JPH0941180A - 電解用ガス拡散電極及びその製造方法 - Google Patents

電解用ガス拡散電極及びその製造方法

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JPH0941180A
JPH0941180A JP7218211A JP21821195A JPH0941180A JP H0941180 A JPH0941180 A JP H0941180A JP 7218211 A JP7218211 A JP 7218211A JP 21821195 A JP21821195 A JP 21821195A JP H0941180 A JPH0941180 A JP H0941180A
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勉 野中
Yasushi Ono
恭史 小野
Akiko Yoshiyama
明子 吉山
Takayuki Shimamune
孝之 島宗
Yoshinori Nishiki
善則 錦
Takahiro Ashida
芦田高弘
Yasuo Nakajima
保夫 中島
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 従来の食塩電解用ガス拡散電極は、比較的長
い寿命を有するものの依然として満足できるものではな
かった。本発明は、従来の寿命より更に長い寿命を有す
る食塩電解用ガス拡散電極とその製法を提供する。 【構成】 多孔質電極支持体26の表面に銀と疎水性フッ
素成分を含む複合メッキ層27を形成してガス拡散陰極29
を構成する。前記電極支持体の細孔表面にも複合メッキ
層が形成されるため、従来は親水性化が避けられなかっ
た前記細孔の疎水性が更に長期間保持され、従来にない
長寿命のガス拡散電極が提供できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、長期間安定して使用で
きる電解用ガス拡散電極とその製造方法、特に食塩電解
用として好適に適用できる電解用ガス拡散電極及びその
製造方法に関する。
【0002】
【従来技術とその問題点】苛性アルカリ電解を代表とす
る工業電解における陰極反応は、金属採取やメッキ用途
以外は多くは水素発生反応である。この発生水素は有効
に使用されるケースもあるが多くは廃棄されている。又
有効使用されている場合でも、主として付加価値の比較
的低い燃料として使用されている。陰極反応を水素発生
反応とすると水素発生に要するエネルギーが不必要に浪
費されるため、このエネルギー低減用として主として燃
料電池を代表とする電池分野で研究開発されてきたガス
拡散電極の使用が試みられている。このガス拡散電極
は、反応物質としてのガスを電極表面に供給しやすい性
質を有することを特徴とし、燃料電池等の用途を踏まえ
て開発されてきた(H.ウェント「Electrochemical Hy
drogen Technologies" p373 〜, 1990、E.A.ティシ
アネリら、「Journal of Electroanalytical Chemistry
251" p275〜, 1988)。
【0003】該ガス拡散電極の工業用電解への応用例と
しては、過酸化水素のオンサイト製造装置における酸素
還元反応を行なうための疎水性陰極としての利用(D.
プレッチャー、「Industrial Electrochemistry (2nd E
dit.) 」p279〜, 1991) 、アルカリ製造、回収プロセス
における対極反応としての陽極の酸素発生或いは陰極の
水素発生の代替としての陽極での水素酸化(J.ジョリ
センら、「Journal ofElectrochemistry 21」p869〜, 1
991) 或いは陰極での酸素還元反応(三浦ら、「日本化
学会誌」1982,p732〜) 等がある。又亜鉛採取等の金属
回収、亜鉛メッキの対極としても水素陽極による減極が
可能であることが報告されている(古屋ら、「電気化学
及び工業物理化学56」p653〜, 1988) 。しかしながらこ
れらの工業電解では、溶液、ガスの組成あるいは運転条
件が燃料電池の場合に比較して単純でないため、十分な
電極寿命や性能が得られないという問題点がある。
【0004】次に食塩電解へのガス拡散電極の適用にお
ける問題点を詳細に説明する。工業用原料として重要な
水酸化ナトリウム及び塩素は主として食塩電解法により
製造されている。この電解プロセスは水銀法及び隔膜法
を経て、イオン交換膜を隔膜とし過電圧の小さい活性化
陰極を使用するイオン交換膜法へ移行してきている。こ
の製法の移行により、水酸化ナトリウム1トンを製造す
るための電力原単位は2000kWhまで減少した。更に陰
極での水素発生反応を酸素還元反応に変換することによ
り、理論分解電圧は0.96Vになり、従来法の2.19Vに比
べ1.23Vも低減でき,大幅な省エネルギー化が期待でき
る。この新プロセスを実現させるためには、高性能で上
記電解系において充分な安定性を有する酸素陰極の開発
が不可欠である(藤田ら、「第8回ソーダ工業技術討論
会要旨集」1984、及び、古屋ら、「第11回ソーダ工業技
術討論会要旨集」1987)。
【0005】現在最も一般的に行なわれている酸素陰極
を用いた食塩電解法の概略を図1に示す。電解槽1はイ
オン交換膜2により陽極室3と陰極室4とに区画され、
イオン交換膜2の陽極室3側表面には多孔性の陽極5が
密着し、かつ陰極室4内にはその両面に親水層6及びガ
ス拡散層7を形成したガス拡散陰極8が設置され、該ガ
ス拡散陰極8により陰極室4を溶液室9とガス室10とに
区画している。この電解槽1の陽極室3に食塩水を、溶
液室に希釈苛性ソーダを、更にガス室に酸素含有ガスを
それぞれ供給しながら電解を行うと、陰極8の背面から
供給される酸素が電極内を拡散し親水層6に担持された
触媒により水及びナトリウムイオンと反応し水酸化ナト
リウムを生成する。従ってこの電解法で使用される陰極
は、酸素のみを十分に透過し、かつ水酸化ナトリウムが
ガス室に漏洩しない所謂気液分離型のガス拡散電極でな
ければならない。以上のような要求を満たすものとして
現在食塩電解用として提案されている酸素陰極は、カー
ボン粉末とPTFEを混合させシート状に成形した電極
基体に銀、白金等の触媒を担持させたガス拡散電極が中
心となっている。
【0006】従来の食塩電解法における陽極及び陰極反
応はそれぞれ、 陽極 2Cl- → Cl2 + 2e- (E0
1.36VvsNHE) 陰極 2H2 O + 2e- → 2OH- + H2
(E0 =−0.83VvsNHE) であり、理論分解電圧は2.19Vとなる。陰極に酸素ガス
を供給しながら電解すると、陰極反応は、陰極 2H2
O + O2 + 2e- → 4OH- (E0 =0.40
VvsNHE)となり、理論的には1.23V、実用的電流密
度範囲でも0.8 V程度の電力消費を低減でき、水酸化ナ
トリウム1トン当たり700 kWhの節減になるため、19
80年代からガス拡散電極を利用する食塩電解の実用化が
検討されている(相川、「ソーダと塩素45」p85, 199
4)。
【0007】しかしこのタイプの電極は幾つかの大きな
問題点を有している。即ち、 電極材料として用いられるカーボンは高温で水酸化ナ
トリウム及び酸素の共存下では容易に劣化し、電極性能
を著しく低下させる。 液圧の上昇及び電極の劣化に伴い発生する水酸化ナト
リウムのガス室側へのリークは、現状の電極を使用する
限り防止することが困難である。 実用レベルで必要な大きさ(1m2 以上)の電極の作
製が困難である。 槽内の圧力は高さによって変化するが、それに対応し
た供給酸素ガス圧分布を与えることが困難である。 陰極液の溶液抵抗損失があり、又攪拌の動力を必要と
する。 実用化に際し、既存の電解設備の大幅な改良が必要と
なる。 酸素ガスとして空気を利用すると、空気中の炭酸ガス
が水酸化ナトリウムと反応し炭酸ナトリウムとしてガス
電極の細孔に析出するためガス拡散能力が低下する。
【0008】これらの問題点を解決するために本出願人
は、図2に示す電解槽を提案した。電解槽11はイオン交
換膜12により陽極室13と陰極室14とに区画され、イオン
交換膜12の陽極室13側表面には多孔性の陽極15が密着
し、かつ該イオン交換膜12の陰極室14側表面には親水層
16とガス拡散層17が両面に被覆されたガス拡散陰極18の
前記親水層16が密着状態で保持されている。該電解槽11
の陽極室13に飽和食塩水を、陰極室14に湿潤空気を導入
しながら両極間に通電すると、ガス拡散陰極18の親水層
16側でガス拡散層17を透過した水及び酸素が反応して水
酸イオンが生成し、イオン交換膜12を通して陽極室13側
から透過して来るナトリウムイオンと反応して水酸化ナ
トリウムを生成する。
【0009】この電解槽11によるとガス室と溶液室の区
画が不要になり、従って電極は一体構造である必要がな
くなり、大型化も比較的容易になり、上記問題点が解
決され、更に生成する水酸化ナトリウムの溶液室からガ
ス室へのリークが無くなって問題点が解決され、又電
極とイオン交換膜が密着していることから従来のイオン
交換膜法の設備をあまり改良することなく使用でき、問
題点及びが解決できる。又当然に高さ方向の液圧変
化がないため問題点は生じない。又生成する水酸化ナ
トリウムは電極内部を通って電極裏面に必然的に移動す
るため問題点も起こりにくい。
【0010】又前記電解槽を使用するプロセスでは前記
陰極18が十分なガス透過性に加えて水酸化ナトリウムに
よる湿潤を避けるために充分な疎水性及び前記水酸化ナ
トリウムが電極内を容易に透過できる透過性を有しなけ
ればならない。この目的のため前記陽極15はニッケルや
銀などの耐久性金属で作製されており、問題点が解決
されて長期間安定した電解を継続できる。図2に示した
電解槽はこのような従来技術の問題点を効果的に解決で
きる優れた電解槽であるが、長期運転の間に徐々に性能
が劣化することは回避できなかった。これはガス供給の
役割を担うフッ素成分の疎水性物質自体が劣化すること
があることに加えて、初期の電極製造段階において三次
元構造の電極内部の細孔の総てに疎水性物質を付与でき
なかったため、長期間運転の間にこれらの細孔が次第に
閉塞されてガス拡散能が低下するためであると推測でき
る。
【0011】
【発明の目的】本発明は、更に長期間に亘って、安定し
た条件で運転可能な電解用ガス拡散電極、特に食塩電解
用として適したガス拡散電極及びその製造方法を提供す
ることを目的とする。
【0012】
【問題点を解決するための手段】本発明は、多孔質電極
支持体、及び該支持体の表面に形成された銀及び疎水性
のフッ素成分を含む複合メッキ層を含んで成ることを特
徴とする電解用ガス拡散電極であり、該複合メッキ層の
表面に更に触媒層を被覆形成しても良く、更に前記電極
支持体上の少なくとも一部に前記触媒層を形成し、それ
らの表面の少なくとも一部に前記複合メッキ層を形成し
ても良い。又本発明方法では、前記複合メッキ層の形成
の際に、銀、疎水性フッ素成分、及び界面活性剤を含む
銀メッキ浴に浸漬して通電し前記複合メッキ層を前記支
持体上等に電着させる。
【0013】以下本発明を詳細に説明する。本発明で
は、ほぼ満足できる性能を有する従来のガス拡散電極特
に食塩電極に使用するガス拡散電極の性能、特にその寿
命を更に延ばすためにガス拡散電極に銀及び疎水性のフ
ッ素成分を含む複合メッキ層を形成する。前述の通り従
来のガス拡散電極が十分に満足できる寿命を有しないの
は、電極構成物質の疎水性物質の長期間運転後の劣化が
避けられなかったからであり、これは多孔質の電極支持
体の細孔部分の最深部まで疎水性物質を被覆できなかっ
たことに原因があるものと推測される。従って本発明で
は、多孔質電極支持体表面の疎水化の際に該表面に複合
メッキ層を形成することにより、前記多孔質電極支持体
の細孔の実効的に総ての表面を疎水性物質で被覆し、こ
れにより得られるガス拡散電極の耐久性を向上させ、長
期間運転後でも十分に高い電極活性が維持され、従来に
ない長寿命のガス拡散電極が提供できる。
【0014】前記多孔質電極支持体としては、チタン、
ニオブ、タンタル、ステンレス、ニッケル、ジルコニウ
ム、カーボン、銀などの耐食性を有する金網、それらの
粉末から成る焼結体、金属繊維焼結体、発泡体等の多孔
質材料を使用し、それぞれ適切な前処理により洗浄して
おくことが望ましい。該多孔質電極支持体は、電流、ガ
ス及び電解液の供給及び除去を円滑に行なうために適度
の多孔性と電導性を有することが好ましく、前記材料は
これらの特性を有している。この電極支持体に銀と疎水
性フッ素成分を含んで成る複合メッキ層を被覆する。該
疎水性フッ素成分としては、フッ化ピッチ、フッ化黒
鉛、フッ素樹脂等があり、いずれも好適に本発明におい
て使用できるが、フッ素樹脂は均一でないことがあるた
め例えば200 ℃から400 ℃程度の温度で焼成し、均一か
つ良好な性能の樹脂を得るようにしても良い。疎水性部
分及び親水性部分はそれぞれ電極断面方向に沿って連続
していることが望ましい。前記疎水性フッ素成分の粉末
の粒径は0.01から100 ミクロン程度が好ましい。
【0015】前記複合メッキ層は、銀メッキ浴に前記電
極支持体を浸漬し該メッキ浴内に通電することにより該
電極支持体表面に形成する。銀メッキ浴は、銀イオン、
PTFE等の疎水性フッ素成分及び界面活性剤を必須と
し、その他にチオシオンイオンと硼酸イオンを含むこと
が好ましい。好適な銀メッキ浴は、例えば塩化銀10〜50
g/リットル、チオシアン化アンモニウム200 〜400 g
/リットル、PTFE粒子10〜200 g/リットル及び界
面活性剤10〜200 g/(g−PTFE)から構成され、
前記PTFE粒子及び界面活性剤はホモジナイザー等を
使用して前記メッキ浴中に分散させる。適度に攪拌して
分散状態を維持しながら室温又は若干の加温下で0.2 〜
2A/dm2 程度の電流密度で通電して、前記支持体上に銀
と疎水性フッ素成分を含む複合メッキ層を形成する。該
複合メッキ層の厚さは1〜100 ミクロン程度が好まし
く、この厚さで良好な疎水性及び耐久性が発現する。メ
ッキ後は十分に洗浄及び乾燥することが望ましい。
【0016】このように得られた複合メッキ層を有する
ガス拡散電極は、PTFEの含有量が多いほど接触角は
増加しつまり疎水性が向上し、最適条件で製造された場
合には150 °にも達する接触角を有する。又複合メッキ
層を構成するフッ素成分が凝集せず均一にメッキされ、
多孔質支持体の微細な細孔の奥まで均一なメッキ層が形
成される。このガス拡散電極を1Mの水酸化ナトリウム
中での水素発生反応に使用しても長期間疎水性が維持さ
れ、機械強度も十分高く維持される。
【0017】このようなガス拡散電極は複合メッキ層中
の銀が触媒として機能する場合には触媒層を形成しなく
ても良いが、通常は前記複合メッキ層上に触媒層を形成
する。触媒としては、白金、パラジウム、ルテニウム、
イリジウム、銅、銀、コバルト、鉛等の供給或いはそれ
らの酸化物を好ましく使用できる。これらの触媒から成
る触媒層は、粉末としてフッ素樹脂等のバインダーやナ
フサ等の溶剤と混合してペーストとして塗布するか、或
いは触媒の塩溶液を支持体表面に塗布し焼成するか、前
記塩溶液を電気メッキするか、還元剤を用いて無電解メ
ッキすることにより形成される。前記触媒層を表面に形
成した前記多孔質電極支持体の厚さは0.1 〜0.5 mm、空
隙率30〜90%であることが好ましい。該支持体の機械的
強度及び電導性の向上のために、該電極の背後に30〜80
%の開口部を有する導電性の給電部を設けることが好ま
しい。該給電部は予め溶接や圧着により前記支持体に接
合しておくことが望ましい。該給電部は同時に気液の除
去及び供給の役割を果たし、耐久性向上のため、前記複
合メッキを施すことが好ましい。
【0018】本発明のガス拡散電極を食塩電解の陰極と
して用いる場合は、イオン交換膜として耐久性の面から
フッ素樹脂系の膜を使用し、その両面のそれぞれに該ガ
ス拡散電極及びDSAと呼ばれる多孔性チタン製の不溶
性電極を密着して設置することができ、前記イオン交換
膜及び両電極は前もって機械的に接合させておくか、電
解時に圧力を与えれば相互に密着状態に維持できる。電
解条件としては、温度を10から90℃、電流密度を1〜10
0 A/dm2 とすることが好ましい。上述した通り、本発明
に係わるガス拡散電極は、前記多孔質電極支持体表面の
少なくとも一部に複合メッキ層を形成し、必要に応じて
その表面の少なくとも一部に触媒層を形成することが望
ましいが、本発明はこれに限定されるものではなく、前
記電極支持体表面に触媒層を形成し、触媒層が形成され
ていない前記電極支持体表面に複合メッキ層を形成して
も良い。又前記給電部と電極支持体とを複合メッキ層を
利用して接合しても良い。
【0019】図3は、本発明に係わる電解用ガス拡散電
極の一例を示す縦断面図である。電解槽21はイオン交換
膜22により陽極室23と陰極室24とに区画され、イオン交
換膜22の陽極室23側表面には多孔性の陽極25が密着し、
かつ該イオン交換膜22の陰極室24側表面には、シート状
の多孔質電極支持体26の両面に複合メッキ層27が被覆形
成されかつイオン交換膜22側の複合メッキ層27の表面に
触媒層28が形成されて成るガス拡散陰極29が、該触媒層
28がイオン交換膜22に接触するように密着状態で保持さ
れている。30は陽極室23底面に形成された陽極液供給
口、31は陽極室23天板に形成された陽極液取出口、32は
陰極室24天板に形成された酸素含有ガス供給口、33は陰
極室24底板に形成された水酸化ナトリウム取出口であ
る。該電解槽21の陽極室23に飽和食塩水を、陰極室24に
湿潤空気等の酸素含有ガスを導入しながら両極間に通電
すると、ガス拡散陰極29の触媒層側で電極支持体26を透
過した水及び酸素が反応して水酸イオンが生成し、イオ
ン交換膜22を通して陽極室23側から透過して来るナトリ
ウムイオンと反応して水酸化ナトリウムを生成する。こ
の際に電極支持体26の細孔内にも複合メッキ層が進入
し、該細孔内も十分に疎水化しているため、細孔内が親
水化して陰極室24に供給される水分や生成する水酸化ナ
トリウムで細孔が閉塞したりすることがなく、十分に長
い期間安定した食塩電解により水酸化ナトリウム製造を
継続できる。
【0020】
【実施例】次に本発明の電解用ガス拡散電極の製造及び
該電極を使用する電解方法の実施例を記載するが、該実
施例は本発明を限定するものではない。
【実施例1】本実施例では板状の電極基体に複合メッキ
層を形成して性能測定用試料を作製し、複合メッキ層を
形成した電極基体の各種性能を測定した。厚さ1mmの銀
板をアセトンで脱脂した。塩化銀30g/リットル、チオ
シアン化アンモニウム300 g/リットル及び硼酸20g/
リットルを含む銀メッキ浴にPTFE粒子(ダイキン工
業株式会社製L−5)10〜80g/リットル及び界面活性
剤(大日本インキ株式会社製F−150 )60g/(g−P
TFE)を添加し、ホモジナイザーで分散させた。前記
銀板を前記銀メッキ浴中に浸漬し、適度に攪拌しなが
ら、室温にて電流密度0.5 〜1A/dm2 で複合メッキ層を
電着させた。充分に洗浄した後、加熱乾燥し得られた試
料の接触角を測定した。条件を変えて計30回測定を行な
った結果を表1に記載した。
【0021】
【表1】
【0022】次いで電流密度を5〜10A/dm2 の範囲で変
化させ、かつPTFE粒子の含有量を10〜80g/リット
ルの範囲で変化させた際の接触角の変化を測定した。そ
の結果をそれぞれ図4及び図5に示した。これらの測定
値から、PTFEの含有量が多いほど接触角は増加し、
最適条件では150 °にも達した(鏡面状態の銀表面の水
の接触角は40°である)。SEM分析によると、フッ素
成分粒子は凝集せず均一にメッキされていることが判っ
た。厚さ2mmのニッケル発泡体(住友電工株式会社製セ
ルメット)を基体として、前表の26番と同様の条件で作
製した多孔質支持体の内部を観察したところ、微細な孔
の奥まで均一なメッキ層があり、好ましい分布状態であ
ることが確認された。又1Mの水酸化ナトリウム水溶液
中での水素発生反応における電流電位曲線を図6に示し
た。水素発生反応測定後も疎水性は維持されており,充
分な機械的強度が確認された。
【0023】
【実施例2】厚さ0.5 mmの銀製の発泡体を支持体とし
(面積として0.5 dm2 )、塩化銀30g/リットル、チオ
シアン化アンモニウム300 g/リットル及び硼酸20g/
リットルを含む銀メッキ浴にPTFE粒子80g/リット
ル及び界面活性剤60g/(g−PTFE)を添加し、ホ
モジナイザーで分散させた。前記発泡体を前記銀メッキ
浴中に浸漬し、適度に攪拌しながら、室温にて電流密度
0.75A/dm2 で複合メッキ層を前記発泡体に電着させた。
次に銀の超微粉末(真空冶金株式会社製、50〜100 Å)
とPTFE水懸濁液(三井フロロケミカル株式会社製、
30J)を混合し、前記複合メッキ層上に500 g/m2
なるように塗布した後、350 ℃で50分間電気炉で焼成し
て、触媒層を形成した。この支持体の一方面に給電体で
ある銀製メッシュを添着してガス拡散陰極とした。
【0024】陽極としてはチタン製のDSA多孔性陽
極、イオン交換膜としてナフィオン961 (デュポン社
製)を用い、該イオン交換膜の両側に前記ガス拡散陰極
及び前記陽極を密着させて電解槽を構成した。陽極液と
して飽和食塩水を毎分6ミリリットルの割合で供給し、
陰極室には湿潤酸素ガスを必要量の1.2 倍の速度で供給
した。温度を90℃とし、15Aの電流を流したところ、2.
3 Vの槽電圧で、陰極室出口から33%の水酸化ナトリウ
ムが電流効率96%で得られた。100 日間電解を継続した
ところ、槽電圧は20mV上昇したが、電流効率は95〜96
%に維持された。
【0025】
【実施例3】厚さ0.3 mmの銀製の長繊維多孔体(サーマ
ル株式会社製)と支持体である銀製のメッシュを一体化
した。塩化銀30g/リットル、チオシアン化アンモニウ
ム300 g/リットル及び硼酸20g/リットルを含む銀メ
ッキ浴にPTFE粒子80g/リットル及び界面活性剤80
g/(g−PTFE)を添加し、ホモジナイザーで分散
させた。前記多孔体を前記銀メッキ浴中に浸漬し、適度
に攪拌しながら、室温にて電流密度1A/dm2 で複合メッ
キ層を前記多孔体に電着させた。
【0026】次に銀の超微粉末とPTFE水懸濁液を体
積比1:1で混合し、500 g/m2の割合で前記支持体
上に塗布し、350 ℃で50分間電気炉で焼成して、触媒層
を形成した。この支持体の一方面に給電体である銀製メ
ッシュを添着してガス拡散陰極とした。実施例2と同一
条件で電解を行なったところ、槽電圧は2.25Vであり、
陰極室出口から33%の水酸化ナトリウムが電流効率96%
で得られた。100 日間電解を継続したところ、槽電圧は
30mV上昇したが、電流効率は94〜96%に維持された。
【0027】
【比較例1】厚さ0.5 mmの銀製の長繊維多孔体(サーマ
ル株式会社製)と支持体である銀製のメッシュを一体化
した。複合メッキ層を電着させなかったこと以外は実施
例3と同一条件で触媒層を形成し混合し、500 g/m2
の割合で前記支持体上に塗布し、350 ℃で50分間電気炉
で焼成して、触媒層を形成した。この支持体の一方面に
給電体である銀製メッシュを添着してガス拡散陰極とし
た。実施例2と同一条件で電解を行なったところ、初期
の槽電圧は2.25Vであり、陰極室出口から33%の水酸化
ナトリウムが電流効率96%で得られた。100 日間電解を
継続したところ、槽電圧は約200 mV上昇し、電流効率
は96%から90%に減少した。
【0028】
【発明の効果】本発明は、多孔質電極支持体、及び該支
持体の表面の少なくとも一部に形成された銀及び疎水性
のフッ素成分を含む複合メッキ層を含んで成ることを特
徴とする電解用ガス拡散電極である。前記多孔質電極支
持体の内部の細孔は、従来法では十分に疎水性物質が被
覆されず、長期間使用すると前記細孔表面が徐々に親水
化して水が進入して前記細孔を閉塞する等して電極性能
の低下が避けられなかった。
【0029】しかしながら本発明では、前記多孔質電極
支持体表面に複合メッキ層を形成してあり、疎水性フッ
素成分を有する層がメッキにより形成され、メッキの際
にはメッキ液が前記多孔質電極支持体の細孔まで進入し
て該細孔内にも疎水性フッ素成分がメッキされる。従っ
て従来のガス拡散電極とは異なり、前記細孔内も十分に
疎水化され、耐親水性を有している。これにより十分満
足できる寿命のガス拡散電極が得られ、該電極を長期間
例えば過酷な条件下で運転される食塩電解に使用して
も、前記支持体内の細孔が親水性化することが殆どな
く、初期の電極性能が十分長期間維持でき、従来にない
長寿命のガス拡散電極を提供できる。
【0030】前記複合メッキ層中の銀が触媒として機能
できる場合には、前記ガス拡散電極はそのまま電解用と
して使用できるが、前記銀が触媒として機能しない場合
あるいはその機能が不十分である場合には、前記複合メ
ッキ層の表面の少なくとも一部好ましくは対極側に触媒
層を形成して十分な性能を有するガス拡散電極を構成す
ることが望ましい。又前記触媒層は複合メッキ層の上に
形成することは必ずしも必要ではなく、前記電極支持体
表面に触媒層を形成し、該触媒層が完全に閉塞されない
ように、その表面に複合メッキ層を形成しても良い。前
記複合メッキ層は、前記電極支持体を、銀、疎水性フッ
素成分、及び界面活性剤を含む銀メッキ浴に浸漬して通
電して形成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のガス拡散陰極を使用する電解槽の一例を
示す縦断面図。
【図2】従来のガス拡散陰極を使用する電解槽の他の例
を示す縦断面図。
【図3】本発明に係わる電解用ガス拡散電極の一例を示
す縦断面図。
【図4】実施例1における電流密度と接触角の関係を示
すグラフ。
【図5】実施例1におけるPTFE含有量と接触角の関
係を示すグラフ。
【図6】実施例1における1Mの水酸化ナトリウム水溶
液中での水素発生反応の電流電位曲線を示すグラフ。
【符号の説明】
21・・・電解槽 22・・・イオン交換膜 23・・・陽
極室 24・・・陰極室 25・・・陽極 26・・・多孔質電極支持体 27・・・複
合メッキ層 28・・・触媒層 29・・・ガス拡散陰極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 島宗 孝之 東京都町田市本町田3006番地30 (72)発明者 錦 善則 神奈川県藤沢市藤沢1−1−23−304 (72)発明者 芦田高弘 神奈川県座間市立野台2−7−6 (72)発明者 中島 保夫 東京都杉並区南荻窪4−26−1 オーク荻 窪401号

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 多孔質電極支持体、及び該支持体の表面
    の少なくとも一部に形成された銀及び疎水性のフッ素成
    分を含む複合メッキ層を含んで成ることを特徴とする電
    解用ガス拡散電極。
  2. 【請求項2】 多孔質電極支持体、該支持体の表面の少
    なくとも一部に形成された銀及び疎水性のフッ素成分を
    含む複合メッキ層、及び該複合メッキ層の表面の少なく
    とも一部に形成された触媒層を含んで成ることを特徴と
    する電解用ガス拡散電極。
  3. 【請求項3】 多孔質電極支持体及び該支持体の表面の
    少なくとも一部に形成された触媒層を含んで成る電極上
    の少なくとも一部に銀及び疎水性のフッ素成分を含む複
    合メッキ層を有することを特徴とする電解用ガス拡散電
    極。
  4. 【請求項4】 多孔質電極支持体、及び該支持体の表面
    の少なくとも一部に形成された銀及び疎水性のフッ素成
    分を含む複合メッキ層を含んで成る電解用ガス拡散電極
    の製造方法において、前記電極支持体を、銀、疎水性フ
    ッ素成分、及び界面活性剤を含む銀メッキ浴に浸漬して
    通電し、前記支持体上に前記複合メッキ層を形成するこ
    とを特徴とする電解用ガス拡散電極の製造方法。
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