JPH09267086A - 汚染土壌の浄化方法 - Google Patents

汚染土壌の浄化方法

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JPH09267086A
JPH09267086A JP8162101A JP16210196A JPH09267086A JP H09267086 A JPH09267086 A JP H09267086A JP 8162101 A JP8162101 A JP 8162101A JP 16210196 A JP16210196 A JP 16210196A JP H09267086 A JPH09267086 A JP H09267086A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 2次汚染の心配のない微生物の嫌気条件での
汚染土壌の浄化方法を提供すること。 【解決手段】 汚染土壌に水素ガスまたはシリコンを添
加して、微生物による嫌気条件でのテトラクロロエチレ
ン、硝酸イオン、亜硝酸イオン等の汚染物質の分解作用
を誘導あるいは促進する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、嫌気性下での微生
物による汚染物質の分解反応を利用して、土壌中の汚染
物質を分解して汚染土壌を浄化する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、汚染土壌の浄化方法として、土壌
中より汚染物質を減圧を利用して吸引抽出する真空抽出
法、汚染土壌を掘り出して焼却施設で土壌と共に汚染物
質を燃焼させるオンサイトまたはオフサイト焼却法、加
熱により汚染物質を土壌から放出させる熱脱着法、水ま
たはその他の溶剤により土壌から汚染物質を浸出させる
土壌洗浄法などが知られている。
【0003】しかし、汚染土壌から有害物質(汚染物
質)を物理化学的な手段によって分離する方法は、土壌
から汚染物質を分離するための施設や装置、更には、分
離された汚染物質を無害化するための施設や装置が必要
であり、設備の設置、及びその稼働、維持管理に多大な
コストを要するという問題がある。また、このような物
理化学的な除去方法は、高濃度に汚染された土壌には有
効であるが、低濃度に汚染された土壌に対する除去効率
が低いという問題もある。
【0004】そこで、比較的低濃度に汚染された土壌に
も適用可能な浄化方法として、汚染物質を分解可能な微
生物を利用する方法、いわゆるバイオレメディエーショ
ンがコスト面等において有効であると期待されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】現在、有機塩素化合物
による土壌汚染の成分には、例えば、テトラクロロエチ
レン、四塩化炭素などの嫌気条件下でのみ土壌微生物に
より分解作用を受けるものがある。従って、これらの成
分の分解除去には、土壌中の好気性微生物の作用を前提
としてメタン及び酸素を土壌中に導入する方法では効果
が期待できない。
【0006】また、有機物を土壌に添加して土壌を嫌気
状態として嫌気性微生物の作用により汚染物質を分解す
る方法では、有機物を土壌中に過不足無く供給する必要
がある。すなわち、有機物の添加量が不足する場合に
は、無害な物質までの分解が十分に行われず、分解の途
中で生成される中間代謝物質の蓄積による汚染が懸念さ
れ、過剰の場合には、土壌に添加した有機物が地下水中
に溶け出して地下水の新たな汚染原因となることが懸念
される。
【0007】これらの事情から明らかな通り、嫌気条件
下でのバイオレメディエーションにおいては、コストや
分解効率、更には安全性といった点においてより実用的
な方法が要望されている。
【0008】本発明の目的は、上述した従来技術におけ
る問題や懸念を解消し、添加物質による新たな汚染を起
こさずに、嫌気条件下で土壌中の汚染物質の微生物によ
る分解をより効果的に誘導あるいは促進可能な方法を提
供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決する本発
明は、水素ガスまたはシリコンを、土壌中における嫌気
条件下での微生物の汚染物質の分解作用を誘導または促
進する物質として利用することを特徴とし、以下の各発
明を包含する。
【0010】本願第1の発明の汚染土壌の浄化方法は、
嫌気条件下で微生物を利用して土壌中の汚染物質を分解
して汚染土壌を浄化する方法において、該汚染土壌に水
素ガスを導入して前記微生物による嫌気条件下での汚染
物質の分解を行うことを特徴とする。水素ガスは、例え
ば不燃性ガスとの混合状態で土壌中に導入され、この不
燃性ガスとしては二酸化炭素ガスが好ましい。炭酸ガス
あるいは無機炭酸塩の併用によって分解作用をより向上
させることができる。
【0011】水素ガスの土壌中への添加は、水素ガスを
水性媒体に溶存させた状態で行うこともできる。この水
性媒体としては、水を主体として構成されるものが利用
でき、水素ガスとともに二酸化炭素ガスまたは無機炭酸
塩を導入するのが好ましい。
【0012】本願第2の発明の汚染土壌の浄化方法は、
嫌気条件下で微生物を利用して土壌中の汚染物質を分解
して汚染土壌を浄化する方法において、該汚染土壌にシ
リコンを導入して前記微生物による嫌気条件下での汚染
物質の分解を行うことを特徴とする。この方法では、シ
リコンと共にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を添
加することにより、シリコンからの水素の発生を促進さ
せ、無機炭酸塩を添加することにより重金属の影響を低
減し、水素を基質とする、あるいは水素と炭酸を基質と
する微生物による有機塩素化合物の脱塩素化反応と、水
素を基質とした微生物による脱窒素反応を促進させ、高
い分解作用を得ることができる。
【0013】本発明において汚染土壌中に供給される水
素ガスまたはシリコンは、それが供給された土壌中の領
域内を嫌気性とすることで、嫌気条件での微生物による
汚染物質の分解作用を誘導または促進する。更に、水素
の存在によって微生物の分解活性が高められ、単なる嫌
気条件の形成剤としてではなく、微生物の分解活性の向
上剤としての作用も有し、相乗的な効果を得ることがで
きる。
【0014】また、水素ガスやシリコンは、土壌中に滞
留、蓄積しても安全であり、更に、シリコンが酸化して
形成されるケイ酸もまた毒性についての報告はなく、本
発明によれば二次汚染の懸念のない土壌浄化法を提供で
きる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳述する。
【0016】本願第1の発明の汚染土壌の浄化方法にお
ける水素ガスの土壌への導入は、例えば、所望の位置に
供給口を設けた供給管を、土壌の浄化対象領域に供給口
が位置するように埋設し、ポンプ等によって供給圧を負
荷する方法などによって行うことができる。また、汚染
土壌を掘り出して適当な容器に充填する方法では、容器
内の気相を水素ガスに置換して密封する方法が利用でき
る。
【0017】水素ガスは、取扱い時における安全性等を
考慮して、他の適当なガスとの混合状態で土壌中に導入
することもできる。この場合に用いる他のガスとして
は、汚染物質の分解に利用する微生物の嫌気条件下での
作用を低下させることがなく、また、それ自身による2
次汚染の心配のないガスであれば特に制限はない。混合
ガスを用いる場合の混合ガス中に占める水素ガスの割合
としては、本発明の目的効果が得られる割合を適宜選択
すればよい。
【0018】また、水素ガスの燃焼性等を考慮すれば、
不燃性ガスで水素ガスを燃焼限界以下に希釈した混合ガ
スを用いるのがより好ましい。この場合の混合ガス中に
占める水素ガスの割合も本発明の目的効果が得られる割
合を適宜選択すればよい。
【0019】水素ガスと混合して用いるガスとしては、
窒素ガス、二酸化炭素ガス等を挙げることができ、これ
らの1種以上を水素ガスと混合して用いることができ
る。これらの中では、有機塩素化合物の分解効率という
点からは二酸化炭素ガスがより好ましい。
【0020】水素ガスは、水性媒体に溶存させた状態で
土壌中に供給することができる。水素ガスを溶存する水
性媒体は、水に水素をバグリングする方法、水中で水素
を化学的に発生させる方法等によって調製することがで
きる。この水性媒体には、必要に応じて、例えば、微生
物の炭素源、窒素源、各種ミネラル、各種ビタミン等の
栄養素などの各種成分を溶解または懸濁させても良い。
また、これらの成分は水素ガスと別の供給系で浄化しよ
うとする土壌領域内へ供給しても良い。
【0021】この水性媒体における水素ガスの溶存濃度
としては、本発明の目的効果が得られる濃度を適宜選択
すればよい。
【0022】水性媒体に溶存させた水素ガスを土壌に導
入する方法では、無機炭酸塩を共存させることによって
汚染物質の分解効率をより向上させることができる。こ
の無機炭酸塩としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、
炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸アンモニウム、
炭酸水素アンモニウム等を挙げることができ、これらの
1種以上を用いることができる。これらのなかでは、炭
酸水素ナトリウム、炭酸カルシウムが窒素源を含まない
ため、窒素源による地下水汚染の懸念がないという点で
好ましい。この無機炭酸塩は、水素ガスを溶存する水性
媒体と混合して土壌に投入してもよいし、水素ガスを溶
存する水性媒体とは別に土壌中に投入しても良い。投入
量は、例えば、それ自身が2次汚染とならず、しかも本
発明による汚染物質の分解効果を高めることができる量
を適宜選択して用いればよい。
【0023】この水性媒体を用いる方法は、先の水素ガ
スを直接用いる方法と比較して、土壌中の毛細現象をも
利用して、より速やかな水性媒体の土壌粒子間への浸透
が容易となり、ガスを導入する場合に必要な高い導入圧
を形成するための設備や装置を省略することができると
いう利点がある。更に、水性媒体中に上述したような微
生物の栄養素等を添加しておけば、水素ガスとともにこ
れらの成分を土壌内に同時に供給することが容易とな
り、微生物に汚染物質の分解作用を更に促進あるいは増
強させてより高い分解効率を得ることも可能である。な
お、微生物の栄養素等の成分は、水素ガスを溶存する水
性媒体と別途土壌に供給しても良い。
【0024】水素ガスを溶存する水性媒体の土壌への導
入方法としては、例えば所望の位置に供給口を設けた供
給管を、土壌の浄化対象領域に供給口が位置するように
埋設し、必要に応じてポンプ等を利用して供給圧を負荷
する方法などを挙げることができる。また、汚染土壌を
掘り出して適当な容器に充填する方法では、容器内で土
壌とこの水性媒体を混合して、密封する方法が利用でき
る。
【0025】本願第2の発明で用いるシリコンとして
は、各種の形態のものが利用できるが、土壌への投与操
作における散布効率や取扱い性等を考慮すれば、粒子
状、微粒子状のものが好ましい。粒子状のものを用いる
場合の粒径としては、例えば0.01μm 〜10μm の
ものが利用でき、その上限は、3μm が、その下限は
0.05μm のものが好ましい。土壌中へのシリコンの
供給量としては、所望の分解効果が達成できる量が適宜
選択される。
【0026】一方、土壌粒子間への毛管現象を利用した
浸透効率などを考慮すれば、適当な液媒体に微粒状シリ
コンを懸濁させた懸濁液を用いるのが好ましい。このよ
うなシリコン微粒子懸濁液としては、半導体産業におい
て廃棄物として排出されるシリコンスラッジを挙げるこ
とができる。スラッジのシリコン粒子の含有量として
は、所望とする土壌へのシリコンの供給量が得られるよ
うに適宜設定される。
【0027】シリコンの土壌への導入方法としては、土
壌表面にシリコンを散布して、混合する方法、土壌を掘
り起こして、これにシリコンを混合する方法、シリコン
の懸濁液を散布する方法、供給口を有する供給管を土壌
中に埋設して、供給管からシリコン懸濁液を、必要に応
じてポンプによって供給圧を負荷して供給する方法等を
挙げることができる。また、汚染土壌を掘り出して適当
な容器に充填する方法では、容器内で土壌とシリコンを
混合する方法が利用できる。
【0028】このシリコンを導入する方法においては、
無機炭酸塩、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩
の少なくとも1種を併用することによって、より高い汚
染土壌の分解効果を得ることが可能となる。
【0029】無機炭酸塩としては、炭酸水素ナトリウ
ム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸アンモニウ
ム、炭酸水素アンモニウム等を挙げることができ、これ
らの1種以上を用いることができる。これらのなかで
は、土壌のpHを中性領域に保ち、なおかつ窒素源によ
る汚染の懸念がなく、シリコンからの水素の発生を促進
できるという点で、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウ
ムが好ましい。
【0030】アルカリ金属塩としてはリチウム、ナトリ
ウム、カリウム等の塩を挙げることができ、その対イオ
ンとして地下水や土壌を汚染する影響の少ない塩化物、
硫酸塩、炭酸塩を形成するイオンとの組合せが挙げられ
る。これらの中では、微生物に与える影響が少なく、環
境に与える影響の少ない、塩化ナトリウム、塩化カリウ
ム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、炭酸水素ナトリウ
ムが好ましい。
【0031】アルカリ土類金属塩として、マグネシウム
塩、カルシウム塩等で、対イオンとして塩化物、硫酸
塩、炭酸塩を形成するイオンとの組合せを挙げることが
でき、微生物及び環境に与える影響の少ない炭酸カルシ
ウム、炭酸マグネシウムが好ましい。
【0032】これらの各種塩の土壌への添加量は、シリ
コンの投入による汚染物質の分解効果を向上させること
が可能となり、しかも過剰とならない範囲に適宜設定さ
れる。
【0033】シリコンを投与することによる作用につい
ては、土壌中でのシリコンからの水素発生によって嫌気
条件が整備されて微生物による汚染物質分解作用が誘導
または促進されるとともに、分解作用も強化されること
によるものと考えられる。また、シリコンによる酸素の
吸収による相乗的な効果も期待できる。なお、シリコン
はシリコン原子に由来する毒性がなく、また、シリコン
からの水素の発生、あるいはシリコンと酸素との反応に
よって生じる酸化ケイ素は土壌中で最も高い比率を占め
る成分であることから、仮にシリコンの土壌への投与量
が過剰となっても新たな汚染が発生する危険性はない。
【0034】本発明による汚染土壌の浄化方法は、微生
物の嫌気条件下での汚染物質の分解作用を利用するもの
で、微生物としては、土壌中にすでに存在する微生物を
好適に利用することができる。土壌中には通常多種多様
な微生物が存在しており、本発明の方法によって土壌中
の浄化対象領域内の嫌気条件を整えることで、該領域内
にいる微生物の分解作用を誘導し、かつ水素またはシリ
コンによって分解作用を高めることが可能となる。ま
た、浄化しようとする土壌領域内における微生物量が少
ない場合には、嫌気性条件下にあるメタン発酵汚泥や排
水溝、水田、蓮田、河川の底泥を採取、導入してこれを
利用することもできる。
【0035】本発明の汚染土壌の浄化方法は、嫌気条件
での微生物の分解作用を利用できる汚染物質の浄化に好
適に適用でき、中でも、テトラクロロエチレン、トリク
ロロエチレン、四塩化炭素、1,1,1−トリクロロエ
タンなどの有機塩素化合物、硝酸イオン、亜硝酸イオン
等のイオンなどの分解に特に好適である。
【0036】
【実施例】以下、実施例により本発明をより詳細に説明
する。
【0037】実施例1及び比較例1 バイアル瓶(容量120ml)に50mlの表1の組成
の無機塩類溶液を入れ、これを更にクリーニング店の排
水溝より採取した土壌を湿重量で1g添加したものを多
数用意した。次に、バイアル瓶中の気相を表3に示した
組成の混合ガスNo.1で置換した後、テフロンラミネ
ートコーティングが施されたゴム栓をし、その上からア
ルミキャップで密栓した。密栓後、バイアル瓶内に汚染
物質としてテトラクロロエチレンを密封状態を維持しつ
つマイクロシリンジで1μl添加し、これらを攪拌混合
した。更に、混合ガスNo.2及びNo.3を個々に用
いて同様の操作を行い、気相の置換ガス組成が異なるバ
イアル瓶を3種用意した。このようにして試料を封入し
たバイアル瓶を25℃の恒温槽に静置した。FIDを検
出器としたガスクロマトグラフィーを用いてヘッドスペ
ース法で、バイアル瓶内の気相中のテトラクロロエチレ
ンの量を経日的に測定した。図1に、得られた測定結果
から算出した初期濃度に対する残存率の変化を示す。水
素を汚染土壌に導入することによって、テトラクロロエ
チレンの分解を促進することができた。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】実施例2及び比較例2 表1の組成の無機塩溶液に予め水素ガスで3分間バブリ
ングして水素ガスを溶存させた溶液50mlを、バイア
ル瓶(容量120ml)に添加し、実施例1と同じ場所
で採取した土壌を湿重量で1g添加したものを多数用意
した。次にバイアル瓶中の試料に、表4に示した条件
で、N−2−ヒドロキシエチルピベラジン−N′−2−
エタンスルホン酸(以下HEPESと略称する)、無機
炭酸塩としての炭酸水素ナトリウムをそれぞれ個々に添
加した。更に、試料を詰めたバイアル瓶の気相を表4に
示す条件となるように混合ガスで置換した後、テフロン
ラミネートコーティングが施されたゴム栓をし、その上
からアルミキャップで密栓した。最後に、各バイアル瓶
内に密封状態を維持しつつ、汚染物質としてテトラクロ
ロエチレンをマイクロシリンジで1μlずつ添加した。
試料を封入した各バイアル瓶を25℃の恒温槽に静置し
た。FIDを検出器としたガスクロマトグラフィーを用
いてヘッドスペース法で、バイアル瓶内の気相中のテト
ラクロロエチレンの量を経日的に測定した。図2に、得
られた測定結果から算出した初期濃度に対する残存率の
変化を示す。
【0042】
【表4】
【0043】図2の結果に示すとおり、水素ガスをバブ
リングして水素を溶存させた無機塩類溶液を使用した場
合は、水素ガスをバブリングしていない無機塩類溶液を
使用した場合より、テトラクロロエチレンの残存率が低
くなった。水素ガスをバブリングした無機塩類溶液を用
いた場合でも、バイアル瓶の気相が二酸化炭素に置換さ
れているか、あるいは炭酸水素ナトリウムが添加されて
いる場合の方がそれ以外の場合よりもテトラクロロエチ
レンの残存率がより低くなった。すなわち、水素ガスを
溶存させた水の添加によってテトラクロロエチレンの分
解を行うことができ、更に二酸化炭素ガスまたは炭酸塩
を併用することで、分解率を更に向上させることができ
る。
【0044】実施例3及び比較例3 120ml容量のバイアル瓶に表1に示した無機塩溶液
を50ml添加し、半導体製造工程より排出されるシリ
コンウエハの裏研磨排水から高速遠心沈澱によって分離
されたシリコン微粒子(平均粒径:0.8μm )を含む
スラッジを乾燥重量で0.1gを添加し、更に、実施例
1と同じ場所で採取した土壌を湿重量で1g添加した。
次に、表5に示した条件となるように無機炭酸塩(アル
カリ金属塩でもある)としての炭酸水素ナトリウム、ア
ルカリ土類金属塩としての塩化カルシウム及びアルカリ
金属塩としての塩化ナトリウムをそれぞれ個々に添加し
た。試料を入れた各バイアル瓶の気相を二酸化炭素ガス
で置換した後、テフロンラミネートコーティングが施さ
れたゴム栓をし、その上からアルミキャップで密栓し
た。密栓された全てのバイアル瓶に汚染物質としてテト
ラクロロエチレンを密封状態を維持しつつマイクロシリ
ンジで1μl添加した。
【0045】
【表5】
【0046】試料を封入した各バイアル瓶を25℃の恒
温槽に静置し、1日1回攪拌した。FIDを検出器とし
たガスクロマトグラフィーを用いてヘッドスペース法
で、バイアル瓶内の気相中のテトラクロロエチレンの量
を経日的に測定した。図3に、得られた測定結果から算
出した初期濃度に対する残存率の変化を示す。
【0047】図3の結果に示すように、シリコンを添加
しなかった比較例3に比べ、シリコンを添加したいずれ
の試料においてもテトラクロロエチレン濃度の減少がみ
られた。シリコンの他に、無機炭酸塩、アルカリ金属塩
もしくはアルカリ土類金属塩のいずれも添加しなかった
試料No.4に比べ、これらのいずれかを追加した試料
No.1〜3ではテトラクロロエチレンの減少量は大き
く、減少量の40%〜60%にあたるトリクロロエチレ
ンが検出された。これらの塩の少なくとも1種を併用す
ることで、テトラクロロエチレンの分解がより促進され
たことが分かる。また、土壌を滅菌してから使用した場
合、テトラクロロエチレンの減少がほとんどみられなか
ったことから、この反応が主に微生物反応によることも
わかる。
【0048】実施例4及び比較例4 バイアル瓶(容量120ml)に表1の組成の無機塩類
溶液を10ml、実施例1と同じ場所で採取した土壌を
湿重量で1g、をそれぞれ添加した。次に表6に示した
条件となるように、試料を入れたバイアル瓶の気相を置
換した後、テフロンラミネートコーティングが施された
ゴム栓をし、その上からアルミキャップで密栓した。密
栓されたバイアル瓶に汚染物質として四塩化炭素を密封
状態を維持しつつマイクロシリンジで0.5μl添加し
た。試料を封入した各バイアル瓶を25℃の恒温槽に静
置し、バイアル瓶内の気相中の四塩化炭素濃度をFID
を検出器としたガスクロマトグラフィーを用いて測定し
た。
【0049】
【表6】
【0050】実施例4では、実験開始時に1533vo
lppmの濃度で気相中に存在した四塩化炭素は20日
後には1333volppmに減少した。一方、比較例
4では実験開始時に1518volppmの濃度で四塩
化炭素が気相中に存在し、20日後にも1442vol
ppmが残留していた。すなわち、水素を汚染土壌に導
入することによって、四塩化炭素の分解を促進すること
ができる。
【0051】実施例5及び比較例5 バイアル瓶(容量120ml)に表1の組成の無機塩類
溶液を10ml、実施例1と同じ場所で採取した土壌を
湿重量で1g、をそれぞれ添加した。このようにして調
製したバイアル瓶内の試料に、半導体製造工程より排出
されるシリコンウエハの裏研磨排水から高速遠心沈澱に
よって分離されたシリコン微粒子(平均粒径:0.8μ
m )を含むスラッジを乾燥重量で0.1g添加したもの
を実施例5とし、添加しなかったものを比較例5とし
た。実施例5及び比較例5のバイアル瓶の気相はガス置
換等をせず、大気のままの状態でテフロンラミネートコ
ーティングが施されたゴム栓をし、その上からアルミキ
ャップで密栓した。密栓されたバイアル瓶に汚染物質と
して四塩化炭素を密封状態を維持しつつマイクロシリン
ジで0.5μl添加した。試料を封入した各バイアル瓶
を25℃の恒温槽に静置し、バイアル瓶内の気相中の四
塩化炭素濃度をFIDを検出器としたガスクロマトグラ
フィーを用いて測定した。
【0052】実施例5では、実験開始時に1562vo
lppmの濃度で気相中に存在した四塩化炭素は20日
後には1236volppmに減少した。一方、比較例
5では実験開始時に1550volppmの濃度で四塩
化炭素が気相中に存在し、20日後にも1448vol
ppmが残留していた。すなわち、シリコンを汚染土壌
に導入することによって、四塩化炭素の分解を促進する
ことができる。
【0053】実施例6及び比較例6 バイアル瓶(容量120ml)に表1の組成の無機塩類
溶液を10ml、実施例1と同じ場所で採取した土壌を
湿重量で1g、をそれぞれ添加した。表7の条件になる
ように、試料を入れたバイアル瓶の気相を置換した後、
テフロンラミネートコーティングが施されたゴム栓を
し、その上からアルミキャップで密栓した。密栓された
バイアル瓶に汚染物質として1,1,1−トリクロロエ
タンを密封状態を維持しつつマイクロシリンジで0.5
μl添加した。試料を封入した各バイアル瓶を25℃の
恒温槽に静置し、バイアル瓶内の気相中の1,1,1−
トリクロロエタンをFIDを検出器としたガスクロマト
グラフィーを用いて測定した。
【0054】
【表7】
【0055】実施例6では、実験開始時に1308vo
lppmの濃度で気相中に存在した1,1,1−トリク
ロロエタンは20日後には1058volppmに減少
した。一方、比較例6では実験開始時に1312vol
ppmの濃度で1,1,1−トリクロロエタンが気相中
に存在し、20日後にも1288volppmが残留し
ていた。すなわち、水素を汚染土壌に導入することによ
って、1,1,1−トリクロロエタンの分解を促進する
ことができる。
【0056】実施例7及び比較例7 バイアル瓶(容量120ml)に表1の組成の無機塩類
溶液を10ml、実施例1と同じ場所で採取した土壌を
湿重量で1g、をそれぞれ添加した。このようにして調
製したバイアル瓶内の試料に、半導体製造工程より排出
されるシリコンウエハの裏研磨排水から高速遠心沈澱に
よって分離されたシリコン微粒子(平均粒径:0.8μ
m )を含むスラッジを乾燥重量で0.1g添加したもの
を実施例7とし、添加しなかったものを比較例7とし
た。実施例7及び比較例7のバイアル瓶の気相はガス置
換等をせず、大気のままの状態でテフロンラミネートコ
ーティングが施されたゴム栓をし、その上からアルミキ
ャップで密栓した。密栓されたバイアル瓶に汚染物質と
して1,1,1−トリクロロエタンを密封状態を維持し
つつマイクロシリンジで0.5μl添加した。試料を封
入した各バイアル瓶を25℃の恒温槽に静置し、バイア
ル瓶内の気相中の1,1,1−トリクロロエタンをFI
Dを検出器としたガスクロマトグラフィーを用いて測定
した。
【0057】実施例7では、実験開始時に1301vo
lppmの濃度で気相中に存在した1,1,1−トリク
ロロエタンは20日後には993volppmに減少し
た。一方、比較例7では実験開始時に1302volp
pmの濃度で1,1,1−トリクロロエタンが気相中に
存在し、20日後にも1290volppmが残留して
いた。すなわち、水素を汚染土壌に導入することによっ
て、1,1,1−トリクロロエタンの分解を促進するこ
とができる。
【0058】実施例8及び比較例8 有機塩素化合物で汚染されていない砂質に富んだ土壌4
00g(湿重量)を内容量500mlのアクリル製容器
に入れた後、これに、表8に示した無機塩類溶液200
mlを添加し、本実施例で使用する上記砂質土壌中にお
ける微生物量が少ないため、実施例1と同じ場所で採取
した1g(湿重量)の土壌を滅菌水に懸濁した懸濁液5
mlを添加した。このような土壌量の多い試料を3試料
調製し、それぞれに表9に示した添加物を添加し混合し
た後、サンプリングポートにテフロンラミネートコーテ
ィングが施されたゴム栓を備えたアクリル製蓋で密封し
た。各試料にサンプリングポートを介して60mgのテ
トラクロロエチレンを添加し、振盪攪拌した後、25℃
の恒温槽に静置した。サンプリングポートを介して試料
容器内上部の気相から適宜測定サンプルを採取し、有機
塩素化合物をFIDを検出器としたガスクロマトグラフ
ィーを用いて測定した。得られた測定結果を図4から図
6に示す。また、各試料にテトラクロロエチレンを添加
してから2100時間後に、容器内液相を採取し、液相
の有機塩素化合物濃度を測定した結果を表10に示す。
【0059】
【表8】
【0060】
【表9】
【0061】
【表10】
【0062】図4、図5の結果に示すとおり、シリコン
を添加した試料では、シリコンからの水素発生に伴い、
容器内気相中のテトラクロロエチレン濃度は一時的に増
加するが、その後、急速に減少し、それとともにテトラ
クロロエチレンの分解産物であると考えられるトリクロ
ロエチレン、cis−1,2−ジクロロエチレン(以下
cis−ジクロロエチレンと略記する)の濃度の増加
と、さらに、これら有機塩素化合物の分解による減少が
順次みられた。一方、図6の結果に示すとおり、シリコ
ンを添加しなかった試料では、容器内気相中のテトラク
ロロエチレン濃度にわずかの減少と、これに呼応したト
リクロロエチレン濃度のわずかな増加がみられたのみ
で、cis−ジクロロエチレン濃度はほとんど増加しな
かった。また、表10の結果に示すように、シリコンを
添加した試料の液相のテトラクロロエチレン及びトリク
ロロエチレンの濃度はシリコンを添加しなかった試料の
液相の濃度より低く、また、これら有機塩素化合物の分
解産物と考えられるcis−ジクロロエチレンの濃度は
シリコンを添加した試料の方が高かった。以上の結果か
ら、シリコンの添加によりテトラクロロエチレン、トリ
クロロエチレンの分解が促進されたことがわかる。
【0063】さらに、図4と図5とに示された結果を比
較すると、容器内気相中のテトラクロロエチレン及びト
リクロロエチレン濃度の減少はシリコンとともに炭酸カ
ルシウムを添加した試料でより早い時期に開始してい
る。また、表10の結果に示すとおり、シリコンと炭酸
カルシウムとを添加した試料の液相のテトラクロロエチ
レン濃度は、シリコンのみを添加した試料の液相のテト
ラクロロエチレン濃度よりも低い。以上の結果から、シ
リコンとともに炭酸カルシウムを添加することにより、
テトラクロロエチレン及びトリクロロエチレンの分解が
さらに促進されることが分かる。また、本実施例によ
り、土壌量が多い場合にも本発明が有効であることがわ
かる。
【0064】実施例9及び比較例9 バイアル瓶(容量120ml)に50mlの表1の組成
の無機塩類溶液を入れ、実施例1と同じ場所で採取した
土壌を湿重量1g添加した。これに汚染物質として硝酸
ナトリウム及び亜硝酸ナトリウムを、バイアル瓶中の硝
酸イオン濃度及び亜硝酸イオン濃度がそれぞれ10mg
/lとなるように添加した後、表11に示す条件となる
ように、所定のバイアル瓶について、各種成分の添加あ
るいは気相の置換を行った後、各バイアル瓶にテフロン
ラミネートコーティングが施されたゴム栓をし、その上
からアルミキャップで密栓した。
【0065】
【表11】
【0066】上記のようにして試料を封入した各バイア
ル瓶を25℃の恒温相に静置し、バイアル瓶からサンプ
リングを行い、イオンクロマトグラフィーを用いて分析
を行い、硝酸イオン濃度及び亜硝酸イオン濃度を経日的
に測定した。得られた結果を図7に示す。
【0067】図7の結果に示されたとおり、炭酸水素ナ
トリウムの存在下において、気相を水素ガスで置換した
場合と、シリコンを添加した場合について硝酸イオン及
び亜硝酸イオンの低下が見られ、水素ガスあるいはシリ
コンの添加により、これらのイオンの除去が可能である
ことが分かる。また、土壌を滅菌してから使用した場合
には亜硝酸イオン濃度、硝酸イオン濃度の減少は全く見
られず、この反応も微生物による反応であることがわか
る。
【0068】
【発明の効果】以上説明したように、本発明による汚染
土壌の浄化方法は、土壌へ過剰に添加しても新たな汚染
の心配のない水素ガスやシリコンを用いるので安全性の
面で極めて有用な方法である。しかも、本発明の汚染土
壌の浄化方法では、水素またはシリコンの供給によっ
て、土壌中の嫌気条件が整備されるとともに、微生物に
よる汚染物質の分解作用がより効果的に誘導または促進
される。
【図面の簡単な説明】
【図1】バイアル瓶内の気相を水素ガスに置換した場合
のテトラクロロチレンの分解効果を示す図である。
【図2】バイアル瓶内の土壌に水素ガスを溶存する液体
を添加した場合のテトラクロロチレンの分解効果を示す
図である。
【図3】バイアル瓶内の土壌にシリコンスラッジを添加
した場合のテトラクロロチレンの分解効果を示す図であ
る。
【図4】容器内の土壌にシリコンを添加した場合の有機
塩素化合物の分解効果を示す図である。
【図5】容器内の土壌にシリコンと炭酸カルシウムとを
添加した場合の有機塩素化合物の分解効果を示す図であ
る。
【図6】容器内の土壌における有機塩素化合物の分解を
示す図である。
【図7】水素ガスまたはシリコンスラッジの添加による
硝酸イオン及び亜硝酸イオンの除去効果を示す図であ
る。

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】嫌気条件下で微生物を利用して土壌中の汚
    染物質を分解して汚染土壌を浄化する方法において、該
    汚染土壌に水素ガスを導入して前記微生物による嫌気条
    件下での汚染物質の分解を行うことを特徴とする汚染土
    壌の浄化方法。
  2. 【請求項2】前記水素ガスを他のガスとの混合ガスとし
    て土壌に導入する請求項1に記載の汚染土壌の浄化方
    法。
  3. 【請求項3】前記混合ガスが、水素ガスと不燃性ガスと
    の混合ガスである請求項2に記載の汚染土壌の浄化方
    法。
  4. 【請求項4】前記不燃性ガスが、二酸化炭素ガスである
    請求項3に記載の汚染土壌の浄化方法。
  5. 【請求項5】水素ガスを水性媒体に溶存させて汚染土壌
    に導入する請求項1に記載の汚染土壌の浄化方法。
  6. 【請求項6】前記水性媒体が、水を主体として構成され
    る請求項5に記載の汚染土壌の浄化方法。
  7. 【請求項7】前記水素ガスとともに二酸化炭素ガス及び
    無機炭酸塩の少なくとも一方を導入する請求項5または
    6に記載の汚染土壌の浄化方法。
  8. 【請求項8】前記水性媒体が無機炭酸塩を含有する請求
    項5または6に記載の汚染土壌の浄化方法。
  9. 【請求項9】嫌気条件下で微生物を利用して土壌中の汚
    染物質を分解して汚染土壌を浄化する方法において、該
    汚染土壌にシリコンを導入して前記微生物による嫌気条
    件下での汚染物質の分解を行うことを特徴とする汚染土
    壌の浄化方法。
  10. 【請求項10】無機炭酸塩を更に汚染土壌に添加する請
    求項9に記載の汚染土壌の浄化方法。
  11. 【請求項11】アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩
    の少なくとも1種を更に汚染土壌に添加する請求項9ま
    たは10に記載の汚染土壌の浄化方法。
  12. 【請求項12】前記シリコンが微粒子状である請求項9
    〜11のいずれかに記載の汚染土壌の浄化方法。
  13. 【請求項13】前記シリコンを水性媒体に懸濁させた状
    態で汚染土壌に導入する請求項9〜12のいずれかに記
    載の汚染土壌の浄化方法。
  14. 【請求項14】前記シリコン懸濁液がシリコンスラッジ
    である請求項13に記載の汚染土壌の浄化方法。
  15. 【請求項15】前記汚染物質が有機塩素化合物である請
    求項1〜14のいずれかに記載の汚染土壌の浄化方法。
  16. 【請求項16】前記有機塩素化合物が、テトラクロロエ
    チレン及び四塩化炭素及び1,1,1−トリクロロエタ
    ン及びトリクロロエチレンの内の少なくともいずれかで
    ある請求項15に記載の汚染土壌の浄化方法。
  17. 【請求項17】前記汚染物質が硝酸イオンまたは亜硝酸
    イオンである請求項1〜14のいずれかに記載の汚染土
    壌の浄化方法。
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