JPH0927151A - 光磁気記録媒体およびその再生方法 - Google Patents

光磁気記録媒体およびその再生方法

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JPH0927151A
JPH0927151A JP7172538A JP17253895A JPH0927151A JP H0927151 A JPH0927151 A JP H0927151A JP 7172538 A JP7172538 A JP 7172538A JP 17253895 A JP17253895 A JP 17253895A JP H0927151 A JPH0927151 A JP H0927151A
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layer
reproducing
temperature
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magneto
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JP7172538A
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Junsaku Nakajima
淳策 中嶋
Junji Hirokane
順司 広兼
Yoshiteru Murakami
善照 村上
Akira Takahashi
明 高橋
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Sharp Corp
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    • G11B11/10515Reproducing

Abstract

(57)【要約】 【課題】 記録層5の記録密度の向上を図るために再生
層3を初期化するための外部磁界を省いて大型化を回避
する。 【解決手段】 光ビーム10の照射によって情報を再生
するための再生層3と、情報が記録され、読み出し温度
にて上記再生層3に情報が転写される記録層5と、再生
層3を室温時に初期化するための初期化層7とをこの順
にて設ける。再生層3と記録層5との間と、記録層5と
初期化層7との間に、それらの間の交換結合を防止する
ための非磁性層4・6をそれぞれ設ける。記録層5は室
温にて補償温度となり、初期化層7は光ビーム10の照
射によって昇温した読み出し温度にて補償温度となるよ
うに設定される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光磁気記録再生装
置に適用される光磁気ディスク、光磁気テープ、光磁気
カード等の光磁気記録媒体およびその再生方法に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】従来、書き換え可能な光磁気記録媒体と
して、光磁気メモリであるディスクが実用化されてい
る。このようなディスクでは、ディスク上に集光された
半導体レーザの光ビームのビーム径に対して、ディスク
上の記録磁区である記録ビット径および記録ビット間隔
が小さくなってくると、再生特性が劣化してくるという
欠点を生じている。
【0003】このような欠点は、目的とする記録ビット
上に集光されたレーザ光のビーム径内に隣接する記録ビ
ットが入るため、個々の記録ビットを分離して再生する
ことができなくなることが原因である。
【0004】上記の欠点を回避するために、Jpn.J.App
l.Phys.Vol.31(1992)pp.568-575には、FAD(Front Ap
erture Detection)およびRAD(Rear Aperture Detect
ion)と呼ばれる2つの方法が提案されており、ディスク
上での記録密度が向上することが示されている。
【0005】FADでは、高温部となるレーザ光の光ビ
ームのスポットの後部の再生層が、昇温により保磁力が
低下して、上記後部の再生層の磁化が再生用の外部磁界
によって一方向に揃い、上記後部に相当する記録層の磁
化方向がマスクされるので、上記スポットの前部側から
のみ記録層の情報が再生層を介して読み出すことがで
き、よって、上記スポットより小さい記録ビットでも読
み出せ、記録層での記録密度を向上させることができ
る。
【0006】RADでは、初期化用の外部磁界により、
予め初期化されて記録層の磁化方向がマクスされた再生
層に対し、光ビームを照射して、上記光ビームのスポッ
トの後部側となる高温部からのみ、上記マスクが解除さ
れて記録層の磁化方向が情報として再生層を介して読み
出すことができる。これにより、上記スポットより小さ
い記録ビットでも読み出せ、記録層での記録密度を向上
させることができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記従来の
FADでは、ディスクの径方向に、かつ、スポットの外
縁に沿った三日月型の読み出し領域が形成されるため、
スポット径より間隔の狭いトラックがそれぞれ形成され
ると隣接するトラックからの記録ビットが同時に再生さ
れることから、トラック方向(ディスク半径方向)の記
録密度を向上させることが困難であるという問題を生じ
ている。
【0008】また、上記従来技術では、再生時に外部磁
界を必要とするため、再生装置の大型化、消費電力の増
大化を招くという問題を生じている。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1記載の
光磁気記録媒体は、以上の課題を解決するために、希土
類遷移金属合金からなる垂直磁化を有する磁性体からそ
れぞれなる再生層、記録層および初期化層が透明基板上
に順次それぞれ形成され、再生層と記録層との間に生じ
る、希土類遷移金属合金における副格子磁化の方向を互
いに揃えようとする交換結合力の影響を遮断するための
第1の非磁性体層が再生層と記録層との間に積層され、
記録層と初期化層との間に生じる、希土類遷移金属合金
における副格子磁化の方向を互いに揃えようとする交換
結合力の影響を遮断するための第2の非磁性体層が記録
層と初期化層との間に積層され、再生層に照射され、垂
直磁化の磁化方向によって上記再生層から情報を読み出
すためのレーザ光による読み出し温度から室温までの温
度領域において、再生層の保磁力は、再生層に生じる記
録層および初期化層からの漏洩磁界より常に小さくなる
ように設定されており、上記温度領域において、記録層
の保磁力は、記録層に生じる再生層および初期化層から
の各漏洩磁界の合計より常に大きくなるように設定さ
れ、再生層に生じる記録層および初期化層からの全漏洩
磁界は、記録層および初期化層における温度変化に応じ
た飽和磁化のそれぞれの変化に基づいて、前記レーザ光
により室温から読み出し温度近傍に達するまでの温度変
化領域では、初期化層からの漏洩磁界が記録層からの漏
洩磁界より大きく、上記レーザ光によって読み出し温度
に達した温度では、記録層からの漏洩磁界が初期化層か
らの漏洩磁界より大きくなっていることを特徴としてい
る。
【0010】上記請求項1記載の構成によれば、第1の
非磁性層および第2の非磁性層によって、再生層と記録
層との間、および記録層と初期化層との間の交換結合力
が遮断されるため、再生層の保磁力を小さく設定しても
再生層の磁化方向が、記録層や初期化層の磁化方向に交
換結合力によって揃うことを回避される。
【0011】上記構成では、再生層の位置に生じる記録
層や初期化層からの漏洩磁界が、室温においては初期化
層からのものが支配的であり、かつ、その大きさが再生
層の保磁力より大きいため再生層の磁化は初期化層の磁
化方向に揃えられる。
【0012】一方、レーザ光が照射され、温度上昇が起
こり所定温度(読み出し温度)以上に昇温された部位で
は、再生層の位置に生じる記録層や初期化層からの漏洩
磁界が、記録層からのものが支配的であり、かつその大
きさが再生層の保磁力より大きいため再生層の磁化は記
録層の磁化方向に揃えられる。
【0013】すなわち、レーザ光による温度の高い領域
である読み出し温度以上の領域では、記録層の情報が再
生層に静磁気力により転写され、室温から読み出し温度
未満の温度の低い領域では初期化層の情報が再生層に転
写され、すなわち再生層は初期化される。
【0014】なお、上記構成では、室温から読み出し温
度までの温度領域において、記録層の保磁力は、記録層
の位置にできる再生層や初期化層からの漏洩磁界よりも
大きいため、記録層の情報が再生層や初期化層により書
き換えられることが回避される。
【0015】このように上記構成では、再生層および記
録層が、読み出し時にレーザ光によって昇温すると、上
記再生層の保磁力が順次低下する一方、記録層の飽和磁
化を大きくなるから、記録層の飽和磁化が再生層の保磁
力を上回ったときに、上記記録層の磁化方向が記録層の
漏洩磁界によって再生層に転写される。よって、読み出
された再生信号の立ち上がりをシャープにすることが可
能となる。
【0016】また、上記レーザ光により照射された再生
層のスポット部分は、周辺部から中心部に向かって温度
が高くなる温度分布を有するから、上記スポット部分の
一部のみにおいて読み出し温度以上となるように上記レ
ーザ光を設定すれば、上記スポット部分の一部からの
み、記録層の情報を再生層を介して上記レーザ光によっ
て読み出すことができる。
【0017】その上、上記構成は、レーザ光により昇温
して記録層の磁化方向が転写された再生層の磁化方向を
上記レーザ光によって検出する際、上記再生層における
読み出しされる部分と隣接し、かつ、レーザ光が照射さ
れている他の再生層の磁化方向の影響を回避できるもの
となっている。
【0018】つまり、上記構成では、レーザ光が照射さ
れた再生層における読み出し温度未満の部分では、初期
化層によって初期化、すなわち一方向に再生層の磁化方
向が揃っているので、レーザ光のスポット内での磁化方
向の乱れが回避される。
【0019】したがって、上記構成では、レーザ光によ
って検出される再生層と隣接する他の再生層の磁化方向
の影響を回避できることと、記録層の飽和磁化が再生層
の保磁力を上回ったときに上記記録層の磁化方向が記録
層の漏洩磁界によって再生層に転写されることとによっ
て、読み出された再生信号の立ち上がりをシャープにす
ることが可能となる。
【0020】このように上記構成では、記録層における
各磁化の大きさやそれらの間隔を小さくできて、記録層
における情報の記録密度を向上させることができ、か
つ、再生用の磁石や初期化用の磁石等の外部磁界を用い
なくとも、レーザ光の照射により温度上昇した、読み出
し温度に達した部分の記録層の情報のみを再生層に転写
し、安定に再生することが可能となる。
【0021】本発明の請求項2記載の光磁気記録媒体
は、請求項1記載の光磁気記録媒体において、再生層
は、再生層の補償温度が室温より低く設定されたもので
あり、レーザ光の照射によって読み出し温度まで昇温し
たときに磁化方向を再生層に漏洩磁界によって転写する
ための記録層は、記録層の補償温度が室温に設定された
ものであり、予め一方向の磁化方向に初期化された初期
化層は、初期化層の補償温度が室温と記録層のキュリー
温度との間に設定され、初期化層のキュリー温度が再生
層のキュリー温度より高くなるように設定されたもので
あることを特徴としている。
【0022】上記請求項2記載の構成によれば、再生層
の補償温度を室温より低く設定したから、室温から読み
出し温度までの温度範囲において、再生層は、昇温時に
順次保磁力が低下し、かつ、上記温度範囲にて補償温度
を通ることにより磁化方向が反転することが回避され
る。これにより、上記再生層は、室温での初期化層によ
る初期化が安定化され、かつ、読み出し温度での記録層
からの磁化方向の転写が安定化される。
【0023】また、上記構成では、記録層の補償温度を
室温に設定したので、記録層の飽和磁化を、室温にてほ
ぼゼロとすることができて、室温から読み出し温度未満
までの温度範囲において、初期化層による再生層の初期
化に対する記録層の影響を抑制できる。
【0024】さらに、上記構成では、初期化層の補償温
度を室温と記録層のキュリー温度との間に設定したの
で、室温と記録層のキュリー温度との間となる読み出し
温度付近で初期化層の飽和磁化を小さくすることができ
て、読み出し温度において記録層からの再生層への転写
に対する初期化層の影響を軽減できる。
【0025】また、上記構成では、初期化層のキュリー
温度を再生層のキュリー温度より高くなるように設定し
たから、再生層のキュリー温度より低く設定される読み
出し温度においても、上記初期化層の磁化方向が維持さ
れるので、初期化層の磁化方向を安定化でき、よって、
初期化層による再生層の初期化を安定化できる。
【0026】本発明の請求項3記載の光磁気記録媒体
は、請求項1または2記載の光磁気記録媒体において、
初期化層の補償温度が、読み出し温度の近傍に設定され
ていることを特徴としている。
【0027】上記請求項3記載の構成によれば、初期化
層の補償温度を読み出し温度の近傍に設定したので、読
み出し温度付近で初期化層の飽和磁化をほぽゼロとする
ことができて、読み出し温度において記録層からの再生
層への転写に対する初期化層の影響を回避できる。よっ
て、上記転写を安定化できる。
【0028】本発明の請求項4記載の光磁気記録媒体の
再生方法は、請求項1、2または3記載の光磁気記録媒
体を用いて情報を再生する光磁気記録媒体の再生方法で
あって、レーザ光における再生層に対する集光位置であ
るスポットの一部を上記読み出し温度に上昇させて、情
報を再生するための再生信号を上記再生層から読み出す
ことを特徴としている。
【0029】上記請求項4記載の方法によれば、請求項
1、2または3記載の光磁気記録媒体を用いたことによ
り、スポットの一部を上記読み出し温度に上昇させて、
情報を再生するための再生信号を上記一部に対応する再
生層から安定に読み出すことができるので、記録層にお
ける記録密度を高めながら、再生のための外部磁界を省
けて、再生装置の大型化を回避できる。
【0030】本発明の請求項5記載の光磁気記録媒体の
再生方法は、請求項4記載の光磁気記録媒体の再生方法
において、再生信号を微分して、その微分された再生信
号から情報を再生することを特徴としている。
【0031】上記請求項5記載の方法によれば、請求項
1、2または3記載の光磁気記録媒体を用いたことによ
り、立ち上がりがシャープな再生信号が得られるが、そ
の再生信号を微分することにより、さらにシャープな、
かつ、ドリフトの影響が低減された信号を得ることがで
きて、情報の再生をより安定化できる。
【0032】
【発明の実施の形態】
〔実施の形態1〕本発明にかかる一実施の形態を実施の
形態1として図1ないし図6に基づいて説明すれば、以
下の通りである。光磁気記録媒体は、図1に示すよう
に、基板1、透明誘電体層2、再生層3、非磁性層4、
記録層5、非磁性層6、初期化層7、保護層8、オーバ
ーコート層9が、この順にて積層されたディスク本体1
2を有している。上記基板1は、透明な基材、例えばポ
リカーボネートからなり、ディスク状に形成されてい
る。
【0033】このような光磁気記録媒体では、その記録
方式としてキュリー温度記録方式が用いられており、半
導体レーザ等のレーザ光としての光ビーム10が対物レ
ンズ11により再生層3上に絞り込まれ、極カー効果と
して知られている光磁気効果によって情報が上記再生層
3から再生されるようになっている。
【0034】上記極カー効果とは、再生層3が、光ビー
ム10の入射表面に垂直な、互いに反平行となる磁化を
それぞれ有し、それらの磁化方向によって光ビーム10
の反射光の偏光面の回転の向きが互いに逆方向となる現
象である。
【0035】上記光磁気記録媒体では、再生層3の磁化
方向を、集光された光ビーム10により発生する再生層
3上の温度分布に基づき制御することにより、瞬間的な
磁区の転写と初期化を発生させて、光ビーム10が照射
されている部分の一部を読み出し温度に、またはそれ以
上の高温になっている部分の再生層3の磁化を記録層5
に形成された磁区から発生する漏洩磁界の方向に向け、
室温から読み出し温度未満までの低温になっている部分
の再生層3の磁化を初期化層7から発生する漏洩磁界の
方向に向けさせることが可能となる。
【0036】これにより、光磁気記録媒体では、集光さ
れた光ビーム10のビーム径より小さなピッチで記録さ
れた記録層5の情報を再生層3を介して安定に再生でき
るようになっている。
【0037】図2および図3を用いて本願の光磁気記録
媒体についてさらに詳しく説明すると、まず、図2は再
生層3、記録層5および初期化層7の飽和磁化(Ms)の
温度依存性をそれぞれ表したものである。上記再生層
3、記録層5および初期化層7は、垂直磁化を示す希土
類遷移金属アモルファス合金によりそれぞれ作製されて
おり、フェリ磁性をそれぞれ示すものである。
【0038】このような希土類遷移金属アモルファス合
金では、希土類金属の磁化と遷移金属の磁化は互いに反
平行に結合している。それぞれの磁化の大きさが相等し
いと、各磁化の和、すなわち飽和磁化はゼロとなり、こ
の状態を実現する温度を補償温度、この状態を実現する
組成を補償組成と呼ぶ。
【0039】希土類遷移金属アモルファス合金では、補
償温度より低い温度のとき希土類金属の磁化が遷移金属
の磁化より大きくなるため、飽和磁化は希土類金属の磁
化の方向を向く。一方、補償温度より高い温度では、希
土類金属の磁化が遷移金属の磁化よりも小さくなるた
め、飽和磁化は遷移金属の磁化方向を向くことになる。
【0040】本明細書では、以降、希土類金属の磁化が
遷移金属の磁化よりも大きい場合をRare-Earth-rich(RE
-rich)と呼び、逆の場合をTransition-Metal-rich(TM-r
ich)と呼ぶ。図2ではRE-rich のときの飽和磁化を負で
表し、TM-rich のときの飽和磁化を正で表している。
【0041】再生層3は、室温でTM-rich の特性を有
し、飽和磁化が例えば150(emu/cc) でキュリー温度が 3
40℃である。記録層5は、室温が補償温度で、例えば 1
40℃ではTM-rich で120(emu/cc) の飽和磁化を有し、キ
ュリー温度が 260℃である。初期化層7は室温でRE-ric
h であり、例えば飽和磁化が-110(emu/cc)、補償温度が
140℃、キュリー温度が 360℃であり、140 〜360 ℃で
はTM-rich となり、 260℃にてTM-rich の極大点を有
し、その極大点では60(emu/cc)の飽和磁化を示すもので
ある。
【0042】このような光磁気記録媒体では、図示しな
い駆動装置により回転駆動され、その再生層3上に光ビ
ーム10が照射されて、上記再生層3から情報が再生さ
れるので、図3に示すように、上記光ビーム10のスポ
ット10aは、ディスク本体12上に周方向に沿って形
成されたトラック12aに沿って矢印12bの方向に移
動する。
【0043】このようなスポット10aの移動に伴い、
その移動速度に対応してディスク本体12上には、温度
分布14が発生する。温度分布14を示す略楕円状の各
線は等温線を示しており、スポット10aがディスク本
体12に対して移動することにより、ディスク本体12
において最も温度が高くなる部分は、スポット10aの
後方に位置することになる。ここで、温度分布14の
内、 120℃の等温線を等温線14aで表す。また、最も
温度の高い部位は 140℃になっており、等温線14bで
示す。
【0044】次に、図3(b)は、トラック12aが図
3(a)のように光ビーム10のスポット10aが照射
され、読み出し動作が行われているときのトラック12
aの厚さ方向の断面での各磁化を示す説明図である。な
お、図3(b)では、図1に示す基板1、透明誘電体層
2、保護層8およびオーバーコート層9は省略されてい
る。
【0045】図3(b)中、矢印は各層4・5・7にお
ける遷移金属の副格子磁気モーメントの方向であるTM
磁化をそれぞれ示しており、記録層5には情報が垂直磁
化の各方向によって記録されているため、例として互い
に反平行となる上下方向の矢印が各TM磁化として交互
に描かれている。初期化層7は一方向に初期化されてい
るため矢印が一方向(図では上向き)のみを向いてい
る。
【0046】再生層3では、等温線14aにて示した温
度領域より温度の高い領域で、TM磁化3aが、その真
下の記録層5のTM磁化5aに揃って上を向き、温度が
低い領域ではTM磁化3bが下を向いている様子を表し
ているが、再生層3の各TM磁化3a・3bがこのよう
に変化する理由は後述する。
【0047】図3(b)中、白抜きの矢印は各層4・5
・7における飽和磁化の方向と大きさを表している。初
期化層7は図2に示す飽和磁化の温度依存性を有してお
り、補償温度である 140℃未満ではRE-rich である。
【0048】したがって、初期化層7におけるTM磁化
7aおよび飽和磁化7bは、 140℃未満では互いに逆方
向を向いているため、図3(b)において、初期化層7
における矢印と白抜きの矢印とは互いに逆方向となる反
平行をそれぞれ向くことになる。また、初期化層7にお
ける白抜き矢印で示された飽和磁化7bの大きさは、ス
ポット10aによる高温部に近づく程、補償温度に近づ
くため小さくなる。
【0049】次に、記録層5の飽和磁化について説明す
る。記録層5の飽和磁化は図2に示す温度依存性を有す
るため、そのTM磁化と飽和磁化は同じ方向を向く。こ
れは図3(b)に示す記録層5において、TM磁化5a
および飽和磁化5bは互いに同じ方向を向いていること
に対応している。記録層5の飽和磁化は(白向きの矢
印)の大きさは、図2に示すように、読み出し温度とな
る高温部に近づくほど大きくなる一方、室温となってい
る部位でほぼゼロである。
【0050】さて、飽和磁化は磁極のS極からN極に向
けてベクトル的に描かれた単位体積当りの磁気モーメン
トと定義される。したがって、飽和磁化からはその大き
さに応じた磁束が生じることとなり、その近辺に磁界を
形成する。
【0051】次に、再生層3の高温部位(等温線14a
よりも温度の高い部位)に形成される磁界について考察
する。上記の高温部位の真下に面する記録層5は大きな
飽和磁化を有するため、上記記録層5によって形成され
る磁界は大きくなる。一方、上記の高温部位の真下に面
する初期化層7は、その飽和磁化が小さいか、またはほ
とんどゼロであるため、上記初期化層7に対応する再生
層3において形成される初期化層7による磁界は非常に
小さくなる。したがって、再生層3における高温部位に
できる磁界は、記録層5の情報に応じた磁界である。
【0052】次に、再生層の低温部位(等温線14aよ
りも温度の低い部位)に形成される磁界について考察す
る。この部位の真下に面する記録層5の飽和磁界は小さ
いか、またはほとんどゼロである一方、初期化層7の飽
和磁界は大きな値を有するので、再生層3の低温部位に
形成される磁界は、初期化層7の情報に応じた磁界であ
る。
【0053】記録層5には情報が磁化方向によって記録
されており、初期化層7は予め一方向に揃えられている
ため、再生層3が他の層からの磁界に応じてその磁化方
向を変えるなら、高温部位でのみ記録層3の情報が再生
層3に転写され、低温部位では初期化層7にしたがって
一方向に磁化方向が揃うことになる。
【0054】このとき、図3(a)において、スポット
10aの中の等温線14aの内側の領域のみから記録層
5の情報が再生層3を介して読み出され、上記再生層3
の他の領域の磁化方向は常に初期化層7に応じて一方向
に揃っている。
【0055】上述のように再生層3の磁化方向が、各層
5・7により発生する磁界に応じて変化するためには、
再生層3の位置に他の層5・7により形成される磁界の
強度が、室温、読み出し温度で再生層3の保持力より大
きくなっていればよい。このとき、再生層3の磁化方向
は、室温から読み出し温度未満までの低温部位では初期
化層7にしたがって初期化され、読み出し温度以上とな
る高温部位では記録層3の情報を示す磁化方向にしたが
って変化することになる。
【0056】このことから、上記実施の形態1の構成で
は、記録層3の情報が読み出される領域が光ビーム10
のスポット10aの面積より小さくなるため、光ビーム
10の回折限界を越えた分解能で情報を読み出すことが
できるようになる。したがって、上記構成では、通常の
光磁気記録媒体よりも高分解能で読み出せて、記録密度
を高めることが可能となり、その上、再生層3を初期化
するための外部磁界を省くことができるため、再生装置
の大型化を回避できる。
【0057】次に、前記実施の形態1の光磁気記録媒体
の詳細な具体例としての実施例を説明する。まず、Alの
ターゲットと、GdFeCo合金のターゲットと、DyFeCo合金
のターゲットと、TbFeCo合金のターゲットとの4つのタ
ーゲットをそれぞれ備えたスパッタ装置内に、プリグル
ーブおよびプリピットを有するディスク状に形成された
ポリカーボネート製の基板1を基板ホルダーに配置し、
スパッタ装置内を1×10-6Torrまで真空排気した後、ア
ルゴンと窒素の混合ガスを導入し、Alのターゲットに電
力を供給して、ガス圧4×10-3Torrの条件で、基板1に
AlN からなる透明誘電体層2を形成した。
【0058】ここで、透明誘電体層2の膜厚は、再生特
性を改善するため、光ビーム10の再生光の波長の1/
4を、透明誘電体層2の屈折率で除した値程度に設定さ
れ、例えば再生光の波長を 680nmとすると、10nm〜80nm
程度の膜厚でよい。本実施例においては、透明誘電体層
2の膜厚を50nmとした。
【0059】次に、再度、スパッタ装置内を1×10-6To
rrまで真空排気した後、アルゴンガスを導入し、GdFeCo
合金のターゲットに電力を供給して、ガス圧4×10-3To
rrとし、上記透明誘電体層2上に、Gd0.18(Fe0.66Co
0.34)0.82からなる再生層3を形成した。その再生層3
は、補償組成に対して、常にTM(遷移)金属が、RE
(希土類)金属に比べて多いTMリッチ組成であり、そ
のキュリー点が 340℃であった。
【0060】再生層3の膜厚は、その再生層3を光ビー
ム10が通過して記録層5に記録された情報が信号出力
となって現れることをある程度防止する必要があり10nm
以上であることが望ましい。また、再生層3の膜厚が厚
くなり過ぎると温度上昇に必要となる光ビーム10のパ
ワーが大きくなり、記録感度の低下の原因となる。その
ため、再生層3は、80nm以下であることが望ましい。本
実施例においては、再生層3の膜厚を20nmとした。
【0061】次に、スパッタ装置内にアルゴンと窒素の
混合ガスを導入し、Alのターゲットに電力を供給して、
ガス圧4×10-3Torrの条件で、基板1の再生層3上にAl
N からなる非磁性層4を形成した。ここで、非磁性層4
の膜厚は、記録層5により再生層3に形成される磁界を
大きくするため、60nm以下であることが望ましい。ま
た、再生層3と記録層5との間に交換結合が生じないよ
うにするため、1nm以上であることが望ましい。本実施
例においては非磁性層4の膜厚を5nmとした。
【0062】次に、再度、スパッタ装置内を1×10-6To
rrまで真空排気した後、アルゴンガスを導入し、DyFeCo
合金のターゲットに電力を供給して、GdFeCo合金からな
る再生層3と同様の条件で、上記非磁性層4上に、Dy
0.23(Fe0.75Co0.25)0.77からなる記録層5を形成した。
その記録層5は、ほぼ室温に補償点を有する垂直磁化膜
であり、そのキュリー点が 260℃であった。
【0063】記録層5の膜厚は、再生層3の磁化反転に
必要な磁界を発生させる必要があるため、20nm以上であ
ることが望ましい。また、記録層5が厚くなり過ぎると
温度上昇に必要となる光ビーム10のパワーが大きくな
り、記録感度の低下の原因となるため、記録層5は、 2
00nm以下であることが望ましい。本実施例においては、
記録層5の膜厚を60nmとした。
【0064】次に、上述したAlN 作製条件と同じ条件
で、記録層5上にAlN からなる非磁性層6を形成した。
ここで、非磁性層6の膜厚は、初期化層7により再生層
3に形成される磁界を大きくするため、60nm以下である
ことが望ましい。また、記録層5と初期化層7との間に
交換結合が生じないようにするため、1nm以上であるこ
とが望ましい。本実施例においては、非磁性層6の膜厚
を5nmとした。
【0065】続いて、再度、スパッタ装置内を1×10-6
Torrまで真空排気した後、アルゴンガスを導入し、TbFe
Co合金のターゲットに電力を供給して、GdFeCo合金から
なる再生層3と同様の条件で、上記非磁性層6上に、Tb
0.28(Fe0.72Co0.28)0.72からなる初期化層7を形成し
た。その初期化層7は、 140℃に補償点を有する垂直磁
化膜であり、そのキュリー点が 360℃であった。
【0066】初期化層7の膜厚は、再生層3の磁化反転
に必要な磁界を発生させる必要があるため、20nm以上で
あることが望ましい。また、初期化層7が厚くなり過ぎ
ると温度上昇に必要となる光ビーム10のパワーが大き
くなり、記録感度の低下の原因となるため、初期化層5
は、 200nm以下であることが望ましい。本実施例におい
ては、初期化層5の膜厚を60nmとした。
【0067】次に、スパッタ装置内にアルゴンと窒素の
混合ガスを導入し、Alのターゲットに電力を供給して、
透明誘電体層2の形成条件と同一条件で、初期化層7上
にAlN からなる保護層8を形成した。
【0068】ここで、保護層8の膜厚は、記録層5等の
磁性層を酸化等の腐食から保護することが可能であれば
よく、5nm以上であることが望ましい。本実施例におい
ては、保護層8の膜厚を20nmとした。
【0069】最後に、上記保護層8上に、紫外線硬化樹
脂、または熱硬化樹脂をスピンコートにより塗布して、
紫外線を照射するか、加熱するかによってオーバーコー
ト層9を形成した。
【0070】上記の再生層3、記録層5および初期化層
7の保磁力の温度依存性は、図4に示すように、室温か
ら読み出し温度の最高温度となる 160℃まで垂直磁化を
示す再生層3は、記録層5や初期化層7が形成する磁界
にその磁化方向が応じてるように十分小さな保磁力とな
っている。また、初期化層7は記録時に情報が記録され
ないように記録温度(記録層5のキュリー温度付近)以
下の温度域で 1.5kOe以上の大きな保磁力を有してい
る。
【0071】本実施例の光磁気記録媒体の記録再生特性
を測定した。その測定結果として、本実施例の光磁気記
録媒体におけるCNR(信号対雑音比)のマーク長依存
性を、図5に示した。上記の測定は、線速5m/s で行っ
た。まず、8mWのレーザパワーの光ビーム10を 300O
eの磁界のもと、直流照射し、初期化層7を初期化し
た。
【0072】次に、記録磁界を 150Oeとして、6mWの
レーザパワーの光ビーム10をパルス照射して、異なる
マーク長の記録ビットを、そのマーク長の2倍のピッチ
でそれぞれ形成した後、上記記録ビットを2mWのレーザ
パワーである再生用の光ビーム10にて、CNRの測定
を行った。図5に示すように、本実施例の光磁気記録媒
体では、マーク長 0.3μm 、マークピッチ 0.6μm の記
録ピッチにおいて、40dBのCNRが得られた。
【0073】また、図5中、比較例として示す曲線は、
従来の光磁気ディスクの測定結果で、再生レーザパワー
は1mWである。ここで用いた従来の光磁気ディスクは、
基板上にAlN 80nm/DyFeCo 20nm/AlN 25nm/AlNi 30nm を
この順に積層し、AlNi上にオーバーコート層を設けた構
成としている。すなわち、従来の光磁気ディスクは、希
土類遷移金属合金であるDyFeCo磁性層が1層だけあり、
その両側を透明誘電体層で、かつ保護層であるAlN で挟
み込み、最後に反射膜であるAlNiを設けた構造である。
【0074】この構造は、反射膜構造と呼ばれ、既に市
販がなされている 3.5インチサイズ単板使用の光磁気デ
ィスクの代表的なものである。従来の光磁気ディスクに
おいて、記録ビット長さが短い場合にCNRが低いの
は、ビット長が小さくなるにつれ、光ビーム10の照射
径の中に存在するビットの数が増え、一つ一つのビット
を識別できなくなるからである。
【0075】光ピックアップの光学的分解能を表す一つ
の指標としてカットオフ空間周波数が知られており、こ
れは、光源であるレーザの波長と対物レンズの開口数に
より定まるものである。本測定に用いた光ピックアップ
の波長と開口数の値(830nm、0.55)を用いてカットオ
フ周波数を求め、これを記録ビット長さに換算すると、
830nm/(2*0.55)/2=0.377μmとなる。言い換えると、本
測定に用いた光ピックアップの光学的分解能の限界は、
ビット長さで0.377 μmである。上記の従来の光磁気デ
ィスクの測定結果は、これを反映して0.35μmでのCN
Rがほぼゼロとなっている。
【0076】次に、再生パワーを変化させた場合、得ら
れるCNRにおける上記再生パワーへの依存性を調べる
ために、マーク長 0.3μm、マークピッチ 0.6μmに設
定された記録ビットに対して、読み取り用のレーザとし
ての再生パワーの出力を種々に代えてCNRをそれぞれ
測定した。それらの結果を図6に示した。
【0077】本実施例の光磁気記録媒体では、再生パワ
ーを順次増加させると、ある再生パワーを境にして、C
NRが急激に増加する。すなわち、再生パワーの上昇に
伴い、図3(a)に示すような温度分布が実現し、再生
層3において記録層5の情報に応じた磁区の瞬間的な生
成と消滅が発生、すなわち超解像動作が実現することに
より、このような急激なCNRの上昇が生じる。本発明
においては、再生パワーを適当な大きさに設定すること
で、従来より良好な信号を再生することができる。
【0078】〔実施の形態2〕次に、本発明の光磁気記
録媒体の再生方法における実施の形態を実施の形態2と
して、図7ないし図10に基づいて説明する。まず、従
来、一般に使用されている単層の磁性層からなる光磁気
記録媒体に対し、 0.8μmピッチで長さ 0.4μmの記録
ビットを記録した場合に得られる再生信号の一例を図7
に示す。上記光磁気記録媒体では、記録ビット上を光ビ
ームが移動するのに伴い、サインカーブに近い形の再生
信号が得られる。
【0079】次に、本発明に係る光磁気記録媒体に対
し、 0.8μmピッチで長さ 0.4μmの記録ビットを記録
した場合、再生時に得られる再生出力の信号波形を、図
8に示した。図8に示すように、本発明の光磁気記録媒
体では、再生信号の立ち上がりが極めて急峻であること
が判る。
【0080】一般に、光磁気記録媒体においては、差動
検出法が用いられるため、反射率変化による信号振幅の
変動がある程度抑制された形で再生信号が得られる。し
かし、再生信号には、差動検出で抑制できない複屈折変
動等に起因する信号振幅の変動が残っており、再生信号
は、図7に示すように、再生信号はゆるやかな上下動を
伴うことになる。この場合、定電圧レベルをスライスレ
ベルとすると、信号振幅のゆるやかな上下動に伴い、記
録ビットの正確な位置を検出できなくなる。
【0081】そこで、上記のような上下動による再生エ
ラーを抑制するために、包絡線検波によって最終信号を
得ることが一般に行われている。すなわち、再生信号の
各包絡線を検出し、上記各包絡線の平均レベルに基づい
てスライスレベルを設定することにより、ゆるやかな上
下動に伴う記録ビットの検出位置の変動をキャンセル
し、より正確な位置検出を可能としている。
【0082】ここで、本発明に係る光磁気記録媒体の図
8に示す再生信号においても、同様にゆるやかな信号振
幅の上下動を伴うことになる。このような上下動では、
図7に示す従来と比べて、再生信号の立ち上がりが急峻
であるため、定電圧レベルでスライスした場合、上記従
来よりも、より正確な記録ビットの位置の検出が可能で
あるが、この場合も、図7と同様、再生信号の包絡線検
波を行って最終信号を得ることが、より望ましい。
【0083】次に、上記再生信号を微分処理して、情報
を再生する方法について説明すると、本発明の光磁気記
録媒体から再生される再生信号を微分処理した信号波形
を、図9に示した。ところで、図7に示す従来のように
再生信号がサインカーブである場合、上記再生信号を微
分処理しても再生信号の位相が変化するだけであり、再
生信号の波形に大きな変化を発生させることは困難であ
る。
【0084】しかしながら、本実施の形態2では、得ら
れた再生信号の立ち上がりが極めて急峻であるから、上
記再生信号の微分処理によって、図9に示すように、上
記再生信号からゆるやか再生信号の振幅の変動を除去で
き、再生信号の変動が急峻な部分のみ、すなわち再生信
号の立ち上がり部分のみを微分出力として得ることが可
能となる。
【0085】このように、本実施の形態2においては、
得られた再生信号を微分処理することにより、ゆるやか
な信号振幅の上下動の悪影響を除去できて、記録ビット
の正確な位置を示す最終再生信号を得ることが可能とな
る。これにより、従来の包絡線検波を行う際に必要な再
生信号の遅延回路を省くことができて、図10に示すよ
うに定電圧スライスレベルを用いた簡単な回路構成で正
確な再生信号の処理を行うことが可能となる。
【0086】さらに、本実施の形態2の光磁気記録媒体
の再生方法では、再生信号を微分処理することにより、
得られた再生信号からゆるやかな信号振幅の上下動を除
去しながら、再生信号の立ち上がりと、立ち下がりが共
に極めて急峻となる再生信号が得られるため、再生信号
の立ち上がりと、立ち下がり位置を正確に検出すること
が可能となり、マーク長記録に対しても良好な再生特性
を得ることができる。
【0087】このことは、以下のような効果をもたら
す。微分処理により、記録ビットエッジの正確な位置情
報を有する再生信号が得られるということは、すなわち
媒体から直接得られる光磁気信号となる再生信号に要求
される信号品質を低く抑えることが可能となるというこ
とである。
【0088】従来では信号処理前の信号品質として、C
NRにて45dB以下の信号品質では、光磁気ディスクとし
て要求される1×10-5以下のエラーレートを得ることが
不可能であるとされてきたが、本発明の光磁気記録媒体
を用いて本発明の再生方法で再生信号を得た後、本発明
の信号処理をすれば、信号処理前に35dB以上のCNRが
あれば、1×10-5以下のエラーレートを得ることができ
た。
【0089】これは、すなわち35dB程度のCNRしか得
られないような高密度に記録された情報の再生において
も、要求されるエラーレートを実現することが可能とな
り、さらなる高密度記録再生を実現できた。表1に記録
ビット長とCNR、エラーレートの関係を示した。表
中、CNR1、Er1(エラーレート)は、図7に示す
従来の光磁気記録媒体の再生信号に対する結果を示して
おり、CNR2、Er2は、図8に示す本発明の光磁気
記録媒体の再生信号に対する結果を示しており、Er3
は、図9に示すように、本発明の光磁気記録媒体の再生
信号をさらに微分処理した信号に対する結果を示してい
る。
【0090】
【表1】
【0091】表1から明らかなように、他の比較例とし
てのCNR1では、ビット長が 0.6μm以上でないと、
Er1の欄に示すように、所望するエラーレート(1×
10-5以下)が得られなかったが、本実施例2の方法を示
すCNR2では、再生信号に対して微分処理を施さない
場合でも、Er2の欄に示すように、ビット長 0.4μm
以上で所望するエラーレートが得られて、従来より高密
度化を図ることができることが判る。その上、再生信号
に対して微分処理を施した場合、Er3の欄に示すよう
に、ビット長 0.35 μm以上で所望するエラーレートが
得られ、さらに高密度化を図ることができるものとなっ
ている。
【0092】
【発明の効果】本発明の請求項1記載の光磁気記録媒体
は、以上のように、レーザ光の照射によって情報を再生
するための再生層と、情報が記録され、読み出し温度と
なる高温時にて上記再生層に情報が転写される記録層
と、再生層を低温時に初期化するための初期化層とをこ
の順にて設ける。再生層と記録層との間と、記録層と初
期化層との間に、それらの間の交換結合を防止するため
の非磁性層をそれぞれ設ける。記録層は室温にて補償温
度となり、初期化層はレーザ光の照射によって昇温した
読み出し温度にて補償温度となるように設定される構成
である。
【0093】それゆえ、上記構成は、記録層における記
録部位の単位である各マークの大きさやそれらの間隔や
トラック間隔を小さくできて、記録層における情報の記
録密度を向上させることができ、かつ、再生用の磁石や
初期化用の磁石等の外部磁界を用いなくとも、レーザ光
の照射により温度上昇した読み出し温度に達した部分の
記録層の情報のみを再生層に転写し、安定に再生するこ
とが可能となる。
【0094】したがって、上記構成では、外部磁界を省
いても、大容量化に必要な記録の高密度化が充分に達せ
られるので大容量の記録再生装置が必要とされる例えば
画像情報記録を充分に行いながら、上記記録再生装置の
大型化を回避できるという効果を奏する。
【0095】本発明の請求項2記載の光磁気記録媒体
は、さらに、再生層は、再生層の補償温度が室温より低
く設定されたものであり、レーザ光の照射によって読み
出し温度まで昇温したときに磁化方向を再生層に漏洩磁
界によって転写するための記録層は、記録層の補償温度
が室温に設定されたものであり、予め一方向の磁化方向
に初期化された初期化層は、初期化層の補償温度が室温
と記録層のキュリー温度との間に設定され、初期化層の
キュリー温度が再生層のキュリー温度より高くなるよう
に設定された構成である。
【0096】それゆえ、上記構成では、再生層は、室温
での初期化層による初期化が安定化され、かつ、読み出
し温度での記録層からの磁化方向の転写が安定化され、
また、室温から読み出し温度未満までの温度範囲におい
て、初期化層による再生層の初期化に対する記録層の影
響を抑制できる。
【0097】さらに、上記構成では、読み出し温度にお
いて記録層からの再生層への転写に対する初期化層の影
響を軽減でき、その上、再生層のキュリー温度より低く
設定される読み出し温度においても、上記初期化層の磁
化方向が維持されるので、初期化層の磁化方向を安定化
でき、よって、初期化層による再生層の初期化を安定化
できる。これにより、上記構成では、再生層からの情報
の読み出しをさらに安定化できるという効果を奏する。
【0098】本発明の請求項3記載の光磁気記録媒体
は、さらに、初期化層の補償温度が、読み出し温度の近
傍に設定されている構成である。
【0099】それゆえ、上記構成は、読み出し温度付近
で初期化層の飽和磁化をほぽゼロとすることができて、
読み出し温度において記録層からの再生層への転写に対
する初期化層の影響を回避できる。よって、上記転写を
より安定化でき、再生層からの情報の読み出しをさらに
安定化できるという効果を奏する。
【0100】本発明の請求項4記載の光磁気記録媒体の
再生方法は、以上のように、請求項1、2または3記載
の光磁気記録媒体を用いて情報を再生する光磁気記録媒
体の再生方法であって、レーザ光における再生層に対す
る集光位置であるスポットの一部を上記読み出し温度に
上昇させて、情報を再生するための再生信号を上記再生
層から読み出す方法である。
【0101】それゆえ、上記方法は、請求項1、2また
は3記載の光磁気記録媒体を用いたことにより、スポッ
トの一部を上記読み出し温度に上昇させて、情報を再生
するための再生信号を上記一部に対応する再生層から安
定に読み出すことができるので、記録層における記録密
度を高めながら、再生のための外部磁界を省けて、再生
装置の大型化を回避できるという効果を奏する。
【0102】本発明の請求項5記載の光磁気記録媒体の
再生方法は、さらに、再生信号を微分して、その微分さ
れた再生信号から情報を再生する方法である。
【0103】それゆえ、上記方法は、請求項1、2また
は3記載の光磁気記録媒体を用いたことにより、立ち上
がりがシャープな再生信号が得られるが、その再生信号
をさらに微分することにより、さらにシャープな、か
つ、ドリフトの影響が低減された信号を得ることができ
て、情報の再生を、微分処理のための簡素な回路を用い
てより安定化できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光磁気記録媒体の概略構成図である。
【図2】上記光磁気記録媒体の再生層、記録層および初
期化層における飽和磁化の磁気特性を示すグラフであ
る。
【図3】本発明の光磁気記録媒体およびその再生方法の
説明図であって、(a)は上記光磁気記録媒体およびそ
の再生方法の概略平面図であり、(b)は上記光磁気記
録媒体およびその再生方法の概略構成図である。
【図4】上記光磁気記録媒体における再生層、記録層お
よび初期化層における保磁力の磁気特性を示すグラフで
ある。
【図5】上記光磁気記録媒体のマーク長に依存する記録
再生特性を示すグラフである。
【図6】上記光磁気記録媒体における光ビームの再生パ
ワーに依存する記録再生特性を示すグラフである。
【図7】従来の光磁気記録媒体の再生信号を示すグラフ
である。
【図8】本発明の光磁気記録媒体の再生信号を示すグラ
フである。
【図9】上記再生信号を微分処理した信号を示すグラフ
である。
【図10】上記微分処理のための回路を示すブロック図
である。
【符号の説明】
3 再生層 4 非磁性層 5 記録層 6 非磁性層 7 初期化層 10 光ビーム(レーザ光)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高橋 明 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シ ャープ株式会社内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】希土類遷移金属合金からなる垂直磁化を有
    する磁性体からそれぞれなる再生層、記録層および初期
    化層が透明基板上に順次それぞれ形成され、 再生層と記録層との間に生じる、希土類遷移金属合金に
    おける副格子磁化の方向を互いに揃えようとする交換結
    合力の影響を遮断するための第1の非磁性体層が再生層
    と記録層との間に積層され、 記録層と初期化層との間に生じる、希土類遷移金属合金
    における副格子磁化の方向を互いに揃えようとする交換
    結合力の影響を遮断するための第2の非磁性体層が記録
    層と初期化層との間に積層され、 再生層に照射され、垂直磁化の磁化方向によって上記再
    生層から情報を読み出すためのレーザ光による読み出し
    温度から室温までの温度領域において、再生層の保磁力
    は、再生層に生じる記録層および初期化層からの漏洩磁
    界より常に小さくなるように設定されており、 上記温度領域において、記録層の保磁力は、記録層に生
    じる再生層および初期化層からの各漏洩磁界の合計より
    常に大きくなるように設定され、 再生層に生じる記録層および初期化層からの全漏洩磁界
    は、記録層および初期化層における温度変化に応じた飽
    和磁化のそれぞれの変化に基づいて、前記レーザ光によ
    り室温から読み出し温度近傍に達するまでの温度変化領
    域では、初期化層からの漏洩磁界が記録層からの漏洩磁
    界より大きく、上記レーザ光によって読み出し温度に達
    した温度では、記録層からの漏洩磁界が初期化層からの
    漏洩磁界より大きくなっていることを特徴とする光磁気
    記録媒体。
  2. 【請求項2】請求項1記載の光磁気記録媒体において、 再生層は、再生層の補償温度が室温より低く設定された
    ものであり、 レーザ光の照射によって読み出し温度まで昇温したとき
    に磁化方向を再生層に漏洩磁界によって転写するための
    記録層は、記録層の補償温度が室温に設定されたもので
    あり、 予め一方向の磁化方向に初期化された初期化層は、初期
    化層の補償温度が室温と記録層のキュリー温度との間に
    設定され、初期化層のキュリー温度が再生層のキュリー
    温度より高くなるように設定されたものであることを特
    徴とする光磁気記録媒体。
  3. 【請求項3】請求項1または2記載の光磁気記録媒体に
    おいて、 初期化層の補償温度が、読み出し温度の近傍に設定され
    ていることを特徴とする光磁気記録媒体。
  4. 【請求項4】請求項1、2または3記載の光磁気記録媒
    体を用いて情報を再生する光磁気記録媒体の再生方法で
    あって、 レーザ光における再生層に対する集光位置であるスポッ
    トの一部を上記読み出し温度に上昇させて、情報を再生
    するための再生信号を上記再生層から読み出すことを特
    徴とする光磁気記録媒体の再生方法。
  5. 【請求項5】請求項4記載の光磁気記録媒体の再生方法
    において、 再生信号を微分して、その微分された再生信号から情報
    を再生することを特徴とする光磁気記録媒体の再生方
    法。
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