JPH09316535A - 磁気特性に優れる無方向性電磁鋼板およびその製造方法 - Google Patents

磁気特性に優れる無方向性電磁鋼板およびその製造方法

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JPH09316535A
JPH09316535A JP8131658A JP13165896A JPH09316535A JP H09316535 A JPH09316535 A JP H09316535A JP 8131658 A JP8131658 A JP 8131658A JP 13165896 A JP13165896 A JP 13165896A JP H09316535 A JPH09316535 A JP H09316535A
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高島  稔
Masanori Shinohara
雅典 篠原
Keiji Sato
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 低Si無方向性電磁鋼板の磁気特性を向上す
る。 【解決手段】 C:0.01wt%以下、Si:1.0 wt%以下、
Mn:2.0 wt%以下、Al:0.2 〜1.5 wt%、P:0.3 wt%
以下およびREM :2〜80wtppm を含有し、かつ、円相当
径が1μm 以上の鋼中介在物につき、REM 含有介在物中
に占める窒化物と結合したREM 含有介在物の個数比率を
20%以上とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は磁気特性に優れる
低Si無方向性電磁鋼板およびその製造方法に関するもの
である。無方向性電磁鋼板は、モータ、発電機および変
圧器などの鉄心材料として使用されている。特に、Si:
1.0 wt%以下の低Si無方向性電磁鋼板は、低コストであ
り、かつ、打ち抜き性が良好であるため、家電用電気機
器の鉄心材料として、一般に広く用いられている。
【0002】ところで、近年、家電用電気機器において
も省エネルギーの観点から高効率化のニーズが高まって
きており、低Si無方向性電磁鋼板の磁気特性の一層の向
上が要望されている。
【0003】
【従来の技術】これまでの、Si:1.0 wt%以下の低Si無
方向性電磁鋼板の磁気特性の改善技術に関しては、たと
えば、特開昭62−180014号公報(鉄損が低くか
つ磁束密度の優れた無方向性電磁鋼板およびその製造方
法)や、特開平2−263952号公報(磁束密度が高
くかつ鉄損が低い無方向性電磁鋼板およびその製造方
法)には、Sn, Cuなどを含有させて磁気特性の向上をは
かる技術が提案開示されているが、これらとて近年の磁
気特性の要求レベルに十分に対応できるものではなかっ
た。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】この発明は、近年の情
勢に鑑み、より優れる磁気特性を有する低Si無方向性電
磁鋼板ならびにその製造方法を提案することを目的とす
る。
【0005】
【課題を解決するための手段】発明者らは、低Si無方向
性電磁鋼板の介在物と磁気特性との関係について詳細に
調査した結果、 ・REM 含有介在物が窒化物の析出核として作用するこ
と、 ・窒化物をREM 含有介在物上に粗大析出させることによ
り、磁気特性に有害な窒化物の微細析出物が減少し、磁
気特性が向上すること、 ・上記磁気特性の向上効果はSi:1.0 wt%以下の場合に
特に顕著であること、などを新規に知見し、この発明を
達成したものである。すなわち、その要旨とするところ
は以下の通りである。
【0006】 C:0.01wt%以下、Si:1.0 wt%以
下、Mn:2.0 wt%以下、Al:0.2 wt%以上、1.5 wt%以
下、P:0.3 wt%以下およびREM :2wtppm 以上、80wt
ppm 以下を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組
成になり、かつ、円相当径が1μm 以上の鋼中REM 含有
介在物につき、REM 含有介在物中に占める窒化物と結合
したREM 含有介在物の個数比率が20%以上であることを
特徴とする磁気特性に優れる無方向性電磁鋼板(第1発
明)。
【0007】 第1発明の成分組成になる鋼を、溶製
後鋳造してスラブとなし、直接あるいは冷却後再加熱し
たのち熱間圧延し、そのまままたは熱延焼鈍を経て1回
または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延後、仕上げ焼
鈍を施す一連の工程により無方向性電磁鋼板を製造する
にあたり、溶鋼を溶製する際に、脱ガス−Al脱酸後、脱
硫剤を添加して溶鋼中のS量を調整したのちREM を添加
し、仕上げ焼鈍板での1μm 以上のREM 含有介在物中に
占める窒化物と結合したREM 含有介在物の個数比率を20
%以上にすることを特徴とする磁気特性に優れる無方向
性電磁鋼板の製造方法(第2発明)。
【0008】ここで、円相当径が1μm 以上の鋼中REM
含有介在物とは、鋼板断面を観察した際の介在物断面の
円相当径(直径)が1μm 以上であって、かつREM (希
土類元素)がその一部あるいは全体にある介在物であ
る。
【0009】
【発明の実施の形態】この発明の作用効果を実験例をも
とにして以下に述べる。転炉−RH脱ガスにより表1に示
す5種類の溶鋼を溶製した。この溶製にあたってREM の
添加は脱ガス−Al脱酸後に行い、さらに、Al脱酸後REM
添加前に脱硫剤としてCaO フラックスの添加量を変化さ
せ、REM 添加前溶鋼のS量を12〜60wtppm の範囲に調整
した。
【0010】
【表1】
【0011】これらの溶鋼を連続鋳造により夫々スラブ
となし、熱間圧延後、900 ℃・2分間の熱間板焼鈍を施
したのち、酸洗し、冷間圧延により板厚:0.5 mmの冷延
板とした。その後、これらの冷延板に800 ℃の温度で15
秒間の仕上げ焼鈍を施し絶縁被膜を被成して製品とし
た。
【0012】かくして得られた各製品について、EPMA分
析により鋼中介在物を調査するとともに、磁気特性とし
て鉄損(W15/50 )を測定した。なお、磁気測定に供し
た試片は、各製品からそれぞれせん断によりエプスタイ
ン試験片を採取したのち、750 ℃・2時間の歪取り焼鈍
を施した。
【0013】これらの調査結果を以下に述べる。まず、
EPMA分析によれば、REM 含有介在物の一部は図1に示す
ようにREM 含有介在物(REM のオキシサルファイド・・
・REM −O−S)と窒化物(AlN)とが結合した複合介在
物(以下、この介在物を単に複合介在物という)となっ
ていることが分かった。ここで、図1は窒化物とREM 含
有介在物との複合介在物の形態を示す説明図である。
【0014】つぎに、図2に鉄損(W15/50 )とREM 含
有介在物に占める複数介在物(サイズ1μm 以上)の個
数比率との関係のグラフを示す。図2から明らかなよう
に、REM 含有介在物に占める複合介在物の個数比率が20
%以上のとき鉄損が改善されることが分かる。
【0015】また、図3にREM 添加前溶鋼のS量とREM
含有介在物に占める複合介在物の個数比率との関係のグ
ラフを示す。
【0016】この図3によれば、REM 添加前溶鋼のS量
が20〜40wtppm のとき、複合介在物の占める個数比率が
増加している。この理由は明らかでないが、REM 添加前
溶鋼のS含有量により、REM 含有介在物の組成あるいは
個数が変化し、これが影響したものと推定される。
【0017】このように、REM 含有介在物に占める複合
介在物の個数比率が20%以上になると鉄損が改善される
ことについて、そのメカニズムは以下のように推定され
る。
【0018】Si:1.0 wt%以下の低Si鋼の場合、鋳片が
鋳造される際ならびに熱延板が製造される際の冷却過程
で、それぞれγ−α変態を生じる。そして、γ相におけ
る窒化物の固溶度はα相のそれに比し大きい。そのた
め、γ−α変態にともなって、窒化物が比較的微細に析
出し、磁気特性を劣化させる。一方、REM 含有介在物
は、前掲図1に示したように窒化物の粗大析出核とな
る。したがって、γ−α変態にともなって窒化物の多く
がREM 含有介在物を核として粗大析出し、磁気特性に有
害な窒化物の微細析出物の生成が抑制されるものと推定
される。
【0019】なお、Si含有量が3.0 wt%のような高Si鋼
の場合には、よく知られているように、α単相鋼であっ
て、高温であってもγ相を生成しない。そのため、冷却
過程でのγ−α変態がなく、それにともなう窒化物の微
細析出がないので、REM 含有介在物に占める複合介在物
の個数比率の増減は磁気特性に何ら影響を及ぼさない。
したがって、REM 含有介在物に占める複合介在物の個数
比率の制御はSi含有量が1.0 wt%以下の場合にのみ有効
である。
【0020】つぎに、この発明の対象とする無方向性電
磁鋼板の成分組成ならびに製造条件について述べる。ま
ず、成分組成の限定理由について述べる。
【0021】C:0.01wt%以下 Cは、炭化物の析出による磁気特性劣化の原因となるの
で、その含有量は0.01wt%以下とする。
【0022】Si:1.0 wt%以下 Siは、比抵抗を増し、鉄損を低減させる重要な成分であ
るが、含有量の増加にともない、磁束密度が劣化し、ま
た硬度上昇により打ち抜き精度が劣化するので、その含
有量の上限を1.0 wt%とする。
【0023】Mn:2.0 wt%以下 Mnは、比抵抗を増し鉄損を低減せしめる重要な成分であ
るが、含有量の増加にともない磁束密度が劣化する。し
たがって、その含有量の上限を2.0 wt%とする。
【0024】Al:0.2 〜1.5 wt% Alは、REM とともに窒化物の微細析出を抑制する重要な
成分であり、0.2 wt%以上含有させないと、REM 含有介
在物に占める複合介在物の個数比率を20%以上にするこ
とができない。一方、含有量の増加にともない磁束密度
は劣化する。したがって、その含有量は0.2 wt%以上、
1.5 wt%以下とする。
【0025】P:0.3 wt%以下 Pは、打ち抜き性を改善する有用な成分であるが、含有
量が0.3 wt%を超えると冷延性が劣化する。したがっ
て、その含有量の上限を0.3 wt%とする。
【0026】REM :2〜80wtppm REM は、窒化物を粗大析出させるのに重要な成分であ
る。含有量が2wtppm 未満ではその効果に乏しく、80wt
ppm を超えるとREM 含有介在物(REM 介在物)自体によ
る磁気特性の劣化が生じる。したがって、その含有量は
2wtppm 以上、80wtppm 以下とする。
【0027】さらに、この発明においては、鋼中の1μ
m 以上の径のREM 含有介在物中に占める複合介在物の個
数比率が20%以上であることを必須とする。これは前記
したように、複合介在物の個数比率が20%未満では鉄損
の改善が得られないためである。なお、S量は特に限定
しないが、100 ppm 以下とすることがのぞましい。
【0028】つぎに製造条件について述べる。まず、転
炉−脱ガスなどの常法の製鋼法により溶製した溶鋼を連
続鋳造あるいは造塊−分塊法によってスラブとする。
【0029】このとき、REM の添加前に、溶鋼中のS量
を金属MgやCaO 等の脱硫フラックスを添加して好適範囲
に調整することが極めて重要であり、このS量の調整に
より仕上げ焼鈍板でのREM 含有介在物中に占める複合介
在物の個数比率が20%以上になるようにする。
【0030】これは、前記したように、REM 添加前の溶
鋼のS量が複合介在物の個数比率に大きく影響するため
である。
【0031】ところで、REM 添加前溶鋼の最適S量は、
他の成分(Si,AlおよびO等)の溶鋼中濃度やREM 添加
後鋳造までの時間などにより変化するので特定すること
は困難である。そこでこの発明では、より本質的な仕上
げ焼鈍板での鋼中のREM 含有介在物に占める複合介在物
の個数比率を規定するようにするものである。
【0032】その後、スラブを熱間圧延するが、スラブ
を再加熱して熱間圧延する方法、あるいはスラブを再加
熱することなく直接熱間圧延する方法のいずれもが適用
できる。
【0033】ここで、磁気特性として、特に高い磁束密
度を必要とするときには、熱延板焼鈍あるいは熱延板巻
き取り時の自己焼鈍により熱延板の結晶粒を粗大化さ
せ、製品の集合組織を改善することが有効である。その
熱延板焼鈍は、箱焼鈍(例えば850 ℃×1時間)あるい
は連続焼鈍(例えば950 ℃×2分間)のいずれもが適応
できる。
【0034】その後は酸洗ののち、冷間圧延を施して仕
上げ焼鈍を施し製品とする。この仕上げ焼鈍後は、公知
の方法により絶縁被膜を被成してもよい。また、仕上げ
焼鈍後、必要に応じて圧下率1〜15%の範囲のスキンパ
ス圧延を行うこともよい。
【0035】
【実施例】転炉−RH脱ガスにより種々の成分組成の溶鋼
に調整した。その際、Al添加後CaO を投入し、しかるの
ちREM を添加して攪拌した。これらの溶鋼をそれぞれ連
続鋳造してスラブとし、再加熱後熱間圧延を施し熱延板
とした。
【0036】これらの熱延板に950 ℃・2分間の熱延板
焼鈍を施し、酸洗後、冷間圧延を行って板厚:0.5 mmに
圧延したのち、それぞれ800 ℃・10秒間の仕上げ焼鈍を
施し製品とした。
【0037】これらそれぞれの製品について、成分分析
および介在物調査を行うとともに、試験片採取後750 ℃
・2時間の歪取り焼鈍を行ったのち磁気特性を測定し
た。これらの調査結果を表2にまとめて示す。
【0038】
【表2】
【0039】表2から明らかなように、この発明に適合
する適合例は比較例に比し格段に優れる磁気特性を示し
ている。
【0040】
【発明の効果】この発明は、低Si無方向性電磁鋼板にRE
M を含有させ、REM 含有介在物中に占める窒化物と結合
したREM 含有介在物の個数比率を特定するものであり、
この発明によれば、微細析出する窒化物が抑止されるこ
とにより、磁気特性が大幅に向上し、鉄心材料として家
電用電気機器類等の高効率化のニーズに有利に対応でき
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】窒化物とREM 含有介在物との複合介在物の形態
を示す説明図である。
【図2】鉄損(W15/50 )とREM 含有介在物に占める複
合介在物の個数比率との関係のグラフである。
【図3】REM 添加前溶鋼のS量とREM 含有介在物に占め
る複合介在物の個数比率との関係のグラフである。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】C:0.01wt%以下、 Si:1.0 wt%以下、 Mn:2.0 wt%以下、 Al:0.2 wt%以上、1.5 wt%以下、 P:0.3 wt%以下およびREM :2wtppm 以上、80wtppm
    以下を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成に
    なり、かつ、円相当径が1μm 以上の鋼中REM 含有介在
    物につき、 REM 含有介在物中に占める窒化物と結合したREM 含有介
    在物の個数比率が20%以上であることを特徴とする磁気
    特性に優れる無方向性電磁鋼板。
  2. 【請求項2】C:0.01wt%以下、 Si:1.0 wt%以下、 Mn:2.0 wt%以下、 Al:0.2 wt%以上、1.5 wt%以下、 P:0.3 wt%以下およびREM :2wtppm 以上、80wtppm
    以下を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成に
    なる鋼を、溶製後鋳造してスラブとなし、直接あるいは
    冷却後再加熱したのち熱間圧延し、そのまままたは熱延
    焼鈍を経て1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧
    延後、仕上げ焼鈍を施す一連の工程により無方向性電磁
    鋼板を製造するにあたり、 溶鋼を溶製する際に、脱ガス−Al脱酸後、脱硫剤を添加
    して溶鋼中のS量を調整したのちREM を添加し、仕上げ
    焼鈍板での1μm 以上のREM 含有介在物中に占める窒化
    物と結合したREM 含有介在物の個数比率を20%以上にす
    ることを特徴とする磁気特性に優れる無方向性電磁鋼板
    の製造方法。
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