JPH09503001A - ニューロンを保護するためのコンドロイチン硫酸プロテオグリカンの使用 - Google Patents

ニューロンを保護するためのコンドロイチン硫酸プロテオグリカンの使用

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JPH09503001A JP7528606A JP52860695A JPH09503001A JP H09503001 A JPH09503001 A JP H09503001A JP 7528606 A JP7528606 A JP 7528606A JP 52860695 A JP52860695 A JP 52860695A JP H09503001 A JPH09503001 A JP H09503001A
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Abstract

(57)【要約】 配列番号:1の一次アミノ酸構造の一部またはすべてを有しかつ少なくとも二つのグリコサミノグリカン連鎖が連結されているプロテオグリカンを使用すると、生体外および生体内で神経突起の増生が促進されかつニューロンの生存が支持され、および/または神経細胞を再成する治療効果を起こす。

Description

【発明の詳細な説明】 ニューロンを保護するためのコンドロイチン硫酸プロテオグリカンの使用 この発明は、神経突起の増生を促進しかつニューロンの生存を保持するための コンドロイチン硫酸プロテオグリカンの使用に関する。またこの発明はこれらの 物質を製造する方法と手段およびそれら物質を含んでなる医薬組成物に関する。 プロテオグリカンは一つ以上のグリコサミノグリカン側鎖を有するタンパク質 である。プロテオグリカンは例えば血管平滑筋、骨/軟骨などの組織中に、多種 類みられる。そのグリコサミノグリカンによる置換は、そのタンパク質が、キシ ロシルトランスフェラーゼの受容体として作用する性能に依存しており、この酵 素は大部分の形態のグリコサミノグリカンの合成を開始する。プロテオグリカン にはあらゆる大きさと形態のものがあり、そしてその唯一の共通の特徴はグリコ サミノグリカンが存在することである。この点については、グリコサミノグリカ ンによる置換はタンパク質の他の種類のグリコシル化に類似している。しかしそ れは機能が類似していることを必らずしも示していない。プロテオグリカンの細 胞調節に対する寄与に関する総説はRuoslahti(1989年と1991年の文献)が発表し ている。 ニューロンの増殖と生存およびその形態可塑性を調節するタンパク質は神経栄 養性因子と命名されている。またこの神経栄養性因子は、他のニューロン特異的 タンパク質の合成も調節する。神経栄養性因子が生体内で無調節で発現すると、 神経系の発育障害および/または神経退行疾患を起こすことがある。神経突起促 進因子の外に 、拡散性神経栄養性活性および臨界細胞密度(critical cell density)は培養中 の中枢神経系ニューロンの生存を延長するのに不可欠な必要条件である(Muller らの1991年の文献)。いくつかの神経栄養性因子はプロテオグリカンである。Sc hulzら(1990年の文献)は、ニワトリの網膜神経節細胞に対して生存活性を有す る上丘から神経栄養性プロテオグリカンを精製した。ラミニン−プロテオグリカ ン複合体とフィブロネクチンがニューリトジェニックアクティビティー(neurito genic activity)に優先的に寄与していることが見出された(Matthiessenらの199 1年Bの文献)。 しかし大部分の脳プロテオグリカンの機能はまだ未知のまゝである。結合組織 のプロテオグリカンの研究に基づいて、これらの分子は、重要な細胞の機能、例 えば細胞−細胞および細胞−基質の相互作用を調節することによる細胞の増殖と 接着;増殖因子の活性化;および細胞外マトリックスの器質化などの調節に参画 していると考えられている(総説としては Ruoslahtiの1989年の文献および Ruo slahtiと Yamaguchiの1991年の文献がある)。 この発明の発明者らは、驚くべきことであるが、骨由来のコンドロイチン硫酸 プロテオグリカン〔以後ビグリカン(biglycan)と命名する〕が神経突起の増生 を促進しかつ培養中の CNSニューロンの生存を保持することを発見したのである 。また、このビグリカンは、生体内および生体外での神経栄養性作用に加えて、 生体内で学習に対して促進作用をもっていることも発見された。 ビグリカンとして神経栄養性活性を単離し固定することは、この発明にしたが って、変性条件下、好ましくは任意に分子量分離を付け加えたアニオン交換クロ マトグラフィーを用いて、脳脊髄膜繊維芽細胞から行うことができた。次の3ス テップの精製法:(i)最初のアニオン交換クロマトグラフィー;(ii)変性剤 (好ましくは 8Mの尿素)の存在下でのアニオン交換体による再度のクロマトグラフィ;およ び(iii)変性剤(好ましくは4Mの塩酸グアニジウム)の存在下での最後のゲ ル濾過(例えばSuperose 6によるゲル濾過)を用いることが特に好ましい。 したがってこの発明は、生体内および生体外で、神経突起の増生を促進しかつ ニューロンの生存を保持するための、配列番号:1の一次アミノ酸構造の一部ま たはすべてを有し、かつ少なくとも2個のグリコサミノグリカン連鎖が結合して いるプロテオグリカンの使用に関する。さらにこの発明は、神経細胞の退行を防 止しおよび/または神経系を再生するのに用いる治療剤を製造するためのこのプ ロテオグリカンの使用に関する。 用語“ニューロン”は、伝導シグナル(conduct signal)と伝達シグナルを受 ける神経細胞を意味する。これらのシグナルの意味は、全体としての神経系の機 能の中で個々の細胞が演じる役割によって変化する。運動ニューロンの場合、こ れらのシグナルは特定の筋肉の収縮に対する指令を示す。感覚ニューロンの場合 、これらのシグナルは、特定のタイプの刺激、例えば光、機械的力または化学物 質などが身体の特定の部位に存在しているという情報を示す。介在ニューロンの 場合、これらのシグナルは、多種類の起源からの感覚情報を組合わせ、適切な一 組の運動指令を応答として発する計算を行う役割を示す。一般に、ニューロンは 、三つの主要部分:細胞体、樹状突起および軸索に区分することができる。 用語“神経系”は脊椎動物の神経系を意味する。神経系は脳、脊髄および末梢 神経で構成されている。神経細胞体は中枢神経系の内側または外側に位置し、中 枢神経系は神経節中に群生している。中枢神経系では、大部分の神経細胞が介在 ニューロンであり、この介在ニューロンは他の神経細胞からその入力を受け入れ 次いでその出 力を他の神経細胞に送達する。 用語“神経突起の増生”は発育錐状体からの軸索と樹状突起の発育を意味する 。原則として神経突起は、新しいマテリアルを、その基底、その先端またはその 長さ方向にそって挿入することによって発育することができる。 用語“神経系の再生”は、大ニューロンおよび/または発育錐状体から軸索と 樹状突起が発育することによって、特に神経細胞が再生することを意味する。 用語“神経細胞の退行”は神経系においてシグナルの受けいれ、伝導および伝 達が損われる全過程を意味する。 この発明で使用できるタンパク質は、配列番号:1の DNAとアミノ酸の配列に 基づいたプロテオグリカンである。このヌクレオチド配列は、 Fischerら、 J.B iol.Chem.,264巻、4571〜4576頁、1989年の著者らが寄託番号 J 04599でGenBan k(登録商標)EMBL Data Bankに寄託している。なお上記文献は本明細書に援用す るものである。この発明で使用できるビグリカンはすべての哺乳類の種から誘導 できるが、ヒト、ラットまたはウシのビグリカンが好ましい。これら3種のビグ リカンのタンパク質配列の差異を図8に示す。7〜23位のアミノ酸中に、超可変 領域が含まれていることが発見された(Dreherら、Eur.J.Cell Biol.,53巻、 2 96〜304 頁、1990年によるデータ;この文献は本明細書に援用するものである) 。このようにこの領域は、この発明にしたがって機能を変えることなくかなり変 えることができる。 天然産のビグリカンは、分子量が完全配列の場合約42,500であり、分泌される 形態の場合は約38,000である。また天然産のビグリカンは主として24個のアミノ 酸残基の縦列繰返し単位12個の1列で構成されている。この繰返し単位は、その 保存されたロイシンおよび ロイシン様アミノ酸によって認識される(Fisherら、J.Biol.Chemistry.,264巻 、4571〜4576頁、1989年の特に図4;この文献は本明細書に援用するものである )。 その配列が配列番号:1と実質的に同一であるかぎり、およびこの発明の機能 が維持されるぎり、ビグリカンのタンパク質配列の他の変異も可能である。しか し図8に示す変異を含んでいるかまたは含んでいない配列番号:1の配列が好ま しい。 例えば、ベクターの製造を改善したりまたはその発現を最適化するために行う 核酸配列の変形のなかにいくつか好ましい変形があり、その変形としては例えば 下記のものがある。 連結、クローン化および突然変異誘発を改善するため行う、制限酵素の異なる 認識配列を挿入する核酸配列の変更; 宿主にとって好ましいコドンを挿入する核酸配列の変更; 宿主細胞中での発現を最適化するため行う、追加のオペレーター要素への核酸 配列の補充;である。 この発明で有用なビグリカンの変異体は、配列番号:1および/または図8と 相同性が少なくとも80%であり、好ましくは90%である。 ビグリカンは、当該技術分野で公知の方法にしたがい、例えば、天然材料(例 えば脳脊髄膜繊維芽細胞、血管平滑筋または軟骨など)から単離することによっ てまたは組換え技術によって製造することができる。これらの方法は、上記Dreh erの1990年の文献;Fisherの1987年;1989年および1991の文献; Neameら、 J.B iol.Chem.,264巻、8653〜8661頁、1989年; Rosenbergら、J.Biol.Chem.,260 巻、 415〜420 頁、1991年に記載されている。なおこれら文献の開示事項は本明 細書に援用するものである。 ビグリカンは組換え法で製造する方が好ましい。製造を行うため、その DNA配 列をベクター中にクローン化し次いでその DNA配列で宿主細胞を形質転換して複 製を行わせる。このようなベクターは、さらに、該 DNAを発現させるオペレータ ー要素を含有している。その宿主細胞を、ベクターを増幅する条件下で培養し、 次に醗酵させた後、所望のタンパク質を単離する。 ビグリカンは真核細胞内で産生させる方が好ましい、というのは、この細胞で は、少なくとも二つのグリコサミノグリカン連鎖が連結したビグリカンが産生さ れる方式でグリコシル化が起こるからである。 しかし、現在の技術水準の方法によって、発現後(例えば原核細胞内で)グリ コサミノグリカン連鎖を連結することも可能である。タンパク質にグリコシドを 化学的におよび酵素によってカップリングすることは、各種の活性化された基を 用いて達成することができる。この方法は例えば Alpinと Wriston,CRC Crit R ev.Biochem.,259〜306 頁、1981年に記載されている。 ビグリカン分子中のアミノ酸を欠失、もしくは変更させまたはビグリカン分子 中に適切なアミノ酸を導入して、所望の配列変更を行う変形は、例えば部位特異 的突然変異誘発または関連タンパク質をコードする DNAへの適切な配列の連結な どの当該技術分野で公知の手段で達成することができる。このような方法は例え ばSambrookら、 Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版、 Cold Spr ing Harbor Laboratory Press,ニューヨーク、1989年に記載されている。 PCR突然変異誘発法も、この発明のビグリカンをコードする核酸を製造するの に適した方法であり、例えば Ausubelら編集、Current Protocols in Molecular Biology,Screen Publishing Associat es and Wiley Interscience,2巻、15章、1991年に記載されている。 ビグリカンおよびその変異体をコードする核酸配列(特にcDNA)を複製可能な ベクター中に挿入し、クローン化または発現を行う。適切なベクターは、標準の 組換え DNA法を用いて製造される。単離されたプラスミドと DNAフラグメントを 切断し、調整し次いで特定の順序で連結して、所望のベクターが得られる。 すでに述べたように、真核(多細胞)生物由来の細胞培養物が、発現用宿主と して好ましい。無脊椎動物と脊椎動物の両者の細胞培養物が容認できるが、脊椎 動物の細胞培養物、特に哺乳類の培養物が好ましい。適切な細胞系の例としては 、COS-7(ATCC CRL1651);BHK(ATCC CCL10);チャイニーズハムスター卵巣細胞(C HO);サル腎臓細胞(ATCC CCL70);Hela細胞(ATCC CCL2);ヒト肺細胞(W138,ATC C CCL75);ヒト肝細胞(HepG2,HB8065);ラットヘパトーム細胞(HTC,MI.54,Ba umannら、J.Cell.Biol.,85巻、1頁、1980年)などがあり、このうちヒト細胞系 が好ましい。 プロモーターとしては、ポリオーマウイルス、アデノウイルス2およびシミア ンウイルス40(SV40)由来のプロモーターのようなウイルスプロモーターが好ま しい。あるいは、ビグリカンおよび/または宿主細胞系に対して相同のプロモー ターも有用である。産生レベルを増大させるには、例えばDHFR遺伝子などの増幅 可能な配列も、ベクター上で用いることが好ましい。 この発明の化合物は、医薬として有用な組成物の公知の製造方法によって配合 することができ、ビグリカンは医薬として許容される担体と混合して組合わされ る。この組成物は、一般に、患者に有効に投与するのに適した医薬として許容さ れる組成物を製造するのに有効な量のビグリカンを適切な量の担体とともに含有 している。ビ グリカンは、患者に非経口で投与するか、または中枢神経系統および末梢神経系 へビグリカンを確実に送達する他の方法で投与してもよい。 これらの組成物としては滅菌水溶液または凍結乾燥物があり、好ましくは、配 合物を等張にするのに適当な量の医薬として許容される塩および/または適切な pH一般に5〜9を保持する緩衝剤を含有している。 この発明の医薬組成物の投与量および所望の医薬濃度は、使用されるビグリカ ンまたはその変異体によって変化する。適当な投与量の決定は医師の熟練によっ て行われる。 ビグリカンは神経栄養性活性を有しているので、疾患および/または外傷によ って神経系が損傷した後のみならず正常な老化中(この場合一般に神経細胞の漸 進的な死を伴う)、CNS(中枢神経系)ニューロンの生存を促進しかつその構造と 機能を維持する潜在効力を有する治療薬を製造することができる。 ビグリカンは神経突起成長促進活性を有しているので、損傷をうけた神経繊維 の発芽と再生を刺激して、神経系の損傷と退行性疾患に続いて機能を回復させる 潜在効力を有する治療薬を製造できる。 またビグリカンは記憶強化活性を有しているので、老人と痴呆患者の学習効率 を回善しかつ記憶欠失を軽減する潜在効力を有する治療薬を製造することができ る。 以下の図、配列および実施例によってこの発明をさらに詳細に説明する。 図面の説明 図1. MCMの投与量依存性の神経栄養性生存活性。ラットの胎児(day E15)由 来の新皮質ニューロンを、N2中(A、グラフE中の ○印)または MCMの段階希釈液中(B−D、グラフE中の●印)で5日間培養し 、次いで実施例1の材料と方法の項に記載されているようにして、抗map2抗体で 免疫標識をつけるか(A−D)または生体染色色素 MTTで染色した(E)。(B ),(C)および(D)に用いたタンパク質の濃度はそれぞれ5,10および20μ g/ml(1,2および4μg/ウエルに相当する)であった。(E)の数値は4 回測定値の平均値±s.d.である。尺度のバーの長さは50μmである。 図2. MCMの Q-Sepharoseによるクロマトグラフィー。第一の精製ステップは 、 MCMの50mMトリス/HCl pH 7.4でのアニオン交換クロマトグラフィーであった 。2テップの塩勾配液によって溶離された画分を、タンパク質濃度と神経栄養性 活性について検定した(実施例1の材料と方法の項参照)。斜線をつけたバーに 対応する生物学的に活性の画分をプールして(Q-Sepharose-Pool)さらに精製し た。 図3.活性Q-Sepharose-Poolの、8M尿素の存在下でのMONO Qカラムによるク ロマトグラフィ。Q-Sepharose-Pool(図2参照)を、8M尿素を含有する50mM酢 酸ナトリウム緩衝液(pH 6.O)中のMono Qのクロマトグラフィーに再度付し、0. 07Mから1.4Mまでの塩化ナトリウムの範囲の塩線形勾配液でタンパク質を溶離 した。神経栄養性活性が、高い塩濃度において溶出され、活性画分(斜線をほど こしたバー)をプールし(Mono Q-Pool)さらに精製した。 図4.4Mグアニジウム塩酸の存在下、Superose 6による Mono Q-Poolのゲル 濾過。Superose 6カラムを4Mグアニジウム塩酸を含有する50mMトリス/HCl 緩 衝液(pH 7.4)と平衡化させた。活性物質(斜線をほどこしたバー)をKav 0.21 で溶出させた。使用した較正標準はそれぞれ、チログロビン(669kDa)、フェリ チン(440kDa)、カタラーゼ(232kDa)およびアルドラーゼ(158kDa)であった 。VO(ブルーデキストランの溶出)は 7.2mlに位置し、Vcは24mlに位置していた 。 図5.異なる精製ステップの後の生物活性画分の、銀で染色した SDS−ポリア クリルアミドゲル電気泳動。MCM(レーン1)ならびに Q-Sepharoseのクロマトグ ラフィー(レーン2)、Mono Qのクロマトグラフィー(レーン3)およびSupero se 6のクロマトグラフィー(レーン4)にそれぞれ付した後プールした活性画分 の同量のタンパク質(各5μg)を、3〜10% SDS勾配ゲル上、還元条件下で分 離し、銀で染色して視覚化した。左側の数字は分子量の標準(kDa)を示す。 図6.脳脊髄膜細胞由来の精製ビグリカンの、ラット胎児の新皮質ニューロン に対する作用。ニューロンを、1.5μgの精製ビグリカン/mlを補充したN2培 地中(A,B、グラフE中の●印)またはN2培地単独中(C,D、グラフE中 の○印)で5日間培養し次いで抗map2抗体で免疫標識をつけたか(A−D)また は生体染色色素 MTTで染色した(E)。ビグリカンの存在下で培養したニューロ ンは生育可能であり高密度の神経突起の網目によって接続されているが(B)、 N2中では漸進的なニューロンの死をもたらす細胞の退行を示す細胞質空胞と異 常な神経炎の突起が生成している(D)とに注目すべきである。(E)はビグリ カンの投与量依存性活性を示す。(E)中の値は4回測定値の平均値±SDを示す 。尺度バーの長さは50μmである(AとCならびにBとDそれぞれについて)。 図7は、図6Eにしたがって、ラットビグリカン(BGN-men)、ウシビグリカン (BGN-chon)、ラットの脳脊髄膜細胞の培養上澄み液(MCM25)および対照の不活 性の培地(N2)に関する投与量−反応曲線を示している。 BGN-menとBGN-chon は同じ初期濃度で使用した(0.02μgビグリカン/微量滴定プレートのウエル) (OD550nm: 5 50nmにおける光学濃度;Verdjinmung:希釈比)。 図8.ビグリカンのコアタンパク質の配列の比較(これ以上の詳細はDreherの 1990年の文献の図3参照)。配列番号:1 ビグリカンのcDNA配列(これ以上の 詳細はDreherの1990年の文献の図1参照)。 図9.0.74pmolのサブスタンスP(SP)および各種投与量のプロテオグリカン ビグリカンの、アップヒル回避行動(uphill avoidance performance)に対する 効果。訓練実施(training trial)中、ラットはアップヒル反応を伴う尾部ショ ックを受けた。保持性を、訓練実施を終ってから24時間後に測定した、増大まで の潜伏期(latency to set up)の(四分位数の範囲を有する)中央値で示す(各 カラムの右側の△印はそれぞれの平均値±SEM を示す)。処理は、 0.74pmol SP 、 1.3〜1300.0nmolの範囲の8種の投与量のビグリカンまたは担体(PBS)を訓練 実施後に注射することからなっている。これらの注射はNBM領域中の片側に行っ た(***はそれぞれ、 PBS担体の対照に対してp<0.01およびp<0.05で有意 差があることを示す;マン・ホイトニーU検定:SP群については片側検定、ビグ リカン群については両側検定)。 図10.プロテオグリカンビグリカンの、アップヒル回避行動に対する効果。訓 練実施中、ラットはアップヒル反応を伴う尾部ショックを受けた。保持性を、訓 練実施を終ってから24時間後に測定した、増大までの潜伏期の(四分位数の範囲 を有する)中央値で示す(各カラムの右側の△印はそれぞれの平均値±SEMを示 す)。処理は、 2.6nmolまたは 130.0nmolのビグリカンを訓練実施後に注射する ことからなっている。対照には、みせかけの手術(SHAM)、担体注射(PBS)、5 日遅延(ビグリカン2.6-del)およびショックなし(−ns)の群が含まれている。 注射は NBM領域中の片側に行った〔*は 、 PBS、ビグリカン2.6-del およびビグリカン−nsの群に対してp<0.05で有意 差があることを示す;マン・ホイトニーU検定(片側検定)]。 図11.15分間の観察期間中、処置コラル(treatment corral)中ですごした時 間の、オープンコラル中での試験の日に対する平均%(+SEM)。単一の条件付け をコラル装置内で行った。これらラットには、SP(0.74pmol)、ビグリカン(2.6 または130.0nmol)または担体(PBS)を NBM領域に注射し、オープンフィールド( 閉じたコラル)の制限された四つの区分のうちの一つに入れた。オープンコラル 中での条件付け場所嗜好の試験中、ラットは全オープンフィールドを動くことが できる。生データに対してマン・ホイトニーU検定を行って、グループ間の差異 を検定した〔SP群、片側検定;ビグリカン群、両側検定;**はPBS担体の対照に 対してp<0.01で有意差があることを示す〕。 新皮質ニューロンを、材料と方法の項に記載したようにして培養した。細胞は トルイジンブルー(18時間後)または抗map2モノクローナル抗体(5日後)でス テインし、次いで全細胞(18時間後)または二つの細胞の直径より長い神経突起 を少なくとも一つ有するma p2陽性クローン(5日後)を計数した。5日後、培養物中に検出された、ニュー ロンではない細胞は1%未満であった(n:ウエルの数)。 各段階で、材料と方法の項に記載したようにして活性を検定した。1TUを、本 発明の発明者らの生物検定で、ニューロンの半数最大生存(half maximal neuro nal survival)を保持する活性の量と定義する。最高生存は MCMの飽和濃度に対 する応答で観察される。タンパク質は、免疫グロブリンを標準として用いて、Br adfordの1976年の文献に記載されている方法にしたがって測定した。 実施例1 脳ニューロンに対し神経栄養性活性を有する脳脊髄膜細胞由来のコンドロイチン 硫酸プロテオグリカンの精製と、そのビグリカンとしての同定。 材料と方法。 脳脊髄膜細胞のならし培地(MCM)。 ラット胎児由来の脳脊髄膜繊維芽細胞(免疫細胞化学的に98%以上のフィブロ テクチン陽性/グリア繊維酸性タンパク質陰性細胞)を先に述べたようにして調 製した(Matthiessenらの1991年Bの文献)。要約すると、胎日数が18日(E18) のウイスターラットの脳半球から軟髄膜を注意深く取り出し、37℃で45分間、0. 05%トリプシン/0.02%EDTA(Boehringer Mannheim社,ドイツ,マンハイム)を 用いてトリプシン処理を行った。カニューレ(直径が 0.7mmおよび0.4mm)で磨砕 した後、3頭の胎児から得た細胞懸濁液を、75cm2フラスコ中の10% FCS/DMEM( Gibco/BRL 社,ドイツ,エッゲンスタイン)に接種し、加湿10% CO2/90%空気 の雰囲気下、37℃で5〜7日間増殖させ集密状態にした。その細胞を2回継代培 養を行い、4週間で約10.5m2の最終単層面積まで広げた。1.2m2から10.5m2の 培養面積までの最終継代の間、3×106 細胞/175cm2フラスコ(Greiner)が最適 のプレーティング数であることが判明した。初期細胞密度が高いと、無血清ホル モン補充DMEM〔5μg/mlのウシインスリン、100μg/mlのヒトトランスフェ リン、20nMのプロゲステロン、30nMの亜セレン酸ナトリウム、 100μMのプトレ シンおよび 3.9mMのグルタミン(すべてドイツ,ハイデルベルク所在の Sigma社 より入手)を含有する(H-DMEM)〕に変更した後、細胞の剥離が困難になること が多かった。集密単層を PBSで3回洗浄し、H-DMEM(1.14ml/10cm2 培養面積) とともにインキュベートした。24 時間後、その培地を排棄して新しいH-DMEM培地と取替えた。3〜4日毎に、その 無血清 MCMを収集し、濾過し(0.22μm、Milli-FilGS,米国,マサチューセッ ツ州ベッドフォード所在の Millipore社)、次いで−70℃で貯蔵した。新しいH- DMEMは5回提供した。ニューロン細胞の培養と生存活性の生物検定。 1.原理。 MCMおよびクロマトグラフィーの画分の生存活性を、新皮質ニュー ロンの生存に対する逐次希釈試料の効果を生物検定法で試験することによって定 量した。生きている細胞を発色性の生存能力マーカーで染色し、その測定された 活性を栄養単位で表した(以下参照)。 2.培養皿の準備。最適の細胞付着状態を提供するため、プラスチック製の96 ウエル組織培養微量滴定プレート(Falcon,ドイツ,ハイデルベルク所在のBect on Dickinson社から購入; 0.38cm2/ウエル)を、PBS(Gibco/BRL)中 0.1mg/m lポリ−D−リシン(ドイツ,Deisenhofen所在の Sigma Chemie GmbH社)ととも に4℃で一夜インキュベートした。そのウエルを PBSで3回洗浄し、次いで4μ g/mlのマウス EHSラミニン(Gibco/BRL)を含有する PBSとともに4℃で一夜イ ンキュベートし、最後に再び PBSで洗浄した。これらウエルを、 100μl N2( BottensteinとSatoの1980年の文献)〔DMEM/H-DMEMについて先に列挙した補充 物を含有するHams F-12(Gibco社)の4:1混合物〕で満たし、次に MCM、また はDMEM(Gibco/BRL)に対して透析し次いで0.22μmのフィルター(Millex GV4,M illipore社)を通過させて滅菌したクロマトグラフィーの画分のアリコートを加 えた。 MCMと画分は逐次希釈し(1:2)次いで37℃にて加湿10% CO2/90%空 気中で平衡化させたものである。 ロトコルにしたがって、新皮質ニューロンを胎日数15(E15)のウ イスターラットから分離した。要約すると、解剖後、組織を0.05%トリプシン/ 0.02%EDTA中でインキュベートし(37℃で10分間)、10% FCS/DMEMですすいで プロテアーゼの活性を封鎖し、DMEMで2回洗浄し、N2中に再び懸濁させ、口焼 きを行ったパスツールピペットで磨砕し次いで30μmのナイロンガーゼを通過さ せた。生細胞(フルオレセインジアセテートで染色して確認)を、1ウエル当り 100μl N2中、約4×104 細胞/cm2の密度で、ラミニンを予めコートした96ウ エル微量滴定プレート中に接種した。この細胞を、培地を変えずに5日間、全容 積を200μlに保持した。培養面積の5%を含む顕微鏡の視野の中の細胞数から 1ウエル当りの細胞数を算出した。細胞は、トルイジンブルー(プレーティング してから18時間後)または抗Map2抗体(5日後、下記参照)で染色した。 MCM中 とN2中の細胞数は、プレーティングしてから18時間後は同一であった(プレー ティング効率は約65%)。個々のカラム画分の生存活性を測定するため、ニュー ロンを、最終濃度が 150μg/mlの3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イ ル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)(ドイツ,Deisenhof en所在の Sigma社)で、10% CO2/90%空気中37℃で60分間、通常どおりに染色 した。生細胞によって形成された青色のホルマザンの沈澱を、1ウエル当り 10 0μlの培地を、100μlの酸性イソプロパノール〔0.6%(vol/vol)HCl含有イソ プロパノール〕で置換し次いで音波処理(ドイツ,ベルリン所在の Fa.Bandelin 社の SonoRex super RK255;15秒間)することによって可溶化した。 550nm波長 光の吸光度〔マルチプレートリーダー(multiplate reader)MR500;ドイツ,De ukendorf所在のDynatech社で測定〕は、同胞培養物を計数することによって測定 した生細胞の数と比例していた。精製の過程において1栄養単位は、ニューロン の半数最大生存を保持する活性の量 と定義した。個々の画分のTUは、その希釈比を 550nm波長光の対応する吸光度に 対してプロットすることによって測定した。各96ウエル微小滴定プレート上の、 それぞれの製剤の逐次希釈 MCMを最大ニューロン生存の基準として用い、そして ニューロンを含有しているN2培地およびニューロンを含有していないN2培地 が入っているウエルを用いてバックグランドを推定した。 ニューロン−基質(substratum)の接着についての遠心検定。 Uウエル・マルチ滴定プレート(96ウエル、Greiner GmbH社)を、4μg/ml のマウス EHSラミニン(Gibco/BRL)、 MCMから精製した5μg/mlのビグリカン および PBSから精製した10μg/mlのビグリカンを含有する PBSとともに、4℃ で一夜プレインキュベーションを行なった。1ml当り10mgのウシ血清アルブミン (BSA,Sigma社)を含有する PBSで3回洗浄した後、プレートを、 BSA溶液とと もに37℃で4時間インキュベートすることによってブロックした。E15ラットか ら新たに調製した新皮質ニューロンを、1ウエル当り5×104 細胞の密度でプレ ートした。その後直ちに、スイング−アウトローター中250gで2分間遠心分離 に付し、細胞ペレットの直径を倒立顕微鏡を用いて測定した。 培養ニューロンの組織化学的染色と免疫化学的染色。 4%(wt/vol)のパラホルムアルデヒド(ドイツ,ダルムシュタット所在の Me rck社)を含有する PBS用いて、細胞を室温(RT)で15分間固定した。組織化学 的染色(Lochterらの1991年の文献)の場合、細胞を PBSで2回洗浄し、次いで 0. 5%(wt/vol)のトルイジンブルーO(Boehringer Mannheim社)を含有する 2.5%( wt/vol)Na2CO3溶液で15分間染色し、蒸留水で2回洗浄し、風乾し次にDPX(Fluk a,Neu-Ulm,ドイツ)でカバーした。モノクローナルマウス抗微小管結合タンパ ク質2(Map2)抗体(Sigma社)を用いる免疫細胞 って実施した。固定した細胞を PBSで洗浄し、10% FCS/2% BSA/ 0.6%Trit on X-100を含有する PBS中、室温で30分間プレインキュベートし、次いで PBS/ 0.6%Triton X-100中、抗MAP2抗体(1:500)とともに4℃で18〜24時間インキ ュベートした。捕捉された一次抗体を検出するため、Vectastain-Elite-ABC-kit (Camon,Wiesbaden,ドイツ)をメーカーのプロトコルの変形にしたがって使用 した。要約すると、細胞を PBSで3回洗浄し、ビオチニル化ウマ抗マウスIgG(PB S/ 0.6%Triton X-100中1:200)とともにRTで45分間インキュベートし、次い で PBSで3回洗浄し、(PBS/0.6%Triton X-100中1:100 の比率の ABC−コン プレックスとともにRTで30分間インキュベートした。次に、細胞を50mMトリス/ HCl pH 7.5(Tris)で3回洗浄し、0.5mg/mlのジアミノベンジジン、Tris中 0. 015%(vol/vol)のH2O2とともにRTで2分間インキュベートし、蒸留水で2回洗 浄し、次いで風乾するかまたはAquatex(Merck社)中にカバーした。対照として 、一次抗体を省略し、その外は同様に培養物を処理した。これらの条件下で特異 的な染色は観察されなかった。いくつかの実験で、核をマイヤーのヘマラムで対 比染色を行って、新皮質培養物中の非ニューロン細胞の比率を測定した(5日後 で1%未満であった)。 精製方法。 一般的な製剤の場合、3〜5l(7)MCM(−70℃で貯蔵されている)を、連続して 振盪しながら水浴(37℃)中で注意深く融解させ、次に直ちに4℃にし、分離用 Q-Sepharoseカラム〔ベッド容積300ml(Pharmacia/LKB 社,ドイツ,Freiburg 所在〕を約15cm/hの流速で通過させた。捕捉された物質を2ステップの塩勾配 液(それぞれ50mMトリス/HCl pH 7.4中の0.6M NaCl 1lおよび1.2M NaCl 1l )で溶離して10mlづつの画分を収集した。神経栄養性活性を有する画分は 1.2M NaClで溶離され(“Q-Sepharose-Pool”)、次いで Milli Q水に対して透析した 。全透析ステップに、分子量カットオフが2000のバッグ(Spectra/Por6透析チ ューブ;ドイツ,ハイデルベルク所在のServa社)を使用した。凍結乾燥を行った 後、得られたタンパク質のペレットをNaAc緩衝液A(50mMの酢酸ナトリウムpH 6 .0、70mMのNaCl、8Mの尿素)中に再び懸濁させ、4℃で一夜貯蔵し、濾過し( 0.22μm)、次いで8M尿素(超純粋製品;米国,20877 メリーランド州,ゲイ サーズバーグ所在の BRL,Life Technologies Inc.)の存在下、Mono Q(5/5 )カラム(Pharmacia/LKB)のクロマトグラフィーに再度付した。捕捉された物質 を、50mM NaAc pH 6.0/8M尿素中0.07M NaClから 1.4M NaClまでの範囲の塩化 ナトリウム直線勾配液を用い1ml/min の流量で溶離した。活性画分(各々1ml )を、0.8Mを超える塩濃度のNaCl溶液で独占的に溶離し、合し(“Mono Q-Pool ”)次いで Milli Q水に対して透析した。凍結乾燥した Mono Q-Poolを、4Mグ アニジウム塩酸(超純粋製品; BRL,Life Technologies Inc.)を含有する50mM トリス/HCl pH 7.4の 500μl中に再度懸濁させ、次に4℃で一夜インキュベー トした後、同じ緩衝液と平衡化させたSuperose6(30/10)カラム(Pharmacia/ LKB)に注入した。試料は流量 0.2ml/min でクロマトグラフィーに付し、 0.6ml づつの画分を収集した。神経栄養性活性の Kavを算出するのに用いたVO(デキス トランブルーの溶離容積)およびVcの値はそれぞれ 7.2mlと24.0mlであった。 グリコサミノグリカン:リアーゼによる処理。 等しい量のQ-Sepharose-Poolを、(i)コンドロイチナーゼ緩衝液(CB,50mM トリス/HCl pH 7.3、 50mM NaAc、0.01%BSA)単独、(ii)6mUの無プロテアー ゼコンドロイチナーゼ ABC/mgタンパク 質含有CB(Seikagaku Kogyo Co.Ltd.,日本国東京)、(iii)6mUの無プロテアー ゼコンドロイチナーゼAC/mgタンパク質含有CB(Seikagaku)、(iv)ヘパリチナ ーゼ緩衝液(HB,CB中20mMのCaAc含有)単独、および(v) 0.2mUの無プロテア ーゼヘパリチナーゼ/mgタンパク質含有HB(Seikagaku)とともに、それぞれi,i iおよびiiiの場合37℃で4時間またはivとvの場合42℃で4時間インキュベート した。生物検定を行う前に、グリコサミノグリカン(GAG)リアーゼ類を除くため 、各試料は、50mMトリス/HCl pH 7.4中 0.1Mから 2.0MまでのNaClの範囲の塩 化ナトリウムの直線勾配液を用いるMono Q(5/5)のクロマトグラフィーに再 度付した。1mlづつの画分を集めて生存活性について試験した。 トリプシンによるビグリカンの消化。 同量の凍結乾燥ビグリカン(各々約 160TU/mlに相当する)を50μlのDMEM中 に再度懸濁させ、次に以下の処理のうち一つに付した。すなわち(i)37℃で4 時間貯蔵し;(ii)200 BAEE単位/mlのトリプシン(Sigma社;1000U/ml DMEM の貯蔵原液由来)、(iii)2,000 BAEE阻害単位/mlのダイズトリプシンインヒビ ター(Sigma社;10,000U/ml DMEMの貯蔵原液由来)、または(iv)トリプシン+ インヒビターを添加し;次いで37℃で4時間インキュベートする処理である。ト リプシンのみで処理した試料には次いで2,000U/mlのダイズトリプシンインヒ ビターを加えた。各処理を終ってから、試料をDMEMによって1mlまで希釈し、濾 過し、次いで神経栄養性活性について試験した。 分析法。 ウシγ−グロブリン(ドイツ、ミュンヘン所在のBio-Rad Laboratories社)を 標準として用い、Bradfordの1976年の文献に記載の方法にしたがってタンパク質 を測定した。 Laemmliの1970年の文献に 記載されているようにしてSDS-PAGEを実施した。試料はすべて、100mMのジチオ トレイトール(Boehringer Mannheim社)を含有する SDS−試料緩衝液中で95℃に て3分間変性し、直ちに氷上で冷却した。勾配スラブゲル(3〜10%wt/vol ア クリルアミド/ビスアクリルアミド)を、Protean II装置(BioRad社)にて、RT で一夜(15〜16時間)100Vで電気泳動を行わせ、次に銀で染色した(Ansogeの198 5年の文献)。 NH2末端の配列を決定し、アミノ酸組成を分析するため、Superose 6のカラム から溶離させた活性物質 100μgを、 10mU/μgの無プロテアーゼコンドロイ チナーゼABC(Seikagaku)を用い、CB緩衝液(上記参照)中で37℃にて4時間消 化した。12% SDS−ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動を行った後、タンパク 質を、不連続緩衝液系(アノード緩衝液I: 0.3Mトリス/20%メタノール;ア ノード緩衝液II: 0.025Mトリス/20%メタノール;カソード緩衝液:0.04Mε −アミノカプリオン酸(ε−aminocaprionic acid)/20%メタノール)でセミド ライブロッティング(Kyhse-Andersenの1984年の文献)に付して、 Immobilon-P 膜(米国,マサチューセッツ州,ブレッドフォード所在の Millipore社)に移し た。ゲルをカソード緩衝液中でRTにて15分間平衡化した後、Nova Blot Semi Dry 装置(Pharmacia/LKB 社)を用い、 0.8mA/cm2で2時間、転移を行った。配列を 決定する前にコアタンパク質の位置決めを行うため、膜を、50%メタノール/10 %酢酸中 0.1%クーマシーR250(Serva社)で15分間染色し次いで45%メタノール /7%酢酸で脱色した。配列分析は、Applied Biosystems社(ドイツ,Weitersta dt所在)から入手したmodel 476 pulse liquide protein sequenatorを用いファ ーストブロット(fast blot)のプロトコルにしたがって行った。 試験結果。 脳脊髄膜細胞のならし培地(MCM)は、培養されているラット胎児の新皮質ニュ ーロンの生存を保持する。 ラットの新皮質(E15)由来の一次ニューロンを、 PDL/LN−基質(substrate )上で MCMまたはN2とともに培養した。プレーティングしてから18時間後、付 着した細胞の数は、両方の培地の条件下てほとんど同じであった(表1)。N2 内で培養したニューロンは2日間以内に死に始め、プレーティング後5日間でこ れら細胞の10%未満が生存していた。一方、 MCM中の新皮質ニューロンは集団全 体が5日目でも生育可能であった。 MCMは投与量依存性方式でニューロンの生存 を促進し(図1)、ニューロンの半数最大生存は約10μg/mlのタンパク質濃度 で達成された。 精製法 MCM中に生存する神経栄養性要素は、次の3ステップで均質に精製することが できた。すなわち(i)最初の Q-Sepharoseクロマトグラフィー;(ii)8Mの 尿素存在下でのMono Qによる再クロマトグラフィー;および(iii)4Mグアニ ジニウム塩酸の存在下でのSuperose 6による最後のゲル濾過;である。 ステップI。 図2に示す実験では、 3.3lの MCMを、分離用 Q-Sepharoseアニオン交換カラ ムに通過させた。得られた通過液には生物活性が全く残っていなかった。捕捉さ れた物質は、2テップの塩勾配液(それぞれ 0.6Mと 1.2MのNaCl)で溶離し、 各画分をタンパク質濃度と神経栄養性活性について検定した。神経栄養性活性は 1.2Mの塩化ナトリウムによって溶離され(図2、表2)、次いで活性画分(127 〜138)をプールした(“Q-Sepharose-Pool”)。 ステップII。 上記Q-Sepharose-Poolを、8Mの尿素の存在下pH 6.0で、Mono Q のクロマトグラフィーに再び付した。神経栄養性活性が約 0.9MのNaClにより単 一のタンパク質ピークで溶出したが(図3)、このことは、強い解離条件下でも 、神経栄養性活性は高い負の電荷を有する分子と会合したまゝであることを示し ている。SDS-PAGEは、この段階で精製が著しく進行したことを示した(図5)。 ステップIII。 最後の精製ステップを、4Mのグアニジニウム塩酸を用いる、Superose 6のカ ラムのゲル濾過で行った。このカオトロピック試薬(Chaotropic agent)は分子 間の非共有結合を妨害する。神経栄養性活性はMr>669kDaに対応する0.21の Kav において溶出した(図4)。この精製段階で SDSゲルを銀で染色したところ、約 220〜340kDaの分子量の範囲でスミアー(smear)として泳動する単一のタンパク 質バンドが現われた(図5)。1lの MCM当り 150μgのタンパク質が最初の活 性の 1.6%の最終回収率で得られた(表2)。 ゲル濾過を非変性条件下で行ったところ、神経栄養性活性は空隙部分(void vo lume)に溶出した。これは恐らくホモまたはヘテロフィリック(heterophilic) の分子相互作用によって凝集体が生成したためであろう。 精製分子の特性決定。 神経栄養性活性を単離する精製方法では、カオトロピック試薬の存在下で大き な流体力学的直径を有しかつ高い負の電荷を有する分子に注目した。ゲル濾過の 後に得た活性物質を SDSゲル電気泳動に付したところ、 220〜340kDaの範囲に単 一の広いタンパク質バンドが出現した。これらの生化学的特性はプロテオグリカ ンにとって典型的な特性である。Q-Sepharose-Poolを各種のグリコサミノグリカ ンリアーゼ類で消化すると(実験の詳細は材料と方法の項参照)、コンドロイチ ナーゼ ABCとACによる処置によって、神経栄養性活性 が対照の10%まで劇的に低下したことを示したが、一方ヘパリチナーゼによる処 置はニューロンの生存に対して有意な作用はなかった。これらの実験から予想さ れるように、精製分子は実際にコンドロイチナーゼに対しては鋭敏であったが、 ヘパリチナーゼの消化に対しては鋭敏でなかった。すなわち SDS−ポリアクリル アミドゲル上の広いタンパク質のスミアーが、コンドロイチナーゼ ABCとACの両 者による消化によって約 50kDaのシャープなコアタンパク質のバンドに変換する が、ヘパリチナーゼによる処理によって影響を受けなかった。コンドロイチナー ゼ ABCとAC(後者の酵素はL−イズロン酸を含有するデルマタン硫酸を分解しな い)で処理すると同じ大きさのコアタンパク質が得られるので、コンドロイチン 硫酸の連鎖で独占的に置換されていない場合は、神経栄養性プロテオグリカンが 主流のようである。 神経栄養性CSPGの最初の29個のN末端残基のアミノ酸の配列決定を行ったとこ ろ、ラット平滑筋細胞のビグリカンのcDNA(Dreherらの1990年の文献)から推定 されるそれぞれのアミノ酸配列と類似していることが分かった。5位と11位のセ リン残基が修飾されていることが見出され、そしてそれらは、他のコンドロイチ ン/デルマタ 定されているグリコシル化セリンと非常に類似した挙動を示した。さらに、全ア ミノ酸の組成を分析した結果、ラットビグリカンのcDNA配列から予測されるロイ シン残基の比率15.2%とよく一致した高い比率のロイシン残基(17.6%、データ は提示していない)を示した。グリコサミノグリカンリアーゼによる処理の前後 の精製CSPGのゲル電気泳動移動度は、非神経組織由来の“標準”のビグリカン( 例えばHauserらの1992年の文献)の挙動と類似していた。 精製ビグリカンの生物活性。 図6は、培養胎児新皮質ニューロンの生存に対する精製神経栄養性CSPG/ビグ リカンの効果を示す。ビグリカンの神経栄養性活性は投与量依存性である(図6 E、表3)。ニューロンの半数最大生存は、約 200ng/ウエルの飽和タンパク質 濃度にて、約 100ngビグリカン/ウエルの濃度で保持される。したがって有効濃 度は、10-8Mの半数最大作用の場合ナノモルの範囲内である。脳脊髄膜細胞の精 製ビグリカンの神経栄養性活性をウシの軟骨から単離したビグリカンの活性と比 較したところ、両者の投与量−反応曲線は実質的に同一であった(図7)。 ビグリカンが新皮質ニューロンに対する接着性基質であるかどうかを試験する ため、この発明の発明者らは、微小ウエル遠心分離検定を実施して細胞−基質の 相互作用の強さを推定した(材料と方法の項参照)。細胞がU型ウエルの基質に 強く接着したとき、遠心分離の後に生成したペレットの大きさが細胞接着特性を 欠いている基質と比べて大きい。この検定法での基質として、ビグリカンは、接 着作用を示さないかまたはラミニンが促進するニューロン−基質の接着を妨害し なかったが、これはビグリカンの観察された生存促進作用は、細胞−基質の接着 の改変が原因ではないことを示している。 ニューロン−基質の接着の遠心分離検定。 Uウエル微量滴定プレートを、 MCMおよび/またはラミニン(LN)から精製し たビグリカン(BGN)を指定の濃度で用いてコートした。1ウエル当り5×104 の ニューロンをプレートし、直ちに 250gで2分間遠心分離した。生成したプレー トの直径はそれぞれの基質の接着性を反映している。 考察。 この発明の発明者らは、培養ラット新皮質ニューロンの生存を有 意に持続する神経栄養性プロテオグリカンを MCMから精製した。精製の過程で、 強い変性条件を採用して、潜在的な非共有結合分子を解離させた。その結果、生 物活性が、8Mの尿素の存在下でもMono Qから高い塩濃度で独占的に溶離され、 さらに、4Mグアニジニウム塩酸の存在下、Superose 6から大きな流体力学的直 径を有する分子として回収された。Superose 6の活性画分の銀で染色した3〜10 % SDS−ゲルは見掛けの大きさが約300kDaの単一の広い糖タンパク質バンドの泳 動を示した。コンドロイチナーゼ ABCとACによる処理によって神経栄養性生存活 性が90%減少したがヘパリチナーゼによる処理では減少しなかった。同様に、精 製分子の電気泳動の移動度は、コンドロイチナーゼ ABCまたはACによる消化の後 、約300kDaから約 50kDaのコアタンパク質バンドへと変化し、したがってその精 製分子がコンドロイチン硫酸プロテオグリカンであることを示している。 精製コンドロイチン硫酸プロテオグリカンの SDS−ポリアクリルアミドゲル中 の電気泳動移動度は、小さなプロテオグリカンであるヒトの骨およびウシの軟骨 のビグリカンとデコリンのそれと似ている(Fisherらの1987年の文献; Rosenbe rgらの1985年の文献)。成熟ビグリカンとデコリンはそれぞれ見掛のMrが約300k Daと約100kDaで差があるが(Rosenbergらの1985年の文献)、そのコアタンパク質 は大きさが非常によく似ている(約45〜50kDa ; Hausserらの1992の文献;Fish erらの1987年の文献; Rosenbergらの1985年の文献)。しかし両タンパク質のア ミノ末端の配列は非常に異なっている(Dreherらの1990年の文献;AsundiとDreh erの1992年の文献)。脳脊髄膜細胞由来の精製神経栄養性コンドロイチン硫酸プ ロテオグリカンのコアタンパク質の一部の配列決定を行ったところラットのビグ リカンと同じであったがデコリンとは同じでなかった。 精製ラットビグリカンはナノモルの濃度で生物学的に活性である(半数最大活 性、約10-8M、図6、表2参照)。ビグリカンの活性は、例えば NGFまたはBDNF のような神経栄養性ペプチド成長因子(半数最大活性が少なくとも3×10-11 M ; Bardeらの1982年の文献)に通常みられる活性より低い。 ビグリカンは、分化性間葉の内皮細胞および上皮細胞を含む各種の特殊細胞の タイプの細胞表面または周囲空間に配置された、生物学的機能が未知の進化の過 程で高度に保存された分子である(Biancoらの1990年の文献)。ビグリカンの発 現は、組織が分化しおよび成長プレート(growth plate)が生成する部位で優勢 であるから、細胞を調節する役割が示唆されている(Biancoらの1990年の文献) 。さらにビグリカンのコアタンパク質は、ショウジョウバエ(Drosophila)中の 形態調節タンパク質のトール(toll)とカオプチン(chaoptin)ようなな各種の タンパク質中に見られ(Hashimotoらの1988年の文献;Reinkeらの1988年の文献) 、かつ進化の過程でタンパク質−タンパク質、タンパク質−細胞および細胞−細 胞の相互作用を中介するのに利用されるようである(patthyの1987年の文献)11 個の高ロイシン反復モチーフが特徴である。ここで述べるビグリカンの神経栄養 性活性は、ビグリカンの細胞調節機能と、神経細胞中でのこのタンパク質の機能 を示す(実施例2参照)。 新皮質培養物に TGF−βを添加しても(10ng/mlまで)、ニューロンの生存に は影響せずまたビグリカンの神経栄養性活性も阻害しないが、代わりに、培養神 経膠星状細胞でのビグリカンの発現をわずかに変化させる。実施例2 ビグリカンを腹内側淡蒼球に注射した後の学習の促進。 材料と方法。 動物。 実験はその開始時に体重が 250〜320 gの 205頭の雄のウイスターラットで実 施した。これらのラットは、1ケージ当り2頭づつ入れ、12時間:12時間の明所 :暗所サイクルで餌と水は連続的に利用できるようにした。試験はすべて 10.00 と 16.00時の間のラットの昼間期に行った。 手術と回復。 動物は手術を行う前24時間、絶食させた。Equithesinで麻酔し(3.0〜4.0 ml/ kg)、 193頭のラットに、注射部位の 1.5mm上方を目標としてステンレス鋼製カ ニューレ(22ゲージ;ドイツのBehr Labor-TechniK社)を片側に挿入した(50% 右側挿入;50%左側挿入)。注射の位置座標は、ブレグマの 1.3mm後方、中心線 に対して横方向に 2.8mmおよび頭蓋骨表面の下方 7.0mmであった(PaxinosとWats onの1986年の文献)。ガイドカニューレには先端を越えて 0.1mm延びるスタイレ ットを入れた。カニューレは、アクリルセメントとステンレス鋼製のねじによっ て頭蓋骨に取付けた。12頭のラットに、麻酔、イアバー(earbar)の挿入および 頭皮切開からなるみせかけの手術(shamoperation)を行った。手術後、動物は行 動試験をを開始する前少なくとも1週間回復させた。この期間中、ラットは毎日 取出して重量を測定した。行動試験を開始した時点で、すべての動物がその手術 前の体重の少なくとも90%まで回復していた。 医薬と注射法 ウンデカペプチドのサブスタンスP(SP;分子量1347.0)をPeninsula Labs社 (米国)から購入し、ほかの場所に記載されている方 の文献)。用いたSPの投与量は0.74pmol(1ng)であった。この投与量は、試験 注射後の回避学習を促進し、かつ NBM領域に注射する と、場所嗜好性タスクの補強剤として働くことが繰返しみとめられているので( Hustonら1993年の文献)、この実験の基準として利用した。ビグリカンは、実施 例1に詳細に記載されているようにして、無血清ラット脳脊髄膜ならし培地から 精製した。注射部位は腹内側淡蒼球内であったが、記憶(HaganとMorrisの1988年 の文献)と補強プロセス〔Hustonらの1993年の文献(総説)〕に関連しているヌ クレウス・バサリス・マグノセルラリス(nucleus basalis magnocellularis)( NBM)が含まれている。この NBMは、上行コリン性前脳系の主な起源であり(Heim erとAlheidの1991年の文献)かついくつもの成長因子の神経栄養性作用の標的で ある。各実験で、一群の動物を、 NBM領域に注射すると記憶を促進し、補強作用 を示すことがすでに分かっている(Hustonらの1993年の文献)ノイロキニンのサ ブスタンスP(SP)の基準投与量で処理した。頭蓋内注射の場合、精製プロテオ グリカンのビグリカンはリン酸緩衝食塩水(PBS、pH 7.6)で希釈した。対照の動 物にはこの希釈担体を投与した。これら溶液はすべて、偏りを除くためブライン ド記号を付けた。頭蓋内注射は、手を拘束されたラットに、ガイドカニューレの 先端より 1.5mm下方の深さまで28ゲージの注射カニューレ(Behr Labor-Technik ,ドイツ)を挿入し、 0.5μl/動物の容積で27秒間かけて行った(50%内側注 射;50%左側注射)。注射カニューレは、ポリエチレンのチューブによって、微 量注射器ポンプ(Harvard Apparatus Compact Infusion Pump)で駆動される5μ lハミルトン(Hamilton)注射器に接続した。注射を完了したとき、注射カニュ ーレはさらに60秒間所定の位置に残しておき、物質をカニューレの先端から拡散 させてカニューレを取外している間に液体が流出するのを回避する。注射カニュ ーレを取外した後、別の溶液0.5μlを放出して、起ることがある詰まりを検査 した。 装置。 行動試験は、薄暗い頭上照明を設けた防音実験室内で行った。マスキングノイ ズ(masking noise)(68dB)をノイズ発生器で加えた。実験全体を通じて動物 の行動をビデオ装置で記録した。1回実施アップヒル回避学習(one-trial uphil l avoidance learning)に用 の文献)。要約すると、この装置は、 35cmの高さの壁を有し、20°の角度で傾 斜した灰色の Plexiglas製の箱からなっている。その箱の50×50cmの床はメッシ ュ網でカバーされ、動物が容易に足がかりを得られるようになっている。動物の 尾に取付けられかつショック発生器に接続された双極リング電極を通じて電気シ ョック(1.3mA、1秒間)を送った。 場所嗜好条件づけを“コラル法(Corral法)”すなわち条件付け場所嗜好(CPP) パラダイムの改良変形を用いて行った。コラル法およびモルヒネとサブスタンス Pによるその確認は別のところに詳細に 献)。要約すると、使用したコラル装置は、白壁(高さ45cm)を備えた円形の開 放フィールド(直径83cm)であった。各種の眼に見えて触知できるキュー(cue) は上記開放フィールド内にはない。空間定位を、開放フィールドのまわりの上方 の観察室内に設けられた明瞭なキューによって与えた。処理中、開放フィールド はPlexiglsのバリヤーで同じ大きさの4区分(すなわち“閉鎖コラル”)に分割し た。コラル法の重要な特徴は、通常の場所嗜好タスク(Carrらの1989年の文献; Swerdlowらの1989年の文献、総説)の場合と異なり、条件付けを行う前に選択の 偏りを確認する必要がないことである。4個のコラルを用いる場合、有意な条件 付けを行うには、偏よりのない二室を設けた場合(Van de Kooyの1987年の文献) の50%ではな くて25%のベースラインに加える時間の増加が必要である。さらに、コラル法の 場合、環境条件は、開放コラルの特定の4区分に対する有意なベースラインの偏 りを防止するように容易に配置される。 実験1:訓練実施後、 NBM領域にビグリカンを注射することのアップヒル回避行 動に対する効果。 この実験1で、動物は、1.3,2.1,2.6,4.1,5.2,13.0,130.0および1300.0 nmolの投与量のビグリカン(BG)または希釈担体(PBS)を頭蓋内に注射された。 さらにSPを0.74pmolの基準投与量で投与した。この投与量は、以前の実験でアッ プヒル回避行動を高めることがみとめられていた(Kafetzopoulosらの1986年の文 献;Gerhardtらの1992年の文献)。一群当りの動物の数は、9〜22頭の範囲であ った。溶液は、アップヒル回避タスクの訓練実施を行った後ただちに NBM領域に 注射した。実験は3日間連続して行った。各ラットはアップヒルパラダイム内で 習慣付けを実施しなければならなかった(1日目)が、その日の中に、ラットは 尾の電極を取り付けられ、次にその鼻をベースに向けて傾いた箱の中心に置かれ た。“アップヒル反応”すなわち負の走地性行動は傾いた面の頂部に向かって回 転することからなる行動である。この回転反応は、尾のベースと一方の前足で形 成される水平面によって形成される方向に対して動物の位置が少なくとも90°変 化すると直ちに完了すると定義した。訓練実施中(2日目)、ラットはアップヒ ル反応を起こすと一回、尾にショックを受けた。ショックを受けた後、ラットは 箱から取り出し、尾の電極を外し、次いでSP(0.74pmol)、BG(投与量の範囲 1 .3〜1300.0nmol)または PBSを頭蓋内に注射した。次いで動物をそのホームケー ジに戻した。アップヒル反応の保持を、ショクを与えてから24時間後に測定した 。ラットの尾に電極を取り付け、その鼻を底部に向けて傾けて 180秒まで増大さ せた。 ウイルコクスンの順位和検定法を用いて、訓練と保持実施中に記録された各群 の増大潜伏期間(step up latency)と比較した。マン・ホイトニーU検定を行っ て、保持実施の増大潜伏期間について群間の差を検定した。報告されているp値 はSP群については片側であり、BG群については両側である。保持潜伏期間の次の 記述分析で、潜伏期間の範疇(短かい、<60秒;中位、60〜120 秒;長い> 120 秒)の各群からのラットの百分率を求めた。 実験2:訓練実施後ビグリカンの、保持行動に対する順向効果の検定、およびプ ロテオグリカンの補強効果の検定。 実験2では、保持実施中の行動に対する、保持実施後のビグリカンの起りうる 順向効果の検定を行い、さらに、アップヒル回避タスクをコラル法と組合わせて 、ビグリカンの起りうる補強効果を評価した。訓練実施後、ただちに NBM領域に 、2種の投与量のビグリカン(2.6nmolと130.0mol)または担体(PBS)を投与された 群を、実験1に記載したようにしてアップヒルタスクについて検定した。対照群 には、みせかけ手術群(SHAM)、ビグリカン2.6nmol 5時間遅延注射群(BG 2.6 -del)および 2.6nmolと 130.0nmolのビグリカンまたは担体を投与されたが尾の ショックなしのショックなしの対照(BG 2.6-ns; BG 130.O-ns;PBS-ns)が含ま れている。アップヒルタスクの訓練に続いて、ビグリカンを投与されたが尾のシ ョックなしの動物を、コラル装置内で0.74pmolのSPを注射された群とともに試験 した。このSP投与量は、 NBMに注射後、明確に補強を行うことが 理群当りの動物の数は7〜19の範囲であった。アップヒル回避および条件付け場 所嗜好のタスクでのラットの行動に対するビグリカンとSPの効果を、2種のパラ ダイムを以下のように組合わせることに よって試験した。すなわち各ラットは、実験1に記載されているようにアップヒ ルパラダイムの習慣づけ(1日目)と訓練実施(2日目)を受けなければならな かった。尾のショックを受けた後(尾のショックを受けないショックなしの対照 を除く)、被検体は直ちに装置から取出され、 BG 2.6,BG 130.0,PBS,BG 2.6 -ns,BG 130.0-nsまたはPBS-nsを注射される。残りの動物(SHAMとBG 2.6-del) は約2分間保持した。注射された後、動物を直ちにそのホームケージに戻した。 ショックを与えてから5分後に、BG 2.6-del群の動物は 2.6nmolのビグリカンを 注射された。ビグリカン、SPまたは担体を投与されたが尾のショックを受けなか った動物を、単一の15分間条件付け実施(処理コラルは各群内で釣合いをとり、 コラルの帰属は無作為である)を行うためコラル装置の制限された4区分のなか の一つに入れた。SPまたはビグリカンによる処理の自然行動に対する急性効果を 判定するため、条件付け実施中の行動を詳細に分析した。以下の行動事象の持続 期間と頻度を記録した(詳細については する前進後退運動;リアリング−前足を空中におくかまたは壁にあてて後足で立 つ;グルーミング−体の表面をなめたり、かいたり、かむ;である。コラル内で の処理実施の後、動物をそのホームケージに戻した。アップヒル反応の保持を実 験1に記載したようにショックを与えてから24時間後に測定した。保持実施に続 いて、ショックを与えなかった群のラットはコラル装置内で条件付け場所嗜好の 試験を受けなければならなかった。この目的を達成するため、Plexiglasのバリ ヤーを取り外し、ラットが開放コラルのすべての領域に自由に15分間入れるよう にした。 アップヒル回避タスクでの訓練中と保持実施中に記録された増大潜伏期の統計 的分析は、報告したすべてのp値が片側の値であるこ とを除いて実験1で述べたのと同一であった。閉じたコラル内での15分間の観察 期間中の行動事象の持続期間と頻度の群間の差は、マン・ホイトニーのU検定( 両側)で評価した。開放コラル内の医薬処理の補強効果は、試験口に処理コラル 内ですごした時間の長さの増大で示される、場所嗜好行動の発生によって示した 。全試験期間の15分間および5分間づつの三つの時間ブロック(0−5分、6− 10分、11−15分)において処理コラル中ですごした時間の長さの群間の差を、マ ン・ホイトニーのU検定(SP群、片側;ビグリカン群、両側)で評価した。条件 付け場所嗜好の試験中、4区分に入った頻度については記述分析(平均値±SEM) を行った。 実験結果。 実験1:訓練実施後 NBMにビグリカンを注射したことのアップヒル回避行動に 対する効果。訓練実施での処理群の増大潜伏期の中央値は1.2(1.0〜2.0)〜6.9( 4.9〜11.0)秒〔中央値と IQR〕の範囲内であった。訓練と保持の潜伏期の比較 をすると、すべての群がタスクを学習した(対応するpは<0.05)ことを示して いる。SPおよび各種投与量のビグリカンの、保持行動に対する効果を図9に示す 。訓練実施後0.74pmolのSP値を NBMに注射すると、アップヒル回避タスクの学習 が容易になった。このことは増大までの潜伏期(p=0.014)の増大および PBSで 処理された動物と比べて保持のスコアの分布が異なっていることに反映されてい る。処理によって、 PBS注射に比べて、40%を超えるラットに中位と長い潜伏期 の範疇へのシフトが起こった。また訓練実施後ビグリカンを NBM領域に注射した ことによって、アップヒル回避タスクの行動が容易になり、そしてこの促進は投 与量依存性のようであった。担体を注射されたラットに比べて、BG 2.1nmolおよ びBG 2.6nmol注射群は、増大潜伏期が有意に長かった(BG 2.1nmol、p=0.006 ;BG 2.6nmol、p=0.003) ;上記2群の53%以上の動物が60秒以内に増大できなかった。回避行動に対する 容易化の効果は 4.1nmolのビグリカンで処理したラットの場合弱くなった(BG 4. 1nmol、p=0.055)。ビグリカンの高い投与量(5.2〜1300.0nmol)と低い投与量(1 .3nmol)は回避行動に影響しなかった(対応するpは 0.159〜0.622 である)。 2.1nmolまたは 2.6nmolのビグリカンで処理したラットはSPを注射したラットと 差がなかった(増大潜伏期:対応するpは>0.15)。 実験2:訓練実施後ビグリカンの、保持行動に対する順向効果の検定およびプ ロテオグリカンの補強強化の検定。訓練実施での処理群の増大潜伏期の中央値は 、1.5(1.2〜4.5)〜4.6(3.1〜6.1)秒の範囲内であった(中央値とIQR)。訓練と保 持の値を比較すると、回転反応の後ショックを受けた群だけがタスクを学習した ことを示している(pは 0.014〜0.023 ;ショックなしの群のpは>0.05)。異 なる処理群の保持試験潜伏期を比較すると、BG 2.6nmolによる処理群が優れた回 避を示した。これは増大までの潜伏期の増大(p=0.038 ;図10)および PBS− 担体で処理された動物と比べて保持のスコアの分布が異なっていることに反映さ れている。この処理によって、 PBS注射に比べて、61%以上のラットに、中位お よび長い潜伏期へのシフトが起こった。これとは対照的に、高い投与量のビグリ カンは回避行動に影響しなかった(BG 130nmol、p=0.112)。ビグリカンを 2.6n molの投与量で訓練を終ってから35時間後に注射したところ、タスクの行動はも はや容易にならなかった。後者の動物のラットは、担体を注射された対照と差が なく(p=0.385)、かつショックを与えた後ただちに 2.6nmolのビグリカンを投 与されたラットより増大潜伏期が短かった(p=0.010)。このことは、ビグリカ ンの上記容易化効果が、保持試験期間中の行動に対して長く続く順向効果が原因 ではなかったことを示している。みせかけ手術を行 った動物は担体注射対照と差がなかったが(p=0.368)、これはカニューレの挿 入および/または担体の注射が行動に影響しなかったことを示唆している。 2.6 nmolまたは 130.0nmolのビグリカンを投与されたがショックを与えられなかった ラットの増大潜伏期はショックなしの対照と差がなかった(BG 2.6-ns、p=0.50 0 ; BG 130-ns、p=0.185)。ショックなし群の動物は、ショックを組合わせて ビグリカンまたは担体を投与されているそれぞれの群と比べて行動が減少してい ることを示した(pは0.0002〜0.008)。したがって、ビグリカンの行動促進効果 は、覚醒および/または注意の増大または有害な副作用のような非特異的な効果 だけが原因であるとは考えられない。 図4は、コラル装置の制限された4区分内での条件付け実施中に記録された行 動事象の持続期間(t)と頻度(f)を示す。歩行運動の頻度は、 2.6nmolのBG を NBMに注射されたラットの場合、増大した(p=0.042)。さらに 2.6nmolのBG を注射されたラットはグルーミングの時間が減少した(p=0.088)。これに対し 、 130.0nmolのBGまたは0.74pmolのSPで処理されたラットは、担体で処理したラ ットと比べて、その行動パターンの持続期間または頻度に差はなかった(対応す るpは>0.100)。図11は、アップヒルタスクの訓練実施後ただちにビグリカン(2 .6nmolもしくは130.0nmol)または担体を投与されたが尾のショックなしのラット または0.74pmolの基準投与量のSPを投与されたラットの、15分間の試験期間中に 処理コラル内ですごした時間の長さを示す。担体で処理されたラットは、開放コ ラルの4区分の各々の中で同等の時間(処理コラル内の時間の約25%)をすごし た。0.74pmolのSPを注射したラットは、担体投与の対照に比べて、処理コラル内 でより多くの時間をすごした(p=0.008)。そしてそのラットの約67%は、試験 中に、開放コラルの4区分 に比べて、処理コラル中で大部分の時間をすごしたということで絶対的なコラル への嗜好を示した。SPで処理したラットが処理コラル内ですごした時間が増大し たのは、6−10分の期間(p=0.009)と11−15分の期間(p=0.011 ;表5)で 最も顕著であった。これに対して、ビグリカンの投与量は、16分間の全観察期間 中(BG 2.6nmol、p=0.248 ;BG 130.0nmol、p=8623)または5分間づつの三 つの時間区分中(BG 2.6nmol:pは 0.112〜0.817 ;BG 130.0nmol:pは 0.418 〜1.000)のラットの嗜好行動に影響しなかった。4区分中に入る数として表した 肉眼で見える歩行活性(gross locomotor activity)はSPまたはビグリカンによ る処理で影響されなかった。4区分中に入った数の平均値(±SEM)は52.0±8.8 〜69.9±6.3 の範囲内であった。さらに、この処理は処理コラル中に入る数に影 響しなかった。各処理群について、参加した約25%が条件付け場所嗜好の試験中 に処理コラルへ入った。 考察。 実験1の結果は、 NBM領域にビグリカンを訓練実施後に注射すると、投与量依 存性の方式で、抑制回避の学習を促進する証拠を提供している。ビグリカンを 2 .1nmolおよび 2.6nmol注射すると保持行動が有意に改善されたが、投与量がこれ より低くても高くても効果がなかった。その上、この実験で明らかになったノイ ロキニンSPの記憶強化効果によって、以前の研究事項(Kafetzopoulosらの1986年 の文献; NagelとHustonの1988年の文献;Gerhardtらの1992年の文献)が確認さ れた。ビグリカンの記憶促進効果が、ペプチド類の行動薬理学の特徴である逆U 字形の投与量−反応関数(Goldの1986年の文献;Koobの1987年の文献、総説)に 反映された。類似の投与量−反応効果は、記憶プロセシングに対するSPの効果に ついてすでに報告されている(Hustonらの1993年の文献)。回避学習についてビ グリカンで得られたこの逆U字形の投与量−反応の関係は、 NBMにおけるプロテ オグリカンの特異的な生理作用を示している。 実験2の結果は、ビグリカンの学習を容易にする効果が、学習実施後、ただち にではなくて5時間後に注射した場合もはや明確でないことを示している。この ことは、保持試験中の行動に対する処理の順向効果が、促進された回避反応が原 因ではなく、かつビグリカンは、記憶痕跡が不安定なために分断的または促進的 な処理を受け易い学習実施後の期間(Martinezらの1983の文献; McGaughの1989 年の文献)に有効であることを示唆している。適用時間に依存している、回避学 習に対する効果が、SPを含めて、いくつもの他の“ニマトロフィン類(mnemotrop hins)”についても報告されている(Nag ューレの挿入および/または担体の NBMへの注射が回避行動を破壊する効果をも っているので(Kafetzopoulosらの1986年の文献; NagelとHustonの1988年の文献 )、ビグリカンとSPの容易化効果は、損傷が誘発した欠損の逆転または減退が原 因であることが示唆されている。しかし本明細書のデータはこの想定を支持して いない。というのは、担体投与の対照が、みせかけの手術の対照に見られるのと 匹敵する試験潜伏期を示したからである。 SPと異なり、ビグリカンは、条件付け場所嗜好/場所嫌悪を評価するのに用い たコラルパラダイムの嗜好行動に影響しなかったが、これはプロテオグリカンが 補強特性も嫌悪特性ももっていないことを示している。したがって、ビグリカン の記憶促進作用は、回避行動を誘発するのに用いた有害なショック+処理の有害 な副作用の“総和”の結果ではないようである(Careyの1987年の文献、考察につ いて)。さらに、閉じたコラル内での条件付け実施中に評価したビグリカンとSP の急性行動の効果は注目する必要がある。SP(0.74pm ol)またはビグリカン(2.1nmolの投与量)を投与されたラットの行動パターン は、 PBS−担体投与の対照と変らなかった。 2.6nmolのビグリカンで処理された ラットは、歩行活性がわずかに増大しかつグルーミング行動が減少する傾向があ ることを示した。これらの行動データは、(a)歩行および/または探索の活性 の変化に伴う処理環境の熟知の増減は、SPに誘発される条件付け場所嗜好が原因 ではなく;そして(b)ビグリカンとSPの両者が、試験行動に対する順向効果に よって、アップヒルタスクの保持の容易化を行わなかったという想定に対する別 の証拠を提供していることを示している。例えばムシモールのように順向効果に よって保持行動に影響を与えることが分かっている医薬は、 NBMに注射すると、 深在性で長く続く行動障害を起こした(NagelとHustonの1988年の文献)。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI C12N 5/10 9162−4B C12N 15/00 ZNAA 15/09 ZNA 9281−4B 5/00 B (72)発明者 ユングハンス,ウルリッヒ ドイツ連邦共和国,デー―40789 モンハ イム,ビルメルスドルファー シュトラー セ 6 (72)発明者 カップラー,ヨアヒム ドイツ連邦共和国,デー―53113 ボン, シューマンシュトラーセ 49 (72)発明者 コープス,アンテェ ドイツ連邦共和国,デー―40211 デュッ セルドルフ,ドュッセルタラー シュトラ ーセ 41 (72)発明者 ハセニェール,リュディガー ドイツ連邦共和国,デー―42115 ブッペ ルトル,サドバシュトラーセ 29 (72)発明者 ハストン,ヨセフ ドイツ連邦共和国,デー―40239 デュッ セルドルフ,グラフーレックーシュトラー セ 70

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.生体内および生体外で、神経突起の増生を促進しおよび/またはニューロ ンの生存を保持するための、配列番号:1の一次アミノ酸構造の一部またはすべ てを有しかつ少なくとも二つのグリコサミノグリカン連鎖が結合されているプロ テオグリカンの使用。 2.プロテオグリカンが哺乳類のビグリカンである請求の範囲1記載の使用。 3.ビグリカンが、図8の変異を有する、アミノ酸配列の配列番号:1で表さ れる請求の範囲2記載の使用。 4.ニューロン細胞の退行を防止しおよび/または神経系を再生するのに用い る治療医薬を製造するための、配列番号:1の一次アミノ酸構造の一部またはす べてを有しかつ少なくとも二つのグリコサミノグリカン連鎖が結合されているプ ロテオグリカンの使用。 5.学習効率と記憶を改善するための、請求の範囲4記載のプロテオグリカン の使用。
JP7528606A 1994-05-09 1994-05-09 ニューロンを保護するためのコンドロイチン硫酸プロテオグリカンの使用 Pending JPH09503001A (ja)

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