JPH0947229A - 苦味が少なく且つ低アレルゲン性の乳組成物とその製造方法 - Google Patents

苦味が少なく且つ低アレルゲン性の乳組成物とその製造方法

Info

Publication number
JPH0947229A
JPH0947229A JP8153043A JP15304396A JPH0947229A JP H0947229 A JPH0947229 A JP H0947229A JP 8153043 A JP8153043 A JP 8153043A JP 15304396 A JP15304396 A JP 15304396A JP H0947229 A JPH0947229 A JP H0947229A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
milk
concentration
freezing point
bitterness
point depression
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP8153043A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3542093B2 (ja
Inventor
Yuki Niifuku
由紀 新福
Shinya Shimada
信也 島田
Shinsuke Nou
新介 農
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
OOMU NYUGYO KK
Original Assignee
OOMU NYUGYO KK
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by OOMU NYUGYO KK filed Critical OOMU NYUGYO KK
Priority to JP15304396A priority Critical patent/JP3542093B2/ja
Publication of JPH0947229A publication Critical patent/JPH0947229A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3542093B2 publication Critical patent/JP3542093B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • Medicines Containing Material From Animals Or Micro-Organisms (AREA)
  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 低アレルゲン性であり且つ苦味も少ない乳組
成物を得る。 【解決手段】 タンパク分解酵素で乳蛋白質を加水分解
して得られる乳組成物であって、氷点降下測定法による
濃度が加水分解前よりも80(mOsm)以上大きい組
成物。タンパク質分解酵素による乳蛋白質の加水分解工
程を含む乳組成物の製造に際して、氷点降下測定法によ
る濃度を加水分解前よりも80(mOsm)以上大きく
することによって得られ、好ましくは、乳蛋白質をタン
パク質分解酵素を用いて加水分解し氷点降下測定法によ
る濃度を加水分解前よりも80(mOsm)以上大きく
した後、pHを酸性に調整することによって製造され
る。pHを酸性に調整するには、加水分解生成物を乳酸
発酵させることによりpHを4.5以下にすることが特
に好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、乳組成物に関し、
特に、苦味が少なくしかもアレルゲン性の低い乳組成物
とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術とその課題】牛乳等に由来する各種の乳組
成物は、そのまま食品として、あるいは、機能性ペプチ
ド組成物として特殊栄養食品の素材に利用されている。
【0003】このような乳製品における問題は食物アレ
ルギーであり、これはヒトにとって異種蛋白質である牛
乳等の蛋白質が充分に分解されずに抗原性を残したまま
体内に吸収されることが原因とされている。このような
乳製品のアレルゲン性を無くすか低下させることを目的
として、さらに、機能性ペプチドを得ることを目的とし
て、現在最も一般的に行われている手段が乳蛋白質の酵
素加水分解である。
【0004】しかし、一般に蛋白質を分解すると苦味が
生じ、乳蛋白質分解物を食品や食品機能素材として利用
する場合に解決しなければならない課題となっている。
これは分解によりいろいろなサイズのペプチドが生成
し、それまで蛋白質の内部に存在していた疎水性側鎖が
露出するためと考えられている。
【0005】乳蛋白質の低アレルゲン化を目的として酵
素分解により乳組成物を得るための従来からの方法の多
くは、酵素の基質(乳蛋白質原料)として、あらかじめ
成分の調整されたものを用いたり(特開平4−3206
50)、あるいはカゼインや乳清蛋白質の分解物を後で
混合する(特開平5−17368)など、特殊な原料を
用いるものである。
【0006】栄養の点からは、乳蛋白質全体を基質とす
ることが好ましい(カゼインはアミノ酸組成において含
硫アミノ酸であるシスティンの含量が著しく低い。ホエ
ー蛋白質中にはシスティンがかなり含まれているので乳
全体を用いれば栄養的に問題でない)が、このような技
術は見あたらない。また、これらの方法は、いずれも、
苦味の解消については特に工夫しておらず、食品や食品
機能素材として適さない場合もあることは明らかであ
る。
【0007】特開平5−5000には、牛乳由来の蛋白
質を酵素分解して分子量を1万以下とすることにより経
口寛容誘導能を有する低アレルゲン性ペプチド組成物が
得られる旨示されている。しかしながら、本発明者の見
出した知見によれば、分子量を1万より幾分低くしたの
みでは、充分な抗原性の低下は得られず、また、苦味を
解消することもできない。
【0008】苦味除去法としては、苦味ペプチドをエキ
ソペプチダーゼでさらに加水分解させる方法(例えば、
K.M.Cleggand, A.D.Mc Millian, J.Food Techono
l. 9:21 (1974) ; H.Umetsu, H.Matsuoka and
E.Ichishima, J.Agric.FoodChem. 31 :50 (198
3))が用いられているが、この方法では極端に風味が損
なわれる。苦味を除くためには、このほかに、苦味が発
生しやすいジまたはトリペプチドの生成を抑えるために
酵素分解の程度を抑えたり、膜を利用して低分子ペプチ
ドを除去するという方法もとられている。しかしながら
これらの手法では充分な抗原性の低下が得られない。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者は、以上のよう
な問題を解決するために研究を重ねた結果、乳蛋白質を
加水分解して得られる乳組成物の物性として氷点降下測
定法による濃度が乳組成物の苦味およびアレルゲン性と
相関することを見出し本発明を導くに到った。
【0010】かくして、本発明は、タンパク分解酵素で
乳蛋白質を加水分解して得られる乳組成物であって、氷
点降下測定法による濃度が加水分解前よりも80(mO
sm)以上大きいことを特徴とする苦味が少なく、且つ
低アレルゲン性の乳組成物を提供する。
【0011】また、本発明は、別の視点として、苦味が
少なく且つ低アレルゲン性の乳組成物を製造するための
方法であって、乳蛋白質をタンパク質分解酵素を用いて
加水分解する工程を含み、氷点降下測定法による濃度を
加水分解前よりも80(mOsm)以上大きくすること
を特徴とする方法を提供する。好ましい態様において
は、本発明の方法は、加水分解生成物のpHを酸性に調
整することを含む。そして、本発明の最も好ましい態様
に従えば、乳蛋白質をタンパク質分解酵素を用いて加水
分解して氷点降下測定法による濃度を加水分解前より8
0(mOsm)以上大きくした後、加水分解生成物を乳
酸発酵させることによりpHを4.5以下に調整する。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明の乳組成物の特徴は、氷点
降下測定法による濃度について加水分解前の値との差が
特定されていることにある。
【0013】このように本発明に関して用いる氷点降下
測定法による濃度とは、次のように純水1kg中の溶質
分子のオズモル(オズモラリティ、Osmolarity)によっ
て表されるものである。 オズモラリティ=Osm(オズモル)/kg H2 O=
φnc ここで、φは浸透係数(分子の解離の程度を表す)、n
は分子が解離してできる粒子の数、cは溶液のモル濃度
を示す。
【0014】よく知られているように、溶質を純溶媒に
溶解すると氷点が降下するが、これは溶質の濃度に比例
して溶媒の結合性または凝縮特性が変化するためと考え
られる。したがって、氷点降下測定を行うことにより溶
質の濃度(溶液中の粒子の数)を知ることができる。理
想的には、完全に解離した物質1モルは純水の氷点を
1.86℃低下させるが、実際には完全に解離すること
はない。溶質分子間の干渉が浸透係数(φ)と呼ばれる
ファクターによって解離が減少するからである。
【0015】水溶液では、水1kgに対し物質1mOs
m(ミリオズモル=10ー3Osm)が氷点を1.86m
℃低下させる。すなわちmOsmまたはOsmの単位
は、溶液中に存在する溶質のうち氷点降下に寄与するよ
うな溶質の濃度ないしはモル数を反映しているものと考
えられる。
【0016】迅速に正確に溶液の氷点測定を行うには、
その溶液の氷点をさらに数度過冷却してから、機械的に
凍結させてその温度を測定する。急激に放出された溶質
の温度を、水と氷(シャーベット状態)の平衡状態(プ
ラトー)まで上昇させる。この平衡状態を、溶液の氷点
としてオズモラリティを求める。このような測定はオズ
モメーターを用いて行われる。
【0017】乳組成物において、このような氷点降下測
定法による濃度の加水分解前の値との差が、当該乳組成
物の苦味やアレルゲン性と相関する理由は未だ完全には
明らかでない。本発明の対象とするような乳組成物にお
いては、オズモラリティで表されるような濃度は蛋白
質、糖質(乳糖など)、無機塩類等の苦味や抗原性に関
与する成分の量を全体的に表示する合成濃度として寄与
しているのかもしれない。
【0018】本発明は、原料(基質)として、牛乳等に
由来する乳蛋白質を含有するいずれのタイプの乳製品を
酵素加水分解するに際して適用できる。一般的には、生
乳、牛乳(普通牛乳)、脱脂乳、加工乳、濃縮乳、各種
乳飲料などの液状乳を酵素加水分解して得られる乳組成
物に適用されるが、粉末状、固形状、またはゼリー状の
乳製品を再溶解または懸濁して得られるような液状物に
対しても同様に適用される。例えば、本発明は、粉末ホ
エーを液状化したものを原料として酵素加水分解して得
られる乳組成物に対しても適用される。
【0019】すなわち、本発明の乳組成物とは、牛乳等
に由来し、カゼイン、βーラクトグロブリン、αーラク
トアルブミン、さらに免疫グロブリン、血清アルブミン
などの蛋白質の他、システィンなどのアミノ酸などの全
て又は一部を含有し、液状物として総蛋白含有量が、一
般に2〜10重量%にあるような乳製品を酵素加水分解
に供することによって得られるものである。
【0020】本発明に従い乳蛋白質を加水分解するには
原理的には各種の酵素を使用できるが、本発明者らは、
微生物由来の酵素、たとえば、アルカラーゼおよびフレ
ーバーザイムと称されているものが優れていることを見
出している。
【0021】アルカラーゼは、ノボノルディスク( Nov
o Nordisk)社から販売され、 Bacillus lichenifor
mis から得られるエンド型プロテアーゼである。その主
要な酵素成分は、サブティリシンA( Subtilisin Car
lsberg )であり、活性中心はセリンである。また、フ
レーバーザイムは、やはりノボノルディスク( NovoNor
disk )社から販売され、 Aspergillus oryzae 由来
のエンド型プロテアーゼとエキソ型プロテアーゼの両活
性を有する複合酵素である。これらの酵素は、それぞれ
を単独で使用してもよいが、両者を混合して使用した場
合には優れた効果が得られる。
【0022】酵素による加水分解反応における反応温度
や反応時間は用いる酵素によって幾分異なる。本発明の
方法を実施するのに好適な酵素であるアルカラーゼやフ
レーバーザイムの場合、加水分解反応は一般に50〜5
5℃において2〜6時間行われる。この際、加水分解反
応の進行に応じて、適当な間隔でサンプリングを行い、
酵素の失活程度を確認しながら氷点降下測定法による濃
度を測定しておく。乳組成物のアレルゲン性を確認する
には、従来より液体クロマトグラフィーによる分子量測
定が行われてきた。しかしながら、本発明におけるよう
なオズモメーターによる氷点降下測定は、液体クロマト
グラフィーによる分子量測定よりも著しく簡便であり、
この点においても本発明の方法は有利である。
【0023】本発明者の見出した事実によれば、このよ
うな酵素加水分解工程を含む乳組成物の製造に際して氷
点降下測定法による濃度を加水分解前よりも少なくとも
80(mOsm)以上、好ましくは、90(mOsm)
以上大きくしておくことにより、かなり苦味が少ない低
アレルゲン性の乳組成物が得られる。このとき、本発明
の好ましい態様に従えば、乳蛋白質をタンパク質分解酵
素を用いて加水分解して、氷点降下測定法による濃度を
80(mOsm)以上大きくするのが一般的である。し
かしながら、酵素加水分解により、氷点降下測定法によ
る濃度をある程度大きくするとともに、その前後の工
程、(例えば、pH調整工程、あるいは、更に別種の酵
素を用いる分解工程)との組合わせにより、氷点降下測
定法による濃度を加水分解前より80(mOsm)以上
大きくすることもできる。
【0024】また、本発明に従えば、加水分解後の分解
生成物のpHを酸性領域に調整することにより、特に苦
味の少ない低アレルゲン性(抗原性)の乳組成物を得る
ことができる。pHは、一般に4.5以下に調整し、特
に4.0〜4.5とするのが好ましく、pHがこれより
低くなると酸味が強くなる傾向がある。
【0025】pHの調整は、加水分解後の組成物に単に
適当な酸(たとえば、乳酸、クエン酸)を加えることに
よっても原理的には可能である。しかしながら、本発明
の特に好ましい態様に従えば、乳酸菌を用いた乳酸発酵
を行うことによりpHを4.5以下に調整する。これに
より、フレーバー、酸味が酸で調整するだけよりまろや
かになり、発酵による風味の改善が得られたり、乳酸菌
(菌体成分)による免疫賦活作用や抗菌作用が得られる
ほか、カルシウムの吸収に好ましい効果を与えたり、コ
レステロールの低下作用があるなどの利点も付加され
る。乳酸発酵に用いる乳酸菌は特に限定されるものでは
なく、一般的に使用されているものでよい。乳酸菌を添
加して所定のpHになるまで発酵を行わせた後、加熱殺
菌(好ましくは65℃で30分間加熱)して発酵を停止
し、氷点降下測定法による濃度を測定し所望の乳組成物
が得られたことを確認する。
【0026】以上のようにして、本発明に従えば、低ア
レンゲン性でありながら苦味が少なく風味も損なわれて
いない乳組成物が得られる。なお、液体クロマトグラフ
ィーで測定したところ、本発明の乳組成物は、分子量が
5000を超えるような部分は実質的に存在せず、特に
分子量1000以下のものがかなり部分(80%以上)
占めていることが確認されている。また、乳組成物全体
を基準とする遊離アミノ酸の含有量は全窒素量当り約2
0重量%以下である。本発明の乳組成物は、そのまま飲
料として供することができるが、さらに、食品素材とし
てゼリー、アイスクリーム、クリーム、乳飲料などを調
製する際に使用することができ、また、乾燥させること
により、パンや菓子を作るときのプレミックス粉などと
して、通常の粉乳(脱粉、全粉)と同様な原料としても
使用できる。
【0027】
【実施例】以下、本発明の特徴をさらに明らかにするた
め実施例に沿って本発明を説明するが、本発明はこれら
の実施例によって限定されるものではない。
【0028】[実施例1]酵素加水分解反応 原料として、カゼイン、β―ラクトグロブリン、α―ラ
クトアルブミン、乳糖、脂肪を含有し、総蛋白量3重量
%の牛乳(普通牛乳)を用いた。この牛乳の氷点降下測
定法による濃度を測定したところ285(mOsm)で
あった。これを50℃に昇温し、これにアルカラーゼ
0.02%(v/v)とフレーバーザイム0.01%
(w/v)を添加した。酵素添加後、50℃で攪拌しな
がら、酵素加水分解を行い、1時間ごとにサンプリング
し90℃で20分間加熱して酵素を失活させた後、氷点
降下測定法による濃度の測定を行った。酵素加水分解反
応は6時間まで行った。なお、氷点降下測定法による濃
度の測定は、FISKE 社のオズモメーターマーク3を用い
て行った。
【0029】乳酸発酵 酵素による加水分解後の乳蛋白質を乳酸発酵に供してp
Hを調整した。すなわち、あらかじめ分解脱脂乳で前培
養しておいた乳酸菌( Streptcoccus thermophilus,
Lactobacillus bulgaricus )を1.5%(v/v)接
種した後、37℃でpH4.5になるまで発酵を実施し
た。その後、65℃で30分加熱して発酵を止めた。
【0030】苦味評価試験 訓練された10人のパネラーにより、上記の酵素加水分
解により得られた分解乳および乳酸発酵により得られた
分解発酵乳について苦味の評価試験を実施した。すなわ
ち、1〜6時間の反応中、各時間毎にサンプリングした
分解乳と分解発酵乳の中で、一番苦いものを5とし、苦
味を感じない場合を0として点数をつけた。分解乳(乳
酸発酵前)についての結果を図1のグラフに示す。グラ
フ中、縦軸は苦味評価点の合計を示し、横軸は、各分解
乳の氷点降下測定法による濃度から分解前の氷点降下測
定法による濃度を減じた差の値を示し、グラフ中、左か
ら右に進むに従って1時間毎の反応経過後のデータを表
している。図には示していないが、酵素加水分解反応を
3時間、4時間、5時間および6時間行った後に、上記
の乳酸発酵に供した分解発酵乳の苦味評価合計点は、そ
れぞれ、21、17、15および15であった。なお、
これらの分解発酵乳の氷点降下測定法による濃度は、酵
素加水分解反応後の値よりも僅かに[〜10(mOs
m)]増加しており、したがって、いずれも、加水分解
前よりも80(mOsm)以上大きい。
【0031】図から理解されるように、氷点降下測定法
による濃度の増加に伴い苦味は増加するが、分解前の氷
点降下測定法による濃度との差が約80(mOsm)を
超えると減少し、特に90(mOsm)を超えると激減
する。そして、その差が80(mOsm)を超えた分解
生成物、特に90(mOsm)を超えた分解生成物に乳
酸発酵を行うことにより乳組成物の苦味は更に軽減す
る。
【0032】分子量の測定 以上のようにして得られた乳組成物(6時間の酵素加水
分解の後、乳酸発酵に供したもの)の分子量の測定を試
みた。測定は、液体クロマトグラフィーを用いて行い、
カラムとしてTSK−GELG2000SWXL(東ソ
ー社製)を使用した。試料は、凍結乾燥粉末を移動相に
2mg/mlの濃度で溶解し、0.45μmのフィルタ
ーで濾過した。
【0033】移動相は、0.1%TFAを含む45%ア
セトニトリルを用いた。測定は室温で行い、流速0.2
ml/分、検出器として紫外吸光光度計を用い215n
mにおける吸光度を検出した。分子量のマーカーとして
チトクロームC(MW:12,500)、インシュリン
(MW:5749.5)、インシュリン chain BFrag
ment 22−30(MW:1086.3)トリプトファ
ン(MW:204.23)を用い、分子量分布検量線を
作成し、分子量10,000、5,000、1,000
の溶出時間を求めた。
【0034】その結果を図2のIに示す。図に示すよう
に本発明の乳組成物においては、分子量5000を超え
る部分は存在していない。しかも分子量1000以下の
部分が大部分(約80%)を占めている。
【0035】抗原性テスト また、得られた乳組成物の抗原性を以下のように抑制E
LISA試験によって測定した。用いた方法はラットI
gGによる抑制ELISA試験である。抗原溶液(1mg
/ml)を各ウェルに100μl注入し、37℃で1時間
放置して固定化を行った後、ウェルを0.15M Na
Clおよび0.05% Tween20を含むリン酸緩衝液
(pH7.2)(以下、PBS・Tween と略記)で3回
洗浄してPBS・Tween に溶解した2.0% Fish Ge
latin 溶液を300μl注入し、4℃で一晩放置して
ブロッキングを行った。
【0036】次いでPBS・Tween で3回洗浄後、血清
−試料混合物(0/15M NaClを含むリン酸緩衝
液(pH7.2)(以下、PBSと略記)で段階希釈し
た分解発酵物100μlと1000倍希釈したラットの
抗脱脂乳抗血清100μlを混合し、4℃で一晩放置し
たもの)100μlを注入して37℃で1時間放置し
た。さらにウェルを洗浄後、ペルオキシターゼを標識し
た2次抗体を Fish Gelatin 溶液で1000倍希釈
し、100μlずつ注入して37℃で1時間放置した。
ウェルを洗浄後、基質溶液100μlを注入して約15
分反応させ、1.5%シュウ酸溶液100μlを添加し
て反応を停止させた。測定は、Immuno ReaderNJ−2
001(Inter Med 社製)を用いて405nmで行
い、次の式に従って抑制率を求めた。 抑制率(%)=((A0-A)/A0)×100 ただし、Aは血清と試料を反応させたときの吸光度であ
り、A0は血清とPBSを反応させたときの吸光度であ
る。
【0037】その結果、6時間の酵素加水分解の後に乳
酸発酵に供したものについて図2のIIに示す。白で示
すのが原料牛乳であり、黒で示すのが乳組成物試料であ
るが、抗原性が牛乳の約1/105 に低下していること
が理解される。なお、得られた乳組成物の遊離アミノ酸
含有量をアミノ酸分析器で分析したところ全窒素量当り
14重量%であった。その他の乳組成物についても同様
の結果が得られた。
【0038】[実施例2]酵素としてアルカラーゼを単
独で0.02%(v/v)添加したことを除いては、実
施例1と同じように酵素加水分解反応および乳酸発酵を
行った。酵素加水分解反応に際して、実施例1と同様に
氷点降下測定法による濃度の測定を行いながら、苦味評
価試験を行ったところ、図3のような結果が得られた。
また、酵素加水分解反応を5時間および6時間行った後
に乳酸発酵に供した分解発酵乳の苦味評価合計点の値
は、それぞれ、30および27であった。なお、これら
の分解発酵乳について氷点降下測定法による濃度を測定
したところ、酵素加水分解後の値よりも僅かに増加して
おり、いずれも加水分解前より80(mOsm)以上大
きいことが見出された。これらの結果から理解されるよ
うに、氷点降下測定法による濃度の差が80(mOs
m)を超えると苦味が低減され、その効果は乳酸発酵を
経ると更に増す。
【0039】また、得られた乳組成物(分解発酵乳)に
ついて、実施例1の場合と同様に抑制ELISA試験を
実施したところ、抗原性は原料牛乳の約1/104 に低
減していることが見出された。
【0040】[実施例3]酵素としてフレーバーザイム
を単独で0.01%(w/v)添加したことを除いて
は、実施例1と同じように酵素加水分解反応および乳酸
発酵を行った。酵素加水分解反応に際して、実施例1と
同様に苦味評価試験を行い、図4の結果を得た。なお、
酵素加水分解反応を5時間および6時間行った後に乳酸
発酵に供して得た分解発酵乳の苦味評価合計点の値はそ
れぞれ30および28であった。また、これらの分解発
酵乳の氷点降下測定法による濃度は、酵素加水分解後の
値よりも僅かに増加しており、加水分解前よりも80
(mOsm)以上大きい。これらの結果から理解される
ように氷点降下測定法による濃度の差が80(mOs
m)を超えると苦味が低減しており、特に乳酸発酵によ
る分解発酵乳は顕著な苦味低減を示している。
【0041】また、得られた乳組成物(分解発酵乳)に
ついて実施例1で示した抑制ELISA試験により抗原
性を測定したところ、原料牛乳に比べて約1/104
低下していた。
【0042】[実施例4]原料として、β―ラクトグロ
ブリン、α―ラクトアルブミンおよび乳糖を主成分とし
て含有する粉末ホエーを総蛋白量が3.1重量%となる
ように水に溶かした液状物を用いて、実施例1と同様に
酵素加水分解反応および乳酸発酵を行い、苦味評価試験
を実施したところ、酵素加水分解生成物について図5の
Iの結果を得た。また、酵素加水分解反応を4時間、5
時間および6時間行った後に乳酸発酵に供した分解発酵
物の苦味評価合計点の値は、それぞれ、20、20およ
び18であった。なお、これらの分解発酵物の氷点降下
測定法による濃度は、酵素加水分解後よりも僅かに増加
しており、いずれも加水分解前よりも80(mOsm)
以上大きい。これらの結果から理解されるようにこの場
合においても、氷点降下測定法による濃度が80(mO
sm)を超えると苦味が低減し、乳酸発酵を経ると苦味
は更に低減している。
【0043】また、このホエー液状物について、実施例
1の場合と同様に抑制ELISA試験を実施したとこ
ろ、抗原性は原料のホエー液状物の約1/104 に低減
していた(図5のII参照)。
【0044】[比較例]酵素としてトリプシンを0.0
04%(w/v)添加し、酵素加水分解の反応温度を3
7℃として実施例1と同じように酵素加水分解を行っ
た。実施例1と同様に、酵素加水分解反応の進行に応じ
て逐次サンプリングしたものについて、氷点降下測定法
による濃度を測定しながら苦味評価試験を行ったところ
図6の結果を得た。図に示すように、反応(6時間)終
了後の加水分解前の氷点降下測定法による濃度との差は
約70(mOsm)であり、かなりの苦味を残存してい
ることが認められた。なお、酵素加水分解反応生成物の
pHは5.5であった。また、反応生成物について実施
例1と同様の抑制ELISA試験を行ったところ、抗原
性の低下は原料牛乳の約1/10にすぎなかった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従う乳組成物の1例を製造するため酵
素加水分解を行うに際して、氷点降下測定法による濃度
差と苦味評価の関係を示すグラフである。
【図2】本発明に従う乳組成物の1例の分子量分布と抗
原性測定の結果を示すグラフである。
【図3】本発明に従う乳組成物の他の例を製造するため
酵素加水分解を行うに際して、氷点降下測定法による濃
度差と苦味評価の関係を示すグラフである。
【図4】本発明に従う乳組成物のさらに別の例を製造す
るため酵素加水分解を行うに際して、氷点降下測定法に
よる濃度差と苦味評価の関係を示すグラフである。
【図5】本発明に従う乳組成物の他の1例を製造するた
め酵素加水分解を行うに際して、氷点降下測定法による
濃度差と苦味評価の関係を示すグラフ、および抗原性測
定の結果を示すグラフである。
【図6】比較のために行った酵素加水分解反応について
氷点降下測定法による濃度差と苦味評価の関係を示すグ
ラフである。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 A61K 38/00 ABF A61K 37/18 ABF

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 タンパク分解酵素で乳蛋白質を加水分解
    して得られる乳組成物であって、氷点降下測定法による
    濃度が加水分解前よりも80(mOsm)以上大きいこ
    とを特徴とする乳組成物。
  2. 【請求項2】 乳蛋白質をタンパク質分解酵素を用いて
    加水分解する工程を含み、氷点降下測定法による濃度を
    加水分解前よりも80(mOsm)以上大きくすること
    を特徴とする乳組成物の製造方法。
  3. 【請求項3】 加水分解生成物のpHを酸性に調整する
    工程を含むことを特徴とする請求項2の乳組成物の製造
    方法。
  4. 【請求項4】 乳蛋白質をタンパク質分解酵素を用いて
    加水分解して氷点降下測定法による濃度を加水分解前よ
    りも80(mOsm)以上大きくした後、加水分解後の
    分解生成物を乳酸発酵させることによりpHを4.5以
    下に調整することを特徴とする請求項3の乳組成物の製
    造方法。
JP15304396A 1995-06-01 1996-05-24 苦味が少なく且つ低アレルゲン性の乳組成物とその製造方法 Expired - Fee Related JP3542093B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP15304396A JP3542093B2 (ja) 1995-06-01 1996-05-24 苦味が少なく且つ低アレルゲン性の乳組成物とその製造方法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP15988895 1995-06-01
JP7-159888 1995-06-01
JP15304396A JP3542093B2 (ja) 1995-06-01 1996-05-24 苦味が少なく且つ低アレルゲン性の乳組成物とその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH0947229A true JPH0947229A (ja) 1997-02-18
JP3542093B2 JP3542093B2 (ja) 2004-07-14

Family

ID=26481777

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP15304396A Expired - Fee Related JP3542093B2 (ja) 1995-06-01 1996-05-24 苦味が少なく且つ低アレルゲン性の乳組成物とその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3542093B2 (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO1999065326A1 (en) * 1998-06-17 1999-12-23 New Zealand Dairy Board Bioactive whey protein hydrolysate
WO2005096847A1 (en) * 2004-03-19 2005-10-20 Campina Nederland Holding B.V. Method of preparing a food ingredient and food product having angiotensin-i-converting enzyme inhibiting properties and products thus obtained
JP2005350452A (ja) * 2004-05-14 2005-12-22 Meiji Milk Prod Co Ltd IgE産生抑制作用を有する組成物およびIgE産生抑制方法
JP2012170438A (ja) * 2011-02-24 2012-09-10 Hiroshima Prefecture 食品用豆類、その製造方法及びこれを用いた食品

Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS4852967A (ja) * 1971-11-10 1973-07-25
JPS5279083A (en) * 1975-12-26 1977-07-02 Morinaga Milk Industry Co Ltd Production of protein decomposed substance not having bitterness and antigen property
JPH02138991A (ja) * 1988-11-19 1990-05-28 Morinaga Milk Ind Co Ltd 低分子量ペプチド組成物およびその製造方法
JPH0349651A (ja) * 1989-07-07 1991-03-04 Soc Prod Nestle Sa 酵素加水分解タン白の苦味除去方法
JPH05209000A (ja) * 1991-12-27 1993-08-20 Snow Brand Milk Prod Co Ltd 低アレルゲン化ペプチド組成物
JPH05344847A (ja) * 1991-03-01 1993-12-27 Meiji Milk Prod Co Ltd 不快味のない低抗原性たん白質分解物 及びその製造方法
JPH0799885A (ja) * 1993-09-30 1995-04-18 Snow Brand Milk Prod Co Ltd ホエー蛋白質発酵乳およびその製造方法
JPH07115912A (ja) * 1993-10-21 1995-05-09 Terumo Corp 乳清蛋白の酵素分解物

Patent Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS4852967A (ja) * 1971-11-10 1973-07-25
JPS5279083A (en) * 1975-12-26 1977-07-02 Morinaga Milk Industry Co Ltd Production of protein decomposed substance not having bitterness and antigen property
JPH02138991A (ja) * 1988-11-19 1990-05-28 Morinaga Milk Ind Co Ltd 低分子量ペプチド組成物およびその製造方法
JPH0349651A (ja) * 1989-07-07 1991-03-04 Soc Prod Nestle Sa 酵素加水分解タン白の苦味除去方法
JPH05344847A (ja) * 1991-03-01 1993-12-27 Meiji Milk Prod Co Ltd 不快味のない低抗原性たん白質分解物 及びその製造方法
JPH05209000A (ja) * 1991-12-27 1993-08-20 Snow Brand Milk Prod Co Ltd 低アレルゲン化ペプチド組成物
JPH0799885A (ja) * 1993-09-30 1995-04-18 Snow Brand Milk Prod Co Ltd ホエー蛋白質発酵乳およびその製造方法
JPH07115912A (ja) * 1993-10-21 1995-05-09 Terumo Corp 乳清蛋白の酵素分解物

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO1999065326A1 (en) * 1998-06-17 1999-12-23 New Zealand Dairy Board Bioactive whey protein hydrolysate
US6919314B1 (en) 1998-06-17 2005-07-19 New Zealand Dairy Board Bioactive whey protein hydrolysate
WO2005096847A1 (en) * 2004-03-19 2005-10-20 Campina Nederland Holding B.V. Method of preparing a food ingredient and food product having angiotensin-i-converting enzyme inhibiting properties and products thus obtained
JP2007529206A (ja) * 2004-03-19 2007-10-25 カンピーナ ネーダーランド ホールディング ビー.ブイ. アンジオテンシン−i−変換酵素阻害特性を有する食品成分及び食品の調製方法、並びにその方法により得られる製品
JP2005350452A (ja) * 2004-05-14 2005-12-22 Meiji Milk Prod Co Ltd IgE産生抑制作用を有する組成物およびIgE産生抑制方法
JP2012170438A (ja) * 2011-02-24 2012-09-10 Hiroshima Prefecture 食品用豆類、その製造方法及びこれを用いた食品

Also Published As

Publication number Publication date
JP3542093B2 (ja) 2004-07-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Saha et al. Debittering of protein hydrolyzates
TWI225490B (en) Bioactive whey protein hydrolysate
US6395508B1 (en) Peptide mixture and products thereof
US7648721B2 (en) Hydrolyzed milk proteins
JP5924653B2 (ja) 加熱低温殺菌または加熱滅菌されたパッケージ化組成物
JP2004508025A (ja) 改良された生物活性ホエータンパク質加水分解物
JPH08509366A (ja) タンパク質の加水分解方法
JP2004511241A (ja) タンパク加水分解物
US20140179609A1 (en) Whey protein hydrolysate containing tryptophan peptide consisting of alpha lactalbumin and the use thereof
Fox Exogenous enzymes in dairy technology—A review 1
JP5654540B2 (ja) ダイズペプチド含有ゲル状食品
JP3542093B2 (ja) 苦味が少なく且つ低アレルゲン性の乳組成物とその製造方法
JP4030883B2 (ja) 臭気が低減された乳蛋白質加水分解物の製造方法及び乳蛋白質加水分解物
JP2736829B2 (ja) 不快味のない蛋白質加水分解物の製造法
JP2959747B2 (ja) 風味良好な乳清蛋白加水分解物及びその製造法
JP7074721B2 (ja) 乳原料発酵品およびその製造方法
JP3383461B2 (ja) カゼイン加水分解物及びその製造方法
JPH10271958A (ja) 臭気の低減された蛋白質加水分解物の製造方法
JP3636322B2 (ja) 乳清蛋白質加水分解物及びその製造方法
JP3272453B2 (ja) 飲食品風味の維持改良方法
JPH05344847A (ja) 不快味のない低抗原性たん白質分解物 及びその製造方法
AU701507B2 (en) Peptide mixture and products thereof
AU2022353630A1 (en) Method for producing peptide
JPH0640796B2 (ja) 乳酸醗酵物の製造法
JP5312817B2 (ja) ダイズペプチド含有ゲル状食品

Legal Events

Date Code Title Description
TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20040322

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20040329

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100409

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110409

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130409

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140409

Year of fee payment: 10

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees