JPH09285550A - 循環器用被覆ステント及びその製造方法 - Google Patents

循環器用被覆ステント及びその製造方法

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JPH09285550A
JPH09285550A JP9865996A JP9865996A JPH09285550A JP H09285550 A JPH09285550 A JP H09285550A JP 9865996 A JP9865996 A JP 9865996A JP 9865996 A JP9865996 A JP 9865996A JP H09285550 A JPH09285550 A JP H09285550A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 循環器系の病変に対して好適に使用できる、
柔軟性に非常に優れ、被覆層の剥離が無く、更に留置後
の移動の危険の少ない被覆ステント及びその製造方法を
提供する。 【解決手段】 ステント支持体の内側及び外側に細胞、
及び血中酸素、養分の通過を許容する繊維が不規則に絡
み合った状態の被覆層被覆層を有しており、その内側及
び外側の被覆層がステント支持体の間隙部分で互いに接
着している被覆ステントであり、繊維が不規則に絡み合
った状態の被覆層の形成は、繊維形成可能な高分子材料
を溶媒に溶解した溶液のスプレーによって行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は人体又は動物の循環
器の疾患、特に、閉塞性動脈硬化症、動脈解離、動脈瘤
等に対し、血管の拡張、補綴、修復を行うためのステン
トに関するものであり、更に詳しくは、ステントの少な
くとも一部にステントの圧縮又は拡張の動きに十分に追
随し、細胞の透過及び酸素、血中養分の透過を許容しう
る柔軟性のある被覆層を備えた被覆ステント及びその製
造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】循環器系の疾患は通常、外科手術によっ
て血管の疾患した領域を人工血管または移植片に置換す
る方法が行われてきた。外科手術は高リスクを伴う上
に、患者は大きな苦痛を伴い、回復期間にかなりの時間
を要する。そこで、緊急の治療が可能で、リスクの少な
い経皮的な治療を目指し、種々の血管内ステント及び移
植体が発明され開示されている。
【0003】現在一般的に用いられている血管内ステン
トとしては、金属又はポリマーのワイヤーを拡張可能な
形状に構成したものがあるが、金属またはポリマーのワ
イヤーにより構成された支持体のみのステントでは、細
胞の過成長による再閉塞の可能性が高いことはもちろ
ん、動脈解離、または大動脈瘤等の損傷血管の修復には
全く使用することができない。そこでステント支持体に
被覆層を設けるいくつかの技術が検討され開示されてい
る。
【0004】例えば、最も単純にステントと移植片を複
合化した例としては、特開平4−231954号公報、
特開平6−343703号公報で、ダクロンの円筒型移
植片にステント支持体を縫合糸で結紮し取り付ける技術
が開示されている。しかし、縫合糸での結紮といった部
分的な固定では体内で被覆層がステント支持体より剥離
し、その剥離した被覆層による新たな閉塞といった重篤
な事態を引き起こす危険性がある。
【0005】また特開平7−529号公報ではステント
支持体にカバーを取り付けたステントの製造方法につい
ての技術が開示されている。本技術では被覆層がステン
ト支持体のワイヤメッシュを完全に包囲する形でステン
ト支持体と緊密に一体化されており、更に被覆層はステ
ント支持体の外側にあるために、もし被覆層の剥離が起
こった場合でも被覆層はステント支持体と生体管腔の間
に挟まれており、被覆層の脱落は起こらないとの記述が
ある。
【0006】上記の被覆方法、いわゆるステント支持体
の被覆溶液への浸漬によれば、形成した被覆は、実質的
に細胞及び酸素、栄養の透過を許容しないフィルム状で
ある。細胞を透過しないということは、ステント内腔へ
の血管内皮細胞の進入による偽内膜形成は望まれず、抗
血栓性を獲得出来ずに、血栓による再閉塞を来す。又、
フィルムによって内腔からの動脈壁への栄養、あるいは
酸素供給が阻害されることで、動脈壁障害が惹起され、
その結果、内膜肥厚による閉塞を来す。よって、このス
テントは血液と接触しない消化器系への使用は可能であ
るが、循環器への使用には適さない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述のよう
な従来の問題点を解決すべく鋭意検討の結果なされたも
ので、血管内において、植え込み後に偽内膜の形成によ
る抗血栓性の獲得が可能で、なおかつ酸素及び血管内腔
の栄養分の透過が可能であり更に被覆層の膜厚を調製す
ることで、細胞の伸展及び血液の透過性を制御すること
ができる繊維状の被覆層をステント支持体に設け、ステ
ント支持体と被覆層の剥離がなく、更に被覆層がステン
ト支持体の柔軟な動きを妨げる事がなく、また任意に非
常に薄い被覆層を形成する事によりステント留置の際の
デリバリーカテーテルへの装着性が優れ、更に留置後の
移動がない、特に循環器系例えば閉塞性動脈硬化症、動
脈解離、動脈瘤等の疾患に対する、血管の拡張、血管の
修復等の治療が経皮的に行える被覆ステント及びその製
造方法を提供する事を目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】即ち本発明は、人体又は
動物の管腔内に挿入可能な一次直径から、一次直径より
大きい二次直径への拡張が可能なステント支持体の全長
又は任意の部分に両端が開口した柔軟性のある被覆層を
有する被覆ステントで、該柔軟性のある被覆層がステン
ト支持体の内側及び外側からステント支持体を挟み込む
様に形成されており、該ステント支持体の内側に形成さ
れた被覆層及び、該ステント支持体の外側に形成された
被覆層は繊維が不規則に絡み合った状態であり、更に該
ステント支持体の内側に形成された被覆層のステント支
持体に接する側面と該ステント支持体の外側に形成され
た被覆層のステント支持体に接する側面がステント支持
体の間隙部分で接着している事を特徴とする循環器用被
覆ステント及びその製造方法である。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明に使用するステント支持体
の形状としては特に限定するものではないが、ステント
支持体に弾性を有する材料を用い、それ自身の持つ弾性
力で拡張する自己拡張型のステントが特に好適である。
【0010】また、血管の内膜及び中膜内層は無血管で
あり、酸素及び栄養は血管内腔からの直接の拡散によっ
てなされている。よって、もし酸素や栄養が透過しない
材料で血管壁を覆うと、血管壁は種々の脈管作動性物質
のバランスの崩壊などが起こり、これらの影響が基で内
膜肥厚、中膜の変性が起こり閉塞に至る。このことから
も被覆層の形態は、多孔体もしくは繊維形態にする必要
がある。本発明においては、被覆材料をスプレーするこ
とにより形成した繊維形態の被覆層を用いているため、
留置後内面に偽内膜の形成が可能であり、細胞の伸展に
よりステント自体が血管壁と一体化することで、患部か
ら脱落する危険もない。
【0011】更に、本発明では被覆層をステント支持体
に固定する手段として、従来のステント支持体と被覆層
を直接接着する方法とは異なり、(1)内側と外側に形
成した被覆層でステント支持体を挟み込み、内側と外側
の被覆層をステント支持体の間隙部分で接着している、
(2)内側及び外側の被覆層がスプレーにより形成され
た繊維が不規則に絡み合った状態である、といった2つ
の特徴により、被覆層とステント支持体の間が非常に柔
軟で、被覆層とステント支持体のどちらも互いの動きを
制限することを最小限に抑えている、すなわち被覆層を
設けることによるステントの拡張力の低下といった問題
は殆ど無く、更に付け加えると繊維が不規則に絡み合っ
た状態の被覆層は配向性を持たず、歪みを分散させるだ
けでなく断裂にも強い。
【0012】更に、被覆層とステント支持体の間が非常
に柔軟であるといった特徴によって被覆層はステント支
持体の動きに充分に追随し、剥離や亀裂といった問題は
発生しない。本発明のステント支持体の被覆層に用いる
材料としては、公知の繊維形成可能な高分子材料を用い
る事が出来、特にポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹
脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂及びそれらの共
重合体又はそれらのポリマーアロイを好適に用いること
が出来る。さらに好ましいのは柔軟性の高いエラストマ
ーであり、最も好ましいのはポリウレタン系エラストマ
ーである。
【0013】ステント支持体の被覆層を形成しようとす
る任意の部分の内側に繊維が不規則に絡み合った層を形
成する方法については特に限定するものではないが、公
知(繊維加工便覧 昭和45年 株式会社高分子刊行会
発行)であるスプレー法(スプレイファイバ法)を用い
て繊維が不規則に絡み合った状態の層を形成する事が出
来る。
【0014】詳しくは、一次直径より大きな二次直径へ
拡張した状態のステント支持体と同等もしくはそれ以上
の径を有する芯棒に対し、繊維形成可能な高分子材料を
溶剤に溶解した溶液をノズル孔から排出し、そこに高速
度を有するガスを一定の角度で作用させる、そこで排出
された溶液は高速度を有するガスの応力により一度霧状
にされた後に溶媒が蒸発しつつ引き延ばされ、繊維又は
繊維が不規則に絡み合った状態になり、そのままガス又
は蒸気の気流に乗り、前記芯棒の外面上まで運搬され、
堆積し、前記芯棒の外面上には繊維が不規則に絡み合っ
た層が形成される。
【0015】その上からステント支持体を芯棒上に形成
した被覆層上に装着する事で、ステント支持体の内側に
繊維が不規則に絡み合った状態の被覆層を形成する事が
出来る。また、繊維が不規則に絡み合った層の密度や厚
みはスプレーする時間によって容易にコントロールする
ことができるため、使用する目的に応じて、細胞、酸
素、血液の透過性をコントロールする事ができる。
【0016】本発明においては前記内側の被覆層が単一
の材料からなる単層である必要は全く無く、任意の複数
の材料を含む多層であっても良い、例えば前記工程にお
いて芯棒上に形成した被覆層の上にステント支持体を装
着する前に、芯棒上に形成した繊維が不規則に絡み合っ
た状態の被覆層の上に造影剤を含む繊維を巻き付け、造
影性を向上させる、又は抗癌剤を含む層を形成し、悪性
腫瘍の治療を可能にする等の機能を追加することも可能
である。
【0017】ステント支持体の外面に繊維が不規則に絡
み合った層を形成する方法についても、特に限定する物
ではないが、前記ステントの内面に繊維が不規則に絡み
合った層を形成した方法を用いることが出来る。つま
り、繊維形成可能な高分子材料の溶剤に溶解した溶液を
ノズル孔から排出し、そこに高速度を有するガスを一定
の角度で作用させる、そこで排出された溶液は高速度を
有するガスの応力により一度霧状にされた後に溶媒が蒸
発しつつ引き延ばされ、繊維又は繊維が不規則に絡み合
った状態になり、そのままガス又は蒸気の気流に乗り前
記内側に被覆層を形成したステントアッセンブリの被覆
層を形成しようとする部分の外面上まで運搬される。
【0018】外側の被覆層についても内側の被覆層と同
様単一材料からなる単層である必要は全く無く、任意の
複数の材料を含む多層であっても良い。尚、前記スプレ
ー法を用いる場合、繊維形成可能な材料の溶剤に溶解し
た溶液は繊維状で運搬され、ステントアッセンブリの外
面に到達した後に不規則に絡み合った状態に積層されて
も、もしくは運搬される際に既に繊維が不規則に絡み合
った状態に形成されていてもよい。
【0019】更に、前記スプレー法を用いる場合、芯棒
もしくはステントアッセンブリをモーターの軸等の回転
体に装着し、円周方向に回転させながら、上記のスプレ
ーを行うことで、容易に全体的に均一な繊維が不規則に
絡み合った層を形成することが出来る。本発明における
ステント支持体の内側の被覆層と、外側の被覆層をステ
ント支持体の間隙部分で接着させる方法としては特に限
定するものではないが、溶媒による接着と、熱による融
着の二種類の方法を用いることが出来る。
【0020】溶媒によって接着する方法の一つとして
は、前記ステントアッセンブリの外側にスプレーによっ
て繊維が不規則に絡み合った状態の被覆層を形成する際
に、用いる高分子材料を溶媒に溶解した溶液の濃度、運
搬距離、雰囲気温度を溶液がステントアッセンブリの外
面上まで到達した後も一部の溶媒を残す様に調節し、そ
の一部の溶媒の残留によって内側の被覆層の一部を溶解
させ接着させる。
【0021】高分子材料の溶媒に溶解した溶液の濃度を
低く、運搬距離を近く、雰囲気温度を低くするほど溶媒
の残留は多くなり、より強固な接着が得られるが、それ
らが極端であれば、ステントアッセンブリの外面で繊維
が不規則に絡み合った層が形成されなくなるため、使用
する高分子材料及びその溶媒に応じて繊維が不規則に絡
み合った層が形成される範囲で溶液の濃度、運搬距離、
雰囲気温度を調節する必要がある。
【0022】熱によって融着させる場合、ステントアッ
センブリの外側に繊維が不規則に絡み合った層を形成し
た後に、オーブン等で内側の被覆層もしくは外側の被覆
層に用いた材料の軟化点以上の熱を与えながら内側及び
外側の被覆層に圧力をかけ、内側の被覆層もしくは外側
の被覆層の一部を融解させて融着させる。
【0023】上記、ステント支持体の内側及び外側に繊
維が不規則に絡み合った被覆層を形成する工程、ステン
ト支持体の内側に形成された被覆層とステント支持体の
外側に形成された被覆層をステント支持体を間隙部分で
接着する工程によってステント支持体に被覆を形成した
後に、ステントから芯棒を抜去し、本発明の被覆ステン
トが完成する。以下、実施例によって本発明を更に具体
的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定される
ものではない。
【0024】
【実施例1】0.4mmφのステンレスワイヤーをジグ
ザグに折り曲げた物を円筒状にし、ワイヤーの両端を溶
接でつなげ、二次直径10mmφのステント支持体を作
製した。ポリウレタン樹脂(テコフレックス80A 米
国 Thermedics社製)をテトラヒドロフラン
(THF 和光純薬工業株式会社製)に20wt%で溶
解し、被覆層形成用の溶液とした。
【0025】前記ポリウレタン樹脂/THF溶液をエア
ーコンプレッサーにつなげたスプレーガンの溶液ボトル
に入れ、攪拌機の回転軸に取り付け、120RPMで回
転させている外径10mmφのステンレスパイプにむけ
て20cm離れた位置から60秒間スプレーした。その
際の雰囲気温度は25℃であった。
【0026】スプレー後、表面に繊維が不規則に絡み合
った層が形成されたステンレスパイプを、攪拌機の回転
軸より取り外し、予め30℃に設定した真空乾燥機で真
空脱気しながら2時間乾燥させた後、ステンレスパイプ
表面に形成された繊維が不規則に絡み合った層の上か
ら、前記ステント支持体を一度円周方向に拡張させた後
に被せ、再度収縮させて装着(図3)した。この時点
で、ステントアッセンブリはステント支持体の内側に繊
維が不規則に絡み合った状態の被覆層が形成された状態
である。
【0027】前記ステントアッセンブリを再度攪拌機の
回転軸に取り付け、120RPMで回転させながら、前
記被覆層形成用の溶液をスプレーガンを用いて20cm
離れた位置から30秒間スプレーした。その際の雰囲気
温度は25℃であった。スプレー後、ステントアッセン
ブリを予め30℃に設定した真空乾燥機で真空脱気しな
がら2時間乾燥させ、最後に、ステント支持体以外のス
テンレスパイプ上に形成された被覆層をステント開口部
の両端に沿って切除した後、ステントを円周方向に拡張
させながらステンレスパイプを抜き、本発明の一実施例
である被覆ステントを得た。図1は得られた被覆ステン
トであり、図2はその断面である。
【0028】
【実施例2】前記実施例1と同様の方法にてステント支
持体を作製した。次にスチレン系エラストマー樹脂(タ
フテックH1041 旭化成株式会社製)をテトラヒド
ロフラン(THF 和光純薬工業株式会社製)に28w
t%で溶解し、被覆層形成用の溶液とした。
【0029】前記スチレン系エラストマー樹脂/THF
溶液をエアーコンプレッサーにつなげたスプレーガンの
溶液ボトルに入れ、攪拌機の回転軸に取り付け、120
RPMで回転させている外径10mmφのステンレスパ
イプにむけて10cm離れた位置から60秒間スプレー
した。その際の雰囲気温度は25℃であった。
【0030】スプレー後、表面に繊維が不規則に絡み合
った層が形成されたステンレスパイプを、攪拌機の回転
軸より取り外し、予め30℃に設定した真空乾燥機で真
空脱気しながら2時間乾燥させた後、ステンレスパイプ
表面に形成された繊維が不規則に絡み合った層の上か
ら、前記ステント支持体を一度円周方向に拡張させた後
に被せ、再度収縮させて装着(図3)した。この時点
で、ステントアッセンブリはステント支持体の内側に繊
維が不規則に絡み合った状態の被覆層が形成された状態
である。
【0031】前記ステントアッセンブリを再度攪拌機の
回転軸に取り付け、120RPMで回転させながら、前
記被覆層形成用の溶液をスプレーガンを用いて10cm
離れた位置から30秒間スプレーした。その際の雰囲気
温度は25℃であった。スプレー後、ステントアッセン
ブリを予め30℃に設定した真空乾燥機で真空脱気しな
がら2時間乾燥させ、最後に、ステント支持体以外のス
テンレスパイプ上に形成された被覆層をステント開口部
の両端に沿って切除した後、ステントを円周方向に拡張
させながらステンレスパイプを抜き、本発明の一実施例
である被覆ステントを得た。
【0032】
【比較例】上記実施例1と同様の方法で、ステンレスパ
イプ上に装着したステント支持体をポリウレタン樹脂/
DMF溶液中に浸漬し、乾燥することにより、ステント
支持体の内側に実質的に細胞の通過を許容する孔の存在
しないフィルム状の被覆層を形成した後に、再度ポリウ
レタン樹脂/DMF溶液中に浸漬、乾燥までの工程を繰
り返す事によって得られた被覆ステントを比較例とし
た。(物性比較評価)実施例1及び比較例2で得られた
ステントについて、剥離耐久性評価、圧縮性評価、拡張
性評価、電子顕微鏡表面観察を実施した。
【0033】剥離耐久性評価として、ステントの圧縮、
拡張の操作を繰り返し、被覆層が剥離した時点の操作回
数を比較した。その結果、実施例では圧縮、拡張を10
0回繰り返しても被覆層の剥離は見られなかったが、比
較例では15回で一部が剥離した。圧縮性評価として、
カテーテルシースへの挿入性を評価し、挿入可能なシー
スの内径を比較した。その結果実施例では挿入可能なシ
ースの内径は2mmφであったが、比較例では4mmφ
と実施例の倍の太さのシースが必要であった。
【0034】拡張性評価として、カテーテルシースから
出した後の形状回復性を評価し、形状回復までの時間を
比較した。その結果実施例ではカテーテルシースからス
テントを押し出すと同時に元の形状に拡張した、比較例
では押し出して5秒後に拡張を始めたが、最終的に元の
形状には回復しなかった。
【0035】電子顕微鏡表面観察としては前記剥離耐久
性評価を実施する前のサンプルと、剥離耐久性評価を実
施した後のサンプルの表面を100倍及び5000倍で
観察した。その結果剥離耐久性評価を実施する前の実施
例は内側及び外側共に繊維が不規則に絡み合った形状の
被覆層がステンレスワイヤーを内側の被覆層との間で挟
み込むように一面に形成されていた。比較例では内面は
実施例と同様であったが、外面は孔の存在しない被覆層
がステンレスワイヤーを包み込むように形成されてい
た。また、剥離耐久性評価を実施した後の実施例の表面
は試験実施前と変化は見られなかったが、比較例では被
覆層全体にしわやひずみが見られ、ステンレスワイヤー
を包み込んでいた部分は被覆層が破れステンレスワイヤ
ーがむき出しになっていた。
【0036】
【表1】
【0037】(細胞侵入性比較評価)実施例2及び比較
例1、比較例3で得られたステントについて株化癌細胞
を用いて細胞侵入性評価を実施した。実施例2、比較例
1、比較例3の各ステントの端部にシリコーン接着剤を
付着させた後に、35φのポリスチレン製シャーレの中
央にステントの開口部が上を向くように固定し、クリー
ンベンチでエアーレーションしながら一晩乾燥、翌日純
水で充分洗浄した後に、70%エタノールに浸漬、再度
クリーンベンチで一晩乾燥した。
【0038】上記で作製したステントを固定したシャー
レのステントの外側にHeLa(ヒト子宮癌由来株化細
胞)を2×105Cells/ml×2ml/シャーレ
で播種した。このとき培養液はイーグルMEMに子ウシ
血清10%(培地、血清共に大日本製薬株式会社製)を
添加したものを使用した。
【0039】シャーレのステントの内側に上記培養液を
1ml注入した後、CO2インキュベーターにて培養を
行った。培地交換はステントの外側、内側共に3日に一
度実施した。ステントの内側への細胞進入の有無を透過
顕微鏡下で毎日確認し、ステントの外側の細胞が、ステ
ントを透過して内側まで伸展してくるまでの日数を比較
した。結果を下表2に示す。
【0040】
【表2】
【0041】
【発明の効果】本発明の被覆層ステント及びその製造方
法はステント支持体に繊維が不規則に絡み合った状態の
柔軟な被覆層を設けることで、循環器系の閉塞性動脈硬
化症、動脈解離、動脈瘤等の症例に対する、拡張、修
復、補綴に用いる事ができる。繊維が不規則に絡み合っ
た状態の被覆層は、細胞の透過が可能であり、植え込み
後ステント内腔に擬内膜が形成され、抗血栓性が獲得で
きる。更に酸素や血中の栄養分が透過できるために留置
部位の血管壁への酸素、栄養供給が阻害されず、その結
果長期の開存性を得ることができる。また、本発明の被
覆ステント及びその製造方法によれば、被覆層はステン
ト支持体を挟み込む用に形成され、ステント支持体の間
隙部分で、接着しているために被覆層は剥離脱落するこ
となく、ステント支持体の柔軟な動きに追随し、かつそ
の動きを妨げることもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の被覆ステントの一例を示す斜視図であ
る。
【図2】図1の被覆ステントの円周方向の断面図であ
る。
【図3】本発明の被覆ステントの製造方法の過程で、ス
テンレスパイプで、ステント支持体の内側に繊維が不規
則に絡み合った状態の被覆層が形成された状態を示して
いる。
【符号の説明】
1 ステント支持体 2 ステント支持体の外側に形成された繊維が不規則に
絡み合った被覆層 3 ステント支持体の外側に形成された繊維が不規則に
絡み合った被覆層 4 ステント支持体の間隙部分 5 芯棒

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 人体又は動物の管腔内に挿入可能な一次
    直径から、一次直径より大きい二次直径への拡張が可能
    なステント支持体の全長又は任意の部分に両端が開口し
    た柔軟性のある被覆層を有する被覆ステントで、該柔軟
    性のある被覆層がステント支持体の内側及び外側からス
    テント支持体を挟み込む様に形成されており、該ステン
    ト支持体の内側に形成された被覆層及び、該ステント支
    持体の外側に形成された被覆層は繊維が不規則に絡み合
    った状態であり、更に該ステント支持体の内側に形成さ
    れた被覆層のステント支持体に接する側面と該ステント
    支持体の外側に形成された被覆層のステント支持体に接
    する側面がステント支持体の間隙部分で接着している事
    を特徴とする循環器用被覆ステント。
  2. 【請求項2】 ステント支持体の内側及び外側に形成さ
    れた柔軟性のある被覆層が少なくとも一種類の繊維形成
    可能な高分子材料からなる請求項1記載の循環器用被覆
    ステント。
  3. 【請求項3】 ステント支持体の内側及び外側の被覆層
    が、繊維形成可能な材料の溶剤に溶解した溶液をスプレ
    ーする事により形成された繊維が不規則に絡み合った状
    態である請求項1記載の循環器用被覆ステント。
  4. 【請求項4】 人体又は動物の管腔内に挿入可能な一次
    直径から、一次直径より大きい二次直径への拡張が可能
    なステント支持体の全長又は任意の部分に両端が開口し
    た柔軟性のある被覆層を有する被覆ステントで、柔軟性
    のある被覆層をステント支持体を挟み込むように形成す
    る過程が、ステント支持体の被覆層を形成しようとする
    任意の部分の内側に繊維が不規則に絡み合った状態の被
    覆層を形成する過程と、ステント支持体の被覆層を形成
    しようとする任意の部分の外側に繊維が不規則に絡み合
    った状態の被覆層を形成する過程と、ステント支持体の
    内側に形成された被覆層とステント支持体の外側に形成
    された被覆層をステント支持体の間隙部分で接着させる
    過程よりなる循環器用被覆ステントの製造方法。
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