【発明の詳細な説明】
TNF−アルファ分泌の阻害剤
本出願は1993年8月23日に出願され、係属中である第08/110,6
01号の一部継続出願である。
技術分野
本発明はメタロプロテアーゼの阻害剤である化合物、特にTNF−α変換酵素
を阻害する化合物に関する。
背景技術
腫瘍壊死因子−α(TNF−α、またカケクチンとしても知られている)は多
数の細胞型に種々の効果を誘導できる哺乳類蛋白質である。TNF−αは腫瘍細
胞の溶解を起こすその能力により最初は特徴付けられ、単核食細胞、T−細胞、
B−細胞、マスト細胞およびNK細胞のような活性化細胞により産生されている
。単核食細胞において、TNF−αは最初は約26kDの膜結合蛋白質として合
成される。26kD膜結合TNF−αの17kD断片が”分泌”され、二つの別
の分泌されたTNF−α分子と合わさって循環する51kDホモトライマーを形
成する。TNF−αはグラム陰性菌に対する宿主応答の主な媒介物質である。グ
ラム陰性菌の細胞壁に由来するリポポリサッカリド(LPS、内毒素とも称され
ている)はTNF−α合成の強力な刺激剤である。TNFの過剰産生または非制
御産生に起因する有害な効果が非常に重大であるため、TNFの血清レベルを調
節または制御するためにかなりの努力がかたむけられてきた。血清TNFレベル
を効果的に制御するための努力の重要な点はTNF生合成の機構を理解すること
である。
TNF−αが分泌される機構は最近明らかにされた。Kriegler er al.Cell,5 3
,45-53(1988)はTNF−α”分泌”は蛋白質分解酵素またはプロテアーゼによ
る26kD膜結合分子の切断によるものであると推測した。Scuderi et al.,J.I mmunology
,143,168-173はヒト白血球細胞からのTNF−αの放出は一つまたは
それ以上のセリンプロテアーゼ(例えば、白血球エラスターゼまたはトリプシン
)に依存していることを示唆している。セリンプロテアーゼ阻害剤、p−トルエ
ンスルホニル−L−アルギニン メチルエステル、はヒト白血球TNF放出を濃
度依存様式で抑制することが発見されている。Scuderi et.al.はアルギニン
メチルエステルが酵素の活性中心のアルギニン結合部位に競合し、それにより加
水分解を阻止していると示唆している。阻害剤のリジン及びフェニルアラニンの
類似体は、アルギニンメチルエステルを模倣できないことが報告された。
本発明者らは、TNF−α分子の17kD蛋白質への切断を起こすプロテアー
ゼが実際に、TNF−α産生細胞の形質膜に存在すると信じられているメタロプ
ロテアーゼであることを発見した。この酵素の物理化学的特性は報告されていな
い。
ほとんどの(しかし全てではない)プロテアーゼは特異的アミノ酸配列を認識
する。いくつかのプロテアーゼは切断される結合のN−末端に位置する残基を主
として認識し、いくつかは切断される結合のC−末端に位置する残基を認識し、
およびいくつかは切断される結合の両側を認識する。メタロプロテアーゼ酵素は
ペプチド結合の加水分解を触媒するために結合された金属(一般的にはZn2+)
を利用する。メタロプロテアーゼは関節破壊(マトリックスメタロプロテアーゼ
)、血圧調節(アンギオテンシン変換酵素)およびペプチド−ホルモンレベルの
調節(中性エンドペプチダーゼ−24.11)に関与している。
多数の阻害剤が以前に記載されたメタロプロテアーゼに対して開発されている
。マトリックス−メタロプロテアーゼ(特にコラゲナーゼ)に対する阻害剤の一
般的なファミリーはWO92/09563に報告されている。この文献はトリプ
トファンまたは2−ナフチルアラニンのようなアミノ酸誘導体にアミドを通して
連結された、逆ヒドロキサム酸またはヒドロキシ尿素一般構造を持つ化合物を示
している。コラゲナーゼの阻害剤はまたWO88/06890にも報告されてお
り、これらの化合物はスルフヒドリル部分並びにフェニルアラニンおよびトリプ
トファン類似体を含んでいる。コラゲナーゼの阻害剤はWO92/09556お
よび米国特許出願第5,114,953号にも報告されており、ヒトロキサム酸
部分および融合または共役ビシクロアリール置換基を持っている。EPA489
,57
7の一般式で包括される多数の潜在的ゲラチナーセ阻害剤は随意にヒドロキサム
酸基を持つアミノ酸誘導体である。アンギオテンシン包含酵素(ACE)阻害剤
として有用なヒドロキサム酸誘導体がEPO498,665に報告されている。
新規メタロプロテアーゼであるTNF−α包括酵素(以後”TACE”と称さ
れる)は、血清および他の細胞外空間へのTNF−αの放出を阻害する。TAC
E阻害剤はそれ故TNF−αの過剰産生または非制御的産生により特徴付けられ
る病態の処置において臨床的有用正を持っている。ある種の病理学的状態に対し
て特別に有用なTACE阻害剤は選択的にTACEを阻害するが、TNF−β(
リンホトキシンとしても知られている)血清レベルには影響を与えないであろう
。TNF−αの過剰産生または非制御的産生はある種の病態および疾患に関係し
ている、例えば:
I. 全身性炎症応答症候群;
敗血症症候群
グラム陽性敗血症
グラム陰性敗血症
培養陰性敗血症
菌敗血症
好中球減少性熱
尿路性敗血症
髄膜炎菌血症
外傷/出血
熱傷
イオン化放射線暴露
急性膵炎
成人呼吸困難症候群
II. 再潅流損傷
ポンプ開始後症候群
虚血−再潅流損傷
III. 心血管疾患
心一時停止症候群
心筋梗塞
うっ血性心不全
IV. 感染性疾患
HIV感染/HIV神経障害
髄膜炎
肝炎
敗血症性関節炎
腹膜炎
肺炎
咽頭蓋炎
大腸菌0157:H7
溶血尿毒症症候群/血栓溶解性血小板減少性紫斑病
マラリア
デング出血熱
リーシュマニア症
らい病
毒ショック症候群
連鎖球菌性筋炎
ガス壊疸
マイコバクテリウム ツベルクローシス
マイコバクテリウム アビウム イントラセルラレ
ニューモシスチス カリニ肺炎
骨盤内炎症性疾患
睾丸炎/副睾丸炎
レジオネラ
ライム病
インフルエンザA
エプスタイン−バーウイルス
ウイルス付随食血細胞性症候群
ウイルス性脳炎/無菌性髄膜炎
V. 産科/婦人科
早産
流産
不妊
VI. 炎症性疾患/自己免疫病
慢性リュウマチ/血清陰性関節症
変形性関節症
炎症性腸疾患
全身性エリストーデス
虹彩毛様体炎/ブドウ膜炎/視神経炎
特発性肺線維症
脈管炎/ヴェグナー肉芽腫
サルコイド−シス
睾丸炎/精管切除反転法
VII. アレルギー/アトピー疾患
喘息
アレルギー性鼻炎
湿疹
アレルギー性接触性皮膚炎
アレルギー性結膜炎
過敏性肺炎
VIII.悪性腫瘍
ALL
AML
CML
CLL
ホジキン病、非ホジキンリンパ腫
MM
カポジ肉腫
結腸直腸癌
上咽頭癌
悪性組織球増殖症
パラネオプラスチック症候群/悪性高カルシウム血症
IX. 移植
移植臓器拒絶
対移植片宿主反応疾患
X. 悪液質
XI.先天性
嚢胞性線維症
家族性食血細胞性リンパ組織球増多症
鎌状赤血球貧血
XII.皮膚病
乾癬
脱毛症
XIII.神経性
多発性硬化症
片頭痛
XIV.腎性
ネフローゼ症候群
血液透析
尿毒症
XV.毒性
OKT3療法
抗CD3療法
サイトカイン療法
化学療法
放射線療法
慢性サリチル酸無毒化
XVI.代謝/特発性
ウィルソン病
ヘマクロマトシス
アルファ−1−抗トリプシン欠損
糖尿病
甲状腺炎
骨粗しょう症
視床下部−脳下垂体−副腎軸評価
原発性胆汁性肝硬変症
TACEの阻害剤は細胞に結合しているTNF−αの切断を妨げ、それにより
血清および組織におけるTNF−αレベルを減少させる。そのような阻害剤は著
しく臨床的に有用であり、上記のTNF−α関連障害の処置において強力な治療
法であろう。
発明の概要
本発明は式I:
式中:
Xはヒドロキサム酸、チオール、ホスホリルまたはカルボキシルであり;
mは0、1または2であり;
R1、R2およびR3は各々互いに独立して水素、アルキレン(シクロアルキル
)、 OR4、SR4、N(R4)(R5)、ハロゲン、置換または非置換のC1からC8
の
アルキル、C1からC8のアルキレンアリール、アリール、天然に存在するα−ア
ミノ酸の保護または非保護の側鎖であり;基−R6R7(式中、R6は置換または
非置換のC1からC8のアルキルであり、およびR7はOR4、SR4、N(R4)(R5
)またはハロゲンであり(式中、R4およびR5は各々互いに独立して水素または
置換または非置換のC1からC8のアルキルである);
nは0、1または2であり;
nが1である場合、Aは保護または非保護のα−アミノ酸ラジカルであり;
nが2である場合、Aは同一のまたは異なる保護または非保護のα−アミノ酸
ラジカルであり;および
Bは非置換または置換のC2からC8のアルキレンである;
の化合物またはその医薬として受容可能な塩に関する。
式Iの化合物はメタロプロテアーゼ阻害剤として有用であり、特にTNF−α
変換酵素(TACE)の阻害剤として有用である。
本発明はまたTNF−αの過剰産生または非制御的産生により特徴付けられる
疾患をもつ哺乳類の処置法にも関している。本方法は生物学的に活性な有効量の
式II:
式中:
Xはヒドロキサム酸、チオール、ホスホリルまたはカルボキシルであり;
mは0、1または2であり;
R1、R2およびR3は各々互いに独立して水素、アルキレン(シクロアルキル
)、OR4、SR4、N(R4)(R5)、ハロゲン、置換または非置換のC1からC8の
アルキル、C1からC8のアルキレンアリール、アリール、保護または非保護の天
然に存在するα−アミノ酸の側鎖であり;基−R6R7(式中、R6はC1からC8
のアルキルであり、およびR7はOR4、SR4、N(R4)(R5)またはハロゲンで
あり(式中、R4およびR5は各々互いに独立して水素または置換または非置換の
C1
からC8のアルキルである);
nは0、1または2であり;
Yは水素、非置換または置換のC1からC8のアルキル、アルキレン(シクロア
ルキル)、基−R8−COOR9または基−R10N(R11)(R12)(式中R8はC1か
らC8のアルキレンであり、R9は水素またはC1からC8のアルキルであり、R10
は非置換または置換のC1からC8のアルキレンであり、R11およびR12は各々互
いに独立して水素またはC1からC8のアルキルである)であり;
nが1である場合、Aは保護または非保護のα−アミノ酸ラジカルであり;お
よび
nが2である場合、Aは同一のまたは異なる保護または非保護のα−アミノ酸
ラジカルである;
の化合物およびその医薬として受容可能な塩;LPS−誘導敗血症症候群のマウ
スモデルにおいて25mg/kgで投与された場合、血清TNF−αレベルを少
なくとも80%減少させることができる;
および医薬として受容可能な担体を含む組成物を哺乳類に投与する工程を含んで
いる。
TACEメタロプロテアーゼの有用な阻害剤の発見は、式IIの化合物およびT
NF−結合活性を持つ蛋白質からなる、上に掲げた障害の処置のための医薬組成
物を含む本発明のさらなる態様の発見につながった。
発明の詳細な説明
本発明は式I:
式中:
Xはヒドロキサム酸、チオール、ホスホリルまたはカルボキシルであり;
mは0、1または2であり;
R1、R2およびR3は各々互いに独立して水素、アルキレン(シクロアルキル
)、OR4、SR4、N(R4)(R5)、ハロゲン、置換または非置換のC1からC8の
アルキル、C1からC8のアルキレンアリール、アリール、保護または非保護の天
然に存在するα−アミノ酸の側鎖であり;基−R6R7(式中、R6は置換または
非置換のC1からC8のアルキルであり、およびR7はOR4、SR4、N(R4)(R5
)またはハロゲンであり(式中、R4およびR5は各々互いに独立して水素または
置換または非置換のC1からC8のアルキルである);
nは0、1または2であり;
nが1である場合、Aは保護または非保護のα−アミノ酸ラジカルであり;
nが2である場合、Aは同一のまたは異なる保護または非保護のα−アミノ酸
ラジカルであり;および
Bは非置換または置換のC2からC8のアルキレンである;
の化合物またはその医薬として受容可能な塩に関する。
式Iの化合物はTNF−α分泌の阻害剤として有用であり、特にTNF−α変
換酵素(TACE)の阻害剤として有用である。
本発明はまたTNF−αの過剰産生または非制御的産生により特徴付けられる
疾患をもつ哺乳類の処置法にも関している。本方法は生物学的に活性な有効量の
式II:
式中:
Xはヒドロキサム酸、チオール、ホスホリルまたはカルボキシルであり;
mは0、1または2であり;
R1、R2およびR3は各々互いに独立して水素、アルキレン(シクロアルキル
)、OR4、SR4、N(R4)(R5)、ハロゲン、置換または非置換のC1からC8の
アルキル、C1からC8のアルキレンアリール、アリール、天然に存在するα−ア
ミ
ノ酸の保護または非保護の側鎖であり;基−R6R7(式中、R6はC1からC8の
アルキルであり、およびR7はOR4、SR4、N(R4)(R5)またはハロゲンであ
り(式中、R4およびR5は各々互いに独立して水素または置換または非置換のC1
からC8のアルキルである);
nは0、1または2であり;
Yは水素、非置換または置換のC1からC8のアルキル、アルキレン(シクロア
ルキル)、基−R8−COOR9または基−R10N(R11)(R12)(式中R8はC1か
らC8のアルキレンであり、R9は水素またはC1からC8のアルキルであり、R10
は非置換または置換のC1からC8のアルキレンであり、R11およびR12は各々互
いに独立して水素またはC1からC8のアルキルである)であり;
nが1である場合、Aは保護または非保護のα−アミノ酸ラジカルであり;
および
nが2である場合、Aは同一のまたは異なる保護または非保護のα−アミノ酸
基である;
の化合物およびその医薬として受容可能な塩;LPS−誘導敗血症症候群のマ
ウスモデルにおいて25mg/kgで投与された場合血清TNF−αレベルを少
なくとも80%減少させることができる;
および医薬として受容可能な担体を含む組成物を哺乳類に投与する工程を含んで
いる。
本発明は活性成分として式Iに従った化合物を含む医薬組成物を含んでいる。
さらに、式IIに従った化合物およびTNFを結合する蛋白質を含む医薬組成物が
記載されている。TNFを結合する蛋白質の例はTNF抗体またはEPA041
8014(本出願の譲受人に譲渡されている)に記載されている可溶性TNFレ
セプターである。EPA0418014の開示はここに引例として含まれている
。
以下の定義がここでは使用された。”アルキル”とは直鎖または分岐鎖、一価
、飽和または不飽和の1から8の炭素原子を持つ炭化水素基を意味している。ア
ルキル基には直鎖群メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、
ヘプチル、オクチル、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘ
プ
テニルおよびオクテニル、ならびにそれらの分岐鎖異性体が含まれる。
”置換アルキル”とは一つまたはそれ以上のヒドロキシ、アミノ、ハロゲン、
またはチオールで置換されたアルキル基を意味している。
”アルキレン”とは前に定義した二価のアルキル基を意味している。
”置換アルキレン”とは一つまたはそれ以上のヒドロキシ、アミノ、ハロゲン
、またはチオール基で置換されたアルキレン基を意味している。
”アリール”とは芳香族またはヘテロ芳香族基を意味しており、例えば、随意
に一つまたはそれ以上のC1からC8のアルキル、ヒドロキシ、アミノ、ハロゲン
、チオールまたはアルキル基で置換されたフェニル、ナフチル、キノリル、チエ
ニル、フリルなどを含んでいる。
”アルキレン(シクロアルキル)”とは構造−R13−R14(式中、R13は前に
定義したようなアルキレンであり、R14は例えばシクロプロピル、シクロブチル
、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどの一価の環式アルカン
基である)の基を示している。
”アルキレンアリール”とは基−R15−R16(式中、R15は前に定義したよう
な置換または非置換アルキレン基であり、R16は前に定義したような置換または
非置換アリール基である)を意味している。
”α−アミノ酸”とは22の通常のアミノ酸を意味しており、例えば、アラニ
ン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、シスチン、グル
タミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、ヒドロキシプロリン、イソロイ
シん、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、
トレオニン、トリプトファン、チロシンおよびバリン。
”保護されたアミノ酸”および”α−アミノ酸の保護された側鎖”とはアミノ
酸の側鎖が恒久的にまたは一時的に、続いての合成工程の間に起こり得る望まし
くない枝分かれ、構造的修飾または転位から側鎖を保護または防御する化学基と
結合されていることを意味している。保護基自体同様、これらの目的のためにそ
のような保護基を使用することも本分野ではよく知られている。常用の保護基の
例はN−tert−ブトキシカルボニル(Boc)およびN−9−フルオレニル
メチルオキシカルボニル(Fmoc)である。
式IIのある種の化合物の定義に使用された”生物学的に活性”とは、(a)T
NF−αの分泌を阻害する(b)TACEによる膜結合TNF−αの切断を阻害
する(c)LPS−誘導敗血症症候群の標準マウスモデルにおいて25mg/k
gで投与された場合血清TNF−αレベルを少なくとも80%減少させることが
できる化合物を示している。
式IおよびIIの化合物において、Xに対して好適なラジカルはヒドロキサム酸
、チオールおよびホスホリルである。より好適なXのラジカルはヒドロキサム酸
およびチオールであり、最も好適なラジカルはヒドロキサム酸である。mに対し
て好適な値は1である。
好適なR1またはR2基は水素、C1からC8のアルキルおよびC1からC8のアル
キレンアリールである。R1またはR2がアルキルである場合、C1からC6のアル
キルが好適であり、最も好適であるのはC1からC4のアルキルである。R1また
はR2がアルキレンアリールである場合、C1からC6のアルキレンが好適であり
、最も好適であるのはC1からC4のアルキレンであり;および好適なアリール基
はフェニルおよび置換フェニルである。R1またはR2に対し最も好適なアルキレ
ンアリールはC1からC4のアルキレンフェニルである。R1に対し最も好適な基
は水素であり、およびR2に対し最も好適な基はイソブチルである。
好適なR3基は置換および非置換のC1からC8のアルキルおよびC1からC8の
アルキレンアリールである。R3がアルキルである場合、C1からC6のアルキル
が好適であり、より好適であるのはC1からC4のアルキルであり、t−ブチルが
最も好適である。R3がC1からC8のアルキレンアリールである場合、C1からC6
のアルキレンが好適であり、より好適であるのはC1からC4のアルキレンであ
り;および好適なアリール基は各々随意にヒドロキシ、アミノ、ハロゲン、チオ
ールまたはアルキル基で置換されたフェニル、ナフチルおよびチエニルである。
従って、R3に対して好適な基はC1からC4のアルキレンフェニル、C1からC4
のアルキレンナフチルおよびC1からC4のアルキレンチエニルである。より好適
であるのはC1からC4のアルキレンナフチルであり、メチレンナフチルが最も好
適である。R3が天然に存在するα−アミノ酸の保護または非保護側鎖である場
合、R3は好適にはアルギニン、リジン、トリプトファンまたはチロシン側鎖で
ある。しかしながら、R3に対して最も好適な基はt−ブチル、メチレン(シク
ロヘキシル)およびメチレン−(2’−ナフチル)である。
基Aは好適には非保護の天然のアミノ酸残基である。より好適な天然の残基は
アラニル基または非保護セリル基である。Aに対して最も好適な基はアラニル残
基である。さらに好適な化合物はnが0または1の化合物であり、nが1である
のが最も好適である。
Bに対して好適な基はC2からC6のアルキレンである。より好適であるのはC2
からC4のアルキレンであり、ジメチレンが最も好適である。
式IIに従った化合物に対しては、Yは好適には水素、非置換または置換のC1
からC8のアルキルまたは基−R10N(R11)(R12)である。最も好適であるのは
基−R10N(R11)(R12)であり、好適にはR10が非置換または置換のC1からC6
のアルキレン、R11およびR12が各々独立して水素またはC1からC6のアルキル
である。より好適なR10基は非置換または置換のC1からC4のアルキレンであり
、ジメチレンが最も好適である。R11およびR12に対してより好適な基は水素ま
たはC1からC4のアルキルであり、最も好適であるのは水素である。
本発明の化合物は以下に概説した方法に従って合成でき、付随する反応スキー
ムおよび方法は以下の実施例に詳述されている。一般合成
スキーム1に関して、阻害化合物はカルボン酸またはエステル化合物(Io)
[式中、RはHまたはC1からC8のアルキルであり、およびPはCBZ、BOC
、FMOCまたは他の適当な保護基である(Greene T.,Wuts P.,"Protective Gr
oups in Organic Synthesis"第2版;Wiley:New York,1991;7章)]を対応する
ヒドロキサム酸またはヒドロキサム酸エステル(Ip)に変換することにより製
造されるであろう。化合物(Ip)において、R’はH、TMS、t−Bu、B
zlまたはその他の基であり、これらの化合物またはカルボン酸の活性化形(Bo
danszky,M.,Bodanszky,A.,"The Practice of Peptide Synthesis";Springer-Ver
lag:Berlin,1984;II章)を、変換を有効にする条件下でヒドロキシルアミン試薬
で処理することにより製造される。続いて保護基PおよびR’を除去すると化合
物
(Iq)が生じる。上で使用された略号は以下の基に対応している:Bzl=ベ
ンジル;BOC=t−ブトキシカルボニル、tBu=t−ブチル;CBZ=ベン
ジルオキシカルボニル;FMOC=9−フルオレニルメトキシカルボニル;TM
S=トリメチルシリル。
上記のヒドロキシルアミン試薬は、ヒドロキシルアミンまたは市販品として入
手可能なO−トリメチルシリルヒドロキシルアミン、O−tert−ブチルヒド
ロキシルアミンまたはO−ベンジルヒドロキシルアミンのようなO−保護ヒドロ
キシルアミンであろう。
前駆体化合物(Io)の製造はジカルボン酸化合物(Ie)とアミン(In)
との縮合により実施されるであろうが、ここでR”は化合物(In)の活性エス
テル、無水物またはアミン末端と縮合を起こしてペプチド結合を形成するその他
の基のような活性化基(Bodanszky,M.ら、上記文献)である。
化合物(Ie)の製造は典型的には以下のように実施される:2−オキソカル
ボン酸化合物のナトリウム塩(Ia)をベンジルブロミドでエステル化してベン
ジルエステル(Ib)を製造する。化合物(Ia)のいくつかの例は種々の塩ま
たはカルボン酸として市販品として入手可能である。他のものは合成的に製造で
きる(例えば、Nimitz,J.et al.,J.Org.Chem.46:211,1981;およびWeinstrock,L.
et al.,Synth.Commum. 11:943,1981を参照されたい)。ベンジル−エステル化合
物(Ib)をウィッティヒ試薬(典型的にはメチル−またはtert−ブチルト
リフェニルホスホラニリデン アセテート)と反応させ、アルケン(Ic)をE
−およびZ−異性体の混合物として形成させる。アルケン化合物(Ic)の還元
は、適当な触媒(典型的にはパラジウム活性炭)存在下にて水素で実施され、二
重結合の水素化とベンジルエステルの除去によりモノ−エステル化合物(Id)
を鏡像異性体の混合物として得る。化合物(Ie)はモノ−エステル化合物(I
d)を種々のカルボン酸活性化法を用いて処理することにより得られる。
アミン化合物(In)の製造は、化合物(Il)と化合物(Ik)(式中、P
’はP以外のアミン保護基であり、R”は活性エステル、無水物または(Ik)
のアミン末端と縮合を起こしてペプチド結合を形成し、化合物(Im)を生じさ
せるさせるその他の基のような活性化基である)を縮合することにより達成され
る。
P’の除去は適当な条件下で行われ(Bodanszky,M.,Bodanszky,A.,"The Practic
e of Peptide Synthesis";Springer-Verlag:Berlin,1984;III章)、化合物(I
n)が対応するアミンかまたはアミン塩として生成される。
化合物(II)は市販品として入手可能なN−保護カルボン酸から製造されるか
、または常法により合成できる。
(Ik)の製造は化合物(Ii)と一保護ジアミン(Ih)(式中、PはCB
Z、BOC、FMOCまたは他の適当な保護基であり;およびP’はP以外のア
ミン保護基であり、およびR”は活性エステル、無水物または化合物(Ih)の
非保護アミン末端と縮合を起こしてアミド結合を形成し、化合物(Ij)を生じ
させるその他の基のような活性化基である)を結合させることにより実施される
。適当な条件下でP’を除去して、化合物(Ik)が対応するアミンかまたはア
ミン塩として生成される。
前駆体化合物(Ih)はアミン−ニトリル(If)から二工程で製造される。
化合物(If)のいくつかの例は市販品として入手可能であり、その他のものは
古典的方法により容易に合成できる。アミン−ニトリル(If)は適当な保護基
試薬で保護され、保護アミン−ニトリル(Ig)が製造される。化合物(Ig)
において、Pは典型的にはCBZ、BOCまたはFMOC基であるが、他の適当
な基でもよい。保護アミン−ニトリル(Ig)はボラン−硫化メチル複合体また
は水素化ホウ素ナトリウム/塩化コバルト(II)のような試薬による還元により
アミン塩として単離可能な一保護ジアミン(Ih)を与える。
化合物(Ii)は常法により対応するP’−保護ジペプチドまたはP’−保護
アミノ酸のカルボキシル形から製造されるかまたは市販品として購入できる。
式IIの化合物は経口、非経口(吸入、経皮、鼻孔内、点眼、粘膜、直腸を通し
て)または局所的に投与できる。そのような投与は通常の補助剤および担体物質
を含む服用単位製剤として行うことができる。ここで使用する術語”非経口”に
は皮下注射、静脈内、筋肉内、槽内注射または注入技術が含まれる。
単一剤形を製造するために担体物質と混合される活性成分の量は処置される患
者および特定の投与様式に依存して変化するであろう。そのような担体物質はよ
く知られており、例えば、欧州特許出願第0 519 748号(ここに引例として含ま
れている)に記載されている。しかしながら、特定の患者の特別な用量レベルは
用いられる特定の化合物の活性、年齢、体重、一般的健康状態、性別、食事、投
与時間、投与経路、排泄速度、薬剤の組み合わせおよび治療を受けている特定の
疾患の重症度を含む種々の因子に依存するであろう。
以下の実施例は本発明の例示である。薄層クロマトグラフィーはシリカゲル6
0 F254プレートを使用して実施された。実施例1から9の反応スキームは実
施例14の後ろに付けてある。ここで使用する”化合物A”とはSpatola et al.
,Peptides:Chemistry and Biology,Proceedings of the 12th American Peptide
Symposium,Smith,J.A.,Rivier,J.E.編,ESCOM,Leiden,Netherlandsにより記載さ
れている化合物N−(D,L−2−(ヒドロキシアミノカルボニル)メチル−4
−メチルペンタノイル)L−3−(2’ナフチル)アラニル−L−アラニンアミ
ドを示している。化合物Aは以下の方法で製造され、その反応スキームは反応ス
キームAとして付記されている。化合物Aの製造
反応スキームAおよびスキーム2を参照し、無水N,N−ジメチルホルムアミ
ド(10ml)中、2.0(6.3ミリモル)gのN−BOC−L−3−(2’
−ナフチル)アラニンおよび0.80g(6.9ミリモル)のN−ヒドロキシス
クシンイミドおよび1.8g(9.5ミリモル)の1−(3−ジメチルアミノプ
ロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩の混合物を室温で90分間撹拌した
。この溶液に1.2g(9.5ミリモル)のL−アラニンアミド塩酸塩続いて5
mlの無水N,N−ジメチルホルムアミドに溶解した1.4ml(9.5ミリモ
ル)のトリエチルアミンを加えた。室温で14時間撹拌した後、溶媒を真空下で
除去した。残渣を酢酸エチル(200ml)に溶解し、1M HCl(3x50
ml)、水(2x50ml)、飽和炭酸水素ナトリウム(2x50ml)および
最後に食塩水(50ml)で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶液を
を濾過し、真空下で濃縮すると2.1g(86%の収率)のN−BOC−L−3
−(2’−ナフチル)アラニル−L−アラニンアミド(A1)を白色固形物とし
て得た。TLC:Rf 0.16(クロロホルム−イソプロパノール 19:1
);NM
R(d6−DMS0)δ1.15(m,3H),1.24(s,9H),3.05(m,2H),4.23(m,2H),7.02(s,
1H),7.07(s,2H),7.35(s,1H),7.47(m,2H),7.71(s,1H),7.82(m,3H),7.98(d,1H)。
1.8g(4.7ミリモル)の(A1)のジクロロメタン(15ml)懸濁液
を氷浴で冷却した。トリフルオロ酢酸(15ml)を加え、均一溶液は5℃で5
分間撹拌した後室温まで放置して暖めた。1時間後、ジクロロメタンおよびトリ
フルオロ酢酸を真空下で除去した。残渣を5.6ml(33ミリモル)のトリエ
チルアミンを含む無水N,N−ジメチルホルムアミド(18ml)に溶解した。
この溶液に1.2g(4.2ミリモル)の(Id)を一度に添加した。14時間
撹拌した後、N,N−ジメチルホルムアミドを真空下で除去すると残渣を得た。
残渣を酢酸エチル(250ml)に溶解し、1M HCl(2x75ml)、水
(75ml)、飽和炭酸水素ナトリウム溶液(2x75ml)および最後に食塩
水(75ml)で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶液を濾過し、真
空下で濃縮すると1.5g(89%の収率)のN−[D,L−2−(メトキシカ
ルボニル)メチル−4−メチルペンタノイル]−L−3−(2’−ナフチル)ア
ラニル−L−アラニンアミド(A2)を白色固形物として得た。TLC:Rf 0
.57(クロロホルム−イソプロパノール 9:1);
MS:m/e455(M+)
アルゴン雰囲気下、0.62g(11ミリモル)のKOHを2.8mlの熱メ
タノールに加えた混合物と0.61g(8.8ミリモル)のヒドロキシルアミン
塩酸塩を2.8mlのメタノールに加えた混合物を合わせた。氷浴で冷却後、反
応液は、1.0g(2.2ミリモル)の(A2)および1mlの無水N,N−ジ
メチルホルムアミドを含むフラスコへ濾過して加えた。18時間撹拌した後、溶
媒を真空下で除去した。固形物を熱酢酸エチル(250ml)に溶解し、16m
lの10%硫酸水素カリウム溶液で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥する
前に、有機層をその沸点まで加熱した。濾過し、続いて濾液を真空下で濃縮する
と固形物が得られ、エーテル(50ml)中で摩砕して濾過により集めると、0
.77g(77%の収率)のN−[D,L−2−(ヒドロキシアミノカルボニル
)メチル−4−メチルペンタノイル]−L−3−(2’−ナフチル)アラニル−
L−アラニンアミド(A)を白色固形物として得た。(A)のジアステレオマー
は
C18カラムを用い、0.1%のトリフルオロ酢酸を含む水に同様に0.1%のト
リフルオロ酢酸を含むアセトニトリルの濃度勾配をかけて(30分で0−60%
)(”方法A”)溶出させる逆相HPLCにより分離および精製され、精製され
た速く溶出するジアステレオマーおよび精製された遅く溶出するジアステレオマ
ー、各々21分および23分の保持時間を持っている、が得られた。TLC:Rf
0.13(クロロホルム−メタノール 9:1);1
H NMR(d6−DMS0)δ0.63(d,3H),0.72(d,3H),0.90(m,1H),1.21(d,3H
),1.26(m,2H),1.86(m,2H),2.63(m,1H),2.99(m,1H),3.24(m,1H),4.18(q,1H),4.55
(m,1H),7.05(s,1H),7.28(s,1H),7.48(m,3H),7.72(s,1H),7.83(m,3H),7.91(d,1H)
,8.27(d,1H);13C NMR(D2O/CD3CN)δ 17.7,21.8,23.1,26.0,3
6.3,37.4,41.5,42.2,50.1,55.5,126.7,127.1,128.2,128.5,128.8,12
9.0,133.2,134.2,135.6,170.4,173.0,177.4,177.5。
MS:m/e456(M+)
実施例1
N−[D,L−2−(ヒドロキシアミノカルボニル)メチル−4− メチルペンタノイル]−L−3−(2’−ナフチル)アラニル−L−アラニン、
2−アミノメチル アミド(化合物1)の合成
反応スキーム2を参照し、19.6ml(0.164モル)のベンジルブロミ
ドを含む無水N,N−ジメチルホルムアミド(50ml)に25g(0.164
モル)の4−メチル−2−オキソペンタン酸 ナトリウム塩を加えたスラリー液
を室温で4日間激しく撹拌した。溶媒は真空下で除去された。残渣を250ml
のヘキサンに溶解し、水(3x50ml)および食塩水(50ml)で洗浄した
。無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶液を濾過して真空下で濃縮すると33.2
g(92%の収率)の4−メチル−2−オキソペンタン酸ベンジル(1a)を粘
稠な無色油状物として得た。TLC:Rf0.70(酢酸エチル−ヘキサン 1
:4);1H NMR(CDCl3)δ 0.94(d,6H),2.18(m,1H),2.71(d,2H)
,5.26(s,2H),7.37(m,5H);13C NMR(CDCl3)δ 22.5,24.2,48.1
,67.9,128.7,128.8,128.9,134.7,161.3,194.0。
26.4g(0.120モル)のベンジルエステル(1a)および40.1g
(0.120モル)のメチル(トリフェニルホスホラニリデン)アセテートのジ
クロロメタン(410ml)溶液を室温で18時間撹拌した。真空下ジクロロメ
タンを除去すると固形物が得られ、数倍の量のヘキサンと摩砕した(4x100
ml)。ヘキサンを濾過して集め、併せて真空下で濃縮すると油状物が得られ、
それを減圧下で蒸留すると(bp.138−157℃/0.8mmHg)27.
8g(84%の収率)の精製されたE,Z−2−イソブチル−3−(メトキシカ
ルボニル)プロピオン酸ベンジル(1b)を黄色油状物として得た。TLC:Rf
0.53および0.67;EおよびZ異性体(酢酸エチル−ヘキサン 1:4
);NMR(CDCl3)δ 0.91(m,6H,CH(CH3)2),1.85(m,1H,CH(CH3)2),2
.23(Z)および2.79(E)(d,2H,C=CCH2),3.62(Z)および3.74(E)(s,3H,CO2CH3)
,5.23(E)および5.27(Z)(s,2H,CO2CH2C6H5),5.82(Z)および6.82(E)(s,1H,CH
=C),7.35(m,5H,C6H5)。
75mlのメタノールに溶解した27.2g(0.098モル)の(1b)に
4.0gの10%パラジウム炭素を加えた懸濁液を4気圧の水素下で24時間激
しく撹拌した。濾過により触媒を除き、濾液を真空下で濃縮すると油状物が得ら
れ、それを減圧下で蒸留すると(bp.115−121℃/0.5mmHg)1
2.7g(68%)のD,L−2−イソブチル−3−(メトキシカルボニル)プ
ロピオン酸(1c)が無色油状物として得られた。1H NMR(CDCl3)δ
0.94(m,6H),1.36(m,1H),1.63(m,2H),2.58(m,2H),2.95(m,1H),3.70(s
,
3H),10.8(bs,1H);13C NMR(CDCl3)δ 22.1,22.3,25.6,35.8,39.2
,40.8,51.7,172.2,181.3。
12.3g(0.065モル)の(1c)および7.5g(0.065モル)
のN−ヒドロキシスクシンイミドを溶解した無水テトラヒドロフラン(100m
l)溶液を氷浴で約5℃に冷却した。13.5g(0.065モル)の1,3−
ジシクロヘキシルカルボジイミドを溶解した無水テトラヒドロフラン(50ml
)溶液を加えた。混合物は約5℃で1時間撹拌した後、冷蔵庫内に一夜放置した
。濾過して副精製物のジシクロヘキシル尿素を除いた後、濾液を真空下で濃縮す
ると固形物が得られ、酢酸エチル−ヘキサンから再結晶すると14.5g(78
%の収率)のD,L−2−イソブチル−3−(メトキシカルボニル)プロピオン
酸、N−ヒドロキシスクシンイミジル エステル(1d)が白色固形物として得
られた。TLC:Rf0.46(クロロホルム−イソプロパノール 19:1)
;1HNMR(CDCl3)δ 0.97(m,6H),1.61(m,2H),1.80(m,IH),2.72(m,2H
),2.84(s,4H),3.74(s,3H);13C NMR(CDCl3)δ 21.9,22.5,25.5.
36.2,37.2,41.0,52.0,168.8,170.6,171.0。
24.9g(0.10モル)のスクシンイミジルカルボン酸ベンジルおよび1
0.2g(0.11モル)のアミノアセトニトリル塩酸塩を溶解した無水N,N
−ジメチルホルムアミド(100ml)溶液に15.4ml(0.11モル)の
トリエチルアミンを室温で30分以上かけて加えた。混合物は室温で12時間撹
拌した。真空下でN,N−ジメチルホルムアミドを除去し、得られた残渣を35
0mlの酢酸エチルに溶解した。この溶液は水(350ml)、2M HCl(
3x50ml)および食塩水(50ml)で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで
乾燥後、溶液を濾過して真空下で濃縮すると17.3g(収率91%)のN−C
BZ−アミノアセトニトリル(1e)が琥珀色の固形物として得られた。TLC
:Rf0.65(酢酸エチル−ヘキサン 1:1);1H NMR(CDCl3)
δ4.05(d,2H),5.13(s,2H),5.46(bt,1H),7.35(bs,5H);13C NMR(CDC
l3)δ 29.5,67.9,116.2,128.3,128.5,128.7,135.5,155.7。
乾燥アルゴン雰囲気下、24.3g(0.128モル)のN−CBZ−アミノ
アセトニトリル(1e)を無水テトラヒドロフラン(32ml)に溶解させた。
溶液を撹拌し、シリンジを通して64mlのボラン−硫化メチル複合体(2Mテ
トラヒドロフラン溶液)を添加した。混合物を加熱還流し、一夜撹拌した。混合
物を氷浴で冷却し、激しく撹拌しながらゆっくりと5mlの水を加えた。撹拌を
約5分間続けた後、75mlの6M HClを徐々に加えた。混合物をさらに1
時間撹拌した後、真空下、過剰のテトラヒドロフランおよびジメチルスルフィド
を除去した。水性残渣はエーテルで抽出した(2x50ml)。エーテル抽出物
は廃棄した。水性残渣のpHを濃NH4OHを加えることにより11に調整した
。得られた水性溶液を酢酸エチルで抽出し(3x100ml)、酢酸エチル抽出
液を併せて食塩水で洗浄した(50ml)。無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶
液を濾過して真空下で濃縮した。得られた油状物は30mlの無水メタノールに
溶解し、冷メタノール−HClで処理し、真空下で濃縮すると固形物が得られた
。固形物はエーテルと摩砕し、濾過して集めると15.1g(収率51%)のN
−CBZ−エチレンジアミン塩酸塩(1f)が白色粉末として得られた。1H
NMR(D2O)δ 3.15(m,2H),3.46(m,2H),5.14(s,2H),7.46(bs,5H);13C
NMR(D2O)δ 41.1,42.6,70.4,131.0,131.3,131.7,132.0,139.4,1
61.7。
10.0g(0.043モル)の(1f)および10.3g(0.036モル
)のN−BOC−L−アラニン、N−ヒドロキシスクシンイミド エステルの無
水N,N−ジメチルホルムアミド(50ml)溶液を氷浴で冷却した。この溶液
に7.6ml(0.054モル)のトリエチルアミンの無水N,N−ジメチルホ
ルムアミド(20ml)溶液を30分以上かけて添加した。反応液は約5℃で1
時間、その後室温で1時間撹拌した。真空下、N,N−ジメチルホルムアミドを
除去し、生じた残渣は300mlの酢酸エチルに溶解した。この溶液は1M H
Cl(3x100ml)、水(100ml)、飽和炭酸水素ナトリウム溶液(3
x100ml)および最後に食塩水(100ml)で洗浄した。無水硫酸マグネ
シウムで乾燥後、溶液を濾過して真空下で濃縮すると12.4g(収率94%)
のN−BOC−L−アラニン、2−(ベンジルオキシカルボニルアミノ)エチル
アミド(1g)が白色固形物として得られた。TLC:Rf0.67(クロロホ
ルム−イソプロパノール 9:1);1HNMR(CDCl3)δ 1.27(d,3H),1.
40
(s,9H),3.32(m,4H),4.15(m,1H),5.06(s,2H),5.51(d,1H),5.90(m,1H),7.19
(m,1H),7.31(bs,5H);13C NMR(CDCl3)δ 18.5,28.2,39.6,40.5,
50.1,66.5,79.8,127.9,128.3,136.3,155.4,156.9,173.7。
12.0g(0.033モル)の(1g)のジクロロメタン(25ml)溶液
を氷浴で冷却し、25mlのトリフルオロ酢酸を加えた。反応液を約5℃で20
分間撹拌した後、室温で撹拌する。90分後、ジクロロメタンおよびトリフルオ
ロ酢酸を真空下で除去した。得られた残渣を200mlの酢酸エチルに溶解し、
2M水酸化ナトリウム(200ml)および食塩水(100ml)で洗浄した。
無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶液を濾過して真空下で濃縮すると7.86g
(収率90%)のL−アラニン、2−(ベンジルオキシカルボニルアミノ)エチ
ルアミド(1h)が白色固形物として得られた。1HNMR(CDCl3)δ 1.2
8(d,3H),2.09(m,2H),3.33(m,4H),3.47(q,1H),5.07(s,2H),5.59(bt,1H),7.
33(bs,5H),7.69(bt,1H);13C NMR(CDCl3)δ 21.3,39.5,40.9,50.
4,66.6,128.0,128.1,128.4,136.4,156.9,176.7。
乾燥アルゴン雰囲気下、8.9g(0.028モル)のN−BOC−L−3−
(2’−ナフチル)アラニンおよび3.2ml(0.028モル)の4−メチル
モルホリンの無水N,N−ジメチルホルムアミド(20ml)溶液を−15℃に
冷却し、3.67ml(0.028モル)クロロギ酸イソブチルで処理した。混
合物は−15℃で30分間撹拌した後、7.5g(0.028モル)の(1h)
および3.2ml(0.028モル)の4−メチルモルホリンの無水N,N−ジ
メチルホルムアミド(20ml)溶液を10分以上かけてゆっくりと加えた。反
応液は−15℃で2時間、続いて室温で18時間撹拌した。真空下、N,N−ジ
メチルホルムアミドを除去し、生じた固形物は1リットルの熱酢酸エチルに溶解
した。熱溶液は1M HCl(3x150ml)、水(150ml)、飽和炭酸
水素ナトリウム溶液(3x150ml)および最後に食塩水(150ml)で洗
浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後、熱溶液を濾過して真空下で濃縮した。
得られた黄色の固形物は400mlの冷1:3酢酸エチル:ヘキサンと摩砕し、
濾過して集めると14.5g(収率91%)のN−BOC−L−3−(2’−ナ
フチル)アラニル−L−アラニン、2−(ベンジルオキシカルボニルアミノ)エ
チルアミド(1i)が白色固形物として得られた。TLC:Rf0.59(クロ
ロホルム−イソプロパノール 9:1);1HNMR(CDCl3)δ 1.26(d,3H
),1.35(s,9H),3 16(m,6H),4.42(m,1H),4.50(m,1H),5.07(s,2H),5.25(d,1H)
,5.69(m,1H),6.82(m,1H),6.90(d.1H),7.29(s,1H),7.31(bs,5H),7.45(m,2H
),7.61(s,1H),7.76(m,3H);13C NMR(CDCl3)δ 18.0,28.2,38.2,
39.7,40.6,49 0,55.9,66.6,80.6,125.8,126.2,127.2,127.5,127.6,1
27.9,128 0,128.4,132.4,133.3,133.8,134.2,155.4,156.7,171.4,172
.4。
2.5g(0.0044モル)の(1i)をジクロロメタン(10ml)に懸
濁して氷浴で冷却し、10mlのトリフルオロ酢酸を加えた。均質な溶液は約5
℃で20分間撹拌し、放置して室温まで暖めた。90分後、ジクロロメタンおよ
びトリフルオロ酢酸を真空下で除去した。得られた残渣は100mlの酢酸エチ
ルに溶解し2M NaOH(3x50ml)、水(50ml)および食塩水(5
0ml)で洗浄した。非均質な溶液は100mlの無水エタノールを含むフラス
コに移し、均質になるまで加熱した。熱溶液は少量の無水硫酸ナトリウムで乾燥
させ、濾過し、真空下で濃縮すると固形物を得た。固形物は冷1:3酢酸エチル
:ヘキサンと摩砕し、濾過して集めると1.46g(収率71%)のL−3−(
2’−ナフチル)アラニル−L−アラニン、2−(ベンジルオキシカルボニルア
ミノ)エチルアミド(1j)が白色固形物として得られた。1H NMR(CD
Cl3)δ 1.33(d,3H),1.60(bs,2H),2.83(m,1H),3.34(m,5H),3.82(m,1H),4
.44(m,1H),5.07(s,2H),5.33(t,1H),6.92(t,1H),7.31(bs,5H),7.36(s,1H),
7.48(m,2H),7.65(s,1H),7.72(d,1H),7.81(m,3H);13C NMR(CDCl3)
δ 17.6,40.6,40.7,40.9,48.6,56.1,66.9,125.4,125.8,127.2,127.4
,127.5,127.8,127.9,128.4,132.4,133.4,135.1,136.5,156.1,172.7,1
74.7。
1.4g(0.003モル)の(1j)および0.42ml(0.003モル
)のトリエチルアミンの無水N,N−ジメチルホルムアミド(2ml)溶液に0
.87g(0.003モル)の(1d)を加えた。混合物は室温で18時間撹拌
した。真空下、N,N−ジメチルホルムアミドを除去した。得られた固形物を2
0
0mlの熱酢酸エチルに溶解し、1M HCl(3x50ml)、水(50ml
)、飽和炭酸水素ナトリウム溶液(3x50ml)および最後に食塩水(50m
l)で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後、熱酢酸エチル溶液を濾過して
真空下で濃縮すると1.7g(収率89%)のD,L−2−(メトキシカルボニ
ル)メチル−4−メチルペンタノイル−L−3−(2’−ナフチル)アラニル−
L−アラニン、2−(ベンジルオキシカルボニルアミノ)エチルアミド(1k)
が灰色がかった白色固形物として得られた。TLC:Rf0.32(クロロホル
ム−イソプロパノール 19:1)。
アルゴン雰囲気下、2.66g(0.047モル)のKOHを12mlの熱メ
タノールに加えた混合物と、2.63g(0.037モル)のヒドロキシルアミ
ン塩酸塩を12mlの熱メタノールに加えた混合物を混ぜ合わせた。氷浴で冷却
後、6.0g(0.0095モル)の(1k)および12mlの無水N,N−ジ
メチルホルムアミドを含んだフラスコ内へ反応液を濾過した。アルゴン下で18
時間撹拌後、溶媒を真空下で除去した。得られた固形物は100mlの酢酸エチ
ルと摩砕し、濾過して集めると5.2g(収率86%)のD,L−2−(ヒドロ
キシアミノカルボニル)メチル−4−メチルペンタノイル−L−3−(2’−ナ
フチル)アラニル−L−アラニン、2−(ベンジルオキシカルボニルアミノ)エ
チルアミド(1m)が灰色がかった白色固形物として得られた。TLC:Rf0
.23および0.36(クロロホルム−イソプロパノール 9:1);13C N
MR(d6−DMSO)δ 18.0,21.7,23.2,25.1,35.7,36.6,37.3,38.7,
40.7,40.8,48.5,54.0,65.3,125.3,125.9,127.3,127.4,127.7,127.9,
128.3,131.8,132.9,135.7,136.0,137.1,156.1,167.1,170.7,172.7,17
4.7。
MS:m/e 634(M+)。
2.0g(0.0031モル)の(1m)を溶解した氷酢酸(75ml)に1
.0gの10%パラジウム炭素を加えた懸濁液を4気圧の水素下で24時間かき
混ぜた。濾過により触媒を除き、濾液を真空下で除去して得られる残渣を50m
lのエーテルと摩砕して真空下で乾燥させると2.0gの粗D,L−2−(ヒド
ロキシアミノカルボニル)メチル−4−メチルペンタノイル−L−3−(2’−
ナ
フチル)アラニル−L−アラニン,2−(アミノ)エチルアミド(1)が得られ
た。
(1)のジアステレオマーはC18カラムを用い、0.1%のトリフルオロ酢酸
を含む水に同様に0.1%のトリフルオロ酢酸を含むアセトニトリルの濃度勾配
をかけて(30分で0−60%)溶出させる逆相HPLCにより分離された(以
後”方法A”)。精製されたジアステレオマー(1n)および(1o)は各々2
0分および22分の保持時間を持っていた。ジアステレオマー(1n)は下記の
NMRデータを示した。13C NMR(D2O)δ 24.6,28.9,29.1,30.3,33
.2,43.4,44.8,47.0,48.6,49.1,57.6,62.8,134.2,134.6,135.3,135.6
,135.8,135.9,136.4,140.2,141.2,142.1,178.3,180.8,183.1,185.4;
MS:m/e 500(M+)。
以下は変法であり、望ましくない立体異性体(S)と比較して望まれる立体異
性体(R)がより大きな割合で生成されるので化合物1(c)の製造により好適
な方法である。反応工程および各々の化合物のための参照番号は反応スキーム1
0に記載されている。
Newman,M.S.:Kutner A.,J.Am.Chem.Soc.,1951,73,4199の方法に従い、1.2
9g(0.056モル)のナトリウムを15mlの無水メタノールに溶解させる
ことにより調製したナトリウムメトキシドの溶液を、25g(0.242モル)
のL−バリノールと500mlの炭酸ジエチルのスラリー液に加えた。反応混合
物は続いて2時間加熱し、75−123℃の温度範囲の蒸留物200mlを集め
た。蒸留物は廃棄し、反応混合物は放置して室温まで冷却して一夜放置した。ロ
ータリーエバポレーターを用いて真空下反応混合物から過剰の炭酸ジエチルを除
去すると残渣が得られた。残渣を500mlの酢酸エチルに溶解し、水(3x2
00ml)および食塩水(200ml)で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾
燥後、溶液を濾過して真空下で濃縮すると白色固形物が得られた。固形物を酢酸
エチル−ヘキサンから再結晶すると23.2g(収率74%)の(S)−4−イ
ソプロピル−2−オキサゾリジノン12(a)が白色針状晶として得られた。T
LC:Rf0.50(酢酸エチル−ヘキサン 3:1);1H NMR(CDCl3
)δ 0.90(d,J = 6.7Hz,3H),0.97(d,J=6.7Hz,3H),1.72(m,1H),3.63(m,1H),
4.10(dd,J=8.7,6.4Hz,1H),4.45(m,1H),7.32(bs,1H);13C NMR(CDCl3
)δ 17.5,17.8,32.6,58.3,68.5,160.7。
Vogel,A.In Vogel's Practical Organic Chemistry,4th Ed.;Wiley & Sons:
New York,1978;p498 および1208の方法に従い、50g(0.43モル)の4−
メチル吉草酸に38ml(0.52モル)のチオニルクロリドを撹拌しながら3
0分以上かけて滴加することにより、4−メチルペンタノイルクロリド12(b
)を生成させた。添加の間混合物を加熱し、激しいHClガスの発生を導いた。
チオニルクロリドの添加が完了したら、反応混合物は1時間還流させた。反応混
合物を蒸留し、135から148℃の間の蒸留物集めた。この物質は再蒸留し、
47.3g(収率81%)の4−メチルバレロイルクロリド12(b)が無色液
体として143から148℃の間で集められた。1H NMR(CDCl3)δ 0
.92(d,J=6.2 Hz,6H),1.62(m,3H),2.90(t,J=7.4 Hz,2H);13C NMR(CDC
l3)δ22.0,27.2,33.6,45.3,173.9。
Evans,D.A.,Bartoroli,J.,Shih,T.L.J.Am.Chem.Soc. 1981,103,2127の方法に
従い、32.3g(0.25モル)の無水テトラヒドロフラン(500ml)溶
液を−78℃に冷却し、100mlの2.5M(2.5モル)n−ブチルリチウ
ムのヘキサン溶液を加えた。添加が完了したら混合物を−78℃で10分間撹拌
し、続いて0℃まで暖めて20分間撹拌した。反応混合物は再び−78℃に冷却
し,34.6ml(0.25モル)の12(b)を10分以上かけて添加した。
撹拌を−78℃で1時間続けた後、反応混合物は撹拌しながら室温まで暖めて一
夜放置した。ロータリエバポレーターにより真空下でテトラヒドロフランを除去
するとオレンジ色の残渣が得られた。
残渣を750mlの酢酸エチルに溶解し水(2x250ml)および食塩水(
3x100ml)で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶液を濾過して
真空下で濃縮すると60gのオレンジ色の油形物が得られた。
油は、シリカゲル60(500g)のフラッシュクロマトグラフィーによって
、2回に分けて精製した。生成物は、1:4 酢酸エステル:ヘキサンで溶出さ
れ、薄黄色の油状の12(c)、48.6g(86%)が得られた。TCL:R
f0.42(1:4 酢酸エチル−ヘキサン)
Evans,D.A.;Ennis,M.D.;Mathre,D.J.,J
.Am.Chem.Soc.,1982,104,1737の方法に従って、1
6.3ml(0.116モル)のジイソプロピルアミンと200mlの無水テト
ラヒドロフランとの混合物を乾燥アルゴン大気中で−5℃に冷却し、46.5m
l(0.116モル)のn−ブチルリチウム(ヘキサン中2.5M)を加えた。
混合物を−5℃で25分間攪拌し、次いで、−78℃に冷却した。67ml無水
テトラヒドロフランに溶解した24.0g(0.106モル)の12(c)の溶
液を加え、反応混合物を−78℃で30分間攪拌した。反応物を−5℃に暖め、
27.4ml(0.317モル)の臭化アリルを加えた。混合物は−5℃で4時
間攪拌し、次いで10mlの水を加え、回転蒸発によってテトラヒドロフランを
除去すると、油が得られた。油は、酢酸エチル(500ml)に溶解し、水(1
25ml)および食塩水(3x125ml)で洗浄した。無水硫酸マグネシウム
上で乾燥させた後、溶液を濾過し、真空下で回転蒸発によって濃縮すると、油が
生成した。油は、100gのシリカゲル60中を1.25リットルの1:4 酢
酸エチル−ヘキサンで濾過することによって精製した。250mlずつ5つの画
分を収集した。それぞれの画分は、TLCによって照合した。精製された生成物
を含む画分を一緒にして、溶媒を回転蒸発によって除去すると、無色の油状の1
2(d)、26.8g(収率95%)が得られた。TLC:Rf0.52(1:
4 酢酸エチル−ヘキサン).
一般的には、Evans,D.A.;Ennis,M.D.;Mathre,
D.J.,J.Am.Chem.Soc.,1982,104,1737の方法
に従って、63mlの無水テトラヒドロフラン中に溶解した20.2g(0.1
87モル)の無水ベンジルアルコール溶液を乾燥アルゴン大気下で−5℃に冷却
し、56.1ml(0.140モル)のn−ブチルリチウム(ヘキサン中2.5
M)を10分間以上かけて加えた。反応混合物は−5℃で20分間攪拌し、次い
で、(あらかじめ−5℃に冷却しておいた)380mlの無水テトラヒドロフラ
ンに溶解した25.0g(0.0934モル)の12(d)溶液を加えた。反応
物は−5℃で2時間攪拌し、次いで、水(50ml)を加えた。反応物を室温に
暖めた。テトラヒドロフランを回転蒸発によって除去すると、残渣が得られた。
残渣は酢酸エチル(250ml)に溶解し、水(125ml)および食塩水(1
25ml)で洗浄した。無水硫酸マグネシウム上で乾燥させた後、溶液を濾過し
、回転蒸発によって濃縮すると油が得られた。油はシリカゲル(240g)を用
いたフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。生成物は97:3 ヘキ
サン−酢酸エチルで溶出すると、薄黄色の油状の12(e)、38.9g(85
%)が得られた。キラル化合物12(a)は、再使用のため用いられる酢酸エチ
ルで溶出された(40%)。12(e)のTLC:Rf0.80(1:4 酢酸
エチル−ヘキサン).
一般的には、Carlsen,P.H.J.;Katsuki,T.;Mar
tin,V.S.;Sharpless,K.B.,J.Org.Chem.,
1981,46,3936 の方法に従って、330mlのアセトニトリル、3
30mlの四塩化炭素および497mlの水中に懸濁した38.0g(0.15
4モル)の12(e)および145g(0.679モル)の過ヨウ素酸ナトリウ
ムの懸濁液を0℃で攪拌し、その間に、0.83g(2.4モル%)の三塩化ル
チニウム水酸化物を加えた。混合物を0℃で15分間攪拌し、次いで室温で4時
間攪拌した。反応物を濾過して固体を除き、500mlのジクロロメタンおよび
250mlの水を用いて集めた固体をリンスした。濾過液を分液漏斗に移し、層
を分離した。無水硫酸マグネシウム上で乾燥させた後、下層(ジクロロメタン層
)を濾過し、真空下で回転蒸発によって濃縮すると、黒っぽい油が生成した。油
は2つの連続したフラッシュクロマトグラフィーカラム(それぞれのカラムは5
00gのシリカゲル60であり、1900mlの1:4 酢酸エチル:ヘキサン
および1000mlの酢酸エチルで溶出した)で精製し、粘性のある油状の12
(f)、26.6g(収率65%)が得られた。
12(f)のTLC:Rf0.10(1:4 酢酸エチル−ヘキサン).
ジアゾメタン−エーテル溶液(Aldrich Chemical Co.,
Technical Information Bulletin No.AL
−180)を、50mlのジエチルエーテルに溶解した22g(0.083モル
)の12(f)の溶液にゆっくりと加えた。添加は反応混合物に渦巻状の黄色が
残るようになるまで行った。反応混合物は、無色になるまで1:9 酢酸−ジエ
チルエーテルで逆滴定した。無水硫酸マグネシウム上で乾燥後、無色になった溶
液を濾過し、真空下回転蒸発によって濃縮すると、粘性のある油が生成した。油
は100mlのメタノールに溶解し、木炭触媒上に1.0gの10%パラジウム
を含むパール瓶(Parr bottle)に移し、4気圧の水素下で6時間室
温で振とうした。混合物はセライトで濾過し、濾過液を真空下回転蒸発によって
濃縮すると、油状になった。油は真空蒸留し、無色の油状の12(f)、13.
9g(収率89%)を得た;沸点110−123℃/0.2mmHg。
12(f)のTLC:Rf 0.15(3:7 酢酸エチル−ヘキサン)
メチルエステル中間体のTLC:Rf 0.73(3:7 酢酸エチル−ヘキ
サン)、1(c)のTLC:Rf 0.23(3:7 酢酸エチル−ヘキサン)
、
実施例2
N−{D、L−2−(ヒドロキシアミノカルボニル)メチル−
3−メチルブタノイル}−L−3−(2'-ナフチル)−
L−アラニンアミド(化合物2および3)の合成
スキーム3に示すように、化合物(2d)は、4−メチル−2−オキソペンタ
ン酸ナトリウム塩から化合物(1d)を製造するために用いる反応順序で、3−
メチル−2−オキソブタン酸のナトリウム塩から合成した。
化合物(2a):収率73%;沸点100−121℃/0.3mmHg;
化合物(2b):収率58%;沸点125−147℃/0.6mmHg;TL
C:Rf0.54(酢酸エチル−ヘキサン 1:4);
化合物(2c):収率76%;沸点115−119℃/0.7mmHg;TL
C:Rf0.09(酢酸エチル−ヘキサン 1:4);
化合物(2d):収率55%;TLC:Rf0.60(クロロホルム−イソプ
ロパノール 19:1);
ジアステレオマー(2)および(3)は、化合物(1j)および(1d)より
化合物(1)を製造するために用いられる反応順序に従って、L−3−(2'-ナ
フチル)アラニンアミド塩酸塩(8b)および化合物(2d)より作ることがで
きる。化合物(2)および(3)は、上述のような逆層HPLCによって分離し
た。
化合物(2);HPLC保持時間(方法A)21分。
化合物(3);HPLC保持時間(方法A)23.1分。
実施例3
N−{3−(ヒドロキシアミノカルボニル)プロパノイル}−
L−3−(2'-ナフチル)アラニル−L−アラニンアミド(化合物4)の合成
スキーム4に示すように、無水テトラヒドロフラン(20ml)に溶解した1
.74g(10ミリモル)のtert−ブチルコハク酸水素(Buchi,G.
;
Roberts,C.,J.Org.Chem.,33,460,1968)お
よび1.15g(10ミリモル)のN−ヒドロキシスクシンイミドの溶液に、2
.06g(10ミリモル)の1,3−ジクロロヘキシルカルボジイミドを加えた
。室温で一晩攪拌した後、反応物を濾過し、副産物であるジクロロヘキシル尿素
を除去した。濾過液を真空下で濃縮し、残留物を得た。酢酸エチル−ヘキサン(
1:1)を用いてシリカゲルクロマトグラフィーを行うと、白色固体のtert
−ブチルスクシンイミジルスクシネート(4a)、2.3g(収率84%)が得
られた。TLC:Rf0.50(酢酸エチル−ヘキサン 1:1);
5.0mlのトリフルオロ酢酸に溶解した0.70g(1.8ミリモル)の(
A1)溶液を室温で90分間攪拌した。トリフルオロ酢酸を真空下で除去しする
と、残渣が得られ、これをエーテル(20ml)で粉砕し、真空下で乾燥させる
と、0.72gのピンク色の固体が得られた。固体の一部分(0.35g)を2
.0mlの無水N,N−ジメチルホルムアミドに溶解した。これに、0.24g
(0.87ミリモル)の(4a)および0.18ml(1.3ミリモル)のトリ
エチルアミンを加えた。室温で2時間撹拌した後、溶媒を真空下で除去すると残
留物が得られた。クロロホルム−イソプロパノール 9:1を用いてシリカゲル
クロマトグラフィーを行うと、白色固体のN−[3−(tert−ブトキシカル
ボニル)プロパノイル]−L−3−(2'-ナフチル)アラニル−L−アラニンア
ミド(4b)、0.32g(収率84%)が得られた。TLC:Rf0.33(
クロロホルム−イソプロパノール 9:1);
10mlのトリフルオロ酢酸に溶解した0.29g(0.64ミリモル)の(
4b)溶液を室温で30分間攪拌した。トリフルオロ酢酸を真空下で除去すると
残渣が得られ、これをエーテル(20ml)で粉砕し、真空下で乾燥すると白
色固体のN−[3−カルボキシプロパノイル]−L−3−(2'-ナフチル)アラ
ニル−L−アラニンアミド(4c)、0.24g(収率95%)を得た。TLC
:Rf0.04(クロロホルム−イソプロパノール 9:1);
乾燥アルゴン大気下で、0.22g(0.56ミリモル)の(4c)および0
.062ml(0.56ミリモル)の4−メチルモルホリン無水N,N−ジメチ
ルホルムアミド(2ml)の溶液を−15℃に冷却し、0.073ml(0.5
6ミリモル)のイソブチルクロロホルメートで処理した。混合物を−15℃で1
5分間攪拌し、次いで、無水N,N−ジメチルホルムアミド(0.5ml)に溶
解した0.10g(0.81ミリモル)の(O−ベンジル)ヒドロキシルアミン
溶液を加えた。混合物を−15℃で1時間、次いで、室温で1時間、攪拌した。
溶媒を真空下で除去した。その結果得られた固体を酢酸エチルで粉砕し、濾過に
よって集め、白色固体のN−[3−(ベンジルオキシアミノカルボニル)プロパ
ノイル]−L−3−(2'-ナフチル)アラニル−L−アラニンアミド(4d)、
0.20g(収率73%)を得た。TLC:Rf0.46(クロロホルム−イソ
プロパノール 8:2);
4mlの氷酢酸に溶解した0.10g(0.02ミリモル)の(4d)溶液中
に懸濁した活性化炭素上の0.20gの5%パラジウム懸濁液を4気圧の水素下
で18時間攪拌した。濾過によって触媒を除去し、濾過物を真空下で濃縮すると
、残渣が生成し、これを10mlのエーテルで粉砕し、真空下で乾燥させ、固体
を得た。Bakerオクタデシル逆層ゲルクロマトグラフィーを水−アセトニト
リル−酢酸(57:40:3)で溶出すると、白色固体のN−[3−(ヒドロキ
シ
アミノカルボニル)−プロパノ−イル]−L−3−(2'-ナフチル)アラニル−
L−アラニンアミド(4)、0.065g(収率79%)が得られた。TLC:
Rf0.05(クロロホルム−イソプロパノール 8:2);
実施例4
Nα−{D,L−2−(ヒドロキシアミノカルボニル)メチル−4−
メチルペンタノイル}−L−アルギニル−L−アラミン、
2−アミノエチルアミド(化合物5)の合成
スキーム5に示すように、化合物(5a)は、化合物(1i)の製造に用いら
れる方法に従って、化合物(1h)およびNα−BOC−Ng−(ジ−CBZ)
−L−アルギニンから79%の収率で合成された。TLC:Rf0.59(クロ
ロホルム−イソプロパノール 9:1);
化合物(5b)は、化合物(1j)の製造に用いる方法に従って、化合物(5
a)から87%の収率で製造された。TLC:Rf0.11(クロロホルム−イ
ソプロパノール 9:1);
化合物(5c)は、化合物(1k)の製造に用いる方法に従って、化合物(5
b)および(1d)より、88%の収率でジアステレオマー混合物として、製造
された。
ヒドロキサム酸塩(5d)は、ジアステレオマーの混合物として、化合物(5
c)より78%の収率で製造された。
ヒドロキサム酸塩(5d)は、水素化分解によって脱保護され、化合物(5)
がジアスレレオマー混合物として59%の収率で得られた。HPLC保持時間(
方法A) 10.1および10.3分;
実施例5
Nα−{D,L−2−(ヒドロキシアミノカルボニル)メチル−4−メチル
ペンタノイル}L−リジニル−L−アラニンアミド(化合物6)の合成
スキーム6に従って、無水N,N−ジメチルホフムアミド(50ml)中に溶
解した5.0g(0.010モル)のNα−BOC−Nε−CBZ−L−リシン
p−ニトロフェニルエステルおよび1.5g(0.012モル)のL−アラニ
ンアミド塩酸塩および1.67ml(0.012モル)のトリエチルアミンの溶
液は、室温で16時間攪拌して、溶媒を真空下で除去した。得られた残留物を酢
酸エチル(200ml)に溶解し、3M−NaOH(3×100ml)、水(3
×100ml)、1M−HCl(2×100ml)、最後に食塩水(100ml
)で洗浄した。無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた後、溶液を濾過し、真空下で
濃縮しすると、白色の固体のNα−BOC−Nε−CBZ−L−リシル−L−ア
ラニンアミド(6a)、4.3g(収率96%)が得られた。
TLC:Rf0.32(クロロホルム−イソプロパノール 9:1);
化合物(6b)は、化合物(A2)の製造法として前述した方法を用いて、化
合物(6a)および(1d)から69%の収率で製造された。TLC:Rf0.
21および0.29(クロロホルム−イソプロパノール 9:1);
化合物(6c)は、(A3)の製造法として前述された方法を用いて、化合物
(6b)から収率48%で製造された。TLC:Rf0.16(クロロホルム−
イソプロパノール 8:2).MS:mle522(M+).
ジアステレオマー(6A)および(6B)は、化合物(1m)から化合物(1
)を製造するために用いる方法に従って、化合物(6c)から製造された。HP
LC精製(方法A)を行うと、異性体(6A)が先に溶出し、異性体(6B)は
後で溶出した。
化合物(6A):HPLC保持時間(方法A):9.2分;
化合物(6B):HPLC保持時間(方法A):9.9分;
実施例6
N−{D,L−2−(ヒドロキシアミノカルボニル)メチル−4−メチル
ペンタノイル}L−チロシル−L−アラニンアミド(化合物7)の合成
スキーム7に従って、化合物(7a)は、化合物(6a)の製造に用いる方法
に従って、N−BOC−(O−ベンジル)−L−チロシン p−ニトロフェニル
エステルおよびL−アラニンアミド塩酸塩から99%の収率で製造された。TL
C:Rf0.51(クロロホルム−イソプロパノール 9:1);
化合物(7b)は、化合物(6b)の合成に用いる方法に従って、化合物(7
a)からジアステレオマーの混合物として、64%の収率で製造された。TLC
:Rf0.53および0.57(クロロホルム−イソプロパノール 9:1);
化合物(7c)は、化合物(6c)の製造に用いる方法に従って、化合物(7
b)から、48%の収率で製造された。ジアステレオマーの片方の化合物(7c
)はHPLC(方法A)によって分離された。
ジアステレオマー(7c)は、4気圧の水素下、メタノール中炭素上の10%
パラジウム存在下で、脱保護され、化合物(7)が92%の収率で得られた。
実施例7 N−{D,L−2−(ヒドロキシアミノカルボニル)メチル−4−メチルペンタノ
イル}−L−3−(2'-ナフチル)アラニンアミド(化合物8および9)の合成
スキーム3に従って、10mlの無水テトラヒドロフラン中に溶解した3.2
g(0.010モル)のN−BOC−L−3−(2'-ナフチル)アラニンおよび
1.3g(0.011モル)のN−ヒドロキシスクチンイミドの溶液は、約5℃
に冷却した。5mlの無水テトラヒドロフラン中に溶解した2.3g(0.01
1モル)の1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド溶液を加え、さらに、混合
物を約5℃で30分間、次いで、室温で30分間、攪拌した。ジシクロヘキシル
尿素副生成物を濾過によって除去し、さらに、濾過液を1.5ml(0.022
モル)の濃縮NH4OHを含むフラスコに移した。混合物を室温で1時間撹拌し
た後、溶媒を真空下で除いて残留物を得た。残留物は、酢酸エチル(350ml
)に溶解し、水(100ml)、1M−HCl(100ml)、水(100ml
)、飽和炭酸水素ナトリウム溶液(100ml)、さらに最後に食塩水(100
ml)で洗浄した。無水硫酸マグネシウム上で乾燥させた後、溶液を濾過し、真
空下で濃縮すると、固体が出来た。固体は酢酸エチルから再結晶し、白色固体の
N−BOC−L−3−(2'-ナフチル)アラニンアミド(8a)、2.2g(収
率70%)を得た。TLC:Rf0.50(クロロホルム−イソプロパノール
9:1)
60mlの無水1,4−ジオキサン中に溶解した1.95g(0.0062モ
ル)のN−BOC−L−3−(2'-ナフチル)アラニンの溶液中に、塩酸蒸気を
、15分間通した。エーテル(400ml)を加え、固体を沈殿させた。固体は
、濾過によって集め、真空下で乾燥させ、1.36g(収率88%)のL−3−
(2'-ナフチル)アラニンアミド塩酸塩(8b)を得た。
ジアステレオマー(8)および(9)は、化合物(1j)および(1d)から
化合物(1)の製造に用いる反応順序に従って、L−3−(2'-ナフチル)アラ
ニンアミド塩酸塩(8b)および(1d)から作成することができる。
化合物(8):HPLC保持時間(方法A)22.6分。
化合物(9):HPLC保持時間(方法A)24.3分、MS:mle385
(M+).
実施例8 N−{D,L−2−(ヒドロキシアミノカルボニル)メチル−4−メチルペンタ
ノイル}−L−3−(2'-ナフチル)−アラニル−L−セリンアミド
(化合物10)の合成
スキーム8に従って、N−BOC−L−3−(2'-ナフチル)アラニル−L−
(O−ベンジル)セリンアミド(10a)は、(7a)の製造に用いた方法に従
って、N−BOC−L−3−(2'-ナフチル)アラニンおよびL−(O−ベンジ
ル)セリンアミドから80%の収率で製造された。TLC:Rf0.51(クロ
ロホ
ルム−イソプロパノール 9:1);
L−3−(2'-ナフチル)アラニル−L−(O−ベンジル)セリンアミド(1
0b)は、化合物(1j)の製造に用いる方法にしたがって、化合物(10a)
より95%の収率で製造された。TLC:Rf0.08(クロロホルム−イソプ
ロパノール 9:1);
化合物(10c)は、化合物(1k)の製造に用いる方法に従って、化合物(
10b)および(1d)からジアステレオマー混合物として97%の収率で製造
された。TLC:Rf0.69および0.73(クロロホルム−イソプロパノー
ル 9:1);
化合物(10d)は、化合物(1m)の製造に用いた方法に従って、化合物(
10c)から収率74%で製造された。TLC:Rf0.12(クロロホルム−
イソプロパノール 9:1)
化合物(10)は、化合物(1n)製造に用いられた方法に従って、化合物(
10d)から84%の収率で製造された。HPLC保持時間:25.2および2
7.1分(方法A).
MS:mle472(M+).
実施例9 N−{D,L−2−(ヒドロキシアミノカルボニル)メチル−4−メチルペンタ ノイル}−L−3−(2'-ナフチル)−アラニル−L−アラニンメチルアミド
(化合物11)の合成
スキーム9に従って、化合物(11a)は、化合物(1i)の製造法として前
述した方法を用いて、N−BOC−L−3−(2'-ナフチル)アラニンおよびL
−アラニンメチルアミド塩酸塩から、89%の収率で製造された。
TLC:Rf0.58(クロロホルム−イソプロパノール 9:1);
化合物(11b)は、化合物(A2)の製造法として前述した方法を用いて、
化合物(11a)および(1d)から、86%の収率で製造された。
TLC:Rf0.57および0.62(クロロホルム−イソプロパノール 9:
1);
化合物(11)は、化合物(A3)の製造法に前述した方法を用いて、化合物
(11b)から23%の収率で製造された。TLC:Rf0.18(クロロホル
ム−イソプロパノール 9:1.
実施例10 N−{D,L−2−(ヒドロキシアミノカルボニル)メチル−4−メチルペンタ
ノイル}−L−3−アミノ−2−ジメチルブタノイル−L−アラニン、
2−アミノエチルアミド(化合物13)の合成
反応スキーム10に従って、N−Boc−L−tert−ロイシン13(b)
は、L−tert−ロイシン(Aldrich Chemical)を、フッ化
ジメチル(DMF)中でジ−tert−ブチルジカーボネートおよびジイソプロ
ピルエチルアミンで処理することによって製造した。次いで、(13b)は、無
水テトラヒドロフラン中でNHSおよびジクロロヘキシルカルボジイミド(DC
C)で処理して、N−Boc−L−tert−ロイシン N−ヒドロキシスクシ
ンイミドエステルを製造し、次いで、これを反応スキーム2および実施例1より
得られた(1h)とカップリングさせると、(13c)が生成した。化合物(1
3)は、化合物(1)を合成するための、実施例1記載の方法および反応スキー
ム2に示した方法と同様の方法に従って、(13c)より製造された。
実施例11
T細胞によるTNF−α遊離の阻害
以下の実施例は、化合物1によって、T細胞のTNF−αの分泌が、TNF−
βおよびIFN−γの分泌と比較して、生体外(in vitro)で選択的に
阻害されることを示している。
ヒト末梢血液T細胞は、2−アミノエチルイソチオウロニウムブロミドハイド
ロブロミドで処理したヒツジ赤血球を用いてロゼッティングすることによって、
末梢血液単核細胞から精製された。ヒツジ赤血球を低浸透圧で溶解した後、単球
を1時間37℃でプラスチック粘着することによってその大部分を除去した。末
梢血液T細胞は、培養用の穴上に、PBS中10μg/mlおよび10ng/m
lのホルボールエステル(PMA)で固定化された抗CD3抗体(OKT3)で
刺激された。培地は、10%ウシ胎児血清、50U/mlペニシリンおよび50
μg/mlストレプトマイシンを含むRPMI1640よりなる。刺激は阻害剤
化合物1(200μM)の存在下または非存在下で行われ、培地中のTNF−α
はELISAによってアッセイされた。結果を表1に示す。
3時間後、化合物1非添加の細胞培地中には100pg/mlのTNF−αが
認められたが、200μMの化合物1を添加した細胞培地中にはTNF−αは検
出されなかった。24および48時間後、化合物1はTNF−αの遊離をそれぞ
れ72%および63%阻害するが、TNF−βまたはインターフェロン−γの遊
離を阻害する効果は無かった。化合物1は、明らかにTNF−αの分泌を選択的
に阻害するが、TNF−βおよびインターフェロン−γの分泌にはどちらにも影
響しなかった。
実施例12 PMAおよびイオノマイシンで刺激されたヒトT細胞上に細胞表面TNF−αの
増加を誘導する化合物1
本実施例は、PMAおよびイオノマイシンによって刺激されたヒトT細胞に於
ける細胞表面TNF−αへの化合物1の効果について記載している。
異反応性(alloreactibe)のヒトT細胞クローン(PL−1)は
、刺激しないと細胞表面にTNF−αを発現しない。しかしながら、PMAおよ
びイオノマイシンで刺激した後は、細胞表面TNF−α、ならびにCD40およ
び41BB用リガンドが、細胞表面上に速やかに誘導される。細胞表面TNF−
αの検出は、TNFレセプター(p80)の細胞外ドメインと結合したヒトIg
G1分子のFc部分(IgGFc)からなるFc融合タンパク質で染色すること
によって成し遂げられた。41BBおよびCD40の細胞表面リガンドの検出は
、IgGFcならびにそれぞれ41BBおよびCD40の細胞外ドメインからな
るFc融合タンパク質類似体で染色することによって成し遂げられた。PL−1
細胞はPMA刺激に応答して細胞表面IL−4を発現しないので、IgGFcお
よびIL−4レセプターの細胞外部分からなる融合分子(IL−4R:Fc)は
、負の対照として染色時に用いられた。TNFR:FcおよびIL−4R:Fc
融
合タンパク質は、欧州特許第0 464 533号に記載されており、ここに参
照として取り入れる。TNFR:FcおよびIL−4R:Fc融合分子の構築に
用いた一般的方法と同じ方法を用いて、41BB:FcおよびCD40:Fc分
子を構築した。次いで、それらのそれぞれの細胞表面リガンドに結合させたFc
融合タンパク質は、ビオチニル化した抗ヒトIgG1次いでストレプトアビジン
−フィコエリトリンを用いて検出された。染色強度は、FACS(fluore
scence actiated cell sorting)(蛍光活性化細
胞選別)走査流動細胞計測法(scan flow cytometer)によ
って測定した。結果を表11に示す。
細胞表面TNF−αの増加に於ける化合物1の特異性は明らかである。細胞は
、化合物1の存在下で4時間PMAおよびイオノマイシンで刺激し、次いで上述
の方法に従ってTNFR:Fcで染色すると、3040MFIを示したが、これ
に比較して化合物1非存在下では83であった。化合物1の影響は、TNFR:
F
c結合に特異的であったが、これに対して41BB:FcまたはCD40:Fc
結合の増加は検出されなかった。刺激18時間後では、細胞表面TNF−αは、
化合物1非存在下でのTNFR:Fc結合が7MFIであったのに比較して、化
合物1存在下では実質上100倍(MFIは616であった)に増加する結果に
なった。同条件下で、41BB:FcおよびCD40:Fc結合は、おおよそ2
倍に増加したのみであった。
実施例13
生体内(in vivo)でのTACEの阻害 500μgの化合物A:化合物1:対照
雌Balb/cマウス(18−20g)に400μgのLPSを静脈内注射し
た。同時に、マウスに、0.02%DMSOを含む0.5mlの食塩水中に溶解
した500μgの化合物Aまたは化合物1を皮下注射した。対照のマウスは、L
PSを静脈内に、食塩水/DMSOを皮下に注射された。LPS注射2時間後、
それぞれの処理群当たり2匹のマウスから、血清を集め、プールした。TNF−
αのレベルはELISAによって定量し、結果を表IIIに示した。
化合物1を加えると、化合物1はTNF−αの分泌を少なくとも80%、TN
F−αを検出することが出来ないので実質的には100%阻害する。これに比較
して、化合物Aでは、食塩水/DMSO対照と比較してTNF−αのレベルがお
およそ60%減少した。
上記の方法と同様の方法で、マウスに400μgのLPSを静脈内注射した。
同時に、マウスは、0.02%DMSOを含む0.5mlの食塩水に溶解した5
00μgの化合物1を皮下注射された。2時間後、血清を集め、プールした。T
NF−αのレベルはELISAによって定量した。結果を表IVにpg/mlで
示す。
実験1では、化合物1は、LPSのみを接種されたマウスのTNF−αレベル
と比較して、血清TNF−αレベルを82%減少させた。LPS+食塩水を接種
されたマウスと比較すると、化合物1は血清のTNF−αレベルを76%減少さ
せた。実験2では、化合物1は、LPSのみを接種されたマウスのTNF−αレ
ベルと比較して、血清のTNF−αレベルを89%減少させた。LPS+食塩水
を接種されたマウスと比較すると、化合物1は血清のTNF−αレベルを85%
減少させた。実験3では、化合物1は、LPSのみを接種されたマウスのTNF
−αレベルと比較して、血清のTNF−αレベルを85%減少させた。LPS+
食塩水を接種されたマウスと比較すると、化合物1は血清のTNF−αレベルを
84%減少させた。全体では、化合物1は、LPSのみを接種されたマウスのT
NF−αレベルと比較して、血清のTNF−αレベルを85.4±2.98%減
少させた。表IIIおよびIVから、化合物1は、LPSによって誘導した敗血
症症候群のネズミのモデルに25mg/kg投与した場合、血清TNF−αレベ
ルを、実質上、少なくとも80%減少させた。250μgの化合物A:化合物1:対照
雌のBalc/cマウス(18−20g)に450μgのLPSを静脈注射し
た。同時に、マウスは、0.02%DMSOを含む0.25mlの食塩水中に溶
解した250μgの化合物Aまたは化合物1を皮下注射された。対照マウスはL
PSを静脈内に、食塩水/DMSOを皮下に注射された。LPSを注射してから
2時間後、それぞれの処理群から3匹ずつの血清を集めた。TNF−αレベルは
ELISAによって定量した。結果は、それぞれの処理群からのELISAで得
られた光学濃度(OD)の平均で表し、結果を表Vに示す。対照サンプルのバッ
クグラウンドODは0.162±0.003であった。
表Vは、LPSで刺激したマウスにおいて血清TNF−αの遊離を阻害する化合
物1および化合物Aの影響について示している。化合物1は、対照のそれと比較
して血清のTNF−αレベルを減少させ、それによって250μg/mlではT
NF−αの分泌が完全に阻害されることが示された。化合物Aでは、LPS+食
塩水、LPS+食塩水+DMSO、および化合物Aの間のODの読みが同様であ
ることから示されるように、血清のTNF−αレベルの減少効果は示さなかった
。
実施例14
化合物Aおよび化合物1の血清安定性
化合物1および化合物Aを、それぞれ、正常なマウスの血清中で50μMにな
るように希釈し、37℃でインキュベーションした。種々の時間に、アリコート
を採取し、氷冷したPBSで100倍に希釈し、精製したTACEに対する阻害
効率について試験した。40分後、化合物Aはこの化合物の濃度で3−4倍の損
失に相当する阻害効果で減少を示したが、化合物1は阻害効果では減少が示され
なかった。
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(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
C07C 323/60 9450−4H C07F 9/09 K
C07F 9/09 9450−4H L
9450−4H U
8517−4H C07K 5/078
C07K 5/078 9051−4C A61K 37/02 ABN
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AP(KE,MW,SD),AM,AT,
AU,BB,BG,BR,BY,CA,CH,CN,C
Z,DE,DK,ES,FI,GB,GE,HU,JP
,KE,KG,KP,KR,KZ,LK,LT,LU,
LV,MD,MG,MN,MW,NL,NO,NZ,P
L,PT,RO,RU,SD,SE,SI,SK,TJ
,TT,UA,UZ,VN
(72)発明者 スリース,ポール・アール
アメリカ合衆国ワシントン州98119,シア
トル,ウエスト・アーマー・ストリート
836