JP2003064456A - セミプロセス用無方向性電磁鋼板とその製造方法 - Google Patents

セミプロセス用無方向性電磁鋼板とその製造方法

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JP2003064456A
JP2003064456A JP2001255888A JP2001255888A JP2003064456A JP 2003064456 A JP2003064456 A JP 2003064456A JP 2001255888 A JP2001255888 A JP 2001255888A JP 2001255888 A JP2001255888 A JP 2001255888A JP 2003064456 A JP2003064456 A JP 2003064456A
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steel
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JP2001255888A
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English (en)
Inventor
Hiroshi Fujimura
浩志 藤村
Hiroyoshi Yashiki
裕義 屋鋪
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】Sを0.015〜0.035%含有した、打抜
き加工性および磁性焼鈍後の磁気特性に優れたセミプロ
セス用無方向性電磁鋼板およびその鋼板を工業的にも安
価に製造し得る方法の提供。 【解決手段】質量%で、C:0.004%以下、Si:
0.1〜1%、Mn:0.2〜0.5%、P:0.05
〜0.2%、S:0.015〜0.035%、sol.A
l:0.0002〜0.002%、Ti:0.0005
%以下、N:0.004%以下、O(酸素):0.00
4%〜0.011%を含有し、残部がFe および不純物
からなる電磁鋼板とその製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、打抜き加工性と磁
性焼鈍後の磁気特性に優れたセミプロセス用無方向性電
磁鋼板およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、地球温暖化防止や省エネルギー推
進などの観点から各種電気機器の高効率化が進められて
おり、回転機や変圧器に使用される鉄心の素材となる電
磁鋼板には、低コストであることと共に、優れた磁気特
性(低鉄損、高磁束密度)を備えていることが求められ
ている。
【0003】無方向性電磁鋼板には、鉄心形状に打抜い
た後、特に焼鈍を施さないで使用されるフルプロセス材
と、製品形状に打抜いた後で焼鈍を施して磁気特性を改
善して使用されるセミプロセス材とがある。
【0004】セミプロセス材は、打抜き性を向上させる
ために、合金元素の添加や結晶組織微細化などにより硬
質にされる。良好な磁気特性は、打抜き後に施す焼鈍
(以下、単に「磁性焼鈍」と記す)により、結晶粒を成
長させることにより得ることができる。このようなこと
から、セミプロセス材としては、磁性焼鈍時の結晶粒成
長性が優れていることが重要とされており、化学組成や
介在物の規制により良好な磁気特性を得る方法が種々提
案されてきた。
【0005】鋼に不可避的に混入する不純物のNやSは
微細な介在物や析出物を形成し、磁性焼鈍時の結晶粒成
長を阻害して鉄損改善を妨げる。例えばNはAl と反応
して微細なAlN として析出し、鉄損劣化の原因とな
る。
【0006】特公昭58−55210号公報には、酸可
溶性Al量を0.00010%未満、S量を0.010
%未満とし、熱間圧延の圧延終了温度をAr点とAr
点の中央温度より低くすることにより鉄損が著しく改
善されることが開示されている。
【0007】特開平7−150248号公報には、酸可
溶性Al量を0.0005以上0.0010%未満、S
量を0.008%以下とし、さらに鋼中のSiO、M
nO、Alの3種の介在物の総重量に対するMn
Oの重量割合が15%以下、SiOの重量割合が75
%以上となるようにすることにより、磁性焼鈍後の鉄損
が少なくなることが開示されている。
【0008】特開平7−70719号公報には、S量を
0.01%以下、酸可溶性Al量を0.0008%以
下、かつAl+Tiを0.0020%以下とすることに
より歪み取り焼鈍後の鉄損が向上することが開示されて
いる。
【0009】特開昭61−221328号公報には、P
量を0.035〜0.10%、Al量を0.005%以
下、S量を0.015〜0.035%、Mn/S重量比
を10以上とし、冷延後の焼鈍を再結晶温度以上でAc
点以下とする、打抜き性の良好な電磁鋼板の製造方法
が開示されている。
【0010】特開平9−228006号公報には、酸可
溶性Al量を0.002%未満とし、さらに鋼中のSi
、MnO、Alの3種の介在物の総重量に対
するSiOの重量割合を75%未満、MnO/SiO
重量比を0.43以下、Al/SiO重量比
を0.1から1.0とすることにより、磁気特性ばかり
でなく打抜き加工性も改善できることが示されている。
【0011】上記の特開昭61−221328号のよう
な、Sを0.015〜0.035%含有させた打抜き性
の良好な電磁鋼板は、磁性焼鈍すると粒成長性に劣るた
めセミプロセス材としては殆ど用いられてこなかった。
【0012】また、上記の特開平7−150248号公
報や特開平7−70719公報では、酸化物組成や不純
物元素量を制御することにより、磁気特性が改善されて
ているが、S量が低いため打抜き性を同時に満たすこと
はできなかった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、Sを
0.015〜0.035%と多量に含有し、打抜き加工
性および磁性焼鈍後の磁気特性に優れたセミプロセス用
無方向性電磁鋼板およびその製造方法を提供することに
ある。
【0014】
【課題を解決するための手段】Sを0.015〜0.0
35%と多量に含有する無方向性電磁鋼板には、鋼板中
にMnS以外に酸化物や窒化物が分散している。これら
の介在物が分散する鋼について、介在物の磁性焼鈍後の
磁気特性に及ぼす影響について種々研究を重ねた。その
結果、S含有量が多い電磁鋼板では酸素とTi量とを同
時に低減し、かつ鋼の溶製時の溶鋼の過熱度を20〜6
0℃とすることにより、介在物が微細にならないように
制御でき、磁性焼鈍時の粒成長を促進することができ磁
気特性が顕著に改善できることを見いだした。
【0015】本発明はこのような知見に基づきなされた
もので、その要旨は以下の通りである。
【0016】(1)質量%で、C:0.004%以下、
Si:0.1〜1%、Mn:0.2〜0.5%、P:
0.05〜0.2%、S:0.015〜0.035%、
sol.Al:0.0002〜0.002%、Ti:0.0
005%以下、N:0.004%以下、O(酸素)0.
004〜0.011%を含有し、残部がFe および不純
物からなるセミプロセス用無方向性電磁鋼板。
【0017】(2)上記(1)に記載の化学組成の溶鋼
を、過熱度を20〜60℃に調整して連続鋳造してスラ
ブとし、スラブを1100〜1250℃の温度範囲に加
熱した後、800〜[880+50×Si含有量(質量
%)]℃の温度範囲で仕上げる熱間圧延をおこない、次
いで冷間圧延した後、仕上げ焼鈍するセミプロセス用無
方向性電磁鋼板の製造方法。
【0018】なお、過熱度とは、タンディシュの[溶鋼
温度−溶鋼の液相線温度]をいう。
【0019】本発明者らは、介在物の電磁特性に及ぼす
影響影響を調べるため以下のような実験をおこなった。 質量%でC:0.002%、Si :0.2%、Mn :
0.3%、P:0.09%、S:0.02%、sol.Al
:<0.001%、N:0.002%を含有し、Oを
0.004〜0.017%の範囲内で種々変化させると
共に、Ti を0.001%以下の範囲で種々変化させた
鋼を溶解してインゴットとし、鍛造してスラブとした。
このスラブより厚さが15mmの鋼片を切り出し、12
00℃で1時間の加熱処理したのち、3パスの圧延を施
し、850℃で熱間仕上圧延を終了して厚さ3mmの熱
延鋼板を得た。この鋼板の両面を研削して厚さが2.3
mmの鋼板とし、これを冷間圧延して厚さ:0.5mm
の冷延鋼板とし、次いで750℃に急速加熱して30秒
間保持する焼鈍を施して無方向性電磁鋼板を得た。
【0020】これらの鋼板から幅3cm、長さ10cm
の試験片を圧延方向と圧延方向に垂直方向に打抜き、7
50℃で2時間保持する磁性焼鈍を施し、その磁気特性
(鉄損)を単板磁気試験装置により評価した。
【0021】磁気特性値は圧延方向と圧延方向に垂直方
向の平均値とした。また鋼中の酸化物系介在物を臭素−
メタノール法により抽出し、残渣中のSi、Mn、Al
およびTi成分の分析をおこなった。
【0022】鋼中のSiO、MnOおよびAl
の3種の介在物の総質量に対するSiOとMnOの質
量割合と鉄損の関係を調べると共に、鋼中の酸素量およ
びTi量と鉄損の関係を調べた。
【0023】図1は、上記実験で得られた介在物と磁気
特性との関係を示す図で、図1(a)および(b)は、
SiO、MnOおよびAlの3種の介在物の総
質量に対するSiOの割合およびMnOの割合(下記
式)と鉄損との関係をそれぞれ示す。
【0024】SiOの質量割合(%)=SiO/(SiO+MnO+A
lO) MnO の質量割合(%)=MnO /(SiO+MnO+AlO) 図1から明らかなように、鋼中のSiO、MnOおよ
びAlの3種の介在物の総質量に対するMnOや
SiOの質量割合と鉄損の関係は、鉄損が5.5W/
kg未満で安定する酸化物組成が見いだせない。
【0025】図2は、鋼中の酸素、Ti量と鉄損の関係
を示す図である。図2に示すように両者の間には明確な
相関があり、O量を0.011%以下、Ti量を0.0
005%以下にすれば安定して鉄損が5.5W/kg未
満にできることが分かる。
【0026】この原因を調査するため、Tiを0.00
07%含有している鋼板の介在物をSEMにより観察し
た。その結果、TiはSi、MnおよびAlを含む酸化
物中或いはMnS中に含まれていることが分かった。極
微量のTiにより鉄損が劣化した原因は、Ti含有介在
物(Ti酸化物、Ti硫化物、或いはTiN)が鋼中に
微細分散し粒成長を抑制するため、またはTi含有介在
物を起点としMnSが微細分散し粒成長を抑制するため
と推測される。このように、鋼中の酸素量を下げ、さら
にTiを極微量に低減することが磁性焼鈍後の磁気特性
改善に不可欠であることを究明した。
【0027】さらに、本発明者らは、介在物制御による
磁気特性改善を確実なものとするため製造条件について
も検討した。
【0028】転炉−RH(循環式)真空脱ガス工程を経
て、下記の化学組成に調整した溶鋼を、過熱度を18、
30、47および65℃の4種に調節して連続鋳造し
た。
【0029】化学組成: C:0.002%、Si :0.2%、Mn :0.3%、
P:0.09%、S:0.02%、sol.Al :<
0.001%、Ti:≦0.0001%、N:0.00
2%、O:0.007〜0.009%、残部:Feと不
純物。
【0030】連続鋳造したスラブを、1220℃に加熱
し、仕上げ温度870〜880℃の温度範囲として、板
厚2.5mmに熱間圧延して、660〜680℃で巻取
った。次いで、脱スケールした後、0.5mmに冷間圧
延して、780℃で30秒間均熱する仕上げ焼鈍を施し
た。その後、通常の無方向性電磁鋼板と同様の絶縁皮膜
をコーティングした。
【0031】磁気特性は、JIS−C−2550に規定
のエプスタイン試験片を採取後、窒素雰囲気にて750
℃で2時間の磁性焼鈍を実施し、鉄損W15/50を測
定した。その結果、鋼成分や熱延、焼鈍温度がほぼ同じ
条件の下では、鋼板の鉄損は溶鋼の過熱度によって大き
く変化することが分かった。すなわち、過熱度が18℃
と65℃の場合は、鉄損W15/50が5.6および
5.4W/kgであった。それに対し、過熱度が30℃
と47℃の場合は、5.2および5.0W/kgと良好
であった。このように、鋼組成を調整し、さらに製鋼時
の過熱度を適正化することが磁性焼鈍後の磁気特性改善
に有効であることが分かった。
【0032】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て詳細に述べる。化学組成の%表示はすべて質量%とす
る。
【0033】鋼の化学組成; C:Cは、炭化物として析出し、磁気特性を劣化させる
ので少ないほどよい。C含有量が0.004%を超える
と、鉄心として使用中に炭化物が析出して磁気特性がさ
らに劣化する。これを防ぐためにC含有量は0.004
%以下とした。
【0034】Si :Si は、鋼の固有抵抗を高める作用
があり、Si を含有させることにより電磁鋼板の鉄損を
小さくすることができる。磁性焼鈍後の鉄損を改善する
ためにSiを含有させる。しかしながら、Si 含有量が
1%を超えると、Si、Mnを含む窒化物が析出し磁性
焼鈍後の鉄損が劣化するので、Si 含有量の上限は1%
とする必要がある。より優れた磁束密度を必要とする場
合には、Si 含有量を0.5%以下とするのが好まし
い。他方、Si 含有量が0.1%未満となると脱酸が不
十分となり酸化物系介在物が鋼中に多量に分散するた
め、磁気特性が低下する。上記の理由により、Si含有
量は0.1〜1%とした。
【0035】Mn :Mn は、鋼の固有抵抗を高める作用
があり、Mn を含有させることで電磁鋼板の鉄損を小さ
くすることができる。ただし、その効果は単位含有量当
たりでSiの約1/2である。さらに、Mn は鋼中のS
をMnS として固定し、焼鈍時の結晶粒成長性を向上さ
せる作用もある。本発明の無方向性電磁鋼板では、打抜
き性を確保するためにSを0.015〜0.035%含
有させるが、このようなSを多量に含有する鋼の結晶粒
成長性を良好に保つためには、Mn 含有量は0.2%以
上とする必要がある。Mn含有量の下限を0.2%と比
較的低く下げ粒成長を改善することができたのは、後述
する鋼中のTiとO量を低減したためである。
【0036】磁気特性のバラツキを小さくするには、M
n/S含有量比を10以上とするのが望ましい。他方M
n 含有量が0.5%を超えると製造コストが増加するの
で、Mn 含有量の上限は0.5%とした。
【0037】P:Pは、電磁鋼板の磁気特性にあまり影
響を及ぼさないが、適度な硬さを付与する作用があり、
鋼板の打抜き性を改善する効果がある。本発明の鋼板
は、Si含有量が少なく非常に軟質であるので、鋼板の
打抜き性を改善するため、Pは0.05%以上の含有量
が必要となる。しかし、その含有量が0.2%を超える
と鋼の脆化が著しくなり、圧延が困難となる場合があ
る。したがって、Pの含有量は0.05〜0.2%とし
た。
【0038】S:Sは、Mn、TiおよびO含有量を適
量に調整することによってMnSの析出形態を調整し、
磁性焼鈍時の粒成長を害することなく、打抜き性を改善
させるのに有な元素である。しかし、その含有量が0.
015%を下回ると鋼板の打抜き性を改善するような介
在物が形成されない。一方、0.035%超えると、本
発明が規定する他の条件を満足させても鉄損を十分改善
することができないので、S含有量は0.035%以下
とした。
【0039】sol.Al :Al は、溶鋼の脱酸及び昇温に
有効な元素である。これらの効果を得るには0.000
2%以上が必要である。しかしながら、sol.Alとして
の含有量が0.002%を超えると、鋼中にAlNが生
成し磁気特性が劣化する。磁気特性のバラツキを小さく
するためには、sol.Al量を0.001%未満にするの
が望ましい。
【0040】N:Nは、Si、Mn、Al 或いはTi と
結合し窒化物として析出し、磁気焼鈍時の粒成長性を著
しく低下させるので少なければ少ないほどよい。粒成長
の低下を避けるためにはN含有量は0.004%以下と
する必要がある。
【0041】Ti :Ti は、製鋼における不可避不純物
であるが、本発明においては重要な元素である。通常の
電磁鋼板は、数ppmから数十ppmのTiを含んでい
る。そのように極微量であってもTiは鋼中のO、N、
SおよびCなどと結合して微細な介在物を形成し、結晶
粒の成長を抑制する作用がある。それら析出相の中で
も、本発明の鋼板のようにAl含有量が少ない鋼では、
Ti酸化物やTi硫化物が主に生成する。Ti含有量が
0.0005%を超えると、TiはSiO−MnO−
Al系酸化物中或いはMnS中に含まれ、その複
合酸化物は熱延、冷延工程を経て非常に微細に分散して
しまうため、磁性焼鈍後の磁気特性が著しく低下する。
したがって、Tiの含有量は0.0005%以下と極め
て厳しく限定しなければならない。さらに磁気特性を向
上させるに0.0003%以下に低減するのが好まし
い。
【0042】なお、本発明におけるTi含有量は、pp
mオーダーで精密に測定する必要があるので、臭素メタ
ノール法により抽出された残渣中に含まれるTi量と定
める。これ以外の方法、例えば酸分解法で鋼中のTi量
を定量分析すると臭素メタノール法より数ppm少ない
結果が得られる場合がある。これは、酸分解法では大き
な介在物が完全に酸分解されないためと推定される。本
発明では、介在物Tiを減らすことを重要視しており、
臭素−メタノール法による分析法を採用するのが、磁気
特性改善の機構から妥当である。
【0043】O(酸素):Oは、鋼中のSi、Mn、Al
およびTiなどと酸化物を形成し、結晶粒の成長を抑制
する元素であり、本発明においては重要な元素である。
Al含有量が0.002%以下である従来の低Al系電
磁鋼板は、酸素を0.015%程度含有していた。Al
トレース系電磁鋼板の磁気特性を改善する方法として、
S量を0.008%以下とした上で酸化物組成を制御す
る方法が知られている。
【0044】しかしながら、本発明では打抜き性を改善
するためにS量を0.015%以上と多量に含有させる
ことが必須であり、その高S含有低Al系電磁鋼板にお
いては酸化物組成よりも酸素量を減らすことの方が有効
であることを確認した。O含有量が0.011%を超え
ると、酸化物の分散密度が高くなると共にMnSの分散
状態にも影響を与え、結果として磁気特性が著しく劣化
する。一方、その含有量が0.004%未満となると精
錬において微量Ti、Alの制御が困難となり、Ti、
Alを含む析出物が多数鋼板中に分散する。その場合も
やはり磁気特性は劣化する。したがって、O含有量は
0.004〜0.011%とした。磁気特性の改善の観
点からより望ましい範囲は0.004〜0.01%であ
る。ただし、本発明では酸素量を下げると同時にTi量
を十分低減しなければ所望の効果は得られない。
【0045】以上述べた元素以外は、Fe および不純物
である。なお、本発明においては不純物としてのSnお
よびSbの含有量は、0.03%以下とする。また、不
純物のNbおよびZrは、0.005%以上含有する
と、微細な窒化物が生成し磁気特性を劣化させる場合が
あるので、含有量はそれぞれ0.005%未満にするこ
とが好ましい。
【0046】以下、製造方法について説明する。
【0047】溶鋼の過熱度:連続鋳造時の溶鋼過熱度
は、スラブ品質を確保する上で適切に制御されなければ
ならないが、本発明においては、特に介在物制御して磁
気特性の改善を図る観点から溶鋼の過熱度の制御は重要
となる。過熱度が20℃未満の場合、介在物が微細に分
散しやすくなり鉄損が増加する。一方、過熱度が60℃
を超えても、鉄損がやや増加する傾向にあり、さらに介
在物を起点とした表面疵が発生しやすくなる。
【0048】このような介在物分散状態に及ぼす過熱度
の影響は必ずしも明らかではないが、以下のように推定
される。
【0049】本発明鋼のようにS含有量の高い溶鋼中で
は酸化物の界面エネルギーが低下する。過熱度が小さく
なりすぎると溶鋼に分散する酸化物粒子が凝集粗大化し
にくいため、続くMnS分散状態も微細になると考えら
れる。一方、過熱度が大きくなると介在物の分散状態は
粗大化する傾向にある。しかし、過度に凝集粗大化した
介在物は、圧延によって粉砕され微細な点線状に形態を
変えやすいため、鉄損が増加すると考えられる。また、
介在物を起点とした表面疵が発生しやすくなり、製品の
歩留まりが低下する。熱間圧延、冷間圧延:上記条件で
溶鋼を連続鋳造した後の熱間圧延および冷間圧延は、電
磁鋼板の磁気特性を十分に引き出すために、以下の条件
にする必要がある。
【0050】連続鋳造後のスラブは、1100〜125
0℃温度範囲に加熱する必要がある。1100℃未満で
は、鋳造後のスラブに分散するMnSが粗大化せず、打
抜き性および磁気特性が劣化する。さらには鋼板表面に
疵が発生しやすくなる。一方、1250℃を超えて加熱
するとMnSの一部が鋼中に再固溶し、熱延中に微細析
出するため磁気特性が劣化する。
【0051】次に、熱間圧延の仕上げ温度は、800〜
[880+50×Si含有量(質量%)]℃の温度範囲
となるように制御する必要がある。なぜなら、800℃
未満では熱延鋼板のミクロ組織が微細な未再結晶組織と
なり、製品の磁束密度が著しく低下する。一方、[88
0+50×Si含有量(質量%)]℃を超えて熱間圧延
を仕上げると鋼板の一部にA変態による微細組織が生
成し、やはり磁束密度並びに鉄損が低下する。
【0052】
【実施例1】転炉で精錬し、RH真空脱ガス処理して得
た溶鋼を、過熱度30〜40℃の範囲で連続鋳造して厚
さ230mmのスラブとした。それらの化学組成は表1
に示すとおりであった。
【0053】
【表1】
【0054】これらのスラブを、加熱炉に装入して全て
1200℃に加熱した後、仕上げ温度860〜870℃
で熱間圧延し、厚さ2.5mmの熱延鋼板を製造した。つ
いで、酸洗後、厚さ0.5mmまで冷間圧延し、770℃
で仕上焼鈍を施た。
【0055】次いで、表面に厚さ約0.2μm の絶縁皮
膜を塗布した。これらの鋼板より、エプスタイン試験片
を採取し、窒素雰囲気中で750℃に加熱して2時間保
持する磁性焼鈍を施した後、JIS−C−2550に規
定のエプスタイン法により磁気特性を測定した。
【0056】なお、化学組成のTiの分析は、絶縁被膜
を除去した鋼板の切り粉を臭素メタノール法により溶解
し、抽出残渣に含まれるTiを定量分析した。
【0057】表2に製造条件と試験結果を示す。
【0058】打抜き性の評価は、金型材質がSKD−1
1、打抜き速度が毎分350回、打抜き形は17mm
角、クリアランス8%、打抜き油は灯油を使用し、鋼板
を送りながら連続して打抜き、打抜き端面の「かえり高
さ」が50μmに達したときの打抜き回数を測定した。
【0059】
【表2】
【0060】表2に示すように、本発明の規定する条件
を満足する鋼番号a、b、c、d(約0.2%Si含有
鋼シリーズ)は、磁性焼鈍後の鉄損W15/50は5.
5W/kgより低く、磁束密度B50は1.75Tを超
え、いずれも良好な磁気特性を示し、さらに打抜き回数
が150万回を超えるような良好な打抜き性を示した。
また、本発明例のSi量の高い鋼e、fはそれぞれ酸素
やTi量の高い鋼q、rよりも鉄損が0.7W/kg以
上低く、さらに打抜き性も良好である。
【0061】
【実施例2】製造条件を種々代えて製造した電磁鋼板の
実施例を以下に示す。
【0062】転炉で精錬し、RH真空脱ガス処理して得
た溶鋼を、過熱度18〜60℃の範囲で変化させ連続鋳
造して厚さ230mmのスラブとした。スラブの化学組
成を表3に示す。鋼番号s〜zはいずれも本発明例であ
る。
【0063】
【表3】
【0064】これらのスラブを表4に示す条件で熱間圧
延をおこない、厚さ2.5mmの熱延鋼板を製造した。つ
いで、酸洗後、厚さ0.5mmまで冷間圧延し、仕上焼鈍
を施た。
【0065】次いで、表面に厚さ約0.2μmの絶縁皮
膜を塗布した。これらの鋼板より、エプスタイン試験片
を採取し、窒素雰囲気中で750℃に加熱して2時間保
持する磁性焼鈍を施した後、JIS−C−2550に規
定のエプスタイン法により磁気特性を測定した。
【0066】打抜き性の評価は、実施例1と同様におこ
なった。表4に製造条件と試験結果を示す。
【0067】
【表4】
【0068】鋼番号s〜vは、約0.2%Siのシリー
ズ、鋼w〜zは約0.45%Siのシリーズである。表
4から明らかなように、過熱度が本発明で規定する範囲
内である鋼番号t、u、w、xおよびyは、鉄損、磁束
密度共に良好であり、また打抜き性も良好である。一
方、過熱度が本発で規定する範囲から外れる鋼番号s、
vおよびzは、磁気特性が不良である。
【0069】
【発明の効果】本発明の無方向性電磁鋼板は、セミプロ
セス材として優れた磁気特性と、極めて優れた打抜き性
とを兼備しており、磁気焼鈍を施す必要がなく安価に製
造できる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】鋼中の酸化物中に含まれるSiO、MnOの
質量割合と磁性焼鈍後の磁気特性との関係を示す図であ
る。計算式
【0071】
【図2】鋼中のTi、O成分量と磁性焼鈍後の磁気特性
との関係を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4K033 AA01 CA05 CA08 CA09 EA02 FA01 FA03 QA01 5E041 AA02 CA01 CA02 CA04 HB11 NN01 NN18

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】質量%で、C:0.004%以下、Si:
    0.1〜1%、Mn:0.2〜0.5%、P:0.05
    〜0.2%、S:0.015〜0.035%、sol.A
    l:0.0002〜0.002%、Ti:0.0005
    %以下、N:0.004%以下、O(酸素):0.00
    4〜0.011%を含有し、残部がFe および不純物か
    らなることを特徴とするセミプロセス用無方向性電磁鋼
    板。
  2. 【請求項2】請求項1に記載の化学組成の溶鋼を、過熱
    度を20〜60℃に調整して連続鋳造してスラブとし、
    スラブを1100〜1250℃の温度範囲に加熱した
    後、800〜[880+50×Si含有量(質量%)]
    ℃の温度範囲で仕上げる熱間圧延をおこなって巻取り、
    次いで冷間圧延した後、仕上げ焼鈍することを特徴とす
    るセミプロセス用無方向性電磁鋼板の製造方法。
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