中に反応工程Aを利用するのを止めることが可能となる。
参考文献と添付の図面と併せて以下の実施例において本発明を説明する。
図1は、ClarkeとCarbon(1976)の構築した大腸菌遺伝子ライブラリーから分
離されたeddおよびeda遺伝子を含むプラスミドpCL37−44を示す。
図2は、zwf、edd、およびeda座の物理的マップ(Eganら、およびCa
rterらの、既述参照)と3つの転写解読枠のヌクレオチド配列を決定するのに用
いる配列決定プライマーの物理的マップを示す。ベクターpGEM7zf(+)
中にクローンされた挿入物も示している。
図3は、eddおよびeda転写解読枠と2つの遺伝子の増幅に用いる合成オ
リゴヌクレオチドの結合位置を示す。
図4は、eda細菌発現ベクターの構築に関する工程の模式図である。
図5は、eda酵母発現ベクターの構築に関する工程の模式図である。
図6は、非機能性PCR増幅edd DNAを包含するベクターの構築に関す
る工程の模式図である。
図7は、edd DNAにおけるPCR誘導エラーの置換に使用する工程を示
す。
図8は、edd酵母発現ベクターの構築を示す。
図9は、酵母edd/eda組み込みベクターの構築を示す。
図10は、形質転換構築物を検査するためのPCR戦略((1)37.1.6形質転
換体におけるEDAとEDDの存在、(2)遺伝子の位置と配向、および(3)
pWB44の組み込み部位の確認)を示す。
図11および12は、最小合成増殖培地と醸造用麦汁培地における酵母の発酵
プロフィールを現在の比重対時間(日)で示している。
実施例
プラスミドpLC37−44のサブクローニング(ClarkeとCarbon、1976)
プラスミドpLC37−44は大腸菌JA200株から分離された大腸菌遺伝
子ライブラリー由来のクローン(Thomsonら、1979)であり、Entner-Doudoroff
経路の遺伝子edaおよびeddを含有することが知られている(ClarkeとCarb
on、1976)。遺伝子edaおよびeddはそれぞれ酵素2−ケト−3−デオキシ
−6−ホスホグルコネートアルドラーゼ(KGA)と6−ホスホグルコネートデ
ヒドラターゼ(PGD)をコードしている。pLC37−44の物理的マップを
制限エンドヌクレアーゼ開裂分析によって作製し、図1に示す。通常の組換えD
NA法と公的に利用可能な物質を用いてサブクローンを得た。制限酵素は特記し
ない限りすべてIBIまたはGibco BRLから購入した。T4ポリメラーゼとT4 D
NAリガーゼはPharmaciaから得た。
より小さな断片(図2参照、EganらおよびCarterら、既述も参照)はPromega
から得たpGEM7 zf(+)中にサブクローンした。サブクローンは大腸菌
JM109株中で維持した(Yanisch-Perronら、1985)。細胞抽出物の調製
大腸菌株は20mMグルコースまたはグルコン酸ナトリウムを含む最小培地中
、37℃で増殖させた。標準最小培地の組成(g/L蒸留水)は、KH2PO4,
5;(NH4)2SO4(pH7.2に調整),1;MgSO4・7H2O,0.0
5;およびFeSO4・7H2O,0.005である。マグネシウム塩および鉄塩
を5%(w/v)MgSO4・H2Oおよび0.5%(w/v)FeSO4・7H2
Oの溶液として別々に滅菌し、これらをすでに滅菌した他の成分に無菌的に加え
た。
1%摂取物を18時間培養して増殖させた後、Sigma 4K10遠心器で7000rev/
分にて15分間遠心し、培養物300mLを回収した。回収した細胞は15mM
リン酸緩衝液で2回洗浄し、1mM DTT(ジチオスレイトール)を含有する
20mMリン酸緩衝液(pH7.8)20mLに再懸濁し、氷冷貯蔵した。
20μmで操作するチタニウムプローブ(チップ直径9.5mm)付MSE Soni
prep 150超音波破砕器を用い、洗浄細胞懸濁液20mLを総ばく露時間1.67
分で超音波処理した。細胞懸濁液を含む容器の周りを氷と海塩で囲んだ。超音波
処理は冷却しながら99秒間隔で20秒間の短時間行った。2回目と4回目のイ
ンターバル中に冷却処理を温度計でモニターし、細胞懸濁液の温度が4℃以下に
下がるのを待って次の超音波処理を行なった。
破砕した細胞は、Bechman L8-70M超遠心器を用い、100000gにて90分間遠心
した。上清をデカントし、氷冷貯蔵した。
酵素アッセイはNarbadら(1988)の記載に従って実施した。Kontron Uvikon 8
60分光光度計を用い1mLキュベット中で反応を行った。
表1の結果は、クローンした断片を持っていない菌株では、ED経路の酵素は
グルコネートを用いる増殖中にのみ誘導され、染色体にコードされた酵素の発現
はグルコースを用いる増殖中抑制されたことを示している。クローン1またはク
ローン2プラスミドのいずれかで形質転換したJM109細胞において、高レベルの
ED経路酵素がグルコースを用いる増殖中に検出され、プラスミドにコードされ
た酵素が構成的に発現することが示された。eda転写解読枠の増幅
オリゴヌクレオチドの合成はApplied Biosystems(ABI381A)DNA合成装置を用
いて行った。EcoRI制限エンドヌクレアーゼ開裂部位を組み込み、eda開
始コドンの上流のコドンをAAAに改変するために、天然の染色体配列から改変
体を作製した。この改変はeda遺伝子が酵母中で発現する場合に重要である。
eda遺伝子は以下のポリメラーゼ鎖反応(PCR)技術を用いて増幅された
:精製クローン2DNA(図2)50ng、合成オリゴヌクレオチド各0.4n
g、PCR反応緩衝液(10×)(Perkin-Elmer)10μL、Taqポリメラー
ゼ(Perkin-Elmer)2単位(水100μL中)、および鉱物油(60μL)を0
.5mL微量遠心管中で混合した。Perkin-Elmer熱サイクラーを用いて以下のサ
イクル条件を作製した:第一サイクル90℃2分、第二サイクル92℃/2分、
55℃/3分、82℃/2分、さらに次の28サイクルは90℃/2分、53℃
/3分、および72℃/2分。
反応混合物を平板ゲル電気泳動(Maniatisら、1982、159頁)で分析すると6
60塩基対の単一バンドが認められた。ゲルからのDNAの精製は、IBI電気
溶出装置を取り扱い説明書に従って使用し、3M酢酸ナトリウムを用いて行った
。MSE微量遠心器中で13000rpm、4℃で10分間DNAを遠心した。上清を注
意して除去し、DNAに70%(v/v)エタノール500μLを加えた。試料
を注意深く混合し、内容物を既述のごとく再遠心した。第二の70%v/vエタ
ノール添加および遠心後、DNAを乾燥し、滅菌水6μL、10×制限緩衝液C
(IBI)2μL、およびEcoRI制限エンドヌクレアーゼ(IBI)20単
位中に再懸濁し、37℃の水浴中で3時間インキュベーションした。60分後、
反応混合物に40mMスペルミジン2μLを加えた。この混合物を、既述のごと
く平板ゲル電気泳動を用いて再度精製し、電気溶出した。eda細菌発現ベクターの構築
第4図に示すように、eda PCR増幅産物をpKK223−3(Pharmacia)に
クローニングすることにより、eda細菌発現ベクターpKKEDAを構築した。
10X 反応緩衝液C(IBI)2μlを加えた全反応体積20μlのIBI中、
ベクターpKK223−3(600μg)をEcoRI(20単位)で切断した。その
混合物を37℃で3時間インキュベートしたが、40mM スペルミジン2μlを
60分後に加えた。平面アガロースゲル電気泳動を利用して、切断したベクター
をゲル精製した(Maniatisら、1982年、159頁)。4585塩基対のシン
グルバンドを切り取り、IBI電気溶出装置を用いて電気溶出した。製造業者の
説明書に記載されているように、DNAのレタデーションおよび沈降には3M
酢酸ナトリウムを使用した。次いで、DNAを先に記載したように70%V/V
エタノール中で洗浄して、滅菌蒸留脱イオン水6μlに再び懸濁させた。
edaコード領域を含むDNAフラグメントのプラスミドpKK223−3への
連結を以下の反応混合物中で行った。
eda PCRフラグメント 1μl(300μg)
EcoRI切断したpKK223−3 2μl(200μg)
10X 連結緩衝液(Pharmacia) 1μl
T4 DNAリガーゼ(Pharmacia) 0.5μl
10mM ATP 1μl
水 4.5μl
上記の反応混合物を10℃で16時間インキュベートした。連結後、その混合
物を20X SSC(Maniatisら、1982年、396頁)5μlおよび滅菌蒸留
脱イオン水95μlで100μlに希釈した。
連結混合物の大腸菌JM105株への形質転換は、Maniatisら、1982年
、250頁により記載されている通りであった。形質転換体混合物を、50μg
/mlアンピシリンを添加したLB寒天に接種し、37℃で一晩インキュベートし
た後に500個の形質転換細胞を得た。コロニーハイブリダイゼーションを10
0個の形質転換細胞で行った(Maniatisら、1982年、324頁)。
ランダムにプライムされたα32P−dCTP eda PCR増幅産物を使用して
、これらの形成転換細胞からDNAをプローブした。pKK223−3プラスミ
ド中にeda挿入断片を有していない形質転換細胞のものと比較したそれらのシグ
ナル強度により、陽性の可能性のあるedaクローンを検出した。100個の形質
転換細胞のうち、26個が陽性反応を示した。小規模のプラスミド単離をこれら
の26個のクローンで行った(Maniatisら、1982年、250頁)。挿入され
たDNAの方向を確証するために、10X 反応緩衝液2μlを含む全反応体積2
0μl中、eda陽性プラスミドをPvul制限エンドヌクレアーゼ(10単位)で切
断(開裂)した。その反応物を37℃で3時間インキュベートした後、平面アガ
ロースゲル電気泳動により分析した(Maniatisら、1982年、159頁)。挿
入されたedaを含むプラスミドpKK223−3を2回切断した(第4図)。eda遺
伝子を正しい方向で含むプラスミドは、773塩基対フラグメントの存在により
特徴付けられた。間違った方向でのeda挿入断片は、1025塩基対フラグメン
トの存在により特徴付けられる。26個の形質転換細胞のうち5つは、eda遺伝
子を正しい方向で有していた。これらの正しく方向づけられたプラスミドは、p
KKEDAと名付けられた。大腸菌におけるeda発現の確認
大腸菌N3041株は、eda遺伝子産物を産生しない(Shurvintonら、198
4年)。5つの、正しい方向にedaを含むpKK223−3プラスミドを菌株N3
041に形質転換した(Maniatisら、1982年、250頁)。形質転換細胞を
選択した。N3041における、正しい方向にクローンされたedaを有するpK
K223−3(pKKEDA)の存在は、野生型の表現型、すなわち、機能的eda
遺伝子産物をもたらした。
プラスミドpKKEDAに含まれるeda遺伝子の配列決定を行った。決定され
たヌクレオチド配列は、以下のことを除き、プラスミドpLC37−44におい
て見い出される通りであった:該遺伝子のPCR増幅に用いた合成オリゴヌクレ
オチドによる5'および3'末端での変化(第2図参照);およびリジンをコードす
るコドンAAAが、同じくリジンをコードするAATに変化した2988位での
変化(Carterら)。この保存的な変化は、edaタンパク(KGA)のアミノ酸配列
に対する変化を何らもたらさなかった。eda酵母発現ベクターの構築
酵母発現プラスミドpCH100(C.Hadfieldら、1987年)およびpKK
EDAを以下のようにしてEcoRIで切断した:プラスミドDNA1μgを、Ec
oRI制限エンドヌクレアーゼ(IBI)20単位、全反応体積20μl中の10X
反応緩衝液C2μlで切断した。その混合物を37℃で3時間インキュベートし
た。60分インキュベートした後、40mM スペルミジン2μlを加えた。
消化されたプラスミドを平面アガロースゲル電気泳動により分析した(Maniat
isら、1982年、159頁)。pKKEDAから得られた660塩基対フラグ
メントおよびpCH100の7490塩基対フラグメントをゲルから切り取った
。製造業者の説明書で記載されている通り、両方のフラグメントをGeneclean I
Iキット(BIO 101、CA、USA)により精製した。
eda遺伝子フラグメント、およびベクターpCH100の連結を以下の反応混
合物中で行った。
eda DNA 3μl(200ng)
pCH100 DNA 3μl(100ng)
10X リガーゼ緩衝液(Pharmacia) 1μl
T4 DNAリカーゼ(Pharmacia) 1μl
10mM ATP 1μl
水 1μl
反応混合物を15℃で16時間インキュベートした後、滅菌水で50μlに希
釈した。
大腸菌JM109株(Yanisch−Perronら、1985年)を、Maniatisら、1
982年、250頁により記載されている上記の連結反応で形質転換した。形質
転換細胞の選択を、50μg/ml アンピシリンを添加したLB寒天で行った。プ
レートを37℃で24時間インキュベートした。300個の形質転換細胞を、5
0μg/ml アンピシリンを添加した2つのLB寒天プレートに再び塗抹した。コ
ロニーハイブリダイゼーションを形質転換細胞で行った。α32P−dCTPの、
ランダムにプライムされた精製eda DNAを使用して、形成転換細胞DNAをプ
ローブした。大腸菌は染色体上にこの遺伝子を1コピーだけ持っているため、プ
ラスミドが保持するこの遺伝子の複数のコピーによる強度がバックグラウンド以
上となるものを探した。26個の形質転換細胞がオートラジオグラフにおいて明
らかな強度の増大を示した。小規模のプラスミド単離をこれらの26個の陽性ed
aクローンで行った。以下の混合物中、その26個のプラスミドを制限エンドヌ
クレアーゼSphIおよびPstI(IBI)で消化することにより、edaフラグメン
トの方向を決定した。
プラスミドDNA 8μl(200ng)
SphI 1μl(10単位)
PstI 1μl(10単位)
10X 反応緩衝液A(IBI) 2μl
水 8μl
反応物を37℃で3時間インキュベートした。次いで、その反応物を平面アガ
ロースゲル電気泳動により分析した。正しい方向で挿入されたedaフラグメント
を有するプラスミドは800塩基対フラグメントを生じるが、間違った方向では
1050塩基対フラグメントを生じた(第5図)。正しく方向づけられたプラスミ
ドは、pWB37と名付けられた。edd転写解読枠の増幅
ポリメラーゼチェインリアクション(PCR)法を用い、2つの遺伝子に隣接す
る新たに導入されたEcoRI部位を用いて、edd遺伝子の完全なコード配列を細
菌ベクターpKK223−3にサブクローンした。Applied Biosystems AB
1381A DNA合成装置を用いて、以下のオリゴヌクレオチドを合成した。
上記プライマーを、ATG開始コドンの3塩基上流をAに変えるよう設計した
。このことにより、酵母における遺伝子の発現効率が改良されるであろう。以下
のPCR反応条件を使用して、精製したクローン2のDNAからedd遺伝子を増
幅した。0.5mlの微量遠心分離管中、精製したクローン2のDNA(50ng)、
各々の合成オリゴヌクレオチド0.4mg、PCR反応緩衝液10X(Perkin−El
mer)、Taqポリメラーゼ(Perkin−Elmer)2単位、水100μlまで、およびP
CRクルード鉱油(60μl)を混合した。Perkin-Elmer熱循環機を以下の循環
条件で用いた:第1循環、92℃で2分間;第2循環、92℃/2分、53℃/
3分、72℃/2分;さらに90℃/2分、53℃/3分、72℃/2分で28
循環続けた。増幅したedd DNAを平面アガロースゲル電気泳動により精製した
(Maniatisら、1982年、159頁)。そのゲルから1800塩基対フラグメ
ントを切り取り、IBI電気溶出装置を用いて電気溶出により精製した。製造業
者の説明書に記載されているように、DNAの捕獲および沈降には3M 酢酸ナ
トリウム−エタノールを使用した。MSE ミクロ遠心分離機中、DNAを4℃
、13,000rpmで10分間遠心分離した。上清を注意深く取り除いて、そのD
NAに70%V/V エタノール500μlを加えた。試料を注意深く混合して、
内容
物を先のように再び遠心分離した。もう一度、70% V/Vエタノールを加え
て遠心分離した後、そのDNAを乾燥して、滅菌水6μl、10X 制限緩衝液C
(IBI)2μl、およびEcoRI制限エンドヌクレアーゼ(IBI)20単位に再
び懸濁させた後、水浴中、37℃で3時間インキュベートした。60分後、その
反応混合物に40mM スペルミジン2μlを加えた。平面ゲル電気泳動を利用し
、その混合物を再び精製して、先のように電気溶出した。edd細菌発現ベクターの構築
eddコード領域を含むDNAフラグメントのプラスミドpKK223−3への
連結を以下の反応混合物中で行った。
edd PCRフラグメント 1μl(300mg)
EcoRI切断したpKK223−3 2μl(200mg)
10X 連結緩衝液(Pharmacia) 1μl
T4 DNAリガーゼ(Pharmacia) 0.5μl
10mM ATP 1μl
H2O 4.5μl
上記の反応物を15℃で16時間インキュベートした後、全量50μlとなる
まで希釈した。連結混合物を使用して、先に記載したようにJM109を形質転
換した(Maniatisら、1982年、250頁)。アンピシリン(50μg/ml)を添
加したLB寒天上、37℃で24時間培養することにより、形質転換細胞を選択
した。無作為に選んだ形質転換細胞について、pKK223−3中に正しい方向
でedd挿入物が存在しているかを分析した。プラスミド単離を先に記載したよう
に行った(Maniatisら、1982年、250頁)。10X 反応緩衝液E(IBI)
2μlを含む全反応体積20μl中、プラスミドDNA300ngをSmaI制限エン
ドヌクレアーゼ(10単位)で切断することにより、挿入断片の方向を決定した。
37℃で3時間インキュベートした後、そのようにして産生されたフラグメント
を平面アガロースゲル電気泳動により分析した(Maniatisら、1982年、15
9頁)。正しく方向づけられたクローンは1332塩基対フラグメントを生じる
が、間違った方向のものは480塩基対フラグメントを生じた。正しく方向づけ
られた
プラスミドは、pKKEDDと名付けられた(第6図)。
pKKEDDにおけるPCR増幅eddクローンのDNA配列決定を行い、エラ
ーを見い出した。これらのエラーは、リジン(AAA)コドンを終止コドン(TA
A)に変えた(第2図中、931位)。第7図に示す図式を用いて、eddコード配列
を修復した。
先に記載したようにEcoRIで消化することにより、pKKEDDから得られ
たedd遺伝子を含むEcoRIフラグメントを切断して取り出した。ベクターpI
C19Rもまた、EcoRIで消化した。特定部位が切断されたフラグメントを平
面アガロースゲル電気泳動により分離した(Maniatisら、1982年、159頁
)。製造業者の説明書に記載されているように、IBI電気溶出装置および3M
酢酸ナトリウムを使用して、edd遺伝子を含む180塩基対フラグメントおよび
線状化されたpIC19Rを電気溶出した。4℃、13,000rpmで遠心分離し
てDNAをペレットとし、上清を取り除いた。そのDNAに70% V/Vエタ
ノール500μlを加えて、穏やかに撹拌した。再び遠心分離してDNAを再び
ペレットとした後、エタノールを取り除き、DNAを乾燥して、微量のエタノー
ルを取り除いた。そのDNAを滅菌蒸留脱イオン水10μlに再び懸濁させた。
以下の反応混合物を用いて、線状化されたpIC19Rベクターおよびedd遺伝
子を含むDNAフラグメントを連結した(Maniatisら、1982年、392頁)
。
edd DNA 5μl(300ng)
EcoRI切断したpIC19R 2μl(200ng)
10X 連結緩衝液(Pharmacia) 1μl
T4 DNAリガーゼ 0.5μl
10mM ATP 1μl
水 0.5μl
反応物を15℃で16時間インキュベートした。連結後、その混合物を20X
SSC(Maniatisら、1982年)5μlおよび滅菌蒸留脱イオン水85μlで1
00μlに希釈した。大腸菌JM109株をManiatisら、1982年、250頁
に記載されているように形質転換した。形質転換細胞を、アンピシリン(50μg
/m
l)、および0.15mg/ml 5−ブロモ−4−クロロ−3−ヨード−BD−ガラク
トピラノシド(X−Gal)、および0.25mg/ml イソプロピル−BD−チオガラ
クトピラノシド(IPTG)を添加したLB寒天で選択した。その選択培地を37
℃で24時間インキュベートした。可能性のあるクローンを、上記培地上での白
色の外観により選択した。
edd遺伝子が挿入されたpIC19Rを有する、無作為に選んだ白色のコロニ
ーについて、小規模のプラスミド単離(Maniatisら、1982年、368頁)を
行った。制限エンドヌクレアーゼSphIおよびAccIで開裂させることにより、
eddヌクレオチド配列中にPCR法によって生じた誤りを含むedd遺伝子の中心(
1545塩基対)部分を取り除いた。クローン1のプラスミドDNA(第2図)を
上記のように単離し、制限酵素SphIおよびAccIで消化して、中心領域の天然
edd DNAを切断した。平面アガロースゲル電気泳動を利用して、消化された
DNAを分離した(Maniatisら、1982年、159頁)。クローン1から切断
したedd DNAのフラグメント、およびedd遺伝子の「末端」を含むpICED
Dの2955塩基対フラグメントをゲルから切り取り、先に記載したように電気
溶出により精製した。
2つのフラグメントを以下の反応により連結させた。
pICEDD1 DNA(SphI/AccI) 4μl(300ng)
edd DNA(SphI/AccI) 3μl(200ng)
10X リガーゼ緩衝液(Pharmacia) 1μl
T4 DNAリガーゼ(Pharmacia) 1μl
10mM ATP 1μl
上記反応物を15℃で16時間インキュベートした後、滅菌蒸留脱イオン水で
全量50μlに希釈した。先に記載したように、連結混合物を大腸菌JM109
株に形質転換した(Maniatisら、1982年)。形質転換細胞を、50μg/ml
アンピシリンを添加したLB寒天で選択した。450個の形質転換細胞のうち、
100個を、50μg/ml アンピシリンを添加したLB寒天に再び接種した。こ
れらの再び接種した形質転換細胞のうち20個を無作為に選び、小規模のプラス
ミド
単離を行った(Maniatisら、1982年、368頁)。10X 反応緩衝液C(I
BI)2μlを含む全反応体積20μl中、これらのプラスミド(各々、300ng)
をEcoRI(20単位)で消化した。その反応物を37℃で3時間インキュベート
した後、平面アガロースゲル電気泳動により分析した(Maniatisら、1982年
、159頁)。
EcoRIによって生じた1800塩基対のフラグメントを含む組換えプラスミ
ドは、PCR法によって生じたedd遺伝子の「末端」に連結したクローン1由来
のedd DNAを含んでいた。このプラスミドは、pICEDD1と名付けられた
。edd酵母発現ベクターの構築
edd遺伝子の転写解読枠を細菌(tac)または酵母/細菌プロモーター(ADHI)
のいずれかの隣にクローンしようとする試みは全て失敗した。プロモーターと逆
の方向になったクローンしか得られなかった。こういった困難は、edd遺伝子発
現の産物である酵素6−ホスホグルコネートデヒドラターゼの活性によって生成
された化合物である2−ケト−3−デオキシ−6−ホスホグルコネート(KDP
G)の毒性により生じた。
この毒性の問題を克服するため、非常に厳格に調節された酵母プロモーターT
HI4の下流にedd遺伝子転写解読枠をクローンした。さらに用心のため、この
新規シャトルベクターは、eda発現ベクターを持つ大腸菌菌株に形質転換された
。edaの遺伝子産物は、KDPGを無毒性のピルベートとグリセルアルデヒド−
3−ホスフェートとに分解する。この戦略では、edaを含むプラスミド上の選択
マーカーとは別の、大腸菌と酵母の両方に対する選択マーカーを有するようにed
dシャトルベクターを設計する必要があった。第8図は、このベクター(pFLA
N10)の段階的な構築を示す。
第8図に示すpFLAN10ベクターは、最初にpFL38から誘導される。
SalIおよびHindIIIを用い、pFL38の18塩基対フラグメントを以下のよ
うに取り除く。
pFL138 精製DNA(SphI/AccI) 4μl(500ng)
SalI(10単位) 1μl
HindIII(10単位) 1μl
10X 反応緩衝液A 2μl
水 12μl
反応混合物を37℃で3時間インキュベートした。60分後、40mM スペル
ミジン2μlを加えた。その反応混合物を、平面アガロースゲル電気泳動、電気
溶出により精製して、(先に記載したように)70% v/vエタノールで洗浄し
た。10X 反応緩衝液A(IBI)2μlを含む全量20μl中、ベクター500n
gをSalI1μl(10単位)およびHindIII1μl(10単位)で消化することによ
り、このベクターから、pCH98から得られたADH1プロモーター/CYC
1ターミネーターカセット(C.Hadfieldら、1987年)を切断した。37℃で
3時間インキュベートし、40mM スペルミジン2μlを60分後に加えた。消
化物を平面アガロースゲル電気泳動により分析した。1100塩基対フラグメン
トをゲルから切り取り、電気溶出により精製して、先に記載したように70%
v/vエタノールで洗浄した。
以下の反応を利用して、1100塩基対フラグメントのADH1プロモーター
/CYC1ターミネーターを線状化されたpFL38に結合させた:上記のよう
に精製したpFL38 2μl(200ng)、ADH1/CYC1フラグメント4μ
l(300ng)、10X リガーゼ緩衝液(Pharmacia)1ml、T4 DNAリガーゼ(
Pharmacia)1μl、10mM ATP1μlを15℃で16時間インキュベートし
た後、滅菌蒸留脱イオン水で50μlに希釈した。連結混合物を使用して、大腸
菌JM109株を形質転換した(Maniatisら、1982年、250頁)。50μg
/mlアンピシリンを添加したLB寒天で培養した後、6個の形質転換細胞を検出
した。小規模のプラスミド単離を6個の形質転換細胞で行った(Maniatisら、1
982年、250頁)。プラスミドDNAの消化を以下のように行った:形質転
換細胞DNA300ngを、SalI1μl(10単位)、HindIII1μl(10単位)、
滅菌蒸留脱イオン水で20μlとした反応緩衝液A(IBI)2μlと共に37℃で
3時間インキュベートした。平面アガロースゲル電気泳動による分析を先に記載
したように行った。得られた6個の形質転換細胞は全て、1100塩基対のAD
H1/CYC1
フラグメントを含むことが明らかになった。このプラスミドは、pFLAN1と
名付けられた(第8図)。
プラスミドpFLAN1を以下のように調製した:プラスミドpFLAN1D
NA(300ng)を制限エンドヌクレアーゼXmn1(1μl、10単位)で消化した
。この唯一の開裂部位は、pFLAN1のアンピシリン耐性遺伝子内にある。1
X反応緩衝液A(IBI)中、GenBlock DNA300ngをHincII制限エンドヌ
クレアーゼ10単位で消化することにより、GenBlockプラスミド(Pharmacia)
からのカナマイシン耐性遺伝子を含む1300塩基対フラグメントを開裂させた
。両方の反応から得られた制限フラグメントを先に記載したように平面アガロー
スゲル電気泳動により分離した。線状化されたpFLAN1プラスミドおよびG
enBlockから得られた1300塩基対フラグメントをゲルから切り取り、Langr
idgeら(1980年)の記載に従ってCTAB/ブタノールを用いて精製した。
2つの精製フラグメントを以下のように連結した:pFLAN1 DNA(200
ng)、1300塩基対のカナマイシン耐性遺伝子を含むフラグメント(200ng)
、10X リガーゼ緩衝液(Pharmacia)(1μl)、T4 DNAリガーゼ(Pharmac
ia)(1μl)、10mM ATP(1μl)を滅菌蒸留脱イオン水で10μlとした。そ
の反応混合物を15℃で16時間インキュベートした後、滅菌蒸留脱イオン水で
50μlに希釈した。連結混合物を使用して、大腸菌JM109株をManiatisら
、1982年、250頁に記載されているように形質転換した。形質転換細胞を
、50μg/ml カナマイシンを添加したLB寒天で選択した。その選択培地を3
7℃で24時間インキュベートした。50μg/ml アンピシリンを添加したLB
寒天上に形質転換細胞を再び接種することにより、アンピシリン耐性の消失を確
認した。
10X 反応緩衝液A2μlを含む全反応容量20μl中、EcoRI(10単位)
で消化することにより、pFLAN1の433塩基対のADHプロモーター(3
00ng)を取り除いた。37℃で3時間インキュベートした後、既述のごとく制
限フラグメントを平面アガロースゲル電気泳動により分離した。6577塩基対
フラグメントをゲルから切り出し、Langridgeら(1980年)の記載に従って
CTAB/ブタノール法を用いて精製した。EcoRIは、10X 反応緩衝液A
2μ
lを含む全反応容量20μl中、pICEDD1 DNA300ngをEcoRI10
単位で開裂させることによって、プラスミドpICEDD1からeddを含む18
00塩基対フラグメントを生成した。再び、1800塩基対フラグメントを(先
に記載した)平面アガロースゲル電気泳動により分離した。バンドを切り出し、
CTAB/ブタノール法(Langridgeら、1980年)を用いて精製した。単離さ
れたフラグメントを両方とも、蒸留脱イオン水6μlに再び懸濁させた。2つの
フラグメントを以下の反応で連結した:pFLAN6 DNA(200ng)、18
00bp eddフラグメント(300ng)、10X リガーゼ緩衝液(Pharmacia)(1μ
l)、T4 DNAリガーゼ(Pharmacia)(1μl)、10mM ATP(1μl)を滅菌
蒸留脱イオン水で10μlとした。連結混合物を15℃で16時間インキュベー
トした後、滅菌蒸留脱イオン水で50μlに希釈した。この連結混合物を使用し
て、大腸菌JM109株を先に記載したように形質転換した。50μg/ml カナ
マイシンを添加したLB寒天上、37℃で24時間培養することにより、形質転
換細胞を選択した。無作為に選んだ形質転換細胞からプラスミドを単離し(Mani
atisら、1982年、250頁)、10X 反応緩衝液A2μlを含む全反応容量
20μl中、各々のプラスミド500ngをBamHI(10単位)およびHindIII(1
0単位)で消化した。反応物を37℃で3時間インキュベートした後、制限フラ
グメントを(先に記載した)平面アガロースゲル電気泳動により分析した。edd遺
伝子を正しい方向で有するプラスミドは、2200塩基対の制限フラグメントを
産生した。このプラスミドは、pFLAN8と名付けられた。
全量150μlのT4ポリメラーゼ緩衝液中、pWB20 DNA35μgをEc
oRI50単位で消化することにより、厳格に調節された酵母プロモーター、T
H14プロモーターをpWB20から取り除いた。37℃で一晩インキュベート
した後、T4ポリメラーゼ10単位の他に、dNTPを加えて、その混合物を3
7℃で60分間インキュベートし、「平滑末端」DNAとした。次いで、微小遠
心分離管を75℃で10分間インキュベートして、酵素を不活性化した。Prome
ga Wizard DNA浄化(clean up)法を利用して、DNAを浄化した。次いで、
そのDNAを全量200μlのHindIII50単位で消化した。37℃で90分間
イン
キュベートした後、ローディング(loading)染料(ブロモフェノールブルー)40
μlを加えて、全量を1% w/v 低融点(LMP)アガロースゲルにロードした
。Promega Wizard清浄法を利用して、1.1kbのHindIII−EcoRIフラグメ
ントをゲルから精製した(製造業者の説明書を参照)。回収されたDNAをエタノ
ールで沈降させ、TEに再び溶解して、最終DNA濃度を50−200μg ml-1
とした。
次いで、pBSKS(20μg)を全量150μlのHindIII50単位(37℃で
90分間)およびSmaI50単位(30℃で90分間)で消化した。ゲルローディ
ング染料40μlを加えて、全量を1% w/v LMPアガロースゲルにロード
した。次いで、Promega Wizardシステムを利用して、大きな、4.0kbのフラ
グメントを精製した。精製したTHI4プロモーターフラグメントおよび消化さ
れたpBSKSフラグメントの連結を以下のように行った。pBSKS DNA
100ngおよびTHI4プロモーターフラグメントDNA250ngをT4 DN
Aリガーゼ4単位および全量10μlの10X リガーゼ反応緩衝液1μlと混合
した。連結反応物を16℃で16時間インキュベートした。次いで、連結混合物
5μlを使用して、コンピテントJM109細胞200μlを形質転換した。形質
転換細胞を、アンピシリン、XgalおよびIPTGを添加したLB寒天で増殖す
る白色のコロニーとして選択した。1プレートにつき200個のコロニーが増殖
し、これらのうち、85%が白色であった。白色のコロニー(6個)を選び、小規
模のプラスミド調製を行った。これらのプラスミドDNAをHindIIIおよびBam
HIで消化した。消化したプラスミドを1% アガロースゲルで分析した。6個
とも全て、1.1kbのTHI4プラスミドフラグメントを含んでいた。6個のう
ち1個を単離して、pBSKS36と名付けた。
次いで、10X T4 DNAポリメラーゼ緩衝液中、SalI(40単位)を用い
、pBSKS36 DNA40μgを37℃で一晩消化した。次いで、T4 DN
Aポリメラーゼ10単位を加えて、その混合物を37℃で60分間インキュベー
トした。次いで、微小遠心分離管を75℃で10分間インキュベートして、酵素
を不活性化した。Promega Wizard DNA浄化法を用いて、DNAを浄化した
。次
いで、それを、37℃で60分間インキュベートすることにより、BamHI(4
0単位)で消化した。次いで、ゲルローディング染料40μlを加えて、全量を1
% w/v LMPアガロースTBEゲルに流した。Promega Wizard DNA法
を利用して、1.1kbのTHI4プロモーターDNAフラグメントをゲルから精
製した。
10X T4ポリメラーゼ緩衝液中、AatII40単位を用い、pFLAN8 D
NA27μgを37℃で一晩消化した。次いで、T4 DNAポリメラーゼ10単
位を加えて、その混合物を37℃で60分間インキュベートした。次いで、微小
遠心分離管を75℃で10分間インキュベートして、酵素を不活性化した。Pro
mega Wizard DNA法を用いて、DNAを浄化した。次いで、BamHI(40単
位)を用い、線状化されたDNAを37℃で60分間再び消化した。このことに
より、400bpのフラグメントを取り除く。大きなベクターフラグメントを1%
w/v LMPアガロースゲルで単離し、Promega Wizard DNA法を用いて精
製した。全量10μlの10X リガーゼ緩衝液の他に、T4 DNAリガーゼ4
単位を用いて、THI4プロモーターフラグメント(SalIで平滑末端とした/
BamHI)250ngおよびこのpFLAN8ベクターDNA100ngを連結した
。この混合物を16℃で一晩インキュベートした。この連結混合物5μlを使用
して、コンピテントJM109細胞200μlを形質転換した。形質転換細胞を
、カナマイシンを添加したLB寒天での増殖に関して選択した。1プレートにつ
き12個のコロニーが得られた。これらを小規模のプラスミド調製によりスクリ
ーニングした。これらのうち10%がTHI4プロモーター挿入断片を含むこと
を制限分析により示された。これらのうち1個が単離されて、pFLAN10と
名付けられた。
pFLAN10はそれ自体、大腸菌内で安定であることが分かったため、pF
LAN10を、eda発現ベクターを持つ大腸菌菌株中に導入する必要はなかった
。しかし、両プラスミド(pFLAN10およびpWB37)を一緒に酵母に導入
しようとする試みはすべて不成功に終わり、形質転換細胞は得られなかった。従
って、edaおよびedd発現カセットを両方含む単一ベクターを構築することが決定
さ
れた。eda−edd酵母発現ベクターの構築
以下のごとく、(THI4プロモーター、eddコード配列およびCYC1ターミ
ネーターを含む)edd発現カセットを3.5kbのHindIIIフラグメントとしてpF
LAN10から遊離させた。消化
pFLAN10 DNA 10μl(20μg)
10X 反応緩衝液A 2μl
1XTE 6μl
HindIII 2μl(20単位)
反応混合物を37℃で60分間インキュベートした。その混合物に10X ア
ガロースゲルローディング緩衝液2μlを加えた後、これを15Vで16時間泳
動する0.6% w/v アガロースTBEゲルを用いる水平アガロースゲル電気
泳動により精製した。剃刀の刃を用いて、3.5kbのフラグメントをゲルから切
り出した。QIAEX DNA Gel Extraction Kit(Qiagen Inc.、CA、
USA)を用いて、DNAを製造業者の説明書に記載されているように精製した
。pWB37もまた、HindIIIで消化した。消化
pWB37 DNA 12μl(3.6μg)
10X 反応緩衝液A 2μl
1XTE 5μl
HindIII 1μl(20単位)
反応混合物を37℃で60分間インキュベートした。次いで、10X アガロ
ースゲルローディング緩衝液1μlを加えて、15Vで16時間泳動する0.6%
w/v アガロースTBEゲルを用いる水平アガロースゲル電気泳動により、消
化物を分析した。次いで、pWB37の、大きな、6.0kbのフラグメントをゲ
ルから切り出し、Geneclean II キット(BIO,Inc.、USA)を用いて、製
造業者の説明書に記載されているように精製した。
次いで、精製された6.0kbのpWB37 HindIIIフラグメントおよび精製さ
れた3.3kbのpFLAN10 HindIIIフラグメントを以下のように連結した。連結
精製された6.0kbのpWB37 HindIII
フラグメントDNA 5μl(1μg)
精製された3.3kbのpFLAN10 HindIII
フラグメントDNA 10μl(2μg)
10X 連結緩衝液(Pharmacia) 2μl
10mM ATP 2μl
T4 DNAリガーゼ(Pharmacia) 1μl
次いで、反応混合物を16℃で16時間インキュベートした。連結混合物を使
用して、大腸菌DH5a株のコンピテント細胞(Hanahan、1983年、Bethes
da Research Laboratories、1986年)を先に記載したように形質転換した(
Maniatisら、1982年、250頁)。
アンピシリン(100μg ml-1)を添加したLB寒天上、37℃で24時間培養
することにより、形質転換細胞を選択した。30個の形質転換細胞が、これらの
選択プレートで増殖した。これらを選び取って、小規模のプラスミド単離を先に
記載したように調製した(Maniatisら、1982年、368頁)。
これらのプラスミドを以下のようにHindIIIで消化した。消化
プラスミドDNA 10μl(約2μg)
10X 反応緩衝液A 2μl
1XTE 7μl
HindIII 1μl(10単位)
反応混合物を37℃で60分間インキュベートした後、10X アガロースゲ
ルローディング緩衝液2μlを加えて、100Vで3時間泳動する0.8% w/
v アガロースTBEゲルを用いる水平アガロースゲル電気泳動によって消化物
を分析した。5つの組換えプラスミドを同定すると、これらは、6.0kbのpW
B
37 HindIIIフラグメントおよび3.3kbのpFLAN10 HindIIIフラグメ
ントを含んでいた。これらの5個の形質転換細胞を、アンピシリン100μg ml-1
を添加したLB寒天に再び接種して、37℃で24時間インキュベートした。
次いで、各々の5つのプレートから単一コロニーを選び、先に記載したように小
規模のプラスミド調製に使用した(Maniatisら、1982年、368頁)。次い
で、これらのプラスミドをSphIで消化し、組換えプラスミド中のedaカセット
に対するeddカセットの方向を決定した。消化
プラスミドDNA 10μl(約2μg)
10X 反応緩衝液 2μl
1XTE 7μl
SphI 1μl(10単位)
反応混合物を37℃で60分間インキュベートした。次いで、10X アガロ
ースゲルローディング緩衝液2μlを加えて、15Vで16時間泳動する0.8%
w/v アガロースTBEゲルを用いる水平アガロースゲル電気泳動により、消
化物を分析した。5つの組換えプラスミドでは全てeddカセットは同じ挿入方向
を示している:すなわち、eddカセットはedaカセットと同じ転写方向にある。遺
伝子をこの方向で有するプラスミドは、6.7kbおよび2.6kbのSphIフラグメ
ントを生じる。このプラスミドは、pWB44と名付けられている;第9図参照
。
eda−edd酵母発現ベクターを用いる酵母菌株の形質転換
菌株37.1.6は、MATa ura3−52 leu2 trp1 pfk1−1 pfk2::L
EU2である。この菌株はグルコース培地上では成長することができない。
菌株37.1.6におけるpfk1突然変異およびpfk2突然変異の両方の存在を、
菌株34.1.6(MATa leu2 trp1 pfk1Δ1 pfk2::LEU2)と接合さ
せることによって確認した。これらの菌株をYEPG寒天(両方の単相体が発育
しうる)上で接合させ、所定の時間経過後にYEPD寒天上で複製させた。成長
は起こらなかったが、このことは単一機能のPFK遺伝子がいずれの単相体にも
存在しないことを示す。両方の菌株の接合受容能を、適当な接合テスターを用い
て同時に検証した。
pWB44の構築中、酵母ARS配列は自律性プラスミド維持を要求し、3'末
端に存在するtrp1遺伝子の一部は除去され、edd発現カセットに置き換えられた
。これは、酵母内にpWB44を維持するには、pWB44を染色体に組込まなけ
ればならないこと、およびpWB44が明確な酵母選択マーカーを持たないこと
を意味する。もしedaおよびeddカセットの両方が酵母内で発現するのであれば、
組込まれたプラスミドpWB44を維持するための選択をグルコース培地上でな
し得たであろう。このような理由から、pWB44DNAを用いて酵母菌株37.
1.6を形質転換し、YEPD寒天上で形質転換体を選択するためのひとつの方
策を発案した。pWB44に存在するtrp1コーディング配列の5'部分は、プラ
スミド上の酵母DNA配列の最大のセグメントであり、それゆえに酵母染色体へ
の組込み的組換えが最も生じ易い乗り換え点である。
プラスミドpWB44を用いる酵母菌株37.1.6の形質転換を次のとおり行
った:白金サジ量の37.1.6細胞を寒天平板からすくい取り、0.5mlのYE
PGEを入れたマイクロ遠心分離管に移した。次いで、これを室温にて10秒間
マイクロ遠心分離機にかけ、ペレット化した。遠心分離管を逆さにして一回振り
、上清を傾瀉した。次いで、10μl(100μg)の担体DNA[音波処理し、
変性したサケ精巣DNA(シグマ製)]および10μl(約2μg)の非切断pWB
44DNA(前述したように小さいスケールのプラスミド作製によって単離した
もの)を加え、渦巻き混合に付した。次いで、0.5mlの新たに調製したPEG/
酢酸リチウム/TE混合物(9mlのフィルター滅菌45%w/vPEG4000(
シグマ製)、1mlの1M酢酸リチウム、0.1mlの1Mトリス−塩酸,pH7.5
、0.02mlの0.5M EDTA)を加え、渦巻き混合した。次いで、遠心分離
管を室温で16時間インキュベートした。
100μlの該混合物をYEPD寒天に直接散布した。平板を21℃で14日
間インキュベートした。12個の酵母コロニーがYEPD寒天上で成長した。こ
れらを採取し、YEPD寒天上に再度置き、21℃で6日間インキュベートした
。37.1.6内でのedaおよびeddの存在を確認するための証拠。一連のPCR実
験
によって、edaおよびeddの相互に対する方向およびpWB44の組込み部位の情
報を得た。PCR方策の全容は図10を参照せよ。
12個の37.1.6形質転換体候補すべてにおいてeda発現カセットの存在を
確認するために、オリゴヌクレオチドプライマーを用いてeda発現カセット増幅
体の5'および3'末端配列にそれぞれハイブリッド形成させた。12個の形質転
換体すべてが700bpのedaフラグメントの存在を示したが、負対照37.1.
6にはこのようなフラグメントは存在しなかった。
37.1.6形質転換体候補においてedd発現カセットの存在を確認するために
、プライマーを用いてeddコーデイング領域内の配列にハイブリッド形成させた
。増幅すると、12個の形質転換体すべてが1kbのeddフラグメントの存在を示
したが、負対照37.1.6にはこのようなフラグメントは存在しなかった。
形質転換体内のedaおよびedd遺伝子の方向を調べるために、プライマーを用い
てeda内の配列およびedd内の配列それぞれにハイブリッド形成させた。この検査
のために、12個の形質転換体から無作為に取り上げた3個の形質転換体を増幅
すると、3個の形質転換体すべてがeda−edd遺伝子をつなぐ3.5kbのフラグメ
ントの存在を示したが、負対照37.1.6にはこのようなフラグメントは存在し
なかった。これは、予想どおりに、edaおよびedd遺伝子は形質転換体に同じ転写
方向で、隣接して存在することを確証するものである。
pWB44上に存在するtrp1コーデイング配列の5'部分は、プラスミドに存
在する酵母DNAの最大の配列であり、それゆえにpWB44を酵母染色体へ組
込む際に最も生じ易い乗り換え点であると判断された。trp1がpWB44の組込
み部位であることを確認するために、オリゴヌクレオチドプライマーを用いて内
部eda遺伝子配列およびtrp1の染色体コピーに存在する配列(pWB44内のtrp
1の部分にはそのような部位が存在しない)それぞれにハイブリッド形成させた
。この実験のために取り上げた4個の形質転換体を増幅すると、すべてが4.8k
bのeda−trp1フラグメントの存在を示した。負対照37.1.6にはこのような
バンドは存在せず、同様に試験を行ったpWB44プラスミドDNAにも存在し
なかった。これは、pWB44が酵母菌株37.1.6にtrp1の遺伝子座で組み込
ま
れたことを確証するものである。
小規模発酵
37.1.6形質転換体の発酵挙動を評価するために、最小培地プラスグルコー
スおよび市販のマントン・アンド・フィソンの醸造用麦芽汁を用いて実験室規模
の発酵を行った。最小培地プラスグルコースは、ディフコ酵母窒素ベース(YE
B)0.67%w/vプラスグルコース10%w/vである。この溶液をオートクレー
ブにて20分間滅菌した。次いで、清浄にし、滅菌したスバ栓付きトールチュー
ブに500mlのYEB−グルコースを入れた。植え込んだ酵母を好気的条件で3
〜4日間、21℃にて振とうしながら成長させ(YEPD中のH54−2B:実
験用野生型およびDEY70(関連した遺伝子型のpfk1−1)およびYEPG
E中の37.1.6および37.1.6/pWB44)、十分なクロップを収穫した
。次いで、各菌株の10gの回転処理した(spun)酵母を適当なトールチューブに
入れ、エアロック付きゴム栓を使用して各チューブに栓をした。次いで、トール
チューブを21℃でインキュベートした。2mlずつのサンプルをアントン・パー
ル比重計に移して発酵中の比重をモニターした。発酵のプロフィールを図11に
示す。発酵完了時に、ガスクロマトグラフィーによるエタノール定量用およびH
PLCによる糖質分析用のサンプルを採取した。各トールチューブの内容物の残
りを遠心分離管に移し、1000×gで10分間遠心分離して酵母を集めた。上
清を除去し、容器と酵母クロップを秤量した。エタノールおよび糖質分析ならび
に酵母クロップ測定の結果を表2にまとめた。これらの結果および図11のプロ
フィールから、37.1.6/pWB44が高効率(酵母クロップの生産を最小にし
て)でグルコースを発酵してエタノールを生産する能力があることは明らかであ
る。
次いで、YEB−グルコース中の発酵から得られた37.1.6/pWB44を
500mlのマントン・アンド・フィソンのエール麦芽汁を入れたトールチューブ
に加えた。このホップ風味を付けた麦芽汁は、麦芽汁濃縮液を熱湯で5分間ボイ
ルし、次いで希釈して所望の比重1060°にすることによって調製した。次い
で、20分間オートクレーブ処理を行った。冷却し、麦芽汁を10リットルのフ
ラスコに移し、ガラス焼結物に45分間通してしっかりと空気に触れさせた。次
いで、500mlの空気に触れさせた麦芽汁を清浄化し、滅菌したスバ栓付きトー
ルチューブに入れた。各菌株の10gの回転処理した(spun)酵母(前記参照)を1
0mlの麦芽汁に再懸濁した後で植え込む。次いで、3ml(約3g)の酵母をトー
ルチューブに入れ、エアロック付きゴム栓を使用して各チューブに栓をした。次
いで、トールチューブを21℃でインキュベートした。前記と同様にして発酵中
の比重をモニターした。発酵のプロフィールを図12に示す。発酵完了時に、ガ
スクロマトグラフィーによるエタノール定量用およびHPLCによる糖質分析用
のサンプルを採取した。各トールチューブの内容物の残りを遠心分離管に移し、
1000×gで10分間遠心分離して酵母を集めた。上清を除去し、容器と酵母
クロップを秤量した。エタノールおよび糖質分析ならびに酵母クロップ測定の結
果を表3にまとめた。これらの結果から、37.1.6/pWB44が効率的に(
酵母クロップの生産を低く押えて)エタノールを生産する能力があることは明ら
かである。37.1.6がマルトースの利用度が醸造用菌株よりも少ない実験用酵
母菌株であるという事実を反映して、残留糖質は主としてマルトースである。
表4は、37.1.6/pWB44酵母と7種の異なる市販の酵母菌株との成長
効率の比較を示す。すべての場合において、酵母はマントン・アンド・フィソン
のエール麦芽汁中で成長させた。酵母を用いて一定量のエタノールを生産する際
に生産される酵母バイオマスに関しては、標準の酵母菌株を用いた場合よりも、
本発明酵母を用いた場合の方が、該バイオマスの量が少ないことは全く明白であ
る。
固定化発酵試験
YEPGE中のおよそ15リットル(250mlのフラスコで60個)の37.
1.6/pWB44を21℃にて振とうしながら3〜4日間成長させた。フラスコ
を4℃にし、該酵母を自然に沈降させた。次いで、各フラスコから大部分の上清
を傾瀉して酵母スラリーの最終体積を約3リットルまで減らした。次いで、反応
器に充填するまで、これを4℃で貯蔵した。
反応器を熱デコン(DECON)90に24時間浸して清浄化した;デコンを排液
し、反応器を熱湯で数回濯いだ。シランガラスビーズ(1540ml)を反応器に加
え、次いで、反応系にエタノール(70v/v)を循環させて滅菌した。反応器か
らエタノール(8リットル)を排液し、醸造用麦芽汁と入れ換えた。
麦芽汁の一部(3リットル)を反応器から排液し、等しい体積の酵母スラリー
と入れ換えた。反応系を流動化し、25℃で4日間反応を進行させた。麦芽汁の
比重が1005°に達したとき、麦芽汁ポンプのスイッチを入れ、発酵制御パッ
ケージから麦芽汁ポンプの速度をフィードバック制御することによって反応器内
の比重を制御して1010°にした。操作中、反応器は20℃に維持した。
この期間に測定した比重の読み取りプロフィールは安定したものであった。
13C核磁気共鳴を用いた37.1.6/pWB44における代謝の分析
白金サジ量の菌株37.1.6/pWB44を250mlの三角フラスコ中のYE
PG培地100mlに植え込み、旋回回転式のインキュベーター(180rpm)中
で30℃にて72時間インキュベートした。この時点で、600nmで測定した培
養物の光字密度(OD600)は4.5であった。5mlの培養物を250mlの三角フ
ラスコ中の95mlの新たなYEPG培地に加えた。これらの細胞を旋回回転式の
インキュベーター中で30℃にて23時間インキュベートした。この時点で、O
D600は3.2であった。この菌株がYEPG培地中、同じ条件下で培養され、O
D600を通常の間隔で記録すると、OD600が3.2であるときに、細胞が成長の
対数増殖期であることは先の実験からわかっていた(データは示さず)。遠心分
離によって細胞を沈降させ、成長培地を捨てた。次いで、YEPD培地100ml
に細胞を再懸濁し、2リットル三角フラスコに入れ、同じ旋回回転式インキュベ
ーター中で30℃にてインキュベートした。インキュベートされた培養物の体積
に比して、このように相対的に大きなフラスコを用いる理由は、細胞が豊富な酸
素の供給を受けることを確実にするためであった。インキュベーションの72時
間後、OD600は3.28であった。次いで、30℃にて遠心分離を行って細胞を
採集し、培地を傾瀉し、次いで予め30℃に加温した2mlのYEPに細胞を再懸
濁し、50mlの三角フラスコに移した。次いで、2時間前に調製して30℃に維
持しておいた、最少量の滅菌蒸留水に70.3mgの[2−13C]グルコースを溶
かした溶液を細胞に加えた。実験に先立ってグルコースウエルを調製しておく理
由は、グルコースのβおよびα−アノマー間に平衡状態を確立しておくためであ
った。標識されたグルコースを含むこの培養物を、同じ旋回回転式インキュベー
ターにて24時間振とうした。終了後、マイクロ遠心分離機にて11600gで
30秒間遠心分離を行うことによって細胞を収穫した。成長培地を傾瀉し、次い
で、細胞に300μlの氷冷20%(w/v)過塩素酸を加え、1分間激しく渦巻き
撹拌した。37.1.6/pWB44細胞と過塩素酸を含む遠心管を氷中に1時間
静置した。15分間隔で遠心管の内容物を徹底的に渦巻き撹拌した。この処置に
よって細胞は素早く殺され、酵母細胞から抽出されるべき小さい分子が過塩素酸
中に生じるが、この処置は過去のこの種の研究において使用され、好結果を得て
いる[ディッキンソン&ヒューリンズ(1988);ディッキンソン&ヒューリ
ンズ(1991);ディッキンソンら(1995)]。1時間後、内容物を再度
渦巻き撹拌し、次いでマイクロ遠心分離機において4℃にて11600gで30
秒間遠心分離した。この操作により過塩素酸変性物質が沈降した。上清(過塩素
酸可溶性物質)のすべてを新しい遠心分離管へ注意深く移し、氷中に静置し、次
いで十分に氷冷した2M水酸化カリウムを加えて過塩素酸抽出物を中和した(す
なわちpH=7にする)。この操作には、過塩素酸カリウムが白色沈殿で生成す
るという付加価値がある。中和された抽出物を氷中に1時間貯蔵し、15分間隔
で渦巻き撹拌した。1時間後、pHを再調査すると7.0であることがわかり、
次いでマイクロ遠心分離機において4℃にて11600gで30秒間遠心分離を
行って過塩素酸カリウムを沈降させた。透明な上清(500μl)を注意深く新
しい遠心管に移し、次いで、30μlの1Mリン酸緩衝液(pH=6.00)を加
え、さらに100μlの2H2Oを加えた。次いで、前述の[ディッキンソン&ヒ
ューリンズ(1988);ディッキンソン&ヒューリンズ(1991);ディッ
キンソンら(1995)]の記載にしたがって、これをBruker WM360 NM
R分光計にて90.5MHzで分析した。ブロードバンド1Hデカップリング、2
2000Hz以上、32Kデータポイントを用いた5mmのNMR管内の溶液のス
ペクトルを記録した。外部標準として2H2O溶液中で測定した3−(トリメチル
シリル)プロパン−1−スルホン酸ナトリウム(δ=0)に対するppmで、す
べての化
学シフトを報告する。
夥しい数の共鳴が観測された。菌株37.1.6/pWB44の炭素代謝の解釈
において主要な意味をもつ4個の共鳴のみを本明細書に記載する。これらの共鳴
は、フルクトース6−ホスフェート(F−6−P)(107.5ppm)のC−
2α、F−6−PのC−2β(104.4ppm)、F−6−Pのフラノース体
のC−3α(84.7ppm)およびF−6−Pのフラノース体のC−3β(7
8.7)によるものであった。F−6−P(常套の解糖経路ではF−6−Pに続
く中間体はない)のC−2における13C標識の蓄積は、グルコースが、F−6−
Pまでグルコース6−ホスフェート(G−6−P)を経て代謝されており、その
先はないことを示す。言い方を変えれば、このことは、pfk−1およびpfk2::L
EU2突然変異による解糖のホスホフルクトキナーゼ段階で創成された代謝ブロ
ックが、考えられるいずれのメカニズムによっても突破されなかったことを証明
する。F−6−PのC−3における13C標識の存在もまた非常に有意義である。
このことは、トランスケトラーゼとトランスアルドラーゼの両方の作用を含むヘ
キソース−ホスフェート経路の酵素が関与してグルコースがG−6−Pへ変換す
る場合にのみ起こりえるものであり、その結果C−3が標識されたF−6−Pが
得られる。再度言えば、13C標識されたF−6−Pから誘導された、常套の解糖
経路における公知の代謝中間体または代謝産物では、いずれの位置においても13
C標識が観測されなかったことを強調すべきである。したがって、13CNMR分
析から、本発明菌株におけるグルコースの代謝には、常套の解糖経路は用いられ
ないことがわかった。
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(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
C12P 7/24 9637−4B C12P 7/24
//(C12N 1/19
C12R 1:85)
(C12N 1/21
C12R 1:19)
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AP(KE,MW,SD,SZ,UG),
AM,AU,BB,BG,BR,BY,CA,CN,C
Z,EE,FI,GB,GE,HU,JP,KE,KG
,KP,KR,KZ,LK,LR,LT,LV,MD,
MG,MN,MW,MX,NO,NZ,PL,RO,R
U,SD,SG,SI,SK,TJ,TM,TT,UA
,UG,US,UZ,VN
(72)発明者 ランカシャー,ウィリアム・エドワード
イギリス、エムケイ5・8ディエックス、
バッキンガムシャー、ミルトン・キーネ
ス、ラクトン、アッシュポール・ファーロ
ング64番
(72)発明者 ディキンソン,ジョン・リチャード
イギリス、シーエフ64・4ディキュー、サ
ウス・グラモーガン、ダイナス・ポーイ
ス、ジ・オールド・マルサウス3番
(72)発明者 マロック,リチャード・アンソニー
イギリス、エスケイ16・6ビーダブリュ
ー、スターリング、ダウン、メイン・スト
リート74番