【発明の詳細な説明】
新規な1,2−ジチイン抗感染症剤
1.発明の分野
この発明は、抗真菌剤、抗感染症剤及び細胞障害剤として有用である1,2−
ジチイン複素環式物質の新規なグループに関する。本発明は、更に、誘導体の合
成に広い適用性を有する、置換1,2−ジチイン環系を得るための合成法を詳述
する。
2.発明の背景
1,2−ジチイン類は、ベンゼンの2つの連続CH基と置き換わった2つの硫
黄原子を有する6員複素環式化合物である。1,2−ジチイン分子は、それらの
アンチ芳香族性−非平面環系のために、理論化学者及び分光学者達による熱心な
研究の主題となっている。Aihara,J.Bull.Chem.Soc.Jpn.1990,63,2899
−2903;Cirmiraglia,R.ら,J.Mol.Str(Theochem)1991,230,287-293。
今日では、チアルブリン(thiarubrine)類と呼ばれる8種の1,2−ジチイン含
有アセチレン化合物が天然供給源から、主として植物の Asteraceae から単離さ
れている。Constabel,C.P.;Towers,G.H.N.Planta Medica 1989,55,35-37
;Balza,F.ら,Phytochemistry 1990,29,2901;Towers G.H.N.ら,1993,
米国特許第5,202,348号;Ellis,S.ら,Phytochemistry 1993,33,224
-226。これら8種の他のものでは、Aspilia mossambicesis 及び A.plurisetta
の若い葉から単離されたチアルブリンA(1)及びチアルブリンB(2)が、抗
ウィルス活性及び抗生物質活性を含む幅広いスペ
クトルの生物活性を示すことが分かっている。Balza,F.ら,Phytochemistry 1
989,28,3523;Freeman,F.ら,Sulfur Rep.1989,9,207-247;Freeman,F
.Heterocycles 1990,701-750;Schroth,W.ら,Angew.Chem.,Int.Ed.Eng
l.1967 6,698-699;Schroth,W.ら,Chem.1965,5,352-353 及び353-354。
天然から誘導したもの(Bohlman,F.ら,“Naturally Occurring Acetylenes
”1973,Academic Press,London)であろうと合成で誘導したもの(Meryら,19
72,Ger.Offen.No.2,118,437)であろうと、アセチレン化合物自体が抗感染
症性並びに細胞障害性を有することは周知である。全ての天然1,2−ジチイン
類(チアルブリン類)は、C−3又はC−3とC−6のいずれかにポリアセチレ
ン側鎖を有する。アセチレンを含有するこれら8種の天然1,2−ジチイン類(
チアルブリン類)のいずれも全合成されたことがなく、アセチレンのない1,2
−ジチインの生物学的データも何ら報告されたこともない。チアルブリン中での
アセチレン結合の存在がそれらの全合成を難しくしている。更に、それらの著し
い抗真菌活性におけるそれらアセチレン結合の役割は不明なままである。チアル
ブリン類の生来の細胞障害性及びその熱及び光不安定性も、それらのヒト用薬物
としての潜在的な治療用途を大きく制限している。この欠点を克服するために、アセチレン側鎖のない
一連の新規な1,2−ジチイン類を合成して、抗感染症剤
としての潜在的な用途について生物学的に評価した。
1,2−ジチイン及びその3,6−ジ置換類似体の最初の合成は、Schroth とそ
の共同研究者によって1960代にドイツで報告された。Schroth,W.ら,Ange
w.Chem.,Int.Ed.Engl.1967,6,698-699;Schroth,W.ら,Chem.1965 5
,352-353及び 353-354。この方法は、ジアリールジチイン類の合成(スキーム
I)に最も有用であった。かくして、還流エタノール中、KOHの存在下で1,
4−ジフェニル−1,3−ブタジイン(3)を2当量のベンジルチオールで処理
すると、ビスベンジルチオール付加体(4)が殆ど完全な立体選択性及び位置選
択性で85%の収率で得られた。液体アンモニア中で−78℃で4をNaで処理
することにより2つのベンジル基を還元的に除去した後、K3[Fe(CN)6]で酸
化的にジチイン環形成を行うと、深赤色の3,6−ジフェニル−1,2−ジチイン
(5)が約51%の通し収率で得られた。
しかしながら、液体アンモニア中でナトリウムでベンジル基を還元的に除去し
た後にK3[Fe(CN)6]で酸化的に閉環することを含むこの方法は、3位及び6
位に非芳香族置換基を有する1,
2−ジチイン類の合成にはあまり有効ではない。
3.発明の要旨
本発明は、抗感染症活性を有する下式の新規なジチイン化合物及びその薬学的
に許容できる塩に向けられている。
〔式中、
R1及びR2は独立に、水素、ハロゲン、アルキル又はアルケンであり;そして
R3及びR4は独立に、水素、アルキル又はアルケンである。
この際、該アルキル又はアルケンは任意に環式基を含有し、そして非置換であ
るか、又はヒドロキシル、ハロ、オキシ、エーテル、カルボニル、カルボキシル
、メルカプト、カルボアルコキシ(carbalkoxy)、シアノ、ニトロ、アシルオキシ
、スルファミル、アミノ、アシルアミノ、カルバミル、アリール及びアラルキル
からなる群から選ばれる少なくとも1の官能基で置換されており;該アルキル又
はアルケンは好ましくはC1〜C20の範囲の大きさであり、
該アリール基及びアラルキル基は独立に、非置換であるか、又はヒドロキシル
、ハロ、エーテル、シアノ、ニトロ、カルボキシ、カルボアルコキシ及びアミノ
からなる群から選ばれる少なくとも1の官能基で置換されており;そして
R4とR2、R2とR1、又はR1とR3は、任意に共に結合している。〕
この置換ジチイン化合物は、R4とR2、R2とR1、又はR1とR3が、カルボニ
ル、カルバメート、スルフェート、スルホン、スルホネート、スルホンアミド、
ホスフェート、ホスホネート、ホスホンアミド、エステル、尿素、チオ尿素及び
アミドからなる群から選ばれる基を介して結合した構造を有していてもよい。
次の表は、合成してそれらの生物活性について検討した幾つかの新規な1,2
−ジチインを纏めたものである。我々は、議論し易くするためにそれら化合物に
アルファベットを付した。
本発明は、更に、上記のジチイン化合物を合成する新規な方法であって、
塩基性溶液中で1,4−ジ置換ジイン(但し、該1,4−ジ置換ジインは、1,
4−ジアリールジインではないものとする。)をベンジルチオールと反応させて
ビスベンジルチオール付加体を生成させ;
次いで、該ビスベンジルチオール付加体を該塩基性溶液から溶媒抽出と結晶化
、蒸留又はクロマトグラフィーにより分離し;
次いで、該分離した付加体を液体アンモニア中でアルカリ金属と反応させて該
付加体からベンジル基を還元的に除去してビスチオール体を生成させ;
次いで、該ビスチオール体を酸化体により酸化してジチイン化合物を生成させ
る、
方法に向けられている。
この方法は、好ましくは、水酸化カリウム及びエタノールを含む塩基性溶液;
アルカリ金属として金属ナトリウム;及び酸化体としてK3[Fe(CN)6]を用い
ることによって行われる。
この方法は、好ましくは、水酸化カリウム及びDMFを含む塩基性溶液;アル
カリ金属としてリチウム;及びKI及びI2を含む酸化体を用いることによって
行われる。
本発明は、更に、感染症を治療する新規な方法であって、そのような感染症を
有する温血動物に上記構造を有する治療有効量のジチイン化合物を投与すること
を含む方法に向けられている。
本ジチイン化合物は、特にカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、クリ
プトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)又はアスペルギル
ス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)によって引き起こされる真菌感染症
に
対して特に有効である。
本ジチイン化合物の治療有効性は、下記の微量希釈肉汁アッセイ(microdilut
ion broth assay)により定めることができ、MICが50μg/mL未満であ
るのが有効と考えられる。
本ジチイン化合物は、局所的に、静脈内に、経口で、又は腹腔内に、又はエア
ロゾルにより投与することができる。
4.1,2−ジチイン類の用途
本発明の新規な1,2−ジチイン類は、強い抗真菌活性を示し、カンジダ(cand
ida)属、アスペルギルス(Aspergillus)属及びクリプトコックス(Cryptococcus)
属の株を死滅させるのに特に有効である。
本1,2−ジチイン化合物は、種々の感染症、特に上に列挙したタイプの微生
物により引き起こされる感染症の治療に有利に用いられる。例えば、3,6−ビ
ス(ヒドロキシメチル)−1,2−ジチインと称される新規な1,2−ジチインは
、強力で幅広いスペクトルの抗真菌活性を有しており、このことは、in vivo 薬
物治療に対する有用性、即ちヒトの患者における有用性を示すものである。我々
は、以下に示す一連の生物学試験で、アセチレン側鎖を含有しない1,2−ジチ
インが、非常に低濃度でカンジダ・アルビカンス、クリプトコックス・ネオフォ
ルマンス及びアスペルギルス・フミガーツスの強力な阻害物質であり、アセチレ
ン含有チアルブリン類で認められる同時発生的な毒性がないことを証明した。
5.方法
5.1 in vitro 感受性試験
in vitro 感受性試験を行って、次の化合物、即ち、チアルブリンA、及び下
記の一連の新規な非アセチレン系1,2−ジチイン化合物の最小阻止濃度(MI
C)及び最小殺真菌濃度(MFC)を測定した。MIC試験は、微量希釈肉汁ア
ッセイにより行った。試験した真菌は、カンジダ・アルビカンス ATCC 10
259及びB311株、クリプトコックス・ネオフォルマンス ATCC 365
56、アスペルギルス・フミガーツス ATCC 13073、及びトリコフィト
ン・ルブルム(Trichophyton rubrum)ATCC 18762であった。酵母は酵母
形態学的寒天培地(yeast morphology agar)上で増殖させ、糸状真菌はサブロ
ー寒天培地上で増殖させた。全試験を96ウェルマイクロタイタープレート中の
サブロー肉汁中で行った。化合物を段階的に希釈し、次いでC.アルビカンスに
ついては2×104cfu/mLで、C.ネオフォルマンスについては4×104
cfu/mLで、A.フミガーツスについては1×103cfu/mLで、そして
T.ルブルムについては1×103cfu/mLで接種した(全て最終濃度として
表した)。全ての真菌についてプレートを30℃で48時間インキュベートした
。但し、T.ルブルムについては5日間インキュベートした。増殖を完全に阻害
する最低濃度としてMICを読み取った。MIC終了点を測定した後、50μl
を取り出して酵母形態学的寒天培地上にプレートして生存している微生物を検出
し、そして30℃で48時間インキュベートした。MFCは、そのウェルが増殖
をもたらさない最低濃度であると定めた。
5.2 皮膚毒性学試験
チアルブリンA及び新規な1,2−ジチイン化合物3,6−ビス(ヒドロキシメ
チル)−1,2−ジチインの、ICRマウスで皮膚過敏を引き出す能力について
試験した。5匹のグループに分けた動物各々を軽く麻酔してから、予め水性媒体
(aquaphor)に溶かしておいた試験物質を10mgの量で右耳の背側面に局所的に
塗布した。試験物質なしの水性媒体を対照としてその左耳に塗布した。皮膚過敏
及び紅斑の徴候について動物達を5日間にわたって毎日検査し、15が重い毒性
を示すものとして1から15のスケールで主観的に評価した。
5.3 全身毒性学試験
チアルブリンA及び新規な3,6−ビス(ヒドロキシメチル)−1,2−ジチイ
ンの全身毒性の可能性についても評価した。5匹又は6匹のグループに分けたI
CRマウス各々に所定試験化合物の溶液を、チアルブリンAについては連続3日
間にわたりそして該1,2−ジチインについては連続5日間にわたり腹腔内注射
した。各動物を毎日計量しそして14日間かけて死亡率を観察した。チアルブリ
ンAについてのLD50は0.6mg/kgと測定された。同じルートにより30
mg/kgまでの用量で投与した3,6−ビス(ヒドロキシメチル)−1,2−ジ
チインは無毒で、対照と比較して何の明白な体重減少もなかった。
5.4 1,2−ジチインの生物活性
MIC及びMFC測定の結果を表1a及び1bに示す。分かるように、これら
結果は、これまで知られていなかった1,2−ジチイン化合物が良好な in vitro
活性を有することを示しており、
それら一連のもののうちより活性なメンバーについての結果はチアルブリンAで
得られた結果と類似している。重要なことは、全ての試験化合物についてのMF
Cが、一般にMICの1回希釈の範囲内にあったということであり、このことは
殺真菌作用のメカニズムを示唆するものである。これら結果は、幅広いスペクト
ルの医学的に重要な真菌に対するこれら新規な非アセチレン系1,2−ジチイン
化合物の強力な抗真菌活性を示している。
皮膚過敏性試験(表2を参照のこと)からの結果は、5日目までにアセチレン
含有チアルブリンAが著しい毒性を引き出したことを示し、処理した耳について
の平均評点が9でそれら5匹の動物の対照の耳についての正常な読み取り値が4
であった。対照的に、アセチレン側鎖を欠く1,2−ジチイン(3,6−ビス(ヒ
ドロキシメチル)−1,2−ジチイン)で処理したマウスは、5日間にわたって
皮膚過敏又は紅斑の徴候を示さなかった。
全身毒性学検討からの結果は、チアルブリンAが約0.6mg/kg(総用量
では1.8mg/kg)のLD50用量と、高度に毒性であることを示したのに反
して、同じルートにより3,6−ビス(ヒドロキシメチル)−1,2−ジチインを
与えた全てのマウスは、1日当たり30mg/kgの用量(総用量で150mg
/kg)で生存しかつ対照と比較して何の明白な体重減少もなかった。
全体として、これら結果は、1,2−ジチイン類の化合物はアセチレン含有チ
アルブリン類の有害な毒性学的特性なしに強力な抗真菌プロフィールを有するこ
とを示している。このことは、チアルブリン類に見出されるアセチレン部分が、
観察されたチアル
ブリン毒性の大きな原因であることを立証している。また、これらアセチレン部
分は、その抗感染症特性に部分的に寄与しているに過ぎない一方で、1,2−ジ
チイン環は抗感染症活性の重要な薬作用発生団(pharmacophore)である。
実施例1 1,6−ジヒドロキシ−2,4−ヘキサジインへのベンジルチオール付加
100mL丸底フラスコに40mLのDMF、1mLの水、及
び300mgのKOHペレットを仕込んだ。この混合液に2.59mLのベンジ
ルチオール(22mmol,2.2当量)を添加した。室温で20分間攪拌した後、
1.10gの1,6−ジヒドロキシ−2,4−ヘキサジイン(I)(10mmol)を
この溶液に添加すると、熱くなり(フラスコを水浴中で冷却した)そして即座に
深赤色に変色した。次いで、この反応混合液を室温で3時間攪拌してから150
mLの水を注ぎ込んだ。得られた混合液をEtOAc(1×200mL,1×1
00mL)で抽出してから合わせたEtOAc層を水(2回)及び食塩水で続け
て洗浄して乾燥(MgSO4)した。溶媒を減圧留去すると僅黄色固体残渣が得
られ、これをヘキサン/CHCl3/EtOAcから再結晶して、2.34g(6
5%)の淡黄色ビスベンジルチオール付加体 II を得た:mp121.5〜12
3℃;Rf0.36(EtOAc/ヘキサン=1:1);1H NMR(300 MHz,CDCl3
)δ 1.65(t,2H,J=6.3Hz),3.90(s,4H),4.15(d,4H,J=6.3Hz),6.81(s,2
H),7.22-7.29(m,10H);13C NMR(75 MHz,CDCl3)δ 37.70(t),66.42(t),12
7.19(d),128.58(d),128.86(d),129.08(d),137.95(s),138.24(s);IR(KBr
)3422,3388,3061,2925,1548 cm-1。
元素分析 C20H22O2S2・1/2 H2O についての計算値:C,65.36;H,6.31。実測
値:C,65.73;H,6.23。実施例2 3,6−ビス(ヒドロキシメチル)−1,2−ジチイン(ジチインA)
還流管及び2つのゴム性隔壁を備えた25mL三頸丸底フラスコに約10mL
の液体アンモニアを−78℃で仕込んだ。その温度でこの液体アンモニアにまず
42mgのリチウム(4当量)を添加してから4mLの乾燥THF中の538m
gのジオール(II)を添加した。このジオール溶液の添加が完了した後まもなく、
この溶液の青色が消えてこの混合液は白色懸濁液になった。この混合液の青色を
維持するよう追加量のリチウムを添加した。得られた混合液を−78℃で1時間
攪拌した時点で、青色が消えるまで数滴のメタノールを添加した。この反応混合
液を室温まで徐々に温め、その間に蒸発によりアンモニアを除去すると、黄色溶
液が得られた。残留アンモニアをロータリーエバポレーターで留去することによ
り除去した。得られた残渣を攪拌しながら6mLの水と10mLのエーテルで処
理して得られた混合液を0℃まで冷却し、15mLの20%KI水溶液に溶かし
た761mgのヨウ素(3.00mmol,2.9当量)で処理した。次いで、この混
合液を室温まで温めて深赤色のエーテル層と橙色の水層を分液した。水層をエー
テル(2×20mL)で抽出して合わせたエーテル層を0.1M Na2SO4水溶
液(15mL)、水(20mL)、及び食塩水(20mL)で続けて洗浄して、
最後に乾燥(Na2SO4)した。溶媒をロータリーエバポレーターで留去し
てからEtOAc/ヘキサン(1:1)を溶離液とするシリカゲルフラッシュカ
ラムクロマトグラフィーにより精製して、125mgの3,6−ビス(ヒドロキ
シメチル)−1,2−ジチイン(47%)を赤色固体として得た:mp64〜66
℃(クロロホルム/ヘキサン);Rf0.14(EtOAc/ヘキサン=1:1
);1H NMR(360 MHz,CDCl3)δ 1.77(t,2H,J=6.2Hz),4.29(d,4H,J=6.2Hz
),6.40(s,1H);13C NMR(90 MHz,CDCl3)δ 64.63(t),125.17(d),134.96(s
)。元素分析C6H8O2S2についての計算値:C,40.89;H,4.58。実測値:C,41.06
;H,4.71。実施例3 3,6−ビス(アセチルオキシメチル)−1,2−ジチイン(ジチインB)
ピリジン(15mL)中の3,6−ビス(ヒドロキシメチル)−1,2−ジチイ
ン、つまりジチインA(600mg,3.40mmol)の攪拌溶液に無水酢酸(2.
0mL,1000 mol%)を滴下した。暗所で一晩攪拌した後、この混合液をジ
エチルエーテル(200mL)で希釈して、ジエチルエーテル(50mL)と3
.0M H3PO4(200mL)中に分配した。そのジエチルエーテル層を3.0M
H3PO4(200mL)、飽和NaHC
O3(200mL)で洗浄し、乾燥(Na2SO4)し、そして溶媒をロータリーエ
バポレーターで留去した。得られた油状残渣を1:3/ジエチルエーテル:ヘキ
サンを溶離液として用いるシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーによ
り精製して、40mgのジチインBを赤色オイル(870mg)として得た:1H
NMR(CDCl3)δ 6.38(s,2H),4.70(s,4H),2.10(s,6H):13C NMR δ 170.37,
130.48,127.75,65.19,20.77。実施例4 3,6−ビス(ベンゾイルオキシメチル)−1,2−ジチイン(ジチインF)
ピリジン(1.0mL)中の3,6−ビス(ヒドロキシメチル)−1,2−ジチ
イン、つまりジチインA(20mg,0.113mmol)の攪拌溶液に塩化ベンゾ
イル(0.13mL)を一度に添加した。暗所で室温で一晩攪拌した後、この混
合液をジエチルエーテル(10mL)で希釈して3.0M H3PO4(20mL)
とジエチルエーテル(5.0mL)中に分配した。そのジエチルエーテル層を飽
和NaHCO3(20mL)で洗浄し、乾燥(Na2SO4)し、そして溶媒をロータ
リーエバポレーターで留去した。得られた油状残渣を1:3/ジエチルエーテル
:ヘキサンを溶離液として用いるシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィ
ーにより精製して、赤色オイル(40.1mg)を得た:1
H NMR(CDCl3)δ 8.07(d,4H),7.59(t,2H),7.46(t,4H),6.50(s,2H),4.
98(s,4H);13C NMR δ 165.91,133.37,130.63,129.78,128.55,128.49,12
7.70,65.65。実施例5 3,6−ビス(プロピオニルオキシメチル)−1,2−ジチイン(ジチインG)
テトラヒドロフラン(2.0mL)中の3,6−ビス(ヒドロキシメチル)−1
,2−ジチイン、つまりジチインA(20mg,0.113mmol)及びトリエチル
アミン(0.30mL)の攪拌溶液に塩化プロピオニルを全混合物液が固体にな
るまで滴下した。この固体化混合物に1.0M H3PO4(20mL)を添加して
標的化合物をジエチルエーテル(2×20mL)で抽出した。合わせたエーテル
抽出液を飽和NaHCO3(100mL)で洗浄し、乾燥(Na2SO4)し、そし
て溶媒を留去して、赤色オイル(22.2mg)を得た:1H NMR(CDCl3)δ 6.38(
s,2H),4.72(s,4H),2.39(q,4H),1.16(t,6H)。実施例6 3,6−ビス(イソブチリルオキシメチル)−1,2−ジチイン(ジチインH)
ピリジン(2.0mL)中の無水イソ酪酸(0.2mL,1,000 mol%)の
攪拌溶液に3,6−ビス(ヒドロキシメチル)−1,2−ジチイン、つまりジチイ
ンA(20mg,0.113mmol)を一度に添加した。暗所で室温で一晩攪拌し
た後、この混合液をジエチルエーテル(20mL)で希釈して、3.0M H3PO4
(80mL)とジエチルエーテル(30mL)中に分配した。そのジエチルエ
ーテル層を飽和NaHCO3(100mL)で洗浄し、乾燥(Na2SO4)し、溶
媒を留去して、生成物を赤色オイル(32mg)として得た:1H NMR(CDCl3)
δ 6.37(s,2H),4.71(s,4H),2.60(m,2H),1.19(d,6H)。実施例7 3,6−ビス(シクロプロパンカルボニルオキシメチル)−1,2−ジチイン(ジ チインI)
テトラヒドロフラン(2.0mL)中のトリエチルアミン(0.3mL)の0℃
の攪拌溶液に塩化シクロプロパンカルボニル(0.10mL)を滴下した後、テ
トラヒドロフラン(1.0mL)中
の3,6−ビス(ヒドロキシメチル)−1,2−ジチイン、つまりジチインA(2
0mg,0.113mmol)を添加した。暗所で室温で一晩攪拌した後、この混合
液をエーテル(20mL)で希釈して、1.0M H3PO4(80mL)とジエチ
ルエーテル(30mL)中に分配した。そのジエチルエーテル層を飽和NaHCO3
(100mL)で洗浄し、乾燥(Na2SO4)し、溶媒を留去して、赤色オイル
(31.5mg)を得た:1H NMR(CDCl3)δ 6.38(s,2H),4.71(s,4H),1.67(m
,2H),1.04(m,4H),0.92(m,4H)。実施例8 3,6−ビス[(メトキシメチルオキシ)メチル]−1,2−ジチイン(ジチインD)
2mLの乾燥塩化メチレン中の18.7mgのジオールジチインA及び185
μLのN,N−ジイソプロピルエチルアミン(10モル当量)の冷やした(0℃
)溶液に48.4μLの塩化メトキシメチル(6.0モル当量)を一度に添加した
。室温で一晩攪拌した後、この溶液を塩化メチレン(30mL)で希釈して、得
られた混合液をまず水(20mL)で洗浄してから食塩水(20mL)で洗浄し
た。その有機層を乾燥(MgSO4)し、そして溶媒をロータリーエバポレータ
ーで留去して得られた粗生成物を、ヘキサン/CHCl3/EtOAc(5:5
:1)を溶離液とするシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精
製し
て、25.2mgのメトキシメチルエーテルジチインD(90%収率)を橙赤色
粘稠液体として得た:Rf0.45(EtOAc/ヘキサン=1:4);1H NMR
(360 MHz,CDCl3)δ 3.40(s,6H),4.22(s,4H),4.67(s,4H),6.36(s,2H)
;13C NMR(90 MHz,CDCl3)δ 55.54(q),68.83(t),95.76(t),126.45(d),132.
34(s)。実施例9 3,6−ジホルミル−1,2−ジチイン(ジチインE)
2mLの塩化メチレン中の19.4mgのジオールジチインAの懸濁液に室温
で102mgの1,1,1−トリアセトキシ−1,1−ジヒドロ−1,2−ベンズヨ
ードキソール−3(1H)−オン(Dess-Martin 試薬)を一度に添加した。その温
度で40分間攪拌した後、この反応混合液を15mLの飽和NaHCO3水溶液
中の100mgのNa2S2O3で処理した。得られた混合液を塩化メチレン(2×
15mL)で抽出して、合わせた有機層を食塩水(20mL)で洗浄して乾燥(
MgSO4)した。溶媒をロータリーエバポレーターで留去して得られた粗生成
物をEtOAc/ヘキサン(1:1)を溶離液とするシリカゲルフラッシュカラ
ムクロマトグラフィーにより精製して、18.5mg(>98%)のジアルデヒ
ドジチインAを深紫色結晶として得た:mp56〜58℃,Rf0.23(Et
OAc/ヘキサン=1:1);1H NMR(360 MHz,CDCl3)δ 7.30(s,2H),9.60
(s,2H);13
C NMR(90 MHz,CDCl3)δ 141.52(d),142.05(s),186.54(d);IR(KBr)3050
,2958,2925,2851,1670 cm-1;UV(CDCl3)λmax 557(ε 2,250)及び 281
nm(ε 29,400)。元素分析 C6H4S2O2についての計算値:C,41.84;H,2.34。実
測値:C,41.84;H,2.49。
上の合成ルートの概略を示す一般的フローシートを以下に示す。
一般的フローシート
ここに記載しかつ特許請求した発明は、ここに開示した具体的態様により範囲
を限定されない。というのは、これら態様は本発明の幾つかの側面の説明として
意図されたものだからである。あらゆる均等な態様がこの発明の範囲内のもので
あると考えられる。実際、ここに示しかつ記載したものに加えて本発明の種々の
変更がこれまでの記載から当業者には明らかとなろう。かかる変更も添付の請求
の範囲に属すると考えられる。
本願に引用した全ての文献は、参照によりそっくりそのままここに組み入れら
れるものとする。
【手続補正書】特許法第184条の8
【提出日】1995年8月14日
【補正内容】
17.感染症を治療する方法であって、そのような感染症を有する温血動物に治療
有効量の下式のジチイン化合物及びその薬学的に許容できる塩を投与することを
含む方法。
〔式中、
R1及びR2は独立に、水素、ハロゲン、アルキル又はアルケンであり;そし
て
R3及びR4は独立に、水素、アルキル又はアルケンである。
この際、該アルキル又はアルケンは任意に環式基を含有し、そして非置換で
あるか、又はヒドロキシル、ハロ、オキシ、エーテル、カルボニル、カルボキシ
ル、メルカプト、カルボアルコキシ、シアノ、ニトロ、アシルオキシ、スルファ
ミル、アミノ、アシルアミノ、カルバミル、アリール及びアラルキルからなる群
から選ばれる少なくとも1の官能基で置換されており;
該アリール基及びアラルキル基は独立に、非置換であるか、又はヒドロキシ
ル、ハロ、エーテル、シアノ、ニトロ、カルボキシ、カルボアルコキシ及びアミ
ノからなる群から選ばれる少なくとも1の官能基で置換されており;そして
R4とR2、R2とR1、又はR1とR3は、任意に共に結合している。〕
18.感染症が真菌性である、請求項17の方法。
19.真菌感染症が、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、クリプトコッ
クス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)又はアスペルギルス・フ
ミガーツス(Aspergillus fumigatus)によって引き起こされる、請求項18の方法
。
20.ジチイン化合物の治療有効性が、微量希釈肉汁アッセイにより、MICが5
0μg/ml未満であるように定められる、請求項19の方法。
21.ジチイン化合物を局所投与する、請求項17の方法。
22.ジチイン化合物を静脈内投与する、請求項17の方法。
23.ジチイン化合物を腹腔内投与する、請求項17の方法。
24.ジチイン化合物を経口投与する、請求項17の方法。
25.ジチイン化合物をエアロゾルにより投与する、請求項17の方法。
26.下記工程:
水酸化カリウムとDMFを含む塩基性溶液中で1,4−ジ置換ジイン(但し
、該1,4−ジ置換ジインは、1,4−ジアリールジイン又は1,4−ジアルキル
ジインのいずれでもないものとする。)を非置換ベンジルチオールと反応させて
ビスベンジルチオール付加体を生成させる工程;
該ビスベンジルチオール付加体を該塩基性溶液から溶媒抽出と結晶化により
分離する工程;
液体アンモニア中で該分離した付加体から該非置換ベンジル基をリチウムで
還元的に除去してビスチオール体を生成させる工程;
該ビスチオール体をKIとI2を含む酸化体で酸化してジチイン化合物を生
成させる工程
を含む方法により合成されるジチイン化合物。
27.3,6−ビス(ヒドロキシメチル)−1,2−ジチインをアシル化する方法に
より合成されるジチイン化合物。
─────────────────────────────────────────────────────
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(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AP(KE,MW,SD),AM,AU,
BB,BG,BR,BY,CA,CN,CZ,EE,F
I,GE,HU,JP,KE,KG,KR,KZ,LK
,LT,LV,MD,MG,MN,MW,NO,NZ,
PL,RO,RU,SD,SI,SK,TJ,TT,U
A,UZ,VN
(72)発明者 トゥロング,ティーン ヴイ.
アメリカ合衆国 94608 カリフォルニア
州 エメリーヴィル,#3103,クリスティ
ー アベニュー 6400番地
(72)発明者 ビーラー,ドナルド イー.
アメリカ合衆国 94015 カリフォルニア
州 ダリー シティー,#122,キャンパ
ス ドライブ 880番地
(72)発明者 デナー,ジェフリー エム.
アメリカ合衆国 94015 カリフォルニア
州 ダリー シティー,#106,キャンパ
ス ドライブ 850番地
(72)発明者 ヘクター,リチャード
アメリカ合衆国 94038 カリフォルニア
州 モス ビーチ,リンダ ヴィスタ
872番地
(72)発明者 テンペスタ,マイケル エス.
アメリカ合衆国 94038 カリフォルニア
州 モス ビーチ,ピー.オー.ボックス
782
(72)発明者 ローヴ,バーナード
アメリカ合衆国 12351 ニューヨーク州
ホームズ,ボックス 134,ルーラル
ルート 1番地
(72)発明者 ヤン,ウ
アメリカ合衆国 48105 ミシガン州 ア
ン アーバー,#10,ハバード ロード
2151番地
(72)発明者 コリーダ,マサト
アメリカ合衆国 48104 ミシガン州 ア
ン アーバー,チェロキー ロード 1635
番地