JPH0942375A - ダンパとその製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 ハブ１に弾性体２を介して質量体３を接続
し、弾性体２に円周方向に並べられた複数の連結部２ａ
を設け、連結部２ａ同士の間にハブ１と質量体３との偏
心量を制限するストッパ４を設けたダンパについて、ス
トッパ４が質量体３の正常な回転変位を阻害せず、必要
なときにだけ作動する構造であって、かつストッパ４が
脱落しにくい構造のダンパを提供する。 【解決手段】 弾性体２をハブ１側においてストッパ４
に加硫接着するとともに、ストッパ４と質量体３の間に
所定の間隙５が設けることにした。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、防振技術に係るダ
ンパとその製造方法に関し、更に詳しくは、自動車の駆
動系のプロペラシャフト等の回転シャフトに装着され
て、この回転シャフトに生起される振動を吸収抑制する
ダイナミックダンパとその製造方法に関する。ダイナミ
ックダンパは、動的吸振器またはティルガーと別称され
ることがある。

【０００２】

【従来の技術】従来から、図４に示すように、ハブａに
ゴム状弾性材製の弾性体ｂを介して質量体ｃを接続し、
弾性体ｂに円周方向に並べられた複数の連結部ｂ’を設
けたダイナミックダンパが知られているが、このダイナ
ミックダンパによると、高速回転時に発生する質量体ｃ
の振れ回りによって、質量体ｃがハブａに対して大きく
偏心し、これを原因として、弾性体ｂに大きな負荷が作
用して、弾性体ｂが破損する問題がある。

【０００３】そこで、従来から、実開平５−６９４３０
号公報または実開平６−１４５８５号公報等に掲載され
ているように、連結部同士の間にストッパを設けて、ハ
ブと質量体との偏心量を制限し、これによって弾性体に
必要以上に大きな負荷がかからないようにしたダイナミ
ックダンパが開発されている。

【０００４】しかしながら、この種のストッパを設けた
ダイナミックダンパにおいては、ハブとストッパの間お
よびストッパと質量体の間にそれぞれ弾性体が介装され
ていて、この部分だけを見ると、ハブ、弾性体、ストッ
パ、弾性体および質量体が径方向に密に積層されてい
る。したがって当該ダンパの設計および製造に余程の慎
重を期さないと、この積層構造が質量体の正常な回転変
位に対する阻害要因となる虞がある。

【０００５】また、この種のストッパを設けたダイナミ
ックダンパは、弾性体をハブと質量体とに加硫接着し
て、この三部品よりなる加硫成形品を成形してから、こ
の加硫成形品に対してストッパを装着している。装着
は、具体的には、ストッパを軸方向一方から貫挿する貫
挿作業であって、加硫成形品を成形してから、ストッパ
の装着個数と同じ回数、貫挿作業を繰り返さなければな
らない。したがって従来の構造ないし製造方法には、当
該ダンパの製造に多くの手間と時間がかかる問題があ
る。また、このようにストッパを加硫成形品に対して後
付けすると、実機の作動時に発生する振動や摩耗によっ
て、如何してもストッパが脱落する虞がある。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】本発明は以上の点に鑑
み、ハブと質量体との偏心量を制限するストッパが質量
体の正常な回転変位を阻害せず、必要なときにだけ作動
する構造であって、かつストッパが脱落しにくい構造の
ダンパを提供することを目的とする。また、これに加え
て、ハブと質量体との回転変位量を制限する機能を備え
たダンパを提供することを目的とする。また併せて、ダ
ンパの製造時にストッパを加硫成形品に対して後付けす
る必要がなく、もってその製造に多くの手間と時間がか
かることがないダンパの製造方法を提供することを目的
とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明の請求項１によるダンパは、ハブにゴム状弾
性材製の弾性体を介して質量体を接続し、前記弾性体に
円周方向に並べられた複数の連結部を設け、前記連結部
同士の間に前記ハブと前記質量体との偏心量を制限する
ストッパを設けたダンパにおいて、前記弾性体が前記ハ
ブ側において前記ストッパに加硫接着され、前記ストッ
パと前記質量体の間に所定の間隙が設けられていること
にした。また本発明の請求項２によるダンパは、請求項
１のダンパにおいて、ストッパと円周方向に対向してハ
ブと質量体との回転変位量を制限する円周方向ストッパ
が設けられ、前記円周方向ストッパが弾性体の一部とし
て、連結部と一体成形されていることにした。また本発
明の請求項３によるダンパの製造方法は、請求項１のダ
ンパの製造方法において、弾性体を、ハブと質量体とに
加硫接着するのと同時にストッパに加硫接着することに
した。

【０００８】

【作用】上記構成を備えた本発明の請求項１によるダン
パにおいては、ストッパと質量体の間に所定の間隙が設
けられているために、定常の作動時においては、両部品
が互いに離れており、質量体がハブに対して所定量偏心
した段階で初めて、両部品が接触する。したがって両部
品が接触するのが、ストッパの作動が必要とされる極く
短い時間だけに限定されるために、ストッパが質量体の
正常な回転変位を阻害するのを実質的に防止することが
可能となる。また上記構成を備えたダンパにおいては、
弾性体がハブ側においてストッパに加硫接着されている
ために、上記従来例のようにストッパが加硫成形品に後
付けされる場合と違って、ストッパが加硫成形品の一部
を構成する。したがってストッパが脱落するのを有効に
防止することが可能となる。

【０００９】また上記構成を備えた本発明の請求項２に
よるダンパにおいては、ストッパと円周方向に対向して
ハブと質量体との回転変位量を制限する円周方向ストッ
パが設けられているために、この円周方向ストッパによ
って、ハブと質量体との回転変位量を制限することが可
能となる。

【００１０】また上記構成を備えた本発明の請求項３に
よるダンパの製造方法においては、弾性体をハブと質量
体とに加硫接着するのと同時にストッパに加硫接着する
ようにしたために、ストッパを加硫成形品に対して後付
けする必要がなく、その製造に多くの手間と時間がかか
るのを防止することが可能となる。

【００１１】

【実施例】つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説
明する。

【００１２】図１および図２に示すように、当該実施例
に係るダイナミックダンパは、先ず、ハブ１を備えてお
り、このハブ１の外周側に弾性体２を介して質量体（振
動リングとも称する）３が同心的に接続され、弾性体２
に、円周方向に並べられた複数（図は四等配を想定し、
そのうちの二つを描いている）の連結部２ａが設けら
れ、連結部２ａ同士の間にそれぞれ、ハブ１と質量体３
との偏心量を制限するストッパ（その形状からローラま
たはスリーブと称されることもある）４が設けられてい
る。

【００１３】ハブ１は板金等の剛材によって環状に成形
されており、所要数の取付孔１ｂを設けたフランジ部１
ａと、円筒部１ｃとを一体に備えている。質量体３は金
属等の剛材によって環状に成形されている。ストッパ４
は金属等の剛材によって円柱形または円筒形（図では円
筒形）に成形されており、その外径寸法をハブ１と質量
体３の間隔（ハブ１の外径寸法と質量体３の内径寸法の
差）より若干小さく設定されて、両部品１，３に対して
非接触の状態でかつ軸線を平行に配置され、またその軸
方向長さをハブ１の軸方向長さおよび質量体３の軸方向
長さより若干大きく設定されて、図２に示したように、
その軸方向両端部をそれぞれハブ１の軸方向端部および
質量体３の軸方向端部から突出させている。

【００１４】弾性体２はゴム状弾性材によって成形され
ており、上記した複数の連結部２ａと、この連結部２ａ
同士の間にそれぞれ配置されたストッパ支持部２ｂと、
同じく連結部２ａ同士の間にそれぞれ配置された一対の
円周方向ストッパ２ｃ，２ｄとを一体に備えている。連
結部２ａはそれぞれハブ１と質量体３とを接続するもの
で、ハブ１の円筒部１ｃの外周面および質量体３の内周
面にそれぞれ加硫接着されている。ストッパ支持部２ｂ
はそれぞれストッパ４を一つずつ支持するもので、円弧
形のストッパ支持面２ｅを備え、ハブ１の円筒部１ｃの
外周面に加硫接着されるとともに、ストッパ支持面２ｅ
においてストッパ４に加硫接着されている。一対の円周
方向ストッパ２ｃ，２ｄはハブ１と質量体３との回転変
位量を制限するもので、それぞれストッパ４と所定の間
隔を介して円周方向に対向する対向面２ｆ，２ｇを備
え、質量体３の内周面に加硫接着されている。またこの
一対の円周方向ストッパ２ｃ，２ｄは円周方向に互いに
離れており、この一対の円周方向ストッパ２ｃ，２ｄの
間において、ストッパ４と質量体３とが径方向に対向
し、このストッパ４と質量体３の間に所定の大きさｘの
間隙５が設けられている。間隙５の大きさｘは、実寸で
１〜２ｍｍが好適である。また符号６は、軸方向に貫通
した空間、すなわち、すぐり部を示している。

【００１５】つぎに上記構成を備えたダイナミックダン
パの製造方法を説明すると、以下のとおりである。

【００１６】すなわち、予め部品形状に成形されたハブ
１、質量体３および複数のストッパ４をそれぞれ金型に
挿入し、この金型によって、連結部２ａ、ストッパ支持
部２ｂおよび円周方向ストッパ２ｃ，２ｄを備えた弾性
体２を加硫成形し、この加硫成形と同時に、弾性体２を
上記したようにハブ１、質量体３およびストッパ４にそ
れぞれ加硫接着する。すなわち、所謂インサート成形を
実施する訳である。図３に示すように、金型には、すぐ
り部６の形状に見合った挿入部７，８が設けられてお
り、成形材料であるゴムが余分に回り込んで間隙５を埋
めてしまうことがないように、挿入部７，８とストッパ
４、挿入部７，８と質量体３がそれぞれ矢印部分で強く
密接せしめられる。尚、挿入部７，８は、すぐり部６一
つに対して、二つに分けられている。

【００１７】上記構成を備えたダイナミックダンパにお
いては、ストッパ４と質量体３の間にそれぞれ所定の大
きさｘの間隙５が設けられているために、当該ダンパの
定常の作動時においては、両部品３，４が互いに離れて
おり、質量体３がハブ１に対して所定量偏心した段階で
初めて、両部品３，４が接触する。したがって両部品
３，４が接触するのが、ストッパ４の作動が必要とされ
る極く短い時間だけに限定されるために、ストッパ４が
質量体３の正常な回転変位を阻害するのを実質的に防止
することができる。また上記構成のダイナミックダンパ
においては、弾性体２がハブ１側においてストッパ４に
加硫接着されているために、上記従来例のようにストッ
パ４が加硫成形品に後付けされる場合と違って、ストッ
パ４が、ハブ１、弾性体２および質量体３とともに加硫
成形品の一部を構成する。したがってストッパ４が脱落
するのを有効に防止することができる。

【００１８】また上記構成を備えたダイナミックダンパ
においては、ストッパ４と円周方向に対向してハブ１と
質量体３との回転変位量を制限する一対の円周方向スト
ッパ２ｃ，２ｄが設けられているために、この円周方向
ストッパ２ｃ，２ｄによって、ハブ１と質量体３との回
転変位量を制限することができる。したがってストッパ
４によって径方向について弾性体２の弾性変形量が制限
されるばかりでなく、この円周方向ストッパ２ｃ，２ｄ
によって円周方向についても弾性体２の弾性変形量が制
限されるために、弾性体２が過度に弾性変形することが
実質的になくなり、これによって弾性体２の耐久性を向
上させることができる。

【００１９】また上記工程を備えたダイナミックダンパ
の製造方法によれば、弾性体２をハブ１と質量体３とに
加硫接着するのと同時にストッパ４に加硫接着するよう
にしたために、ストッパ４を加硫成形品に対して後付け
する必要がなく、その製造に多くの手間と時間がかかる
のを防止することができる。

【００２０】

【発明の効果】本発明は、以下の効果を奏する。

【００２１】すなわち、先ず、上記構成を備えた本発明
の請求項１によるダンパにおいては、ストッパと質量体
の間に所定の間隙が設けられているために、当該ダンパ
の定常の作動時においては、両部品が互いに離れてお
り、質量体がハブに対して所定量偏心した段階で初め
て、両部品が接触する。したがって両部品が接触するの
が、ストッパの作動が必要とされる極く短い時間だけに
限定されるために、ストッパが質量体の正常な回転変位
を阻害するのを実質的に防止することができる。また上
記構成を備えたダンパにおいては、弾性体がハブ側にお
いてストッパに加硫接着されているために、上記従来例
のようにストッパが加硫成形品に後付けされる場合と違
って、ストッパが、ハブ、弾性体および質量体とともに
加硫成形品の一部を構成する。したがってストッパが脱
落するのを有効に防止することができる。

【００２２】また、これに加えて、上記構成を備えた本
発明の請求項２によるダンパにおいては、ストッパと円
周方向に対向してハブと質量体との回転変位量を制限す
る円周方向ストッパが設けられているために、この円周
方向ストッパによって、ハブと質量体との回転変位量を
制限することができる。したがってストッパによって径
方向について弾性体の弾性変形量が制限されるばかりで
なく、この円周方向ストッパによって円周方向について
も弾性体の弾性変形量が制限されるために、弾性体が過
度に弾性変形することが実質的になくなり、これによっ
て弾性体の耐久性を向上させることができる。

【００２３】また併せて、上記構成を備えた本発明の請
求項３によるダンパの製造方法においては、弾性体をハ
ブと質量体とに加硫接着するのと同時にストッパに加硫
接着するようにしたために、ストッパを加硫成形品に対
して後付けする必要がなく、その製造に多くの手間と時
間がかかるのを防止することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例に係るダンパの一部正面図

【図２】図１におけるＡ−Ａ線断面図

【図３】同ダンパの製造方法を示す説明図

【図４】従来例に係るダンパの一部正面図

【符号の説明】

１ ハブ １ａ フランジ部 １ｂ 取付孔 １ｃ 円筒部 ２ 弾性体 ２ａ 連結部 ２ｂ ストッパ支持部 ２ｃ，２ｄ 円周方向ストッパ ２ｅ ストッパ支持面 ２ｆ，２ｇ 対向面 ３ 質量体 ４ ストッパ ５ 間隙 ６ すぐり部 ７，８ 挿入部

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ハブ（１）にゴム状弾性材製の弾性体
   （２）を介して質量体（３）を接続し、前記弾性体
   （２）に円周方向に並べられた複数の連結部（２ａ）を
   設け、前記連結部（２ａ）同士の間に前記ハブ（１）と
   前記質量体（３）との偏心量を制限するストッパ（４）
   を設けたダンパにおいて、前記弾性体（２）が前記ハブ
   （１）側において前記ストッパ（４）に加硫接着され、
   前記ストッパ（４）と前記質量体（３）の間に所定の間
   隙（５）が設けられていることを特徴とするダンパ。
2. 【請求項２】 請求項１のダンパにおいて、ストッパ
   （４）と円周方向に対向してハブ（１）と質量体（３）
   との回転変位量を制限する円周方向ストッパ（２ｃ）
   （２ｄ）が設けられ、前記円周方向ストッパ（２ｃ）
   （２ｄ）が弾性体（２）の一部として、連結部（２ａ）
   と一体成形されていることを特徴とするダンパ。
3. 【請求項３】 請求項１のダンパの製造方法において、
   弾性体（２）を、ハブ（１）と質量体（３）とに加硫接
   着するのと同時にストッパ（４）に加硫接着することを
   特徴とするダンパの製造方法。