JPH0947291A - 変異型スタフィロコッカス・アウレウスv8プロテアーゼ - Google Patents

変異型スタフィロコッカス・アウレウスv8プロテアーゼ

Info

Publication number
JPH0947291A
JPH0947291A JP8160475A JP16047596A JPH0947291A JP H0947291 A JPH0947291 A JP H0947291A JP 8160475 A JP8160475 A JP 8160475A JP 16047596 A JP16047596 A JP 16047596A JP H0947291 A JPH0947291 A JP H0947291A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
protease
protein
urea
derivative
gene
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP8160475A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3852982B2 (ja
Inventor
Masayuki Yabuta
雅之 籔田
Kazuhiro Oosue
和廣 大末
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Suntory Ltd
Original Assignee
Suntory Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Suntory Ltd filed Critical Suntory Ltd
Priority to JP16047596A priority Critical patent/JP3852982B2/ja
Publication of JPH0947291A publication Critical patent/JPH0947291A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3852982B2 publication Critical patent/JP3852982B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K14/00Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • C07K14/435Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans
    • C07K14/575Hormones
    • C07K14/58Atrial natriuretic factor complex; Atriopeptin; Atrial natriuretic peptide [ANP]; Cardionatrin; Cardiodilatin
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N15/00Mutation or genetic engineering; DNA or RNA concerning genetic engineering, vectors, e.g. plasmids, or their isolation, preparation or purification; Use of hosts therefor
    • C12N15/09Recombinant DNA-technology
    • C12N15/63Introduction of foreign genetic material using vectors; Vectors; Use of hosts therefor; Regulation of expression
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N9/00Enzymes; Proenzymes; Compositions thereof; Processes for preparing, activating, inhibiting, separating or purifying enzymes
    • C12N9/14Hydrolases (3)
    • C12N9/48Hydrolases (3) acting on peptide bonds (3.4)
    • C12N9/50Proteinases, e.g. Endopeptidases (3.4.21-3.4.25)
    • C12N9/52Proteinases, e.g. Endopeptidases (3.4.21-3.4.25) derived from bacteria or Archaea
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K2319/00Fusion polypeptide

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Gastroenterology & Hepatology (AREA)
  • Toxicology (AREA)
  • Endocrinology (AREA)
  • Cardiology (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Plant Pathology (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Enzymes And Modification Thereof (AREA)
  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
  • Materials For Medical Uses (AREA)
  • Prostheses (AREA)
  • Detergent Compositions (AREA)
  • Saccharide Compounds (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)
  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)
  • Medicines Containing Antibodies Or Antigens For Use As Internal Diagnostic Agents (AREA)
  • Immobilizing And Processing Of Enzymes And Microorganisms (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 天然型V8プロテアーゼと比較して、蛋白変
性をもたらす環境条件においても酵素活性を有する変異
型V8プロテアーゼを得ることを目的とする。 【解決手段】 天然型V8プロテアーゼ蛋白中に1つ以
上の変異部位を有し、高濃度の尿素存在下でも酵素活性
を有する変異型プロテアーゼを得る。 【効果】 高濃度の尿素存在下でも酵素活性の失活が抑
えられることにより、尿素存在下の反応系に加える酵素
量が少なくてすみ、また、反応時間の短縮が行なえる。
更には高濃度尿素存在下で蛋白切断が行なえることによ
り今まで得られなかったペプチド断片が得られる等の利
点がある。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は蛋白変性をもたらす
環境条件下においても酵素活性を有する変異型スタフィ
ロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus )V
8プロテアーゼ(以下、スタフィロコッカス・アウレウ
スV8プロテアーゼを天然型V8プロテアーゼと称す
る)、当該酵素蛋白をコードする遺伝子、当該遺伝子を
有する発現ベクター、当該発現ベクターにより形質転換
された組換え細胞及び当該酵素の製造方法に関する。
【0002】さらに詳細には、本発明に係る酵素蛋白
は、蛋白変性剤または温度等により蛋白変性をもたらす
環境条件下においても、従来知られている天然型V8プ
ロテアーゼと比較して、より安定に酵素活性を有する変
異型V8プロテアーゼに関する。
【0003】
【従来の技術】天然型V8プロテアーゼはS. aureus V
8株が培地中に分泌するセリンプロテアーゼの一種であ
る。1972年にDrapeau, G. R. 等によりS. aureus
V8株の培地より、グルタミン酸及びアスパラギン酸の
C末端側のペプチド結合を特異的に切断するセリンプロ
テアーゼの一種として単離精製され(Jean Houmard and
Gabriel R. Drapeau(1972) Proc. Natl. Acad. Sci. US
A 69, 3506-3509), 1987年にはCynthia Carmona
等によりDNA塩基配列が明らかになっている(Cynthi
a Carmona and Gregory L. Gray (1987) Nucleic. Aci
d. Res.15, 6757)。
【0004】当該酵素は336個のアミノ酸残基からな
る前駆体として発現された後、N末端から68個のアミ
ノ酸残基からなるプレプロ配列が除去されて成熟蛋白と
して分泌される。さらに当該酵素にはそのC末端領域
(N末端からのアミノ酸配列番号;221−256)に
プロリン−アスパラギン酸−アスパラギンのリピート
(繰り返し)配列が存在しているが、当該配列は酵素活
性には必要ないことを本発明者等は既に見いだしている
(特願平6−296028、EP700995A)。
【0005】天然型V8プロテアーゼは酵素としての機
能解析は不十分であるにも拘わらず、当該酵素はグルタ
ミン酸及びアスパラギン酸のC末端側のペプチド結合を
特異的に切断することから蛋白のアミノ酸配列の決定に
汎用されている。また、天然型V8プロテアーゼは蛋白
の変性を起こさせるような蛋白変性剤の一つである尿素
の存在下(2M尿素程度)でも基質にある程度作用する
ことから、遺伝子組換え技術で宿主内に大量に発現させ
た目的ペプチドを含む不溶性融合蛋白を尿素で可溶化し
た後、尿素存在下に当該酵素を作用させて目的ペプチド
を融合蛋白から遊離させる工程にも使用されている。
【0006】一方、本発明者等はヒトカルシトニンの遺
伝子組換え法による製造に関して、上記の方法を用いて
効率良くヒトカルシトニンを製造することに成功してい
る(特開平5−328992)。また、ヒトグルカゴン
を大腸菌発現系で融合蛋白として発現させた例において
も、天然型V8プロテアーゼが当該融合蛋白からヒトグ
ルカゴンの切り出しに使用されている(Kazumasa Yosik
awa et al. (1992) Journal of Protein Chemistry 11,
517-525) 。
【0007】以上のように、天然型V8プロテアーゼは
非常に多くの生化学的研究又は遺伝子組換えによるペプ
チドの製造に用いられている。天然型V8プロテアーゼ
は蛋白の変性を起こさせることで知られている尿素を含
む酵素反応液中(2M程度の尿素を含む)においてもあ
る程度の切断反応を行なうため、遺伝子組換え法による
有用ペプチド等の製造に用いられている。
【0008】しかし、この天然型V8プロテアーゼの当
該性質に加えて更に蛋白変性をもたらす環境条件下にお
いても酵素活性を有する変異型V8プロテアーゼを作製
し、用いることができれば、当該環境条件下においても
酵素活性の失活が抑えられることになる。従って、当該
性質を有する変異型V8プロテアーゼを用いることがで
きれば、(1)蛋白変性剤存在下の反応系に加える酵素
量が少なくてすむ、(2)または反応時間の短縮が行な
える、(3)更には高濃度の蛋白変性剤存在下や高温下
で蛋白切断が行なえることにより今まで得られなかった
ペプチド断片が得られる等の利点があげられるために、
研究上及び産業上、当該変異型V8プロテアーゼが非常
に望まれていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、蛋白変性を
もたらすような環境条件においても酵素活性を有する変
異型V8プロテアーゼを得ることを目的とし、更に本発
明は、当該酵素蛋白をコードする遺伝子、当該遺伝子を
有する発現ベクター、当該発現ベクターにより形質転換
された組換え細胞及び当該酵素蛋白の製造方法に関する
ものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、天然型V
8プロテアーゼ遺伝子からPCR法で取得した野性型V
8プロテアーゼ誘導体遺伝子にPCR法でランダム変異
を起こさせ、適当な宿主を選択して、蛋白変性をもたら
すような環境条件下でもより安定に酵素活性を示す変異
型V8プロテアーゼ誘導体を発現する遺伝子を取得し、
当該遺伝子によりコードされる遺伝子産物(蛋白質)が
上記に述べた目的を十分に達成し、産業上非常に有用で
あることを確認することにより本発明を完成した。
【0011】本明細書において、変異型V8プロテアー
ゼとは天然型V8プロテアーゼが蛋白変性をもたらすよ
うな環境条件においても酵素活性を有する酵素蛋白を意
味し、野性型V8プロテアーゼ誘導体とは天然型V8プ
ロテアーゼから当該蛋白のC末端の一部分を欠失させた
酵素蛋白を意味し、変異型V8プロテアーゼ誘導体とは
野生型V8プロテアーゼ誘導体に変異を起こさせた酵素
蛋白を意味する。なお、野性型V8プロテアーゼ誘導体
にはC末端アミノ酸配列の異なる3種類の野性型V8プ
ロテアーゼ誘導体が作製され、それらは各々(1) 野
性型V8プロテアーゼ誘導体RPT(−)(略称、V8
RPT(−))、(2)野性型V8プロテアーゼ誘導体
D(略称、V8D) 、(3)野性型V8プロテアーゼ誘
導体F(略称、V8F)と記載する。また、これらの野
性型V8プロテアーゼ誘導体に変異が導入された変異型
V8プロテアーゼ誘導体については、各誘導体の末尾に
変異の種類を示す番号を記載することにより(例えば、
V8RPT(−)1、V8D5、V8F158等)、導
入されている変異の種類を表わす。
【0012】従来知られている天然型V8プロテアーゼ
が変性をもたらすような環境条件としては、蛋白変性剤
又は温度等により蛋白構造が変化する場合が挙げられる
が、本明細書においては蛋白変性剤による場合、特に蛋
白変性剤としての高濃度の尿素に対して十分な耐性を有
する酵素蛋白を例に挙げて詳細に説明する。前述のよう
に天然型V8プロテアーゼのアミノ酸配列とDNA塩基
配列は既に明らかになっているが、蛋白の高次構造は明
らかになっていない。従って、どのアミノ酸を変えれば
高濃度の尿素に対して耐性を有する性質が付加されるの
かは全く不明である。
【0013】そこで本発明者等は尿素耐性を示す本酵素
の変異遺伝子を単離するには、本遺伝子をコードする遺
伝子にランダムに変異を起こさせ、変異を持った遺伝子
を発現プラスミドに組み込み、宿主細胞を組換えプラス
ミドで形質転換し、遺伝子発現を行なった後、天然型V
8プロテアーゼが失活する5M尿素存在下でも酵素活性
を示す酵素を発現する組換え体をスクリーニングする方
法が適切であろうと考え本発明に係る以下の研究を行な
った。
【0014】まず、天然型V8プロテアーゼ遺伝子から
PCR法で取得した野性型V8プロテアーゼ誘導体RP
T(−)遺伝子を組み込んだプラスミドpV8RPT
(−)を作製した。なお野性型V8プロテアーゼ誘導体
RPT(−)とは天然型V8プロテアーゼのC末端の4
8アミノ酸を欠失した誘導体であり、プラスミドpV8
RPT(−)はこの野性型V8プロテアーゼ誘導体RP
T(−)と大腸菌β−ガラクトシダーゼ誘導体(β−g
al97S4D)との融合蛋白を発現するプラスミドで
ある。
【0015】次に、pV8RPT(−)上の野生型V8
プロテアーゼ誘導体RPT(−)遺伝子に対しPCR法
によるランダム変異処理を行い、変異処理された野生型
V8プロテアーゼ誘導体RPT(−)遺伝子のプールを
調製した。この変異処理を受けた遺伝子プールをpV8
RPT(−)上の野性型V8プロテアーゼ誘導体RPT
(−)遺伝子と置換し、大腸菌JM101に形質転換を
行ない、多数の組換え体を得た。これらの組換え体を培
養し、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド
(以下IPTG)を添加し融合蛋白の遺伝子発現を行な
った。培養液に最終濃度が約5Mになるように尿素を添
加した後、本酵素の合成基質であるZ-Phe-Leu-Glu-4-ni
troanilideを用いて酵素反応を行なった。
【0016】約700株の組換え体をスクリーングした
結果、上記の反応条件で酵素活性を有する4株の組換え
体U1、U5、U7及びU8株が得られた。これらの変
異株を用い5M尿素存在下での酵素活性を天然型V8プ
ロテアーゼと比較したところ、いずれも天然型V8プロ
テアーゼよりはるかに高い尿素抵抗性を示した。
【0017】更にこれらの組換え体よりプラスミドを単
離し、変異型V8プロテアーゼ誘導体RPT(−)遺伝
子のDNA塩基配列を決定したところ、U1株では14
7番目のアミノ酸のリジンがアルギニンに、U5株では
71番目のアミノ酸のアスパラギンがセリンに、U7株
では71番目のアミノ酸のアスパラギンがセリン及び1
47番目のアミノ酸のリジンがアルギニンに、U8株で
は44番目のアミノ酸のアスパラギン酸がグルタミン酸
に置換される変異を起こしていた。すなわちアミノ酸置
換として3種類が得られ、とくにU7株由来のものはU
1株とU5株由来のアミノ酸置換を組み合わせた2重変
異であることが明らかとなった。
【0018】野生型V8プロテアーゼ誘導体RPT
(−)が尿素耐性を示すには上記の位置のアミノ酸変異
が必要であることが本発明者等により始めて明らかにさ
れた。これらのアミノ酸の位置はV8プロテアーゼ蛋白
の構造を保つうえで重要な位置と考えられる。従って、
これらの位置に他のアミノ酸を導入することにより本発
明に係る酵素の蛋白構造が変化し、尿素耐性が上がるこ
とが十分に考えられる。
【0019】得られた変異型V8プロテアーゼ誘導体R
PT(−)において、2重変異を持つU7株由来のもの
が最も尿素耐性に優れていることから、本発明者等は、
上記の3種類の変異を組み合わせて野生型V8プロテア
ーゼ誘導体RPT(−)遺伝子に導入すれば、個々の変
異型V8プロテアーゼ誘導体RPT(−)が示す尿素耐
性より更に耐性が増すのではないかと考え、3重変異を
有する変異型V8プロテアーゼ誘導体RPT(−)遺伝
子を作製し、その融合蛋白を発現させて尿素耐性を検討
した。その結果、3重変異を有する変異型V8プロテア
ーゼ誘導体RPT(−)は、個々の変異型V8プロテア
ーゼ誘導体RPT(−)より高い尿素耐性を示すことが
明らかになった。
【0020】次に、本発明者等は上記の変異型V8プロ
テアーゼ誘導体の生産について検討した。この際、変異
型V8プロテアーゼ誘導体RPT(−)とはC末端のア
ミノ酸配列が異なる変異型V8プロテアーゼ誘導体Dあ
るいは同Fを用い、まずそれらを不活性な封入体として
発現させ、その後、活性ある変異型V8プロテアーゼ誘
導体Dあるいは同Fを得る方法による生産を試みた。こ
れは変異型V8プロテアーゼ誘導体RPT(−)では発
現量が低く生産には不利なことによる。なお変異型V8
プロテアーゼ誘導体Dおよび同Fを作製するにあたり使
用した野生型V8プロテアーゼ誘導体D及び同Fは、そ
れぞれ天然型V8プロテアーゼのC末端の56アミノ酸
及び53アミノ酸を欠く誘導体である。
【0021】野生型V8プロテアーゼ誘導体D及び野生
型V8プロテアーゼ誘導体Fを発現させるプラスミドで
あるpV8D又はpV8Fに変異型V8プロテアーゼ誘
導体遺伝子を組み込み、培養後、大腸菌β−ガラクトシ
ダーゼ誘導体、変異型V8プロテアーゼ誘導体Dあるい
は同F、及びアミノグリコシド3’−ホスホトランスフ
ェラーゼ誘導体 (tAPT)からなる不溶性の融合蛋
白を回収し、大腸菌の内因性ompTプロテアーゼによ
る融合蛋白の切断を尿素存在下に行い、変異型V8プロ
テアーゼ誘導体Dあるいは同Fを上記融合蛋白から切り
出した。その後、各種の変異型V8プロテアーゼ誘導体
Dあるいは同Fをリフォールディング工程、精製クロマ
ト工程を経てを精製し工業スケールで生産が可能である
ことを示した。
【0022】さらに精製した各種の変異型V8プロテア
ーゼ誘導体D又は同Fを用い、各種の蛋白変性をもたら
す環境条件下、例えば、尿素存在下、SDS存在下及び
高温における条件下における野性型との比較検討を行っ
た。その結果、変異型は野性型に比べ尿素及びSDSに
よる失活速度が減少し、これらの変性剤に対する耐性を
示すことが明らかになった。
【0023】3重変異を持つ変異型V8プロテアーゼ誘
導体FであるV8F158は5M尿素存在下においても
天然型V8プロテアーゼより安定に酵素活性を有するこ
とから、融合蛋白からのペプチドの切断実験を行った。
融合蛋白としては保護ペプチド(β−gal97S4
D)とヒトC型心房性ナトリウム利尿ペプチド(CNP
−22)がリンカーペプチドを介して融合され、V8プ
ロテアーゼによりCNPが遊離される構造を有するβ−
gal97S4DhCNP−22R5−3を用いた。
【0024】5M尿素存在下にV8F158と天然型V
8プロテアーゼのヒトC型心房性ナトリウム利尿ペプチ
ド融合蛋白に対する切断効率を検討した結果、V8F1
58の方が非常に高い切断効率で上記融合蛋白を切断で
きることを実証した。本発明者等の実施例から変異型V
8プロテアーゼ誘導体F(V8F1、V8F5およびV
8F8)は野性型V8プロテアーゼ誘導体Fに比べ、5
M尿素濃度及び0.1%SDS存在下の酵素反応におい
て変性剤に対する耐性を示すことが明らかになった。し
かし、高温(50℃)での酵素反応の比較においては変
異型V8プロテアーゼ誘導体F8(V8F8)は野性型
V8プロテアーゼ誘導体F(V8F)に比べて熱安定性
が低くなっていた。
【0025】尿素と高温という蛋白変性条件の違いによ
り、それら変性条件に対する酵素の抵抗性に異なる結果
が得られたが、変異部位のアミノ酸残基が当該蛋白の高
次構造を保つのに重要であることを改めて示唆する結果
であるといえる。従って、変異型V8プロテアーゼ誘導
体F8(V8F8)の変異位置のアミノ酸を他のアミノ
酸に置換すれば、温度に対する抵抗性があがると当業者
にとり容易に推測できると考えられることから、本発明
の有用性をそこなうものではない。
【0026】本発明者等は、変異型V8プロテアーゼ誘
導体、野性型V8プロテアーゼ誘導体及び天然型V8プ
ロテアーゼについて、蛋白変性をもたらす環境条件下に
おける酵素活性を比較することで、変異型V8プロテア
ーゼ誘導体の有用性を証明した。本発明者等により得ら
れた結果から、これらの変異を天然型V8プロテアーゼ
に導入すれば蛋白変性をもたらす環境条件下においても
天然型と同等以上の酵素活性を有することは当業者に容
易に推測できることである。従って、本発明に係る酵素
蛋白は、蛋白変性もたらすような環境条件においても酵
素活性を示す変異型V8プロテアーゼであり、望ましく
は当該プロテアーゼが天然型V8プロテアーゼ中に少な
くとも1つ以上の変異部位を有することを特徴とするプ
ロテアーゼである。
【0027】また、更に具体的に好ましい態様としては
変異部位が天然型V8プロテアーゼ中のN末端から44
番目のアスパラギン酸、71番目のアスパラギン及び/
又は147番目のリジンの部位であることを特徴とする
プロテアーゼであり、この場合、変異部位を1箇所、2
箇所乃至3箇所有する場合等が挙げられる。
【0028】そして、最も好ましい態様としては、 (1)変異部位が1箇所である場合、当該変異部位が天
然型V8プロテアーゼ中のN末端から44番目のアスパ
ラギン酸がグルタミン酸に置換された場合、71番目の
アスパラギンがセリンに置換された場合又は147番目
のリジンがアルギニンに置換された場合等が挙げられ、
【0029】(2)変異部位が2箇所である場合、当該
変異部位が天然型V8プロテアーゼ中のN末端から44
番目のアスパラギン酸及び71番目のアスパラギンの部
位である場合(この場合、特に好ましのは44番目のア
スパラギン酸がグルタミン酸に、及び71番目のアスパ
ラギンがセリンに置換された場合が挙げられる)、44
番目のアスパラギン酸及び147番目のリジンの部位で
ある場合(この場合、特に好ましのは44番目のアスパ
ラギン酸がグルタミン酸に、及び147番目のリジンが
アルギニンに置換された場合が挙げられる)、又は71
番目のアスパラギン及び147番目のリジンの部位であ
る場合(この場合、特に好ましのは71番目のアスパラ
ギンがセリンに、及び147番目のリジンがアルギニン
に置換された場合)等が挙げられ、
【0030】(3)変異部位が3箇所である場合、当該
変異部位が天然型V8プロテアーゼ中のN末端から44
番目のアスパラギン酸、71番目のアスパラギン及び1
47番目のリジンの部位である場合(この場合、特に好
ましのは44番目のアスパラギン酸がグルタミン酸に、
71番目のアスパラギンがセリンに、及び147番目の
リジンがアルギニンに置換された場合)等が挙げられ
る。
【0031】上記の変異型V8プロテアーゼをコードす
る遺伝子の作製法としては、S. aureus から遺伝子を単
離する方法、例えば報告されている天然型V8プロテア
ーゼ遺伝子配列からプライマーをデザインし、S. aureu
s の遺伝子バンクから単離する方法、または本発明者等
が行ったPCR法などが挙げられる。さらに、明らかに
なっているS. aureus の天然型V8プロテアーゼ遺伝子
配列から遺伝子を化学合成することも可能であることは
言うまでもない。
【0032】本明細書においてはPCR法で変異型V8
プロテアーゼ誘導体遺伝子を作製したが、変異方法とし
ては従来から知られている方法、例えばin vivo 法(変
異誘発剤処理、紫外線及び放射線処理等)、種々のin v
itro変異法を用い変異遺伝子を作製することができる。
また、所謂自然突然変異選択法でも本発明に係る方法で
変異株を選択できる。
【0033】蛋白の変性をもたらす酵素反応条件として
は尿素、SDSを含む反応液及び高温(例えば45℃以
上)での酵素反応が上げられる、その他の蛋白変性剤と
しては塩酸グアニジンや界面活性剤等が挙げられる。蛋
白変性作用を持つ酵素反応条件としては尿素の場合2〜
5M、塩酸グアニジンの場合0、01〜6M、SDSの
場合0、01〜10%、温度の場合45〜65℃等が挙
げられる。
【0034】本発明に係る蛋白変性をもたらす環境条件
下においても酵素活性を有する変異型V8プロテアーゼ
遺伝子の発現方法としては以下の方法が挙げられる。本
明細書の実施例においては大腸菌を宿主細胞として用い
たが、宿主細胞としては原核細胞においてはブドウ球
菌、サルモネラ菌、放線菌、枯草菌等を挙げることがで
き、また、真核細胞においては糸状菌、酵母、昆虫細
胞、動物細胞等の宿主細胞を挙げることができる。これ
らの宿主細胞に通常用いられている形質転換法により、
変異型V8プロテアーゼ遺伝子を導入することができ
る。
【0035】形質転換に用いる発現プラスミドとして
は、その宿主細胞で機能的に下流の遺伝子発現をコント
ロールできるプロモーターを有し、直接発現法や所謂融
合蛋白発現法などを行える発現プラスミドが望ましい。
また、ベクターとして遺伝子相同組換えを行えるベクタ
ーを用い、適当な宿主細胞の染色体に当該遺伝子を組み
込み、当該蛋白を発現させることも可能である。さらに
は、当該遺伝子を組み込んだウイルスやファージを宿主
細胞に感染させ当該遺伝子を発現させる方法も可能であ
る。
【0036】また、本発明に係る蛋白変性をもたらす環
境条件下においても酵素活性を有する変異型V8プロテ
アーゼの製造方法に関して、本発明者等は非常に効率よ
い製造方法を実施例で示したが、この方法に限定される
だけでなく、既に知られている一般の遺伝子組換え技術
により製造することができる。
【0037】例えば、上述の発現方法を用いて(1)宿
主細胞内で当該蛋白のN末端から直接発現させ可溶性あ
るいは不溶性蛋白として分離精製する製造する方法
(2)宿主細胞内で融合蛋白として当該蛋白を可溶性あ
るいは不溶性融合蛋白として発現させ、プロセッシング
酵素が切断できる条件で融合蛋白を切断し、当該蛋白を
分離精製する製造方法、(3)宿主細胞外に当該蛋白を
分泌させ、当該蛋白を分離精製する製造方法、(4)宿
主菌のペリプラスムに可溶性及び不溶性の蛋白として当
該蛋白を分離精製する製造方法等が挙げられる。当該蛋
白を直接発現法及び融合蛋白法で発現させる場合、不溶
性蛋白になった場合には適当なリフォールディング工程
を経て分離精製し製造することは言うまでもない。
【0038】本明細書の実施例においては、本発明に係
る変異型V8プロテアーゼ誘導体の精製の為に、リフォ
ールディング後、疎水性クロマトグラフィーを用いてい
るが、他の精製方法でも、例えばゲル濾過、イオン交換
クロマトグラフィー等の通常の蛋白の精製操作により高
純度に精製できる。更に、リフォールディング反応終了
時には当該酵素蛋白が活性化され夾雑蛋白を分解してい
まい、その結果、反応終了後の主要蛋白成分が変異型V
8プロテアーゼ誘導体であることから、精製が非常に容
易であることは述べるまでもない。
【0039】
【実施例】以下に実施例により本発明を詳細に説明す
る。実施例1 野生型V8プロテアーゼ誘導体RPT(−)
遺伝子の単離 PCR 法により野生型V8プロテアーゼ誘導体RPT
(−)遺伝子の単離を行った。図1(b)に示す配列を
持つ2種のPCRプライマーを設計し、DNA合成機
(アプライド・バイオシステム社製392型)により合
成した。プライマーA及びBは、図1(a)に示すV8
プロテアーゼ遺伝子領域に対応し、各々の5’側にはXh
o I あるいはSal I 制限酵素認識配列を設けている。
【0040】Jayaswal, R. K. ら(J. Bacteriol. 172:
5783-5788 (1990))の方法により単離調製したS. aureu
s V8株(ATCC27733 )の染色体とこれらのPCRプラ
イマーを用いてPCRを行った。1.0 μMのプライマ
ー、1μgの染色体DNA、50mM KCl、10mM Tris-HCl,
pH8.3、1.5mM MgCl2 、0.01% ゼラチン、200 μMのdN
TP(dATP、dGTP、dCTP、dTTPの混合物)を含む50μl の
反応液に2.5 ユニットのTaqDNAポリメラーゼを添
加し、94℃・1分、72℃・2分、55℃・2分のP
CRを30サイクル行った。その結果、プレプロ配列及
びC末端の48アミノ酸を欠く野生型V8プロテアーゼ
誘導体RPT(−)遺伝子が得られた。
【0041】次に、これらの遺伝子を寒天ゲル電気泳動
し、SUPREP-2(宝酒造(株))を用いて精製した後、制
限酵素Xho I 及びSal I で切断し、Xho I 、Sal I の粘
着末端をもつ野生型V8プロテアーゼ誘導体RPT
(−)遺伝子断片を調製した。
【0042】実施例2 発現ベクターpV8RPT
(−) の作製及び野生型V8プロテアーゼ誘導体RP
T(−)の発現 本実施例で用いるpG97S4DhCT〔G〕R6(Ap
pl. Microbiol. Biotechnol. (1995) 42, 703-708 )
は、大腸菌β−ガラクトシダーゼ誘導体とヒトカルシト
ニン前駆体(hCT〔G〕)との融合蛋白質を高発現す
るプラスミドであり、当該プラスミドはプラスミドpB
R322とプラスミドpG97S4DhCT〔G〕より
作製することができる(図2)。
【0043】なお、プラスミドpG97S4DhCT
〔G〕を含有する大腸菌W3110株はブダペスト条約
に基づいて工業技術院生命工学技術研究所にEschericha
i coliSBM323 として1991年8月8日に寄託されて
おり、受託番号微工研条寄第3503号(FERM B
P−3503)が付与されている。
【0044】PCRにより得られた野生型V8プロテア
ーゼ誘導体RPT(−)遺伝子を発現させるため、pG
97S4DhCT〔G〕R6をXho I 及びSal I で処理
し、ヒトカルシトニン前駆体遺伝子部を欠いたDNA断
片(3.1kb )を寒天ゲル電気泳動により調製した。この
DNA 断片と先に得られたXho I 、Sal I の粘着末端
をもつ野生型V8プロテアーゼ遺伝子断片をT4DNA
リガーゼにより連結し、JM101(本菌株は、例えば
Stratagene社等より入手できる)に形質転換を行い、p
V8RPT(−)を作製した(図3)。このプラスミド
より発現される野生型V8プロテアーゼ誘導体RPT
(−)とβ−ガラクトシダーゼ誘導体との融合蛋白質
(βG97V8RPT(-) ) のアミノ酸配列を図4に示す。
【0045】JM101/pV8RPT(−)を100
mlのLB培地(0.5 %酵母エキス、1.0 %トリプト
ン、0.5 %NaCl)を用い37℃でOD660が1.0に
なるまで培養後、IPTGを最終濃度が2mMになるよ
うに添加し発現の誘導を行った。添加後さらに2時間培
養を継続した後、菌体を遠心分離により回収し、OD6
60が5となるようにTEバッファー(10mM Tris-HCl
(pH8.0),1mM EDTA )に懸濁した。当該懸濁液を超音波
破砕機(Cellruptor; 東湘電気(株))で破砕後、1200
0rpm、5分の遠心分離により不溶性画分を除去し、上清
画分を粗酵素液として使用した。
【0046】V8プロテアーゼの活性測定には合成基質
(Z-Phe-Leu-Glu-4-nitroanilide;ベーリンガーマンハ
イム社製)を用いた。940 μl の100mM Tris-HCl(pH8.
0 )緩衝液に20μl の10mM Z-Phe-Leu-Glu-4-nitroanil
ide 溶液(DMSO溶液)を混合後、40μl の粗酵素液
を添加し、室温5分間の反応による405nm の吸収増加を
測定した。測定には日立分光光度計U-3200を使用した。
【0047】その結果、JM101/pV8RPT
(−)においては、それらの菌体より調製した粗酵素液
には8μg/mlの天然型V8プロテアーゼに相当する
活性が認められ、β−ガラクトシダーゼ誘導体との融合
蛋白質の形で、かつプレプロ配列及びC末端リピート配
列を欠いた状態で活性があることが判明した。
【0048】実施例3 PCRによるV8プロテアーゼ
誘導体RPT(−)遺伝子の変異処理 尿素に対して耐性を持つV8プロテアーゼを得るため、
PCRにより野生型V8プロテアーゼ誘導体RPT
(−)遺伝子を変異処理した。実施例2で得られたpV
8RPT(−)(図3)は、C末端の48アミノ酸が欠
失した野生型V8プロテアーゼ誘導体(V8RPT
(−))を、大腸菌βーガラクトシダーゼ誘導体(β−
gal97S4D)との融合蛋白質として発現するプラ
スミドであり、菌体内の可溶性画分に発現した融合蛋白
質(以後、本融合蛋白質をβG97V8RPT(−)と
表記する)はV8プロテアーゼ活性を持つ。
【0049】当該プラスミドのβG97V8RPT
(−)遺伝子に対し、図5(a)に示すプライマーを用
いて、PCRを行った(図5(b))。1μmol のプラ
イマー、50ngのpV8RPT(−)、50mM KCl、10mM T
ris-HCl (pH8.3) 、1.5mM MgCl2、0.01% ゼラチン、10%
ジメチルスルホキシド(DMSO)、各1mMの dGTP,
dCTP, dTTP 、200 μM dATP を含む50μl の反応液に
2.5ユニットのTaqDNAポリメラーゼを添加し、
94℃・1分、72℃・2分、55℃・2分のPCRを
30サイクル行った。得られたPCR産物(1Kbp)
はクロロホルム処理、エタノール沈殿処理の後、50μl
のTEバッファー(10mM Tris-HCl (pH8.0),1mM EDTA
)に溶解した。
【0050】実施例4 尿素耐性をもつ変異型V8プロ
テアーゼ誘導体RPT(−)のスクリーニング(1次ス
クリーニング) 実施例3で得られたPCR産物を制限酵素Bgl II及びSa
l I で切断後、変異処理を受けた野生型V8プロテアー
ゼ誘導体RPT(−)遺伝子を含む0.8KbpのDNA断片
を0.8 %アガロースゲル電気泳動の後単離し、これをラ
イゲーションキット(宝酒造(株)製)を用いて、pV
8RPT(−)由来のBgl II-Sal I 3.0Kbp 断片と連結
した(図6)。反応終了後、塩化カルシウム法により大
腸菌JM101(本菌株はIn Vitrogen Catalog No. c6
60-00 より入手可)に形質転換し、10μg/mlのテトラサ
イクリンを含むLB寒天培地(1 %トリプトン、0.5 %
酵母エキス、0.5 %NaCl、1.5 %寒天)で形質転換体を
取得した。なお、制限酵素反応、アガロースゲル電気泳
動、形質転換の各操作は常法に従った。
【0051】次に、5 mg/ml グリセリン、6 mg/ml Na2H
PO4 、3 mg/ml KH2PO4、0.5 mg/mlNaCl、1.0mg/ml NH4C
l、2 mM MgSO4・7H2O、0.1mM CaCl2 , 40μg/mlの各ア
ミノ酸(20種類)、1 μg/ml塩酸チアミン、5 μg/ml
テトラサイクリンを含む培地(pH 7.4)を調製し、96
ウェル培養プレート(コーニング社製;製品番号25860
)に50μl ずつ分注した。この培地に先の形質転換体
を1 株ずつ接種し、37℃で培養した。1晩静置培養
後、各ウェルに同組成の新鮮な培地を50μl 分注し、さ
らに37℃で3時間静置培養した。その後、50mMのIP
TG溶液を10μl 分注し、37℃で1時間、遺伝子発現
を誘導した。
【0052】次に、10mg/ml のリゾチーム水溶液を30μ
l 添加し、10分放置後、0.1 %トリトンX-100, 5mM E
DTA (pH8.0) を含む溶液を30μl 添加し、溶菌処理を行
った。続いて、10M 尿素を含む0.1M Tris-HCl (pH8.0)
を160 μl 添加し(最終尿素濃度4.85M )、30℃で3
0分間放置後、10μl の20mMの Z-Phe-Leu-Glu-4-nitro
anilide (ベーリンガーマンハイム社製)を含むDMS
O溶液を添加し、30℃で1晩反応させた。
【0053】約700個の形質転換体に対して上記のス
クリーニングを行ったところ、酵素基質である Z-Phe-L
eu-Glu-4-nitroanilide の分解より生ずる黄色の発色
が、他に比べ強いものが4株得られ、これらの名称をU
1、U5、U7及びU8とした。
【0054】実施例5 尿素耐性をもつ変異型V8プロ
テアーゼ誘導体RPT(−) のスクリーニング(2次ス
クリーニング) この4株(U1、U5、U7及びU8)を10mlのLB培
地(0.5 %酵母エキス、1.0 %トリプトン、0.5 %NaC
l)でOD660が1.0になるまで37℃で培養後、
IPTGを最終濃度が2mMになるように添加し、さらに
2時間培養を継続した後、菌体を遠心分離により回収し
た。
【0055】次に、菌体をOD660が5となるように
TEバッファー(10mM Tris-HCl (pH8.0),1mM EDTA )
に懸濁し、超音波破砕機(Cellruptor; 東湘電気
(株))により菌体を破砕した。破砕液を12000rpm 、
5分の遠心分離により不溶性画分を除去し、上清画分を
粗酵素液として用いた。
【0056】プロテアーゼ活性の測定は940 μl の50mM
Tris-HCl(pH8.0)緩衝液に20μl の20mM Z-Phe-Leu-Glu
-4-nitroanilide 溶液を混合後、40μl の粗酵素液を添
加し、室温5分間の反応による405nm の吸収増加を日立
分光光度計U-3200により測定した。4株由来の粗酵素液
についてV8プロテアーゼ活性を測定した後、次に天然
型V8プロテアーゼ(例えば、エンドプロテイナーゼGl
u-C ;ベーリンガーマンハイム社製)0.2 μg の酵素活
性に相当する粗酵素液を用いて、尿素存在下における反
応の経時変化を調べた。実験操作は、5M尿素、50mM Tri
s-HCl (pH8.0)、0.4mM Z-Phe-Leu-Glu-4-nitroanilid
e、2%DMSOを含む反応液1mlで行い、405nm の吸
収増加により反応の経時変化を測定した(日立分光光度
計U-3200使用)。図7にその結果を示す。
【0057】図7より明らかなように、変異株U1、U
5、U7及びU8が生産する変異型V8プロテアーゼ誘
導体RPT(−)の融合蛋白質(以後、各々βG97V
8RPT(−)1、βG97V8RPT(−)5、βG
97V8RPT(−)7及びβG97V8RPT(−)
8と表記する)は野生型のβG97V8RPT(−)に
比べ基質の分解活性が持続し、尿素に対して耐性である
ことが示された。
【0058】実施例6 変異部位の同定及び組み合わせ
の変異を持つ変異型V 8プロテアーゼ誘導体RPT
(−)融合蛋白質の作製 変異株U1、U5、U7及びU8より、常法に従い、プ
ラスミドを単離・精製した。これらのプラスミドを以
後、pV8RPT(−)1、pV8RPT(−)5、p
V8RPT(−)7及びpV8RPT(−)8とする。
次に、各々のプラスミド上の変異型V 8プロテアーゼ誘
導体遺伝子のDNA塩基配列をPharmacia 製DNAシー
ケンサー(A.L.F. DNA Sequencer )により決定した。
DNA塩基配列の決定に際してはPharmacia 製 AutoRea
d Sequencing Kit を用い、フロオロdUTPを用いた
蛍光ラベル法により行ない、プライマーには以下に示す
ものを使用した。
【0059】プライマーA(図4に示された野生型V8
プロテアーゼ誘導体RPT(−)をコードする遺伝子の
最初の塩基を番号1とした場合、番号1から21の部位
とアニールするセンスプライマー); 5′ACCGCTCGAGGT
TATATTACCAAATAACGAT 3′ プライマーD1(同様に番号266から294の部位と
アニールするセンスプライマー); 5′CAGGCGAAGGAGCG
CTAGCAATAGTTAAA 3′ プライマーD2(同様に番号266から294の部位と
アニールするアンチセンスプライマー); 5′TTTAACTA
TTGCTAGCGCTCCTTCGCCTG 3′
【0060】DNAシーケンス操作はメーカーの手順書
に従った。その結果、4種の変異株が生産する変異型V
8プロテアーゼ誘導体RPT(−)には図8に示す変異
が生じていることが判明した。特にpV8RPT(−)
7上の変異型V8プロテアーゼ誘導体は2重変異であ
り、pV8RPT(−)1及びpV8RPT(−)5の
変異を合わせたものであることも判明した。従って、図
7において、βG97V8RPT(−)7が、βG97
V8RPT(−)1やβG97V8RPT(−)5に比
べ高い活性示した理由は2重変異のためと考えられた。
これは変異を組み合わせることにより、さらに尿素に強
い酵素を作り出せる可能性を意味している。
【0061】このことを確かめるため、得られた3種類
の変異を全て持つpV8RPT(−)158を作製し
た。作製にはV8プロテアーゼ遺伝子に存在する制限酵
素部位(Dra I 、EcoR I )を利用し、図9に示す手順
により行った。pV8RPT(−)7の0.4Kbp Dra I-
EcoR I 断片をpV8RPT(−)8のそれと交換する
ことによりpV8RPT(−)158を作製した。
【0062】本プラスミド由来の3重変異型V8プロテ
アーゼ誘導体RPT(−)(βG97V8RPT(−)
158)について先に示した手順により、5M尿素存在
下における反応の経時変化を調べた(図10参照)。そ
の結果、βG97V8RPT(−)158はβG97V
8RPT(−)7以上に合成基質の分解反応が持続する
ことが判明し、3つの変異は加算的に尿素耐性を付与す
ることが明らかとなった。
【0063】実施例7 発現ベクターpV8Dの作製 野生型V8プロテアーゼ誘導体D(V8D)を不活性な
封入体として発現させるプラスミドpV8Dは図11及
び図12に示す手順で作製した。まず、pV8RPT
(−)よりBgl II-Sal I断片(3.0kb )及びEcoRV-Bgl
II断片(0.7kb )を調製し、pG97S4DhCT
〔G〕R10より調製したNar I-Sal I 断片(0.2kb )
と連結させることによりpV8hCT〔G〕を得た(図
11)。なお、pG97S4DhCT〔G〕R10(App
l. Microbiol. Biotechnol. (1995) 42,703-708) は上
記実施例2のpG97S4DhCT〔G〕R6と同様に
プラスミドpBR322とプラスミドpG97S4Dh
CT〔G〕より作成することができる(図2)。
【0064】次に、得られたpV8hCT〔G〕のhC
T〔G〕部分(0.1kb BstE II-SalI 断片)をpUC4
K(Vieira, J. and Messing, J., Gene 19, 259 (198
2) ;ファルマシア バイオテク社より製品番号27-4958
-01として容易に入手できる)のアミノグルコシド3’
−ホスホトランスフェラーゼ遺伝子(APT)領域を含
む0.8kb SmaI-Sal I断片と入れ換えpV8Dを作製した
(図12)。当該プラスミドより発現される野生型V8
プロテアーゼ誘導体D(V8D)の融合蛋白質のアミノ
酸配列を図13に示す。野生型V8プロテアーゼ誘導体
Dは天然型プロテアーゼのC末端の56アミノ酸を欠い
た誘導体である。
【0065】当該融合蛋白においては、天然型V8プロ
テアーゼのN末端から212番目のアミノ酸(EcoRV 部
位)までを用いて融合蛋白を作製した。即ち、当該融合
蛋白質は、野生型V8プロテアーゼ誘導体D(V8D)
のN末端及びC末端部においてR6リンカー配列を介し
てβーガラクトシダーゼ誘導体及びアミノグルコシド
3’−ホスホトランスフェラーゼの一部(tAPT)と
各々融合した構造をもつ。なお、R6リンカーは、アミ
ノ酸配列としてRLYRRHHRWGRSGSPLRAHEQFLEを有し、当該
配列中のRRの中央のペプチド結合が大腸菌のompT
プロテアーゼにより切断される構造を有している。
【0066】実施例8 発現ベクターpV8Fの作製 野生型V8プロテアーゼ誘導体F(V8F)を不活性な
封入体として発現させるプラスミドであるpV8Fは、
上記野生型V8プロテアーゼ誘導体D(V8D)よりも
V8プロテアーゼ部分がC末端側に3アミノ酸長い誘導
体を融合蛋白質として発現するプラスミドであり、PC
R法と遺伝子クローニングを用いて以下の方法により作
製した。
【0067】まず、プライマーIV;
【化1】
【0068】及びプライマーV;
【化2】
【0069】を合成し、鋳型DNAとして実施例2で作
製したpV8RPT(−)を0.1 μg用いて野生型V8
プロテアーゼ誘導体遺伝子側の増幅反応を行った後、Ec
oR I及びSac I で切断し0.1kb の遺伝子断片を調製し
た。
【0070】一方、プライマーVI;
【化3】
【0071】及びプライマーVII;
【化4】
【0072】を合成し、鋳型DNAとしてpV8Dを0.
1 μg 用いてR6リンカー配列とアミノグルコシド3’
−ホスホトランスフェラーゼ遺伝子部の増幅反応を行っ
た後、EcoT22I 及びSac I で切断し0.3kb の遺伝子断片
を調製した。なお、PCRは実施例1の条件に従った。
【0073】上記のようにして得られた0.1kb 及び0.3k
b の遺伝子と、pV8DのEcoRI-EcoT22I 断片(4.2kb
)を連結しpV8Fを作製した(図14)。当該プラ
スミドより発現される野生型V8プロテアーゼ誘導体F
(V8F)の融合蛋白質のアミノ酸配列を図15に示
す。野生型V8プロテアーゼ誘導体Fは天然型プロテア
ーゼのC末端の53アミノ酸を欠いた誘導体である。
【0074】実施例9 変異型V8プロテアーゼ誘導体
D(V8D)及び同F(V8F)の生産、及び尿素耐性
の確認 pV8D及びpV8Fを用いて変異型V8プロテアーゼ
誘導体D(V8D)及び同F(V8F)の高発現を試み
た。 (1)変異型V8プロテアーゼ誘導体D 図16に示すように、pV8RPT(−)1、pV8R
PT(−)5及びpV8RPT(−)8由来の 0.7kbp
Bgl II-EcoR I 断片を、pV8Dの3.9kbp BglII- EcoR
I 断片にそれぞれ挿入してpV8D1、 pV8D5
及びpV8D8を作製した。
【0075】これらのプラスミドを有するJM101を
ファーメンター(小松川化工機製、30L Kit Fermenter
)を用いて、4 g/L K2HPO4、4 g/L KH2PO4、2.7 g/L N
a2HPO4 、0.2 g/L NH4Cl 、1.2 g/L (NH4)2SO4 、4 g/L
酵母エキス、2 g/L MgSO4 ・7H2O、40 mg/L CaCl2 ・2
H2O、40 mg/L FeSO4 ・7H2O、10 mg/L MnSO4 ・nH2O、1
0 mg/L AlCl3 ・6H2O、4 mg/L CoCl2・6H2O、2 mg/L Zn
SO4・7H2O、2 mg/L Na2MoO4・2H2O、1 mg/L CuCl2・2H2
O、0.5 mg/L H3BO4, 10mg/L テトラサイクリンを含む
培地(20L, pH7.0)でグリセリンを逐次添加しながら、
37℃でOD660が10になるまで培養後、最終濃度
2mMのIPTGを添加し、さらに3時間培養をした。
【0076】培養液をマントンゴリーンホモジナイザー
(マントンゴーリン社製、モデル15M-8TBA)により600K
g/cm2 の条件でホモジナイズ処理し、7000 rpm、30分
の遠心分離により沈殿画分を回収した。沈殿のOD66
0値が100となるように脱イオン水を添加した後、15
ml を採取し1M Tris-HCl (pH8.0 )を2.5ml 、1 Mジ
チオスレイトール(DTT)を250 μl 、及び尿素を1
2g加え封入体を溶解し、50 ml になるように脱イオン
水を加え、37℃で6時間加温した。
【0077】その後、0.4M (NH4)2SO4を含む 10 mMリン
酸カリウムバッファー(pH7.5 )で21倍希釈し、氷中
に一晩放置した。このリフォールディング操作により約
80μg/mlの各々の変異型V8プロテアーゼ誘導体D、即
ち、pV8D1、pV8D5及びpV8D8由来の変異
型V8プロテアーゼ誘導体DであるV8D1、V8D5
及びV8D8が得られた。
【0078】次に、各々のプロテアーゼを精製するた
め、(NH4)2SO4 を最終1.8Mになるように添加した後、30
0ml をブチルトヨパール650M(東ソー株式会社製)を用
いた精製に供した。1.8 M (NH4)2SO4 を含む 10 mMリン
酸カリウムバッファー(pH7.5)で平衡化したφ16mmX62
mm のカラムに試料を添加し、(NH4)2SO4 濃度1.8 M か
ら0 M への直線濃度勾配により精製を行った。各々のプ
ロテアーゼは(NH4)2SO4濃度0.9 M の付近で溶出され、
精製酵素が約20mg得られた。なお、精製酵素の活性
は実施例3に記載の方法により測定した。
【0079】精製したV8D1、V8D5及びV8D8
を用いて、尿素に対する耐性を再度調べた。3M尿素、
50mM Tris-HCl (pH 8.0)、2%DMSOを含む反応液 9
60μl に各変異型酵素(V8D1、V8D5及びV8D
8)を 40 μl (濃度150μg/ml)添加し、30℃で3
0分放置後、合成基質(Z-Phe-Leu-Glu-4-nitroanilide)
を最終濃度0.4mM になるように添加し、酵素添加直後の
活性を100%とした際の各酵素の残存活性を測定し
た。これらの対照としてpV8D由来の野性型V8プロ
テアーゼ誘導体D(V8D)を同操作で生産したものを
用いた。その結果、V8D1、V8D5及びV8D8は
V8Dに比べ残存活性が高く、これらの変異の導入によ
り、尿素に対する耐性が向上した変異型V8プロテアー
ゼ誘導体Dが生産できることが明らかになった(図1
7)。
【0080】(2)変異型V8プロテアーゼ誘導体F pV8Fへの変異の導入についても検討を行った。図1
8に示す手順により、pV8RPT(−)1、pV8R
PT(−)5、pV8RPT(−)7、pV8RPT
(−)8及びpV8RPT(−)158由来の 0.7kbp
Bgl II-EcoR I 断片を、pV8Fの3.9kbp Bgl II- Eco
R I 断片に挿入してpV8F1、pV8F5、pV8F
7、pV8F8及びpV8F158を作製した。
【0081】これらのプラスミドを持つJM101株を
用いて、各変異を持つ変異型V8プロテアーゼ誘導体
F、即ち、pV8F1、pV8F5、pV8F7、pV
8F8及びpV8F158由来の変異型V8プロテアー
ゼ誘導体FであるV8F1、V8F5、V8F7、V8
F8及びV8F158を上記の方法により分離した。精
製したV8F1、V8F5、V8F7、V8F8、V8
F158、及びこれらの対照としてpV8F由来の野性
型V8プロテアーゼ誘導体F(V8F)を同操作で生産
したものを用いて尿素に対する耐性を再度調べた。その
結果、各変異酵素は5M尿素存在下において尿素耐性に
優れていることが再確認され(図19)、これにより尿
素耐性に優れた変異型V8プロテアーゼ誘導体Fが生産
できることが示された。
【0082】実施例10 ドデシル硫酸ナトリウム(0.
1 %)及び熱(50℃)に対するV8F1、V8F5、V
8F8の安定性のついての検討 実施例9で得られたV8F1、V8F5、V8F8を用
いて、ドデシル硫酸ナトリウム(以下、SDS)及び熱
に対する安定性についての検討を行った。SDSの場
合、0.1 %SDS、50mM Tris-HCl (pH8.0 )、天然型
V8プロテアーゼ4.0μg /mlの酵素活性に相当する各
酵素(V8F1、V8F5、V8F8)を含んだ溶液を
30℃でインキュベートし、一定時間ごとにそれより90
0 μl 採取した後、100 μl の4mM Z-Phe-Leu-Glu-4-ni
troanilide、20%DMSO溶液を添加し、それらの残
存活性を測定した。
【0083】また、50℃に対する熱安定性について
は、50mM Tris-HCl (pH8.0 )、天然型V8プロテアー
ゼ 4.0μg /mlの酵素活性に相当する各酵素(V8F
1、V8F5、V8F8)を含んだ溶液を50℃でインキ
ュベートし、一定時間ごとにそれらより900 μl 採取後
氷冷し、それらの残存活性を測定した。
【0084】図20に示すように変異型の酵素であるV
8F1、V8F5、V8F8は対照である野性型のFに
比べ失活速度が減少し、0.1 %SDSに対する安定性が
上昇している。このことより3種の尿素耐性変異、Lys1
47Arg (V8F1)、Asn71Ser(V8F5)及びAsp44G
lu (V8F8) の導入はSDSに対する変性に対しても
有効であることが判明した。また、50℃における熱失
活については、V8F1、V8F5が野性型V8Fに比
べ失活速度が減少し、Lys147Arg 及びAsn71Serの変異は
耐熱性も付与することが明らかとなった(図21)。
【0085】実施例11 V8F158による融合蛋白
質の切断 V8F158(3重変異型V8プロテアーゼ誘導体F)
を用い、尿素存在下における蛋白質の切断実験を行っ
た。実験にはpG97S4DhCNP−22R5−3由
来の融合蛋白質を基質として用いた。当該融合蛋白質β
−gal97S4DhCNP−22R5−3は、保護ペ
プチド(β−gal97S4D)とヒトC型ナトリウム
ペプチド(hCNP)がリンカーを介して融合され、V
8プロテアーゼによりhCNPが遊離される構造を有し
ている(特開平5−328992)。
【0086】5M尿素存在下における融合蛋白質からの
hCNPの切り出しについて天然型V8プロテアーゼと
V8F158で比較した。pG97S4DhCNP−2
2R5−3由来の融合蛋白質、当該融合蛋白質の発現、
当該発現封入体の回収、V8プロテアーゼの反応条件、
融合蛋白質及び遊離したhCNPの分析は特開平5−3
28992に記載の条件に従った。但し、反応時の尿素
濃度は5Mとし、V8F158は天然型V8プロテアー
ゼに換算して4 μg/mlの活性に相当する量を添加した。
【0087】30分反応後、切断効率(切断された融合
蛋白質の割合)をHPLCのピークから算出したとこ
ろ、天然型V8プロテアーゼが60%であったのに対
し、V8F158は98%であり、高濃度の尿素下にお
けるV8F158の有効性が融合蛋白質の切断反応にお
いても示された。
【0088】
【発明の効果】従来公知の天然型V8プロテアーゼは2
M程度の尿素を含む酵素反応液中でもある程度の切断反
応を行なうために遺伝子組換え法による有用ペプチド等
の製造に用いられているが、上述したように、本発明に
係る酵素はこの天然型酵素の性質に更に尿素耐性が付加
されている。従って、本発明に係る酵素を用いれば高濃
度の尿素存在下でも酵素活性の失活が抑えられることに
より、尿素存在下の反応系に加える酵素量が少なくてす
み、また、反応時間の短縮が行なえる。更には高濃度尿
素存在下で蛋白切断が行なえることにより今まで得られ
なかったペプチド断片が得られる等の利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、(a)スタフィロコッカス・アウレウ
ス(Staphylococcus aureus )V8プロテアーゼ遺伝子
の構成と当該遺伝子におけるアニーリング部位、及び
(b)クローニングに用いたPCR用プライマーの塩基
配列を示す図である。
【図2】図2は、プラスミドpG97S4DhCT
[G]R6及びプラスミドpG97S4DhCT[G]
R10の作製過程を示す図である。
【図3】図3は、プラスミドpV8RPT(−)の作製
過程を示す図である。
【図4】図4は、プラスミドpV8RPT(−)中にコ
ードされている融合蛋白質のアミノ酸配列を示す図であ
る。下線部は野生型V8プロテアーゼ誘導体RPT
(−)の配列部分を表し、二重下線部はR6リンカーの
アミノ酸配列を示す。
【図5】図5は、(a)クローニングに用いたPCR用
プライマーの塩基配列、及び(b)プラスミドpV8R
PT(−)の構成と当該プラスミドに係る遺伝子におけ
るアニーリング部位を示す図である。
【図6】図6は、プラスミドpV8RPT(−)へのP
CR変異の導入を示す図である。
【図7】図7は、5M尿素存在下における変異型V8プ
ロテアーゼ誘導体RPT(−)の反応経時変化を示す図
である。
【図8】図8は、変異型V8プロテアーゼ誘導体RPT
(−)における変異部位の同定結果を示す図である。
【図9】図9は、プラスミドpV8RPT(−)158
の作製過程を示す図である。
【図10】図10は、2重変異及び3重変異を持つ変異
型V8プロテアーゼ誘導体RPT(−)の5M尿素存在
下における反応経時変化を示す図である。
【図11】図11は、 プラスミドpV8hCT〔G〕
の作製過程を示す図である。
【図12】図12は、 プラスミドpV8Dの作製過程
を示す図である。
【図13】図13は、プラスミドpV8D中にコードさ
れている融合蛋白質のアミノ酸配列を示す図である。下
線部は野生型V8プロテアーゼ誘導体D(V8D)の配
列部分を表し、二重下線部はR6リンカーのアミノ酸配
列を示す。また、矢印はOmpTプロテアーゼにより切
断される部位を表す。
【図14】図14は、プラスミドpV8Fの作製過程を
示す図である。V8F遺伝子は野性型V8プロテアーゼ
誘導体F(V8F)をコードする遺伝子である。
【図15】図15は、プラスミドpV8F中にコードさ
れている融合蛋白質のアミノ酸配列を示す図である。下
線部は野生型V8プロテアーゼ誘導体F(V8F)の配
列部分を表し、二重下線部はR6リンカーのアミノ酸配
列を示す。また、矢印はOmpTプロテアーゼにより切
断される部位を表す。
【図16】図16は、プラスミドpV8D1、pV8D
5及びpV8D8の作製過程を示す図である。
【図17】図17は、プラスミドpV8D1、pV8D
5及びpV8D8由来の変異型V8プロテアーゼD(V
8D1、V8D5、V8D8)とpV8D由来の野性型
V8プロテアーゼ誘導体D(V8D)の3M尿素存在下
での残存活性を示す図である。
【図18】図18は、プラスミドpV8F1、pV8F
5、pV8F7、pV8F8及びpV8F158の作製
過程を示す図である。
【図19】図19は、プラスミドpV8F1、pV8F
5、pV8F7、pV8F8及びpV8F158由来の
変異型V8プロテアーゼ誘導体F(V8F1、V8F
5、V8F7、V8F8及びV8F158)とpV8F
由来の野性型V8プロテアーゼ誘導体F(V8F) の5
M尿素存在下での反応経時変化を示す図である。
【図20】図20は、プラスミドpV8F1、pV8F
5及びpV8F8由来の変異型V8プロテアーゼ誘導体
F(V8F1、V8F5及びV8F8)と野性型V8プ
ロテアーゼ誘導体F(V8F)の0.1%SDSにおけ
る安定性を示す図である。
【図21】図21は、プラスミドpV8F1、pV8F
5及pV8F8由来の変異型V8プロテアーゼ誘導体F
(V8F1、V8F5及びV8F8)と野性型V8プロ
テアーゼ誘導体F(V8F)の50℃における熱安定性
を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 //(C12N 15/09 ZNA C12R 1:445) (C12N 1/21 C12R 1:19) (C12N 9/52 C12R 1:445) (C12N 9/52 C12R 1:19)

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 蛋白変性をもたらす環境条件下において
    も酵素活性を有する変異型スタフィロコッカス・アウレ
    ウスV8プロテアーゼ。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の変異型スタフィロコッカ
    ス・アウレウスV8プロテアーゼをコードする遺伝子。
  3. 【請求項3】 請求項2記載の遺伝子を有する発現ベク
    ター。
  4. 【請求項4】 請求項3記載の発現ベクタ−により形質
    転換された組換え細胞。
  5. 【請求項5】 蛋白変性をもたらす環境条件下において
    も酵素活性を有する変異型スタフィロコッカス・アウレ
    ウスV8プロテアーゼの製造方法において、請求項4の
    組換え細胞を培養した後、当該培養物から目的の該プロ
    テアーゼ蛋白を採取することを特徴とする当該プロテア
    ーゼの製造方法。
JP16047596A 1995-06-02 1996-06-03 変異型スタフィロコッカス・アウレウスv8プロテアーゼ Expired - Lifetime JP3852982B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP16047596A JP3852982B2 (ja) 1995-06-02 1996-06-03 変異型スタフィロコッカス・アウレウスv8プロテアーゼ

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP7-170086 1995-06-02
JP17008695 1995-06-02
JP16047596A JP3852982B2 (ja) 1995-06-02 1996-06-03 変異型スタフィロコッカス・アウレウスv8プロテアーゼ

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH0947291A true JPH0947291A (ja) 1997-02-18
JP3852982B2 JP3852982B2 (ja) 2006-12-06

Family

ID=15898392

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP16047596A Expired - Lifetime JP3852982B2 (ja) 1995-06-02 1996-06-03 変異型スタフィロコッカス・アウレウスv8プロテアーゼ

Country Status (9)

Country Link
US (1) US5747321A (ja)
EP (1) EP0745669B1 (ja)
JP (1) JP3852982B2 (ja)
KR (1) KR100650960B1 (ja)
AT (1) ATE254177T1 (ja)
DE (1) DE69630630T2 (ja)
ES (1) ES2206546T3 (ja)
HU (1) HUP9601487A3 (ja)
IL (2) IL118473A0 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP2119785A1 (en) 1999-07-23 2009-11-18 Kenji Kangawa Novel peptides

Families Citing this family (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1090132A1 (en) * 1998-06-26 2001-04-11 PPL Therapeutics (Scotland) Limited Methods for production of recombinant polypeptides
EP2336331A1 (en) * 1999-08-31 2011-06-22 Novozymes A/S Novel proteases and variants thereof
US7217554B2 (en) * 1999-08-31 2007-05-15 Novozymes A/S Proteases and variants thereof
US6558939B1 (en) * 1999-08-31 2003-05-06 Novozymes, A/S Proteases and variants thereof
ATE430799T1 (de) * 1999-10-19 2009-05-15 Bharat Biotech International L Expression von rekombinantem, reifem lysostaphin
IL162780A0 (en) 2002-04-11 2005-11-20 Kenji Kangawa Method for producing modified peptide

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
DE69024261T2 (de) * 1989-05-24 1996-07-18 Merck & Co Inc Reinigung und Charakterisierung eines von einem Glioma abstammenden Wachstumsfaktors
US5536655A (en) * 1989-09-26 1996-07-16 Midwest Research Institute Gene coding for the E1 endoglucanase
ATE253639T1 (de) * 1991-08-19 2003-11-15 Daiichi Suntory Pharma Co Ltd Verfahren zur herstellung von peptiden

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP2119785A1 (en) 1999-07-23 2009-11-18 Kenji Kangawa Novel peptides

Also Published As

Publication number Publication date
DE69630630T2 (de) 2004-09-23
KR100650960B1 (ko) 2007-03-02
DE69630630D1 (de) 2003-12-18
EP0745669A3 (en) 1999-05-26
EP0745669A2 (en) 1996-12-04
HU9601487D0 (en) 1996-08-28
HUP9601487A3 (en) 2001-08-28
HUP9601487A2 (en) 1997-05-28
JP3852982B2 (ja) 2006-12-06
EP0745669B1 (en) 2003-11-12
ATE254177T1 (de) 2003-11-15
KR970001536A (ko) 1997-01-24
ES2206546T3 (es) 2004-05-16
IL118473A (en) 2005-03-20
US5747321A (en) 1998-05-05
IL118473A0 (en) 1996-09-12

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US11884916B2 (en) Materials and methods for the synthesis of error-minimized nucleic acid molecules
JPH07502647A (ja) ユビキチン特異的プロテアーゼ
JP5242388B2 (ja) 高レベルでの、大腸菌におけるリソスタフィンの分泌発現の方法
Hartleib et al. High-yield expression, purification, and characterization of the recombinant diisopropylfluorophosphatase from Loligo vulgaris
KR19980701652A (ko) 효소적으로 활성인 재조합 카르복시펩티다제 b의 생산
JPH0947291A (ja) 変異型スタフィロコッカス・アウレウスv8プロテアーゼ
EP0170266B1 (en) Process for producing protein, and vector, recombinant dna and transformant used therefor
Kromayer et al. Genetic probing of the interaction between the translation factor SelB and its mRNA binding element in Escherichia coli
Yabuta et al. Hyperproduction of a recombinant fusion protein of Staphylococcus aureus V8 protease in Escherichia coli and its processing by OmpT protease to release an active V8 protease derivative
JP2611206B2 (ja) 遺伝子およびその利用方法
US20090259035A1 (en) Method for producing recombinant RNase A
CN114164223B (zh) 一种南极土壤来源的酯酶及其编码基因与应用
JP2729045B2 (ja) サルコシンオキシダーゼおよびその製造法
JPH01144992A (ja) 融合タンパク質の作成方法
JP2593481B2 (ja) サルコシンオキシダーゼの遺伝情報を有するdnaおよびその用途
JP3507373B2 (ja) プラスミドベクター
Yabuta et al. Isolation and characterization of urea-resistant Staphylococcus aureus V8 protease derivatives
JP3036002B2 (ja) キャンデイダ・ユテイリス由来のade1遺伝子を含有するdna断片
JP4007605B2 (ja) 熱不安定性デオキシリボヌクレアーゼiバリアント
JP2764415B2 (ja) L−α−グリセロホスフェートオキシダーゼの遺伝情報を有するDNAおよびその用途
WO2005030956A1 (ja) OmpTプロテアーゼ変異体を用いたポリペプチドの切断方法
JPH0731480A (ja) L−グルタミルtRNAレダクターゼをコードするDNA断片
JPH10229884A (ja) 分泌型Kex2誘導体の製造方法
JP3007919B2 (ja) ジヒドロ葉酸還元酵素―抗アレルギー性ペンタペプチド多量体の融合タンパク質(▲ii▼)
JP2500311B2 (ja) 蛋白製造法

Legal Events

Date Code Title Description
A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20051122

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20060123

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20060123

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20060404

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20060414

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20060606

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20060613

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20060808

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20060905

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100915

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110915

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110915

Year of fee payment: 5

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110915

Year of fee payment: 5

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120915

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120915

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120915

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120915

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130915

Year of fee payment: 7

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

EXPY Cancellation because of completion of term