JPH09271811A - 二相ステンレス鋼製継目無鋼管の製造方法 - Google Patents

二相ステンレス鋼製継目無鋼管の製造方法

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JPH09271811A
JPH09271811A JP8087853A JP8785396A JPH09271811A JP H09271811 A JPH09271811 A JP H09271811A JP 8087853 A JP8087853 A JP 8087853A JP 8785396 A JP8785396 A JP 8785396A JP H09271811 A JPH09271811 A JP H09271811A
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哲也 中西
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Abstract

(57)【要約】 【課題】高W二相ステンレス鋼製の継目無鋼管の製造方
法を提供する。 【解決手段】1.5重量%超、5重量%以下のWを含有
する二相ステンレス鋼製のビッレトを、フェライト含有
量が40〜80体積%になる温度域に加熱した後、穿孔
圧延もしくは穿孔圧延に引き続く傾斜ロール式管圧延機
による延伸圧延を、延伸比3.0以下の条件で行う。 【効果】管外面のしわ疵と被れ疵は勿論、管内面の被れ
疵のない高品質な製品が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、二相ステンレス鋼
製継目無鋼管の製管方法に係わり、特に、Wを多く含有
する二相ステンレス鋼を素材とし、この素材を傾斜ロー
ル式などの穿孔圧延機で熱間圧延製管する場合に好適な
二相ステンレス鋼製継目無鋼管の製管方法に関する。
【0002】
【従来の技術】二相ステンレス鋼は、耐食性や溶接性に
優れており、フェライト系やオーステナイト系のステン
レス鋼に比べて特に耐海水腐食性と強度に優れている。
このため、その継目無鋼管は、海底フローラインのライ
ンパイプなどとして広く用いられている。
【0003】なかでも、本出願人が先に提案した特開平
5−132741号公報に示されるようなWを1.5〜
5重量%と多く含む二相ステンレス鋼は、従来の二相ス
テンレス鋼に比べて強度と耐食性、特に耐海水腐食性が
一段と優れるほか、金属間化合物の析出による機械的性
質と耐食性の劣化が小さい材料であることから、上記海
底フローラインのラインパイプなどとして多く用いられ
つつある。
【0004】しかし、上記のような二相ステンレス鋼
は、フェライト系やオーステナイト系のステンレス鋼に
比べて熱間加工性が悪く、分塊圧延や穿孔圧延時に割れ
疵などが多く発生し、製品歩留まりが悪いという欠点を
有している。
【0005】この熱間加工性を改善する方法としては、
従来から種々の方法が提案されている。例えば、結晶粒
間に偏析して熱間加工性を低下させるSの含有量を低く
した上で、Caや希土類元素(REM)などを添加して
固溶Sを固定し、さらにBを添加してSが結晶粒間に偏
析するのを抑制する方法(特開昭60−262946号
公報)、継目無鋼管の穿孔圧延時に素材であるビッレト
の加熱をフェライト含有量が所定量になる温度域で行う
方法(特開昭59−80716号公報および特開平3−
180427号公報)などがある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記前者の方法による
場合には、確かに熱間加工性は向上する。しかし、この
方法による場合には、本来二相ステンレス鋼が備える耐
食性が低下するという問題がある。
【0007】また、上記後者の方法は、いずれもW含有
量が1.5重量%以下の二相ステンレス鋼を加工対象と
し、製管時に管外面に発生する表面欠陥のみを防止する
方法である。
【0008】すなわち、上記後者のうち、特開昭59−
80716号公報に示される方法は、素材であるビッレ
トの加熱をフェライト含有量が70体積%以上になる温
度域で行う方法である。この方法による場合、確かに魚
鱗状の被れ疵(以下、単に「被れ疵」という)の発生を
防ぐことができる。
【0009】しかし、この方法は、ビレットのフェライ
ト含有量が多すぎるためにフェライト粒の不均一変形に
起因するリジング現象が発生する。この結果、管外面に
上記被れ疵とは異なり、管表面が凸凹になるしわ状の疵
(以下、単に「しわ疵」という)が多発し、このしわ疵
の発生を抑制しようとすると、上記フェライト含有量を
低くする必要があるために被れ疵が多発するという問題
があった。
【0010】これに対し、上記後者のうち、特開平3−
180427号公報に示される方法は、本発明者らが先
に提案した方法で、素材であるビッレトの加熱をフェラ
イト含有量が50〜70体積%になる温度域で行う方法
であり、管外面にしわ疵が発生するのを確実に防止でき
るとともに、被れ疵が管外面に発生するのをも抑制する
ことができる。また、この方法では、その圧延中、圧延
機の圧延ロールに供給される冷却水が被加工材料にかか
らないように除去することで、被れ疵が管外面に発生す
るのを確実に抑制することができる。
【0011】しかし、この特開平3−180427号公
報に示される方法によって前述したWを1.5〜5重量
%と多く含む二相ステンレス鋼製のビレットを素材とし
て継目無鋼管を製造した場合、管外面に被れ疵が多発す
るのみならず、管内面にも被れ疵が多発するという問題
があった。
【0012】本発明は、かかる実情に鑑みてなされたも
ので、その課題は、1.5重量%超、5重量%以下のW
を含む二相ステンレス鋼を加工対象とした場合におい
て、被れ疵が管内外面に発生するのをともに抑制でき、
かつしわ疵が管外面に発生するのをも抑制することがで
きる二相ステンレス鋼製継目無鋼管の製造方法を提供す
ることにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、1.5重
量%超、5重量%以下のWを含む二相ステンレス鋼を加
工対象とした場合、管外面に被れ疵が多発するのみなら
ず、管内面にも被れ疵が発生する原因を究明すべく種々
実験研究を行った結果、次のことを知見し、本発明をな
すに到った。
【0014】管外面の被れ疵は、被加工材料である鋼の
熱間加工性が悪いことに起因して発生する。具体的に
は、塑性加工に先立って均一加熱したビレットの外面側
の温度がその加工中に低下し、この部分の熱間加工性が
悪くなることに起因して発生する。特に、オーステナイ
ト相とフェライト相とからなる二相ステンレス鋼は、フ
ェライト相に比べてオーステナイト相の方が高強度で両
者の強度差が大きく、この強度差が大きくなればなるほ
ど熱間加工性が悪くなる。すなわち、均一加熱したビレ
ットの外面側の温度が低下すると、これに伴ってオース
テナイト相の含有量が増加してその強度差が増大するの
みならず、固溶しにくいSなどの不純物が粒界に多く偏
析し、その部分の熱間加工性が悪化するるために塑性加
工の際にオーステナイト相とフェライト相との境界部で
粒界割れが発生して管外面の被れ疵になるのである。
【0015】また、鋼の熱間加工性は、通常、鋼の高温
強度が高ければ高いほど悪くなる。
【0016】従って、本発明が加工対象とする1.5重
量%超、5重量%以下とWを多く含む二相ステンレス鋼
は、Wが高温強度を高めるのみならずオーステナイト相
を強化するので、上記の強度差と高温強度が1.5重量
%以下のWを含む従来の二相ステンレス鋼に比べていず
れも高いために熱間加工性が劣り、管外面に被れ疵が発
生しやすいので、より高温にビレットを加熱する必要が
ある。
【0017】一方、二相ステンレス鋼の熱間加工性は、
フェライト相の含有量が多ければ多いほど向上する。す
なわち、フェライト相の含有量が多い分だけ強度の高い
オーステナイト相の含有量が減少し、両者の境界部が少
なくなるので、この境界部での粒界割れの発生頻度が減
少する結果、熱間加工性が向上する。
【0018】そして、このフェライト含有量は、鋼の温
度によって異なり、通常、温度が高くなるのに従って多
くなる。このことから、前述した従来技術においては、
熱間加工性を高めるためにフェライト含有量が所定量に
なる温度域でビレット加熱し、この加熱ビレットを穿孔
圧延することで管外面に被れ疵が発生するのを防ぐよう
にしている。
【0019】しかし、高温強度が高いことから熱間加工
性を向上させるためにビレットをより高温に加熱すると
フェライト含有量が多くなり、フェライト粒の不均一変
形に起因するリジング現象が発生し、管外面にしわ疵が
発生することになる。
【0020】そこで、本発明者らは、本発明で加工対象
とする前述したW含有量の多い二相ステンレス鋼とW含
有量の少ない従来の二相ステンレス鋼を対象に、フェラ
イト含有量に及ぼす加熱温度の影響を調査した。
【0021】図1は、その調査結果を示す図であり、調
査は表1に示す化学成分を有する4書類の鋼を対象に行
った。なお、表1中、鋼No. A〜Cは本発明で加工対象
とする高W二相ステンレス鋼、鋼No. Dは従来の低W二
相ステンレス鋼である。
【0022】
【表1】
【0023】図1に示す調査結果から明らかなように、
本発明で加工対象とする高W二相ステンレス鋼の同一加
熱温度におけるフライト含有量は、いずれの鋼も、従来
の低W二相ステンレス鋼よりも少なく、しかもそのフェ
ライト含有量が40〜80体積%の範囲であればフェラ
イト粒の不均一変形に起因するリジング現象が抑制され
て管外面にしわ疵が発生しないことが判明した。
【0024】また、上記の結果、ビレットを高温加熱す
ることができ、高温強度の高いことに起因して熱間加工
性が低下するのを防ぐことができ、管外面に被れ疵が発
生するのをより確実に抑制できることも判明した。
【0025】ところが、上記の判明結果を基に、高W二
相ステンレス鋼製のビレットをフェライト含有量が40
〜80体積%になる温度域に加熱して穿孔圧延すると、
管内面に被れ疵が多発した。
【0026】ここで、穿孔圧延時における被加工材料の
温度について注目すると、次のようになる。すなわち、
被加工材料の外面側の温度は、冷却水により強制的に冷
却されている穿孔圧延機の圧延ロールと接触しているの
で低下する。これに対し、被加工材料の内面側の温度
は、材料がプラグと摺動摩擦接触して摩擦発熱するので
昇温する。従って、管内面の被れ疵は、管外面の被れ疵
の発生原因であるビレットの外面側の温度低下によるそ
の部分の熱間加工性の低下とは異なる原因によって発生
していることになる。
【0027】そこで、本発明者らは、この管内面の被れ
疵の発生原因がビレットの内面側の温度上昇、具体的に
は鋼の高温延性の相違によるのではないかと考え、前述
の表1に示したと同じ4種類の鋼を対象に、その高温延
性を調査した。
【0028】図2は、その調査結果を示す図である。こ
の図2に示す調査結果から明らかなように、従来の低W
二相ステンレス鋼の高温延性は、温度が高くなるに従っ
て向上し、温度が1350℃を超えても低下することが
ない。これに対し、本発明で加工対象とする高W二相ス
テンレス鋼の高温延性は、温度が1300℃を超えると
急激に低下している。これは、多量のW添加により鋼の
融点(固相線温度)が低下し、その組織中に一部液相が
出現するためである。
【0029】そして、この高温延性の低下が原因で管内
面に被れ疵が発生するが、穿孔圧延時およびこの穿孔圧
延に引き続いく傾斜ロール式の管圧延機で延伸圧延を施
す場合の延伸圧延時における加工度を延伸比(加工前の
材料長さ/加工後の材料長さ)で3.0以下に制限する
場合には、被れ疵が管内面に発生するのを防ぐことが可
能であることが判明した。
【0030】本発明は、上記した知見に基づいてなされ
たもので、その要旨は次の二相ステンレス鋼製継目無鋼
管の製造方法にある。
【0031】1.5重量%超、5重量%以下のWを含有
する二相ステンレス鋼製のビッレトを、フェライト含有
量が40〜80体積%になる温度域に加熱した後、穿孔
圧延もしくは穿孔圧延とこれに引き続く傾斜ロール式管
圧延機による延伸圧延を、延伸比3.0以下の条件で行
うことを特徴とする二相ステンレス鋼製継目無鋼管の製
管方法。
【0032】上記本発明の方法においては、その穿孔圧
延もしくは穿孔圧延とこれに引き続く傾斜ロール式の管
圧延機による延伸圧延中、圧延ロールに供給される冷却
水または気液混合冷却水が被圧延材料にかからないよう
に圧延ロールの表面から冷却水を除去するか、もしくは
前記冷却水による圧延ロールの冷却を停止するのが好ま
しい。
【0033】また、加工対象とする鋼は、上記W以外
に、重量%で、C:0.03%以下、Si:0.1〜2
%、Mn:0.1〜2%、P:0.05%以下、S:
0.008%以下、sol−Al:0.1%以下、N
i:5〜11%、Cr:17〜30%、Mo:1〜6
%、N:0.1〜0.4%を含み、さらにCa:0〜
0.02%、Mg:0〜0.02%、REM:0〜0.
2%およびB:0〜0.05%のうちの1種または2種
以上、並びにCu:0〜2%、V:0〜1.5%、T
i:0〜0.5%およびNb:0〜0.5%のうちの1
種または2種以上を含み、残部Feおよび不可避的不純
物からなる二相ステンレス鋼であることが好ましい。
【0034】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係わる二相ステン
レス鋼製継目無鋼管の製管方法の実施態様について詳細
に説明する。
【0035】(素材ビレットについて)本発明において
用いる素材ビレットは、1.5重量%超、5重量%以下
のWを含有する二相ステンレス鋼であればよく、その他
の成分とその含有量は特に制限されない。しかし、海底
フローラインのラインパイプとして用いた場合、優れた
耐食性などを備えるものである必要があり、そのために
は下記の成化学成分を有する二相ステンレス鋼を用いる
のが好ましい。
【0036】すなわち、重量%で、C:0.03%以
下、Si:0.1〜2%、Mn:0.1〜2%、P:
0.05%以下、S:0.008%以下、sol−A
l:0.1%以下、Ni:5〜11%、Cr:17〜3
0%、W:1.5%超5%以下、Mo:1〜6%、W:
1.5%〜5%、N:0.1〜0.4%を含み、さらに
Ca:0〜0.02%、Mg:0〜0.02%、RE
M:0〜0.2%およびB:0〜0.05%のうちの1
種または2種以上、並びにCu:0.1〜2%、V:
0.05〜1.5%、Ti:0.01〜0.5%および
Nb:0.01〜0.5%のうちの1種または2種以上
を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる二相ス
テンレス鋼である。
【0037】ここで、二相ステンレス鋼が上記各成分と
含有量を有するものであるのが好ましい理由は、以下の
とおりである。
【0038】C:Cは、後述のNと同様、オーステナイ
ト相を安定化するのに有効である。しかし、その含有量
が0.03%を超えると炭化物が析出しやすくなって耐
食性が劣化する。
【0039】Si:Siは、脱酸剤として有効である
が、その含有量が0.1%未満で効果が得られない。一
方、その含有量が2%を超えると脆いσ相が析出しやす
くなって靭性が劣化する。
【0040】Mn:Mnは、脱酸および脱硫剤として有
効であり、さらにオーステナイト相の安定化および熱間
加工性の向上にも寄与するが、その含有量が0.1%未
満ではこれらの効果が得られない。一方、その含有量が
2%を超えると耐食性を劣化させる。
【0041】P:Pは、鋼中に不可避的に混入する不純
物元素であり、その含有量が0.05%を超えると耐食
性および靭性が著しく劣化する。
【0042】S:Sは、上記Pと同様、鋼中に不可避的
に混入する不純物元素であり、熱間加工性を著しく劣化
させる。また、その硫化物は孔食の起点となって耐食性
をも劣化させる。このため、その含有量は可能な限り少
ない方がよく、0.008%以下であれば実用上特に問
題とはならないが、望ましくは0.005%以下とする
のがよい。
【0043】sol−Al:Alは、鋼の脱酸剤として
有効である。しかし、後述するように、耐食性を向上さ
せるべくNを多く添加含有させた高Nかつ高Wの二相ス
テンレス鋼では、Alを多量に添加含有させるとAlN
が多量に析出し、靭性および耐食性が劣化する。このた
め、その含有量はできるだけ少ない方がよく、sol−
Al含有量で0.1%以下であれば実用上特に問題とは
ならない。
【0044】Ni:Niは、オーステナイト相生成元素
であり、かつδ−フェライト相の析出抑制に寄与する。
しかし、その含有量が5%未満ではフェライト量が多く
なりすぎて二相ステンレス鋼の特徴が消失する。また、
フェライト中のN固溶度は小さく、窒化物が析出しやす
くなって耐食性が劣化する。一方、その含有量が11%
を超えるとフェライト量が多くなりすぎて二相ステンレ
ス鋼の特徴が消失するほか、脆いσ相が析出しやすくな
って靭性が劣化する。
【0045】Cr:Crは、耐食性を確保するための必
須成分であるが、その含有量が17%未満では必要な耐
食性を確保することができない。一方、その含有量が3
0%を超えると脆いσ相が析出しやすくなり、耐食性の
みならず熱間加工性および溶接性が劣化する。
【0046】Mo:Moは、Crと同様、耐食性、特に
耐孔食性および耐隙間腐食性を向上させるのに有効であ
る。しかし、その含有量が1%未満ではその効果が得ら
れない。一方、その含有量が6%を超えると脆いσ相が
析出しやすくなり、熱間加工性が低下する。
【0047】W:Wは、Moとは異なり、σ相などの金
属間化合物を生成促進させることなく耐食性、特に耐孔
食性および耐隙間腐食性を向上させるのに有効であり、
上記のCrやMoさらには後述するNの含有量を増やさ
ずに高い耐食性を確保することができる元素である。こ
の効果を得るためには、その含有量を1.5%超にする
必要がある。一方、Wは高価であるため過剰に含有させ
ると鋼のコスト上昇を招いて経済性を損なうほか、鋼の
融点(固相線温度)が低くなって高温延性を低下させる
のみならず、5%を超えて含有させても耐食性の向上効
果は飽和するので、その上限は5%とする。
【0048】N:Nは、オーステナイト生成元素であ
り、Cr、Mo、Wなどのフェライト相生成元素を比較
的多く含有する鋼の熱的安定と耐食性を向上させるのに
有効な元素である。しかし、その含有量が0.1%未満
ではこれらの効果が得られない。一方、その含有量が
0.4%を超えると鋼の融点(固相線温度)が低くなっ
て高温側での高温延性が低下するのみならず、製品管同
士を突き合わせ接合する溶接時において溶接部にブロー
ホールが発生するほか窒化物が多量に生成し、溶接部の
靭性低下および耐食性低下を招く。
【0049】Ca、Mg、REM(La、Ce、Yな
ど)およびB:これらの元素は、いずれも、鋼中に不純
物として不可避的に含まれるSが結晶粒界に偏析するの
を抑制して熱間加工性を向上させる元素であり、特に塑
性加工中に温度低下して熱間加工性が悪くなるビレット
の外面層部分の熱間加工性が低下するのを防止する観点
から有効な元素である。すなわち、Ca、Mg、REM
につては、鋼中に固溶されたSおよびO(酸素)をその
硫化物および酸化物として固定し、SおよびOが結晶粒
界に偏析析出するのを抑制して熱間加工性を向上させ
る。また、Bについては、その原子の大きさがSおよび
Oに比べて大きいことから結晶粒界に優先的に偏析析出
し、SおよびOが結晶粒界に偏析析出するのを抑制して
熱間加工性を向上させる。このため、熱間加工性をさら
に向上させたい場合には、これら元素のうちから選んだ
1種または2種以上を添加含有させるのが好ましい。
【0050】しかし、その含有量が、Ca、Mg、RE
Mについてはいずれも0.0005%未満、Bについて
は0.0001%未満では、上記の効果が得られない。
一方、その含有量が、Ca、Mgについては0.02%
超、REMについては0.2%超、Bについては0.0
5%超になると、耐食性が劣化する。
【0051】すなわち、Ca、Mg、REMを上記上限
値を超えて多量に含有させると、鋼中に孔食の起点とな
る硫化物や酸化物が多く生成し、耐食性が劣化する。ま
た、Bを上記上限値を超えて多量に含有させると鋼中に
Bの窒化物や炭化物が多く生成し、靱性が劣化する。
【0052】従って、これらの元素を添加含有させる場
合の含有量は、CaおよびMgについてはいずれも0.
0005〜0.02%、REMについては0.0.00
05〜0.2%、Bについては0.0001〜0.05
%とするのが望ましい。
【0053】Cu、V、TiおよびNb:これらの元素
は、いずれも、鋼の耐食性を向上させる作用を有してい
る。このうち、特に、Cuは、還元性の低pH環境、す
なわち硫酸や硫化水素を多く含む環境下での耐食性をよ
り一段と向上させる作用を有している。また、Vは、W
との複合添加によった場合、耐隙間腐食性をより一段と
向上させる作用を有している。よって、これらの効果を
得たい場合には、上記各元素のうちから選択した1種ま
たは2種以上を添加含有させることができる。
【0054】しかし、その含有量が、Cuについては
0.1%未満、Vについては0.05%未満、Tiおよ
びNbについてはいずれも0.01%未満では、上記の
効果が得られない。一方、Cuについては、その含有量
が2%を超えると熱間加工性が低下する。また、Vにつ
いては、その含有量が1.5%を超えるとフェライト量
が増加し、逆に耐食性が低下するのみならず、靱性が低
下する。さらに、TiおよびNbについては、いずれも
その含有量が0.5%を超えると靱性が低下する。
【0055】従って、これらの元素を添加含有させる場
合の含有量は、Cuについては0.1〜2%、Vについ
ては0.05〜1.5%、TiおよびNbについてはい
ずれも0.01〜0.5%とするのが望ましい。
【0056】(素材ビレトの加熱について)本発明にお
いては、上記したような1.5重量%超、5重量%以下
のWを多く含む高Wの二相ステンレス鋼からなる素材ビ
レットを、その穿孔圧延に先立ってそのフェライト含有
量が40〜80体積%になる温度域で均一加熱する必要
がある。
【0057】これは、フェライト含有量が40体積%未
満では、熱間加工性が悪く、穿孔圧延時に管外面に深さ
の深い被れ疵が多発するためである。また、逆にフェラ
イト含有量が80体積%を超えると、穿孔圧延時にフェ
ライト粒の不均一変形に起因するリジング現象が発生
し、管外面にしわ疵が発生するためである。
【0058】よって、素材ビレットの加熱は、フェライ
ト含有量が40〜80体積%になる温度域で行う必要が
あるのである。
【0059】(穿孔圧延と傾斜ロール式の管圧延機によ
る延伸圧延について)本発明においては、上記のように
フェライト含有量が40〜80体積%の範囲内になる温
度域で均一加熱された素材ビレットは、穿孔圧延機に供
して穿孔圧延されて中空のホローシェルに成形される。
また、このホローシェルは、穿孔圧延に引き続く傾斜ロ
ール式の管圧延機による延伸圧延を介するか、もしくは
介さずに孔型ロールを有する管圧延機によってさらに延
伸圧延され、しかる後に定径圧延を経て所定の寸法に仕
上げられる。
【0060】ここで、上記穿孔圧延機としては、傾斜ロ
ール式の2ロールピアサー、3ロールピアサーさらには
2個一対の対向孔型ロールを備えるプレスピアシングミ
ルなどの圧延機を用いることができる。また、上記傾斜
ロール式の管圧延機としては、傾斜ロール式の2ロール
エロンゲータ、3ロールエロンゲータ、アッセルミルな
どの圧延機を用いることができる。
【0061】さらに、圧延ラインの構成方式としては、
継目無鋼管製造用の各圧延機が、ピアサー→(エロンゲ
ータ)→プラグミル→リーラ→サイザの順に配置された
所謂マンネスマン−プラグミル方式、あるいはピアサー
→(エロンゲータ)→マンドレルミルの順に配置された
所謂マンネスマン−マンドレルミル方式などを用いるこ
とができる。
【0062】本発明では、上記のピアサーによる穿孔圧
延および傾斜ロール式の管圧延機による延伸圧延の際、
その加工度を延伸比(加工前の材料長さ/加工後の材料
長さ)で3.0以下にして行う必要がある。これは、前
述したように、管外面に被れ疵としわ疵が発生しないよ
うに40〜80体積%のフェライト含有量になる温度域
で均一加熱した状態では、これらの圧延時における加工
度が延伸比で3.0を超えると、管内面の温度が被加工
材料の高温延性の急激に低下する温度域に上昇し、被加
工材料が破断して管内面に被れ疵が発生するためであ
る。このことは、後述の実施例に示す結果からも明らか
である。なお、上記の加工度は、延伸比で2.0以下と
するのがより好ましい。
【0063】また、管内面の被れ疵と管外面のしわ疵の
発生を確実に防止する観点からは、上記素材ビレットの
加熱温度を40〜80体積%のフェライト含有量が得ら
れる温度域内においてできるだけ低くするのが好まし
い。
【0064】しかし、素材ビレットの加熱温度を低くす
ると、フェライト含有量が少なくなって熱間加工性が低
下し、管外面に被れ疵が発生しやすくなる。このため、
加熱後の素材ビレットは、できるだけ速やかに穿孔圧延
機に供することが必要であるが、これだけでは不十分で
ある。
【0065】すなわち、ピアサーによる穿孔圧延時およ
び傾斜ロール式の管圧延機による延伸圧延時には、その
圧延機の圧延ロールが冷却水によって強制冷却されてお
り、その表面温度はせいぜい200℃程度と低い。この
ため、この圧延ロールに接触する被加工材料の外面側は
否応無しに冷却される結果、この外面側の温度が低下
し、この部分のフェライト含有量が少なくなって管外面
に被れ疵がますます発生しやすくなる。
【0066】この被加工材料外面側の温度低下に起因し
て発生しやすくなる管外面の被れ疵は、前述した特開平
1−319947号公報に示されると同様の方法を採用
することによって防ぐことができる。
【0067】すなわち、ピアサーによる穿孔圧延中と傾
斜ロール式の管圧延機による延伸圧延中、圧延機の圧延
ロールを冷却すべく供給される冷却水が被圧延材料にか
からないようにすることである。さらに好ましくは、そ
の両圧延中、圧延ロールへの冷却水の供給を停止するこ
とである。
【0068】従って、本発明においては、ピアサーによ
る穿孔圧延中と傾斜ロール式の管圧延機による延伸圧延
中、圧延機の圧延ロールを冷却すべく供給される冷却水
が被圧延材料にかからないように圧延ロールの表面から
冷却水を除去するか、もしくは圧延ロールへの冷却水の
供給を停止するのが好ましい。
【0069】ところで、上記圧延ロールへの冷却水の供
給を停止する方法は、穿孔圧延ピッチ間の間隔が長く、
そのピッチ間中にのみに冷却水を供給して圧延ロールを
十分に冷却できる場合には適用できるが、生産性を上げ
るために穿孔圧延ピッチ間の間隔を短くした場合には適
さない。また、圧延中の圧延ロールへの冷却水の供給を
停止すると、圧延ロールが被加工材料の熱によって温度
上昇し、圧延ロールの表層部分の強度が低下して表面が
損傷しやすくなる。さらに、圧延ロールが焼きばめスリ
ーブ式である場合には、スリーブロール部分が熱膨張し
て軸部に対して滑りだすといった重大事故を引き起こす
ことになる。
【0070】このため、実際には、冷却水の供給を停止
することなく圧延ロールへ供給された冷却水が被加工材
料にかからないようにするのが好ましく、そのためには
次のような手段を講じればよい。
【0071】図3は、その具体的な方法を、穿孔圧延機
に適用する場合の一例を示す図であり、図中、1、1’
は圧延ロール、2はプラグ、3、3’はガイドシュー、
4、4’は冷却水供給用ノズル、5、5’はエアースプ
レーノズル、6、6’はワイパーである。
【0072】図3において、圧延ロール1、1’は、そ
れぞれその軸長方向の中間部に直径が最大となるゴージ
部を備えたバレル型であり、素材ビレット、ホローシェ
ルHのパスラインの両側にあって、それぞれ所定の傾斜
角(または傾斜角と交叉角)に設定してその傾きが互い
に逆になるように対向配置されており、図示しない駆動
源によってそれぞれ矢符方向に回転せしめられるように
なっている。
【0073】また、プラグ2は、圧延ロール1、1’の
ゴージ部間の近傍のパスラン上にその軸芯が位置するよ
うに図示しないマンドレルにより支持されている。また
さらに、ガイドシュー3、3’は、パスラインの周りに
圧延ロール1、1’の対向方向とは位相を90°異なら
せて所定の間隔を隔てて対向配置されている。
【0074】このように構成された穿孔圧延機による穿
孔圧延においては、パスラインに沿って搬送されてきた
素材ビレットの先端が圧延ロール1、1’間に噛み込ま
れて回転しつつその軸長方向に進行し、その軸心部にプ
ラグ2が貫入せしめられることによってホローシェルH
が製造される。
【0075】一方、その圧延中、各圧延ロール1、1’
を強制冷却するとともに、供給された冷却水をロール表
面から除去する、冷却水供給用ノズル4、4’エアース
プレーノズル5、5’およびワイパー6、6’は、それ
ぞれ各圧延ロール1、1’の外周を臨む位置に配設され
ている。
【0076】すなわち、冷却水供給用ノズル4、4’
は、圧延ロール1、1’の回転方向において、パスライ
ンから離れた位置であって、供給された冷却水が素材ビ
レットおよびホローシェルHに飛散付着しない位置に設
定配置されている。なお、この冷却水供給用ノズル4、
4’から供給する冷却水の噴射量や噴射角度などは、圧
延ロール1、1’の寸法や材質などに応じて設定されて
いる。
【0077】エアースプレーノズル5、5’は、圧延ロ
ール1、1’の回転方向において、冷却水供給用ノズル
4、4’と、圧延ロール1、1’と素材ビレットおよび
ホローシェルHとの接触点との中間部にあって、エアー
を圧延ロール1、1’の回転方向とは逆方向に噴射する
ように設定配置されている。なお、このエアースプレー
ノズル5、5’から噴射するエアーの圧力や噴射角度な
どは、冷却水供給用ノズル4、4’から供給する冷却水
の噴射量などに応じて設定されている。
【0078】ワイパー6、6’は、圧延ロール1、1’
の回転方向において、エアースプレーノズル5、5’
と、圧延ロール1、1’と素材ビレットおよびホローシ
ェルHとの接触点との中間部にあって、圧延ロール1、
1’の軸長方向の全長に摺接してロール表面に付着した
冷却水を除去するように設定配置されている。
【0079】図4は、ワイパー6、6’の具体的な構成
例を示す模式図である。図に示すように、ワイパー6
は、例えば耐熱性ゴムなどの耐熱性を有する弾性材料を
用い、その一方縁が圧延ロール1の平面視外郭形状に一
致する凹形状に形成されており、他方縁を図示しないシ
リンダーなどの進退動機構に連結された支持部材6aに
固定装着されている。
【0080】なお、圧延ピッチ間の間隔の長短に係わら
ず、圧延を繰り返すと圧延ロール1、1’の温度が高く
なり、冷却水が水のみである場合にはその冷却能が相対
的に低下する。従って、冷却水としては、水のみに比べ
てその冷却能が優れたエアーと水とを混合した気液混合
冷却水(ミスト水)を用いるのが好ましい。
【0081】上記したように、圧延ロール1、1’の外
周所定位置に、エアースプレーノズル5、5’とワイパ
ー6、6’を配設し、その圧延中、冷却水供給用ノズル
4、4’から噴射供給される冷却水を圧延ロール1、
1’の表面から除去する場合には、素材ビレットおよび
ホローシェルHの外面側の温度低下が効果的に抑制され
る。この結果、被加工材料の表層部分のフェライト含有
量低下による熱間加工性低下が抑制され、管外面の被れ
疵発生を抑制することが可能になる。
【0082】
【実施例】
(実施例1)前述の表1に示す鋼のうち、No. A、Bお
よびCの3種類の二相ステンレス鋼製であって、外径2
13mm、長さ3000mmの丸ビレットを3時間均熱
保持して種々の温度(1150℃、1230℃、127
0℃、1310℃、1320℃、1340℃)に加熱し
た。
【0083】次いで、これらの丸ビレットを直ちに傾斜
ロール式の2ロールピアサーに搬送し、延伸比1.8で
穿孔圧延して外径223mm、肉厚37mm、長さ49
30mmのホローシェルに成形した。
【0084】しかる後、ホローシェルを、上記ピアサー
と同様構造の傾斜ロール式の2ロールエロンゲータで外
径250mm、肉厚20mm、長さ7400mmに延伸
圧延(延伸比:1.5)し、さらにプラグミルで外径2
38mm、肉厚18mm、長さ8600mmに延伸圧延
した後、リラーで磨管圧延し、サイザで外径173m
m、肉厚18mm、長さ12200mmの製品寸法に仕
上げた。
【0085】この際、ピアサーおよびエロンゲターによ
る圧延時に、その圧延ロールに供給する冷却水の種類を
種々変えて圧延ロールを強制冷却する一方、圧延ロール
表面に付着した冷却水をエアースプレーノズルとワイパ
ーにより除去する場合と除去しない場合の3通りと、そ
の圧延中に圧延ロールへの冷却水供給を停止した場合の
合計4通りの圧延を行った。
【0086】なお、圧延ロールに対する冷却水の供給
は、いずれの圧延機も、圧延ロールの表面からノズル先
端までの離間距離が200mmであり、圧延ロールの軸
長方向に100mmピッチの等間隔で配置した7個のノ
ズルを用い、表2に示す条件で行った。
【0087】また、圧延ロール表面に付着する冷却水の
除去は、圧延ロールの表面からノズル先端までの離間距
離が100mmであり、圧延ロールの軸長方向に300
mmピッチの等間隔で配置した3個のエアーノズルと、
厚さ15mmの耐熱ゴム製ワイパーとを用い、表3に示
す条件で行った。
【0088】
【表2】
【0089】
【表3】
【0090】さらに、用いたピアサーは、ゴージ部直径
1100mm、長さ850mmで、入側端と出側端の直
径がそれぞれ1060mmと1040mmのバレル型の
圧延ロールを備え、圧延ロールの傾斜角度が10゜のピ
アサーであり、圧延ロールを83rpmで回転させなが
ら穿孔圧延した。
【0091】また、用いたエロンゲターは、ゴージ部直
径1150mm、長さ950mmで、入側端と出側端の
直径がそれぞれ1120mmと1075mmのバレル型
の圧延ロールを備え、圧延ロールの傾斜角度が8゜のエ
ロンゲータであり、圧延ロールを117rpmで回転さ
せながら穿孔圧延した。
【0092】そして、サイザ圧延後の製品を対象に、そ
の外面に平均粒径2mmの鋼球を吹き付けエアー圧力1
0kgf/cm2 で吹き付けるショットブラスト処理と
硝酸濃度が10%の弗硝酸水溶液中に5時間浸漬する酸
洗処理を施して酸化スケールを完全に除去した後、管外
面の疵の発生状況を調査した。
【0093】調査は、JIS−G0565に規定された
磁粉探傷検査法を用いて疵の発生を確認し、疵の種類と
疵深さとを調べた。そして、疵の深さが0.1mm未満
の場合を○、0.1mm以上、0.3mm未満の場合を
△、0.3mm以上の場合を×とし、その総合判定を次
の基準によって行った。その結果を、製管条件ととも
に、表4に示した。
【0094】総合判定基準: ○:全てのしわ疵と被れ疵の疵深さが0.1mm未満。
【0095】△:しわ疵と被れ疵のいずれか一方の疵深
さが0.1mm以上、0.3mm未満。
【0096】×:しわ疵と被れ疵のいずれか一方の疵深
さが0.3mm以上。
【0097】
【表4】
【0098】表4に示す結果から明らかなように、いず
れの鋼も、そのフェライト含有量が80体積%を超える
温度に素材ビレットを加熱し、その圧延中、圧延ロール
に対して冷却水を供給し、圧延ロールの表面に付着した
冷却水を除去することなく穿孔圧延を行ったにもかかわ
らず、管外面に深さが0.3mm以上の深いしわ疵が発
生した。(試験No. 11、22、23、33〜35参
照)なお、これらの管内面には、延伸比が1.8である
にもかかわらず、被れ疵が発生していた。
【0099】また、フェライト含有量が40体積%未満
になる温度に素材ビレットを加熱して穿孔圧延を行った
場合には、その圧延中、圧延ロールに対する冷却水の供
給を停止したにもかかわらず、管外面に深さが0.3m
m以上の深い被れ疵が発生し、かつ工具(ガイドシュ
ー)との焼付き疵や後工程の圧延時に発生するロール疵
が多く発生した(試験No. 12、24、36参照)。
【0100】これに対し、フェライト含有量が本発明で
定める範囲内になる温度に素材ビレットを加熱して穿孔
圧延を行った場合には、その圧延中、圧延ロールに供給
付着した冷却水を除去しない場合において管外面に深さ
の若干深い被れ疵が発生するのみであった。
【0101】(実施例2)実施例1における試験No. 3
2を基本条件とし、長さ2000mmの素材ビレットを
用いてピアサーとエロンゲターでの延伸比を種々変化さ
せて穿孔圧延とこれに引き続く延伸圧延を行った。そし
て、それぞれの圧延機による圧延後の管内面の被れ疵の
発生状況を目視検査により調べ、管内面の何処にも被れ
疵の発生が認められなかった場合を○、管内面の一部で
も被れ疵の発生が認められた場合を×として評価した。
その結果を、表5に示した。
【0102】
【表5】
【0103】表5に示す結果から明らかなように、ピア
サーもしくはエロンゲータのいずれか一方の延伸比を
3.0を超える値に設定して圧延を行った場合には、管
内面に被れ疵が発生した。これに対し、ピアサーとエロ
ンゲータの延伸比をともに3.0以下に設定して圧延を
行った場合には、管内面に被れ疵は全く発生しなかっ
た。
【0104】なお、この場合、いずれの条件において
も、管外面にしわ疵と被れ疵の発生は認められなかっ
た。
【0105】(実施例3)実施例2と同様の圧延試験
を、所謂マンネスマン−マンドレルミル方式を用いて行
った。すなわち、ピアサー圧延後のホローシェルをエロ
ンゲータで延伸圧延することなく、非傾斜ロール式の管
圧延機であるマンドレルミルに供して延伸圧延を行うに
当たり、ピアサーでの延伸比とマンドレルミルでの延伸
比を種々変えて圧延を行い、管内面の被れ疵の発生状況
を実施例2と同じ方法によって調べた。
【0106】なお、穿孔圧延は、ゴージ部直径1150
mm、長さ700mmで、入側端と出側端の直径がそれ
ぞれ1113mmと1107mmのバレル型の圧延ロー
ルを備え、圧延ロールの傾斜角度が12゜のピアサーを
用い、圧延ロールを95rpmで回転させ、その圧延
中、圧延ロールに対する冷却水の供給を停止して行っ
た。 また、延伸圧延は8スタンドの2ロール式マンド
レルミルを用いて行った。
【0107】さらに、素材ビレットとしては、実施例1
における試験No. 32と同様のビレットを1270℃に
3時間均熱加熱してから穿孔圧延に供した。
【0108】管内面の被れ疵の調査結果を、表6に示し
た。
【0109】
【表6】
【0110】表6に示す結果から明らかなように、ピア
サーでの延伸比が3.0を超える場合には管内面に被れ
疵が発生したが、3.0以下の延伸比では管内面に被れ
疵は発生しなかった。
【0111】また、マンドレルミルでの延伸比が3.0
を超えても、管内面に被れ疵は発生しなかった。これ
は、ピアサーおよび傾斜ロール式の管圧延機(エロンゲ
ータ)以外の管圧延機においては、その加工度が管内面
の被れ疵の発生に何らの影響も及ぼさないことを示して
いる。すなわち、マンドレルミルによる延伸圧延は、長
さが素管よりも長く、温度が常温あるいは高くても20
0℃までのマンドレルバーを管内に挿入して行われるの
で、管内面側の温度が上昇することはなく、むしろ低下
するためである。
【0112】なお、この場合も、上記実施例2と同様
に、いずれの条件においても、管外面にしわ疵と被れ疵
の発生は認められなかった。
【0113】
【発明の効果】本発明の方法によれば、Wを1.5%
超、5%以下と多く含むことからより高耐食であり、か
つ管外面のしわ疵と被れ疵は勿論、管内面の被れ疵のな
い高品質な二相ステンレス鋼製の継目無鋼管を得ること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】加熱温度とフェライト含有量との関係を示す図
である。
【図2】加熱温度と高温延性との関係を示す図である。
【図3】圧延ロールの冷却態様と冷却水の除去態様の一
例を示す図である。
【図4】ワイパーの具体的構成例を示す図である。
【符号の説明】
1、1’:圧延ロール、 2 :プラグ、 3、3’:ガイドシュー、 4、4’:冷却水供給用ノズル、 5、5’:エアースプレーノズル、 6、6’:ワイパー、 H :ホローシェル。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】1.5重量%超、5重量%以下のWを含有
    する二相ステンレス鋼製のビッレトを、フェライト含有
    量が40〜80体積%になる温度域に加熱した後、穿孔
    圧延もしくは穿孔圧延とこれに引き続く傾斜ロール式管
    圧延機による延伸圧延を、延伸比3.0以下の条件で行
    うことを特徴とする二相ステンレス鋼製継目無鋼管の製
    管方法。
  2. 【請求項2】上記の穿孔圧延もしくは穿孔圧延とこれに
    引き続く傾斜ロール式管圧延機による延伸圧延中、圧延
    ロールに供給される冷却水または気液混合冷却水が被圧
    延材料にかからないように圧延ロール表面から冷却水を
    除去するか、もしくは前記冷却水による圧延ロールの冷
    却を停止することを特徴とする請求項1に記載の二相ス
    テンレス鋼製継目無鋼管の製管方法。
  3. 【請求項3】ビレットは、重量%で、1.5%超、5%
    以下のWを含有するとともに、C:0.03%以下、S
    i:0.1〜2%、Mn:0.1〜2%、P:0.05
    %以下、S:0.008%以下、sol−Al:0.1
    %以下、Ni:5〜11%、Cr:17〜30%、M
    o:1〜6%、N:0.1〜0.4%を含み、さらにC
    a:0〜0.02%、Mg:0〜0.02%、REM:
    0〜0.2%およびB:0〜0.05%のうちの1種ま
    たは2種以上、並びにCu:0〜2%、V:0〜1.5
    %、Ti:0〜0.5%およびNb:0〜0.5%のう
    ちの1種または2種以上を含み、残部Feおよび不可避
    的不純物からなる二相ステンレス鋼製であることを特徴
    とする請求項1または請求項2に記載の二相ステンレス
    鋼製継目無鋼管の製管方法。
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