JPH09272968A - アークイオンプレーティング装置における膜厚制御方法及び膜厚制御装置 - Google Patents

アークイオンプレーティング装置における膜厚制御方法及び膜厚制御装置

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JPH09272968A
JPH09272968A JP8667796A JP8667796A JPH09272968A JP H09272968 A JPH09272968 A JP H09272968A JP 8667796 A JP8667796 A JP 8667796A JP 8667796 A JP8667796 A JP 8667796A JP H09272968 A JPH09272968 A JP H09272968A
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浩 白樫
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 アークイオンプレーティグ装置で長尺のフィ
ルム状基材にコーティングする場合、アーク電流値や基
材の走行速度を予め所望の膜厚に合わせて設定してコー
ティングを継続すると膜厚が次第に低下し、最初の部分
と最終部分とで厚さの差が大きくなって、製品不良が発
生する。 【解決手段】 アーク電流を時間積分した累積電流量
(ターゲットの消耗量)の増加に合わせて、基材の走行
速度を次第に低下させ、また、アーク電流を次第に増加
させる。すなわち、膜厚の低下は、アーク電流が一定の
場合、ターゲットの消耗に伴って蒸発量が次第に低下す
ることに起因しており、したがって、上記のような補正
を行うことで膜厚均一性や製品品質を向上することがで
きる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アークイオンプレ
ーティング装置における膜厚制御方法及び膜厚制御装置
に関する。
【0002】
【従来の技術】アークイオンプレーティング装置は、例
えば工具表面への硬質皮膜の形成などに使用され、ま
た、金属箔や樹脂フィルムなどのフィルム状基材表面へ
の薄膜コーティングにも使用されている。このようなフ
ィルム状基材へのコーティングに使用される装置では、
例えば本発明の説明図である図2に示すように、真空槽
1内にターゲット8が設置され、このターゲット8表面
にアーク放電を生じさせることで発生する蒸発物質8aの
飛散方向にキャンロール7が設けられている。このキャ
ンロール7にフィルム状の基材4を巻き掛けて走行さ
せ、この基材4におけるキャンロール7への巻き掛け領
域表面に蒸発物質8aを付着させることによって、基材4
表面への薄膜コーティングを行うようになっている。
【0003】上記のような装置では、従来、ターゲット
表面に生じさせるアーク放電のアーク電流値や基材の走
行速度を、コーティング膜の膜厚に合わせて予め設定
し、その後、アーク電流値や基材走行速度を各設定値で
維持しながら、コーティングが行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ようにアーク電流値や基材の走行速度を予め所望の膜厚
に合わせて設定し、この状態でコーティングを継続した
場合に、基材表面に実際に形成されるコーティング膜の
膜厚が次第に低下し、基材が長さの長い金属箔等の場
合、この箔の最初の部分と最終部分とで厚さの差が大き
くなって、製品不良が発生するという問題を生じてい
る。
【0005】本発明は、上記した従来の問題点に鑑みな
されたもので、その目的は、基材表面に形成されるコー
ティング膜の膜厚均一性を向上し得ると共に、そのため
の装置構成を簡素なものとすることが可能であり、さら
に、コーティング製品の品質をより向上し得るアークイ
オンプレーティング装置における膜厚制御方法及び膜厚
制御装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本願発明者等は、アークイオンプレーティング装
置での膜厚変動要因を種々検討し、この結果、コーティ
ングの進行に伴って増加していくターゲットの消耗が大
きな膜厚変動要因となっていることを新たに知見し、本
発明をなすに至った。
【0007】すなわち、本発明のアークイオンプレーテ
ィング装置における膜厚制御方法は、真空槽内で基材を
走行させながらターゲット表面にアーク放電を発生さ
せ、ターゲットからの蒸発物質を基材表面に付着させて
膜形成を行う際に、ターゲットの消耗量に合わせて、基
材の走行速度の低下とアーク電流値の増加との少なくと
もいずれか一方を行いながら膜形成を行うことを特徴と
するものである。
【0008】アークイオンプレーティング装置では、前
述したように、ターゲット表面にアーク放電を発生さ
せ、大電流が集中したアークスポットを生じさせてター
ゲット表面を局部的に蒸発させながらコーティングが行
われる。したがって、ターゲットはコーティングの継続
に伴って次第に消耗する。そして、アーク電流が一定の
場合、このターゲットの消耗量の増加に伴って、単位時
間当たりの蒸発量が次第に低下するのである。この結
果、基材の搬送速度が一定の場合には、基材表面に形成
されるコーティング膜の膜厚は次第に薄くなる。
【0009】そこで本発明では、ターゲットの消耗に合
わせて例えば基材の走行速度を低下させる。これによ
り、基材表面における単位面積当たりの蒸発物質の付着
量をより均一に維持することができ、この結果、膜厚均
一性を向上することができる。また、ターゲットの消耗
に合わせてアーク電流値を増加させ、ターゲットの消耗
に応じて低下する蒸発量を補償することで、上記と同様
に、膜厚均一性を向上することが可能となる。
【0010】上記方法を好適に実施するための膜厚制御
装置としては、請求項2記載のように、真空槽内で基材
を設定速度に合わせて走行させる走行駆動手段と、ター
ゲットに設定電流値に応じたアーク電流が流れるように
電力を供給するアーク電源とを備え、ターゲット表面で
のアーク放電により発生する蒸発物質を、走行する基材
表面に付着させて膜形成を行うアークイオンプレーティ
ング装置における膜厚制御装置において、上記設定速度
と設定電流値との少なくともいずれか一方を、ターゲッ
トの消耗量に合わせて変更する設定値変更手段を設けて
構成される。
【0011】この場合、請求項3記載のように、アーク
放電時におけるアーク電流の時間積分を逐次求めるアー
ク電流積算手段を設け、このアーク電流の時間積分値の
増加に合わせて上記の変更を行うように構成することが
望ましい。すなわち、上記のアーク電流の時間積分値と
ターゲットの消耗量とはほぼ比例関係にある。したがっ
て、積算電流計等で構成し得るアーク電流積算手段を追
設し、その計測値に基づく制御構成とすることで、ター
ゲットの消耗量に応じた自動補正機能を有する装置をよ
り簡素なものとすることができる。
【0012】また、請求項4記載のように、設定電流値
が上限値に達するまでは、ターゲットの消耗量に合わせ
て設定電流値を増加させ、設定電流値が上限値に達して
以降、ターゲットの消耗量に合わせて設定速度を低下さ
せる制御構成とすることで、コーティング製品の品質を
向上することができる。すなわち、ターゲットの消耗量
に合わせてアーク電流値を増加させていくだけの制御で
は、その電流値に応じてターゲット表面の温度上昇の度
合いが大きくなり、その輻射熱が、ターゲットに対向す
る位置で走行する基材に作用する。この結果、基材が例
えばフィルム状の金属箔などの場合に、基材の局部的な
温度上昇に伴う熱膨張が生じ、これが、基材にシワを発
生させて製品不良となるおそれがある。
【0013】そこで、アーク電流に対する上限値を定
め、この上限値近傍でアーク電流の増加を抑えて、その
後は基材の走行速度を低下させる制御を行うことで、基
材の過熱が防止され、これによって、膜厚均一性に優れ
たコーティングをなし得ると共に、上記したシワの発生
のない良質の製品を製造することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、図面に基づいて本発明一実
施形態について説明する。図2は、アークイオンプレー
ティング装置における真空槽1内の要部構成を模式的に
示すものであって、真空槽1内は隔壁1aによって基材搬
送駆動室2と蒸着室3とに区画されている。基材搬送駆
動室2には、フィルム状の基材4が巻付けられた巻出し
ロール5と、基材4を巻取る巻取ロール6と、これら両
ロール5・6間に配置されたキャンロール7とが設けら
れている。
【0015】キャンロール7は、隔壁1aに形成されてい
る開口を通して、外周面の一部が蒸着室3側に突出する
ように配置されている。このキャンロール7に巻出しロ
ール5から供給される基材4を巻き掛けて走行させた
後、巻取ロール6で巻取るように構成されている。な
お、走行状態の基材4に作用する張力が所定の範囲に維
持されるように、基材4の走行経路上には自動張力調整
装置(図示せず)がさらに設けられている。
【0016】一方、蒸着室3内には、基材4表面にコー
ティングする膜に対応する材質から成るターゲット8
と、図示してはいないが、このターゲット8の表面に真
空アーク放電を発生させるための放電発生機構とが設け
られている。上記装置で、例えば厚さ:50μm、幅:500
mmのアルミニウム金属箔を基材4とし、これに例えば
チタン膜をコーティングする場合を例に挙げて、その製
造手順を説明する。
【0017】まず、巻出しロール5に巻付けられた上記
の基材4の先端部を、キャンロール7に巻き掛けた後に
巻取りロール6に係止し、真空槽1の基材搬送駆動室2
内に、図2に示す状態にセットする。また、蒸着室3内
には、チタン製のターゲット8を装着する。その後、図
示しない真空ポンプを駆動して真空槽1内を排気し、所
定の真空度に達した後に、前記放電発生機構の作動を開
始して、カソード電極としてのターゲット8と、放電発
生機構におけるアノード電極との間に所定の電圧を印加
し、ターゲット8の表面にアーク放電を生じさせる。
【0018】同時に、巻出しロール5とキャンロール7
および巻取りロール6とを互いに同期させて回転させる
ことにより、基材4の走行を開始させる。上記のよう
に、ターゲット8の表面に真空中でアーク放電を生じさ
せることにより、放電電流が集中したアークスポットに
よって、ターゲット8表面の微小領域が蒸気化する。こ
の蒸気はさらに電離してプラズマ流が形成され、このプ
ラズマ流から、負のバイアス電圧が印加されている前記
キャンロール7の方向に正イオンが蒸発物質8aとして引
き出される。これが、キャンロール7に巻き掛けられて
走行する基材4表面に付着し、基材4にターゲット8と
同材質、すなわち、チタンから成る膜がコーティングさ
れる。この膜厚が所望の値になるように、基材4の走行
速度およびアーク電流値が、後述する膜厚制御装置10に
より制御されながら、上記のコーティングが継続され
る。
【0019】上記の膜厚制御装置10には、図1に示すよ
うに、前記した巻出しロール5や巻取りロール6・キャ
ンロール7を回転駆動する基材走行駆動モータ(走行駆
動手段)11がモータコントローラ12を介して接続されて
いる。また、膜厚制御装置10には、前記放電発生機構と
ターゲット8との間で発生するアーク放電の放電電力を
供給するアーク電源14がさらに接続されている。
【0020】膜厚制御装置10から、設定速度に応じた速
度指令信号がモータコントローラ12に出力され、これに
よって、基材走行駆動モータ11が上記の速度指令信号に
合わせた回転速度で駆動される。また、アーク電源14に
は設定電流値に応じたアーク電流指令信号が出力され、
この指令信号に応じた電流値でアーク放電が維持される
ように、上記アーク電源14からの供給電力が制御され
る。そして、上記の設定速度や設定電流値は、後述する
ように、コーティングの経過に伴って膜厚制御装置10内
で逐次変更して出力されるようになっており、したがっ
て、この膜厚制御装置10は、設定値変更手段としての機
能を有している。
【0021】なお、基材走行駆動モータ11には速度検出
器13が付設されている。この速度検出器13での検出信号
は上記膜厚制御装置10に入力され、この検出信号を設定
速度と比較し、その比較結果に応じた増速、或いは減速
の修正信号をモータコントローラ12にさらに出力する。
これにより、基材4は上記の設定速度に合わせた速度で
維持されながら、前記巻出しロール5からキャンロール
7を経て巻取りロール6へと走行する。
【0022】一方、アーク電源14には、出力中のアーク
電流値を逐次時間積分するアーク電流積算手段としての
積算電流計15が付設され、その計測値が逐次膜厚制御装
置10に入力されるように構成されている。この計測値に
応じて、膜厚制御装置10で設定速度や設定電流値の変更
が行われるが、その詳細については後述する。基材4が
幅広の場合には、前記蒸着室3内に、基材4の幅方向に
沿って複数のターゲット8…が設置されて基材4へのコ
ーティングが行われる。この場合、基材4表面に形成さ
れる膜厚が幅方向に均一になるように、上記各ターゲッ
ト8…毎に適正なアーク電流値が定められて個別に制御
される。したがって、上記積算電流計15は、各ターゲッ
ト8…毎に積算電流値を計測し、これらを膜厚制御装置
10に出力するように構成されている。
【0023】上記構成の膜厚制御装置10には、運転に先
立って、下記項目a〜eが図示しない操作盤から入力さ
れる。 a. 基材走行速度初期値Vis (単位:m/min) b. アーク電流初期値Iis(k) (単位:A) 但し、kはターゲットNo. で、k=1,2,3,… c. アーク電流上限値Ixe (単位:A) d. ターゲット限界量Lxe (単位:A・Hr) e. 補正率S (単位:%) 基材走行速度初期値Visと、各ターゲット8…毎のアー
ク電流初期値Iis(k)とは、所望の膜厚に応じて予め求
められているもので、これらの値に合わせて、運転が開
始される。
【0024】アーク電流上限値Ixeは、後述するよう
に、運転の継続に伴ってアーク電流をアーク電流初期値
isから次第に増加させる制御を行う場合に、その上限
値として設定されるものである。ターゲット限界量Lxe
はターゲット8の使用限界である。すなわち、ターゲッ
ト8はアーク放電によって蒸発し消費される。そして、
残量が少なくなってくると、アーク放電による安定した
蒸発が維持されなくなる。そこで、この安定した蒸発を
維持し得る使用限界を予め求めている。なお、この使用
限界、すなわち残量は、初期重量が一定であれば累積蒸
発量で表すことができる。そして、この累積蒸発量は、
アーク電流の時間積分(以下、累積電流量という)に略
比例することから、ここでは、この使用限界時までの累
積電流量(単位:A・Hr) がターゲット限界量Lxeとして
設定される。
【0025】補正率Sは次のように設定される。すなわ
ち、アーク電流と基材4の走行速度とを、それらの上記
した各初期値Iis(k) ・Visとしたままで、ターゲット
限界量Lxeに達するまでコーティングを試験的に実施
し、このときに基材4の表面に形成されたコーティング
膜の初期の膜厚と終了時の膜厚との比を予め求め、この
比を補正率Sとして設定する。例えば、終了時の膜厚が
初期の膜厚と同じであれば補正率Sとして 100%が、初
期の膜厚の半分に低下していれば、補正率Sとして 200
%が設定される。
【0026】上記のような初期設定を終了して運転が開
始されると、前記膜厚制御装置10は、基材走行速度初期
値Visとアーク電流初期値Iisとに応じた速度指令信号
とアーク電流指令信号とを、それぞれモータコントロー
ラ12とアーク電源14とに出力する。これにより、上記各
初期値Vis・Iisでの基材4の走行とアーク放電とが開
始され、基材4表面へのコーティングが開始される。
【0027】その後、膜厚制御装置10には、前記の積算
電流計15での各ターゲット8…毎の計測値が各々のター
ゲット消耗量L(k) (k=1,2,3,…)として逐次入力さ
れ、この入力信号に応じて、基材4の走行速度をその初
期値Visから次第に低下させる制御や、アーク電流をそ
の初期値Iisから次第に増加させる制御を行う。次に、
上記のようにターゲット消耗量L(k) に応じた制御を行
う理由について説明する。
【0028】表1には、アーク電流を一定としたままで
試験的にコーティングを行い、このときのターゲットの
重量変化について実測した結果の一例を示している。す
なわち、コーティング開始時T0にそれぞれ重量が1770g
であった各ターゲットNo.4〜6,10〜12に対し、その後の
コーティングの進行に伴う重量変化を、適当な時期T1,
…T5毎に、そのときまでの累積電流量Lと共に順次測定
したものである。
【0029】
【表1】
【0030】図3中に、表1における累積電流量Lとタ
ーゲットの平均重量Wとの関係をグラフ化して示してい
る。図のように、ターゲットの平均重量Wの低下は累積
電流量Lに対して直線状ではなく、その低下の度合い
は、累積電流量Lの増加に伴って徐々に小さくなってい
る。このことは、ターゲットからの時々刻々の蒸発量
が、累積電流量Lの増加、すなわち、ターゲットの消耗
に伴って次第に低下していることを意味する。そこで、
表1の測定データに基づき、ターゲットからの蒸発量と
累積電流量との関係をさらに求めれば、表2のようにな
る。
【0031】
【表2】
【0032】同表から、例えばT0〜T1の期間での中間時
点、すなわち、累積電流量Lが 975.5AHrの時点で、単
位電流量当たりの蒸発量vは0.089gであり、これが、T1
〜T2の期間における累積電流量L=2859.5AHrの時点で
は、0.077g/AHrに低下することが示されている。これ
をグラフ化したものも図3中に示している。なお、上記
のように蒸発量が次第に低下する現象については、ター
ゲットに対する冷却効果や表面性状の変化が考えられ
る。すなわち、一般にターゲットは背面側で冷却されて
おり、したがって、ターゲットが消耗すると冷却効果が
次第に大きくなる。また、アーク放電の継続に伴ってタ
ーゲット表面は次第に荒れてくる。これらに起因して、
蒸発量の低下が生じるものと考えられる。
【0033】このように、アーク電流が一定のままでコ
ーティングを行うと、ターゲットからの蒸発量vが次第
に低下することから、コーティング開始時に所望の厚さ
に合わせてアーク電流初期値Iisや基材走行速度初期値
isを設定しても、基材表面に形成されるコーティング
膜の膜厚は、上記のような蒸発量vの低下に比例して次
第に低下する。
【0034】そこで、コーティング開始時の膜厚で均一
に維持するためには、上記のような蒸発量の低下を補償
する操作が必要となる。すなわち、コーティング開始時
の初期蒸発量をv0 、累積電流量Lの時点での蒸発量を
vとしたときの両者の比C(=v0/v)に応じて、基材走
行速度を低下させる操作やアーク電流を増加させる操作
を行うことで、膜厚を均一に維持することが可能にな
る。
【0035】前記表2中には、さらに、上記の比Cと累
積電流量Lとの関係を求めるために、蒸発量vの逆数を
それぞれ算出して付記し、その算出結果を図3中にグラ
フ化して示している。同図のように、算出値はほぼ一直
線上にプロットされており、したがって、1/vは累積
電流量Lに対する一次式で近似することができる。した
がって、上記の比Cも、 C=v0 /v=a1+a2・L ……(1) のように、累積電流量Lについて一次式で表される関係
を有している。これにより、上記の比C、すなわち補正
係数は、累積電流量Lの変化毎に逐一求めておく必要は
なく、(1) 式での定数a1,a2 が定まれば、この(1) 式に
基づき、逐次算出することができる。
【0036】そこで、本実施形態では、前記したよう
に、アーク電流一定の試験で、累積電流量Lが0のとき
の初期膜厚t0と、ターゲット限界量Lxeのときの最終膜
厚txeとを予め求めている。すなわち、これらの膜厚比
S'(=t0/txe)は、初期蒸発量v0 と、ターゲット限界
量Lxeのときの蒸発量vxeとの比に相当する。そして、
これらの値に基づき、(1) 式での定数a1,a2 は、 a1=1 (∵L=0のとき、C=v0/v0 =1) a2=(S'−1)/Lxe となる。また、前記した操作盤で設定される%単位での
補正率Sと上記の膜厚比S'との関係(S=100×S')を加
味して(1) 式を書き換えれば、 C={(S-100) ×( L/Lxe) +100 }/100 ……(2) となる。
【0037】この補正係数Cを、前記膜厚制御装置10で
はターゲット消耗量Lの増加に応じて時々刻々算出し、
基材4の走行速度を制御する場合には、補正速度VをV
=V is/Cで演算し、初期時からの蒸発量の低下に合わ
せて基材4の走行速度を低下させる。また、アーク電流
を制御する場合には、補正電流IをI=Iis×Cで演算
し、蒸発量が初期蒸発量と同等に維持されるように、ア
ーク電流を増加させる制御を行う。
【0038】次に、前述したように複数のターゲット8
…が設けられている場合での上記の膜厚制御装置10での
具体的な制御手順について、基材の走行速度制御をア
ーク電流制御よりも優先して行う場合(基材走行速度制
御)と、アーク電流制御を基材の走行速度制御よりも
優先して行う場合(アーク電流制御)とに分けて説明す
る。
【0039】基材走行速度制御 この制御では、まず、前記(2) 式に基づいて、各ターゲ
ット8毎の補正係数C(k) を次式(3) により求める。 C(k) ={(S-100) ×( L(k)/Lxe) +100 }/100 ……(3) ここでkはターゲットNoで、k=1,2,3,… そして、C(k) のうちの最大の値をCMAX とし、この補
正係数CMAX によって基材4の補正速度Vt を、 Vt =Vis/CMAX ……(4) で求め、これに応じた速度指令信号を前記モータコント
ローラ12に出力することにより、基材4の走行速度を上
記Vt に低下させる。
【0040】このとき、基材走行駆動系における速度制
御精度の信頼性が、例えば小数点1桁である場合には
(4) 式で得られた補正速度Vt における2桁以下は切り
捨てる。そして、この切り捨て分を補い、かつ各ターゲ
ット8…の消耗量が異なった場合に全てのターゲットか
らの蒸発量を同一とするために、各アーク電流I(k) を
下記演算式(5) にてさらに補正する。すなわち、このと
きに2桁以下を切り捨てた補正速度をVtCとし、補正後
のアーク電流をI(k) とするとき、 (Vis/VtC) ×(I(k) /Iis) =C(k) となるように、 I(k) =Iis(k) ×(VtC/Vis) ×{(S-100) ×(L(k)/Lxe) +100 }…(5) の演算式で算出し、その結果に基づいて、各ターゲット
でのアーク電流I(k) を初期電流Iisから増加させる。
【0041】このような制御を行うことにより、基材4
の全長にわたって均一なコーティング膜を形成すること
ができる。しかも、上記のように基材走行速度の制御を
優先して行い、その速度制御精度に合わせてアーク電流
制御を加味することで、基材4の走行速度駆動系の制御
精度がそれほど高くない構成でも、コーティング膜の均
一をより高めた膜形成を行わせることが可能となる。
【0042】アーク電流制御 この制御では、まず、前記同様に、各ターゲット毎の補
正係数C(k) を、 C(k) ={(S-100) ×( L(k)/Lxe) +100 }/100 ……(6) によって算出し、この算出結果から、各ターゲット毎の
補正電流I(k) を、 I(k) =Iis(k) ×C(k) ……(7) で求める。この結果に応じたアーク電流指令信号を前記
アーク電源14に出力することによって、各ターゲット8
…に流れるアーク電流を各々のアーク電流初期値I
is(k) から次第に増加させる。
【0043】そして、このアーク電流制御では、上記
(7) 式によって算出される補正電流I(k) を前記アーク
電流上限値Ixeと比較し、補正電流I(k) の中で一つで
も上限値Ixeを超えた場合には、前記アーク電源14への
出力はアーク電流上限値Ixeに対応する指令信号とし、
補正電流I(k) とアーク電流上限値Ixeとの差に相当す
る補償は基材の走行速度制御で行う。すなわち、このと
きの補正電流I(k) とアーク電流上限値Ixeとの比の最
大値をCMAX とするとき、さらに補正走行速度V t を、 Vt =Vis/CMAX ……(8) で求め、これを前記モータコントローラ12に出力し、基
材4の走行速度を低下させる。
【0044】なお、この場合に、基材4の走行速度制御
精度の信頼性が例えば小数点1桁である場合には、前記
と同様に、補正走行速度Vt における2桁以下は切り捨
て、この切り捨て分を補うために、さらに補正アーク電
流を前記同様に算出し直す。すなわち、2桁以下を切り
捨てたときの補正走行速度をVtCとするとき、 (Vis/VtC) ×(I(k) /Iis) =C(k) となるように、 I(k) =Iis×(VtC/Vis) ×C(k) ……(9) を算出し、これをアーク電源14に出力して、アーク電流
を増加させる制御を行う。これにより、アーク電流は、
その上限値Ixeをわずかに超える値以下に抑えられた状
態で維持される。
【0045】このような制御により、基材4の全長にわ
たって均一なコーティング膜を形成することができる。
しかも、上記のようにアーク電流の制御を優先して行う
場合に、その上限値を過度に超えないように、基材の走
行速度制御が併用される。これにより、アーク電源14と
してその可変範囲がそれほど広くなく、また、基材の走
行駆動系もそれほど高精度のものでない簡単な構成で、
膜厚の均一性をより高精度に維持することができる。
【0046】特に、上記のようにアーク電流の上昇を予
め設定した上限値近傍で抑える構成では、コーティング
製品の品質の低下をより確実に防止できる。すなわち、
アーク電流値を増加させていくと、その電流値に応じて
ターゲット表面における温度上昇の度合いが大きくな
り、その輻射熱が、ターゲットに対向する位置で走行す
る基材に作用する。このような輻射熱により、従来、基
材が例えばフィルム状の金属箔などの場合に、基材の局
部的な温度上昇に伴う熱膨張が生じて、これに起因する
しわが基材に発生していた。
【0047】そこで、上記のように上限値を設定し、こ
の上限値でアーク電流の増加を抑え、その後の補正は基
材の走行速度を低下させる制御とすることで、上記した
ようなシワの発生のない良質の製品を製造することが可
能となる。
【0048】
【発明の効果】以上の説明のように、本発明において
は、ターゲットの消耗に合わせて基材の走行速度を低下
させ、また、アーク電流値を次第に増加させるので、基
材が長尺の場合でも全体にわたっての膜厚均一性が向上
し、これによってコーティング製品の品質を向上するこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態におけるアークイオンプレ
ーティング装置の制御構成を示すブロック図である。
【図2】上記装置の要部構成を示す模式図である。
【図3】アーク電流の累積電流量の増加に対するターゲ
ット重量および蒸発量、蒸発量の逆数の各変化を示すグ
ラフである。
【符号の説明】
1 真空槽 4 基材 8 ターゲット 8a 蒸発物質 10 膜厚制御装置(設定値変更手段) 11 基材走行駆動モータ(走行駆動手段) 14 アーク電源 15 積算電流計(アーク電流積算手段)

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 真空槽内で基材を走行させながらターゲ
    ット表面にアーク放電を発生させ、ターゲットからの蒸
    発物質を基材表面に付着させて膜形成を行うアークイオ
    ンプレーティング装置における膜厚制御方法において、 ターゲットの消耗量に合わせて、基材の走行速度の低下
    とアーク電流値の増加との少なくともいずれか一方を行
    いながら膜形成を行うことを特徴とするアークイオンプ
    レーティング装置における膜厚制御方法。
  2. 【請求項2】 真空槽内で基材を設定速度に合わせて走
    行させる走行駆動手段と、ターゲットに設定電流値に応
    じたアーク電流が流れるように電力を供給するアーク電
    源とを備え、ターゲット表面でのアーク放電により発生
    する蒸発物質を、走行する基材表面に付着させて膜形成
    を行うアークイオンプレーティング装置における膜厚制
    御装置において、 上記設定速度と設定電流値との少なくともいずれか一方
    を、ターゲットの消耗量に合わせて変更する設定値変更
    手段が設けられていることを特徴とするアークイオンプ
    レーティング装置における膜厚制御装置。
  3. 【請求項3】 アーク放電時におけるアーク電流の時間
    積分を逐次求めるアーク電流積算手段がさらに設けら
    れ、上記設定値変更手段が、アーク電流積算手段で求め
    られるアーク電流の時間積分値の増加に合わせて上記の
    変更を行うことを特徴とする請求項2記載のアークイオ
    ンプレーティング装置における膜厚制御装置。
  4. 【請求項4】 設定電流値が上限値に達するまでは、タ
    ーゲットの消耗量に合わせて設定電流値を増加させ、設
    定電流値が上限値に達して以降、ターゲットの消耗量に
    合わせて設定速度を低下させる制御を上記設定値変更手
    段が行うことを特徴とする請求項2又は3記載のアーク
    イオンプレーティング装置における膜厚制御装置。
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