JPH09509089A - 結晶化により廃棄物を不活性にするための方法 - Google Patents
結晶化により廃棄物を不活性にするための方法Info
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Abstract
(57)【要約】
産業廃棄物もしくは家庭廃棄物の焼却から生じた残渣、または金属水酸化物スラッジを不活性化する方法であって、これによりその中に含まれる毒性金属を安定化し、長期に亘って固定化する方法。この方法には、処理すべき廃棄物と特に鉄化合物を含有する一以上の核形成剤とを含んだ混合物を加熱する工程が含まれる。加熱は、溶融混合物または溶融物としても知られる液相混合物が得られ、ここで少なくとも5%のFe2O3酸化物がFeO酸化物に変換されるような条件下で行われる。この方法は更に、上記の溶融物を制御下に冷却して、処理された廃棄物に含まれる重金属が結晶構造の中に取り込まれている固体を生じさせる工程と、得られた固体を回収する工程とを具備する。上記の加熱工程は、処理すべき混合物の完全な液化を可能とする温度において、当該混合物を安定化する相を含んでもよい。
Description
【発明の詳細な説明】
結晶化により廃棄物を不活性にするための方法
本発明は、廃棄物を不活性にするための方法に関し、本方法により、これら廃
棄物中に包含される有毒金属を、安定化により長期間固定化することができる。
本出願において、「廃棄物」の用語は、産業廃棄物又は家庭廃棄物の焼却の残
渣、又は金属水酸化物スラッジを意味すると理解される。
すなわち、本発明の方法に従い処理され得る廃棄物には、例えば、産業廃棄物
若しくは家庭廃棄物の焼却から生じるスラグ(又はクリンカ)、又は金属水酸化
物スラッジを挙げることができる。
通常行われる家庭廃棄物及び産業廃棄物の焼却により、炉の出口において水力
クエンチ中に急激に冷却される生成物が生じ、極端な熱変動により脆くされたガ
ラス状母岩中に包埋される鉄酸化物及びアルミノケイ酸塩の結晶を包含する多相
材料が形成される。次いで、異なる構造間に分配された有毒重金属は、自然に又
は誘導された外部試薬により容易に動化され得、環境に対してスラグを潜在的に
危険にする。
焼却中に生じたガラスは、継続して重金属を固定化することのできる安定生成
物と度々みなされる。「プロパルテ(pro parte)」のみガラス状であり、かつ時
間と共に変化するところのこれらスラグは、遅れた危険を代表することを
強調することが重要である。事実、産業燃焼炉内で生成されるアルミノケイ酸塩
浴は、非常に有害な水力クエンチにさらされる。一般にガラス状材料中に包埋さ
れるスピネルから構成される多相材料のこの急激な冷却の間に、スピネルの等圧
熱膨張係数とガラス相の等圧熱膨張係数との間の大きな差故に、差動収縮が発生
する。冷却によりさらに収縮すると、ガラスは、破砕及び/又は圧力を蓄積し、
その弛緩は、貯蔵場所における微小破砕の源である。熱動力学的に不安定なガラ
スは、機械的にも不安定である。
ガラス相の浸出により抽出される金属の重量は、溶液と接触する表面積に比例
するので、これらスラグ(クリンカとしても知られる)は、2、3年の期間に渡
りコア(core)に浸透されることに成功し得、この期間は、百万年という地質学
上の単位と比較して非常に短い期間である。
これらクリンカが、法則に従い、かつ永久に無害であることを保証するために
、1つの解決は、地質学上時間的尺度で安定である結晶構造中にこれら有害元素
を固定化することを包含する。
結晶相は、浸出に対して、ガラス相の挙動とは異なる挙動をする。事実、結晶
は、同じ組成のガラスよりもずっとより安定な物質の配列である。従って、溶解
、酸化及び加水分解の組合わせによる岩石の結晶鉱物種の1種又は多種の崩壊は
、過剰に遅く、かつ何百万年の尺度で作用する。それらが包含する有毒金属は、
同じ速度で放出されるので、実質的に環境に危険がない。
ガラス化を利用することすることも提案された。第1のルートは、高温(40
00ないし5000℃)において、プラズマトーチを用いて、出発物質の化学組
成の修飾をほとんど行うことなくガラスを生成することを包含する。第2のルー
トは、廃棄物がその中に分散されるところの不溶性アルカリホウケイ酸塩ガラス
の合成を要求する。このプロセスでは、出発物質の成分が大きく修飾される。
産業廃棄物又は家庭廃棄物の焼却から生じるスラグを処理するための別の解決
は提案されていないようである。再結晶化によるクリンカの安定化処理は、廃棄
物、特に廃棄物が包含するスラグの化学特性の修飾がほとんどなく、追加の物質
をほとんど導入しないため、廃棄物を天然物と同様の物質に転換することを可能
にする。
そこで、有害な産業廃棄物又は家庭廃棄物の貯蔵問題への解決を誘導するため
に、本出願の発明者らは、これら廃棄物をそれらの結晶構造に関して天然岩石の
特性を有する物質に転換するための方法を提供する。
この目的のために、これら廃棄物の構造及び組成に応じて、廃棄物が包含する
金属の移動を、ガラス状物質から成長する結晶相へ指向させることを包含する方
法が開発された。
第1の態様によれば、廃棄物の処理のための本発明の方法は、以下の段階を包
含することを特徴とする。
処理されるべき廃棄物と、特に鉄化合物を含有する1種又はそれ以上の核形成
剤とを包含する混合物を加熱する段階であり、加熱が、溶融混合物又は融成物と
しても知られる液相
中の混合物を得ることを可能にする条件下で行われ、混合物のFe2O3酸化物の
少なくとも5%が、FeO酸化物に実質的に転換される段階、
処理された廃棄物中に含有される重金属が、スピネル族の結晶を含有する結晶
構造内に安定化されるところの固体材料が得られるまで、融成物を制御して冷却
する段階、及び
得られた固体材料を回収する段階。
そのように特徴づけられるプロセスの目的は、第1工程において、処理される
べき廃棄物の完全な液化を可能にし、第2工程において、制御された冷却中に、
廃棄物中に包含される金属を、溶融混合物がその冷却中に固化する間に成長する
結晶構造内に包含させることを可能にするためのものである。言換えると、融成
物の冷却中の温度を徐々に低下させるような制御により、廃棄物中に含有される
重金属を包含する形成された結晶のシーディング(seeding)プロセスを制御す
ることを可能にする。これら結晶構造は、スピネル族の結晶を含有する。
好ましくは、10%ないし80%、又はさらにはより多くのFe2O3酸化物が
FeO酸化物に転換される。
有利には、本発明の処理方法は、加熱されるべき混合物の重量により表して、
約20%ないし約50%、又はそれ以上を得ることを可能にする。
処理されるべき廃棄物、及び核形成剤の、加熱されるべき混合物に対する相対
重量割合は、スラグであれ水酸化物スラッジであれ、処理されるべき廃棄物の化
学組成に関して決定
される。
この目的のために、廃棄物のSiO2,CaO,Fe2O3,Al2O3,TiO2又は
MgO型の酸化物の組成が主に考慮される。本発明は、上記のものと区別される
廃棄物であるが、化学分析により、主要元素に対してフラグ又は金属水酸化物ス
ラッジに関連することが明かになった廃棄物に同様に適用され得る。
本発明の処理方法は、磁鉄鉱(FeO(L)+Fe2O3(L))のみの形成で
はなく、スピネル(AIIBIIIX4)の形成を促進しなければならないので、特に
、CaOのような酸化物とよりも、これらFe2O3酸化物と優先的に反応し得る
核形成剤を導入することにより、Fe2O3酸化物の還元に有利であることが必要
である。これら核形成剤は、例えば、鉄やすり屑(iron filings)、又は熱処理
の間に加熱されるべき混合物の重量に対して、約0.5%ないし約15%で変化
する割合の鉄を含有するいずれもの組成物である。
処理されるべき廃棄物が水酸化物スラッジである場合は、核形成剤は、有利に
は、スラグである。
廃棄物は、好ましくは、廃棄物中に含有される金属を包含する構造の形態内に
おける物質の完全な結晶化により不活性にされる。廃棄物中に含有される金属の
80ないし100%、好ましくは90ないし100%(重量百分率で表される)
の固定化を可能にする結晶化が、現在及び今後満足であるようである。
説明された方法は、地質学的尺度の時間安定な様式で、金
属の固定化が得られるという利点を有し、従って、廃棄物中に含有される金属の
無毒性を保証する。
少なくとも溶融混合物の固化が完了するまで低下が制御される冷却は、溶融混
合物又は融成物の制御された冷却と呼ばれる。言換えると、十分に遅いようにそ
の進行が決定されるところの漸次の冷却である。
溶融混合物の完全な固化は、通常約1050℃ないし約1250℃、好ましく
は約1100ないし約1210℃の温度で得られる。
それが、結晶化の終了を示し、処理される廃棄物の重量の百分率で表して、金
属の少なくとも80%の固定化を可能にしたとみなされる。
冷却は、好ましくは、溶融混合物の少なくとも結晶化までは、さらには固化を
完了するまでは、1分当り約1℃ないし10℃のオーダの温度低下であるように
行われる。一般に、この固化が得られるまで、冷却はできる限りゆっくりである
べきである。
異なる既知の冷却技術を用いることができる。この冷却は、例えば空気中で行
われ得る。
別の可能性としては、より低い温度を有する表面に接触すると、温度の低下が
起るであろう溶融混合物の熱容量を用いることである。この仮定の下に、所望の
漸次冷却を得るために、混合物の熱電導率を知ることにより、この混合物の冷却
速度を決定することが可能であり、かつそれと接触して冷却が起らなければなら
ない表面の温度を選択することができる。
本発明の処理方法における上述の問題の加熱段階は、完全に液化された混合物
が得られるように行わなければならない。このようにするためには、この完全な
液化を保証するために、温度が最高水準に達したとき温度の安定化段階を利用し
得る。安定化時間は、加熱段階の最高温度に応じて変化するが、例えば、約1時
間の期間であり得、又は処理される廃棄物の量に応じて調整され得る。
本発明の第1の熊様によれば、処理されるべき廃棄物は、産業廃棄物又は家庭
廃棄物の前の焼却から生じるスラグである。
スラグの平均組成を、産業廃棄物の例に基づいた以下の例に示す。一般に、ス
ラグは多重酸化形態の下で組合わされた不燃焼性無機物を主として含有する。特
に、スラグは、一般には、比較的高い割合の鉄酸化物を含有する。
これら鉄酸化物は、例えばスピネル族に属する磁鉄鉱の形態にあり、本発明の
方法の目的は、特に磁鉄鉱とは異なる追加のスピネルを形成させることである。
従って、本発明の方法の文脈において、スラグの磁鉄鉱及び他の固形成分は溶
解され、次いで実施されるそれらの漸次の冷却により、特に、磁鉄鉱内に含有さ
れる鉄原子が廃棄物中に含有される金属原子により置換されることが可能になる
。同じ置換プロセスが、本発明の処理中にスラグから生成されれる他のスピネル
にも起こり得る。
この現象は、廃棄物から生じるスラグに核形成剤、特に例えば鉄やすり屑のよ
うな鉄化合物を添加することにより促進
され得る。
例を挙げると、処理されるべきスラグは、加熱段階に供される反応混合物の重
量で見積ると、100%ないし85%を占めることができ、この場合に、核形成
剤は、反応混合物の重量の0%ないし約15%を占めることができる。
本発明の他の態様によれば、処理される廃棄物は金属水酸化物スラッジである
。
金属水酸化物スラッジの組成もまた以下の例に示す。
金属水酸化物スラッジの処理の場合、本発明の方法は、有利には、スラグによ
り核形成剤を構成する鉄化合物の全て又は一部分を置換する間に実施される。こ
の場合、処理されるべき廃棄物の重量に対する百分率で表すと、70%ないし3
0%のスラッジ、及び30%ないし70%のスラグを包含する反応混合物を有す
ることができる。
場合により、スピネルの形成を促進する核形成剤として携るスラグの分画は、
上述したように鉄化合物により置換され得る。従って、鉄化合物の割合は、加熱
されるべき混合物の約5重量%であり得る。
好ましい熊様によれば、本発明の処理方法は、加熱工程が、
a)スラグ中に含有される磁鉄鉱の液化、及びFe2O3酸化物の放出、並びに
b)鉄のような試薬の添加による、生成したFe2O3酸化物のFeO酸化物へ
の還元
を可能にする条件下で行われることを特徴とする。
加熱により処理されるべき混合物の温度は、有利には、少
なくとも約1450℃ないし約1500℃にされる。この温度は、処理されるべ
き廃棄物の量に応じて、かつそれらの出発組成に応じて調整され得る。
本発明の好ましい態様によれば、核形成剤として用いられる鉄化合物は、鉄で
ある。
本発明の他の態様によれば、これら鉄化合物は、鉄やすり屑であり、好ましく
は、加熱により処理されるべき混合物の0.5重量%より大きい割合の、特に好
ましくは、処理されるべき混合物の約1重量%の割合の鉄やすり屑である。
例を挙げると、本発明の方法により処理されるべき廃棄物は、廃棄物の総重量
に対する百分率で表す割合で以下の酸化物を主に含有する。
本発明の方法は、スラグであれスラッジであれ、処理すべき廃棄物をあらかじ
め核形成剤、特に鉄化合物と均質に混合すると、より容易に実施することができ
る。
スラグの場合、均質化は、粒子サイズ10mm以下の、好ましくは2mm以下
のスラグから行うことができる。
この均質化は、たとえば10μm以下の粒子サイズを得るべく、処理すべき混
合物の粉砕段階によって全体的に有利に完全され得る。
本発明の他の利点および特徴は、以下の図および例において明らかとなろう。
図1:式AB2O4の直接スピネルの構造
図2:斜長石長石の平衡線図
図3:logpO2の関数としてのFe−Fe2O3の安定線図
例
I.スラグの処理
I.1クリンカーの組成
A.化学組成
スラグは有機廃棄物の焼却で生じる。これは主として多様な形態の酸化物の組
合された不燃性無機物質を含む。焼却された廃棄物において、酸化物の含有量及
び化学元素は次の表1に示すような割合で変化する。
一定の重金属の含有量の限度値の結果、この検討は、完全に溶解する場合にお
いて、特定の処理の対象となる遷移金属、Cr、Cu、Ni、Pb及びZnにの
み関するものである。
B.構造的組成
ガラスが主として、容積の2/3で存在する相である場合、場合には、磁鉄鉱
(FeIIO−FeIII 2O3)が最も一般的な形態で、最も成長した状態(大きさ
=10〜20μm)にある。これは、赤鉄鉱(Fe2O3)、レピドクロサイト(
FeO・OH)、クォーツ(SiO2)及びカルシウム長石CaAl2Si2O8又
はソーダ長石NaAlSi3O8等の他の重要な鉱物種と共存する。
磁鉄鉱、フェリフェラススピネルの存在の利点は、結晶格子の内部の置換を可
能にすることである。遷移金属は、その構造及び安定性の変更を生じることなく
異なる酸化状態(II及びIII)にある鉄の置換を可能にする。そのため、クリン
カーの中の元素の分布の研究が分布の係数について教示するのである。
−クローム及びニッケルは、FeII及び/又はFeIIIを置換してFe3O4格
子の中に局在する。
−亜鉛及び銅は、試料によって異なる不規則な割合でガラス及び磁鉄鉱の間で
分配される。
−鉛は、スピネルの中には検出されない。その不存在は立体的理由で説明され
る。
−他の金属は、含有量が僅かであるため見出だすのが困難であり、抑制された
危険性しか示さない。
I.2.熱処理
A.目的
基礎的概念は、不安定ガラス質区分の還元及び存在するか合成される結晶格子
内に挿入することによる汚染金属の封鎖を包含する。化学特性を殆ど変更するこ
となく廃棄物から新の天然物質を再生することに関する。
II.a)スラグのガラス質相の不安定性
ガラス化技術は廃棄物、特に放射性廃棄物の安定化に既に用いられている。こ
れは、工業的焼却から生じるクリンカーには見出だされない極めて高品質の特定
のガラスを含む。実際、顕微鏡で観察すると、結晶相に極めて僅かの影響しか有
しないガラスの強い微細破断を示す。その源はクリンカーの処理に見出だされる
。焼却炉の出口において、融解物質は水力冷却を受ける。この熱衝撃で展開され
るストレスは、そのために物質を弱化させる強い破断の発展に十分である。更に
、ガラスは複合酸溶液の遷移金属の逸脱で生じるアルミノシリケートゲルに達す
る。このゲルは、ガラスとは対照的に、与えられたスペースを占めながら周囲相
の膨脹又は収縮の機械特性を有する。浸出の間、ガラス相からの原子の抽出が起
こり、比容積の減少を生じる。これは、遷移金属の逸脱に関連するこの相の変色
によって観察できる。これは、酸攻撃が当
初固定されていた一定の金属、鉄、銅、鉛及び極めて少量のニッケル及びクロム
を可溶化し、ガラスの強い腐食を生じる理由である。
II.b)スラグの結晶相の安定性
上述した現象は浸出後に化学特性を保持する結晶相に検出されない。いかなる
形態の攻撃も、ガラスについてと同様の浸出条件においては、示差干渉対照のよ
うな極めて鋭敏な光学方法によっても、結晶相に関して検出できず、これらの結
晶構造の重要な安定性を結論付ける。
B)原則
工業廃棄物の焼却からの残留物は一般に鉄に富む。焼却炉における廃棄物の温
度の上昇の間、1500℃以下の温度での酸素分圧の下では熱力学的に不安定な
鉄は、立方系に結晶する磁鉄鉱、Fe3O4(FeIIFeIII 2O4)に酸化される
。
この物質はスピネルの広範な群に属し、次の一般式を有する。
AIIB2 IIIX4
X=O、S等
式中、
(1)AII=Mg、(Fe)[Cr、Mn、Ca、Co、Ni、Cu、Zn、C
d、(Hg)又はSn]
(2)BIII=Al[Ga、In、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni又
はRh]
図1は通常のスピネルの構造を示す。
焼却炉から生じるスラグは一般に磁鉄鉱に富む。この鉱物は、FeIIを置換し
て(1)における角括弧内の元素を有効に捕捉し、FeIIIを置換して(2)に
おける角括弧内の元素を有効に捕捉する。次いで有害金属は磁鉄鉱の格子内に永
続的に不動化される。
従って、最初の考えはこの補捉現象を強化するためにスラグの磁鉄鉱含有量を
増加することである。そのため、再融解し、極めてゆっくりと再冷却する必要が
ある。このための試験は、スラグの磁鉄鉱含有量を劇的に増加することが可能で
あることを示した。然しながら、ガラスの割合は高いままである。これは、磁鉄
鉱の結晶化の完了時に、アルミノシリケート又はメルトの一定の個別の酸化物又
は組合せ酸化物(重合体)が残留浴において富み、その粘度をかなり増加するか
らである。これは特にAl2O3、MgO及びTiO2に関することである。その
ため結晶化は減速し、実際に抑制され、核化及び拡散は起こらなくなる。
本発明における方法の新規性は、アルミノシリケート浴をAl2O3、MgO及
びTiO2に富むスピネルに結晶化し、合理的な時間内に完全な結晶化を防ぐ残
留メルトの粘度の増加を防いで、磁鉄鉱の形成を防止することにある。こうして
形成したスピネルは、上記の(1)及び(2)の角括弧内の有害な重金属の収集
を続ける。Pb2+は0.4〜0.8Aのあいだの遷移金属のものよりははるかに
大きい(1.29A)イオン半径を有する。そのため、これらのスピネルでは収
集できない。斜長石の構造で提供されるより広い結晶化学位置
に挿入される。後者は、図2に示すNaAlSi3O8(アルバイト)−CaAl2
Si2O8(アノーサイト)固溶体の極値の中間である。
ガラス及び磁鉄鉱結晶から構成されるスラグを融解するとMgO、CaO、A
l2O3、SiO2FeO、Fe2O3、TiO2等の個別酸化物の分子から構成され
る液体を生じる。これらの分子は種々の程度に結合して集合物を形成し、その安
定性は異なる構成分の永久双極モーメントの大きさに左右される。
純粋の磁鉄鉱は、次の式により全気圧が1気圧の下で約1590℃で融解する
。
磁鉄鉱=FeO(L)+Fe2O3(L)
個々の酸化物、FeO及びFe2O3は純粋の磁鉄鉱の融解温度で液状である。
これは、相変化
ウスタイト(wustite)←→FeO(L)
及び
赤鉄鉱 ←→ Fe2O3(L)
が、それぞれ1369℃及び1565℃で現れるからである。従ってシリケート
浴は鉄のモノオキサイド及びセスキオキサイドを溶解する。
Fe2O3を適当な添加物によってFeOに還元することは、次の効果を有する
。
−系のFeO活性を増大して融解物の流動性の増加、
−形成に必須の構成分(Fe2O3)を破壊して磁鉄鉱の後の形成の防止。
この目的で、この支配的条件(T=1550℃)において不安定でFe2O3と
反応するFe金属(Fe°)を配合する。
Fe°(L)+Fe2O3(L) →3FeO(L)
酸素圧力の関数としてのFe−Fe2O3の安定性ダイアグラムを図3に示す。
融解物において、「スピネル化できる」有害金属を収集できるスピネルの形成
のための主要酸化物は以後Al2O3、TiO2、FeO及びMgOである。
融解物を冷却すると、Al2O3/TiO2比を考慮して、ヘルシナイト(図4
)の結晶化を生じ、これは、共晶の温度(Teu=1355℃、Cheney & Muan,1
972)に到達するとすぐに極めて流動性の浴の、次いでウルボスピネルTiFe2
O4の遷移金属を補捉する。この冷却段階で、有害金属の嵩はスピネルの中に不
動化される。
浴の完全な結晶化は、1205℃(純粋ファヤライト:Fe2SiO4の融解温
度)及び1118℃(ナトリウム斜長石:NaAlSi3O8の融解温度)の間で
起こる。これは、針状ファヤライトsol.sol結晶と鉛に富む繊維状斜長石(60
%アノーサイト)との緊密な結合物である。
実際、この分析結果から、2つの方策が示される。
1つはガラス母岩における磁鉄鉱の成長を最適化することである。
磁鉄鉱の格子はFeII及びFeIIIを置換して15%以上
の元素を収集する可能性を有し、「結晶スポンジ」として作用する。これは既に
存在する種の成長の継続に妥当である。第一鉄の化合物を添加し、融解相を徐々
に冷却することによって、スラグが融解温度以上に再加熱される場合、供給され
、結晶の大きさ(100μm)がそのために極めて増大するからである。残留ガ
ラスは極めて減少し、これらの金属から精製される。
あるいは、新構造単位の合成によるスラグの完全な再結晶化である。
スラグ/添加混合物が高温(1500℃)にされると、冷却後に完全な結晶物
質が得られる。新鉱物(複合スピネル、長石及びかんらん石)の形成はこの段階
で達成され、天然岩の無害性を付与して、金属は極めて強固に不動化される。
C.処理
ガラス相から結晶相への金属の元素置換を実施するために、種化及び再結晶の
処理を制御しながら、スラグを再融解した後、再冷却することが必要である。こ
れが、構造研究及び内容が次の操作条件を規定する理由である。
a) 試料の調製
実験室で行われた試験は粗スラグについて行われ、焼却炉の出口でサンプリン
グする。70℃で24時間乾燥した後、クリンカーを粉砕し、次いでドライミル
によって粒径<2mmとする。1kgの試料を4分割し、1質量%の鉄やすり屑を添
加する。鉄やすり屑は極純メルクアーティクル3819品質(表2参照)のもの
である。
密閉した手動撹拌容器内で均質化を行う。最大許容粒径と処理の有効性との関
係を示すことはできないが、2mmへのミリングは固体の正確な均質化、即ち、ク
リンカーと鉄やすり屑の粒子のランダムな空間的分配を有するために十分の微細
さを生じると想定する。混合後の組合せ混合物の細分化(ミリング<10mm)は
疑いなく均質性を改良する。然し、2つの粒径で行われた試験は同一の結果を生
じる。
b) 加熱条件
これはガラスセラミックの製造を手本とする。後者は、完全又は部分的に無定
形の物質の再結晶化で調製される。この
処理は、まず高温(1500℃〜1600℃)におけるガラスの合成を必要とす
る。得られる液体を1500℃に1時間保持する。次いで冷却をプログラムし温
度は1〜5℃/分降下する。
c)手順
実験室試験はスラグ/やすり屑混合物から出発して行う。上述した処方の10
gを直径20mmで高さ30mmの焼結円筒状アルミナ(純度99.7%)るつぼに
入れる。次いでるつぼをカーボライト(Carbolite)STF16/75水平管状炉
の中心に導入する。円筒状アルミナパイプの2つのオリフィスの内部に2つの熱
シールドを配置し、中心における熱損失ができるだけ制限されるようにする。最
後に、2つのステンレススチールストッパーを用いてパイプを封鎖する。
コントローラー/プログラマーは加熱及び冷却プロフィルのセットを可能にす
る。室温から1500℃に達するに必要な時間は炉が示し得る最大加熱能力の関
数である。加熱抵抗器が古くなると共に増大する。約4時間30分実施する。冷
却時間はプログラムした速度によって変わる。
III.結果
IV.熱挙動
IV.1.1.示差熱分析
示差熱分析は加熱中におけるスラグ/やすり屑混合物の反応挙動を特定するこ
とを可能にする。2つの反応領域、発熱フラックス及び吸熱フラックスの位置が
別個の温度範囲に検
出できる。
−1− 800℃及び970℃の間では、フラックスは発熱的である。固体状
態における反応:磁鉄鉱から赤鉄鉱への酸化によって放出されるエネルギーを反
映する。
−2− 1020℃及び1350℃の間では、測定されたフラックスは吸熱的
である。スラグの融解を可能にするために供給されるエネルギーを反映する。
同様の分析を粗スラグについて行ったが、上記の値と殆ど差異が認められない
。即ち第1フラックスについての780℃から990℃の範囲及び第2ピークに
ついての1020℃から1350℃の範囲である。
IV.1.1.加熱のエンタルピー
生成物の1g当たりの加熱のエンタルピーをカロリーメーターを用いて室温か
ら上記温度及び融解まで測定した。これらは表3に示す。
このエンタルピー測定は、スラグを変換するために供給すべきエネルギーの量
、特に鉄やすり屑を混合物に配合した場合にやすり屑が貢献するエネルギー節約
を評価することを可能にする。
V.2.試験
熱処理は、異なる化学組成、STL2、STL3、STL6及びSTL8の4
種のスラグに1%の鉄やすり屑(Merk,article 3819)を混合して行った。各ク
ラスのクリンカーについて、スラグ/やすり屑試料を、所定の手順に従って、1
500℃、1400℃、及び、更にSTL8/1%鉄やすり屑混合物については
1300℃にする。
熱処理前後のX線回析分析は、1500℃を超えると磁鉄鉱は、ヘルシナイト
FeAl2O4及びウルバイト(又はウルボスピネル)Fe2TiO4に席を譲って
消滅することを確認する。
最後に合成製品の安定性を確認するために、標準化NFX31.210浸出試
験を粗試料及び再融解製品について行う。この実験標準は、特定の条件の下で、
分析特性に役立つ水性条件下の廃棄物試料の溶解留分を得ることを可能にする方
法に適用される。これは、物質の分割の程度を問わず、固体又は可塑性状態で取
出され、この状態にある廃棄物に適用され
る。浸出物の特性化は、放出受容性しきい値と比較して、廃棄物の安定性の水準
及び最終目的地の水準、特に埋立てを評価することを可能にする。後者は廃棄物
に含まれる汚染元素の水による伴出に主として存在する危険の可能性を包含する
ことができる。
試験は4mmに粉砕した廃棄物で実施される。100gの残留物を4分割して取
り出し、2リットルフラスコに入れ、1リットルの浸出溶液と接触させる。この
溶液は、空気を散布してストリップしたCO2ガスで飽和した脱塩水から調製す
る。次いで、このフラスコは、交替線状運動を起こすことができるプレートシェ
ーカーを用いて16時間撹拌する。作業が完了すると、残留物質及び溶液を分離
する。次いで浸出液は分析を行い得る。残留物質は更に2浸出作業に付して、浸
出液を得て、これも分析する。
V.2.1.試料STL2についての試験
*粗試料の化学組成
*粗製試料の構造特性
粗製試料STL2は、ほとんど、
‐ 20%の石英SiO2
‐ 20%のマグネタイトFe3O4
‐ 10%の普通輝石
(Mg,Fe,Ca)・(Si,Al)O3
‐ Σの長石(Na,Ca)・(Al,Si)3O8
からなる。
残り、すなわち約50%は、非晶質相からなる。このガラス質相の化学組成は
、点スペクトル分析(カステイング(Castaing)電子マイクロプローブ)を用い
て評価することができた。すなわち、
‐ 17ないし18%のSi ‐ 6ないし6.5%のAl
‐ 11ないし12%のFe ‐ 3ないし3.5%のNa
‐ 11ないし11.5%のCa ‐ 2ないし2.5%のTi
‐ 1%のオーダーのK、Mg、MnおよびP
*下記温度で再溶融された試料の構造的特性1500℃で
:これは全体的に結晶性であり、3つの相
‐ ヘルシナイトFeAl2O4
‐ ウルバイト、またはウルボスピネル、Fe2TiO4
‐ 斜長石
からなる。1400℃
で:この物質は、全体的には結晶性ではない。約40%のガラス相が
なお残っている。
‐ マグネタイトFe3O4のパーセントの増加
‐ チタン鉄鉱FeTiO3結晶の外観
‐ 鉄カンラン石Fe2SiO4
‐ 長石(Na,Ca)・(Al,Si)3O8
*浸出試験
1500℃および1400℃で再溶融させた生成物についての浸出試験の結果
を粗製試料のそれと比較すると、
‐ 粗製試料について可動性(mobilizable)である銅およびニッケルは、再
溶融、特に1500℃で再溶融された生成物中で安定化され、それらは浸出物(
leachate)中では検出すらされないこと、
‐ 再溶融された生成物についてはヒ素はもはや検出され得ないこと、
‐ STL2−1500℃において塩化物およびスルフェート濃度も急激に低
下しゼロもしくは実質的にゼロとなること
に気付く。
V.2.2 試料STL3についての試験
*粗製試料の化学組成
*粗製試料の構造特性
粗製試料STL3は、主に、
‐ 35%のマグネタイトFe3O4
‐ 13%の普通輝石
(Mg,Fe,Ca)・(Si,Al)O3
からなる。
残り、すなわち約52%は、非晶質相からなる。このガラス質相の化学組成は
、点スペクトル分析(カステイング(Castaing)電子マイクロプローブ)を用い
て評価することができた。すなわち、
‐ 21ないし22%のSi ‐ 5ないし5.5%のAl
‐ 7.5ないし8%のFe ‐ 4ないし5%のNa
‐ 8.5ないし9%のCa ‐ 2ないし2.5%のTi
‐ 0.5ないし1%のオーダーのK、Mg、MnおよびP
*下記温度で再溶融された試料の構造的特性1500℃で
:これは全体的に結晶性であり、4つの相
‐ ヘルシナイトFeAl2O4
‐ ウルバイト、またはウルボスピネル、Fe2TiO4
‐ 鉄カンラン石Fe2SiO4
‐ 斜長石
からなる。1400℃
で:この物質は、全体的には結晶性ではない。約40ないし50%の
ガラス相がなお残っている。
‐ マグネタイトFe3O4のパーセントの増加
‐ チタン鉄鉱FeTiO3およびプソイド板チタン石Fe2TiO5結晶の外
観
‐ 50%の灰長石を含有する斜長石
*浸出試験
1500℃および1400℃で再溶融させた生成物についての浸出試験の結果
を粗製試料のそれと比較すると、
‐ 粗製試料について可動性である銅、ニッケルおよび亜鉛は、再溶融、特に
1500℃で再溶融された生成物中で安定化され、それらは浸出物中では検出す
らされないこと、
‐ 再溶融された生成物の浸出物中にはヒ素はもはや検出され得ないこと、
‐ 再溶融生成物の可溶性分画は、粗製試料よりも4ないし20倍低いこと、
‐ STL3−1500℃において塩化物およびスルフェート濃度も急激に低
下しゼロもしくは実質的にゼロとなること、
さらに、
‐ 鉛はSTL3−1400℃においてやや脱安定化されるがそれはごくわず
か可溶化されること、
‐ 銅の溶解性は、STL3−1400℃におけるよりもSTL3−1500
℃における方がより大きく減少することに気付く。
*粗製試料の化学組成
*粗製試料の構造特性
粗製試料STL6は、主に、
‐ 11%の石英SiO2
‐ 17%のマグネタイトFe3O4
‐ 12%の普通輝石
(Mg,Fe,Ca)・(Si,Al)O3
‐ 3%のヘマタイトFe2O3
‐ eの硫黄
からなる。
残り、すなわち約57%は、非晶質相からなる。このガラス質相の化学組成は
、点スペクトル分析(カステイング(Castaing)電子マイクロプローブ)を用い
て評価することができた。すなわち、
‐ 23ないし24%のSi ‐ 5.5ないし8%のAl
‐ 7ないし8%のFe ‐ 2ないし2.5%のNa
‐ 6ないし6.5%のCa ‐ 3ないし3.5%のTi
‐ 1ないし2%のオーダーのK、Mg、MnおよびP
*下記温度で再溶融された試料の構造的特性1500℃で
:これは全体的に結晶性であり、3つの相
‐ ヘルシナイトFeAl2O4
‐ ウルバイト、またはウルボスピネル、Fe2TiO4
‐ 斜長石
からなる。1400℃
で:この物質は、全体的には結晶性ではない。約30%のガラス相が
なお残っている。
‐ マグネタイトFe3O4のパーセントの増加
‐ チタン鉄鉱FeTiO3結晶の外観
‐ 鉄カンラン石Fe2SiO4
‐ 長石(Na,Ca)・(Al,Si)3O8
*浸出試験
1500℃および1400℃で再溶融させた生成物についての浸出試験の結果
を粗製試料のそれと比較すると、
‐ 粗製試料について可動性であるヒ素、クロム、銅、ニッケル、鉛および亜
鉛は、再溶融、特に1500℃で再溶融された生成物中で安定化され、それらは
浸出物中では検出すらされないこと、
‐ 再溶融生成物の可溶性分画は、粗製試料よりも1ないし8倍低いこと、
‐ STL6−1500℃において塩化物およびスルフェート濃度も急激に低
下しゼロもしくは実質的にゼロとなること、
さらに、
‐ 鉛はSTL6−1400℃においてやや不溶化されるが、STL6−15
00℃では完全に不溶化される。この現象は、銅および鉛についても観察される
こと
に気付く。
V.2.4. 試料STL8についての試験
*粗製試料の化学組成
*粗製試料の構造特性
粗製試料STL6は、主に、
‐ 40%のマグネタイトFe3O4
からなる。
残り、すなわち約60%は、非晶質相からなる。このガラス質相の化学組成は
、点スペクトル分析(カステイング(Castaing)電子マイクロプローブ)を用い
て評価することができた。すなわち、
‐ 17ないし17.5%のSi ‐ 6ないし6.5%のAl
‐ 13.5ないし14%のFe ‐ 2.5ないし3%のNa
‐ 8ないし8.5%のCa ‐ 4.5ないし5%のTi
‐ 1%のオーダーのMgおよびP
‐ 0.5%のオーダーのKおよびMn
*下記温度で再溶融された試料の構造的特性1500℃で
:これは全体的に結晶性であり、4つの相
‐ ヘルシナイトFeAl2O4
‐ ウルバイト、またはウルボスピネル、Fe2TiO4
‐ 鉄カンラン石Fe2SiO4
‐ 斜長石
からなる。1400℃
で:この物質は、全体的には結晶性ではない。約
30%のガラス相がなお残っている。
‐ マグネタイトFe3O4のパーセントの増加
‐ チタン鉄鉱FeTiO3およびプソイド板チタン石Fe2TiO5結晶の外
観
‐ 50%の灰長石を含有する斜長石
*浸出試験
この試料についての浸出試験は、1550℃、1400℃および1300℃で
再溶融された3つの生成物に対して行った。これら浸出物の分析と粗製試料の分
析との比較によっては、処理後の粗製スラグの不活性さ(inertia)の増加は証
明されない。事実、粗製試料は初めから安定である。しかしながら、この事実は
、主としてマグネタイトからなるスラグの構造に関連付けなければならない。
もっとも、塩化物およびスルフェートの溶解性は温度の増加に比例して低下す
る。II 金属水酸化物スラッジの熱処理
金属水酸化物スラッジの熱処理は、廃棄物の汚染性金属を、存在するまたは合
成されるべき結晶格子中に挿入することによって、封鎖することを可能にするも
のでなければならない。
目的は、ススラグの場合と同様に、安定な天然岩石に可能な限り近い組成およ
び構造を達成することである。
その方法は、スラッジと徐冷中に人工岩石を生成する上で好適な鉱物添加物と
の混合物を溶融することを包含する。この結晶化中に、遷移金属はガラス質物質
から結晶化過程中の相へと移行する。
原理は、廃棄物中にすでに存在する成分を使用し、完全な結晶化を行わせるた
めにさらなる添加を行うことである。
スラッジに適用される方法の新規性は、焼却スラグであり得る添加物にある。
II.1 スラッジ、およびスラッジ/スラグ混合物の特性
A.化学組成:
1.スラッジ
これらは、溶液状態の金属を石灰により、ついで硫化ナトリウムによって金属
を沈殿させること(金属を担持した産業排出物の脱汚染化方法)により生成した
金属水酸化物自体の水懸濁物からなる親水性無機スラッジである。現場で毎日採
取された水酸化物スラッジの5つの試料の元素組成を以下の表II.1に示す。
上記5つの試料は、主にカルシウムとリンである主要元素の含有率に関してあ
る程度の一定性を示す。ナトリウム、鉄、硫黄等についてはいくぶんの変動が見
られる。
すべての試料は高い含有率でクロム(1.5ないし4%)、亜鉛(0.6ない
し4%)、銅(0.1ないし1%)、ニッケル(0.4ないし0.8%)、鉛(
830ないし1500ppm)、カドミウム(22ないし202ppm)、およ
びスズ(0.1ないし3.7%)を含有する。
2.スラグ
このスラグは、産業廃棄物の焼却に由来する。これらは、焼却される廃棄物に
したがって変化する多重酸化形態で結合した不燃性無機物質を主に含有する。
スラグSL8を使用した。これらは鉄に最も富む。これらのカントメーターに
よる分析結果を、ここに記載した試験のために使用したスラッジT2およびT5
と比較して、表II.2に示す。
上記スラグは、上記スラッジよりも多量のケイ素、アルミニウム、鉄およびチ
タンを含有し、顕著に低いリンおよびカルシウムを含有する。微量金属の含有率
は、試料毎に大きく変動する。試料ST8はクロム、銅および亜鉛に富む。
3.スラッジ/スラグST8混合物
混合物は、スラッジT2、T5と、増加した割合(10〜50%)のスラグS
T8とで調製されている。
これら混合物の組成を表II.3に示す。
B. 金属水酸化物スラッジの構造組成
乾燥、粉砕された未精製の水酸化物スラッジの構造は、約12%のアパタイト
Ca5(PO4)3(F,Cl,OH)と、35%のバサナイト(bassani
te)(CaSO4・1/2H2O)とで構成される結晶性の相を示し、残り、す
なわち53%はアモルファスマトリックスで構成されている。
我々の試験では、スラッジは105℃の乾燥機中で乾燥される。
II.3: 結果と議論
A. 最後の結果の覚え書
添加していないスラッジの加熱に関する最初の結論は以下の通りである:
− 完全な結晶化による、1000℃を越える温度での、廃棄物の機械的強度
、および安定性についての全体的な改良、
− 加熱の際の損失の減少、
− 可溶性部の減少(1380℃を越える温度での塩化物と、硫酸塩の事実上
完全な消滅、
− 規格X31−210による可溶成分採取試験の結果は、要約された表II
.4とII.5に記載されている、すなわち:
− TOCの減少
− 1000℃を越える温度で行われるテストについて、1993年3月30
日の指令で定められた基準しきい値よりも低い、浸出物中のZn、Ni、Cdの
濃度
他方で、直面する問題は以下の通りである:
− 温度の上昇に応じたクロム(VI)の遊離、
− カルシウムフェリアルミニウム(フェライト)の形成。
鉄くずの添加(1〜5%)およびST8スラグの添加(1〜5%)は、クロム
を安定な結晶格子中へトラップするのに寄与しているように見える(表II.5
参照)。
これら観測は、フェライトに関してスピネルを形成するために他の実験を計画
することを可能にした。
スラグの添加が、経済的実行可能性の点で鉄くずに比べて
より著しく好都合であるので、プロセスは、混合物中におけるST8スラグの含
量を10〜50%まで変えることにより、最適化されている。
クロム(VI)の可溶化を防ぐために使用されるスラグの最低濃度のしきい値
は30%である。
このスラグの量は、フェライトに関してスピネルの形成を促進させるために、
さらに50%まで増加させられるであろう。
B. サンプルの熱的挙動
1. 加熱処理後のスラッジの質量の損失
処理されたサンプルの質量の損失は、表II.6とII.7に記録されている
。
以下が観測されている:
− 温度が上昇すればするほど、元素の揮発が多くなる、
− スラグの添加が、サンプルの質量の損失をかなり減少させる。2.示差熱分析(DTA)および熱重量分析(TGA)
示差熱分析は、2つのスラッジサンプルT2,T5およびST8スラグの反応
挙動の同定を可能にした。スラッジに関しては、顕著な“結果”のみが低温(<
500℃)で目立つ。高温においては、約1100℃および約1400℃に、部
分溶融に起因すると考えられる2つのピークが観察される。T2およびT5の2
つのサンプルの挙動は、実質的に同一である。
スラグの場合には、溶融領域の始まりは約1000℃にあり、溶融は約130
0℃で終了する。
DTAによれば、未精製スラッジ、あるいはスラッジおよびスラグの混合物の
処理のための効果的な熱領域は、1200℃〜1400℃の範囲にあるようであ
る。別のタイプの添加物が加えられている場合には、問題は異なる。
1500℃における熱重量分析は、試験された未精製スラッジの2つのサンプ
ルについて、30〜40%の重量損失を示している。スラグに関しては重量の損
失は低く、2%のオーダーである。重量が急速に減少する2つの温度領域は、2
0℃〜300℃、および1200℃〜1500℃で顕著である。
3.処理された残渣の多成分分析
揮発した成分の定量を可能にするために、異なる温度における熱処理から得ら
れた残渣の多成分分析を、ICP−MS分光分析により行なった。
単独で処理された未精製スラッジの分析について、結果は以下の通りである。
*1000℃
結果を表II.8にまとめる。主要な成分については、CO2の完全な離脱、K2
O、SおよびClの含有量の低下が観測された。
重金属については、水銀、鉛、およびカドミウムは、実質的に完全に揮発して
いる。スズおよび亜鉛の含有量は、若干減少している。
*1200℃
表II.9には、CO2の完全な消失、SおよびClの約50%の消失が示され
ている(T2についてのみ)。Na2O、K2O(T2)およびFの減少もまた、
観察される。微量金属については、Pb,HgおよびCdの完全な揮発を伴なっ
て、Cr,Cu(T2),Ni,Zn,Sn(T2)およびAs(T2)の濃度
の減少が観察された。処理された2つのサンプルに関して、変動は顕著である。
1380℃での第1の結果は、30%のスラグを含有するスラッジ混合物のみ
についてである(cf.表II.10)。
*1380℃
Na2O,K2OおよびClのより顕著な離脱が、実質的に観察される。微量金
属に関しては、CdおよびHgが揮発
している。他方、大気中に放出されるPbは1200℃の場合より少なく、これ
は、その捕獲によって説明される。Cr,Ni,ZnおよびAsについても同様
であり、恐らく、これらもまた結晶相中に部分的に取り込まれた。
C.滲出試験
1380℃で熱処理されたスラッジ−スラグ混合物(30および50%)につ
いて得られた結果を、特別廃棄物の消却からの水酸化スラグおよびクリンカーに
関して93年3月30日に定義された規定閾値、家庭廃棄物の消却からのクリン
カーの公共事業における回収のための推奨閾値と比較して、表II.11にまとめ
る。
まとめると、滲出溶液は、未処理の対照に関して以下のような特性を有してい
ることが立証される。
−TOCの減少
−公共事業における回収に関するよりもさらに、閾値より低い滲出溶液中にお
ける金属の濃度、
−そして、特に、未精製スラッジの1380℃における試験についてのクロム
(VI)の溶解度の相当の減少(2678〜5976ppmから4.3〜9.4ppm)
処理されるスラッジ/スラグ混合物中において、クロムを不溶化するのに必要
なスラグの最少量は30%である。
最もよい結果は、スラッグに50%のスラグが添加された際に得られた。
D.構造的研究
1.光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡(SEM)による鉱物学的分析
50%のスラグが添加された際の溶融−結晶化サイクルは、スピネル、アパタ
イト結晶およびカルシウムフェリアルミネートの成長を引き起こす。
アパタイトは、その理想的な組成はCa5(PO4)3(F)であるが、Caイオンが
カチオンおよびPO4で、そして、FがSO4、SiO4およびCrO4アニオンで
種々の割合まで置換されており、光学顕微鏡のもとでは、未精製のスラッジの溶
融試験と比較して、一般的に若干着色している。
スラッジ/スラグ(50%/50%)混合物は、最も高い反射率を有するスピ
ネル結晶化学構造を伴なった相をもたらす。反射率における変動は、電子マイク
ロプローブによる化学データに関連するものであり、スピネル結晶の核が、チタ
ンをより多く含有する周辺部とは異なってクロムリッチとなるのを可能にする。
この観察のプロセスにより、フェライトもまた確認された。それは、非常に特
徴的な形状を有するハニーイエロー色の骸晶である。
事実、フルオロアパタイトが主であり、このフルオロアパタイトおよび/また
は斜長石(亜灰長石種)が、スピネル結晶の填間状空間を独占的に満たしている
。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(72)発明者 アルノール、ミシェル
フランス国、エフ ― 54000 ナンシー、
リュ・カロ 3
(72)発明者 ピノー、ジャン − ルイ
フランス国、エフ ― 54230 ヌーブ
― メゾン、リュ・デュ・ピュイソ 544
(72)発明者 ラム、バック・テュエ
フランス国、エフ ― 54230 シャリー
ニ、リュ・デュ・シャトー 17
(72)発明者 トーロン、ジャック
フランス国、エフ ― 92250 ラ・ガレ
ンヌ ― コローンブ、リュ・リュシャン
― ジャニン 15
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 1.廃棄物を処理する方法であって: 粒状鉄化合物を含む1種または数種の核形成剤と処理すべき廃棄物とを含む 混合物を加熱する工程であって、該加熱は、溶融混合物または溶融物としても知 られる液相混合物を得ることを可能にし、その少なくとも5%のFe2O3酸化物 がFeO酸化物に変換される条件下で行われる工程と; 前記溶融物を、固体物質が得られるまで制御下で冷却して、処理された廃棄 物中に含まれる重金属をスピネル属の結晶を含む結晶構造内に安定化させる工程 と; 得られた前記固体物質を回収する工程とを具備したことを特徴とする方法。 2.請求項1に記載の処理方法であって、前記加熱工程は、前記処理すべき混 合物の完全な液化を可能にする温度において、前記混合物の安定化相を含むこと を特徴とする方法。 3.請求項1または2に記載の処理方法であって、前記処理される廃棄物が、 産業廃棄物または家庭廃棄物の焼却から生じるスラグであることを特徴とする方 法。 4.請求項1〜3の何れか1項に記載の処理方法であって、前記核形成剤が、 鉄ヤスリ粉のような鉄化合物であることを特徴とする方法。 5.請求項1〜4の何れか1項に記載の処理方法であって、前記処理すべき廃 棄物が金属水酸化物スラッジであり、また前記処理すべき混合物には、上記の金 属水酸化物スラッジおよび産業廃棄物または家庭廃棄物の焼却から生じる核形成 剤 としてのスラグが含有されることを特徴とする方法。 6.請求項5に記載の処理方法であって、前記加熱すべき混合物には、該混合 物の重量の略70%〜30%の水酸化物スラッジおよび略30%〜70%のスラ グが含有されることを特徴とする方法。 7.請求項1〜6の何れか1項に記載の処理方法であって、当該処理の最後に 略20%〜50%のスピネルが回収されることを特徴とする方法。 8.請求項5〜7の何れか1項に記載の処理方法であって、前記スラグが、前 記混合物の5重量%までの鉄化合物で置き換えられることを特徴とする方法。 9.請求項1〜8の何れか1項に記載の方法であって、前記加熱工程は、 a)前記スラグに含まれるマグネタイトの液化、並びにFe2O3の放出と、 b)形成されたFe2O3の、鉄のような作用剤の添加によるFeO酸化物へ の還元 とを可能にするような条件下で行われることを特徴とする方法。 10.請求項1〜9の何れか1項に記載の処理方法であって、加熱処理すべき 前記混合物の温度は、少なくとも略1450℃、好ましくは略1500℃まで上昇される ことを特徴とする方法。 11.請求項1〜10の何れか1項に記載の処理方法であって、前記鉄化合物 が鉄であることを特徴とする方法。 12.請求項1〜11の何れか1項に記載の処理方法であって、前記鉄化合物 は、加熱処理すべき前記混合物の0.5%より大きい比率、好ましくは処理すべき 前記混合物の1重量%よりも大きい比率の鉄ヤスリ粉であることを特徴とする方 法。 13.請求項1〜12の何れか1項に記載の処理方法であって、前記核形成剤 は、前記加熱工程を受ける混合物の重量の略0.5%〜略15%に対応することを 特徴とする方法。 14.請求項1〜13の何れか1項に記載の処理方法であって、前記処理すべ き廃棄物は、主に下記の酸化物を下記に示した前記廃棄物の全重量に対するパー センテージの比率で含有するスラグであることを特徴とする方法。 SiO2 26.25−45.65 Al2O3 7.43−17.98 Fe2O3 14.53−34.92 MnO 0.54− 1.88 MgO 1.64− 2.86 CaO 6.41−10.16 Na2O 2.66−10.82 K2O 0.56− 1.61 TiO2 3.66− 7.69 P2O5 0.96− 2.54 CO2 0.33− 4.32 全S 0.03− 2.53 15.請求項1〜13の何れか1項に記載の処理方法であ って、前記処理すべき廃棄物は、主に下記の酸化物を下記に示した前記廃棄物の 全重量に対するパーセンテージの比率で含有する金属水酸化物スラッジであるこ とを特徴とする方法。 SiO2 1.4 − 2.7 Al2O3 1 − 3 Fe2O3 3 −15 MnO 0.05− 0.2 MgO 0.5 − 1 CaO 20 −32 Na2O 1.5 − 4 K2O 0.2 − 0.3 TiO2 0.01− 0.1 P2O5 5 −18 CO2 5 −11 全S 4 −14 16.請求項1〜14の何れか1項に記載の処理方法であって、前記加熱工程 は、10mm未満、好ましくは2mm未満の粒子サイズを有するスラグに対して 行われることを特徴 とする方法。 17.請求項1〜16の何れか1項に記載の方法であって、前記スラグは核形 成剤、特に鉄化合物と共にホモジェナイズされることを特徴とする方法。 18.請求項16および17の何れか1項に記載の処理方法であって、前記ス ラグおよびおよび鉄化合物の混合物は、10μm未満の粒子寸法を得るように粉 砕されることを特徴 とする方法。
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