JPH09295976A - 神経保護作用物質cu39、その製造法および使用 - Google Patents

神経保護作用物質cu39、その製造法および使用

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JPH09295976A
JPH09295976A JP11080696A JP11080696A JPH09295976A JP H09295976 A JPH09295976 A JP H09295976A JP 11080696 A JP11080696 A JP 11080696A JP 11080696 A JP11080696 A JP 11080696A JP H09295976 A JPH09295976 A JP H09295976A
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Haruo Seto
戸 治 男 瀬
Kazuo Araya
家 一 男 新
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Kirin Brewery Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 神経細胞保護剤として有効な化合物を提供す
る。 【解決手段】 次式(I)で示される化合物cu39ま
たはその塩。 【化1】 ストレプトミセス属に属し、化合物cu39の生産能を
有するcu39生産菌を培養し、培養物からcu39を
採取することを特徴とする上記式(I)で示される化合
物cu39の製造法。上記の化合物cu39またはその
塩を含有してなる医薬組成物、特に神経細胞保護剤、脳
細胞変性抑制剤もしくは脳細胞壊死抑制剤。 【効果】 化合物cu39は神経細胞保護作用を有して
おり、特に神経細胞保護剤、脳細胞変性抑制剤もしくは
脳細胞壊死抑制剤として有用である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】〔発明の背景〕
【発明の属する技術分野】本発明はグルタミン酸毒性の
抑制作用を有し、神経細胞保護作用を有する新規生理活
性物質cu39、その製造法および使用に関する。
【0002】
【従来の技術】脳梗塞、脳卒中、心拍動の停止、脳損傷
などから生じる脳虚血、あるいは酸素欠乏症により引き
起こされる脳神経細胞の変性および壊死は、興奮性アミ
ノ酸であるグルタミン酸、アスパラギン酸が原因である
と考えられている。現在までこれら脳神経細胞の変性お
よび壊死を抑制する手段として、グルタミン酸の拮抗剤
の探索に多くの努力が払われてきたにもかかわらず、有
効で満足すべき薬剤が今なお見出し得ないのが現状であ
る。
【0003】〔発明の概要〕
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の希求に
応え、グルタミン酸の毒性による細胞壊死の抑制に有効
な化合物を創製し、特に神経細胞保護剤として有用な化
合物を提供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】N−18−RE−105
細胞系(neuroblastoma-primary retina hybrid cells
)に対してグルタミン酸を添加すると、シスチンの細
胞内取り込みが阻害され、それにともないグルタチオン
の細胞内濃度の減少を引き起こし、細胞の酸化ストレ
ス、すなわち細胞内の活性酸素、過酸化物の蓄積を生じ
させ、その結果、細胞の変性、壊死をもたらすと考えら
れている(Neuron, 2, 1547(1989) 、J. Pharmacol.Ex
p.Ther., 250, 1132(1989) )。本発明者等はこの評価
系を用い、グルタミン酸に起因する細胞壊死を抑制する
化合物を鋭意探索した結果、新規生理活性物質cu39
が細胞壊死を抑制する作用を有することを見出し、この
知見に基づきさらに検討を加えて本発明を完成させるに
至った。
【0005】すなわち、本発明による新規化合物は下式
(I)で示されるものである。本発明はまた、この化合
物の製造法にも関する。すなわち、本発明による下式
(I)で示される化合物cu39の製造法は、ストレプ
トミセス属に属し、化合物cu39の生産能を有するc
u39生産菌を培養し、培養物からcu39を採取する
ことを特徴とするものである。本発明は更に、この化合
物の用途、具体的には医薬組成物、特に神経細胞保護
剤、脳細胞変性抑制剤および脳細胞壊死抑制剤に関す
る。すなわち、本発明による上記医薬は、下式(I)で
示される化合物cu39またはその塩を有効成分として
含有してなるものである。
【化3】
【0006】〔発明の具体的説明〕
【発明の実施の形態】新規化合物cu39 上記式(I)で示される新規化合物cu39は、後述の
ようにグルタミン酸毒性の抑制作用を有し、神経細胞保
護作用を有する新規生理活性物質である。このような特
性により、本発明の化合物cu39は医薬組成物、特に
脳神経細胞の変性による疾患の予防剤もしくは治療剤と
して有用である。
【0007】1) 化学構造 本発明の新規化合物cu39は、該cu39のプロトン
核磁気共鳴スペクトル、炭素13核磁気共鳴スペクト
ル、紫外部吸収スペクトル、赤外部吸収スペクトル、及
び質量分析スペクトルを詳細に検討した結果、決定され
たものである。
【0008】2) 物理化学的性質 (1)外観 黄色粉末 (2)融点 184〜186℃ (3)溶解性 酢酸エチル、アセトン、クロロホルム、
メタノール、エタノールに易溶。 (4)Rf値 0.2(CHCl:MeOH=50:
1),Merck Kieselgel 60F254 (5)HRFAB−MSスペクトル(m/z) 観測値 379.1198(M+H)+ 計算値 379.1182 (6)比旋光度 [α]21 (c 0.02,MeO
H)−2.5゜ (7)紫外部吸収スペクトル 図1(MeOH)および図2(MeOH+NaOH)に
示す。 λmax MeOHnm(ε) 208(15,400),23
9(28,100),266(13,500),406(4,700 ) λmax MeOH+NaOH nm(ε) 240(24,100),32
8(4,500 )517(2,500 ) (8)赤外部吸収スペクトル(KBrディスク法) 図3に示す。 Vmax (cm-1) 3490,1675(sh),16
50,1585,1460,1275,1220 (9)プロトン核磁気共鳴スペクトル(500メガヘル
ツ、重DMSO中) 図4に示す。データは第1表にまとめられている。 (10)炭素13核磁気共鳴スペクトル(125メガヘル
ツ、重DMSO中) 図5に示す。データは第1表にまとめられている。 (11)分子式 C2218
【0009】 第 1 表
No. δ δ No. δ δ
2 172.5 11 161.3 3 110.6 6.35 11a 116.7 4 178.3 12 187.0 4a 124.0 12a 119.7 5 153.3 12b 155.6 6 118.7 8.47 13 62.2 5.13 6a 136.0 14 38.0 2.73 7 181.5 15 26.7 1.89 1.73 7a 132.1 16 11.4 0.92 8 118.7 7.67 17 17.6 1.37 9 136.6 7.76 11−OH 12.68 10 124.7 7.37 13−OH 5.66
【0010】式(I)で示される化合物cu39は、−
OHの位置において塩基付加塩があり得る。本発明化合
物cu39は、この付加塩をも包含するものである。塩
基付加塩としては、例えば、アルカリ金属化合物(例え
ば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)との塩、ア
ルカリ土類金属化合物(例えば水酸化カルシウム、水酸
化マグネシウムなど)との塩、アンモニウム塩、有機塩
基(例えばトリエチルアミン、エタノールアミンなど)
との塩をあげることができる。なお、塩基付加塩を医薬
として使用する場合には、塩基は薬学上許容されるもの
でなければならないことは言うまでもない。
【0011】化合物cu39の製造 本発明の化合物cu39は、以下で詳説するような微生
物の培養法により得ることができるが、このような方法
に限定されることはなく合目的的な任意の方法、例え
ば、類縁化合物の合成化学的または微生物学的修飾によ
って製造することも、あるいは全合成化学的に製造する
ことも可能であろう。また、遺伝子工学的手法によるこ
ともできるであろう。すなわち、化合物cu39の生産
に関与する遺伝子を微生物に組み込み、得られた形質転
換体を培養し、この培養物から目的化合物を分離して得
ることも可能であろう。微生物の培養法による場合に
は、菌株としては、例えばストレプトミセス属に属し、
cu39生産能を有するものを使用しうる。具体的に
は、下記で詳説するところの、本発明者等の単離に係わ
るストレプトミセス・エスピーcu39株が、cu39
生産能を有する菌株であることが本発明者によってこの
度明らかにされたことから、この菌を好ましく用いるこ
とができる。その他の菌株としては、グルタミン酸に起
因する細胞壊死抑制能を指標として抗生物質生産菌単離
の常法に従って自然界から単離したものが用いられう
る。また、ストレプトミセス・エスピーcu39株を含
め、各種cu39生産菌を放射線照射、その他の変異処
理に付してcu39生産能を高めることもできるであろ
う。こうして得られた変異菌株は、いずれも以下で詳説
する培養法による本発明の化合物cu39の製造におい
て好ましく用いることができる。
【0012】<cu39株>化合物cu39の生産能を
有するストレプトミセス属に属する一菌株で、本発明者
等が自然界(長野県根羽村の土壌)から単離して得たc
u39株の菌学的性質は、以下のとおりである。 1)形態 cu39菌株は、グリセロール・アスパラギン寒天培
地、スターチ無機塩寒天培地、チロシン寒天培地、栄養
寒天培地、イースト・麦芽寒天培地及びオートミール寒
天培地上で、菌の生育は良好である。しかし、このなか
で菌糸の着生も良好な培地は、スターチ無機塩寒天培地
及びイースト・麦芽寒天の2培地のみである。グリセロ
ール・アスパラギン寒天培地、栄養寒天培地及びオート
ミール寒天培地は菌の生育は良好であるが、菌糸の着性
は乏しい。また、シュクロース・硝酸塩寒天培地は菌の
生育及び菌糸の着性も乏しい。基生菌糸より生じた気菌
糸は、単純分枝をなして伸長し、数多くの胞子が連鎖す
る。その形態は、直線上、ループ、およびゆるい螺旋状
を呈する。通常、胞子の連鎖は50個以上で、形は卵型
で、大きさは1.1〜0.6μm×0.6〜0.5μm
であり、その表面はこぶ状である。胞子嚢、鞭毛胞子、
菌核等の特殊形態は、認められない。 2)各種培地上の生育状態 cu39株を各種培地に27℃、3週間培養した結果
は、第2表に示す通りである。 3)生理的性質 cu39株の生理的性質は、第3表に示す通りである。 4)炭素源の利用性 cu39株の炭素源の利用性(プリドハム・ゴトリーブ
寒天培地上)は第4表に示す通りである。 5)ジアミノピメリン酸の分析 細胞壁構成アミノ酸の一つであるジアミノピメリン酸を
分析した結果、LL−ジアミノピメリン酸が検出され
た。以上の菌学的性状から、cu39株は、ストレプト
ミセス属の一菌株と判断され、以下のような特徴を有す
る。 (1)胞子鎖は直線状〜ループ〜ゆるい螺旋状で、胞子
の表面はこぶ状である。 (2)気菌糸はスターチ無機塩寒天培地およびイースト
・麦芽寒天培地上で、良く着性する。また、その色は明
るいオリーブ灰で、裏面の色は暗い黄茶及び暗い赤茶色
である。 (3)チロシン寒天培地、ペプトン・イースト・鉄寒天
培地、及びトリプトン・イースト液体培地でメラニン様
色素が認められる。可溶性色素はいずれの培地でも認め
られない。 (4)糖の利用性は、L−アラビノース、D−キシロー
ス、D−グルコース、D−フラクトース、シュクロー
ス、イシノトール、L−ラムノース、ラフィノース及び
D−マンニトールで陽性である。
【0013】上記性状より、cu39株はストレプトミ
セス属に属すると考えられる。ストレプトミセス属の既
知菌種について、生理的性質、糖の利用性、及び菌体の
色及び形状等を文献、ISP(インターナショナル・ス
トレプトミセス・プロジェクト)の記載(E.B.Shirling
and D.Gottlieb:Int.J.Syst.Bact.18巻(1968) ;1
9巻(1969) ;22巻(1972) について検索したが、該
当する種がなかった。そこでcu39菌株をストレプト
ミセス・エスピー(Streptomyces sp.)cu39とす
る。尚、cu39菌株は工業技術院生命工学工業技術研
究所に寄託申請され、平成8年3月22日、FERM
BP−5482として受託されている。
【0014】 第 2 表
培地 生育 気菌糸 裏面色 可溶性色素
シュクロース・ 貧弱 なし うす黄茶 なし 硝酸塩寒天培地
グルコース・アス 中程度 貧弱 明るい茶 なし パラギン寒天培地 にぶ黄茶
グリセロール・アス 良好 貧弱 にぶ赤味橙 なし パラギン寒天培地 黄味灰
スターチ無機塩 良好 豊富 うす黄色 なし 寒天培地 明るいオリーブ灰 〜暗い黄茶
チロシン 良好 中程度 明るい茶 なし 寒天培地 黄色白〜明るい茶灰 〜暗い赤茶
栄養寒天培地 良好 貧弱 黄茶 なし 黄味白
イースト・麦芽 良好 豊富 暗い赤茶 なし 寒天培地 明るいオリーブ灰
オートミール 良好 貧弱 明るい茶 なし 寒天培地 明るいオリーブ灰 〜黄味白
【0015】 第 3 表 生育温度範囲 15〜40℃ メラニン様色素 チロシン寒天培地 陽性 ペプトン・イースト・鉄寒天培地 陽性 トリプトン・イースト液体培地 陽性 スターチの加水分解 陰性 ゼラチンの液化 陽性 脱脂乳の凝固 陰性 脱脂乳のペプトン化 陽性 硝酸塩の還元能 陰性
【0016】第 4 表 L−アラビノース + D−キシロース + L−グルコース + D−フラクトース + シュクロース + イノシトール + L−ラムノース + ラフィノース + D−マンニトール +
【0017】<培養/cu39の生産>化合物cu39
は、ストレプトミセス属に属するcu39生産菌を適当
な培地で好気的に培養し、その培養物から目的物を採取
することによって製造することができる。培地は、cu
39生産菌が利用しうる任意の栄養源を含有するもので
あり得る。具体的には、例えば、炭素源としてグルコー
ス、ガラクトース、麦芽糖、およびグリセロールなどが
使用でき、窒素源として大豆粉、魚粉、綿実粕、乾燥酵
母、酵母エキスおよびコーンスティープリカーなどの有
機物ならびにアンモニウム塩または硝酸塩、例えば、硫
酸アンモニウム、硝酸ナトリウムおよび塩化アンモニウ
ムなどの無機塩が利用できる。また、必要に応じて、塩
化ナトリウム、塩化カリウム、炭酸カルシウムのほか、
各種燐酸塩、重金属塩などの無機塩類を添加することが
できる。醗酵中の発泡を抑制するために、常法にしたが
って適当な消泡剤、例えばシリコーン油を添加すること
もできる。
【0018】培養方法としては、抗生物質の生産の場合
に一般的に行われている方法と同様に、好気的液体培養
法が最も適している。培養温度は20〜30℃が適当で
あるが、25〜30℃が好ましい。この方法でのcu3
9の生産量は、震盪培養、通気撹拌培養ともに培養5日
目頃に最高に達する。このようにしてcu39の蓄積さ
れた培養物が得られる。培養物中では、cu39はその
一部は菌体外(すなわち、培養液中)に存在するが、そ
の大部分は菌体中に存在する。
【0019】このような培養物からcu39を採取する
には、合目的的な任意の方法が利用可能である。その一
つの方法は抽出の原理に基づくものであって、具体的に
は、菌体外(すなわち、培養液中)のcu39について
はこれを水不混和性のcu39用溶媒(前記参照)、例
えば、酢酸エチルなどで抽出する方法、あるいは、菌体
内のcu39については濾過、遠心分離などで得た菌体
集体をメタノール、エタノール、アセトンなどで処理し
て回収する方法などがある。菌体を分離せずに培養物そ
のままを上記の抽出操作に付すこともできる。適当な溶
媒を用いた交流分配法も抽出の範疇に含めることができ
る。培養物からcu39を採取する他の方法は、吸着の
原理に基づくものであって、既に液状となっているcu
39含有物、例えば培養濾液あるいは上記のようにして
抽出操作を行うことによって得られる抽出液を対象とし
て、適当な吸着剤、例えばシリカゲル、活性炭、合成吸
着剤(例えば、「ダイヤイオンHP20」(三菱化学社
製))などを用いて目的のcu39を吸着させ、その
後、適当な溶媒にて溶離させることによってcu39を
得ることができる。このようにして得られたcu39溶
液を減圧濃縮乾固すれば、cu39粗標品が得られる。
【0020】このようにして得られるcu39の粗標品
をさらに精製するためには、上記の抽出法および吸着法
に、ゲル濾過、高速液体クロマトグラフィなどの操作を
必要に応じて適宜組み合わせて必要回数実施すればよ
い。例えば、シリカゲルなどの吸着剤、「セファデック
スLH−20」(ファルマシア社製)などのゲル濾過剤
を用いたカラムクロマトグラフィ、シリカゲルなどの吸
着剤を用いた薄層クロマトグラフィ、「CAPCELL
PAK」(資生堂社製)、「ODS」などのシリカ系
充填カラム(順相あるいは逆相カラム)を用いた高速液
体クロマトグラフィ、あるいは向流分配法を適宜組み合
わせて精製を行ない、化合物cu39の純品を得ること
ができる。本発明による化合物cu39は、常法によっ
て前記したような塩基付加塩の形にすることができる。
【0021】化合物cu39の用途 本発明の化合物cu39は、後述のように、グルタミン
酸に起因する細胞壊死を強く抑制する作用を示した。従
って、本発明の化合物cu39およびその塩の有効な対
象疾患しては、たとえば脳梗塞、脳卒中、心拍動の一次
停止、脳損傷から生じる脳虚血、酸素欠乏症により引き
起こされる諸症状、脳内新生物質や外傷圧による頭蓋内
圧上昇にともなう諸症状、さらに脳浮腫や痴呆症などの
疾病などがあげられ、本発明の化合物cu39およびそ
の塩は、これらの疾病の予防または治療に用いることが
できる。すなわち、本発明は有用な脳卒中予防剤もしく
は脳卒中後遺症治療剤、とりわけ脳神経細胞保護作用、
脳細胞変性作用および脳細胞壊死抑制作用を有する薬剤
を提供する。従って、本発明による化合物cu39は上
記疾病の予防剤または治療剤としての医薬(医薬組成
物)、特に神経細胞保護剤、脳細胞変性抑制剤もしくは
脳細胞壊死抑制剤として使用することができる。
【0022】医薬として使用する場合の本発明化合物c
u39は、合目的的な任意の投与経路、具体的には、動
物の場合には腹腔内投与、皮下投与、静脈または動脈へ
の血管内投与および注射による局所投与などの方法が、
またヒトの場合は静脈内投与、動脈内投与、注射による
局所投与、腹腔、胸腔への投与、経口投与、皮下投与、
筋肉内投与、舌下投与、経皮吸収、または直腸投与によ
り投与することができる。本発明化合物を薬剤として投
与する場合は、投与方法、投与目的によってきまる適当
な剤型、具体的には、注射剤、懸濁剤、錠剤、粉末剤、
顆粒剤、散剤、カプセル剤、軟膏剤、クリーム剤、座剤
等の形態で投与することができる。経口または直腸内投
与の場合は徐放化製剤の形態で用いてもよい。これらの
製剤を製造するには、化合物cu39に悪影響を与えな
い限り、製薬上許容される種々の補助剤、すなわち担体
あるいはその他の助剤、具体的には溶剤、可溶化剤、等
張化剤、防腐剤、無痛化剤、乳化剤、抗酸化剤、賦形
剤、結合剤、滑沢剤、安定剤等を必要に応じて添加する
ことができる。溶剤としては、例えば水、生理食塩水等
が、可溶化剤としては、例えばエタノール、ポリソルベ
ート剤が、等張化剤としては例えばブドウ糖、生理食塩
水、D−ソルビトール、D−マンニトール等が、防腐剤
としては例えばベンジルアルコール、パラオキシ安息香
酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラ
オキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パ
ラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸メチ
ル、安息香酸、チモール、白糖、ハチミツ等が、無痛化
剤としては例えばベンジルアルコール、クロルブタノー
ル、リドカイン、プロカイン等が、賦形剤としては、例
えば乳糖、デンプン、結晶セルロース、マンニトール、
マルトース、リン酸水素カルシウム、軽質無水ケイ酸、
炭酸カルシウム等が、乳化剤としては例えばポリソルベ
ート類、ヤシ脂肪酸、メチルセルロース、精製卵黄レシ
チン、精製ラノリン、ゼラチン、D−ソルビトール等
が、抗酸化剤としては例えばアスコルビン酸、クエン
酸、酢酸トコフェロール、没食子酸プロピル、天然ビタ
ミンE、大豆レシチン等が、結合剤としては、例えばデ
ンプン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセ
ルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロ
ース、アラビアゴム等が、崩壊剤としては、例えばデン
プン、カルボキシメチルセルロースカルシウム等が、滑
沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、タル
ク、硬化油等が、安定剤としては、例えば乳糖、マンニ
トール、マトルース、ポリソルベート類、マクロゴール
類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等があげられる。
また、必要に応じて、グリセリン、ジメチルアセトアミ
ド、70%乳酸ナトリウム、界面活性剤、塩基性物質
(例えば、エチレンジアミン、エタノールアミン、炭酸
ナトリウム、アルギニン、メグルミン、トリスアミノメ
タン)を添加することもできる。これらの成分を用い
て、注射剤、錠剤、顆粒剤、カプセル剤等の剤型に製造
することができる。製剤において、本発明化合物cu3
9の含有量は製剤形態により広範囲に変えることが可能
である。
【0023】化合物cu39の投与量は、動物実験の結
果および種々の状況を勘案して、連続的または間欠的に
投与したときに総投与量が一定量を越えないように定め
られる。具体的な投与量は、投与方法、患者または被処
理動物の状況、例えば年齢、体重、性別、感受性、食事
(食餌)投与時間、併用する薬剤、患者またはその病気
の程度に応じて変化することは言うまでもなく、また一
定の条件のもとにおける適量と投与回数は、上記指針を
もとにして専門医の適量決定試験によって決定されなけ
ればならない。具体的には、成人1日あたり0.1〜1
00mg程度であるが、上記のように年齢、病態、症状
の程度に応じて適宜増減されることが望ましい。
【0024】〔実験例〕
【実施例】以下は、化合物cu39の生理活性試験およ
び製造例によって本発明を更に詳細に説明するものであ
る。 [cu39の生理活性試験] (1)神経細胞系ハイブリドーマN−18−RE−10
5細胞を用いる活性測定法 i)N−18−RE−105細胞の培養:N−18−R
E−105細胞(大阪大学たんぱく質研究所より入手)
の培養は、10%FCSおよびHAT(hypoxanthine
0.1mM、aminopterin 40μM、thymidine 0.1
4mM、シグマ社製)を含むダルベッコ変法MEM(D
MEM)中で、37℃、5%CO存在下で行い、3日
毎に継代した。 ii)活性評価試験(検鏡法):N−18−RE−105
細胞が96穴マイクロプレートに6.25×103 cell
s /cm2 となるように播種した。24時間培養後、終
濃度が10mMとなるようにグルタミン酸を添加した。
24時間後、顕微鏡下にて細胞の生死を観察した。 iii)活性評価試験(LDH法):乳酸脱水素酵素の細胞
外への流出量(LDH法)は和光純薬工業株式会社製の
LDH−細胞毒性テストワコーを用いて下記のように測
定した。グルタミン酸添加24時間後、培養上清と細胞
を分離し、細胞を0.5% Triton X−100(0.1
Mリン酸緩衝液、pH7.0)にて処理した。この培養
上清と細胞抽出液の乳酸脱水素酵素の活性を測定した。
酵素活性の比較は乳酸脱水素酵素の基質50ml(DL
−乳酸リチウム緩衝液(50mg/ml)に溶解したニ
トロブルーテトラゾリウム、ジアホラーゼ、NAD)に
培養上清あるいは細胞抽出液を50ml添加し、室温で
45分間放置した後、100mlの1N塩酸で反応を停
止させた。その後、マイクロプレートリーダーにより5
60±10nmの吸光度を測定した。細胞障害率は次式
により算出した。 細胞障害率(%)=(S−N)/(P−N)×100 S:検体での吸光度 N:ネガティブコントロールでの吸光度 P:ボジティブコントロールでの吸光度
【0025】(2)結果 本発明の化合物cu39はN−18−RE−105細胞
に対するグルタミン酸毒性を抑制した(ED50=40n
M)。
【0026】[cu39の製造] 1)培養 使用した培地は、KG培地(グルコース 2.5%、大
豆粉 1.5%、乾燥酵母 0.2%、CaCO
0.4%;pH6.2)である。上記培地20mlを試
験管に入れ、ストレプトミセス・エスピー(Streptomyc
es sp.)cu39株(FERM BP−5482)をス
ラントより1白金耳接種し、ロータリーシェーカーで2
7℃にて2日間震盪培養した。上記培地100mlを5
00mlイボ付き三角フラスコ20本に分注後滅菌した
ものに前培養液を1mlずつ加え、ロータリーシェーカ
ーで27℃にて5日間震盪培養した。
【0027】2)cu39の採取 上記の条件で培養後、培養液(2リットル)を濾過し、
菌体を得た。この菌体を1リットルのアセトンで2回抽
出し、抽出液を濃縮後、0.5リットルの酢酸エチルで
3回抽出した。抽出液を合わせて無水硫酸ナトリウムで
乾燥し、濃縮乾固した。残渣を少量のクロロホルム:メ
タノール=50:1に溶解し、シリカゲル(メルク社
製、キーゼルゲル60;200g)のカラム(25mm
φ×250mm)に吸着させ、クロロホルム:メタノー
ル=50:1で溶出した。活性画分を濃縮乾固し、残渣
を少量のクロロホルム:メタノール=50:1に溶解
し、シリカゲルTLCプレート(メルク社製、キーゼル
ゲル60F254 、20cm×20cm;1枚)に吸着さ
せた。クロロホルム:メタノール=50:1で展開し、
活性画分をかきとり、クロロホルム:メタノール=5
0:1で抽出した。濃縮乾固し、残渣を少量のクロロホ
ルム:メタノール=1:1に溶解し、セファデックスL
H−20(ファルマシア社製)のカラム(15mmφ×
400mm)に載せ、クロロホルム:メタノール=1:
1で溶出した。活性画分を濃縮乾固し、残渣を少量の8
5%MeOHに溶解し、ODS(テガシル社製)のカラ
ムを用い、移動相として85%MeOHを毎分3mlで
送液して高速液体クロマトグラフィーを行った。その結
果得られたcu39を含む分画を減圧濃縮乾固し、30
mgの精製cu39を得た。
【0028】
【発明の効果】本発明による化合物cu39は、グルタ
ミン酸の毒性の抑制作用を有し神経細胞保護作用を有し
ており、医薬組成物、特に神経細胞保護剤、脳細胞変性
抑制剤もしくは脳細胞壊死抑制剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】メタノール中での化合物cu39の紫外線吸収
スペクトルを模写したものである。
【図2】メタノール中で0.01N NaOHを添加し
たときの化合物cu39の紫外線吸収スペクトルを模写
したものである。
【図3】KBrディスク法による化合物cu39の赤外
線吸収スペクトルを模写したものである。
【図4】重DMSO中における化合物cu39の500
メガヘルツプロトン核磁気共鳴スペクトルを模写したも
のである。
【図5】重DMSO中における化合物cu39の125
メガヘルツ炭素13核磁気共鳴スペクトルを模写したも
のである。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】次式(I)で示される化合物cu39また
    はその塩。 【化1】
  2. 【請求項2】ストレプトミセス属に属し、化合物cu3
    9の生産能を有するcu39生産菌を培養し、培養物か
    らcu39を採取することを特徴とする、次式(I)で
    示される化合物cu39の製造法。 【化2】
  3. 【請求項3】cu39生産菌がストレプトミセス・エス
    ピーcu39株(FERM BP−5482)である、
    請求項2の製造法。
  4. 【請求項4】請求項1に記載の化合物cu39またはそ
    の塩を有効成分として含有してなる医薬組成物。
  5. 【請求項5】請求項1に記載の化合物cu39またはそ
    の塩を有効成分として含有してなる神経細胞保護剤。
  6. 【請求項6】請求項1に記載の化合物cu39またはそ
    の塩を有効成分として含有してなる脳細胞変性抑制剤。
  7. 【請求項7】請求項1に記載の化合物cu39またはそ
    の塩を有効成分として含有してなる脳細胞壊死抑制剤。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO1998016516A1 (fr) * 1996-10-14 1998-04-23 Nippon Chemiphar Co., Ltd. Derives de phenazine 5-oxyde
WO1998024773A1 (fr) * 1996-12-03 1998-06-11 Nippon Chemiphar Co., Ltd. Derives de phenazine
WO1998024772A1 (fr) * 1996-12-03 1998-06-11 Nippon Chemiphar Co., Ltd. Derives d'acide dihydrophenazinecarboxylique
US7312025B2 (en) 2002-07-12 2007-12-25 University Of Washington Methods and systems for extended in vitro culture of neuronal cells

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