JP4453278B2 - 二相ステンレス鋼からなる継目無鋼管の製造方法 - Google Patents

二相ステンレス鋼からなる継目無鋼管の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、マンネスマン製管法による二相ステンレス鋼からなる継目無鋼管の製造方法に関し、さらに詳しくは絞り圧延での加工条件を適切に制御することにより、内面品質の優れた二相ステンレス鋼からなる継目無鋼管を製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
二相ステンレス鋼は、耐食性や溶接性に優れており、フェライト系やオーステナイト系のステンレス鋼に比べて、特に耐海水腐食性と強度に優れている。このため、二相ステンレス鋼からなる継目無鋼管は、腐食環境におけるラインパイプなどとして広い範囲で用いられている。
【0003】
通常、継目無鋼管の熱間製造方法としてマンネスマン製管法が用いられているが、二相ステンレス鋼からなる継目無鋼管を製造する場合には、フェライト組織のbcc構造に起因する変形異方性が要因となり、鋼管の内表面に段差が発生し易くなる。この場合に、サイザーやストレッチレデューサー等の絞り圧延機によって仕上げ圧延を施す際に、内表面に発生した段差が助長され、鋼管の内表面にシワ状の微小疵(シワ疵)が発生することがある。
【0004】
このシワ疵は、腐食環境下において内面腐食の原因となるため、その発生を防止する必要がある。内面腐食の厳しい環境での使用に耐え得るシワ疵は、その疵深さを0.1mm以下にする必要があるが、上記絞り圧延機を用いるマンネスマン製管法では、このような内面品質に優れた二相ステンレス鋼管を得ることができなかった。
【0005】
このため、二相ステンレス鋼からなる継目無鋼管の製造に際しては、鋼管の内面品質を確保するため、熱間押出し圧延により製造された素管を、冷間加工し、鋼管に仕上げる方法や、熱間押出し圧延により製造された素管の内面を研削して、鋼管に仕上げる方法が採用されている。
【0006】
しかしながら、上述した熱間押出し圧延による方法は、一般的に生産性が低いことから製造コストが高い。そのため、マンネスマン製管法を適用し、さらに内面品質に優れ、寸法精度も良好なマンドレルミル圧延方法を採用して二相ステンレス鋼管を製造することが望まれていた。
【0007】
絞り圧延機を有するマンドレルミル圧延方法を採用して、二相ステンレス鋼管を製造する技術は種々提案されている。特許文献1では、穿孔圧延後に延伸加工を施して再加熱したのち、縮管加工率Rn(%)に応じて、縮管加工の材料温度Tm(℃)を管理することにより、二相ステンレス鋼管の靭性、および耐食性を向上させる製造方法が提案されている。
【0008】
特許文献2では、穿孔圧延用主ロールの回転速度を4.5m/sec未満に限定することにより、プラグ先端圧下率を95%以上に維持して、管内面疵の発生を抑制することができる継目無鋼管の製造方法が開示されている。
【0009】
特許文献3には、素材となるビレットの加熱温度および穿孔条件を、フェライト含有量が40〜80体積%になる温度域に加熱した後、穿孔圧延または穿孔圧延とこれに引き続く傾斜ロール式管圧延機による延伸圧延を、延伸比3.0以下の条件で行う二相ステンレス鋼製の継目無鋼管の製管方法が記載されている。
【0010】
特許文献1で提案された製造方法は、二相ステンレス鋼管の靭性、および耐食性の改善を目的とするものであり、また、特許文献2で開示された製造方法は、難加工材または鋳造ままで品質の悪い素材を穿孔圧延するに際し、穿孔条件の最適化を図り、内面被れ(ヘゲ)状の大きな内面疵をなくすためのものである。
【0011】
したがって、特許文献1、2では、耐食性に優れた二相ステンレス鋼で必要とされるシワ疵を防止することは何ら意図されていない。このため、特許文献1、2で提案される製造方法では、鋼管の内面に発生するシワ疵の抑制はできず、これらの方法を用いても、耐食性に優れ内面品質の良好な二相ステンレス鋼管を製造することは困難である。
【0012】
【特許文献1】
特開平01−123026号公報
【特許文献2】
特開2000−334505号公報
【特許文献3】
特開平09−271811号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献3には、管内外面の被れ(ヘゲ)状の大きな疵および外面のシワ疵を抑制する製造方法が記載されており、この製造方法を用いることにより、マンドレルミル圧延等の延伸圧延後において、その母管の内外面粗さ、内面品質を向上させることができるとしている。
【0014】
すなわち、二相ステンレス鋼は高温強度が高いことから、熱間加工性を向上させるためにビレットをより高温に加熱すると、フェライト含有量が多くなり、フェライト粒の不均一変形に起因するリジング現象が発生し、管外面にシワ疵が発生する。これを抑制するため、ビレットの加熱温度を規制して、フェライト含有量を適正にし、フェライト粒の不均一変形に起因するリジング現象を抑制し管外面にシワ疵が発生しないようにしている。
【0015】
しかしながら、ビレットの加熱炉抽出後の降温等によって、リジング現象が発生し、それに伴う管の内外面の粗さを完全に除去できないのが実情である。このため、延伸圧延した母管を再加熱後に絞り圧延する際、外面は工具(ロール)による拘束を加えながら圧下するので、管の外表面は平滑化されるが、内表面は工具による拘束がないため、絞り圧延に伴う内表面圧縮応力の作用によって、微小な内表面の凹凸や段差を起点としたシワ疵が発生する。このため、特許文献3に記載された製造方法だけでは、管の内表面に発生するシワ疵を抑制することができない。
【0016】
本発明は、このような二相ステンレス鋼管を製造する際のマンネスマン製管法による製造上の問題点に鑑みてなされたものであり、サイザーやストレッチレデューサー等の絞り圧延機を用いて延伸圧延後の母管を仕上げ圧延する場合に、絞り圧延での加工条件の適正化を図り、内面品質に優れた二相ステンレス鋼からなる継目無鋼管の製造方法を提供することを目的としている。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の課題を解決するため、二相ステンレス鋼からなる継目無鋼管の内面に微小シワ疵が発生するメカニズムを種々検討した結果、次の(a)〜(c)の知見を得ることができた。
(a)管内面に発生するシワ疵の深さは、ビレットのフェライト含有量によって変化する。
(b)管内面のシワ疵は、絞り圧延工程において進展が著しい。
(c)上記絞り圧延工程で進展するシワ疵の深さは、絞り圧延における被圧延材に作用する張力によって変化する。
【0018】
前述の通り、二相ステンレス鋼に含まれるフェライト組織はbcc構造であり、変形異方性を示すことから、各組織の生成する方向によって変形が異なる特性を有している。このため、管表面が凹凸となって、シワ疵の起点となる段差が発生し易くなる。
【0019】
ところが、今回の検討結果によれば、管内面に発生するシワ疵は、絞り圧延工程において著しく進展する。これは、絞り圧延では被圧延材への内面工具による拘束がなく、絞り圧延での管周方向の圧縮変形に伴って、管内面の周方向に圧縮応力が作用し、前述の変形異方性により発生した段差を起点として、内面への折れ込みが進展していくことによる。
【0020】
したがって、この管内面に発生する周方向応力を適切に制御すれば、先に発生した段差を起点とするシワ疵への進展を抑制できるのではないかと想定した。そこで、絞り圧延において、外径加工度に応じて張力を付与することにより、管軸方向の変形を増加させる実験を行った。
【0021】
具体的には、絞り圧延における減肉量を種々に変動させて、管内面のシワ疵深さと外径加工度との関係を検討した。その結果、絞り圧延において外径加工度に応じて減肉量を適切な範囲で制御するようにするれば、管内面のシワ疵深さを小さくできることを知見した。
【0022】
本発明は、上記知見に基づいて完成されたものであり、次の(1)および(2)の二相ステンレス鋼からなる継目無し鋼管の製造方法を要旨としている。
(1)ビレットを穿孔圧延して得た中空素材を延伸圧延し、次いで絞り圧延を行って継目無鋼管を製造する方法であって、前記絞り圧延における外径加工度Rd(%)と減肉量ΔT(mm)とを下記(b)式に規定する範囲で行って熱間仕上げ継目無鋼管を製造することを特徴とする二相ステンレス鋼からなる継目無鋼管の製造方法である。
【0023】
ΔT≧1.61×10-3×Rd2−5.92×10-2×Rd−0.174・・・ (b)
但し、外径加工度Rdが40%以下の場合は除く
【0024】
(2)上記(1)の製造方法では、前記ビレットは、質量%で、C:0.03%以下、Si:0.1〜2%、Mn:0.1〜2%、P:0.05%以下、S:0.008%以下、sol−Al:0.1%以下、Ni:5〜11%、Cr:17〜30%、Mo:1〜6%、W:0.05〜5%、N:0.1〜0.4%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる二相ステンレス鋼にするのが望ましい。
【0025】
前記ビレットは、質量%で、さらにCa:0.0005〜0.02%、Mg:0.0005〜0.02%、REM:0.0005〜0.2%およびB:0.0001〜0.05%のうちの1種または2種以上、並びにCu:0.1〜2%、V:0.05〜1.5%、Ti:0.01〜0.5%およびNb:0.01〜0.5%のうちの1種または2種以上を含ませるのが、更に望ましい。
【0026】
本発明において「冷間加工用の継目無鋼管」とは、冷間加工用の素管として供給され、抽伸・冷間圧延等の冷間加工が施された後、必要とされる熱処理を行って、冷間仕上げ鋼管とされるものをいう。一方、本発明において「熱間仕上げ継目無鋼管」は、マンネスマン製管後必要な熱処理を行った状態で製品として供給される鋼管をいう。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明を上記のように規定した理由を、「マンネスマン製管法による絞り圧延」、「絞り圧延での減肉量と外径加工度の関係および管内面のシワ疵深さ」および「ビレットの組成」に区分して説明する。
1.マンネスマン製管法による絞り圧延について
本発明の製造方法では、二相ステンレス鋼からなるビレットを所定の加熱温度域で均一加熱し、穿孔圧延機に供して穿孔圧延された中空素材を得る。得られた中空素材は、穿孔圧延に引き続いて、傾斜ロール式の管圧延機による延伸圧延を介するか、または介さずに孔型ロールを有する管圧延機によってさらに延伸圧延され、そののちに絞り圧延を経て所定の寸法に仕上げられる。
【0028】
上記穿孔圧延機としては、傾斜ロール式の2ロールピアサー、3ロールピアサー、または2個一対の対向孔型ロールを備えるプレスピアシングミルなどの圧延機を用いることができる。また、上記傾斜ロール式の管圧延機としては、傾斜ロール式の2ロールエロンゲータ、3ロールエロンゲータ、アッセルミルなどの圧延機を用いることができる。
【0029】
さらに、上記絞り圧延機としては、延伸圧延ののちに管を所定の寸法に仕上げるストレッチレデューサ、サイザ等の仕上げ圧延機があり、その後の熱処理および精整工程を経て製品鋼管を製造する。
【0030】
次に、本発明で採用する圧延ラインの構成方式は、継目無鋼管製造用の各圧延機が、例えば、ピアサー→(エロンゲータ)→マンドレルミル→ストレッチレデューサの順に配置される、所謂マンネスマン−マンドレルミル方式を用いることが望ましいが、これに限定されず、ピアサー→(エロンゲータ)→プラグミル→リーラ→サイザの順に配置される、所謂マンネスマン−プラグミル方式であってもよい。
2.絞り圧延での減肉量と外径加工度の関係および管内面のシワ疵深さについて
本発明では、上記マンネスマン製管法による絞り圧延の際、絞り圧延での外径加工度Rd(%)と減肉量ΔT(mm)とを所定の範囲に制御する必要がある。以下に、絞り圧延における減肉量を種々に変動させて、管内面のシワ疵深さと外径加工度との関係を検討した結果を説明する。
【0031】
表1に示す化学組成の鋼種A〜Hからなる二相ステンレス鋼を準備して、外径178mmのビレットを作製した。上記組成の二相ステンレス鋼は、いずれも本発明が規定する望ましい化学組成を満足しており、しかも各成分の含有量も近似するものであった。このため、いずれの鋼種であっても、後述する図1、図2に示す結果が得られる。
【0032】
【表1】
Figure 0004453278
【0033】
穿孔圧延前に、上記のビレットを1280℃に加熱して3時間均熱保持した。加熱されたビレットを直ちに傾斜ロール式の2ロールピアサーに搬送し、延伸比2.5〜2.9で穿孔圧延して、外径196mm、肉厚15.0〜18.1mmの中空素材に成形した。次いで、7スタンドのリテインド式マンドレルミル圧延を行い、外径110mmおよび151mmで、肉厚4.5〜7.0mmの母管を作製した。
【0034】
マンドレルミル圧延後の母管に発生した管内面のシワ疵深さは、いずれも0.02mm程度であった。このときの管内面のシワ疵深さの測定は、試験材を鋼管先端部および後端から10m部を除いた部分から採取して、試験材の任意の3〜5断面におけるミクロ写真観察の結果から各断面における管内面の最大シワ疵深さを測定し、その平均値を管内面のシワ疵深さとした。
【0035】
そののち、得られた母管を1000℃以上で再加熱した後、3ロール式ストレッチレデューサーを用いて、外径加工度Rdおよび減肉量ΔTを種々に変更させながら絞り圧延を行い、外径27.2〜114.3mmで、肉厚5.0mmの継目無鋼管を製造した。母管の管内面のシワ疵深さの測定と同じ条件で、絞り圧延後の鋼管の管内面のシワ疵深さを測定した。
【0036】
マンネスマン製管法では、絞り圧延によって継目無鋼管が仕上げられるが、通常、これらが熱間製管ままの状態で製品になる場合(熱間仕上げ鋼管)には、測定バラツキ等を考慮して、管内面のシワ疵深さの限界値は0.05mmとされる。一方、冷間抽伸または冷間圧延等の冷間加工用の素管として使用する場合には、冷間加工に伴ってシワ疵深さが減少するのを考慮して、管内面のシワ疵深さの限界値は0.085mmとされる。
【0037】
絞り圧延における外径加工度Rdおよび減肉量ΔTは、絞り圧延機の入口肉厚をTi、仕上げ肉厚をToとし、絞り圧延機の入口外径をODi、仕上げ外径をODoとした場合に、下記(c)および(d)式で示される。
【0038】
ΔT=Ti−To(mm) ・・・ (c)
Rd=[(ODi−ODo)/ODi]×100(%) ・・・ (d)
図1は、絞り圧延における減肉量ΔTをパラメータとして管内面のシワ疵深さと外径加工度Rdとの関係を示す図である。同図では、減肉量ΔTを−0.5mm(増肉)から2.0mmの範囲で、0.5mmピッチで変化させている。図1に示す関係に基づいて、管内面のシワ疵深さの限界値を0.085mm、または0.05mmとした場合の外径加工度の上限を整理すると表2を得る。
【0039】
【表2】
Figure 0004453278
【0040】
表2に示すように、管内面のシワ疵深さの限界値を0.085mm(A)から0.05mm(B)に減少させると、許容される外径加工度Rd(%)の上限が低減する。また、減肉量ΔTの増加にともなって、許容される外径加工度Rd(%)の上限も増加している。したがって、外径加工度に応じて張力を付与することにより管軸方向の変形を増加させ、管内面のシワ疵の進展を抑制できることが分かる。
【0041】
図2は、管内面のシワ疵深さの限界値(0.085mmおよび0.05mm)をパラメータとして絞り圧延での減肉量ΔTと外径加工度Rdとの関係を示す図である。図2は、前記図1の減肉量ΔTと外径加工度Rdとの関係を整理し直したものであるが、この結果から、絞り圧延での外径加工度Rd(%)に応じて減肉量ΔT(mm)を調整することによって、管内面のシワ疵深さを抑制できることが分かる。
【0042】
すなわち、管内面のシワ疵深さの限界値を0.085mmとする場合、言い換えると、冷間加工用素管を製造する場合には、下記(a)式を満足する必要がある。
【0043】
ΔT≧1.09×10-3×Rd2−7.05×10-2×Rd+0.503・・・ (a)
さらに、管内面のシワ疵深さの限界値を0.05mmとする場合、同様に、熱間仕上げ鋼管を製造する場合には、下記(b)式を満足する必要がある。
【0044】
ΔT≧1.61×10-3×Rd2−5.92×10-2×Rd−0.174・・・ (b)
なお、上記(a)、(b)式を満足する場合であっても、外径加工度Rdが40%以下の範囲になると、絞り圧延機での圧延スタンドが減少する等の要因により延伸加工の管理が難しくなり、過度の圧縮を作用させるとエッジ部が噛み出し外面形状の不正が発生すること、および外面形状の不正を防止する観点より、上記(a)、(b)式における減肉量ΔTを、それぞれ所定値以上確保する必要がある。そのため、上記(a)、(b)式を満足する場合であっても、外径加工度Rdが40%以下の場合は除く
3.ビレットの組成について
本発明で用いるビレットは、二相ステンレス鋼であればよい。しかし、さらに、優れた耐食性などを備える必要がある場合には、下記の化学成分を有する二相ステンレス鋼を用いるのが望ましい。
【0045】
すなわち、質量%で、C:0.03%以下、Si:0.1〜2%、Mn:0.1〜2%、P:0.05%以下、S:0.008%以下、sol−Al:0.1%以下、Ni:5〜11%、Cr:17〜30%、Mo:1〜6%、W:0.05〜5%、N:0.1〜0.4%を含み、さらにCa:0.0005〜0.02%、Mg:0.0005〜0.02%、REM:0.0005〜0.2%およびB:0.0001〜0.05%のうちの1種または2種以上、並びにCu:0.1〜2%、V:0.05〜1.5%、Ti:0.01〜0.5%およびNb:0.01〜0.5%のうちの1種または2種以上を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる二相ステンレス鋼である。
【0046】
ここで、二相ステンレス鋼が上記各成分と含有量を有するものであるのが望ましい理由は、以下の通りである。
【0047】
C:Cは、オーステナイト相を安定化するのに有効である。しかし、その含有量が0.03%を超えると炭化物が析出し易くなり耐食性が劣化する。
Si:Siは、脱酸剤として有効であるが、その含有量が0.1%未満ではその効果が得られない。一方、その含有量が2%を超えると、脆いσ相が析出し易くなり靭性が劣化する。
【0048】
Mn:Mnは、脱酸および脱硫剤として有効であり、さらにオーステナイト相の安定化および熱間加工性の向上にも寄与するが、その含有量が0.1%未満ではこれらの効果が得られない。一方、その含有量が2%を超えると耐食性を劣化させる。
【0049】
P:Pは、鋼中に不可避的に混入する不純物元素であり、その含有量が0.05%を超えると耐食性および靭性が著しく劣化する。
【0050】
S:Sは、上記Pと同様、鋼中に不可避的に混入する不純物元素であり、熱間加工性を著しく劣化させる。また、その硫化物は孔食の起点となって耐食性をも劣化させる。このため、その含有量は可能な限り少ない方がよく、0.008%以下であれば実用上特に問題とはならないが、望ましくは0.005%以下とする。
【0051】
sol−Al:Alは、鋼の脱酸剤として有効である。しかし、耐食性を向上させるべくNを多く添加含有させた二相ステンレス鋼では、Alを多量に添加含有させるとAlNが多量に析出し、靭性および耐食性が劣化する。このため、その含有量はできるだけ少ない方がよく、sol−Al含有量で0.1%以下であれば実用上特に問題とならない。
【0052】
Ni:Niは、オーステナイト相生成元素であり、かつδ−フェライト相の析出抑制に寄与する。しかし、その含有量が5%未満ではフェライト量が多くなりすぎて、二相ステンレス鋼の特徴が消失する。また、フェライト中のN固溶度は小さく、窒化物が析出しやすくなって耐食性が劣化する。一方、その含有量が11%を超えると、フェライト量が少なくなりすぎて二相ステンレス鋼の特徴が消失するほか、脆いσ相が析出しやすくなって靭性が劣化する。
【0053】
Cr:Crは、耐食性を確保するための必須成分であるが、その含有量が17%未満では必要な耐食性を確保することができない。一方、その含有量が30%を超えると脆いσ相が析出し易くなり、耐食性のみならず熱間加工性および溶接性が劣化する。
【0054】
Mo:Moは、Crと同様、耐食性、特に耐孔食性および耐隙間腐食性を向上させるのに有効である。しかし、その含有量が1%未満ではその効果が得られない。一方、その含有量が6%を超えると脆いσ相が析出し易くなり、熱間加工性が低下する。
【0055】
W:Wは、Moとは異なり、σ相などの金属間化合物を生成促進させることなく、耐食性、特に耐孔食性および耐隙間腐食性を向上させるのに有効であり、上記のCrやMoさらには後述するNの含有量を増やさずに高い耐食性を確保することができる元素である。この効果を得るためには、その含有量を0.05%以上にする必要があり、更に望ましくは1.5%以上である。一方、5%を超えて含有させても耐食性の向上効果は飽和するので、その上限は5%とする。
【0056】
N:Nは、オーステナイト生成元素であり、Cr、Mo、Wなどのフェライト相生成元素を比較的多く含有する鋼の熱的安定と耐食性を向上させるのに有効な元素である。しかし、その含有量が0.1%未満ではこれらの効果が得られない。一方、その含有量が0.4%を超えると、鋼の融点(固相線温度)が低くなって高温側での高温延性が低下するのみならず、製品管同士を突き合わせ接合する溶接時において溶接部にブローホールが発生するほか窒化物が多量に生成し、溶接部の靭性低下および耐食性低下を招く。
【0057】
Ca、Mg、REM(La、Ce、Yなど)およびB:これらの元素は、いずれも、鋼中に不純物として不可避的に含まれるSが結晶粒界に偏析するのを抑制して、熱間加工性を向上させる元素であり、ビレットの塑性加工中に温度が低下して熱間加工性が悪くなることを防止するのに有効な元素である。
【0058】
すなわち、Ca、Mg、REMにつては、鋼中に固溶されたSおよびO(酸素)をその硫化物および酸化物として固定し、SおよびOが結晶粒界に偏析するのを抑制して熱間加工性を向上させる。また、Bについては、その原子の大きさがSおよびOに比べて大きいことから結晶粒界に優先的に偏析析出し、SおよびOが結晶粒界に偏析析出するのを抑制して熱間加工性を向上させる。このため、熱間加工性をさらに向上させたい場合には、これら元素のうちから選んだ1種または2種以上を添加含有させるのが望ましい。
【0059】
しかし、その含有量が、Ca、Mg、REMについてはいずれも0.0005%未満、Bについては0.0001%未満では、上記の効果が得られない。一方、その含有量が、Ca、Mgについては0.02%超、REMについては0.2%超、Bについては0.05%超になると、耐食性が劣化する。
【0060】
すなわち、Ca、Mg、REMを上記上限値を超えて多量に含有させると、鋼中に孔食の起点となる硫化物や酸化物が多く生成し、耐食性が劣化する。また、Bを上記上限値を超えて多量に含有させると鋼中にBの窒化物や炭化物が多く生成し、靱性が劣化する。
【0061】
したがって、これらの元素を添加含有させる場合の含有量は、CaおよびMgについてはいずれも0.0005〜0.02%、REMについては0.0.0005〜0.2%、Bについては0.0001〜0.05%とするのが望ましい。
【0062】
Cu、V、TiおよびNb:これらの元素は、いずれも、鋼の耐食性を向上させる作用を有している。このうち、特に、Cuは、還元性の低pH環境、すなわち、硫酸や硫化水素を多く含む環境下での耐食性をより一段と向上させる作用を有している。また、Vは、Wとの複合添加によった場合、耐隙間腐食性をより一段と向上させる作用を有している。よって、これらの効果を得たい場合には、上記各元素のうちから選択した1種または2種以上を添加含有させることができる。
【0063】
しかし、その含有量が、Cuについては0.1%未満、Vについては0.05%未満、TiおよびNbについてはいずれも0.01%未満では、上記の効果が得られない。一方、Cuについては、その含有量が2%を超えると熱間加工性が低下する。また、Vについては、その含有量が1.5%を超えるとフェライト量が増加し、逆に耐食性が低下するのみならず、靱性が低下する。さらに、TiおよびNbについては、いずれもその含有量が0.5%を超えると靱性が低下する。
【0064】
したがって、これらの元素を添加含有させる場合の含有量は、Cuについては0.1〜2%、Vについては0.05〜1.5%、TiおよびNbについてはいずれも0.01〜0.5%とするのが望ましい。
【0065】
【発明の効果】
本発明の二相ステンレス鋼からなる継目無し鋼管の製造方法は、上述したように、マンネスマン製管法におけるストレッチレデューサ、サイザ等の絞り圧延に際し、発生する管内面のシワ疵深さの進展を阻止するものであり、内面品質の優れる継目無鋼管の製造に有効である。
【0066】
しかも、具体的な構成は、絞り圧延の過程で外径加工度Rd(%)と減肉量ΔT(mm)とを適正な範囲で制御するものであるから、圧延ラインの操業性を損なうことがなく、効率的に製造することができる。さらに、ビレットに適用する二相ステンレス鋼の成分組成を適切に設計すれば、優れた耐食性を備える継目無鋼管とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】絞り圧延における減肉量ΔTをパラメータとして管内面のシワ疵深さと外径加工度Rdとの関係を示す図である。
【図2】管内面のシワ疵深さの限界値(0.085mmおよび0.05mm)をパラメータとして絞り圧延での減肉量ΔTと外径加工度Rdとの関係を示す図である。

Claims (3)

  1. ビレットを穿孔圧延して得た中空素材を延伸圧延し、次いで絞り圧延を行って継目無鋼管を製造する方法であって、前記絞り圧延における外径加工度Rd(%)と減肉量ΔT(mm)とを下記(b)式に規定する範囲で行って熱間仕上げ継目無鋼管を製造することを特徴とする二相ステンレス鋼からなる継目無鋼管の製造方法。
    ΔT≧1.61×10-3×Rd2−5.92×10-2×Rd−0.174・・・ (b)
    但し、外径加工度Rdが40%以下の場合は除く
  2. 前記ビレットは、質量%で、C:0.03%以下、Si:0.1〜2%、Mn:0.1〜2%、P:0.05%以下、S:0.008%以下、sol−Al:0.1%以下、Ni:5〜11%、Cr:17〜30%、Mo:1〜6%、W:0.05〜5%、N:0.1〜0.4%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1に記載の二相ステンレス鋼からなる継目無鋼管の製管方法。
  3. 前記ビレットは、質量%で、さらにCa:0.0005〜0.02%、Mg:0.0005〜0.02%、REM:0.0005〜0.2%およびB:0.0001〜0.05%のうちの1種または2種以上、並びにCu:0.1〜2%、V:0.05〜1.5%、Ti:0.01〜0.5%およびNb:0.01〜0.5%のうちの1種または2種以上を含むことを特徴とする請求項2に記載の二相ステンレス鋼からなる継目無鋼管の製管方法。
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