JPH09317682A - 流体ポンプ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】薄いキャンを使用しても高圧力まで使用できる
流体ポンプを提供する。 【解決手段】モータハウジング１にはステータコア２が
固定され、スロット開口部３ａがステータコア２の外周
側に形成されている。スロット開口部３ａを通してステ
ータコア２にはコイル４が巻回されている。ステータコ
ア２の外周面には筒状の蓋材５が嵌入され、スロット開
口部３ａが磁性材料よりなる蓋材５にて塞がれている。
ステータコア２の内方には軸受１４とロータベース１５
と永久磁石１７ａ〜１７ｆとが配置されている。ロータ
ベース１５の端部にインペラ１８が一体的に形成される
とともに、薄板よりなるキャン１９にてステータ（１
４，１５，１７ａ〜１７ｆ）が流体から仕切られてい
る。ステータコア２の内周の全面がキャン１９と当接し
ている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は、電動モータを用
いた流体ポンプに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来、ウォータポンプとして電動モータ
を用いたものが知られている（例えば、特開平２−９１
４９８号公報）。この種のポンプを説明すると、図６に
示すように、円筒形のモータハウジング４０の内周面に
はコイル（巻線）４１を巻回したステータコア４２が固
定され、その内方に永久磁石４３を有するロータ４４が
配置され、ロータ４４にインペラ４５が固定されるとと
もに、円筒形の薄いキャン（仕切り板）４６によりステ
ータ側が流体から仕切られている。つまり、図７に示す
ように、ステータコア４２の内側にロータ４４を配置
し、ステータコア４２とロータ４４の間を薄いキャン４
６で仕切っている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】ところが、図８，９に
示すように、ポンプ内側に高圧力が繰り返し印加された
場合には、ステータコア４２の内周面にスロット４７の
開口部４７ａがあるため、薄いキャン４６は図９に示す
ように、開口部４７ａにおいて外方に変形する。このよ
うに、高低の圧力変動に伴いキャン４６がスロット開口
部４７ａにおいて変形を繰り返すと、キャン４６に疲労
破壊が生じてしまいクラックによりポンプ内の液体が漏
れ出してしまう。。

【０００４】そこで、この発明の目的は、薄いキャンを
使用しても高圧力まで使用できる流体ポンプを提供する
ことにある。

【０００５】

【課題を解決するための手段】請求項１に記載の発明
は、電動モータにおけるロータベースにインペラを設け
るとともに、薄板よりなるキャンにてステータが流体か
ら仕切られた流体ポンプであって、ステータコアにおけ
るスロットでのスロット開口部をステータコアの外周側
に形成し、ステータコアの内周の全面を前記キャンの当
接面とした流体ポンプをその要旨とする。

【０００６】請求項２に記載の発明は、筒状をなすモー
タハウジングと、永久磁石が固定され、前記モータハウ
ジング内に回転可能に配置されたロータベースと、前記
ロータベースの一端に設けられたインペラと、前記モー
タハウジングと結合され、前記インペラを収納するポン
プケーシングと、薄板よりなり、前記モータハウジング
とポンプケーシングとの間に介在された流体仕切用キャ
ンと、前記モータハウジング内に固定され、外周側にス
ロット開口部が形成され、かつ、内周の全面が前記キャ
ンとの当接面となるコイル巻回用ステータコアとを備え
た流体ポンプをその要旨とする。

【０００７】請求項３に記載の発明は、請求項１または
２に記載の発明における前記スロット開口部を磁性材料
よりなる蓋材にて塞いだ流体ポンプをその要旨とする。 （作用）請求項１，２に記載の発明によれば、ロータ側
すなわちキャン内部に高圧が印加されると、キャンには
ステータ側（キャンの外周側）への変形力が作用する。
このとき、スロット開口部がステータコアの外周側にあ
り内周側にはスロット開口部がないのでステータコア内
周全面でキャンが受けられ、キャンの変形が阻止され
る。

【０００８】請求項３に記載の発明によれば、請求項
１，２に記載の発明の作用に加え、スロット開口部を磁
性材料よりなる蓋材にて塞ぐことにより磁性材料を通し
て磁気回路が閉路する。

【０００９】

【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を図
面に従って説明する。図１には本実施の形態における電
動モータ式のウォータポンプの縦断面図を示す。図２に
はウォータポンプの側面図を示す。又、図３には図１で
のモータ部分における断面図を示す。

【００１０】本実施の形態におけるウォータポンプは自
動車に搭載される電動式のウォータポンプである。又、
本ウォータポンプはキャン（仕切板）１９によりステー
タ（固定子）が流体から仕切られた、いわゆるキャンド
ポンプである。さらに、電動モータとしてブラシレスモ
ータを用いている。

【００１１】以下、詳細に説明していく。図１に示すよ
うに、樹脂製モータハウジング１は、円筒状をなすステ
ータコア支持部１ａと、ステータコア支持部１ａの一端
（左端）から外方に延びる鍔部１ｂとからなる。モータ
ハウジング１に固定される円筒状のステータコア２は、
磁性材料よりなる板材を多数積層することにより構成さ
れている。このステータコア２をより詳細に説明する
と、図３に示すように、ステータコア２にはスロット３
が形成されるとともに、スロット開口部３ａがステータ
コア２の外周側に形成され、ステータコア２の内周の全
面がキャン１９の当接面となる。このスロット開口部３
ａを通してステータコア２にはコイル（巻線）４が巻回
されている。又、ステータコア２の外周部には円筒状の
蓋材（筒材）５が嵌入され、スロット開口部３ａが蓋材
５にて塞がれた構造となっている。蓋材５には冷間圧延
鋼板（ＳＰＣＣ）や電磁鋼板等の磁性材料が用いられ
る。そして、このように構成されたステータコア２、コ
イル４及び蓋材５がモータハウジング１のステータコア
支持部１ａ内に固定されている。

【００１２】図１に示すように、モータハウジング１の
ステータコア支持部１ａにおける一方の開口部（右側開
口部）には円盤状のエンドフレーム６が設けられるとと
もに、モータハウジング１の鍔部１ｂには樹脂製ポンプ
ケーシング７がビス８により締付固定されている。ポン
プケーシング７には入口管９と出口管１０とが設けられ
ている。ポンプケーシング７内において円筒状のシャフ
ト固定部（シャフト支持部）１１が設けられている。
又、エンドフレーム６の中央部には円筒状のシャフト固
定部（シャフト支持部）１２が突設されている。そし
て、モータハウジング１およびポンプケーシング７内に
おいてシャフト固定部１１とシャフト固定部１２との間
にシャフト１３が固定されている。

【００１３】シャフト１３の外周には円筒状をなす軸受
１４が回転可能な状態で配置され、この軸受１４にロー
タベース１５が固定されている。図１におけるロータベ
ース１５の右端面には軸方向に延びる凹部１６が形成さ
れている。この凹部１６内にエンドフレーム６のシャフ
ト固定部１２が位置している。ロータベース１５の外周
部には永久磁石１７ａ〜１７ｆが固定されている。即
ち、各永久磁石１７ａ〜１７ｆは、円筒形状の磁性体に
対し軸方向に延び、６０°毎に交互にＮ，Ｓ極を着磁す
ることにより構成している。尚、永久磁石１７ａ〜１７
ｆは、６本の棒状磁石を組付けることにより構成しても
よい。

【００１４】この永久磁石１７ａ〜１７ｆはステータコ
ア２と対向している。又、図１におけるロータベース１
５の左端にはインペラ（羽根車）１８が一体的に設けら
れ、インペラ１８がポンプケーシング７内に収納されて
いる。インペラ１８の回転により入口管９からエンジン
冷却水を吸入して出口管１０から排出することができ
る。

【００１５】本実施の形態では、永久磁石１７ａ〜１７
ｆとロータベース１５と軸受１４とからロータが構成さ
れるとともに、ステータコア２とコイル４にてステータ
（固定子）が構成されている。

【００１６】ここで、ロータ用永久磁石１７ａ〜１７ｆ
とステータコア２との位置関係を説明する。図１のロー
タの軸方向におけるロータ用永久磁石１７ａ〜１７ｆの
中心位置（ロータ側磁気中心）をＬc1とし、ステータコ
ア２の中心位置（ステータ側磁気中心）をＬc2とする
と、中心位置Ｌc1とＬc2とは所定の距離ΔＬだけズレて
いる。より詳しくは、ステータコア２の中心位置Ｌc2に
対しポンプケーシング７側にΔＬだけ離間した位置が永
久磁石１７ａ〜１７ｆの中心位置Ｌc1となっている。よ
って、ロータ用永久磁石１７ａ〜１７ｆ（ロータ）には
図１中右向きの磁力が作用している。このように、ロー
タ用永久磁石１７ａ〜１７ｆとステータコア２とがロー
タの軸方向においてズラして配置され、両者間の磁力に
よりロータが軸方向（スラスト方向）でのエンドフレー
ム６側に付勢されている。

【００１７】モータハウジング１とポンプケーシング７
との間には、薄板よりなるキャン（仕切板）１９が挟み
込まれており、キャン１９によりステータ（固定子）が
流体から仕切られている。

【００１８】このキャン１９についてより詳細に説明す
ると、薄板としては厚さ０．２〜０．５ｍｍほどのステ
ンレス鋼板（ＳＵＳ）を用いている。他にも真鍮やアル
ミやセラミック等でもよく、要は非磁性体であればよ
い。図１に示すように、キャン１９は、円筒部２０と、
円筒部２０の一端（左端）から外側に延びる円板部２１
と、図４に示すように円筒部２０の他端（右端）から内
側に延びる円板部２２と、円板部２２の内周面からロー
タの軸方向に延びる内筒部２３と、内筒部２３の一端
（左端）から内側に延びる円板部２４とからなる。図１
に示すように、キャン１９における円板部２１がモータ
ハウジング１の鍔部１ｂとポンプケーシング７との間に
配置され、円筒部２０がモータハウジング１のステータ
コア支持部１ａの内周面およびステータコア２の内周面
に密着した状態で配置されている。このように、スロッ
ト開口部３ａを外周面に開口させたステータコア２の内
周面の全面にキャン１９の円筒部２０が当接している。
又、図４に示すように、キャン１９における内筒部２３
は円板部２２を経てエンドフレーム６のシャフト固定部
１２の外周面に密着した状態で配置され、円板部２４は
シャフト固定部１２における軸方向の端面に密着した状
態で配置されている。

【００１９】図１に示すように、キャン１９の円板部２
１とポンプケーシング７との間にはＯリング２５が、
又、図４に示すように、キャン１９の内筒部２３とエン
ドフレーム６のシャフト固定部１２の外周面との間には
Ｏリング２６が配置されている。図４に示すように、キ
ャン１９の円板部２４は、軸受１４のスラスト方向への
付勢力により軸受１４と接し、軸受１４の回転に伴って
軸受１４の端面がキャン１９の円板部２４の表面上を摺
動してスラスト軸受材として機能する。即ち、一般的に
よく用いられているスラスト軸受材としてのワッシャの
代わりにキャン１９から円板部２４を延設することによ
りワッシャを不要としている。

【００２０】一方、図１に示すように、エンドフレーム
６の外周面には基板２７が面接触するように配置されて
いる。即ち、基板２７がロータの軸方向に直交する方向
（径方向）に配置されている。この基板２７にはガラス
・エポキシ基板等のプリント基板が用いられ、基板２７
にはロータ回転位置検出用磁気検出素子２８が装着され
ている。磁気検出素子２８はキャン１９の円板部２２と
密着し、かつロータ用永久磁石１７ａ〜１７ｆにおける
ロータの軸方向での端面に対向している。基板２７には
導電パターンが形成され、この導電パターンを通してロ
ータ回転位置検出用磁気検出素子２８が外部のモータド
ライバ（駆動回路）と電気的に接続されている。尚、モ
ータドライバ（駆動回路）は基板２７に形成してもよ
い。

【００２１】又、図１に示すように、エンドフレーム６
には基板２７を覆う保護キャップ２９が取付けられ、こ
の保護キャップ２９にて基板２７が保護されている。次
に、このように構成したウォータポンプにおいて高い水
圧が繰り返し加わった際の作用について述べる。

【００２２】図５に示すように、ポンプ内の圧力が高圧
力（３ｋｇ／ｃｍ² ）となった時には薄いキャン１９の
円筒部２０に対して外側に変形する作用力が加わる。キ
ャン１９の円筒部２０はステータコア２の内周面の全面
に当接し外側への変形力をステータコア２の内周面の全
面で受けている。よって、ポンプ内の圧力が高圧になっ
てもキャン１９の円筒部２０は変形しない。このよう
に、高圧力（３ｋｇ／ｃｍ² ）が繰り返し加わった場合
でもキャン１９は繰り返し変形することがなく疲労破壊
を回避することができる。よって、ステータコア２の内
周面にスロット開口部がある場合の高圧に耐えるような
キャン１９の厚さを厚くする必要がないので、キャン１
９を薄くできる。このキャン１９の薄肉化によりロータ
側永久磁石１７ａ〜１７ｆとステータコア２との間のギ
ャップ（空隙）を狭くすることができ、小型で高性能で
かつ高圧力下でも使用できるキャンドポンプとすること
ができる。

【００２３】又、図３に示すように、スロット開口部３
ａを塞ぐように磁性材料よりなる蓋材５を配置してお
り、この蓋材５を通した磁気回路Ａが形成され、大きな
回転力を発生させることができる。

【００２４】このように本実施の形態は、下記の特徴を
有する。 （イ） ステータコア２におけるスロット３でのスロッ
ト開口部３ａをステータコア２の外周側に形成し、ステ
ータコア２の内周の全面をキャン１９の当接面としたの
で、ロータ側（すなわちキャン内部）に高圧が印加され
ると、キャン１９にはステータ側（キャンの外周側）へ
の変形力が作用するが、このとき、スロット開口部３ａ
がステータコア２の外周側にあり内周側にはスロット開
口部がないのでステータコア内周全面でキャンが受けら
れる。

【００２５】その結果、キャン１９の変形を防止して薄
いキャン１９を使用しても高圧力まで使用できることと
なる。 （ロ） スロット開口部３ａを磁性材料よりなる蓋材５
にて塞ぐことにより磁性材料を通して磁気回路を閉路さ
せることができる。 （ハ） 蓋材５をステータコア２の外周面を覆う筒材と
することにより容易にスロット開口部３ａを塞ぐことが
できる。

【００２６】尚、これまで説明した形態の他にも、電動
モータとしてブラシレスモータの代わりに、誘導モータ
や同期モータ等を用いてもよい。

【００２７】

【発明の効果】以上詳述したように、請求項１，２に記
載の発明によれば、高圧力によるキャンの変形が阻止さ
れるので薄いキャンを使用しても高圧力まで使用できる
優れた効果を発揮する。

【００２８】請求項３に記載の発明によれば、請求項
１，２に記載の発明の効果に加え、磁性材料にて閉路し
た磁気回路を形成することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 実施の形態における電動式ウォータポンプの
縦断面図。

【図２】 ウォータポンプの側面図。

【図３】 ウォータポンプのモータ部分における断面
図。

【図４】 ウォータポンプの一部拡大断面図。

【図５】 作用を説明するためのウォータポンプの断面
図。

【図６】 従来技術を説明するための電動式ウォータポ
ンプの断面図。

【図７】 従来技術を説明するための電動式ウォータポ
ンプの断面図。

【図８】 従来技術を説明するためのウォータポンプの
モータ部分における断面図。

【図９】 従来技術を説明するためのウォータポンプの
モータ部分における断面図。

【符号の説明】

１…モータハウジング、２…ステータを構成するステー
タコア、３…スロット、３ａ…スロット開口部、４…ス
テータを構成するコイル、５…蓋材（筒材）、７…ポン
プケーシング、１４…ロータを構成する軸受、１５…ロ
ータを構成するロータベース、１７ａ〜１７ｆ…ロータ
を構成するロータ用永久磁石、１８…インペラ、１９…
キャン

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 電動モータにおけるロータベースにイン
   ペラを設けるとともに、薄板よりなるキャンにてステー
   タが流体から仕切られた流体ポンプであって、 ステータコアにおけるスロットでのスロット開口部をス
   テータコアの外周側に形成し、ステータコアの内周の全
   面を前記キャンの当接面としたことを特徴とする流体ポ
   ンプ。
2. 【請求項２】 筒状をなすモータハウジングと、 永久磁石が固定され、前記モータハウジング内に回転可
   能に配置されたロータベースと、 前記ロータベースの一端に設けられたインペラと、 前記モータハウジングと結合され、前記インペラを収納
   するポンプケーシングと、 薄板よりなり、前記モータハウジングとポンプケーシン
   グとの間に介在された流体仕切用キャンと、 前記モータハウジング内に固定され、外周側にスロット
   開口部が形成され、かつ、内周の全面が前記キャンとの
   当接面となるコイル巻回用ステータコアとを備えたこと
   を特徴とする流体ポンプ。
3. 【請求項３】 スロット開口部を磁性材料よりなる蓋材
   にて塞いだ請求項１または２に記載の流体ポンプ。