JPH09264046A - 鉄筋コンクリート造壁柱の配筋構造及び施工方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 プレキャスト型枠を用いて鉄筋コンクリート
造の壁柱を構築する場合、主筋以外の補強筋、特に剪断
補強筋の配筋量を所要量配筋すると共に、施工現場での
無駄な配筋作業を省くことができる配筋構造及び施工方
法を提供すること。 【解決手段】 鉄筋コンクリート造壁柱１０の配筋構造
は、剪断補強筋１１ａが配筋されたプレキャストコンク
リート造の型枠１１で壁柱の側面全周を形成し、型枠で
囲まれた内部に剪断補強筋を配筋すること無しに、主筋
１２及び幅止め筋１３のみを配筋する。また鉄筋コンク
リート造壁柱１０の施工方法は、壁柱の主筋及び幅止め
筋を配筋する一方で、これら主筋及び幅止め筋に直接巻
きつける剪断補強筋を配筋せず、予め剪断補強筋が配筋
されたプレキャストコンクリート造の型枠を、主筋及び
前記幅止め筋を囲むように配置し、型枠内にコンクリー
トを打設するものである。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、鉄筋コンクリート
造壁柱の配筋構造及び施工方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、鉄筋コンクリート造の建物を構築
する場合、コンクリート板に予め補強筋が配筋されたプ
レキャストコンクリート板を型枠として用いることがあ
る。かような型枠は、脱型すること無く現場打ちコンク
リートと一体にして、躯体に打ち込んでしまうため一般
的に打ち込み型枠と呼ばれており、さらに、この打ち込
み型枠のうちで構造耐力が期待できるものを構造型枠と
呼んでいる。

【０００３】一方、８階建て以上の壁式ラーメン構造の
建物を構築する場合、日本建築センターの設計施工指針
では、低層部分の壁柱に拘束領域、すなわち、図６の水
平方向断面図に示したように、主筋４３や幅止め筋４１
の廻りに配筋した剪断補強筋４２によって形成した閉塞
する領域を形成するように定めている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】したがって、プレキャ
スト型枠を用いて上記壁式ラーメン構造の壁柱を形成す
る場合にも、同様に拘束領域を形成することが要求され
る。しかしながら、プレキャスト型枠の内部には予め補
強筋が配筋されており、また壁柱には幅止め筋４１や剪
断補強筋４２が配筋されており、場合によっては、補強
筋が重複して必要以上の鉄筋量になり、施工現場で行っ
た配筋作業が無駄になることがある。

【０００５】本発明は上記問題点を解消するためになさ
れたものであり、その目的は、プレキャスト型枠を用い
て鉄筋コンクリート造の壁柱を構築する場合、主筋以外
の補強筋、特に剪断補強筋の配筋量を所要量配筋すると
共に、施工現場での無駄な配筋作業を省くことができる
配筋構造及び施工方法を提供することにある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明は、前記目的に鑑
みてなされたものであって、その要旨は、鉄筋コンクリ
ート造壁柱の配筋構造であって、剪断補強筋が配筋され
たプレキャストコンクリート造の型枠で前記壁柱の側面
全周が形成され、該型枠で囲まれた内部には剪断補強筋
を配筋すること無しに、主筋及びこの主筋の幅止め筋の
みを配筋したことを特徴とする配筋構造にある。

【０００７】本発明の配筋構造においては、壁柱の剪断
補強筋量が所要以上になるように、プレキャストコンク
リート造の型枠内には所定直径の鉄筋を所定間隔で配筋
する。またプレキャストコンクリート造の型枠と現場打
ちコンクリートとを良好に付着させるため、該型枠内面
には必要に応じて凹凸模様を形成しても良い。

【０００８】本発明の別の要旨は、鉄筋コンクリート造
壁柱の施工方法であって、該壁柱の主筋及びこの主筋の
幅止め筋を配筋する一方で、該主筋に直接緊結する剪断
補強筋を配筋せず、予め剪断補強筋が配筋されたプレキ
ャストコンクリート造の型枠を、前記主筋及び前記幅止
め筋を囲むように配置し、該型枠内にコンクリートを打
設する施工方法にある。

【０００９】

【実施例】以下に、本発明の一実施例を図を参照して説
明する。図１は本発明の配筋構造を示す壁柱の水平方向
の断面図であり、図２は本発明の配筋構造の効果を検証
するために、比較例として用いた配筋構造であって、剪
断補強筋を二重に設けた壁柱の水平方向の断面図であ
り、図３は本発明の配筋構造による壁柱に図１とは異な
る幅止め筋を用いた際の水平方向の断面図であり、図４
は本発明の配筋構造の効果を検証するために行う加力試
験装置及び試験体の正面図であり、図５及び図６は、加
力試験の結果を示すグラフと歪みゲージの配置を示す壁
柱の断面図である。

【００１０】図１において本発明の壁柱の配筋構造で
は、壁柱１０の側面全周を形成するプレキャストコンク
リート造の型枠（以下、実施例中において「プレキャス
ト構造型枠１１」という）の内部に剪断補強筋１１ａを
配筋し、プレキャスト構造型枠１１で囲まれた内部には
剪断補強筋を配筋すること無しに、主筋１２及び幅止め
筋１３のみを配筋する。なお、プレキャスト構造型枠１
１で囲まれた内部には現場打ちコンクリート１４が充填
される。

【００１１】ここで前記プレキャスト構造型枠１１は、
長方形の断面形状の壁柱１０の四つの側面を構成すると
共に、上下の壁梁（図示せず）間に延長するように長方
形の筒状に形成し、この筒状の型枠１１の内面には凹模
様すなわちコッター（図示せず）を形成し、内部には縦
方向に所定間隔で剪断補強筋１１ａを埋設する。この剪
断補強筋１１ａは、上下の壁梁間の壁柱の剪断補強筋量
が所要以上になるように、所定以上の直径の鉄筋を所定
密度（所定間隔）で配筋する。

【００１２】また前記幅止め筋１３は、両端を曲折して
フックを形成し、このフックを、壁柱１０の幅方向（断
面配置において短辺方向）で対向する主筋１３，１３に
係止させて固定する。なお、幅止め筋としては図１に示
したもの以外に図３に示したようなものを用いても良
く、この幅止め筋１３’は複数の主筋１２を捲回できる
ような大きさでリング状に形成し、主筋１２の上端から
嵌め込んで所定高さまで落していくものである。

【００１３】図１に示したような鉄筋コンクリート造壁
柱１０を構築するには、最初に複数の主筋１２を配置
し、壁柱幅方向に対向する主筋１２，１２間に幅止め筋
１３のフックを係止して固定する。この時、主筋１２に
直接緊結する剪断補強筋は一切配筋しない。そして、主
筋１２及び幅止め筋１３の配筋が終了したら、筒状のプ
レキャスト構造型枠１１を上方から吊り降ろして、主筋
１２及び幅止め筋１３の外周に嵌め込む。最後に、プレ
キャスト構造型枠１１の内部にコンクリート１４を打設
し、このコンクリート１４が硬化すると鉄筋コンクリー
ト造壁柱１０は完成する。

【００１４】次に、本発明の鉄筋コンクリート造壁柱の
配筋構造における剪断補強効果及び拘束領域形成効果を
検証するため、図３に示した加力試験装置３０を用いて
試験体５０に水平方向の力を繰り返し加え、剪断補強筋
や幅止め筋に取り付けた歪みゲージによる実測値を図４
及び図５のグラフに示す。

【００１５】ここで、図３に示した試験体５０は、壁柱
部分５０ａの上下に梁５０ａ，５０ｃを配置して形成し
たものであって、壁柱部分５０ａは図１及び図２に示し
たような配筋構造で形成する。すなわち、図２の配筋構
造の壁柱２０は、本発明による壁柱１０（図１）に対す
る比較例であって、その相違点は、主筋１２に直接緊結
する剪断補強筋２１を設けた点だけであり、図２におい
て剪断補強筋は１１ａと２１との二重巻きに配置され
る。図２において図１の壁柱１０と同じ部材には同じ符
号を付けたので、その構成に関して更なる説明は省略す
る。

【００１６】また図３に示した加力試験装置３０は、上
方から試験体５０に一定強度の軸力を付与するためのア
クチュエーター３１，３１と、試験体５０に水平方向の
正負繰返し荷重を付与するためのアクチュエーター３２
とを備え、壁柱の水平方向の変位（部材角）は、壁柱部
分５０ａの黒点５０ｄの位置で測定した。

【００１７】さらに図４及び図５の断面図では、剪断補
強筋１１ａ，２１や幅止め筋１３に取り付けた歪みゲー
ジの配置を黒点ａ〜ｌで示し、図４(a)及び図５(a)のグ
ラフでは比較例の壁柱２０における剪断補強筋１１ａ，
２１や幅止め筋１３の歪みと部材角との関係を示し、図
４(b)及び図５(b)のグラフでは本発明の壁柱１０におけ
る剪断補強筋１１ａや幅止め筋１３の歪みと部材角との
関係を示した。なお、図４における黒点(ｃ)，(ｄ)，
(ｆ)は、図３の矢印Ｈ２の高さで歪みゲージを配置し、
図４及び図５における他の黒点ａ，ｂ，ｅ，ｇ，ｈ，
ｉ，ｊ，ｋ，ｌは、図３の矢印Ｈ１の高さで歪みゲージ
を配置したものである。

【００１８】以上のようにして求めた図４(a)(b)のグラ
フでは、同様な形状のグラフを形成していることから、
本発明の配筋構造(b)におけるプレキャスト構造型枠内
にのみ配筋された剪断補強筋によっても、比較例(a)に
おける主筋に直接緊結された剪断補強筋と同様な剪断補
強効果を得られることが判る。

【００１９】また図５(a)(b)でも同様な形状のグラフを
形成しており、特に、剪断補強筋によって閉塞された位
置に配筋されている幅止め筋のグラフｈとｊとが、ほと
んど同じ形状のグラフを形成しており、さらに、主筋に
緊結した剪断補強筋のグラフｇと幅止め筋のグラフｋと
も、ほぼ同じ形状のグラフを形成していることから、本
発明の配筋構造のようにプレキャスト構造型枠内にのみ
配筋された剪断補強筋によっても、比較例のように二重
に配筋された剪断補強筋と同様な強度で拘束領域を形成
できることが判る。

【００２０】

【発明の効果】本発明の壁柱の配筋構造及び施工方法で
は、主筋に剪断補強筋を直接緊結すること無く、プレキ
ャストコンクリート造の型枠内にのみ剪断補強筋を配筋
し、これによって、剪断補強筋を主筋に直接緊結すると
共にプレキャストコンクリート造の型枠内にも配筋した
壁柱と、同程度の剪断補強効果及び拘束領域形成効果を
得ることができる。したがって、施工現場での剪断補強
筋の配筋作業を省略することができて工期の短縮が可能
になる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の配筋構造を示す壁柱の水平方向の断面
図である。

【図２】本発明の配筋構造の効果を検証するために、比
較例として用いた配筋構造であって、剪断補強筋を二重
に設けた壁柱の水平方向の断面図である。

【図３】本発明の配筋構造による壁柱に、図１とは異な
る幅止め筋を用いた際の水平方向の断面図である。

【図４】本発明の配筋構造の効果を検証するために行う
加力試験装置及び試験体の正面図である。

【図５】加力試験の結果を示すグラフと歪みゲージの配
置を示す壁柱の断面図である。

【図６】加力試験の結果を示すグラフと歪みゲージの配
置を示す壁柱の断面図である。

【図７】従来の壁柱における配筋例を示す断面図であ
る。

【符号の説明】

１０ 鉄筋コンクリート造壁柱 １１ プレキャスト構造型枠（プレキャストコンクリー
ト造の型枠） １１ａ 剪断補強筋 １２ 主筋 １３ 幅止め筋

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 鉄筋コンクリート造壁柱の配筋構造であ
   って、 剪断補強筋が配筋されたプレキャストコンクリート造の
   構造型枠で前記壁柱の側面全周が形成され、該構造型枠
   で囲まれた内部には剪断補強筋を配筋すること無しに、
   主筋及びこの主筋の幅止め筋のみを配筋したことを特徴
   とする配筋構造。
2. 【請求項２】 鉄筋コンクリート造壁柱の施工方法であ
   って、 該壁柱の主筋及びこの主筋の幅止め筋を配筋する一方
   で、該主筋に直接緊結する剪断補強筋を配筋せず、 予め剪断補強筋が配筋されたプレキャストコンクリート
   造の構造型枠を、前記主筋及び前記幅止め筋を囲むよう
   に配置し、 該型枠内にコンクリートを打設する施工方法。