【発明の詳細な説明】
ニトリルをアミンに水素化するための触媒、
その製造方法及びそれを使用する水素化方法
本発明の分野は、ニトリル類のアミン類への接触還元の分野である。
さらに詳しくいえば、ここでは、ラネイニッケル型の触媒、即ち、先駆体Ni
/Al合金にアルカリ侵食を行って得られる型の触媒を使用するニトリルの接触
水素化を問題とする。
しかして、本発明は、ニトリル類、特にジニトリルのジアミンへの水素化用触
媒であって、周期律表の第IIb族及び第IVb族〜第VIIb族の元素から選択され
る少なくとも1種の元素をドープしたラネイニッケル型のものである水素化用触
媒に関する。
本発明の他の主題は、上記のようなドープしたラネイNi型の、ニトリルから
アミンへの水素化用触媒の製造方法にある。
さらに、本発明は、前記のような触媒の使用を可能にさせるニトリルのアミン
への水素化方法に関する。
本発明の意味において、ニトリル類は、全ての芳香族及び(又は)脂肪族モノ
−及びジニトリルの全て、特に限定するわけではないが、ジカルボン酸、好まし
くはC3〜C6ジカルボン酸から得られるジニトリル、例え
ばアジポニトリル、グルタロニトリル、スクシノニトリル又はマロノニトリルを
意味し、これらは1〜6個の炭素原子を有する低級アルキル基、例えば特にメチ
ル又はエチル基によって置換されていてもよい。
ラネイニッケルは、水素化反応のために工場及び実験室において広く使用され
ている。それらは、アルミニウムに富むAl/Ni合金にアルカリ侵食を行うこ
とによって製造される。触媒は、高い比表面積及び可変の残留アルミニウム含量
を有するニッケル微結晶の凝集体からなる。
一般的にいって、触媒の分野で、特に水素化用触媒の分野において間断なく目
標とされている目的は、一方では水素化すべき基質に関して触媒の活性及び選択
性と他方では安定性とを最適化させることである。
これらの三つの重要なパラメーターが、触媒の製造容易性、その低いコスト並
びにその水素化への使用の融通性及び簡便性というその他の拘束要因に不可分に
結びついている。
しかして、ラネイニッケル触媒の活性及び(又は)選択性を向上させる観点か
ら、それをチタン、クロム、鉄、コバルト、銅、モリブデン、タンタル、ジルコ
ニウム又は他の金属のような促進剤を使用してドープすることが既に提案されて
いる。
これらの促進剤は、ラネイニッケルの電子的及び構造的要因を変性させる機能
を有する。これらは、いわゆる
“冶金学的”ドープ技術に従って溶融状態でNi/Al合金に具合よく添加され
る。
特に、フランス特許第913997号は、ニッケルに関して0.5重量%〜3.
5重量%のクロムを含有するNi/Al合金から製造されたラネイNiをアジポ
ニトリルからヘキサメチレンジアミンへの水素化に使用することを記載している
。
B.N.チュチュニコフ他の文献“The Soviet Chemical Industry No.6,Jun
e 1991”並びにL.Kh.フレイドリン他の文献“Russian Chemical Reviews V
ol.33,No.6,June 1964”は、他にもあるが、金属ドープ剤を使用して促進され
たラネイ水素化用触媒を使用する脂肪族ニトリル(ジニトリリル)の接触還元に
関するものである。
しかし、このような触媒を得るのは比較的困難である、何故ならば、それらは
、先駆体合金を溶融状態にもたらし、その状態を維持するための手段を要求する
からである。さらに、これらの触媒を得るための既知の方法は、特に、合金中に
導入するドープ剤の量を調節することに関して、比較的融通性が低い。事実、先
駆体合金とドープ剤との混合は時として均質ではなく、従って触媒体の中に有意
の組成変化又はドープ剤含量の有意の変化を生じさせるかもしれない。また、溶
融物内で起こる現象が制御できないことも指摘されるべきである。しかして、あ
る場合には、生成物の触媒挙動に有害な複雑な結晶
学的構造の形成を立証することが可能である。
さらに、溶融状態でのニッケル及びアルミニウムとの相溶性の問題のために、
ドープ剤の種類の選択に関してある種の制限が存在する。
また、冶金学的経路でドープされたラネイNi触媒のいくつかは活性、選択性
及び経時安定性に関して満足できる結果を得るのを常に可能にしないことも強調
されるべきである。
また、チュチュニコフ他並びにフレイドリン他により記載された既知の触媒は
比較的高い残留アルミニウム含量、即ち6重量%よりも多いアルミニウム含量を
有することに注目されたい。これは触媒の性能を助成しない。最後に、これらは
8重量%よりも多いドープ剤/Ni重量比を特徴とすることが認められる。
しかして、本発明は、従来技術のドープされたラネイ型の水素化用触媒の欠陥
及び不利益を克服することを目的とする。
従って、本発明の目的は、製造するのが容易で安価であり且つ活性、選択性及
び経時安定性の要求を満たすドープされたラネイNi水素化用触媒を提供するこ
とである。
本発明の他の目的は、実行するのが簡単で且つ経済的であるラネイNi水素化
用触媒の製造方法を提供することである。
上記の目的とするタイプのラネイNi触媒に依存する
水素化方法を提供することである。
本願の出願人は、面目にかけて、これらの目的を達成するために、アルカリ侵
食中に先駆体合金の化学的ドープを行うことが得策であることを立証した。
しかして、本発明の主題は、ラネイNi型であり且つ周期律表の第IIb族及び
第IVb族〜第VIIb族の元素から選択される少なくとも1種の元素をドープした
ニトリルをアミンに水素化するための触媒であって、その先駆体合金がアルカリ
侵食の前にドープ剤を実質上含まないことを特徴とする上記の触媒にある。
本発明の意昧の範囲で、用語“ドープ剤”は、触媒の性質を向上させるという
観点で、その冶金学的合成の直後に粗製の先駆体合金に意図的に添加される化学
元素を意味する。
このような化学的ドービング法は、触媒の製造を大いに簡略化させ且つ触媒の
特質を有意に向上させるものでえある。
特に、この新規な触媒は、水素化の生産性及び選択性を増大させるのを可能に
させると共に、望ましくない副生物又は不純物の出現の度合いを低下させるのを
可能にさせる。
本発明の他の観点によれば、この触媒は、ニッケルの重量に対する重量で表わ
して、6%以下、好ましくは5%以下、さらに好ましくは2.5%〜4.5%のア
ルミニウム含量を有する。
さらに有利には、この触媒のドープ剤/Ni重量比は0.05%〜10%、好
ましくは0.1%〜5%、さらに好ましくは0.3%〜3.5%である。
ドープ剤に関しては、それは、好ましくは次の元素:チタン、クロム、ジルコ
ニウム、バナジウム、モリブデン、マンガン又は亜鉛のうちから選択される。チ
タン、クロム及びジルコニウムが特に好ましい。
ニッケル、アルミニウム及びドープ剤の他に、本発明の触媒は、例えば鉄のよ
うな構造用金属元素を含有することができる。このような構造用金属元素は、最
終触媒中に10重量%以下、好ましくは7重量%以下、さらに好ましくは5.5
重量%以下である量で存在する。
また、本発明は、周期律表の第IIb族及び第IVb族〜第VIIb族の元素から選
択される少なくとも1種の元素でドープされた、ニトリルのアミンへの水素化に
使用することができるラネイNi型の触媒の製造方法に関する。
ラネイNi型触媒の製造方法は、ニッケルとアルミニウムからなる金属合金を
アルカリ侵食に付し、アルミニウムの大部分を浸出させることから有利になる。
本発明に従えば、出発先駆体Ni/Al金属合金は、冶金学的経路によるドー
ピングに付されなかった。従って、このものは促進剤金属元素を実質上含まない
。
先駆体合金は、次いで、ニッケルに化学結合させようとする錯化された形態の
ドープ剤の存在下にアルカリ侵
食に付される。
本発明による化学的ドービングは、ラネイ触媒の慣用の製造法を何ら複雑にさ
せない。
さらに、全く驚いたことに、また予期しなかったことであるが、この方法の簡
単な配置が低コストで顕著な性能の触媒構造を生成させることを可能にするもの
と思われる。
本発明の好ましい特徴によれば、ドープ剤は、好ましくはアルカリ性である溶
液として、さらに好ましくは侵食用媒体と同じ性質でしかも実質上同じアルカリ
濃度の溶液として、アルカリ侵食用媒体中に導入される。
ドープ剤を移送させ且つそれを先駆体合金と接触させるためのビヒクルは、有
利には、ドープ剤と少なくとも1種のキレート化剤との錯体である。これは、例
えば、ドープ剤の塩、好ましくはアルカリ侵食用媒体に可溶性であるものであっ
てよい。使用されるキレート化剤は、好ましくはカルボン酸誘導体、トリエン類
、アミン類又はその他の適当な金属イオン封鎖剤のうちから選択される。
カルボン酸誘導体に関しては、次の化合物:酒石酸又はその塩、くえん酸又は
その塩、エチレンジアミンテトラ酢酸又はその塩、グルコン酸又はその塩又は脂
肪族カルボン酸又はその塩、例えばステアリン酸又はその塩が容易に使用される
。
特定の有益な具体例によれば、酒石酸又はその塩が
Ni/Al合金の化学的ドーピング剤のキレート化剤として選択される。
考慮中のドーピング用元素は、前記したものと同じである。
方法の経時性に関しては、ドープ剤は、反応器に浸出の開始時から、実際には
処理すべき合金と同時に導入される。
しかして、アルカリ侵食用媒体が例えば6N水酸化ナトリウム溶液からなる場
合には、キレート化された形態で、またそれ自体6N水酸化ナトリウム溶液に溶
解されたドープ剤が合金と同時に反応媒体にもたらされる。
本発明に従う方法の別の実施態様によれば、化学的ドーピングは、周期律表の
第IIb族及び第IVb族〜第VIIb族から選択される、好ましくは次の元素:チタ
ン、クロム、ジルコニウム、バナジウム、モリブデン、マンガン又は亜鉛のうち
から選択される2種の投入金属元素を使用して行われる。チタンとクロムの組合
せが特に好ましい。
アルカリ侵食中に使用されるドープ剤の量は、触媒内で目標とするドープ剤の
最終濃度に依存する。当業者ならば、使用する容積、ドープ剤の最終目標濃度並
びに考慮中のアルカリ媒体へのドープ剤/キレート化剤錯体の溶解度限界を考慮
することによって、アルカリ性ドープ剤溶液の濃度を調節することは全く容易で
あろう。
事実、反応条件下では、ドープ剤/キレート化剤錯体
はこれをアルカリ侵食用反応媒体に導入中に溶解状態にあることが好ましい。
反応媒体中のドープ剤の濃度上限を規定するものは溶解度であることが知られ
ているので、一つの考えを示せば、この濃度は、例えば、25℃の反応媒体につ
いて10-5モル/l以上、好ましくは10-3モル/l以上であることが示されよ
う。
ドープ剤の導入は別にして、本発明に従う方法は、ラネイNi水素化用触媒を
得るためにNi/Al先駆体合金に対してアルカリ侵食を行うことについては慣
用の方法に匹敵することができる。
その方法は、本発明に従う前記した新規なドープされた触媒を製造するのに期
待できる技術の一つである。
また、本発明は、本発明に従う新規な触媒が使用されるニトリル類をアミン類
に水素化するための方法に関する。
この方法は、限定するわけではないが、特に、次の式(I)
NC−R−CN (I)
(ここで、Rは1〜12個の炭素原子を有する線状若しくは分岐状アルキレン若
しくはアルケニレン基又は置換若しくは非置換のアリーレン、アラルキレン若し
くはアラルケニレン基を表わす)
のニトリル基質に適用される。
本発明の方法においては、好ましくは、Rが2〜6個
の炭素原子を有する線状又は分岐状アルキレン基を表わす式(I)のジニトリル
が使用される。このようなジニトリルの例としては、特にアジポニトリル、メチ
ルグルタロニトリル、エチルスクシノニトリル、マロノニトリル、スクシノニト
リル、グルタロニトリル及びこれらの混合物、特に、アジポニトリルの合成する
ための同じ方法から生じるアジポニトリル、メチルグルタロニトリル及びエチル
スクシノニトリル混合物が挙げられる。
反応媒体へのニトリル基質、例えばアジポニトリルの導入は、反応媒体の全重
量に関して0.001重量%〜30重量%(w/w)、好ましくは0.1重量%〜
20重量%(w/w)の濃度を観察しながら行われる。
使用される強塩基は、好ましくは次の化合物:LiOH、NaOH、KOH、
RbOH、CsOH及びこれらの混合物から選択される。
実際には、性能と価格とを良好に妥協させるために好ましくはNaOH及びK
OHが使用されるが、RbOH及びCsOHも良好な結果を与える。
水素化反応媒体は好ましくは液状である。それは、水素化すべきニトリル基質
を溶解させることができる少なくとも1種の溶媒を含有する。何故ならば、この
転化は該基質が液状であるときに一層容易に行われることが知られているからで
ある。
本発明の方法の有益な具体例によれば、少なくとも部分的に水性の液状反応媒
体が使用される。水は、全反応
媒体に関して、一般に50重量%以下、有利には20重量%以下の量で存在する
。さらに好ましくは、反応媒体の水分は、反応媒体の全成分に関して、0.1〜
15重量%である。
水を補給し又は置換するために、アルコール及び(又は)アミド型の少なくと
も1種のその他の溶媒を提供することが可能である。特に好適なアルコールは、
例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノー
ルのようなアルコール類、エチレングリコール及び(又は)プロピレングリコー
ルのようなグリコール類、ポリオール類及び(又は)これらの化合物の混合物で
ある。
溶媒がアミドからなる場合には、これは、例えば、ジメチルホルムアミド又は
ジメチルアセトアミドであってよい。
水と一緒に使用するときは、溶媒は好ましくはアルコール性であって、水1重
量部当たり2〜4重量部、好ましくは水1重量部当たり3重量部を占める。
本発明の他の好ましい特徴によれば、本発明の方法がその製造を目標としてい
るアミンが反応媒体に混入される。そらは、例えば、ニトリル基質がアジポニト
リルであるときはヘキサメチレンジアミンである。
反応媒体中の目標アミンの濃度は、反応媒体中に含まれる全溶媒に関して有利
には50重量%〜99重量%、さらに好ましくは60重量%〜99重量%である
。
反応媒体中の塩基の量は、反応媒体の種類に従って変わる。
反応媒体が液状溶媒として水及び目標アミンしか含有しないときは、塩基の量
は有利には触媒1kg当たり0.1モル以上、好ましくは触媒1kg当たり0.1
〜2モル、さらに好ましくは触媒1kg当たり0.5〜1.5モルである。
反応媒体が水、アルコール及び(又は)アミドを含む場合には、塩基の量は、
触媒1kg当たり0.05モル以上、好ましくは触媒1kg当たり0.1〜10.
0モル、さらに好ましくは触媒1kg当たり1.0〜8.0モルである。
反応媒体の組成及び触媒の選択が決定されたならば、これらの二つの成分は混
合され、この混合物は次いで150℃以下、好ましくは120℃以下、さらに好
ましくは100℃以下に加熱される。
具体的には、この温度は室温(ほぼ20℃)〜100℃である。
加熱の前、加熱と同時に又は加熱に続いて、反応室は適切な水素圧、即ち、実
際には0.10〜10MPaの水素圧にもたらされる。
反応時間は、反応条件及び触媒によって変わる。
不連続操作態様では、それは数分から多数時間の間であり得る。
本発明の方法に対して期待するのが全く可能である連
続操作態様では、明らかに反応時間は設定できるパラメーターではない。
当業者ならば、操作条件に従って本発明の方法の工程の経時性を調節できるこ
とに注目されたい。前記した順序は本発明の方法の好ましい形態に過ぎず、それ
らに限定されない。
本発明に従う水素化(連続又は不連続態様での)を支配するその他の条件は、
それ自体周知である技術的な配置を包含する。
前記した有益な配置の全てによって、本発明の方法は、選択的な、迅速な、簡
便な且つ経済的な方法でニトリル基質をアミンに水素化させるのを可能にさせる
。
アジポニトリルからヘキサメチレンジアミンへの水素化がポリアミド−6,6
の製造者にとって特に重要である。何故ならば、この水素化誘導体は大規模の工
業的合成における基本単量体であるからである。
また、ジニトリルの水素化はアミノニトリルの製造法を与えることができる。
しかして、アジポニトリルの2個のニトリル官能基の一つだけを水素化してアミ
ノカプロニトリルを得ることが可能である。後者の化合物は、加水分解環化によ
って、やはりポリアミド、即ちポリアミド−6の大規模の工業的合成の出発物質
であるカプロラクタムに容易に転化させることができる。
従って、既知の触媒よりも製造するのが容易であり、経済的であり、選択的で
、活性で且つ安定である本発明
の新規な水素化用触媒は、この技術分野に顕著で且つ評価できる技術的進歩をも
たらすものである。
考慮中の新規な触媒の製造並びにアジポニトリルからヘキサメチレンジアミン
への水素化への適用を示す以下の実施例から、本発明はより良く理解されるであ
ろうし、またその利点及びその他の変形例も一層明らかとなろう。実施例
出発物質の先駆体合金は、ニッケル/アルミニウム二成分混合物:NiAl3
、Ni2Al3、Al/NiAl3共晶物及びAl/NiAl3初晶物の4種の典型
相から得たものである。
実施例で使用する合金は、下記の通りである。
・市販の合金:Ni/Al=重量で50/50(NiAl3+Ni2Al3混合物
、Al/NiAl3共晶物)、
・Ni/Al=重量で42/58である純粋なホモジナイズしたNiAl3相、
・Ni/Al=重量で28/72である鋳造時の初晶物、
・Ni/Al=重量で6/94である鋳造時の共晶物。化学的にドープしたラネイNi触媒の製造例
1.ドーピング用溶液の製造
1.1 酒石酸チタン(IV)溶液の製造
120gのL−酒石酸を500mlのビーカーに秤量
する。340gの蒸留水を添加する。混合物を固体が完全に溶解するまで攪拌す
る。
酒石酸チタンの製造は、アルゴンにより何回もパージしたグローブボックスに
おいて行う。
これを行うために、12.59g量のTiCl4をピペットを使用して酒石酸溶
液に注入する。HClの相当な発生とTiO2の沈殿がずっと観察される。導入
したTiCl4の量を秤量する。溶液は非常に曇っている(白色)。溶液を10
00mlのフラスコ中にデカンテーションし、その容積を6NのNaOH溶液を
添加することにより1000mlまでにする。溶液は依然として非常に曇ってい
る。多数時間経時させて平衡を達成させる。6時間後に、3.16g/lのTi
(IV)を含有する透明溶液が得られる。
1.2 酒石酸クロム(III)の製造
140.16gのL−酒石酸を1000mlのエーレンマイヤーフラスコに秤
量する。267.72gの蒸留水を添加する。混合物を攪拌して固体を溶解させ
る。次いで、スパチュラを使用して15.09gの水酸化酢酸クロム(III):(
CH3CO2)7Cr3(OH)2を導入する。混合物を固体が完全に溶解するまで
攪拌する。次いで、6N水酸化ナトリウム溶液を添加して1000mlの容積に
する。
得られた溶液は、3.90g/lのCr(III)の濃度である。
2.ラネイNi触媒の製造
使用する前記したNi/Al先駆体合金の4種類について、下記の方法手順を
使用する。
工程1:300mlの6N水酸化ナトリウム溶液を2lの丸底テフロン製フラ
スコに室温で導入する。
工程2:10.00gの合金をビーカーに秤量する。
工程3:次いで、合金をスパアチュラを使用して水酸化ナトリウム溶液に10
g/hの速度で、媒体の平均温度が50℃を越えない(氷−水浴により冷却して
)ように注意して、導入する。
工程3a:ドープ剤を含有するアルカリ性溶液を計量ポンプを使用して同時に
導入する。
工程4:合金の全部を導入したときに、発泡が終わるまで(5分間)待つ必要
がある。
工程5:2時間加熱還流する(温度=108℃)。
工程6:2時間加熱還流した後、丸底フラスコを加熱マントルからはずし、沸
騰がやむまで5分間待つ。丸底フラスコの下に磁石を置き、固相の沈降分離の後
に上層液を取り出す。
工程7:事実上沸騰している(ほぼ85℃)300mlの1N水酸化ナトリウ
ム溶液を導入し、丸底フラスコを3〜4回振盪する。次いで磁石を丸底フラスコ
の下に置き、固体を沈降により分離させる。最後に、上層液を取り出す。
工程8:事実上沸騰している(ほぼ85℃)300m
lの6N水酸化ナトリウム溶液を導入し、混合物を2時間還流させる。
工程9:工程6と同じ。
工程10:300mlの“沸騰”6N水酸化ナトリウム溶液を使用する以外は
工程7と同じ。
工程11:300mlの“沸騰”3N水酸化ナトリウム溶液を使用する以外は
工程7と同じ。
工程12:300mlの“沸騰”2N水酸化ナトリウム溶液を使用する以外は
工程7と同じ。
工程13:300mlの“沸騰”1N水酸化ナトリウム溶液を使用する以外は
工程7と同じ。
工程14:固体をフラスコに回収し、冷1N水酸化ナトリウム溶液中に貯蔵す
る。
工程3aのアルカリ性溶液は、その製造を上記の1.1及び1.2に記載した酒
石酸Ti又はCrのアルカリ性溶液であってよい。
使用したアルカリ性ドープ溶液の量は、ドープ溶液の最終目標濃度の関数であ
る。
従って、10gの“市販の合金”については、最終触媒中に最終Ti/Ni比
=1.20重量%を得るためには3.6g/lのTiを含有する6N水酸化ナトリ
ウム溶液中の酒石酸Tiの溶液が55.6ml使用される。
このようにして、各種の合金から、Ti及び(又は)Crでドープした種々の
触媒が、最終触媒中の種々のドープ剤/Ni濃度でもって製造された。例1〜25
:本発明に従う触媒を使用するアジポニトリル(ADN)からヘキサ メチレンジアミン(HMD)への水素化並びに従来技術に従う触媒を使用する比 較試験1〜4
1.装置、使用物質及び方法手順
1.1 不連続式試験の装置
316Lステンレス鋼製の150mlオートクレーブを使用する。このオート
クレーブは、良好な気/液移動を与える磁気式攪拌機系(1500rpm、磁気
バー及びカウンターブレード)を備える。加熱は温度調節された加熱スリーブに
よって行う。水素化すべき基質は、オートクレーブの上に設けた鋼製滴下ロート
によって導入する。また、基質は、半連続式反応器の場合には高圧ポンプを使用
しで導入することができる。水素は、記録計に接続されたマノメーターを備えた
貯蔵器に5MPaの圧力で貯蔵する。それは、反応の一定圧力で組立体に過圧放
出される。反応の速度は、水素貯蔵器内の圧力低下を記録するこによってモニタ
ーする。分析のための水素化物試料は、鋼製フィルターを備えた浸漬パイプによ
って引き出す。
1.2 使用物質
・99.99%アジポニトリル(ローヌプラン社、MW=108.15)、
・99.99%ヘキサメチレンジアミン(ローヌプラン社、MW=116.21)
、
・99.995%U水素(容積で)、
・99.8%エタノール、
・蒸留水、
・98%水酸化ナトリウム又は86%水酸化カリウム、
・触媒:前記のように製造され、本発明に従ってTi及び(又は)Crを化学的
にドープしたラネイニッケル、Crを冶金学的にドープした又は従来技術に従う
ドープしてないラネイニッケル。
1.3 典型的試験の進行
1.3.1 装入物
・アジポニトリル:6.0g(0.055モル)、
・水素:過剰量(0.222モル)、
・反応媒体:42gの反応溶媒[HMD/H2O/エタノール]+アルカリ塩基
[NaOH];アルカリ塩基は反応媒体の0.10重量%を占める。
:42gの反応溶媒[HMD/H2O]+アルカリ塩基[KOH];
アルカリ塩基は反応媒体の0.05重量%を占める。
・触媒:0.40g。
1.3.2 操作
過剰量のラネイニッケルスラリー(1〜2g)を引き出し、この触媒を50m
lの蒸留水により6回洗浄し、0.40gの触媒をピクノメーターにより正確に
秤量する。次いで、湿ったラネイニッケルをオートクレーブに導入する。0.4
0gの触媒体については、普通に連行され
た水の量は0.4g程度である。この水分は、HMD/エタノール/水の場合の
60/30/10又はHMD/水の場合の98/2の反応溶媒重量組成において
考慮される。アルカリ塩基は、所要の水分(%)を調節するのに必要な量の水と
共に導入される。これらの取扱いの全ては、溶媒の炭酸化及び触媒の酸化を最小
限にするためにアルゴン雰囲気下に行なわなければならない。
次いで、オートクレーブを窒素及び水素によりパージする。最後に、オートク
レーブを加熱し、2.5MPaの水素圧下に保持する。水素貯蔵器内の圧力の記
録を開始し、ADNを素早く添加する。水素の消費がゼロになったときに、反応
器を、反応が終了するようにするためにさらに半時間攪拌し続ける。
試験の終了時に、選択率を決定するために水素化物試料を引き出す。初期活性
及び“平均活性”は、時間の関数としての水素消費曲線から推定される。
2.分析
2.1 活性の測定
水素消費曲線の初期の勾配は、初期速度(Ri)に比例する。この大きさは、
触媒体単位について補正された単位時間当たりの消費水素のモル数の初期の係数
を求めることによって計算される。初期速度は、1秒につき1kgの触媒当たり
の消費水素のキロモル数で表される。
触媒の挙動を十分に評価するためには、初期活性が早期老化によって不都合な
ほどに影響されないかどうかを
知る必要がある。そのような理由から、平均反応速度(Rm)、即ち、1秒につ
き触媒体単位当たりの全反応時間につき関係した水素のモル数の係数も測定され
る。
Ri及びRmの決定のための試験の再現精度は10%未満の不確実性を与える
。
2.2 選択率の測定
反応終了後に、水素化物試料を引き出し、イソプロパノールで約40倍に希釈
する。この試料を半毛管カラムを使用する気相クロマトグラフィー(GPC)に
より定量分析する。検出器は炎イオン化検出器である。ADNの水素化反応の副
生物の定量的な決定は、内部標準物質法(ウンデカン)により行われる。
定量的に決定される主な副生物のリストは次の通りである。
・HMI:ヘキサメチレンジアミン
・AMCPA:アミノメチルシクロペンチルアミン
・AZCHe:アザシクロヘプテン
・NEtHMD:N−エチルヘキサメチレンジアミン
・DCH:cis-及びtrans-ジアミノシクロヘキサン
・BHT:ビスヘキサメチレントリアミン
%として表されるHMDについての選択率(S)は、関係式:100−副生物
の選択率の和によって示される。事実、HMDは反応溶媒中で使用されるので、
これは全く正確には定量的に直接決定することはできない。他方、副生物は全体
としては全て同定されることが実証さ
れた。
副生物のそれぞれについての選択率は、転化したADNに関して生成した副生
物のモル%によって表される。以下で行った全ての例及び比較試験において、A
DNについての転化率(並びに中問体アミノカプロニトリルについての転化率)
は100%である。
化合物がその検出限界に達しないときは、コメントND(検出されない)を、
結果を示す下記の表において示す。
水素化物中に存在する不飽和生成物の量は、ポーラログラフィーによって評価
することができる。
3.結果
3.1 チタンをドープしたラネイNi触媒
HMD/H2O/エタノール/NaOHを使用する水素化(例1〜16)
下記の表1は、これらの例で得られた結果並びにドープしてないラネイNi触
媒を使用する比較試験(Tc)1及びラネイNi触媒を使用する比較試験(Tc
)2及び3で得られた結果を要約する。
3.2 クロムをドープしたラネイNi触媒
HMD/H2O/エタノール/NaOHを使用する水素化(例17〜20及び
Crを冶金学的にドープしたラネイNiを使用する比較試験4)
3.3 チタン及びクロムをドープしたラネイNi触媒
HMD/H2O/エタノール/NaOHを使用する水
素化(例21〜25)
下記の表2は、例17〜25で得られた結果を要約するが、一方ではクロムが
チタンと同じくらい有益なドープ剤であること、他方では2種のドープ用元素の
使用が選択率及び不純物の除去に関して完全に有益であることを示している。ま
た、冶金学的にドープした触媒が、本発明に従う化学的にドープした触媒よりも
、特にBHT又はHMIのような副生物について高い選択率をもたらすことが注
目される。
3.4 チタンをドープしたラネイNi触媒
HMD/H2O/KOHを使用する水素化(例26)
・出発合金:Ni/Al=重量で50/50、
・触媒中で0.72重量%のTi/Ni、
・触媒中で3.25重量%のA℃/Ni。
下記の結果が得られた。
Ri=46、
Rm=4、
HMDについてのS:98.0%、
HNIにちうてのS:0.203%、
AzCHEについてのS:0.191%、
DCHについてのS:0.046%、
AMCPAについてのS:0.489%、
BHTについてのS:0.130%。
【手続補正書】
【提出日】1996年10月9日
【補正内容】
1.請求の範囲を次のように補正する。
「1. ニトリルをアミンに水素化するのに使用することができ、周期律表の第
IIb 族及び第IVb 族〜第VIIb族の元素から選択される少なくとも1種の元素をド
ープしたラネイNi型触媒を製造するにあたり、ニッケル及びアルミニウムから
なる金属合金をアルカリ侵食に付すことからなり、その際に
・ドープ剤を実質上含まないNi/Al金属合金を使用し、
・該合金へのアルカリ侵食を錯化された形態のドープ剤の存在下に行う
ことを特徴とする、ラネイNi型触媒の製造方法。
2. ドープ剤がアルカリ性の溶液としてアルカリ侵食用媒体に導入されること
を特徴とする請求の範囲1に記載の方法。
3. ドープ用元素が、カルボン酸誘導体、トリエン類、アミン類又はその他の
適当な金属イオン封鎖剤から選択される少なくとも1種のキレート化剤との錯体
の形態であることを特徴とする請求の範囲1又は2に記載の方法。4
. ドープ用元素が次の元素:チタン、クロム、ジルコニウム、バナジウム、
モリブデン、マンガン又は亜鉛のうちから選択され、好ましくはチタン、クロム
及びジルコニウムから選択されることを特徴とする請求の範囲1〜3のいずれか
に記載の方法。5
. ニッケルの重量に対する重量で表わして、6%以下、好ましくは5%以下
、さらに好ましくは2.5%〜4.5%のアルミニウム含量を有することを特徴とす
る請求の範囲1〜4のいずれかに記載の方法により得られた触媒。6
. ドープ剤/Ni重量比が0.05%〜10%、好ましくは0.1%〜5%、さ
らに好ましくは0.3%〜3.5%である請求の範囲5に記載の触媒。7
. 請求の範囲5又は6に記載の触媒を使用すること及び使用されるニトリル
基質が次式(I)
NC−R−CN (I)
(ここで、Rは1〜12個の炭素原子を有する線状若しくは分岐状アルキレン若
しくはアルケニレン基又は置換若しくは非置換のアリーレン、アラルキレン若し
くはアラルケニレン基を表わす)
のジニトリルであることを特徴とするニトリルをアミンに水素化するための方法
。8
. 全反応媒体中のニトリル基質の濃度が0.001重量%〜30重量%の値に
設定されることを特徴とする請求の範囲7に記載の方法。9
. 液状反応媒体が全液状反応媒体に関して好ましくは20重量%以下の量で
水を含むことを特徴とする請求の範囲7又は8に記載の方法。10
. 液状反応媒体が目標とするアミンを含有すること及び目標アミンが、全
液状反応媒体の重量に関して50重量%〜99重量%の割合で液状反応媒体に導
入されることを特徴とする請求の範囲7〜9のいずれかに記載の方法。11
. メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノー
ルのようなアルコール類、エチレングリコール及び(又は)プロピレングリコー
ルのようなグリコール類、ポリオール類及びこれらの化合物の混合物及び(又は
)ジメチルホルムアミド及び(又は)ジメチルアセトアミドのようなアミドから
なる液状反応媒体が使用されることを特徴とする請求の範囲7〜9のいずれかに
記載の方法。12
. 塩基が、触媒1kg当たり0.1モル以上の量で使用されることを特徴と
する請求の範囲7〜9のいずれかに記載の方法。13
. 塩基が、触媒1kg当たり0.05モル以上の量で使用されることを特徴
とする請求の範囲11に記載の方法。14
. 水素化が150℃以下である反応媒体の温度で行われることを特徴とす
る請求の範囲7〜13のいずれかに記載の方法。」