【発明の詳細な説明】
ネズミおよびヒトのサーベラス様蛋白およびそれらを含有する組成物
本発明は、サーベラス(cerberus)蛋白ファミリーの新規メンバー、それらを
コードするDNA、ならびにそれらを得る方法に関する。これらの蛋白を用いて
組織および器官における因子の発現および/または組織および器官の分化を誘導
してもよく、特に、神経、内皮および心臓組織の形成、成長、分化、増殖および
/または維持を誘導してもよい。よって、これらの蛋白は、創傷、腫瘍の治療に
おいて、および/または他の組織および器官、例えば表皮、膵臓、肝臓、肺、腎
臓、脳および/または他の組織の形成、成長、分化、増殖および/または維持の
促進および/または抑制において有用でありうる。これらの蛋白は、BMP類の
ごとき他の組織再生および分化因子の活性増強に使用してもよい。当該蛋白は、
発明者によりヒト哺乳動物サーベラス様と称される。
発明の背景
ニューロンならびに関連神経細胞および組織のごとき組織および器官の形成、
増殖、分化および維持に関与する分子の検索は、これらの組織の変性またはダメ
ージを包含する症状の治療に対して莫大な必要性があるので、広範囲にわたって
いる。以前同定されたアフリカツメガエルの胚中の蛋白サーベラスは、頭部の誘
導に関与しているらしい。Bouwmeester et al.,Nature,382:595-601(1996)。
発明の概要
本発明者は、蛋白のサーベラスファミリーの新規哺乳動物のメンバーを見いだ
し、さらに、驚くべきことに、サーベラス蛋白ファミリーのメンバーが、ニュー
ロンおよび/またはSchwann細胞グリア細胞および星状細胞のごとき関連神経細
胞および組織の形成、成長、増殖、分化、維持の促進および/または抑制を誘導
しうることを見いだした。したがって、本発明は、ニューロンおよび/またはSc
hwann
細胞グリア細胞および星状細胞のごとき関連神経細胞および組織の形成方法を提
供し、該方法は、サーベラス蛋白ファミリーのメンバーである少なくとも1種の
蛋白を含む組成物を前駆細胞に投与することを含む。本発明は、サーベラスと命
名された蛋白のファミリーに関し、それらはは9個のシステイン残基のパターン
を有する新規蛋白であり、胚に存在する。アフリカツメガエルにおいて、サーベ
ラスmRNAは受精卵中にて低レベルで発現され、接合体転写物が初期原腸胚に
おいて蓄積し始める。原腸形成および神経胚形成期間中、発現は継続するが、神
経胚形成期間中に発現は低下する。重要なことに、サーベラスの発現は、コーデ
ィン(chordin)の発現から約1時間たってから開始し、サーベラスがコーディ
ンシグナルの下流に作用しうることが示唆される。形成体のサーベラスドメイン
は大部分の形成体前部細胞のリーディングエッジを含んでおり、側中部胚葉中に
伸長している。リーディングエッジは肝臓、膵臓および前腸をそのミッドライン
に形成し、より側方の領域は発達の後期段階において心臓中胚葉を生じる。
好ましい具体例において、組成物は、配列番号:2のアミノ酸1、18ないし
24、41、85ないし91、または162から開始し、アミノ酸241または
272で終了するアミノ酸配列;あるいは配列番号:8のアミノ酸1、18ない
し25、41、85ないし91、または162から開始し、アミノ酸241また
は267で終了するアミノ酸配列を有する蛋白を含んでいてもよい。1の具体例
において、本発明方法は、インビボにおいて組成物を患者に投与することを含む
。別法として、本発明方法は、インビトロにおいて組成物を細胞に投与し、ニュ
ーロンおよび/またはSchwann細胞、グリア細胞および星状細胞のごとき関連神
経細胞および組織を回復させることを含む(ついで、それらを患者に投与しても
よい)。
本発明は、サーベラス蛋白ファミリーの新規メンバーをコードする新規DNA
配列も提供する。特別な具体例において、本発明は、ネズミおよびヒトのサーベ
ラスのごとき哺乳動物サーベラス蛋白をコードする新規DNA配列を提供する。
ヌクレオチド配列、およびこれらのDNA配列によりコードされる対応アミノ酸
配列を配列表に示す。詳細には、本発明は、配列番号:1のヌクレオチド58、
109、178、313、319、322、325、328、または541から
開始し、ヌクレオチド780または873で終了するヌクレオチド;配列番号:
7のヌクレオチド1、52、55、58、61、64、67、70、73、12
1、256、259、262、265、268、271、または484から開始
し、ヌクレオチド723または801で終了するヌクレオチド;あるいは配列番
号:2のアミノ酸1、18ないし24、41、85ないし91、または162か
ら開始し、アミノ酸241または272で終了するアミノ酸をコードするヌクレ
オチド;あるいは配列番号:8のアミノ酸1、18ないし25、41、85ない
し91、または162から開始し、アミノ酸241または267で終了するアミ
ノ酸をコードするヌクレオチド、ならびに上記のものから容易に得ることのでき
る上記配列のフラグメントおよび変種であってサーベラス活性を維持しているも
のを包含する。さらに本発明は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条
件下でこれらの配列にハイブリダイゼーションする配列であってサーベラス活性
を示す蛋白をコードしている配列を包含する。
CHO細胞のごとき哺乳動物細胞により発現される呻乳動物サーベラス蛋白は
、種々のN末端を有するサーベラス蛋白の活性種の混在集団として存在する。一
部には、Von Heginjeシグナルペプチド推定アルゴリズムに基づけば、最初の1
7ないし24個のアミノ酸は成熟ペプチド分泌のシグナリングに関与していると
思われる。活性種はシグナルペプチドを含んでいてもよく、配列番号:2または
配列番号:8のアミノ酸残基1、18、19、20、21、22、23、24ま
たは25から開始するアミノ酸配列を含んでいてもよいと考えられる。よって、
活性哺乳動物サーベラス蛋白をコードするDNA配列は、配列番号:1のヌクレ
オチド109、112、115、118、121、124、127または130
から780または873までのヌクレオチド;配列番号:7のヌクレオチド1、
52、55、58、61、64、67、70または73から723または801
までのヌクレオチドを含むDNA配列を包含すると考えられる。したがって、サ
ーベラス様蛋白の活性種は、配列番号:2のアミノ酸1、18、19、20、2
1、22、23、24または25から241または272まで;あるいは配列番
号:
8のアミノ酸1、18、19、20、21、22、23、24または25から2
41または267までを含む蛋白を包含すると考えられる。
さらに本明細書にて説明するように、サーベラスおよびサーベラス様蛋白は細
胞により蛋白分解的にプロセッシングされてさらなる活性種を商事うる。例えば
、開裂される推定蛋白分解プロセッシング部位は配列番号:2または配列番号:
8のアミノ酸37ないし40および82ないし85において見いだされ、典型的
には、それらは式R−X−K/R−Rにより特徴づけられる。よって、活性哺乳
動物サーベラス蛋白をコードするDNA配列は、配列番号:1のヌクレオチド1
78または313からヌクレオチド780または873までのヌクレオチドを含
むDNA配列;および配列番号:7のヌクレオチド121または256からヌク
レオチド723または801までのヌクレオチドを含むDNA配列を包含すると
考えられる。したがって、サーベラス様蛋白のさらなる活性種は、配列番号:2
のアミノ酸41または86から開始し、アミノ酸241または272で終了する
アミノ酸を含む蛋白;あるいは配列番号:8のアミノ酸41または86から開始
し、アミノ酸241または267で終了するアミノ酸を含む蛋白を包含すると考
えられる。
上記配列番号:1および配列番号:2の配列を用いて、ヒトサーベラス様DN
Aおよびアミノ酸配列を単離し、配列決定する。
さらなる具体例において、本発明は、遺伝子調節の変化を必要とする患者にお
いて遺伝子調節を変化させる方法を含み、該方法は、該患者に有効量の上記組成
物を投与することを含む。ニューロン遺伝子の調節の変化は、サーベラス蛋白に
より、骨形態形成蛋白(BMP類)を包含する受容体蛋白の結合を刺激または抑
制することにより行われうる。よって、哺乳動物サーベラスおよびサーベラス様
蛋白ファミリーは、神経、骨、軟骨および他の組織の形成を誘導しうる。哺乳動
物サーベラスおよびサーベラス様蛋白ファミリーは、それらが結合する受容体分
子(BMPファミリーの分子を包含)の活性を抑制、増大させることができ、あ
るいはまたこれらの活性に影響することができる。
他の具体例において、本発明は、発現制御配列に作動可能に連結された上記
DNA分子を含むベクター、ならびにこれらのベクターで形質転換された宿主細
胞を含む。さらなる他の具体例において、本発明は、精製哺乳動物サーベラス蛋
白、新規哺乳動物サーベラス蛋白、および哺乳動物サーベラス蛋白を含有する組
成物の製造方法を含む。これらの方法は、上記のような哺乳動物サーベラス蛋白
をコードするDNA配列で形質転換された宿主細胞を培養し;ついで、培地から
該哺乳動物サーベラス蛋白を回収し精製することを含む。さらに本発明は、上記
方法により製造される精製哺乳動物サーベラスポリペプチド、ならびに上記DN
A配列によりコードされるアミノ酸配列を含む精製哺乳動物サーベラスポリペプ
チドを含む。本発明蛋白は、配列番号:2のアミノ酸1、18、19、20、2
1、22、23、24、25、86、87、88、89、90、91または16
2から開始し、アミノ酸241または272で終了するアミノ酸配列;配列番号
:8のアミノ酸1、18、19、20、21、22、23、24、25、86、
87、88、89、90、91または162から開始し、アミノ酸241または
267で終了するアミノ酸配列;あるいは約20〜30kdの分子量を有する哺
乳動物サーベラス蛋白であって配列番号:2または配列番号:8のアミノ酸配列
に対して高度に相同的なアミノ酸配列を含み、かつ1またはそれ以上の遺伝子の
転写を調節する能力を有する蛋白を含んでいてもよい。活性サーベラス様蛋白の
1の種は、配列番号:2のアミノ酸18から272までのアミノ酸配列を含む成
熟ペプチド;または配列番号:8のアミノ酸18から267までのアミノ酸配列
を含む成熟ペプチドであり、それぞれ、約28.6kDの分子量を有すると考え
られる。活性サーベラス様蛋白のもう1つの種は、配列番号:2のアミノ酸86
ないし91から開始し、アミノ酸272で終了するアミノ酸配列、特に、配列番
号:2のアミノ酸18または90から272までのアミノ酸配列、あるいは配列
番号:8のアミノ酸86ないし91から開始し、アミノ酸267で終了するアミ
ノ酸配列、特に、配列番号:8のアミノ酸18または90から267までのアミ
ノ酸配列を含む開裂されたペプチドである。これらの各蛋白の成熟ポリペプチド
は約20.7kDの分子量を有すると考えられる。配列の説明
配列番号:1は、哺乳動物サーベラスDNA、特に、ネズミのサーベラスDN
Aのヌクレオチド配列である。
配列番号:2は、配列番号:1によりコードされる哺乳動物サーベラス蛋白の
アミノ酸配列である。
配列番号:3から5までは、サーベラスおよびサーベラス様蛋白に対するプロ
ーブのコンセンサスヌクレオチド配列である。
配列番号:6は、ヒトサーベラス様蛋白をコードするゲノムDNA配列である
。「N」は、ヌクレオチド残基がA、C、TまたはGのいずれであってもよいこ
とを示す。
配列番号:7は、ヒトサーベラス様蛋白をコードするcDNA配列である。
配列番号:8は、配列番号:7によりコードされるヒトサーベラス様蛋白のア
ミノ酸配列である。ATCC寄託物の説明
配列番号:1に示す哺乳動物サーベラスコーディング配列を含むpGIMCCerbで
形質転換されたE.coli DH5α株を、12301 Parklawn Drive,Rockville,MD 20852
にあるAmerican Type Culture Collectionに寄託し、ATCC受託番号9834
7を付与された。発明の詳細な説明
本明細書の用語「サーベラス」または「サーベラス様」は、両方とも、サーベ
ラスおよびサーベラス様蛋白を含む蛋白ファミリーを命名するのに用いる。「サ
ーベラスまたはサーベラス様蛋白」は、ネズミもしくはヒトのサーベラス蛋白、
または哺乳動物サーベラス蛋白のC末端部分の高度に保存されたシステインパタ
ーンに対する配列相同性を有する他の蛋白のごとき、哺乳動物のサーベラスおよ
びサーベラス様蛋白をいう。サーベラス蛋白ファミリーの1の特別なメンバーは
、配列番号:2に示すアミノ酸配列を有するネズミサーベラス蛋白、ならびに他
の
種において見いだされるこの蛋白のホモログ;ならびにネズミサーベラスに対し
て構造的および/または機能的に密接に関連した他の蛋白である。サーベラス関
連蛋白は、アフリカツメガエル、およびショウジョウバエ、C.elegans、ゼブラ
フィッシュ、ならびに例えばラット、マウスおよびヒトのようなすべての哺乳動
物を包含する他の種においても存在するとも考えられる。「サーベラスまたはサ
ーベラス様蛋白」は、サーベラス蛋白の変種、例えば、サーベラス活性を保持す
る対立遺伝子変種または突然変異もしくは欠失により誘発された変種、ならびに
サーベラス活性を保持するサーベラス蛋白のフラグメントも包含する。「サーベ
ラスまたはサーベラス様蛋白」は、さらに本明細書にて説明される蛋白を包含す
る、構造的および/または機能的類似性を有する蛋白のファミリーを命名するの
にも用いられる。
本明細書の用語「サーベラスまたはサーベラス様活性」は、本発明の哺乳動物
サーベラス様蛋白により示される1またはそれ以上の活性をいう。詳細には、「
サーベラスまたはサーベラス様活性」は、ニューロンおよび/または脳細胞、Sc
hwann細胞、グリア細胞および星状細胞のごとき関連神経細胞および組織の形成
、成長、増殖、分化、維持の促進および/または抑制を誘導する能力を包含する
。「サーベラスまたはサーベラス様活性」は、OTX2、N−CAM、MASH
、クロマグラニン、およびAP2のごときニューロエンドクリンまたは外胚葉組
織の分子マーカーを誘導する能力、ならびにニューロンおよび/または脳細胞、
Schwann細胞、グリア細胞および星状細胞のごとき関連神経細胞および組織の形
成を誘導する能力をも包含する。さらに「サーベラスまたはサーベラス様活性」
は、リガンドおよびそれらの蛋白受容体の相互作用を調節する能力を包含する。
例えば、「サーベラスまたはサーベラス様活性」は、骨形態形成蛋白(BMP類
)および/またはwnt蛋白ファミリーの1またはそれ以上のメンバーに結合し
、そのことにより、かかる分子の活性を阻害、増大させ、あるいは影響を与える
能力を包含する。さらに「サーベラスまたはサーベラス様活性」は、他の細胞お
よび/または組織、例えば、結合組織、器官の形成、分化、増殖および/または
維持を調節する能力、ならびに創傷治癒能力を包含する。詳細には、「サーベラ
スまたは
サーベラス様活性」は、心臓、脾臓、肝臓、膵臓、胃、腎臓、胚および脳の細胞
および組織、ならびに骨芽細胞および骨、軟骨細胞および軟骨、腱、表皮および
筋肉の形成、成長、増殖、分化および/または維持を促進および/または抑制す
る能力を包含する。「サーベラスまたはサーベラス様活性」は、実施例および明
細書に記載するアッセイにおけるサーベラスまたはサーベラス様蛋白の活性も包
含する。
サーベラスまたはサーベラス様cDNAは、診断ツールとして有用なはずであ
る(例えば、細胞系における蛋白のアッセイにおいて抗体を使用することによる
診断、あるいはオリゴヌクレオチドプライマーに対して配列類似性を有するオリ
ゴヌクレオチドを増幅し、どの程度の量のサーベラスが存在するのかを決定する
ためのPCR試験においてプライマーとしてオリゴヌクレオチドを使用すること
による診断)。サーベラスは、それ自身の受容体を介してその標的細胞に対して
作用しうる。それゆえサーベラスは、そのような受容体の単離に有用でありうる
。さらに、サーベラスまたはその受容体は、特定の腫瘍タイプの診断プローブと
して有用であることがわかるはずである。よって、サーベラス、その受容体、ま
たはぞれのいずれかに対する抗体は、臨床的に有用でありうる有効なアゴニスト
またはアンタゴニストでありうる。さらに、サーベラスおよびその受容体の複合
体、サーベラスおよびそれに対する抗体の複合体、またはサーベラス受容体およ
びそれに対する抗体の複合体は、それぞれ、多くのインビトロ、エクスビボまた
は臨床的使用において有用でありうる。
また本発明は、サーベラス活性を保持する、配列番号:2に示す哺乳動物サー
ベラス蛋白のアミノ酸配列の蛋白変種および機能的フラグメントも包含する。ま
た本発明は、上記したような精製哺乳動物サーベラス蛋白に対する抗体も包含す
る。本発明組成物は、治療量の少なくとも1種の上記哺乳動物サーベラス蛋白を
含む。サーベラスまたはサーベラス様蛋白のかかる蛋白変種および機能的フラグ
メントは、配列番号:2のアミノ酸配列に対して有意な相同性を有するアミノ酸
配列、最も好ましくは少なくとも80%または90%のアミノ酸同一性を有する
アミノ酸配列を包含すると考えられる。サーベラス様活性を保持する変種および
機能的フラグメントは、配列番号:2において見られるシステインパターンを保
持するものを包含すると考えられる。例えば、配列番号:2のアミノ酸162か
ら241まで、あるいは配列番号:8のアミノ酸162から241までを含む末
端切断ポリペプチドは、それそれ、配列番号:2および配列番号:8のサーベラ
スおよびサーベラス様配列のカルボキシ末端部分に見いだされる全部で9個のシ
ステインからなるパターンを保持している。
さらにもう1つの具体例において、本発明は、遺伝子調節の変化を必要とする
患者において遺伝子調節を変化させる方法を含み、該方法は、有効量の上記組成
物を該患者に投与することを含む。例えば、受容体蛋白の結合を刺激または阻害
することにより神経遺伝子の調節の変化を行ってもよく、そのような結合は、例
えば、哺乳動物サーベラス蛋白とその受容体蛋白(例えば、wnt蛋白またはB
MP蛋白)との間の結合である。よって、サーベラス蛋白は、リガンドとそれら
の受容体蛋白との結合相互作用、ならびに細胞に対する転写因子の相互作用を調
節する能力を有する可能性がある。
また本発明は、プロモーターまたオペレーターのごとき組織特異的または誘導
可能な調節配列に連結された、本発明コーディングDNA配列および他のサーベ
ラスコーディング配列を含むハイブリッドまたは融合ベクターも包含する。本発
明の好ましい具体例において、哺乳動物サーベラス様蛋白のコーディング配列が
、ニューロンおよび/またはSchwann細胞、グリア細胞および星状細胞のごとき
関連神経細胞および組織において選択的に発現される遺伝子由来の1またはそれ
以上のプロモーター、エンハンサーおよび/または他の調節エレメントに、作動
可能に連結される。例えば、星状細胞およびニューロン細胞において発現される
ことが知られているGFAP遺伝子のプロモーター、および前脳において「発現
されることが知られているOTX2遺伝子のプロモーターが、サーベラスの組織
特異的産生に適している。さらに、哺乳動物サーベラスをコードするDNA配列
を、GFAPまたはOTX2蛋白、ならびにニューロンおよび/またはSchwann
細胞、グリア細胞および星状細胞のごとき関連神経細胞および組織において選択
的に産生される他の蛋白由来の1またはそれ以上の調節配列に作動可能に連結し
てもよ
い。
本発明の他の好ましい具体例において、哺乳動物サーベラス様蛋白のコーディ
ング配列が、対象とする他の遺伝子、器官または細胞から単離されたプロモータ
ーに作動可能に連結される。他の組織選択的調節エレメントおよび誘導可能エレ
メントを用いたベクターも、本発明の哺乳動物サーベラス様蛋白の選択的または
誘導可能な発現に有用である。
本発明のもう1つの態様は、医薬上許容される賦形剤または担体中の治療上有
効量の呻乳動物サーベラス蛋白を含有する医薬組成物を提供する。本発明のこれ
らの組成物を、ニューロンおよび/またはSchwann細胞、グリア細胞および星状
細胞のごとき神経細胞および組織、ならびに肝臓、膵臓、肺、心臓、腎臓、脾臓
、胃、心臓組織および細胞、ならびに骨細胞、軟骨細胞、筋肉細胞、腱細胞、表
皮細胞および脂肪細胞の形成に使用してもよい。さらにこれらの組成物を用いて
、骨、骨芽細胞、軟骨、軟骨細胞、ベータ細胞およびランゲルハンス島に典型的
に見出される他の細胞タイプ、または他の膵臓細胞、ならびに肝臓、脾臓、脳、
心臓および腎臓組織のごとき他の器官の組織の形成、成長、増殖、分化および/
または維持を促進および/または抑制してもよい。哺乳動物サーベラス様蛋白を
含む組成物を用いて、分化した組織または器官を構成する細胞(例えば膵臓細胞
)へと分化しうる前駆細胞または膵臓幹細胞のごとき幹細胞を処理して、かかる
細胞、組織または器官の形成、分化、増殖および/または維持を促進してもよい
。かかる細胞の形成および維持方法は、例えば、WO93/00441に記載さ
れており、参照によりその開示を本明細書に記載されているものとみなす。さら
に、組成物を用いて、例えば、胚性細胞および組織の内胚葉表現型への発達に影
響させることにより、胚の発達を調節してもよい。
本発明組成物は、哺乳動物サーベラス様蛋白のほかに、表皮成長因子(EGF
)、繊維芽細胞成長因子(FGF)、形質転換成長因子(TGF−αおよびTG
F−β)、アクチビン、インヒビン、骨形態形成蛋白(BMP)およびインスリ
ン様成長因子(IGF)のごとき成長因子を包含する治療上有用な作用剤を含ん
でいてもよい。組成物は適当なマトリックス、例えば、組成物を支持し、ニュー
ロン
および/またはSchwann細胞、グリア細胞および星状細胞のごとき神経細胞およ
び組織の成長、または他の組織もしくは細胞の増殖のための表面を提供するため
のマトリックスを含んでいてもよい。マトリックスは、哺乳動物サーベラス様蛋
白を除々に放出させるものであってもよく、さらに/あるいは哺乳動物サーベラ
ス様蛋白提供のための適当な環境を提供するものであってもよい。
哺動物サーベラス様蛋白含有組成物を、多くの組織欠損の治療方法、ならびに
種々のタイプの組織および創傷の治癒および維持方法に使用してもよい。治療可
能な組織および創傷は、ニューロンおよび/またはSchwann細胞、グリア細胞お
よび星状細胞のごとき神経細胞および組織を包含しうる。心臓、肝臓、膵臓、脾
臓、肺、腎臓、脳および胃の組織も包含され、軟骨、表皮、筋肉(心筋を包含)
、骨、腱および靭帯のごとき他の結合組織、および他の組織および創傷も包含さ
れる。本発明のこれらの方法は、かかる組織の形成、創傷の治癒または組織の修
復を要する患者に有効量の哺乳動物サーベラス蛋白を投与することを含む。哺乳
動物サーベラス様蛋白含有組成物を用いて、パーキンソン病、アルツハイマー病
およびロウ・ゲーリッヒ病のごとき変性的な神経の症状、ならびに他の変性的な
神経の疾病、および神経組織の欠損を包含する他の症状を治療または予防するこ
とができる。組成物は、骨粗鬆症、リューマチ性関節炎、骨関節炎のごとき他の
症状、結合組織の他の異常、または筋肉、膵臓、肝臓、脾臓、肺、心臓、脳およ
び腎臓の組織のごとき他の器官または組織の異常の治療にも有用でありうる。こ
れらの方法は、本発明蛋白を少なくとも1種の他の蛋白、例えばEGF、FGF
、TGF−α、TGF−β、BMP、Wnt、ヘドゲホグス(hedgehogs)(イ
ンディアンおよびデザートヘドゲホグスを包含)、アクチビン、インヒビンおよ
びIGFのごとき成長因子と組み合わせて投与することを含んでもよい。本発明
の特別な具体例において、哺乳動物サーベラス様遺伝子または蛋白を用いてBM
P類またはTGF−βスーパーファミリーの他のメンバーの活性を増大させても
よい。
本発明のさらなる態様は、哺乳動物サーベラス様蛋白の発現をコードするDN
A配列である。かかる配列は、配列番号:1または配列番号:7において5’
から3’方向へと示されるヌクレオチド配列を包含するが、遺伝コードの縮重を
除いては配列番号:1または配列番号:7のDNA配列と同一であり、配列番号
:2または配列番号:8の蛋白をコードするDNA配列も包含される。ストリン
ジェントな条件下で配列番号:1または配列番号:7のDNA配列にハイブリダ
イゼーションし、サーベラス様活性を有する蛋白をコードするDNA配列も本発
明に包含される。好ましいDNA配列は、ストリンジェントな条件下[T.Maniati
s et al,Molecular Cloning(A Laboratory Manual),Cold Spring Harbor Labo
ratory (1982),387〜389ページ参照]でハイブリダイゼーションするDNA配列
を包含する。かかるDNA配列が、配列番号:2または配列番号:8に示す成熟
哺乳動物サーベラス様アミノ酸配列に対して少なくとも約80%の相同性、より
好ましくは少なくとも約90%の相同性を有するポリペプチドをコードしている
ことが一般的に好ましい。結局、配列番号:1または配列番号:2の配列の対立
遺伝子変種または他の変種は、かかるヌクレオチド変化がペプチド配列の変化を
引き起こすか否かにかかわらず、そのペプチド配列がやはりサーベラス様活性を
有している場合には、本発明に包含される。また本発明は、サーベラス様蛋白の
活性を保持しているポリペプチドをコードする、配列番号:1または配列番号:
7に示す哺乳動物サーベラス様蛋白のDNA配列の機能的フラグメントを包含す
る。配列番号:2または配列番号:8に示される本発明哺乳動物サーベラス様蛋
白の特定の変種またはフラグメントがサーベラス様活性を維持しているかどうか
を調べることは、本明細書記載のアッセイを用いて通常的に行われる。
本発明DNA配列は、例えば、細胞集団中の他のサーベラス様蛋白をコードす
るmRNAの検出のためのプローブとして有用である。本発明DNA配列は、後
で説明する遺伝子治療用ベクターの調製にも有用である。
本発明のさらなる態様は、発現制御配列に作動可能に結合した上記DNA配列
を含むベクターを包含する。本発明の組み換え哺乳動物サーベラス様蛋白の新規
製造方法にこれらのベクターを使用してもよく、該方法において、発現制御配列
に作動可能に結合された哺乳動物サーベラス様蛋白をコードするDNA配列で形
質転換された細胞系が適当な培地で培養され、哺乳動物サーベラス様蛋白が培地
から回収され、精製される。この方法は、ポリペプチド発現用宿主細胞として、
よく知られた多くの原核細胞および真核細胞の両方を使用することができる。ベ
クターを遺伝子治療用途に使用してもよい。かかる使用において、ベクターをエ
クスビボにおいて患者の細胞中にトランスフェクションし、細胞を患者に再導入
してもよく、あるいはベクターをインビボにおいて標的化トランスフェクション
により患者に導入してもよい。別法として、ゲノム中の本明細書開示のサーベラ
スコーディング配列の近くに高発現調節エレメントを挿入することにより、相同
的サーベラス遺伝子発現をアップレギュレートしてもよい。
本発明の好ましい具体例において、哺乳動物サーベラス様のコーディング配列
に作動可能に結合したプロモーターおよび/またはエンハンサーのごとき1また
はそれ以上の本来的なものでない調節エレメントを用いてベクターを調製して、
所望細胞組織において、および/または発達中の所望時期において、哺乳動物サ
ーベラス様蛋白を発現させる。例えば、ニューロン発達中に構成的に発現される
ことが知られている遺伝子由来のプロモーターエレメントを用いてベクターを構
築してもよい。適当な遺伝子由来のプロモーターをサーベラス様のコーディング
配列に作動可能に結合させ、ニューロン幹細胞のごとき適当な細胞を形質転換す
ることにより、これらの細胞において哺乳動物サーベラス様蛋白を発現させるこ
とができ、かくして、ニューロンのごとき細胞および/またはSchwann細胞、グ
リア細胞および星状細胞のごとき他の細胞および組織の形成、成長、増殖、分化
および/または維持についての所望の効果をインビトロまたはインビボのいずれ
かにおいて促進することができる。
本発明のさらなる態様は哺乳動物サーベラス様蛋白またはポリペプチドである
。かかるポリペプチドは、配列番号:2または配列番号:8に示す配列を含むア
ミノ酸配列、あるいは天然に存在する対立遺伝子変種ならびにサーベラス様の能
力、例えば、ニューロンおよび/またはSchwann細胞、グリア細胞および星状細
胞のごとき神経細胞および組織の形成、成長、増殖、分化および/または維持を
促進および/または抑制する能力を有し、膵臓、肝臓、胃、心臓の組織または骨
、骨細胞、軟骨細胞および/または軟骨組織のごとき他の組織、または脾臓、肺
、脳
および腎臓組織のごとき他の器官組織に影響しうるサーベラス様蛋白に特徴的な
能力を保持している他の蛋白変種を包含する配列番号:2または配列番号:8の
アミノ酸配列の変種を有することにより特徴づけられる。好ましいポリペプチド
は、配列番号:2および配列番号:8に示す成熟サーベラス様アミノ酸配列に対
して少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%の相同性を有する
ポリペプチドを包含する。結局、配列番号:2または配列番号:8の配列の対立
遺伝子変種または他の変種は、かかるアミノ酸変化が突然変異、化学的変換、あ
るいはポリペプチド作成のためのDNA配列の変更によってなされたものである
かどうかにかかわらず、ペプチド配列がやはりサーベラス様活性を有しているか
ぎり、本発明に包含される。また本発明は、サーベラス様蛋白の活性を保持して
いる、配列番号:2または配列番号:8に示す哺乳動物サーベラス様のアミノ酸
配列のフラグメントも包含する。当業者は、当該分野で知られた方法を用いて哺
乳動物サーベラス様蛋白のかかる変種およびフラグメントを容易に得ることがで
き、本明細書実施例に記載のごとくそれらの活性を容易にアッセイすることがで
きる。
本発明の精製蛋白を用い、当該分野で知られている抗体生成法を用いて、哺乳
動物サーベラス様蛋白および/または他の関連蛋白に対するモノクローナルまた
はポリクローナルな抗体を得てもよい。よって、本発明は、哺乳動物サーベラス
および/または他のサーベラス様蛋白に対する抗体も包含する。抗体は、哺乳動
物サーベラス様蛋白の精製、あるいはインビトロまたはインビボでサーベラス蛋
白の効果を抑制または防止することに有用でありうる。哺乳動物サーベラス様蛋
白は、胚性細胞および/または幹細胞の成長および/または分化の誘導に有用で
ありうる。よって、本発明蛋白または組成物は、胚性細胞または幹細胞のごとき
細胞集団を処理して細胞の成長および/または分化を促進、豊富化または抑制す
ることに有用でありうる。例えば、哺乳動物サーベラス様蛋白は、細胞集団を処
理して、ニューロンおよび/またはSchwann細胞のごとき関連神経細胞および組
織を形成、分化、増殖および/または維持を促進および/または抑制することに
有用でありうる。処理された細胞集団は、とりわけ、後で説明する遺伝子治療用
途に有用でありうる。よって、本発明蛋白は、創傷の治癒、組織および器官の修
復および再生プロセス、ならびに組織の分化、例えば、胚の発達において有用で
ありうる。特に、哺乳動物サーベラス様蛋白を用いてニューロンおよび/または
Schwann細胞のごとき関連神経細胞および組織を形成、分化、増殖および/また
は維持を誘導できることが、本発明者により観察されている。通常には、サーベ
ラス様蛋白は分泌蛋白として存在し、ニューロンおよび他の神経細胞および組織
タイプの成長および分化に影響することが示されている。よって、これらの蛋白
およびそれらを含有する組成物は、パーキンソン病、アルツハイマー病のごとき
神経および脳の疾病の治療において、および細胞の形成、成長、分化、増殖およ
び/または維持の促進および/または抑制、例えば、ニューロンおよび/または
Schwann細胞のごとき関連神経細胞および組織の形成において有用でありうる。
本発明の哺乳動物サーベラス様蛋白は、配列番号:1または配列番号:7の配
列に類似した配列によりコードされる因子を包含するが、該因子中には天然に存
在する(例えば、ポリペプチド中のアミノ酸変化を引き起こしうるヌクレオチド
配列中の対立遺伝子変異)あるいは人工的に作成されたした修飾または欠失が存
在している。例えば、合成ポリペプチドが、配列番号:2または配列番号:8の
アミノ酸残基の一連の配列を全体的または部分的に複製したものであってもよい
。これらの配列は、一次、二次、または三次構造およびコンホーメーション的特
質を配列番号:2または配列番号:8の哺乳動物サーベラス様ポリペプチドと共
有することによって、それらに共通した生物学的特性を有する可能性がある。よ
って、本来の哺乳動物サーベラス様ポリペプチドの修飾および欠失体を、治療プ
ロセスにおいて天然の哺乳動物サーベラス様ポリペプチドの生物学的活性置換体
として用いてもよい。哺乳動物サーベラス様蛋白および哺乳動物サーベラス様蛋
白変種またはフラグメントを本明細書記載のアッセイに供することにより、哺乳
動物サーベラス蛋白変種またはフラグメントがサーベラスの生物学的活性を有し
ているかどうかを容易に決定することができる。
本明細書記載の哺乳動物サーベラス様蛋白配列の他の特別な変異は糖鎖付加部
位の修飾を包含する。これらの修飾はO−結合またはN−結合糖鎖付加部位を含
むものであってもよい。例えば、糖鎖付加の不存在またはごく部分的な糖鎖付加
は、アスパラギン結合糖鎖付加認識部位の置換または欠失により生じる。アスパ
ラギン結合糖鎖付加認識部位は、適当な細胞の糖鎖付加酵素により特異的に認識
されるトリペプチド配列を含む。これらのトリペプチド配列は、アスパラギン−
X−スレオニンまたはアスパラギン−X−セリンであり、通常にはXはいずれか
のアミノ酸である。糖鎖付加認識部位の1番目または3番目のアミノ酸位置の一
方または両方における種々のアミノ酸置換または欠失(および/または2番目の
位置におけるアミノ酸欠失)は、修飾トリペプチド配列において糖鎖付加を生じ
させない。かかる哺乳動物サーベラス様蛋白の変種は本発明の範囲内である。さ
らに、哺乳動物サーベラス様蛋白の細菌による発現は、糖鎖付加部位が未修飾で
あっても、糖鎖付加されていない蛋白を生じるであろう。哺乳動物サーベラス様
蛋白の、かかる細菌により産生されたバージョンは本発明の範囲内である。
また本発明は、他の蛋白性物質をコードするDNA配列が結合しておらず、哺
乳動物サーベラス様蛋白の発現をコードしている新規DNA配列をも包含する。
これらのDNA配列は、配列番号:1または配列番号:7に5’から3’方向に
示したDNA配列ならびにストリンジェントな条件下(例えば、0.1X SSC,0.1% S
DS,65℃;T.Maniatisetal,Molecular Cloning(A Laboratory Manual),Cold Spri
ng HarborLaboratory(1982),387-389ページ参照)でそれらにハイブリダイゼー
ションする配列であってサーベラス様活性を有する蛋白をコードしている配列を
包含する。これらのDNA配列もまた、配列番号:1または配列番号:7のDN
A配列を含むDNA配列、ならびにストリンジェントな条件下でそれらにハイブ
リダイゼーションし、サーベラス様活性を有する蛋白をコードしているDNA配
列を包含する。
同様に、配列番号:1または配列番号:7の配列によりコードされる哺乳動物
サーベラス様蛋白をコードするDNA配列、あるいは配列番号:2または配列番
号:8のアミノ酸配列を含む哺乳動物サーベラス様蛋白をコードするDNA配列
は、遺伝学的コードの縮重または対立遺伝子変異(種の集団中における天然に存
在する塩基変化であり、アミノ酸変化を生じさせる者であっても、生じさせない
ものであってもよい)によりコドン配列が異なっていても、本明細書記載の新規
因子をコードする。コードされるポリペプチドの活性、半減期または産生を増大
させるための点突然変異または誘発された修飾(挿入、欠失および置換を包含)
により引き起こされる配列番号:1または配列番号:7のDNA配列における変
異も本発明に包含される。
本発明のもう1つの態様は、哺乳動物サーベラス様蛋白の新規製造方法を提供
する。本発明方法は、本発明の哺乳動物サーベラス様蛋白をコードするDNA配
列で形質転換された適当な細胞系を、調節配列の制御下において培養することを
含む。形質転換宿主細胞を培養して、哺乳動物サーベラス様蛋白を培地から回収
し精製する。精製蛋白は、同時産生される他の蛋白ならびに他の混入物質を実質
的に含まない。
適当な細胞または細胞系はチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)のごと
き哺乳動物細胞であってもよい。適当な哺乳動物宿主細胞ならびに形質転換、培
養、増幅、スクリ−ニング、生成物の製造および精製方法の選択は当該分野にお
いて知られている。例えば、Gething and Sambrook,Nature,293:620-625(1981)
あるいはKaufman et al,Mol .Cell.Biol.,5(7):1750-1759(1985)またはHowley
らの米国特許第4,419,446号参照。もう1つの適当な哺乳動物細胞系は本明細書
の実施例に記載されているサルCOS−1細胞系である。哺乳動物細胞CV−1
も適当であるかもしれない。
細菌細胞も適当な宿主であるかもしれない。例えば、種々のイー・コリ株(例
えばHB101、MC1061)はバイオテクノロジーの分野において宿主細胞
としてよく知られている。ビー・ズブチリス(B.subtilis)、シュードモナス
(Pseudomonas)、他のバチルス等をこの方法に使用してもよい。細菌細胞にお
ける蛋白の発現には、一般的には、サーベラス様のプロペプチドをコードするD
NAは必要ない。
当業者に知られた多くの酵母細胞株も、本発明ポリペプチド発現のための宿主
細胞として利用できる。さらに、所望ならば、本発明方法において昆虫細胞を宿
主として用いてもよい。例えば、Miller et al,Genetic Engineering,8:277-298
(Plenum Press 1986)およびその中で引用された文献参照。
本発明のもう1つの態様は、これらの新規哺乳動物サーベラス様ポリペプチド
の発現方法に使用するベクターを提供する。好ましくは、ベクターは、本発明新
規因子をコードする上記の新規DNA配列の全長を含む。さらに、ベクターは、
サーベラス様蛋白配列の発現を可能にする適当な発現制御配列を含む。あるいは
また、上記修飾配列を含むベクターも本発明の具体例である。さらに、哺乳動物
サーベラス様プロペプチド配列を欠失させ、他のサーベラス様蛋白の完全プロペ
プチドをコードする配列または他の適当なプロペプチドをコードする配列に置き
換えることにより、配列番号:1または配列番号:7の配列または哺乳動物サー
ベラス様蛋白をコードする他の配列を処理して、成熟哺乳動物サーベラス様蛋白
を発現させることもできる。よって、本発明は、哺乳動物サーベラス様ポリペプ
チドをコードするDNA配列に正しい読み枠において結合している、サーベラス
様ファミリーのメンバー由来のプロペプチドをコードするキメラDNA分子を包
含する。
ベクターを細胞系の形質転換法に使用してもよく、ベクターは、選択された宿
主における複製および発現を指令しうる、本発明コーディング配列に作動可能に
結合された調節配列を含む。かかるベクターの調節配列は当業者に知られており
、宿主細胞に応じて選択できる。かかる選択は通常のことであり、本発明の一部
を形成しない。
ラット、ヒトまたは他の哺乳動物のサーベラス様蛋白を製造するために、それ
をコードするDNAを適当な発現ベクター中に移行させ、慣用的な遺伝子工学的
手法により哺乳動物細胞または他の好ましい真核細胞または原核細胞宿主中に導
入する。生物学的に活性のある組み換え哺乳動物サーベラス様蛋白を得るための
好ましい発現系は安定に形質転換された哺乳動物細胞であると考えられる。
当業者は、配列番号:1、配列番号:7の配列、またはサーベラス様蛋白をコー
ドする他のDNA配列または他の修飾配列ならびにpCD(Okayama et al.,Mol .Cell Biol.,2:161-170(1982))、pJL3、pJL4(Gough et al.,EMBO J .
,4:645-653(1985))およびpMT2 CXMのごとき既知ベクターを用いること
に
より、哺乳動物発現ベクターを構築することができる。
哺乳動物発現ベクターpMT2 CXMはp91023(b)(Wong et al.,
Science 228:810-815,1985)の誘導体であり、テトラサイクリン耐性遺伝子のか
わりにアンピシリン耐性遺伝子を含み、さらにcDNAクローン挿入のためのX
hoI部位を含むことにおいて異なっている。pMT2 CXMの機能的エレメ
ントは記載されており(Kaufman,R.J.,1985,Proc.Natl.Acad.Sci.USA82:
689-693)、アデノウイルスVA遺伝子、72bpのエンハンサーを含むSV4
0複製開始点、5’スプライス部位およびアデノウイルス後期mRNA上に存在
するアデノウイルス三分節リーダー配列の大部分を含むアデノウイルス大後期プ
ロモーター、3’スプライスアクセプター部位、DHFRインサート、SV40
初期ポリアデニル化部位(SV40)、ならびにイー・コリ(E.coli)中での
増殖に必要なpBR322配列を含んでいる。
受託番号ATCC67122としてthe American Type Culture Collection (
ATCC),Rockville,MD(USA)に寄託されたpMT−VWFのEcoRI消化により
プラスミドpMT2 CXMを得る。EcoRI消化によりpMT2−VWFに
存在するcDNAインサートを切り出し、pMT2を直鎖状とし、それをライゲ
ーション(ligation)し、これを用いてイー・コリHB101またはDH−5を
形質転換してアンピシリン耐性とすることができる。慣用的方法によりプラスミ
ドpMT2 DNAを調製することができる。ついで、ループアウト/イン突然
変異(Morinaga,et al.,Biotechnology 84:636(1984))を用いてpMT2 CX
Mを構築する。これにより、SV40複製開始点およびpMT2エンハンサー配
列の近傍のHindIII部位に対応した塩基1075〜1145が除去される
。さらに、下記配列:
をヌクレオチド1145に挿入する。この配列は制限エンドヌクレアーゼXho
I認識部位を含む。pMT23と命名されたpMT2 CXMの誘導体は制限エ
ンドヌクレアーゼPstI、Eco1 RI、SalIおよびXhoIの認識部
位を含む。慣用的方法によりプラスミドpMT2 CXMおよびpMT23
DNAを調製してもよい。
pMT21に由来するpEMC2β1は本発明の実施に適するかもしれない。
pMT21はpMT2に由来し、pMT2はpMT2−VWFに由来する。上記
のごとく、EcoRI消化によりpMT−VWF中に存在するcDNAインサー
トを切り出し、pMT2を直鎖状とし、これをライゲーションし、これを用いて
イー・コリHB101またはDH5を形質転換させてアンピシリン耐性とするこ
とができる。慣用的方法によりプラスミドpMT2 DNAを調製することがで
きる。
pMT21は下記の2つの修飾によりpMT2に由来するものである。第1は
、cDNAクローニング用のG/Cテイリング由来の19個のG残基の伸長部分
を含む、76bpのDHFR cDNA5’非翻訳領域が欠失されている。この
プロセスにおいて、XhoI部位が挿入されてDHFRのすぐ上流に下記配列:
が得られる。第2は、EcoRVおよびXbaI消化、DNAポリメラーゼIの
クレノウフラグメントでの処理、およびClaIリンカー(CATCGATG)へのライ
ゲーションにより単一のClaI部位が導入されている。これにより、250b
pのセグメントがアデノウイルス関連RNA(VAI)領域から欠失されるが、
VAI RNA遺伝子発現または機能は妨げられない。pMT21をEcoRI
およびXholで消化して、ベクターpEMC2B1を得るために使用する。
EcoRIおよびPstIでの消化により、EMCVリーダーの一部をpMT
2−ECAT1(S K.Jung,et al,J.Virol 63:1651-1660(1989))から得て、2
752bpのフラグメントを生じさせる。このフラグメントをTaqIで消化し
て、508bpのEcoRI−TaqIフラグメントを得て、これを低融点アガ
ロースゲル電気泳動により精製する。下記の配列:
を有する68bpのアダプターおよびその相補鎖を合成する。これは5’Taq
I突出末端および3’XhoI突出末端を有する。
この配列はEMCウイルスリーダー配列のヌクレオチド763から827まで
に合致する。また、EMCウイルスリーダー中の位置10のATGがATTに変
化しており、その後にXhoI部位がある。pMT21 EcoRI−XhoI
フラグメント、EMCウイルスEcoRI−TaqIフラグメント、および68
bpのオリゴヌクレオチドアダプターTaqI−XhoIアダプターのスリーウ
ェイライゲーション(three way ligation)によりベクターpEMC2β1が得
られる。
このベクターは、哺乳動物細胞において所望cDNAを高レベルで発現させる
ように適切に関連づけられたSV40複製開始点およびエンハンサー、アデノウ
イルス大後期プロモーター、アデノウイルス三分節リーダー配列の大部分のcD
NAコピー、小さなハイブリッド介在配列、SV40ポリアデニル化シグナルお
よびアデノウイルスVAI遺伝子、DHFRおよびβ−ラクタマーゼマーカーな
らびにEMC配列を含む。
ベクター構築物はヒトサーベラスDNA配列の修飾を含んでいてもよい。例え
ば、コーディング領域の5’および3’末端にある非コーディングヌクレオチド
を除去することにより哺乳動物サーベラスcDNAを修飾することができる。欠
失された非コーディングヌクレオチドを、発現に有利であることが知られている
他の配列に置き換えてもよく、置き換えなくてもよい。これらのベクターを、哺
乳動物サーベラス蛋白の発現のために適当な宿主細胞中に形質転換する。さらに
、哺乳動物サーベラスコーディングプロペプチド配列を欠失させ、他の蛋白の完
全なプロペプチドをコードする配列に置き換えることにより、配列番号:1の配
列、哺乳動物サーベラス蛋白をコードする他の配列を加工して成熟哺乳動物サー
ベラス蛋白を発現させることができる。
当業者は、コーディング配列に隣接する哺乳動物調節配列を細菌配列に置換す
ることにより、配列番号:1または配列番号:7の配列を加工して、細菌細胞に
より細胞内または細胞外発現される細菌ベクターを作成することができる。例え
ば、コーディング配列をさらに加工することができる(例えば、他の既知リンカ
ーを連結、あるいは非コーディング配列を欠失させることにより修飾、あるいは
既知方法によりヌクレオチドを変化させる)。ついで、修飾哺乳動物サーベラス
コーディング配列を、T.Taniguchi et al.,Proc .Natl Acad.Sci.USA,77:5
230-5233(1980)に記載されたような方法を用いて既知細菌ベクター中に挿入する
ことができる。ついで、この典型的な細菌ベクターを細菌宿主中に形質転換し、
それにより蛋白を発現させる。哺乳動物サーベラス蛋白を細菌細胞の細胞外で発
現させるための方法としては、例えば、欧州特許出願EPA第177343号参
照。
昆虫細胞での発現のために、同様の操作を行って昆虫ベクターを構築すること
ができる(例えば、出願公開された欧州特許出願第155476号記載の方法参
照)。本発明因子を酵母により細胞内または細胞外発現させるために、酵母の調
節配列を用いて酵母ベクターを構築してもよい(例えば、公開されたPCT出願
WO86/00639および欧州特許出願EPA第123289号参照)。
本発明の哺乳動物サーベラス蛋白を哺乳動物細胞において高レベルで産生させ
る方法は、異型の哺乳動物サーベラス遺伝子の多数のコピーを含む細胞の構築を
包含してもよい。異型遺伝子を増幅可能マーカー、例えばジヒドロ葉酸レダクタ
ーゼ(DHFR)遺伝子に連結し、Kaufman and Sharp,J .Mol.Biol.,159:60
1-629(1982)の方法に従ってメトトレキセート(MTX)濃度を上昇させつつ増
殖させて、増大した遺伝子コピーを含む細胞を選択することができる。
例えば、発現を可能にする他のプラスミドの配列に作動可能に結合された本発
明の哺乳動物サーベラス蛋白のDNA配列を含むプラスミドならびにDHFR発
現プラスミドpAdA26SV(A)3[Kaufman and Sharp,Mol .Cell.Biol .
,2:1304(1982)]を、リン酸カルシウム共沈およびトランスフェクション、エ
レクトロポレーションまたはプロトプラスト融合を包含する種々の方法により同
時にDHFR欠損CHO細胞中に導入することができる。透析されたウシ胎児血
清を含有するアルファ培地中での選択に関してDHFR発現形質転換体を選択し
、ついで、Kaufman et al.,Mol Cell Biol.,5:1750(1983)に記載のごとくMT
X濃度を上昇させつつ(例えば、逐次的に0.02、0.2、1.0、ついで5μ
Mの
MTX)増殖させることにより、増殖に関して選択する。形質転換体をクローン
化し、本明細書記載のアッセイの1つにより、生物学的に活性のある哺乳動物サ
ーベラス蛋白の発現をモニターする。哺乳どうぶるサーベラス蛋白発現はMTX
レベルの上昇に伴って増大するはずである。[35S]メチオニンまたはシステ
インを用いるパルスラベリングおよびポリアクリルアミドゲル電気泳動のごとき
当該分野で知られた標準的方法を用いて哺乳動物サーベラスポリペプチドを特徴
づける。同様の方法により他の関連サーベラス蛋白を得ることができる。
サーベラス活性を示す本発明の哺乳動物サーベラス蛋白は、ニューロンおよび
/またはSchwann細胞、グリア細胞および星状細胞のごとき関連神経細胞および
組織、ならびに他の組織のような細胞および組織の形成、成長、分化、増殖およ
び/または維持および治癒に適用される。哺乳動物サーベラス蛋白を用いるかか
る調合物は、パーキンソン病、アルツハイマー病の治療、ならびに神経腫瘍およ
び他の神経組織の疾病の予防において予防的使用をしてもよい。ニューロンおよ
び/またはSchwann細胞、グリア細胞および星状細胞のごとき関連神経細胞およ
び組織の、サーベラス蛋白により誘導されるドゥノボ形成は、先天性の、外傷に
より誘導される、あるいは腫瘍学的な組織欠損または症状の修復に貢献する。哺
乳動物サーベラス蛋白を神経の疾病および他の組織および器官の修復プロセスに
使用してもよい。かかる作用剤は、適当な幹細胞を誘引する環境を提供し、ニュ
ーロン形成細胞の成長および増殖を刺激し、あるいはニューロン形成細胞の前駆
細胞の分化を誘導する可能性があり、さらに他の組織および器官の再生を助ける
可能性がある。本発明の哺乳動物サーベラスポリペプチドは器官の疾病の治療に
も有用でありうる。
本発明蛋白を創傷の治癒および関連組織の修復に使用してもよい。創傷のタイ
プは、熱傷、切り傷および潰瘍を包含するが、これらに限らない(創傷の治癒お
よび関連組織の修復については例えば、PCT公開WO84/01106参照)
。さらに本発明蛋白はニューロン、星状細胞および/またはグリア細胞の生存率
を高め、それゆえ、移植ならびにニューロンの生存立および修復の低下を示す症
状の治療において有用であると考えられる。さらに本発明蛋白は、神経、表皮、
筋
肉、骨、軟骨、腱および靭帯のごとき結合組織のごとき他のタイプの組織、なら
びに膵臓、肝臓、脾臓、肺、心臓、脳および腎臓組織に関連した症状の治療に有
用でありうる。本発明蛋白は食物の添加物として、あるいは細胞培養培地の添加
物としても価値を有する。この用途には、蛋白を無傷の状態で使用してもよく、
あるいは前消化して、より容易に吸収される添加物としてもよい。
本発明蛋白は、サーベラスファミリーの蛋白に特徴的な他の有用な特性も有し
うる。かかる特性は、血管形成、化学走性および/または化学誘引特性、および
分化応答、細胞増殖応答、および細胞の付着、移動を包含する応答、および細胞
外マトリックスに対する影響を包含する。これらの特性は、本発明蛋白を創傷の
治癒、繊維症の軽減および瘢痕組織形成の抑制のための有効な作用剤としている
。本発明蛋白は、内分泌もしくは外分泌ホルモンを包含する貴重なホルモンを分
泌しうる細胞の形成の誘導にも有用でありうる。
本発明のさらなる態様は、ニューロンおよび/またはSchwann細胞、グリア細
胞および星状細胞のごとき関連神経細胞および組織の疾病、ならびにニューロン
組織および神経組織の疾病または疾患に関連した他の症状の治療方法ならびに治
療用組成物である。さらに本発明は、創傷の治癒および組織の修復のための治療
方法ならびに組成物を包含する。かかる組成物は、医薬上許容される賦形剤、担
体またはマトリックスと混合された治療上有効量の少なくとも1種の本発明哺乳
動物サーベラス蛋白を含む。さらに本発明組成物はニューロンおよびグリア細胞
の生存率を高め、それゆえ、移植ならびにニューロンの生存率低下を示す症状の
治療に有用であると考えられる。
サーベラスおよびサーベラス様蛋白は、本来的にはホモダイマーまたはヘテロ
ダイマーとして存在しうる。安定性が向上したサーベラス様蛋白のダイマー形成
を促進するために、配列番号:1または配列番号:7のDNA配列を遺伝子操作
して、1種またはそれ以上のさらなるシステイン残基を提供し、潜在的なダイマ
ー形成を促進することができる。得られるDNA配列は、サーベラス様蛋白の「
システイン付加変種」を生成しうる。別法として、アミノ酸レベルで蛋白配列を
変化させることにより、例えば、1またはそれ以上のアミノ酸残基をCysに変
換
することにより、サーベラス様蛋白の「システイン付加変種」を得ることもでき
る。蛋白の「システイン付加変種」の製造は米国特許第5166322号に記載
されており、参照によりその開示を本明細書に記載されているものとみなす。
本発明蛋白は、他の関連蛋白および成長因子と協奏的に、あるいはおそらく相
乗的に作用うしうると考えられる。かかる組み合わせは、サーベラスまたはサー
ベラス様蛋白および他の蛋白または異なる部分を含む異種分子といった別々の分
子を包含する。例えば、本発明方法および組成物は、サーベラス蛋白サブユニッ
トおよび「BMP」蛋白の1つから得られるサブユニットを含むジスルフィド結
合ダイマーを包含する。よって、本発明は、ヘテロダイマーである精製サーベラ
ス様ポリペプチドを包含し、該ヘテロダイマー中において、1のサブユニットは
配列番号:2または配列番号:8のアミノ酸配列を含み、もう1つのサブユニッ
トはPCT出願公開WO95/16035に開示されたBMP−1、BMP−3
、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−8、BMP−9
、BMP−10、BMP−11、BMP−12またはBMP−13、またはPC
T出願公開WO96/36710に開示されたBMP−15または同時係属特許
出願第08/715202号(1996年9月18日出願)に開示されたBMP
−16からなる群より選択される骨形態形成蛋白のアミノ酸配列を含む。さらな
る具体例は、サーベラス部分からなるヘテロダイマーを含むものであってもよく
、例えば、アフリラツメガエルのサーベラス蛋白ならびにアフリラツメガエルの
サーベラス蛋白もしくは他のサーベラス様蛋白の哺乳動物ホモログからなるヘテ
ロダイマーを含むものであってもよい。本発明のさらなる治療方法および組成物
は、骨形態形成蛋白(BMP)を包含するTGF−βスーパーファミリーの蛋白
のメンバー、成長および分化因子(GDF)および他の蛋白のごとき少なくとも
1種の治療量の他の蛋白と組み合わされた少なくとも1種の治療量の本発明の哺
乳動物サーベラス蛋白を含む。組成物は、表皮成長因子(EGF)、繊維芽細胞
成長因子(FGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、形質転換成長因子(T
GF−αおよびTGF−β)、アクチビン、インヒビン、およびk−繊維芽細胞
成長因子(kFGF)、副甲状腺ホルモン(PHT)、白血病抑制因子(LIF
/
HILDA/DIA)、インスリン様成長因子(IGF−IおよびIGF−II
)のごとき他の作用剤および成長因子を含んでいてもよい。これらの作用剤の一
部を本発明に使用してもよい。
pH、等張性、安定性等において生理学的に許容されるかかる蛋白組成物の調
製および処方は当業者に明らかである。またサーベラス蛋白における種特異性が
欠乏している場合の獣医学的用途にも、本発明治療組成物は目下のところ価値を
有する。詳細には、本発明のサーベラス蛋白でのかかる治療に適した対象は、ヒ
トのほかには家畜およびサラブレッドのウマである。
治療方法は、組成物を局所的、全身的、または局部的に、注射または移植のご
とき方法で投与することを包含する。投与する場合、本発明に使用する治療組成
物は、もちろん、パイロジェン不含で、生理学的に許容される形態である。さら
に、望ましくは、組成物をカプセル封入してもよく、あるいは膵臓または他の組
織のダメージ部位へのデリバリーのために粘性のある形態として注射してもよい
。局所的投与は創傷の治癒および組織の修復に適しているかもしれない。本発明
方法において、上記組成物に含有されていてもよいサーベラス蛋白以外の治療上
有用な作用剤を、サーベラス組成物のかわりに、あるいはそれに加えて、同時ま
たは逐次投与してもよい。
移植には、好ましくは、組成物は、哺乳動物サーベラス蛋白をニューロンおよ
び/またはSchwann細胞、グリア細胞および星状細胞のごとき関連神経細胞また
は組織、または他の組織の部位にデリバリーすることのできるマトリックスを含
み、マトリックスは組織の発達のための構造を提供し、最適には、体内に吸収さ
れうるものである。マトリックスは、哺乳動物サーベラスおよび/または他の蛋
白を除々に放出するほか、細胞を浸潤させるために正しく哺乳動物サーベラスを
提供し、適切な環境を提供する。かかるマトリックスは、現在他の移植医療に使
用されている材料から作られてもよい。マトリックス材料の選択は、生体適合性
、生分解性、機械的特性、美容上の外観および界面特性に基づいて行われる。哺
乳動物サーベラス組成物の個々の適用により、適切な処方が決定される。
例えば形成が望まれる組織量、組織ダメージ部位、ダメージを受けた組織の状
態、創傷のサイズ、ダメージを受けた組織のタイプ、患者の年齢、性別、食事、
感染症の重さ、投与期間ならびに他の臨床的要因のごとき哺乳動物サーベラス蛋
白の作用を変化させる種々の要因を担当医が考慮することにより、投与規則が決
定されるであろう。復元に用いるマトリックスおよび組成物中の哺乳動物サーベ
ラス蛋白のタイプに応じて用量は変更されうる。IGF I(インスリン様増殖
因子I)のごとき他の既知成長因子の添加もまた、用量に影響しうる。
組織の成長および/または修復を定期的に評価することにより、進展をモニタ
ーすることができる。例えば、X線、組織形態学的試験およびテトラサイクリン
標識により進展をモニターすることができる。
下記実施例は、哺乳動物サーベラス蛋白の回収および特徴づけ、および他のサ
ーベラス蛋白を回収するためのDNAの使用、ヒト蛋白の取得、ならびに組み換
え法による蛋白の発現における、本発明の実施を説明する。記載された材料およ
び方法についての多くの変更が可能であり、それらは本発明の範囲内であると認
識されよう。実施例1:アフリカツメガエルサーベラスのネズミホモログのクローニング
アフリカツメガエルのサーベラスのカルボキシ末端のシステイン豊富ドメイン
を用いて、GENBANKにおいて報告された哺乳動物ライブラリーおよびESTをス
クリーニングした。アフリカツメガエルのサーベラスに対する配列相同性により
、Beddington7.5日胚領域ライブラリー由来のEST AA120122が同定
された。その部分クローンは分子のN末端における配列保存性はほとんど有して
いなかったが、C末端ドメインならびに特に9個のシステインのパターンは配列
保存性を示した。ネズミサーベラス様蛋白をコードする全長cDNAをネズミ胚
性細胞cDNAライブラリーから単離し、その遺伝子をネズミゲノムライブラリ
ーから単離した。
ネズミサーベラス様cDNA(配列番号:1)は272個のアミノ酸からなる
蛋白をコードし、推定分子量30.5kDである(配列番号:2)。ネズミサー
ベラス様遺伝子Mcerb−1は、配列番号:1の位置564において1個の2
kbのイントロンを有する。推定蛋白は、そのアミノ末端に疎水性シグナル配列
を含み、分子が分泌されることが示唆される。Sigcleaveによる分析により、分
泌時に最初の17残基が成熟分子から開裂されることが示される(Sigcleaveス
コア=7.6)。成熟ネズミサーベラス様蛋白は、配列番号:2の18〜272
を含む、255個の残基からなる分子量28.6kDの蛋白であると推定される
。サーベラス様cDNAをCOS細胞にて発現させ、35S−Met/35S−Cy
sで標識した。得られた蛋白は培地中に分泌され、16%ポリアクリルアミド還
元的ゲルで分画すると38〜44kDのところに不鮮明なバンドを生じた。不鮮
明なバンドは、蛋白が糖鎖付加されていることを示し、配列中の2個のN−結合
型糖鎖付加部位と矛盾しなかった。網状赤血球系における蛋白発現により、糖鎖
付加されていない推定蛋白と矛盾しない33kDのバンドが示された。非還元的
ポリアクリルアミドで分画すると、COSにより発現された物質の約半分が分子
量78〜94kDのところに移動し、蛋白がシステイン結合ホモダイマーを形成
しうることが示された。蛋白配列はそのアミノ末端に疎水性のシグナル配列を含
み、そのカルボキシ末端近くにシステイン豊富ドメインを含んでいる。アフリカ
ツメガエルのサーベラスおよびネズミのサーベラス様蛋白のシステイン豊富ドメ
インは58%の同一性を有し、全体のアミノ酸は31%の同一性を有する。カル
ボキシ末端の9個のシステインのパターンは、アフリカツメガエルのサーベラス
と哺乳動物サーベラス様蛋白との間で保存されている。実施例2:哺乳動物サーベラス様は分泌蛋白をコードする
全長cDNAが分泌蛋白をコードするかどうかを調べるために、配列番号:1
のDNA配列(哺乳動物サーベラス様蛋白をコードしており、真核発現ベクター
中のクローン化され、35S−メチオニンで標識されている)で293Tヒト細胞
系を一時的にトランスフェクションした。少量の形態とともに、広いバンドが培
地中に分泌された。COS細胞での発現と同様、293Tにて発現された物質を
分画し、システイン結合ダイマーの形成が明らかとなった。サーベラス様蛋白は
おそらく糖鎖付加されているであろう。なぜなら、網状赤血球系(膜不存在下)
にて翻訳された蛋白は、アミノ酸から推定される分子量に相当する33kDの分
子量を示すからである。サーベラス様蛋白は2個の推定上のN−結合型糖鎖付加
部位を有する。したがって、配列番号:1のDNAは、システイン豊富ドメイン
においてアフリカツメガエルのサーベラスに対して高いアミノ酸同一性を有する
分泌蛋白を規定する。実施例3:哺乳動物サーベラス様蛋白の発現
前索マウス胚(交尾から55日目)において、哺乳動物サーベラス様転写物が
、胚の遠位先端を含む初期内胚葉の一方の側において検出された。初期索におい
て、胚性領域の一方の側にある初期内胚葉細胞のパッチ中に発現が見られたが、
もはや胚の先端には拡張しなかった。このパッチは胚の前側に対応していた。な
ぜなら、切片中において、外胚葉後部厚化として認識されうる初期索形成に対抗
する内胚葉中にそれが見られたからである。中心索において、サーベラス様陽性
部位は初期内胚葉前部に留どまっていた。後期索段階において、節が胚の遠位先
端に到達した場合、サーベラス様蛋白を発現する第2の集団が節周囲の部位に見
られた。おそらくこれらの細胞は、節から生じることが知られている最終的な内
胚葉細胞に対応するのであろう。この細胞集団の内胚葉の性質を組織学的分析に
より確認した。神経板段階において、サーベラス様蛋白は、内胚葉中のOtx2
発現ドメインに相当するパターンとして神経板前部に存在するのが見られる。An
g et al,Cell,78:561-574(1994)。この段階において、おそらくサーベラス様陽
性細胞集団は初期内胚葉および最終的内胚葉の両方からなっており、節自体を含
まない。重要なことに、サーベラス様分泌因子発現細胞は、その後CNSの前脳
および中脳領域を生じる細胞と直接接触している。
初期頭側ひだ段階において、サーベラス様発現はミッドラインおよびその付近
の内胚葉に限られる。発現は、胚の吻側端から節近傍に至るミッドラインの全細
胞において見られ、脊索前板および脊索板からの前腸内胚葉および中胚葉に及ぶ
。内胚葉前部におけるサーベラス様mRNAの発現は体節形成開始まで続き、そ
の後、検出できなくなる。同時に、発現の後期フェーズが体節の中胚葉において
開始される。かくして、サーベラス様は初期マウス胚の内胚葉前部領域に限定さ
れる。将来神経板となる部分に直接接触した内胚葉前部において発現が見られる
が、初期索に接触した内胚葉細胞後部においては決して観察されず、神経外胚葉
前部の誘導におけるサーベラス様の役割を支持するさらなる証拠が提供される。実施例4:マウスにおけるサーベラスまたはサーベラス様の機能を調べるための アッセイ
マウス胚におけるサーベラスおよびサーベラス様遺伝子の機能を調べるために
、標準的方法を用いてネズミ胚性幹(ES)細胞を処理し、胞胚に注入すること
により、トランスジェニックノックアウトおよび誤発現(misexpression)マウ
スを作成することができる。サーベラスまたはサーベラス様遺伝子の中心部分を
選択可能マーカー(例えば、neo)で置換し、その構築物をES細胞中にトラ
ンスフェクションし、ダブルクロスオーバーを選択することにより、ネズミのノ
ックアウト処理を行うことができる。誤発現させるには、サーベラスおよびサー
ベラス様遺伝子を処理して汎用(例えば、アクチン)プロモーターまたは組織特
異的(例えば、IDX)プロモーターから発現されるようにし、ネズミES細胞
に再導入することができる。古典的手順を用いてかかる処理動物からトランスジ
ェニック動物を得ることができる。
成体マウスにおけるサーベラスまたはサーベラス様蛋白の機能を調べるために
、蛋白を組織に直接注射でき、あるいはウイルスベクターによりデリバリーする
ことができる。例えば、ベクターを用いてサーベラスまたはサーベラス様遺伝子
を成体マウス中で一時的に過剰発現させ、生理学的、組織化学的および生化学的
に動物を分析することにより蛋白の機能または活性を調べることができる。実施例5:ヒトサーベラスおよびサーベラス様遺伝子の単離
ネズミサーベラス様遺伝子のヒトDNA配列とのハイブリダイゼーションによ
り、XbaIにより得られた1個のバンド(約15kb)が同定され、ヒトゲノ
ムライブラリー中のヒトサーベラス様遺伝子を同定するためのプローブとしての
その有用性が示された。アフリカツメガエルのサーベラス遺伝子とネズミのサー
ベラス様遺伝子との並置比較により、システイン豊富ドメイン中において十分な
核酸相同性のある3つの領域が同定され、それらはヒトサーベラス遺伝子および
サーベラス様遺伝子用プローブとして役立つ。3つのプローブのコンセンサス配
列は
である。
第1のプローブはマウス遺伝子中の2kbのイントロンを含み、それゆえ、プ
ローブとしてはあまりよく機能しない可能性がある。それぞれ6倍および10倍
の縮重を有する第2および第3のオリゴヌクレオチドを個々に、あるいは一緒に
使用すれば、ゲノムまたはcDNAライブラリー中のヒトサーベラスおよびサー
ベラス様遺伝子用プローブとして役立つであろう。
ここに記載の方法により得られたヒトサーベラスの核酸およびアミノ酸配列を
それぞれ配列番号:7および配列番号:8に示す。実施例6:さらなるサーベラスおよびサーベラス様蛋白の同定および単離
サーベラスおよびサーベラス様蛋白は、それらのユニークなシステインパター
ンにより認識されうるファミリーのメンバーである。このファミリーは、サーベ
ラス、サーベラス様蛋白、Dan蛋白およびNorrie蛋白を包含する。Dan蛋白は腫瘍
サプレッサー候補であり、Norrie蛋白欠損は盲および聾唖を包含する先天性欠陥
を生じさせる。よって、サーベラスファミリーのメンバーは、細胞分化および増
殖において重要な役割を果たしていると思われ、したがって、このファミリーの
蛋白の他のメンバーを見いだすことは重要である。ファミリーのメンバーは必
ずしもアミノ酸相同性により認識されるものではなく、相当な多様性を示すが、
9個のシステインのユニークなパターンにより認識されうる。これらの各蛋白中
のコンセンサスシステインパターンはC(X13-15)C(X9)CxGxC(X14 -23
)CXXC(X13)C(X15-18)CXCであり、式中、Xyは、サーベラス
およびサーベラス様ファミリーの蛋白の保存されたシステインパターン中の各シ
ステイン間に見いだされる非システインアミノ酸残基数を示す。
このモチーフを求めて呻乳動物ESTを検索することにより、サーベラスファ
ミリーの新規メンバーが同定され、ヒトEST N35377およびネズミES
T AA289245が含まれていた。標準的方法を用いて、全長遺伝子をゲノ
ムまたはcDNAいずれかのライブラリーから単離することがでいきる。これら
の遺伝子は、胚のパターンを決定し、細胞分化または細胞増殖を制御する機能を
発揮するシグナリング蛋白をコードすると考えられ、したがって、医学的治療の
候補蛋白である。
アフリカツメガエルのサーベラスおよびネズミのサーベラス様蛋白のシステイ
ン豊富ドメイン中に2つの別個のサブ領域があり、それらは非常に保存されたシ
ステインモチーフであり、他の種由来のサーベラスおよびサーベラス様蛋白なら
びにサーベラスおよびサーベラス様ファミリーの関連メンバーの同定および単離
に特に有用でありうる。GENBANKにおいて報告された哺乳動物ライブラリーおよ
びESTのスクリーニングを行うためにこれらの非常に保存されたモチーフを使
用することは、ヒトおよび他の種由来の蛋白のサーベラスおよびサーベラス様フ
ァミリーのさらなる蛋白を同定するものと考えられ、さらなるファミリーのメン
バーが見いだされうる。第1領域はモチーフC−X−G−X−Cであり、配列番
号:1の186から190までのアミノ酸残基において見いだされるCys−P
he−Gly−Lys−Cysに対応する。よって、配列番号:1の613から
627までのヌクレオチド位置における配列TGC TTT GGC AAA TG
Cならびにその近くの領域に対する縮重オリゴヌクレオチドは、サーベラスおよ
びネズミのサーベラス様蛋白のC−X−G−X−Cモチーフを有する他の遺伝子
を同定し単離するのに有用でありうる。アフリカツメガエルのサーベラスお
よびネズミのサーベラス様蛋白のシステイン豊富ドメイン中の第2の非常に保存
された領域はモチーフC−X−X−Cであり、配列番号:1の206から209
までのアミノ酸残基において見いだされるCys−Ser−His−Cysに対
応する。よって、配列番号:1の673から684までのヌクレオチド位置にお
ける配列TGC TTC CAC TGCならびにその近くの領域に対する縮重オ
リゴヌクレオチドは、サーベラスおよびネズミのサーベラス様蛋白のC−X−X
−Cモチーフを有する他の遺伝子を同定し単離するのに有用でありうる。上記モ
チーフを用いて、蛋白のサーベラスおよびサーベラス様ファミリーのさらなる蛋
白を他の種から同定することができ、ヒト、マウス、またはカエル由来のさらな
るメンバーを見いだすことができる。上記の2つのモチーフを協奏的に使用する
ことは、さらなるサーベラスおよびサーベラス様ファミリーのメンバーの特異的
な同定および単離をさらに提供する可能性がある。実施例7:サーベラスおよびサーベラス様活性のマイクロインジェクションアッ セイ
アフリカツメガエルのサーベラスをコードするmRNAを、異なる段階(4細
胞、8細胞および32細胞)のアフリカツメガエルの割球に注入することにより
、特定遺伝子の発現パターンおよび発達中の胚の形態に対して大きな影響が得ら
れた。サーベラスの誤発現により、脊索前板、脊索および腹側体幹中胚葉の発達
ならびにそれらの個々の分子マーカー(ゴーセコイド(goosecoid)、コラーゲ
ンIIおよびx−グロビン)を阻害する。サーベラスのマイクロインジェクショ
ンにより、脳、嗅板およびセメント腺のごとき神経後胚葉前部構造が誘導される
。サーベラスにより誘導される遺伝子発現は、N−CAM(脳)、Otx2(前
脳)、CG−13(セメント腺)およびNkx−2.5(心臓原基)を包含する
。サーベラスによる神経組織の誘導は、Otx2マーカーのアップレギュレーシ
ョンにより示されるように脳の前部領域に対して特異的であったが、かかる誘導
はEn−2(中脳−後脳接合部)、Krox20(後脳)およびX1Hbox−
6(脊髄)を包含する後部マーカーによっては示されなかった。32細胞の割球
へのサーベ
ラスの注入は、頭部においては異所性の、心臓および肝臓においては重複した誘
導を生じさせた。
サーベラスと同様に、サーベラス様mRNAを動物のキャップエクスプラント
(cap explants)中にマイクロインジェクションすると、アフリカツメガエル胚
においてCNS前部の誘導が生じる。しかしながら、哺乳動物サーベラス様mR
NAをアフリカツメガエル胚にマイクロインジェクションしても、例えば前脳、
サイクロピック(cyclopic)な目、嗅板およびセメント腺を含む異所性頭部構造
の形成は誘導されず、重複しているが同一でない機能的効果が示唆された。よっ
て、サーベラス様は、アフリカツメガエルにおけるアッセイにおいて前脳形成を
誘導する中和因子である。実施例8:さらなる胚性幹細胞アッセイ
本発明のサーベラス様蛋白の効果をアッセイするために、多くの利用可能な胚
性幹細胞系に対するインビトロでの成長および分化効果をアッセイすることがで
きる。1のかかる細胞系はES−E14TG2であり、メリーランド州Rockvil1
eのAmerican Type Culture Collectionから入手できる。
アッセイを行うために、100ユニットのLIF存在下で細胞を増殖させて、
それらを未分化状態に保つことができる。まず、LIFを除去し、懸濁液中で細
胞をいわゆる胚様体として凝集させることによりアッセイをセットアップする。
3日後、胚様体をゼラチン被覆プレート(PCR分析用12ウェルプレート、免
疫細胞化学用24ウェルプレート)上に置き、アッセイすべき蛋白で処理する。
細胞に栄養分を供給し、2〜3日ごとに蛋白因子で処理する。15%ウシ胎児血
清(FBS)補足培地またはより少量のFBSを含むCDM限定培地においてアッ
セイを行えるように、細胞を適合させてもよい。
処理期間(7〜21日の範囲)の終わりに、細胞からRNAを集め、以下のマ
ーカーに従って定量的マルチプレックスPCRにより分析する。該マーカーは、
Brachyury(中胚葉マーカー)、AP−2(外胚葉マーカー)、およびNHF−
3α(内胚葉マーカー)である。免疫細胞化学により、ニューロン細胞(グリア
およびニューロン)、筋肉細胞(心筋細胞、骨格筋および平滑筋)の分化、なら
びにプロテオグリカンコア蛋白(軟骨)およびサイトケラチン(真皮)のごとき
他の種々の表現型マーカーを検出することも可能である。LIFが除去された場
合にこれらの細胞は自律的に分化する傾向があるので、つねに未処理対照との比
較により結果を定量する。実施例9:ヒトサーベラス蛋白の発現
ヒトサーベラスcDNA(配列番号:7)を、特許出願に記載のごとく哺乳動
物発現ベクターを用いてCOS細胞において発現させた。観察された蛋白は分泌
されたものであり、分子量約35〜45kDであり、250個のアミノ酸(配列
番号:8のアミノ酸18から267まで)からなる糖鎖付加蛋白であった。
上の説明は本発明の好ましい具体例を詳細に説明するものである。本発明の実
施において、これらの説明を考慮して多くの修飾および変更が当業者によりなさ
れると考えられる。これらの修飾および変更は添付した請求の範囲の範囲内であ
ると確信する。
本明細書において参照したすべての刊行物および特許文献を、特に参照により
それらが十分に本明細書に記載されているものとみなす。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考)
A61P 1/18 A61P 11/00
9/00 13/12
11/00 17/02
13/12 19/00
17/02 19/02
19/00 19/10
19/02 21/00
19/10 25/00
21/00 25/16
25/00 25/28
25/16 29/00 101
25/28 43/00 105
29/00 101 C07K 14/47
43/00 105 16/18
C07K 14/47 C12N 1/15
16/18 1/19
C12N 1/15 1/21
1/19 C12P 21/02 C
1/21 C12P 21/08
5/10 (C12P 21/02
C12P 21/02 C12R 1:91)
// C12P 21/08 C12N 15/00 ZNAA
(C12P 21/02 5/00 A
C12R 1:91) A61K 37/02
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY,
DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I
T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ
,CF,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,
NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,KE,L
S,MW,SD,SZ,UG,ZW),EA(AM,AZ
,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),AL
,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,
BY,CA,CH,CN,CU,CZ,DE,DK,E
E,ES,FI,GB,GE,GH,GM,GW,HU
,ID,IL,IS,JP,KE,KG,KP,KR,
KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,M
D,MG,MK,MN,MW,MX,NO,NZ,PL
,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI,SK,
SL,TJ,TM,TR,TT,UA,UG,UZ,V
N,YU,ZW
(72)発明者 フォレッティー,マキシミリアン
アメリカ合衆国02178マサチューセッツ州
ベルモント、コモン・ストリート187番
(72)発明者 デロバーティス,エドワード・エム
アメリカ合衆国90272カリフォルニア州パ
シフィック・パラセイズ、ダルス・イネ
ズ・レイン16958番