JP4288811B2 - 無方向性電磁鋼板およびその製造方法 - Google Patents

無方向性電磁鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、モーターやトランス等の鉄心材料として広範囲で使用される、低鉄損の無方向性電磁鋼板およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、省エネルギーの観点から、電気機器の効率向上に対する要求が強く、鉄心材料についてもより一層の低鉄損化が望まれている。そのため、無方向性電磁鋼板の鉄損を低減する技術について、様々な提案が成されている。
【0003】
すなわち、無方向性電磁鋼板の鉄損低減手段としては、SiやAlなどの合金元素の添加量を増加し、鋼板の電気抵抗を高める方法が一般的に知られているが、現在の無方向性電磁鋼板のハイグレード品の鉄損レベルを一層向上させるために、SiやAlなどの添加量を増加すると、圧延性の問題ばかりでなく、ユーザーにおいて所定の形状に打ち抜く際に金型の磨耗を早めることが新たに問題となる。さらに、SiやAlなどの添加量の増加は、材料のコスト高を招く不利も生じる。
【0004】
また、特公平2−50190号公報には、鋼中の不純物元素量または介在物および析出物個数を低減することにより、鉄損を低減する方法が開示されている。この方法は、鉄損低減に効果的であるが、かような不純物低減のための鋼の高純度化は製銑および製鋼技術に依存するものであり、無方向性電磁鋼板の製造分野における鋼の高純度化は、現状の製銑および製鋼技術のほぼ極限にて行っているため、高純度化による鉄損のより一層の低減は、製銑および製鋼技術の更なる進歩を待たなければならなかった。
【0005】
一方、特開昭59−74256号、同60−152628号および特開平3−104844号の各公報には、介在物の個数を減少させて低鉄損化を達成する技術が開示されている。しかし、これらの技術における鋼中の介在物の個数を低減させることは、結局のところ鋼の高純度化技術に依存するから、上記の技術と同様、鉄損のより一層の改善は、製銑および製鋼技術の更なる進歩を待たなければならなかった。
【0006】
さらに、特開平8−41538号公報には、不純物混入を抑制し、スラブ加熱温度、巻取り温度、熱延板焼鈍条件、冷間圧延圧下率および仕上焼鈍条件を規定することにより、介在物を制御して鉄損を低減する技術が開示されている。特公昭56−22931号公報には、冷間圧延条件に工夫を凝らして集合組織を改善し鉄損を低減する方法が開示されている。特開平8−97023号公報には、Sbを添加して熱間圧延時のスラブ加熱温度および熱間圧延後の熱延板焼鈍条件を制御することにより、最終仕上げ焼鈍時の酸化を抑制する技術が開示されている。これらの方法により確かに鉄損を改善することが可能であるが、添加Si量および製造工程に合った最適条件がすでに提案されている現状では、より一層の鉄損低減は困難である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従って、現在の高いレベルの要求を満たすためには、より一層の鉄損改善を達成する方策を至急に講ずる必要がある。そこで、この発明は、無方向性電磁鋼板における、より一層の低鉄損化を実現する方途について提案することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、鉄損特性の向上を達成するために種々の検討を重ねた結果、原料(鉄鉱石)や副原料(FeSi等)に不純物として含まれ、また製鋼工程において溶鋼と接するレンガ等にも含まれる結果、鋼中に不可避に混入するZrを低減すると、著しく鉄損特性が向上するケースがあることを知見した。そこで、この鉄損特性が著しく向上するケースについて詳細な検討を行った結果、最終製品板の集合組織がある特定の条件を満たす場合に鉄損特性が向上することを新たに見出した。また、鋼板の電気抵抗に応じて最終製品板の粒径を調整することにより、低鉄損が得られることも新たに知見した。この発明は、以上の知見に基づくものである。
【0009】
すなわち、この発明の要旨構成は、次のとおりである。
(1) C:0.005 mass%以下、Si:1.0 〜4.0 mass%、Al:2.0 mass%以下(ただし、Si+Al≧2.0 mass%)、Mn:0.1 〜1.5 mass%、Cr:0.5 〜3.0 mass%、S:0.0020mass%以下、N:0.0030mass%以下、O:0.0020mass%以下およびZr:0.0010mass%以下を含有し、残部Feおよび不可避不純物の成分組成を有する無方向性電磁鋼板であって、該鋼板の表面から板厚の1/4の深さの面における{100 }および{111 }各方位のX線反射面強度のランダム集合組織に対する比I(100) およびI(111) がI(100) /I(111)≧1.20の関係を満足することを特徴とする無方向性電磁鋼板。
【0010】
(2) 上記(1) において、鋼板の平均結晶粒径d(μm )が鋼板の比抵抗X(μΩ・m)に関して
100X+30≦d≦ 400X+50
を満足することを特徴とする鉄損の低い無方向性電磁鋼板。
【0011】
(3) 上記(1) または(2) において、さらにSb:0. 005〜0.100 mass%を含有する成分組成を有することを特徴とする鉄損の低い無方向性電磁鋼板。
【0012】
(4) Si:1.0 〜4.0 mass%、Al:2.0 mass%以下(ただし、Si+Al≧2.0 mass%)、Mn:0.1 〜1.5 mass%およびCr:0.5 〜3.0 mass%を含み、C:0.005 mass%以下、S:0.0020mass%以下、N:0.0030mass%以下、O:0.0020mass%以下およびZr:0.0010mass%以下に抑制し、残部Feおよび不可避不純物の成分組成を有する無方向性電磁鋼板用スラブに、熱間圧延および冷間圧延、そして熱処理を施して無方向性電磁鋼板を製造するに当り、最終冷間圧延前の平均結晶粒径を110 μm 以上に調整することを特徴とする無方向性電磁鋼板の製造方法。
【0013】
(5) 上記(4) において、無方向性電磁鋼板用スラブが、さらにSb:0. 005〜0.100 mass%を含有する成分組成を有することを特徴とする鉄損の低い無方向性電磁鋼板の製造方法。
【0014】
次に、この発明を導くに到った実験結果について詳しく説明する。
(実験1)
真空溶解により表1に示す成分組成(ZrおよびSbの含有量を種々に変化)に調整した無方向性電磁鋼板用の鋼塊(厚み220 mm)を1150℃に加熱後、熱間圧延により板厚:2.0 mmの熱延板とした。この熱延板を焼鈍する際に熱延焼鈍温度を種々に変化させ、冷間圧延前の結晶粒径を変化させた。その後、冷間圧延を施して板厚0.35mmの冷延板とした後、1000℃で1分間の仕上げ焼鈍を施した。
【0015】
【表1】
Figure 0004288811
【0016】
かくして得られた製品板の集合組織を調査するとともに、圧延方向(以下、L方向と示す)およびL方向と直交する向き(以下、C方向と示す)から30mm×280 mmのエプスタイン試験片を各12枚合計24枚採取してエプスタイン試験にて鉄損を測定した。
【0017】
その測定結果を、最終冷間圧延前の平均結晶粒径と鉄損との関係に整理して図1に示す。ここに、平均結晶粒径とは、圧延方向に平行な断面を観察した際に、観察した領域の面積をその領域に存在する結晶粒の数で除して求まる、結晶粒1個あたりの面積と同一の面積を持つ、円の直径である。
【0018】
同図から明らかなように、Zr含有量を低減した鋼種AおよびCにおいては、冷間圧延前の粒径が110 μm 以上のときに鉄損改善効果が得られることがわかる。さらに、鉄損改善の効果はSbが添加されている鋼種Aの方が鋼種Cより大きいことがわかる。しかしながら、Zr含有量の高い鋼種BおよびDは、Sbの添加および無添加に関わらず、著しい鉄損改善効果が得られないことがわかる。
【0019】
以上の調査結果を踏まえ、上記の実験で得られた最終製品板について、その表面から板厚の1/4の深さの部分の板面と平行な面における{100 }および{111 }各方位のX線反射面強度のランダム集合組織に対する比I(100) およびI(111) について調査した。
【0020】
かくして得られたI(100) およびI(111) について、両者の比I(100) /I(111) と鉄損との関係に整理して図2に示す。図2から明らかなように、図1に結果を示した実験にて低鉄損が得られた鋼板は、そのI(100) /I(111) が1.2 以上にあることが判明した。
【0021】
すなわち、Zr含有量を低減した成分組成を有する無方向性電磁鋼板において、その表面から板厚の1/4の深さの部分でのI(100) /I(111) を1.2 以上の範囲にすることによって、低鉄損化が達成されることが新たに判明したのである。
【0022】
次に、Zrの抑制について、より具体的な調査を行った。
(実験2)
真空溶解により、表2に示すZr含有レベルを種々に変化させた成分組成に調整した無方向性電磁鋼板用の鋼塊(厚み220 mm)を1100℃に加熱後、熱間圧延により板厚:1.8 mmの熱延板とした。この熱延板に1040℃で1分間の熱延板焼鈍を施した。これらの熱延板焼鈍後の熱延板(すなわち、最終冷延前)の平均結晶粒径は153 〜164 μm であった。その後、冷間圧延機によりに板厚0.35mmの冷延板とした後、1050℃で20秒間の仕上げ焼鈍を施した。
【0023】
【表2】
Figure 0004288811
【0024】
かくして得られた製品板よりLおよびC方向から30mm×280 mmのエプスタイン試験片を各12枚合計24枚採取して、エプスタイン試験にて鉄損を測定した。その結果を、Zr含有量と鉄損との関係として、図3に示すように、Zrを15ppm 以下に抑制すれば、実験1で得られたのと同程度の、著しい鉄損の改善効果が得られることがわかる。
【0025】
(実験3)
真空溶解により、表3に示すSiおよびCr含有量を種々に変化させた成分組成に調整した無方向性電磁鋼板用の鋼塊(厚み220 mm)を1080℃に加熱後、熱間圧延により板厚:2.2 mmの熱延板とした。この熱延板に1020℃で1分間の熱延板焼鈍を施した。これらの熱延板焼鈍後の熱延板(すなわち、最終冷延前)の平均結晶粒径は135 〜144 μm であった。その後、冷間圧延によりに板厚0.35mmm の冷延板とした後、仕上焼鈍条件を変化させることにより製品板の結晶粒径を種々に変化させた。
【0026】
【表3】
Figure 0004288811
【0027】
かくして得られた製品板のLおよびC方向から30mm×280 mmのエプスタイン試験片を各12枚合計24枚採取して、エプスタイン試験にて鉄損を測定した。製品板の平均結晶粒径と鉄損との関係を図4に示す。なお、ここでの平均結晶粒径の定義も上述と同様である。
【0028】
図4から、鋼種によって鉄損レベルは異なるが、製品板の平均結晶粒径と鉄損との間に相関のあることがわかった。そこで、各鋼種毎に鉄損の低減される平均結晶粒径の範囲を調査したところ、該範囲は鋼種によって微妙にずれているが、各鋼板における比抵抗をファクターとすることによって、鋼種に関わらず、鉄損の低減が図られる平均結晶粒径の範囲を規定できることを究明した。
【0029】
すなわち、製品板の平均結晶粒径d(μm)を、各鋼板の比抵抗X(μΩ・m)に対して、 100X+30≦d≦ 400X+50の範囲とすることによって、鉄損をより低減することが可能になるのである。
【0030】
以上の実験から、Zrの含有を抑制した上で、まず製品板のI (100)/I (111)を1.20以上の範囲に規制すること、さらには製品板の平均結晶粒径を比抵抗との関係で規制すること、並びにSbを添加すること、によって、鉄損の低減が有利に実現することが判明した。これらの規制によって、鉄損を低減する効果が得られる理由については必ずしも明らかではないが、おおよそ以下のような理由によるものと考えられる。
【0031】
従来、Zrは炭窒化物を生成して粒成長性を阻害する元素として知られているが、Zrレベルの高い素材は低Zrレベルの素材に比べて、冷間圧延前の粒径が同一でもI (100)/I (111)が低くなっている。これはZrが{111 }方位の粒の生成を促進し、{100 }方位の粒を抑制することを示唆している。すなわち、Zrは{111 }の粒の核生成サイトとなり、磁性を劣化させる要因となるのである。従って、Zrの含有を抑制することによって、低鉄損化が達成されるのである。
【0032】
一方、Sbは粒界や析出物の周辺等に偏析する性質を持っており、Zrの炭窒化物の周りに偏析することで磁性に不利な{111 }の核生成を抑制するため、Zrレベルが低いときには著しい相乗効果が得られる。しかし、Zrレベルが高くなるに伴い、粒内の微細なZrの炭窒化物が増加すると、もはや全てのZr析出物の周りにSbが偏析することができず、Sbの効果が得られないのである。
【0033】
次に、I (100)/I (111)が1.20以上となると磁気特性が改善される理由については、以下のことが考えられる。
すなわち、{111 }方位粒が磁気特性を阻害し、{100 }方位粒が磁気特性の向上に寄与することはよく知られている。従って、{111 }方位粒が{100 }方位粒に比べて所定の比率以上存在すると、{111 }方位粒の悪影響が顕著となり、{100 }方位粒の集合組織改善効果が功を奏さなくなる。そして、I (100)/I (111)≧1.20を満足する比率にて、{100 }および{111 }方位粒が存在する場合は、{100 }方位粒の集合組織改善効果が顕著となり、磁気特性が改善されるのである。
【0034】
ところが、製品板のI (100)/I (111)は途中工程条件、特に冷延前粒径を制御することにより、ある程度変化するが、Zrの含有を抑制した上で上記の条件を制御することにより、はじめてI (100)/I (111)≧1.20が達成されることが判明した結果、磁気特性を格段に向上することが可能になった。
【0035】
なお、集合組織については、鋼板の板厚方向の集合組織を最も良く代表するという点から、表面から板厚の1/4の深さ位置の集合組織を規定した。
【0036】
さらに、製品板の平均結晶粒径dを 100X+30≦d≦ 400X+50の範囲とすることによって、鉄損がより低減されることについては、次の理由が考えられる。
すなわち、渦電流損は粒径の拡大に伴い増加する反面、履歴損は粒径の拡大に伴い減少することから、鉄損の低減に最も寄与する最適な粒径が存在することになる。そして、鋼板の比抵抗が高まると、履歴損は一定であるが渦電流損は減少するため、相対的に全鉄損を占める渦電流損の割合が減少する結果、最適粒径は大きくなる。この鋼板の比抵抗について最適粒径をまとめると、上記した式の関係になるのである。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明の各限定理由について説明する。まず、成分組成について述べる。
C:0.005 mass%以下
Cは、磁気特性の面からは有害な成分であり、極力低減するのが望ましいため、その含有量は0.005 mass%以下とする。従って、下限は特に規定する必要はないが、経済上の理由からは下限を0.0001mass%にすることが望ましい。
【0038】
Si:1.0 〜4.0 mass%(ただし、Si+Al≧2.0 mass%)
Siは、電気抵抗を高めて鉄損を改善するのに有用な添加元素であり、フェライト生成元素(α-former )であることが知られている。この発明において最終冷間圧延前の粒径を110 μm 以上にする必要があるから、高温でもα単相であること、つまりγ変態しないことが好ましい。このため、同じくα-former であるAlと併せて2mass%以上の添加が必要である。ただし、Siの含有量が1.0 mass%未満の場合は磁気特性が劣化するため、下限を1.0 mass%とする。一方、Si含有量が4.0 mass%を超えると、硬度が上昇してユーザーでの打ち抜き性を劣化させるため、上限は4.0 mass%とする。
【0039】
Al:2.0 mass%以下
Alは、鋼の脱酸等に使用するほか、Siと同様に電気抵抗を高めて、鉄損を向上させる上でも有用な成分であるが、含有量が2.0 mass%を超えるとSiの場合と同様に硬度上昇による加工性の劣化を招くため、その含有量の上限を2.0 mass%とする。なお、下限については上述したように、Siと併せて2mass%以上の添加が必要である。
【0040】
Mn:0.1 〜1.5 mass%
Mnは、スラブ加熱時の固溶S量を低減する効果が有り、またSに起因した熱間脆性を抑制するために添加されるが、含有量が0.1 mass%未満ではその効果に乏しく、一方1.5 mass%を超えると磁気特性の劣化を招くため、その含有量は0.1〜1.5 mass%の範囲とする。
【0041】
Cr:0.5 〜3.0 mass%
Crは、SiやAlと同様に電気抵抗を高めて、鉄損を向上させる上でも有用な成分であり、さらにSiやAlと異なり、ほとんど硬度上昇をもたらすことがない特徴がある。この電気抵抗の向上は0.5 mass%未満で効果が小さく、一方3.0 mass%をこえると磁気特性の劣化を招くため、0.5 〜3.0 mass%の範囲とする。
【0042】
S:0.0020mass%以下
Sは、不純物成分として抑制する上で特に重要であり、硫化物を形成して磁性を劣化させるため、その含有量を0.0020mass%以下に抑制することが必要である。
【0043】
N:0.0030mass%以下
Nは、粗大介在物の核となる窒化物を形成し、また微細な介在物として鋼中にも存在するものであり、その含有量が0.0030mass%を超えると鉄損の劣化を招くことになるから、0.0030mass%以下に制限する。
【0044】
O:0.0020mass%以下
Oは、その含有量の低減が鉄損改善に直接結びつく元素であり、特に0.0020mass%を超えるOを含んでいると鉄損の劣化を招くため、その含有量は0.0020mass%以下とする必要がある。
【0045】
Zr:0.0010mass%以下
Zrは、主に炭化物および窒化物を形成し磁気特性を劣化させる元素である。特に、この発明では、Sb添加と冷間圧延前の粒径粗大化による効果を得るために、その上限を0.0010mass%とする必要がある。このZrの混入を防止するためには、製鋼工程において溶鋼やスラグと接触する耐火物レンガにZr系のレンガを用いないことが有利である。
【0046】
以上、基本成分について説明したが、この発明ではさらに以下の成分を含有させることができる。
Pは、鉄損改善に有効であるが、0.15mass%を超えると冷延性が著しく劣化するため、0.005 〜0.15mass%の範囲で添加することが好ましい。
その他の成分として、B,Ni, Cu, Cr, Sn, Bi, Ca, GeおよびREM 等を必要に応じて添加することができる。
【0047】
一方、炭化物および窒化物を形成する元素として、Ti, NbおよびVが挙げられ、磁気特性の劣化を抑制するためには何れも含有量を0.005 mass%以下に抑制することが望ましい。
【0048】
次に、製造プロセスについて説明する。
すなわち、上記した成分組成に成る無方向性電磁鋼板用スラブを、例えば通常の連続鋳造にて製造し、次いで熱間圧延、そして必要に応じて熱延板焼鈍を行ってから、1回または中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延を施す。
冷間圧延1回法の場合は、最終冷間圧延前の平均結晶粒径を調整するために、熱延板焼鈍を実施することができ、その方法は従来から知られている連続ラインによる焼鈍でも箱焼鈍でも、該粒径を110 μm 以上に調整できれば問題ない。また、熱間圧延時に仕上温度や巻取り温度の高温化やコイルの自己焼鈍等により粒径を110 μm 以上にすることが可能であれば、熱延板焼鈍は必ずしも必要でない。
【0049】
一方、冷間圧延2回法の場合は、1回目の冷間圧延の後の中間焼鈍により、最終冷間圧延前の結晶粒径を調整する。この中間焼鈍についても、連続ラインによる焼鈍でも箱焼鈍でも、最終冷延前粒径を110 μm 以上に調整できれば問題ない。
【0050】
冷間圧延圧下率については特に定めるものではないが、1回法も2回法の場合も最終冷延圧下率を40〜85%程度とすることが好ましい。
【0051】
その後の最終焼鈍については、製品板の粒径d(μm )を、鋼板の比抵抗X(μΩ・m)で定まる 100X+30≦d≦ 400X+50の範囲に制御できれば、連続ラインによる焼鈍および箱焼鈍等の公知の焼鈍方法いずれもが適用可能である。
【0052】
なお、ユーザで最終焼鈍を施す、いわゆるセミプロ製品の場合は、ユーザでの最終焼鈍後の粒径が上述の範囲であれば、この発明で所期した効果が得られる。一方、成品のまま使用することができる、いわゆるフルプロ製品の場合も、ユーザで焼鈍して使用することは打ち抜き等の加工歪を除去できるため、鉄損特性に有利に作用する。
【0053】
その他の製鋼、熱間圧延、冷間圧延および最終仕上焼鈍プロセスについては、公知の無方向性電磁鋼板の製造方法が適用できる。
ちなみに、特開平8−97023号公報には、この発明と同じくSbを添加した鋼に熱延板焼鈍を施した上で、鉄損の改善を図る技術が開示されているが、この発明で見出した、冷間圧延前粒径やZr含有量に関する規制が鉄損特性向上に大きな影響を及ぼすことについては全く記載されていない。すなわち、該公報に開示の技術は、最終仕上げ焼鈍時の酸化抑制により低鉄損を実現するものであり、この発明のように集合組織制御により低鉄損を実現するものとは全く思想を異にする。
【0054】
一方、特開平8−134606号公報には、I (100)/I (111)を評価指標とすることが記載されているが、ユーザーで実施される歪み取り焼鈍後の磁束密度を向上させることを目的としており、この発明とは全く目的が異なる。しかも、該公報に記載されたI (100)/I (111)は、この発明と異なる範囲であり、当然のことながら、この発明で認められたような、格段の鉄損改善効果は得られていない。
【0055】
【実施例】
転炉吹錬により、表4に示す成分組成に調整した溶鋼を、それぞれ連続鋳造により厚さ220 mmのスラブとした。これらのスラブは熱間圧延により、すべて1.8mmの熱延板としたのち、コイルに巻き取った。次いで、熱延板に必要に応じて熱延板焼鈍を施し、1回の冷間圧延により最終仕上げ厚さ0.35mmとしたのち、最終仕上焼鈍を施した。かくして得られた鋼板よりLおよびC方向から30mm×280 mmのエプスタイン試験片を各12枚合計24枚採取して、エプスタイン試験にて鉄損を測定した。
【0056】
各焼鈍条件、冷間圧延前の平均結晶粒径、製品板の平均結晶粒径、製品板のX線反射面強度および鉄損の測定結果を、表5にまとめて示す。
【0057】
【表4】
Figure 0004288811
【0058】
【表5】
Figure 0004288811
【0059】
【発明の効果】
この発明によって、無方向性電磁鋼板の低鉄損化をより一層促進する方途が与えられるから、いわゆる低級品は勿論高級品についても、その鉄損レベルを格段に向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 最終冷間圧延前の粒径と鉄損との関係を示す図である。
【図2】 I (100)/I (111)と鉄損との関係を示す図である。
【図3】 Zr含有量と鉄損との関係を示す図である。
【図4】 製品板の粒径と鉄損との関係を示す図である。

Claims (5)

  1. C:0.005 mass%以下、Si:1.0 〜4.0 mass%、Al:2.0 mass%以下(ただし、Si+Al≧2.0 mass%)、Mn:0.1 〜1.5 mass%、Cr:0.5 〜3.0mass%、S:0.0020mass%以下、N:0.0030mass%以下、O:0.0020mass%以下およびZr:0.0010mass%以下を含有し、残部Feおよび不可避不純物の成分組成を有する無方向性電磁鋼板であって、該鋼板の表面から板厚の1/4の深さの面における{100 }および{111 }各方位のX線反射面強度のランダム集合組織に対する比I(100) およびI(111) がI(100) /I(111)≧1.20の関係を満足することを特徴とする無方向性電磁鋼板。
  2. 請求項1において、鋼板の平均結晶粒径d(μm )が鋼板の比抵抗X(μΩ・m)に関して100X+30≦d≦ 400X+50を満足することを特徴とする無方向性電磁鋼板。
  3. 請求項1または2において、さらにSb:0. 005〜0.100 mass%を含有する成分組成を有することを特徴とする無方向性電磁鋼板。
  4. Si:1.0 〜4.0 mass%、Al:2.0 mass%以下(ただし、Si+Al≧2.0 mass%)、Mn:0.1 〜1.5 mass%およびCr:0.5 〜3.0 mass%を含み、C:0.005 mass%以下、S:0.0020mass%以下、N:0.0030mass%以下、O:0.0020mass%以下およびZr:0.0010mass%以下に抑制し、残部Feおよび不可避不純物の成分組成を有する無方向性電磁鋼板用スラブに、熱間圧延および冷間圧延、そして熱処理を施して無方向性電磁鋼板を製造するに当り、最終冷間圧延前の平均結晶粒径を110 μm 以上に調整することを特徴とする無方向性電磁鋼板の製造方法。
  5. 請求項4において、無方向性電磁鋼板用スラブが、さらにSb:0.005〜0.100wt %を含有する成分組成を有することを特徴とする無方向性電磁鋼板の製造方法。
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