JPH09320811A - Ptcサーミスタ材料およびその製造方法 - Google Patents

Ptcサーミスタ材料およびその製造方法

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JPH09320811A
JPH09320811A JP8160746A JP16074696A JPH09320811A JP H09320811 A JPH09320811 A JP H09320811A JP 8160746 A JP8160746 A JP 8160746A JP 16074696 A JP16074696 A JP 16074696A JP H09320811 A JPH09320811 A JP H09320811A
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phase
temperature
ptc thermistor
thermistor material
specific resistance
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JP8160746A
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Masuo Okada
益男 岡田
Takahiro Sawaguchi
孝宏 澤口
Masatada Yodogawa
正忠 淀川
Masaru Matsuoka
大 松岡
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Original Assignee
TDK Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 PTCR特性の発現温度や比抵抗変化幅など
の諸特性を制御可能なPTCサーミスタ材料を提供す
る。また、通常時に大電流を流すところの回路部品に適
用でき、かつその回路部品の小型化が可能なPTCサー
ミスタ材料を提供する。 【解決手段】 SrBi4 Ti415型相中にBiを主
成分として含む金属相が分散された構造を有するPTC
サーミスタ材料。比抵抗が急激に上昇する温度より低い
温度域では電流が優先的に金属相を流れ、比抵抗が急激
に上昇する温度より高い温度域では電流が優先的にSr
Bi4 Ti415型相を流れる。PTCR効果は、金属
相の融解により発現する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、温度制御素子等に
用いられるPTCサーミスタ材料およびその製造方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】近年盛んに研究されている機能性材料の
一つにサーミスタがある。サーミスタは比抵抗が温度に
よって大きく変化する性質を利用した回路素子である。
【0003】サーミスタにはその温度係数によりNTC
サーミスタとPTCサーミスタがある。NTCサーミス
タは負の温度係数(Negative Temperature Coefficient)
をもち、温度上昇と共に比抵抗が減少する材料であり、
温度センサーとして温度補償回路等に応用されている。
一方、PTCサーミスタは正の温度係数(Positive Temp
erature Coefficient)をもち、ある特定温度で比抵抗が
急激に上昇する材料であり、その性質を利用して、温度
制御素子、過電流制御素子、モーターの起動素子、定温
度発熱体として広く応用されている。
【0004】このようなPTCサーミスタの代表的なも
のとしてBaTiO3 系セラミックスがある。BaTi
3 はペロブスカイト構造をもつ強誘電体で、そのPT
CR(正の比抵抗温度係数: Positive Temperature Co
efficient of Resistivity)特性は、そのキュリー温度
(Tc)以上の温度において発現する。
【0005】PTCR特性は、結晶粒界のポテンシャル
障壁により発現すると考えられている。すなわち、結晶
粒表面に過剰に存在する酸素や不純物により界面アクセ
プター準位が形成され、これにより結晶中の電子が捕獲
され空乏層ができる。その結晶粒界にショットキー型ポ
テンシャル障壁が生成する。この障壁がTc以上の温度
での高い比抵抗を示す原因と考えられている。一方、T
c未満の温度領域では、自発分極により50%の確率で
粒界に負の電荷が存在するためにアクセプターが補償さ
れて障壁の高さが低下するので、比抵抗が低くなると考
えられている。そして、Tc以上の温度領域では、自発
分極の消失によりこの障壁の高さが元に戻り、比抵抗が
上昇すると推定されている。
【0006】PTCR特性を示す材料として、BaTi
3 系セラミックスの他にPbTiO3 −TiO2 系セ
ラミックスも知られており、これらPTCR特性を発現
する材料の共通点は、ペロブスカイト構造を有する強誘
電体ということである。また、これらの強誘電体は原子
価制御法によって半導体化されることが重要であるとさ
れている。
【0007】本発明者らは、特開平6−16320号公
報において、擬ペロブスカイト型副格子をもち、その多
くが強誘電体であるビスマス層状構造酸化物のうち、B
4Ti3 12の組成をもち、Tiの一部がNbで置換
されている半導体化ビスマス層状構造酸化物を得、この
酸化物のBiの一部をSrで置換させることでPTCR
特性をもたせることを提案している。このビスマス層状
構造酸化物は、200℃をこえる温度範囲でPTCR特
性を示し、抵抗変化も急峻である優れたPTCサーミス
タ材料である。また、特開平6−283308号公報で
は、酸化ビスマスと酸化チタンとを含むBi23 −T
iO2 系複合酸化物において、酸化チタンの一部を酸化
ニオブ、酸化タンタルおよび酸化アンチモンの少なくと
も1種で置換し、酸化ビスマスの一部を酸化ストロンチ
ウム、酸化カルシウムおよび酸化バリウムの少なくとも
1種で置換したPTCサーミスタ材料を提案している。
【0008】しかし、これらのPTCサーミスタ材料
は、PTCR特性の発現温度を任意に変化させることが
できず、また、比抵抗の変化率を任意に制御することが
できないという問題がある。
【0009】また、上記したBiおよびTiを含む複合
酸化物のPTCサーミスタ材料では、セラミックスを半
導体化しているため、PTCR特性が発現する温度より
低い温度での比抵抗を低減することが困難である。過熱
時ではなく通常時に大電流が流れる回路部品に適用する
場合、PTCR特性が発現する温度より低い温度におい
て比抵抗が低いことが要求されるが、従来の半導体化セ
ラミックス材料では、このような用途への適用が困難で
あり、適用する場合には著しい大型化が避けられなかっ
た。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、PT
CR特性の発現温度や比抵抗変化幅などの諸特性を制御
可能なPTCサーミスタ材料を提供することであり、ま
た、他の目的は、通常時に大電流を流すところの回路部
品に適用でき、かつその回路部品の小型化が可能なPT
Cサーミスタ材料を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】このような目的は下記
(1)〜(6)のいずれかの構成によって達成される。 (1)SrBi4 Ti415型相中にBiを主成分とし
て含む金属相が分散された構造を有するPTCサーミス
タ材料。 (2)前記金属相が表面付近により多く分散している上
記(1)のPTCサーミスタ材料。 (3)前記金属相が実質的にBiから構成される上記
(1)または(2)のPTCサーミスタ材料。 (4)比抵抗が急激に上昇する温度より低い温度域で
は、電流が優先的に金属相を流れ、比抵抗が急激に上昇
する温度より高い温度域では、電流が優先的にSrBi
4 Ti415型相を流れる上記(1)〜(3)のいずれ
かのPTCサーミスタ材料。 (5)金属相の融解によりPTCR効果が発現する上記
(1)〜(4)のいずれかのPTCサーミスタ材料。 (6)SrBi4 Ti415型相中にBiを主成分とし
て含む金属相が分散されたPTCサーミスタ材料を、前
記金属相間の距離が10〜20μm となるように焼成し
て製造するPTCサーミスタ材料の製造方法。
【0012】
【作用および効果】本発明のPTCサーミスタ材料は、
セラミックスのマトリックス相中に金属相が分散された
組織構造を有する焼結体である。金属相の融点(Biの
場合、約270℃)未満の温度域では、マトリックス相
よりも比抵抗の低い金属相が主要な電流路となるので、
比較的低い比抵抗を示す。金属相の融点以上の温度域で
は、金属相が融解するが、Biを主成分とする金属相
は、融解により体積収縮が生じるため、金属相とマトリ
ックス相との電気的接続状態が疎となる。このため、マ
トリックス相が主要な電流路となるので、金属相の融点
を境界として比抵抗が著しい上昇を示す。
【0013】本発明のPTCサーミスタ材料ではこのよ
うな作用によりPTCR特性が発現するため、分散して
いる金属相を合金化するなどしてその融点を変化させる
ことにより、PTCR特性の発現温度を制御することが
できる。また、マトリックス相として適当な比抵抗をも
つセラミックス相を選択することにより、比抵抗変化幅
を制御することができる。また、金属相の融解によりP
TCR特性が発現するので、比抵抗の上昇が急峻とな
り、温度上昇に対する比抵抗上昇の応答が極めて速い。
【0014】本発明では、組成や製造条件を適宜選択す
ることにより、金属相の寸法や分散密度、材料中の金属
相の占積率などを調整できるため、金属相の融点未満の
温度域における比抵抗を例えば1×10-2Ωm 以下と低
くでき、また、PTCR特性における比抵抗変化幅を1
×104 Ωm 以上とすることができる。このため、本発
明のPTCサーミスタ材料は、通常時に大電流を流すと
ころの回路部品に適用でき、かつその回路部品の小型化
が可能である。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明のPTCサーミスタ材料
は、SrBi4 Ti415型相中にBiを主成分として
含む金属相が分散された構造を有するセラミックスであ
る。なお、SrBi4 Ti415型相は、Bi層状構造
(擬ペロブスカイト型構造)である。
【0016】金属相は、実質的にBiから構成される
が、Biを含む合金、例えばBiの他に、In、Ga、
Ag、Pb、Cu、Sb、As等の少なくとも1種を含
む合金から構成されていてもよい。金属相中のBi含有
量は、好ましくは40原子%以上、より好ましくは80
原子%以上である。Bi合金は、一般に、融解時の収縮
率がBi含有量の減少と共に小さくなるので、Bi含有
量が少ないと比抵抗変化幅が小さくなってしまう。
【0017】金属相間の平均距離は、通常、1〜100
μm 、好ましくは5〜20μm 、より好ましくは10〜
20μm である。平均距離が小さすぎると、金属相間の
ネットワーク形成により材料全体が金属に近い振る舞い
をするようになり、良好なPTCR特性が得られにくく
なる。一方、平均距離が大きすぎると、材料全体がセラ
ミックスに近い振る舞いをするようになり、やはり良好
なPTCR特性が得られにくくなる他、低温域での比抵
抗が高くなるため、回路部品として用いることが困難と
なる。
【0018】金属相の平均径は、通常、1〜100μm
、好ましくは5〜15μm である。平均径が小さすぎ
ると、材料全体がセラミックスに近い振る舞いをするよ
うになり、良好なPTCR特性が得られにくくなる他、
低温域での比抵抗が高くなるため、回路部品として用い
ることが困難となる。一方、金属相の平均径が大きすぎ
ると、金属相間のネットワーク形成により材料全体が金
属に近い振る舞いをするようになり、やはり良好なPT
CR特性が得られにくくなる。
【0019】サーミスタ材料中における金属相の比率
は、好ましくは10〜30体積%、より好ましくは12
〜17体積%である。金属相が少なすぎると、材料全体
がセラミックスに近い振る舞いをするようになり、良好
なPTCR特性が得られにくくなる他、低温域での比抵
抗が高くなるため、回路部品として用いることが困難と
なる。一方、金属相が多すぎると、金属相間のネットワ
ーク形成により材料全体が金属に近い振る舞いをするよ
うになり、やはり良好なPTCR特性が得られにくくな
る。
【0020】なお、上記した金属相間の平均距離、金属
相の平均粒径および金属相の比率は、材料の表面から深
さ200μm までの範囲において測定された値について
のものである。本発明のサーミスタ材料では金属相が表
面付近に偏在しており、この偏在した金属相の変化によ
ってPTCR特性が発現するため、金属相の存在密度の
高い表面付近における距離、粒径および比率が重要とな
る。
【0021】マトリックス相の平均結晶粒径は、好まし
くは0.02〜20μm であり、より好ましくは0.5
〜5μm である。マトリックス相の結晶粒は、走査型電
子顕微鏡により確認することができる。
【0022】本発明のPTCサーミスタ材料は、Bi、
TiおよびSrを主成分として含む複合酸化物である
が、半導体化してPTCR特性を発現するためにNb、
TaおよびSbの少なくとも1種、特にNbが含まれる
ことが好ましく、また、PTCR特性向上のためにCa
およびBaの少なくとも1種が含まれることが好まし
い。Biは、マトリックス相および金属相に含まれ、T
i、Srおよび他の添加元素は主としてマトリックス相
に含まれる。Sr、BiおよびTiは、SrBi4Ti4
15型相のそれぞれ対応するサイトに主として存在す
るが、他のサイトを置換していてもよい。Nb、Taお
よびSbは主としてTiサイトを置換するが、他のサイ
トを置換したり、結晶粒界に存在したりしていてもよ
い。CaおよびBaは、主としてSrサイトやBiサイ
トを置換するが、他のサイトを置換したり、結晶粒界に
存在していたりしてもよい。
【0023】なお、マトリックス相はSrBi4 Ti4
15型相だけに限らず、例えばBi2 Ti411型相
(単斜晶構造)、Bi4 Ti3 12型相(ビスマス層状
構造)、TiO2 型相(通常、ルチル構造)、Bi2
27 型相(パイロクロア構造)、SrTiO3 型相
(ペロブスカイト構造)などの少なくとも1種が混在し
ていてもよい。
【0024】マトリックス相の比抵抗は、1×103 Ω
m 以上であることが好ましい。この比抵抗が低すぎる
と、良好なPTCR特性が得られにくくなる。
【0025】上記した組織構造を有するものであれば本
発明の効果は実現するため、PTCサーミスタ材料の全
体組成は特に限定されないが、通常は、Bi4 Ti3
12を上記した置換元素で置換した組成を中心とするもの
であることが好ましい。具体的には、 式 (Bi1-aa )(Ti1-bbxy で表わされる組成(原子比)が好ましい。上記式におい
て、元素AはSrであるか、CaおよびBaの少なくと
も1種とSrとである。元素A中におけるSrの比率
は、好ましくは50%以上である。元素BはNb、Ta
およびSbの少なくとも1種であり、少なくともNbが
含まれることが好ましい。元素B中におけるNbの比率
は、好ましくは50%以上である。
【0026】上記式において、a、b、xの好ましい範
囲は、 0<a≦0.20、 0.01≦b≦0.1、 0.5≦x≦2.0 であり、より好ましい範囲は、 0.10≦a≦0.15、 0.01≦b≦0.05、 0.75≦x≦0.80 である。yは、各元素の比率に応じて決定されるが、通
常、化学量論組成付近の値となる。上記式においてaが
小さすぎると、サイクル特性が低下してしまう。すなわ
ち、昇温および降温の繰り返しによるPTCR特性の低
下が著しくなる。一方、aが大きすぎると比抵抗変化幅
が小さくなってしまう。bが小さすぎるか大きすぎる
と、半導体化が不十分となってPTCR特性が得られに
くくなる。xが小さすぎると材料中の金属相の比率が高
くなって材料全体が金属に近い振る舞いをするようにな
り、良好なPTCR特性が得られなくなる。一方、xが
大きすぎると材料中の金属相の比率が低くなって材料全
体がセラミックスに近い振る舞いをするようになり、良
好なPTCR特性が得られなくなる。
【0027】次に、本発明のPTCサーミスタ材料の好
ましい製造方法を説明する。
【0028】本発明のPTCサーミスタ材料の製造に
は、一般に用いられる固相反応法や、シュウ酸塩等を共
沈させる湿式法や、金属アルコキシドを加水分解するア
ルコキシド法等のいずれの方法を用いてもよい。
【0029】用いる原料は特に限定されないが、固相反
応法では、通常、酸化物、または焼成により酸化物とな
る炭酸塩、水酸化物等を原料粉末として用いるが、これ
らと金属BiやBi合金とを併用してもよい。
【0030】原料粉末の混合方法は特に限定されない
が、例えばエタノール、水、ヘキサン等を用いて、ボー
ルミル等によって湿式混合を行うことが好ましい。
【0031】混合後、空気中で600〜900℃程度の
温度で30分〜5時間程度仮焼を行う。仮焼後、ボール
ミル等を用い、好ましくは湿式粉砕する。得られた粉末
を乾燥後、0.5〜2t/cm2 程度の圧力で加圧成形す
る。得られた成形体を焼成し、PTCサーミスタ材料を
得る。焼成に際しては、昇温速度を50〜500℃/h程
度、降温速度を50〜500℃/h程度とすることが好ま
しく、焼成温度は900〜1300℃程度、焼成時間は
30分間〜10時間程度とすることが好ましい。焼成時
の雰囲気は、Ar+O2 等の還元性雰囲気とし、焼成に
より還元を行って金属相を析出させる。焼成雰囲気中の
酸素分圧は、好ましくは1×10-3〜1×10-7気圧、
より好ましくは1×10-5〜1×10-6気圧である。酸
素分圧が低すぎると還元が進みすぎて材料中の金属相の
比率が高くなるため、金属相間のネットワーク形成によ
り材料全体が金属に近い振る舞いをするようになり、良
好なPTCR特性が得られない。一方、酸素分圧が高す
ぎると還元が不十分となって材料中の金属相の比率が低
くなるため、材料全体がセラミックスに近い振る舞いを
するようになり、良好なPTCR特性が得られなくなる
他、低温域での比抵抗が高くなるため、回路部品として
用いることが困難になる。
【0032】本発明では、加圧成形の圧力や焼成温度等
の製造条件を適宜設定することにより、前述した好まし
い組織構造を実現することが可能である。
【0033】本発明のPTCサーミスタ材料は、例えば
自己制御型発熱体、カラーテレビの消磁素子、モータの
起動素子、過電流制限素子等に利用される。
【0034】
【実施例】以下、本発明の具体的実施例を示し、本発明
をさらに詳細に説明する。
【0035】原料粉末として、いずれも純度99.9%
のBi23 、SrCO3 、TiO2 、Nb25 を用
い、これらを金属元素の原子比が(Bi0.85Sr0.15
4 (Ti0.95Nb0.053 となるよう秤量し、エチルア
ルコールを用いて湿式混合した。混合物を、空気中にお
いて750℃で3時間仮焼した。仮焼物をエチルアルコ
ール中で湿式粉砕した後、直径10mm、厚さ10mmの円
柱状に加圧成形した。成形圧力を表1に示す。得られた
成形体をAr−O2 雰囲気(酸素分圧1×10-5〜1×
10-6気圧)中で2時間焼成して焼結体サンプルを得
た。焼成温度を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】比抵抗温度特性測定 表1に示すサンプルについて比抵抗温度特性を測定し
た。まず、サンプルの表面を研磨して、オーミック接触
するIn−Ga(40:60)電極を設けた。直流二端
子法を用い、大気中でサンプルを昇温および降温し、サ
ンプルを流れる電流値の変化を記録することにより比抵
抗の変化を測定した。昇温速度は5℃/min 、到達温度
は800℃とし、降温速度は炉冷速度とした。測定装置
には定電圧電源/モニタ(アドバンテスト;TR−61
43)を用い、5mV/cm の電界をサンプルに印加して電
流値を測定し、下記式により比抵抗(ρ)を算出した。
【0038】ρ=(E/I)×(S/h) ただし、 E:印加電圧、 I:サンプルを流れる電流、 S:サンプルの断面積、 h:サンプルの厚さ である。
【0039】この測定の結果を、図1に示す。
【0040】図1に示される比抵抗−温度グラフにおい
て、サンプルBは、昇温時に約543K(270℃)に
おいて比抵抗が急激に約4桁も上昇するPTCR特性を
示し、より高温域では、温度上昇に伴なって比抵抗が減
少するNTCR特性を示している。降温に際しては、昇
温時とは異なる温度(約503K)で比抵抗が急激に減
少している。
【0041】一方、サンプルA、C、Dは、PTCR特
性は示していないが、サンプルA、Dは、重要な知見を
与える。サンプルAは、比抵抗が室温で最も高く、昇温
に伴なって減少するNTCR特性を示している。このN
TCR特性は、サンプルBの高温域におけるNTCR特
性に近似している。サンプルDは、比抵抗が最も低く、
その比抵抗−温度特性は、金属Biのものに近似してい
る。サンプルCは、サンプルBとサンプルDとの中間的
な性質を示している。サンプルCのグラフには、Biの
融解温度である約543K(270℃)に特異点ないし
変曲点が存在する。
【0042】組織構造 サンプルA、B、Dの組織構造を、光学顕微鏡、CuK
α線を用いたX線回折、電子線プローブマイクロアナリ
シス(島津EPMA)により調べた。
【0043】サンプルA、B、Dの表面付近の断面の光
学顕微鏡写真を、それぞれ図2、図3、図4に示す。ま
た、サンプルB、Dの断面の拡大写真を、それぞれ図
5、図6に示す。これら各図では、明色の領域が暗色の
領域中に分散している。EPMAおよびX線回折による
分析の結果、明色の領域はBi相であり、暗色の領域は
SrBi4 Ti415型相であった。サンプルBのX線
回折チャートを、図7に示す。
【0044】NTCR特性を示すサンプルAでは、Bi
相はほぼ円形で孤立分散している。Bi相の径は約1〜
5μm (平均径約3μm )、Bi相間の距離は約5〜1
0μm (平均距離約8μm )である。
【0045】一方、PTCR特性を示すサンプルBで
は、Bi相は表面付近により多く存在しており、導電性
は、表面付近のBiリッチ領域においてだけ検出され
る。Bi相は孤立分散しており、Bi相のネットワーク
はほとんど認められない。Bi相の径は約5〜15μm
(平均径約10μm )であり、Bi相間の距離は約10
〜20μm (平均距離約15μm )である。
【0046】金属Biに類似する比抵抗−温度特性を示
すサンプルDでは、表面付近にBi相のネットワークが
認められる。サンプルDは高温で焼成されたためBiの
蒸発が加速されてマトリックス相中に空隙ができ、これ
によってBi相のネットワークが形成されたと考えられ
る。
【0047】マトリックス相の平均結晶粒径は、サンプ
ルAが0.5μm 、サンプルBが1μm 、サンプルCが
2μm 、サンプルDが5μm であった。また、Bi相の
比率は、サンプルAが5.8体積%、サンプルBが14
体積%、サンプルCが15体積%、サンプルDが35体
積%であった。
【0048】なお、上記したBi相の平均径、Bi相間
の平均距離およびBi相の比率は、サンプル表面からの
深さが200μm 以下である領域における値である。
【0049】サンプルA、B、Dの上記した比抵抗−温
度特性は、Bi相の分散形態と密接に関連している。す
なわち、サンプルAでは、焼成時の還元が不十分でBi
相が少なくなっており、このため、1×105 Ωm を超
える高比抵抗となっている。サンプルAのNTCR特性
は、マトリックス相の性質によるものである。サンプル
Bにおける電流は、低温域ではBi相を優先的に流れ、
NTCR特性を示す高温域ではBi相ではなくマトリッ
クス相を流れると考えられる。サンプルDでは、Bi相
のネットワークによって電気的短絡が生じるため、PT
CR特性が発現しないと考えられる。
【0050】A.C.インピーダンス測定 PTCR特性発現の機構を調べるために、サンプルBの
複素インピーダンスを、インピーダンスアナライザ(H
P4192A)により5Hzから13MHz までの周波数に
おいて測定した。まず、図8にそれぞれ示す温度におけ
る複素インピーダンス(Z″)の周波数依存性を測定
し、次いで、この結果から複素モジュラス(M″)を算
出した。これらの結果を図8に示す。また、図8の各温
度での結果に相当する等価回路を、図9に示す。
【0051】室温では、Z″およびM″は13MHz より
も高い周波数にピークをもち、これは、ほぼ600Ω×
20pFのRCコンポーネントに相当すると概算される。
【0052】比抵抗が急激な上昇を示す513K付近で
は、注目に値する変化が見られる。Z″は約500Hzに
おいて1ピークを示すだけであるが、M″は、図9
(b)にR11 、R22 、R33 として示される
3つの異なったRCコンポーネントを示す。これらは、
ほぼ107 Ω×40pF、3000Ω×60pF、200Ω
×50pFに相当する。
【0053】R11 はPTCR特性を示し始める49
3Kから現われ、523Kまで急速に高くなっていく。
このコンポーネントは、高比抵抗の原因となるものであ
る。R22 は、R1 が減少する493K〜523Kに
おいて観察される。このコンポーネントは、PTCR特
性発現に関して重要な役割をはたす。
【0054】R33 は、図9(a)に示されるよう
に、低温域でのRCコンポーネントに相当する。低温域
から高温域にかけてR33 のM″ピークの高さは減少
している。これは、R33 コンポーネント固有の比誘
電率がほぼ一定だと仮定すると、このコンポーネントの
体積比率が減少していることを意味する。他方、R1
1 のM″ピークの高さは、低温域から高温域にかけて増
大している。これは、R11 の体積比率が増大してい
ることを意味する。
【0055】高温域では、図9(c)に示されるよう
に、R11 コンポーネントだけが検出されている。
【0056】以上の分析から導いたPTCR特性発現機
構のスキームを図10に示す。
【0057】低温域では、図10(a)に示されるよう
に、Bi相に電流が流れる。R33 は、Bi相間のマ
トリックス相に由来するものと考えられる。
【0058】PTCR温度付近では、図10(b)に示
されるように、ショットキー型ポテンシャルバリアや電
気二重層などのようなバリア(R22 )が、Bi相と
マトリックス相との界面に形成され、Bi相に電流が流
れることを阻害すると考えられる。このことは、Biが
融点において約3%収縮することに起因すると考えられ
る。界面のバリアは、Bi相が融解して収縮することに
よって、Bi相とマトリックス相との間の電気的接続が
疎となることによるものと考えられる。この温度域で
は、R11 の体積比率が増大する一方、R33 のも
のは減少している。
【0059】高温域では、図10(c)に示されるよう
に、界面のバリアが増大して、電流はBi相を全く流れ
ずマトリックス相(R11 )を流れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】焼結体サンプルの比抵抗−温度グラフである。
【図2】結晶構造を表わす図面代用写真であって、サン
プルAの表面付近断面の光学顕微鏡写真である。
【図3】結晶構造を表わす図面代用写真であって、サン
プルBの表面付近断面の光学顕微鏡写真である。
【図4】結晶構造を表わす図面代用写真であって、サン
プルDの表面付近断面の光学顕微鏡写真である。
【図5】結晶構造を表わす図面代用写真であって、サン
プルBの表面付近断面の光学顕微鏡写真である。
【図6】結晶構造を表わす図面代用写真であって、サン
プルDの表面付近断面の光学顕微鏡写真である。
【図7】サンプルBのX線回折チャートである。
【図8】複素インピーダンス(Z″)の周波数依存性
と、複素モジュラス(M″)の周波数依存性とを表わす
グラフである。
【図9】(a)、(b)、(c)は、図8のグラフから
導かれる等価回路を示す回路図である。
【図10】(a)、(b)、(c)は、PTCR特性発
現機構のスキームを表わす模式図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 淀川 正忠 東京都中央区日本橋一丁目13番1号 ティ ーディーケイ株式会社内 (72)発明者 松岡 大 東京都中央区日本橋一丁目13番1号 ティ ーディーケイ株式会社内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 SrBi4 Ti415型相中にBiを主
    成分として含む金属相が分散された構造を有するPTC
    サーミスタ材料。
  2. 【請求項2】 前記金属相が表面付近により多く分散し
    ている請求項1のPTCサーミスタ材料。
  3. 【請求項3】 前記金属相が実質的にBiから構成され
    る請求項1または2のPTCサーミスタ材料。
  4. 【請求項4】 比抵抗が急激に上昇する温度より低い温
    度域では、電流が優先的に金属相を流れ、比抵抗が急激
    に上昇する温度より高い温度域では、電流が優先的にS
    rBi4 Ti415型相を流れる請求項1〜3のいずれ
    かのPTCサーミスタ材料。
  5. 【請求項5】 金属相の融解によりPTCR効果が発現
    する請求項1〜4のいずれかのPTCサーミスタ材料。
  6. 【請求項6】 SrBi4 Ti415型相中にBiを主
    成分として含む金属相が分散されたPTCサーミスタ材
    料を、前記金属相間の距離が10〜20μmとなるよう
    に焼成して製造するPTCサーミスタ材料の製造方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6224790B1 (en) 1998-06-22 2001-05-01 Ngk Insulators, Ltd. Conductive ceramic-metal composite body exhibiting positive temperature coefficient behavior
US6358436B2 (en) 1999-07-23 2002-03-19 Ngk Insulators, Ltd. Inorganic-metal composite body exhibiting reliable PTC behavior
JP2022506089A (ja) * 2018-11-08 2022-01-17 オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ダイオードレーザ及びダイオードレーザの動作方法

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US6547989B1 (en) 1999-07-23 2003-04-15 Ngk Insulators, Ltd. Inorganic-metal composite body exhibiting reliable PTC behavior
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