JPH09296042A - ポリアリーレンスルフィドの製造方法 - Google Patents

ポリアリーレンスルフィドの製造方法

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JPH09296042A
JPH09296042A JP8109217A JP10921796A JPH09296042A JP H09296042 A JPH09296042 A JP H09296042A JP 8109217 A JP8109217 A JP 8109217A JP 10921796 A JP10921796 A JP 10921796A JP H09296042 A JPH09296042 A JP H09296042A
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pas
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隆広 川端
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  • Polymers With Sulfur, Phosphorus Or Metals In The Main Chain (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 微粒子が少なく、濾過性に優れる等の操作性
の向上したポリアリーレンスルフィドポリマーの製造方
法を提供する。 【解決手段】 有機極性溶媒中で、ジハロ芳香族化合物
とスルフィド化剤とを反応させるポリアリーレンスルフ
ィドの製造において、反応終了後、反応終了温度より低
く、且つポリマーが析出する温度より高い温度で反応ス
ラリーより可能な範囲で極力の水を除去した後、冷却し
てポリマーを析出させることを特徴とするポリアリーレ
ンスルフィドの製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリフェニレンス
ルフィド(以下PPSと略称する)に代表されるポリア
リーレンスルフィド(以下PASと略称する)の製造方
法に関するものである。さらに具体的には、本発明は、
反応終了後、PASが析出する温度より高く、かつ反応
終了温度より低い温度で水を除去することにより、微粒
子が少なく、濾過性の向上等の操作の簡易化を図ること
ができるPASを比較的簡便な装置で製造するための方
法を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】PPSに代表されるPASの製造方法と
しては、従来工業的に広く用いられている(1)米国特
許第3,354,129号公報等に開示されているアル
カリ金属硫化物、特に結晶水を有する硫化ナトリウム
(以下含水硫化ナトリウムと略称する)を極性溶媒中で
加熱して該含水硫化ナトリウムが含有する水を除去し、
そこへジクロルベンゼンを加えて加熱重合させる方法が
ある。しかしこの方法では、PASは1ミクロン以下の
微粒子を多量に含む粉末として得られ、この1ミクロン
以下の微粒子が濾過性を低くする、あるいは目詰まりを
起こす等の問題があった。そこで、PASの粒径を制御
することを目的としていろいろな方法が提言されてい
る。
【0003】例えば、(2)特公平1−25493号公
報には、重合終了後にPASが溶融相をなす最低温度よ
り高い温度で相分離を起こさせるように水を加え、その
後冷却することを特徴とする粒状PASの回収方法が開
示されている。しかしながら、この方法では確かに大部
分のPASは水を加えない場合に比べて粒径の大きな粒
子になるが、1ミクロン以下の微粒子のPASも含まれ
る。
【0004】また、(3)特開昭59−49232号公
報には、重合終了後に重合温度から240℃以下になる
まで、50℃/分より遅い速度で徐冷することにより微
結晶の大きさを60オングストローム以上にすることを
特徴とするPASの製造方法が開示されている。しかし
ながら、該発明のように徐冷したとしても、1ミクロン
以下の微粒子のPASは減少しない。
【0005】また、(4)特開平6−145354号公
報には、PASの重合反応操作において、反応系の降温
を開始する時点より早くとも1時間以降から晶析終了時
点の間に、反応気相部分を冷却または加熱することを特
徴とするPASの粒径制御方法が開示されている。しか
しながらこの方法では、確かに粒径はある程度制御され
るが、1ミクロン以下の微粒子のPASを減少させるこ
とは困難である。
【0006】また、(5)特開昭63−132941号
公報には、反応混合物からのPASの回収法において、
重合終了後の該混合物を蒸留脱水後、PASとアルカリ
金属ハライドの貧溶媒で極性有機溶媒に可溶な溶媒を加
えることで得たPASとアルカリ金属ハライドより成る
スラリーを固液分離し、得られたケーキを該添加貧溶媒
洗浄を行った後、このケーキを乾燥し、更に水を加えて
金属ハライドを溶解洗浄し、固液分離することを特徴と
するPASの回収方法が開示されている。確かにこの方
法ではPAS中の電解質イオン含有量を低減化できる
が、蒸留脱水する温度及びPASを析出させる条件をコ
ントロールしていないためPASの粒径が制御できず、
1ミクロン以下の微粒子のPASを減少させることは困
難である。
【0007】また、(6)特開昭60−104130号
公報、特開平2−185527号公報には、芳香族ジハ
ロゲン化物(芳香族トリ−またはテトラハロゲン化物を
少量含んでいても良い)及び有機溶媒の混合物に、15
0℃以上で含水アルカリ金属スルフィドを水が反応混合
物から除去され得る速度で導入し、そして実質的に無水
の状態の系内で重合反応を行うことを特徴とするPAS
の製造方法が開示されている。確かにこの方法によって
重合反応を無水の状態で行うことは可能であり、そのた
め微粒子のPASを減らすことは可能ではあるが、しか
しながらこの方法のような反応中に水を除去する方法で
は、水と共にモノマーも系外にでるため、反応の制御が
難しく、所望の物性、例えば所望の分子量、結晶性のP
ASを得難い等の問題があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の従来の
製法の欠点を解決して、微粒子が少なく、濾過性の向上
等の操作の簡易化を図ることができるPASを比較的簡
便な装置で製造するための方法を提供することを目的と
する。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記目的を
達成すべく鋭意検討した結果、微粒子が少ないPASを
製造するためには、ポリマー析出時の重合系内の水分量
を低減化することが重要であり、反応終了後、反応終了
温度より低く、且つポリマーが析出する温度より高い温
度で反応スラリーより水を除去した後、冷却してポリマ
ーを析出させることにより微粒子の少ないPASが製造
できることを見い出し、本発明を完成するにいたった。
【0010】即ち本発明は、有機極性溶媒中で、ジハロ
芳香族化合物とスルフィド化剤とを反応させるPASの
製造方法において、反応終了後、反応終了温度より低
く、且つポリマーが析出する温度より高い温度で反応ス
ラリーより水を除去した後、冷却してポリアリーレンス
ルフィドポリマーを析出させることを特徴とする。
【0011】従来の反応中に水を除去する場合には、反
応の制御が難しく所望の物性を得ることは困難であった
が、本発明の方法では、反応後に水を除去するため、反
応制御は容易であり、所望の物性のポリマーを得ること
が可能である。即ち、本発明はポリマー物性の制御性が
良く、微粒子を減らすことができる、従来の方法とは全
く異なった、優れた方法である。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明において「スルフィド化
剤」、「ジハロ芳香族化合物」、及び「溶媒」という用
語は、言及されている各化合物ないし物質がそれぞれ定
義された範囲内で混合物である場合を包含する。例え
ば、「ジハロ芳香族化合物」が複数種の化合物からなっ
ていて、生成PASが共重合体である場合を、本発明は
1つの具体例として包含するものである。
【0013】(重合体の製造)本発明によるPASの製
造方法は、スルフィド化剤によるジハロ芳香族化合物の
脱ハロゲン化/硫化反応に基くものである。
【0014】(スルフィド化剤)本発明において用いら
れるスルフィド化剤としては、例えばアルカリ金属硫化
物、アルカリ金属水硫化物、あるいはこれらの混合物等
がある。
【0015】前記アルカリ金属硫化物としては、例え
ば、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫
化ルビジウム、硫化セシウム等が挙げられるが、これら
はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して
用いてもよい。また、上記硫化アルカリ金属は無水物、
水和物、水溶液のいずれを用いてもよい。上記硫化アル
カリ金属の中では硫化ナトリウムと硫化カリウムが好ま
しく、特に硫化ナトリウムが好ましい。
【0016】これら硫化アルカリ金属は、例えば水硫化
アルカリ金属とアルカリ金属塩基、硫化水素とアルカリ
金属塩基とを反応させることによっても得られるが、反
応系外で調製されたものを用いてもかまわない。
【0017】アルカリ金属水硫化物としては、例えば水
硫化リチウム、水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水
硫化ルビジウム、水硫化セシウム等が挙げられるが、こ
れらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合
して用いてもよい。また、上記水硫化アルカリ金属は無
水物、水和物、水溶液のいずれを用いてもよい。上記水
硫化アルカリ金属の中では水硫化ナトリウムと水硫化カ
リウムが好ましく、特に水硫化ナトリウムが好ましい。
【0018】これら水硫化アルカリ金属は、例えば硫化
水素とアルカリ金属塩基とを反応させることによっても
得られるが、反応系外で調製された物を用いてもかまわ
ない。
【0019】アルカリ金属塩基としては、例えば水酸化
アルカリ金属があげられる。水酸化アルカリ金属として
は、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化
カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等が挙げ
られるが、これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2
種以上を混合して用いてもよい。上記水酸化アルカリ金
属化合物の中では水酸化リチウムと水酸化ナトリウムお
よび水酸化カリウムが好ましく、特に水酸化ナトリウム
が好ましい。
【0020】なお上記のいずれの場合にも、硫化アルカ
リ金属、水硫化アルカリ金属中に微量存在する不純物を
除去するためにアルカリ金属塩基を少量過剰に加えても
さしつかえない。
【0021】上記スルフィド化剤は無水物でもかまわな
いが、入手の容易性と反応の制御性から等から含水物が
好ましく、無水物を使用する場合には、通常、水を加え
て用いられる。
【0022】(ジハロ芳香族化合物)芳香族スルフィド
重合体(ポリアリーレンスルフィド、以下、PAS)の
骨格を形成すべき単量体に相当するジハロ芳香族化合物
は、芳香族核と該核上の2ケのハロ置換基とを有するも
のであって、そしてアルカリ金属硫化物等のスルフィド
化剤による脱ハロゲン化/硫化反応を介して重合体化し
うるものが、任意に使用できる。従って、芳香族核は芳
香族炭化水素のみからなる場合の外に、この脱ハロゲン
化/硫化反応を阻害しない各種の置換基を有するもので
ありうる。
【0023】具体的には、本発明において使用されるジ
ハロ芳香族化合物の例には、例えば下式(A)〜(D)
で示される化合物が包含される。
【0024】
【化1】
【0025】ここで各置換基は下記の通りである。 X:Cl、Br、I または F。特に、Cl及びBrよ
り成る群から選ばれた少なくとも1種のハロゲン。
【0026】Y:−R、−OR、−COOR、−COO
Na、−CN及び−NO2(Rは、H、アルキル基、シ
クロアルキル基、アリール基及びアラルキル基より成る
群から選ばれたもの)より成る群から選ばれたもの。こ
こで、アルキル基又はアルキル基部分は炭素数1〜18
程度、アリール基またはアリール基部分は炭素数6〜1
8程度のものが挙げられる。
【0027】
【化2】
【0028】(R'及びR''は、H、アルキル基、シク
ロアルキル基、アリール基及びアラルキル基より成る群
から選ばれたもの)より成る群から選ばれたもの。ここ
でアルキル基またはアルキル基部分及びアリール基また
はアリール基部分は上記と同様に定義される。
【0029】式(A)中でm及びnは、それぞれm=
2、0≦n≦4の整数。式(B)中でa及びbは、それ
ぞれa=2、0≦b≦6の整数。式(C)中でc、d、
e及びfは、それぞれ0≦c≦2、0≦d≦2、c+d
=2、0≦e、f≦2の整数。
【0030】式(D)中でg、h、i及びjは、それぞ
れ0≦g≦2、0≦h≦2、g+h=2、0≦i、j≦
2の整数。
【0031】上記一般式のジハロゲン置換基芳香族化合
物の例としては、例えば、次のようなものがある。
【0032】p−ジハロベンゼン、m−ジハロベンゼ
ン、o−ジハロベンゼン、2,5−ジハロトルエン、
1,4−ジハロナフタリン、1−メトキシ−2,5−ジ
ハロベンゼン、4,4’−ジハロビフェニル、3,5−
ジハロ安息香酸、2,4−ジハロ安息香酸、2,5−ジ
ハロニトロベンゼン、2,4−ジハロニトロベンゼン、
2,4−ジハロアニソール、p,p’−ジハロジフェニ
ルエーテル、4,4’−ジハロベンゾフェノン、4,
4’−ジハロジフェニルスルホン、4,4’−ジハロジ
フェニルスルホキシド、4,4’−ジハロジフェニルス
ルフィド等であり、なかでも、p−ジハロベンゼン、m
−ジハロベンゼン、4,4’−ジハロベンゾフェノンお
よび4,4’−ジハロジフェニルスルホンが好ましく、
その中でもp−ジクロルベンゼン、m−ジクロルベンゼ
ン、4,4’−ジクロルベンゾフェノンおよび4,4’
−ジクロルジフェニルスルホンは特に好適に使用され
る。
【0033】ジハロ芳香族化合物の適当な選択組合せに
よって2種以上の異なる反応単位を含む共重合体を得る
ことができるのは、前記の通りである。p−ジクロルベ
ンゼンと4,4’−ジクロルベンゾフェノンもしくは
4,4’−ジクロルフェニルスルホンとを組み合わせて
使用すれば、例えば、次の単位を含んだ共重合物を得る
ことができる。
【0034】
【化3】
【0035】とを含んだ共重合物。
【0036】本発明の製造方法において、PASとして
ポリフェニレンスルフイド(以下、PPS)を得るに当
たっては、上記した成分を共重合することは可能ではあ
るが、p−ジハロベンゼンをジハロ芳香族化合物中70
モル%以上、好ましくは90モル%以上、更に好ましく
は95モル%以上用いて重合すると種々の物性に優れた
PPSが得られるので好ましい。
【0037】本発明で使用するジハロ芳香族化合物の使
用量は、使用するスルフィド化剤中の硫黄源1モル当た
り0.8〜1.3モルの範囲が望ましく、特に0.9〜
1.10モルの範囲が物性の優れたPASポリマーを得
るのに好ましい。
【0038】なお、本発明によるPASは、上記ジハロ
芳香族化合物の重合体であるが、生成重合体の末端を形
成させるため、あるいは重合反応ないし分子量を調節す
るためにモノハロ化合物(必ずしも芳香族化合物でなく
ともよい)を併用することも、分岐または架橋重合体を
形成させるためにトリハロ以上のポリハロ化合物(必ず
しも芳香族化合物でなくともよい)を併用することも可
能である。
【0039】これらのモノハロまたはポリハロ化合物が
芳香族化合物である場合の具体例としては、ジハロ芳香
族化合物の上記具体例のモノハロ誘導体またはポリハロ
誘導体が挙げられる。
【0040】上記モノハロ誘導体またはポリハロ誘導体
は、任意の目的に使用できるが、具体的には、例えばジ
ハロベンゼンに若干量のトリクロルベンゼンを組み合わ
せて使用すれば、分岐を持ったフェニレンスルフィド重
合体を得ることができる。
【0041】また、モノハロまたはポリハロ化合物の使
用量は、特に制限されるものではなく、目的あるいは反
応条件によって適宜調節すればよいが、ジハロ芳香族化
合物1モルに対して好ましくは0.1モル以下、更に好
ましくは0.05モル以下である。
【0042】(溶媒及び水)本発明の重合反応に使用す
る有機極性溶媒は、公知慣用のものが使用できるが、通
常は活性水素を有しない有機極性溶媒、すなわちアプロ
チックタイプの有機極性溶媒である。
【0043】この溶媒は、本発明重合反応を不当に阻害
するものであってはならない。また、この溶媒は、少な
くとも原料であるジハロ芳香族化合物及びS2-を与える
スルフィド化剤を反応に必要な濃度に溶解することがで
きる程度の溶解能を持つものであるのが好ましい。従っ
て、この溶媒は、窒素原子、酸素原子および/または硫
黄原子を有する極性溶媒であることが普通である。
【0044】更に、この溶媒は、原料ジハロ芳香族化合
物と同様な脱ハロゲン化/硫化反応に関与しうるもので
ないことが望ましい。従って、例えばハロ芳香族炭化水
素ではないことが望ましい。
【0045】また、本発明の製造方法から明らかなよう
に、溶媒としては、水より沸点の高いものが用いられ
る。このような溶媒の具体的例を挙げれば、(1)アミ
ド、たとえば、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMP
A)、N−メチルピロリドン(NMP)、N−シクロヘ
キシルピロリドン(NCP)、N−メチルカプロラクタ
ム、テトラメチル尿素(TMU)、ジメチルホルムアミ
ド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、その
他、(2)エーテル化ポリエチレングリコールたとえば
ポリエチレングリコールジアルキルエーテル(重合度は
2000程度まで、アルキル基はC1〜C20程度)な
ど、(3)スルホキシド、たとえばテトラメチレンスル
ホキシド、ジメチルスルホキシド(DMSO)その他、
がある。前記各種の溶媒の中でも、N−メチルカプロラ
クタムおよびNMPは、化学的安定性が高いので、特に
好ましい。
【0046】溶媒の使用量は、使用する溶媒の種類によ
っても異なるが均一な重合反応が可能な反応系の粘度を
保持すること、また、ある程度の生産性を維持できる量
であればよく、重合に用いるスルフィド化剤中の硫黄源
1モル当り1.0〜6モルの範囲が好ましい。また、生
産性を更に考慮すると、重合に用いるスルフィド化剤中
の硫黄源1モル当り1.2〜5.0モルの範囲が好まし
く、また、更に好ましい使用溶媒量は重合に用いるスル
フィド化剤中の硫黄源1モル当り1.5〜4モルであ
る。
【0047】重合系内の水分量、あるいはスルフィド化
剤の含水量を調整するための水は、反応を阻害するもの
が含まれていなければ良く、そのため蒸留水、イオン交
換水等、反応を阻害するアニオンやカチオン等を除いた
水が好ましい。
【0048】一般に、本発明の重合反応中に存在させる
べき水分は、加水分解反応などの併発を回避させるため
に、なるべく少ない方がよい。しかしながら、使用する
スルフィド化剤が水和物等である場合には、スルフィド
化剤を有機極性溶媒中で加熱脱水してもスルフィド化剤
1モルに対して1モル以上は系内に残存してしまい、系
内の水分を減らすことは困難であり、系内の水分量はス
ルフィド化剤1モル当たり1〜2モル、好ましくは1〜
1.5モルである。
【0049】スルフィド化剤として無水物を用いると、
水分量を任意にコントロールできるが、その場合の系内
水分量は、スルフィド化剤1モル当たり0.05〜2.
0モル、好ましくは0.07〜1.5モル、更に好まし
くは0.1〜1.0モルである。
【0050】(重合)本発明による重合は、必要に応じ
て脱水操作を行った後、例えば200〜300℃、好ま
しくは210〜280℃の温度に加熱して0.1〜40
時間、好ましくは0.5〜20時間、更に好ましくは1
〜10時間加熱して行うことが好ましい。この範囲内で
あると反応の進行がスムーズである。
【0051】すなわち、この反応温度が200℃未満で
は反応速度が遅く、また反応が不均一になる可能性があ
り、一方、300℃を超えると生成ポリマーあるいは溶
媒の分解等の副反応が起こりやすい。
【0052】また、反応時間は使用した原料の種類や
量、あるいは反応温度に依存するので一概に規定できな
いが、0.1時間未満では未反応成分の量が増大したり
生成するポリマーが低分子量になる可能性が高く、また
40時間以上では生産性が悪く好ましくない。
【0053】なお、重合終了時の温度は使用した原料の
種類や量等に依存するので一概に規定できないが、本発
明の主旨からも明らかなように、PASが実質的に溶解
し得る温度以上でなければならない。これらを考慮する
と、通常220℃以上、好ましくは230℃以上、更に
好ましくは240℃以上である。
【0054】本発明の重合反応においては、接液部がチ
タンあるいはクロムあるいはジルコニウム等でできた重
合缶を用い、通常、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活
性ガス雰囲気下で行なうことが好ましく、特に、経済性
及び取扱いの容易さの面から窒素が好ましい。
【0055】反応圧力については、使用した原料及び溶
媒の種類や量、あるいは反応温度等に依存するので一概
に規定できないので、特に制限はない。
【0056】また、反応液の調整及び共重合体の生成反
応は、一定温度で行なう1段反応でもよいし、段階的に
温度を上げていく多段階反応でもよいし、あるいは連続
的に温度を変化させていく形式の反応でもかまはない。
【0057】(後処理)本発明においては、この後処理
に最大の特徴がある。本発明において、重合体(ポリマ
ー)の回収は、まず、反応終了後、反応終了温度より低
く、かつポリマーが析出しない温度で、まず反応混合物
(反応スラリー)より、水を除去する。
【0058】この水を除去する温度は、使用した原料及
び溶媒の種類や量、あるいは反応条件により最適値が異
なるが、反応終了温度より低く、かつポリマーが析出し
ない温度でなければならない。反応終了温度以上では、
重合反応あるいは分解等の副反応が進行してしまい好ま
しくないし、ポリマーが析出する温度以下では、本特許
の目的であるポリマー微粒子の低減効果が達成できな
い。
【0059】すなわち、ここで水を除去する温度は、ポ
リマーが析出する温度以上で、かつ反応終了温度以下、
好ましくは反応終了温度より10℃以上低い温度であ
る。
【0060】また水を除去する量は、反応混合物中よ
り、できるだけ水を除去する方が好ましいが、有機極性
溶媒に対して2重量%以下、好ましくは1重量%以下の
水分量となるように水除去する。勿論、有機極性溶媒に
対して0重量%の場合も包含する。
【0061】この水を除去する際、もちろん水のみを除
去してもかまわないが、水と共に未反応のジハロ芳香族
化合物及び有機極性溶媒を反応混合物を除去してもかま
わない。但し、水と共に有機極性溶媒を除去する場合、
除去し過ぎるとPASが溶解し難くなったり、あるいは
系の粘度が高くなって操作性が悪くなるといった問題も
ある。
【0062】水と共に有機極性溶媒を除去する量は、反
応に使用した溶媒の種類あるいは量によって異なるので
一概に規定できないが、除去する量は反応時の有機極性
溶媒量に対して70重量%以下、好ましくは50重量%
以下、更に好ましくは30重量%以下である。
【0063】このようにして水を除去した後、該混合物
をポリマーが析出する温度以下まで冷却する。冷却は段
階的に温度を下げていく多段冷却でも良いし、あるいは
連続的に温度を下げていく形式の冷却でも良い。
【0064】ここでの冷却開始からポリマー析出終了ま
でに要する時間は、急冷、徐々に冷却、或いは放冷のい
ずれでもよく、冷却開始温度あるいは該混合物中の各化
合物の量によっても異なるので一概に規定できないが、
通常0.01〜20hr、好ましくは0.05〜10h
r、更に好ましくは0.1〜5hrの範囲である。0.
1hr以下では温度制御等が困難であるし、20hr以
上だと生産性が悪くなるので好ましくない。この冷却
は、有機極性溶媒を主体とする液媒体から、ポリマーの
大部分或いは全てが析出するまで行われる。
【0065】析出したポリマーは、濾別などにより液媒
体と分離することにより、固体として得ることができ
る。ポリマー析出後の反応混合物からの重合体の回収
は、例えば該混合物をそのまま、あるいは反応溶媒(も
しくはそれと同等の低分子重合体の溶解度を有する溶
媒)を加えて攪拌した後、ろ別して低分子量重合体を除
いた後、水、アセトン、メチルエチルケトン、アルコー
ル類などの溶媒で1回または2回以上洗浄し、その後そ
のままあるいは中和、水洗、ろ別および乾燥をすること
によっても行うことができる。
【0066】また、該混合物をそのまま、あるいは酸ま
たは塩基を加えた後、減圧下または常圧下で加熱して溶
媒だけを留去し、ついで缶残固形物を水、アセトン、メ
チルエチルケトン、アルコール類などの溶媒で1回また
は2回以上洗浄し、それから中和、水洗、ろ別および乾
燥をすることによって行うことができる。
【0067】また、別法としては、該混合物に水、アセ
トン、メチルエチルケトン、アルコール類、エーテル
類、ハロゲン化炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族炭化
水素などの溶媒(使用した重合溶媒に可溶であり、かつ
少なくとも生成重合体に対しては貧溶媒であるもの)を
沈降剤をして添加して重合体、無機塩等の固体状生成物
を沈降させ、それを濾別、洗浄及び乾燥することによっ
て行うこともできる。
【0068】これらの場合の「洗浄」は、抽出の形で実
施することもできる。乾燥は、単離した重合体を実質的
に水等の溶媒が蒸発する温度に加熱して行う。乾燥は真
空下で行なってもよいし、空気中あるいは窒素のような
不活性ガス雰囲気下で行なってもよい。上記したような
各洗浄は、繰り返して行うこともできる。
【0069】特に本発明の方法でポリマーを析出させる
と、1ミクロン以下の微粒子が非常に少ないため、濾過
性に優れる。従って、上記の該混合物をそのまま、ある
いは反応溶媒(もしくはそれと同等の低分子重合体の溶
解度を有する溶媒)を加えて攪拌した後、濾別して低分
子量重合体を除いた後、水、アセトン、メチルエチルケ
トン、アルコール類などの溶媒で1回または2回以上洗
浄し、その後そのままあるいは中和、水洗、ろ別、乾燥
という方法を採用するのが、ポリマー物性の面からも好
ましい。
【0070】得られた重合体はそのまま各種成形材料等
に利用できるが、空気あるいは酸素富化空気中あるいは
減圧化で熱処理することにより増粘することが可能であ
り、必要に応じてこのような増粘操作を行なった後、各
種成形材料等に利用してもよい。
【0071】この熱処理温度は、特に限定されるもので
はなく、処理時間によっても異なるし、処理する雰囲気
によっても異なるので一概に規定できないが、通常は1
80℃以上で行うことが好ましい。熱処理温度が180
℃未満では増粘速度が非常に遅く生産性が悪く好ましく
ない。熱処理を押出機等を用いて重合体の融点以上で溶
融状態で行っても良い。但し、重合体の劣化の可能性あ
るいは作業性等から、融点プラス100℃以下で行うこ
とが好ましい。
【0072】本発明により得られた重合体は、従来のP
AS同様そのまま射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロ
ー成形のごとき各種溶融加工法により、耐熱性、成形加
工性、寸法安定性等に優れた成形物にすることができ
る。しかしながら強度、耐熱性、寸法安定性等の性能を
さらに改善するために、本発明の目的を損なわない範囲
で各種充填材と組み合わせて使用することも可能であ
る。
【0073】充填材としては、繊維状充填材、無機充填
材等が挙げられる。繊維状充填材としては、例えばガラ
ス繊維、炭素繊維、シランガラス繊維、セラミック繊
維、アラミド繊維、金属繊維、チタン酸カリウム、炭化
珪素、硫酸カルシウム、珪酸カルシウム等の繊維、ウォ
ラストナイト等の天然繊維等が使用できる。また無機充
填材としては、例えば硫酸バリウム、硫酸カルシウム、
クレー、バイロフェライト、ベントナイト、セリサイ
ト、ゼオライト、マイカ、雲母、タルク、アタルパルジ
ャイト、フェライト、珪酸カルシウム、炭酸カルシウ
ム、炭酸マグネシウム、ガラスビーズ等が使用できる。
【0074】また、成形加工の際に添加剤として本発明
の目的を逸脱しない範囲で少量の、例えば離型剤、着色
剤、耐熱安定剤、紫外線安定剤、発泡剤、防錆剤、難燃
剤、滑剤、カップリング剤を含有せしめることができ
る。
【0075】更に、同様に下記のごとき合成樹脂及びエ
ラストマーを混合して使用できる。これら合成樹脂とし
ては、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエ
ーテルイミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエー
テル、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリ
エーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリア
リーレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ四弗化
エチレン、ポリ二弗化エチレン、ポリスチレン、ABS
樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹
脂、ウレタン樹脂、液晶ポリマー等が挙げられ、エラス
トマーとしては、ポリオレフィン系ゴム、弗素ゴム、シ
リコーンゴム、等が挙げられる。
【0076】本発明の重合体及びその組成物は、従来の
方法で得られるPAS同様耐熱性、寸法安定性等が優れ
るので、例えば、コネクタ・プリント基板・封止成形品
などの電気・電子部品、ランプリフレクター・各種電装
品部品などの自動車部品、各種建築物や航空機・自動車
などの内装用材料、あるいはOA機器部品・カメラ部品
・時計部品などの精密部品等の射出成形・圧縮成形、あ
るいはコンポジット・シート・パイプなどの押出成形・
引抜成形などの各種成形加工分野において耐熱性や成形
加工性、寸法安定性等の優れた成形材料あるいは繊維、
フィルムとして用いられる。
【0077】
【実施例】以下に本発明を実施例により更に詳細に説明
するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるもので
はない。
【0078】原料としては、次のものを使用した。 1.スルフィド化剤(アルカリ金属硫化物) 結晶硫化ナトリウム(5水塩)(以下、Na2S・5H2
Oと略称する)は三協化成(株)製品を使用。 2.溶媒 N−メチルピロリドン(以下、NMPと略称する)は三
菱化成(株)製品を使用。 3.ジハロ芳香族化合物 p−ジクロルベンゼン(以下、p−DCBと略称する)
は住友化学(株)製品を使用。 4.水 水道水を蒸留した後イオン交換を施したものを使用。
【0079】物性評価は次の通り行った。得られた重合
体の粒度分布は、堀場製作所製粒径測定装置LA−50
0を用いて測定し、体積基準にて解析した。また、得ら
れた重合体の溶融粘度(η)は、高化式フローテスター
を用いて測定した(316℃、剪断速度100/秒、ノ
ズル孔径0.5mm、長さ1.0mm)。
【0080】実施例1 温度センサー、精留塔、滴下槽、滴下ポンプ、留出物受
け槽を連結した攪拌翼付ステンレス製(チタンライニン
グ)4リットルオートクレーブにNa2S・5H2O 8
40.6g(5.0モル)、NMP 1487g(1
5.0モル)を仕込み、窒素雰囲気下、200℃まで昇
温することにより水−NMP混合物を留去した。留出液
中の組成はNMP105g、水345g、イオン性硫黄
33mmolであった。系を閉じ、ついでこの系を22
0℃まで昇温しp−DCB 735.0g(5.0モ
ル)をNMP500gに溶かした溶液を2時間かけて一
定速度で滴下した。滴下終了後、220℃で3時間保持
した。この後、250℃まで1時間かけて昇温し、その
温度で1時間保持して反応を終了した。
【0081】反応終了後、10分かけて230℃まで冷
却し、その温度を保持したまま、30分かけて水−NM
P混合物を留去した。留出液中の組成はNMP115
g、水98gであった。留去終了後、1℃/分の速度で
150℃まで冷却し、その後は放冷した。
【0082】得られたスラリーを少量サンプリングし、
NMPで希釈した後粒度分布を測定したところ、1ミク
ロン以下の微粒子は検出できなかった。また、得られた
スラリー500gを5リットルの水に注いで80℃で1
時間攪拌した後、濾過した。このケーキを再び5リット
ルの湯で1時間攪拌、洗浄した後、濾過した。この操作
を4回繰り返し、濾過後、熱風乾燥器で一晩(120
℃)乾燥して白色の粉末状のポリマーを89g得た。得
られたポリマーの溶融粘度は520ポイズであった。
【0083】また、得られたスラリー500gにNMP
200gを加えた後、窒素雰囲気下で150℃まで加温
し、その温度で特製の保温可能な吸引濾過装置で濾過を
行った。濾紙はワットマンのNo.2濾紙(直径125
mm)を使用した。濾過に要した時間は65秒であっ
た。
【0084】比較例1 実施例1と全く同じ操作で重合反応を行い、反応終了
後、そのまま1℃/分の速度で150℃まで冷却し、そ
の後は放冷した。得られたスラリーを実施例1と同様に
粒度分布を測定したところ、1ミクロン以下の微粒子が
2.9%含まれていた。また実施例1と同様に処理し得
られたポリマーの溶融粘度は490ポイズであった。ま
た、濾過に要した時間は6分30秒であった
【0085】比較例2 実施例1と全く同じ操作で重合反応を行い、反応終了
後、そのまま250℃で30分かけて水−NMP混合物
を留去した。留出液中の組成はNMP183g、水99
gであった。留去終了後、1℃/分の速度で150℃ま
で冷却し、その後は放冷した。得られたスラリーは若干
分解臭がした。得られたスラリーを実施例1と同様に粒
度分布を測定したところ、1ミクロン以下の微粒子が
0.2%含まれていた。また実施例1と同様に処理し得
られたポリマーの溶融粘度は90ポイズであった。ま
た、濾過は10分以上を要し、非常に濾過性が悪かっ
た。
【0086】比較例3 実施例1と全く同じ操作で重合反応を行い、反応終了
後、30分かけて190℃まで冷却し、その温度を保持
したまま、30分かけて水−NMP混合物を留去した。
留出液中の組成はNMP82g、水97gであった。留
去終了後、1℃/分の速度で150℃まで冷却し、その
後は放冷した。得られたスラリーを実施例1と同様に粒
度分布を測定したところ、1ミクロン以下の微粒子が
2.8%含まれていた。また実施例1と同様に処理し得
られたポリマーの溶融粘度は500ポイズであった。ま
た、濾過に要した時間は6分10秒であった
【0087】
【発明の効果】本発明の製造方法は、反応終了後、反応
終了温度より低く、かつPASが析出する温度より高い
温度で水を除去することに特徴があり、この方法によっ
て微粒子が少なく、濾過性に優れる等の操作の簡易化を
図ることができるPASを比較的簡便な装置で製造する
ための方法を提供できる。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 有機極性溶媒中で、ジハロ芳香族化合物
    とスルフィド化剤とを反応させるポリアリーレンスルフ
    ィドの製造方法において、反応終了後、反応終了温度よ
    り低く、且つポリマーが析出する温度より高い温度で反
    応スラリーより水を除去した後、冷却してポリマーを析
    出させることを特徴とするポリアリーレンスルフィドの
    製造方法。
  2. 【請求項2】 有機極性溶媒に対して、1重量%以下の
    水分量となるように水除去を行うことを特徴とする請求
    項1記載の製造方法。
  3. 【請求項3】 水を除去する温度が、反応終了温度より
    10℃以上低い温度であることを特徴とする請求項1あ
    るいは2記載の製造方法。
  4. 【請求項4】 該ポリアリーレンスルフィドが、ポリフ
    ェニレンスルフィドであることを特徴とする請求項1〜
    3のいずれか記載の精製方法。
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