JPH09255979A - 潤滑剤、これを用いた磁気記録媒体及び磁気ヘッド - Google Patents

潤滑剤、これを用いた磁気記録媒体及び磁気ヘッド

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JPH09255979A
JPH09255979A JP8064227A JP6422796A JPH09255979A JP H09255979 A JPH09255979 A JP H09255979A JP 8064227 A JP8064227 A JP 8064227A JP 6422796 A JP6422796 A JP 6422796A JP H09255979 A JPH09255979 A JP H09255979A
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JP
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magnetic recording
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perfluoropolyether
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JP8064227A
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Hirofumi Kondo
洋文 近藤
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Original Assignee
Sony Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 磁気記録媒体のバック層表面とテープ走行系
との摩擦係数を低減するとともに、バック層と磁性層と
の粘着を防止する。また、磁気ヘッドの磁気記録媒体摺
動面にブラウンステインが形成されるのを防止し、ブラ
ウンステインに起因する再生出力のレベルダウン、ドロ
ップアウトあるいはヘッドクロッグ等の発生を抑える。 【解決手段】 磁気記録媒体のバック層にアルコキシシ
ラノ基を有するパーフルオロポリエーテル系化合物を保
持させる。また、磁気ヘッドの磁気記録媒体摺動面にア
ルコキシシラノ基を有するパーフルオロポリエーテル系
化合物よりなる保護被膜を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は潤滑剤、これを用い
た磁気記録媒体及び磁気ヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】磁気記録方式は、コイルと磁気コアより
なる磁気ヘッドと、非磁性支持体上に磁性層が形成され
てなる磁気記録媒体を用いて情報信号の記録を行う方式
であり、磁気ヘッドのコイルに流す電流の向きや大きさ
を変えることによってコアに誘導される磁気を変化さ
せ、この磁気コアの磁界を磁気記録媒体の磁性層に印加
することで信号記録を行う。
【0003】このような磁気記録方式に用いられる磁気
記録媒体としては、最近の高記録密度化への要求に対応
して、非常に微細な磁性粒子と樹脂結合剤とを含む磁性
塗料を非磁性支持体上に塗布することで磁性層が形成さ
れる、いわゆる塗布型の磁気記録媒体や、ポリエチレン
テレフタレート等よりなる非磁性支持体上に、強磁性金
属材料を、鍍金法あるいは真空蒸着法、スパッタリング
法等によって被着形成させることで磁性層が形成され
る、金属磁性薄膜型の磁気記録媒体が開発されている。
【0004】これらの磁気記録媒体は、用途にあわせて
テープ状、ディスク状、あるいはカード状等、種々の形
態とされる。たとえば、テープ状の磁気記録媒体(磁気
テープ)は、オーディオ用、ビデオ用、コンピュータ用
等として用いられている。
【0005】このうちオーディオ用、ビデオ用の磁気テ
ープは、移動性,機動性,操作の容易性を考慮して、匡
体状のカセット内に収容されてカセットテープとされる
のが一般的である。
【0006】このカセットテープでは、カセット内のテ
ープの収容スペースが決まっているため、長時間記録化
を図るべく磁気テープの収容長さを長くするには、磁気
テープをできるだけ薄手化し、占有体積を小さくするこ
とが必要である。このような理由から、磁気テープは、
益々薄手化される方向にある。
【0007】ところで、磁気テープは、薄手化すると強
度が弱くなるといった問題が生じてくる。このため、薄
手化された磁気テープには、強度を付与したり走行性を
改善する目的で、磁性層が形成される側とは反対側の面
にバック層が設けられる。
【0008】このバック層は、たとえば非磁性粉末と結
合剤を有機溶媒とともに分散、混練して調製されるバッ
ク塗料を、非磁性支持体上に塗布、乾燥することで形成
されるものであり、磁気テープの耐久性、走行性を向上
させる上で必須である。
【0009】一方、磁気ヘッドでは、最近の、塗布型磁
気テープにおける磁性層の表面平滑化に伴って焼き付き
現象(ブラウンステイン)が起き易くなっており、これ
による再生出力のレベルダウンが問題となっている。
【0010】すなわち、磁気テープの高密度化を図るた
めには、磁気ヘッドとのスペーシングロスを極力抑える
ことが必要となる。このため、磁気テープの磁性層表面
はより平滑化される方向にある。
【0011】ところが、磁性層表面が平滑化されると、
磁性層表面と磁気ヘッドとの実質的な接触面積が大きく
なり、走行時の摩擦が上昇する。これにより、磁性層か
ら磁性粉末を含んだバインダーが脱離し、この脱離物が
磁気ヘッドの磁気記録媒体摺動面に焼き付き物(ブラウ
ンステイン)となって付着するといった現象が生じてく
る。
【0012】このようなバインダーの脱離を防止する目
的で、磁性層に潤滑剤を内添させたり、トップコートす
ることによって、磁性層表面と磁気ヘッドとの摩擦を抑
える試みもなされている。
【0013】ところが、磁性層表面に保持させた潤滑剤
は、徐々に磁性層中に拡散する傾向があり、このため表
面の潤滑剤濃度は経時的に減少してくる。潤滑剤は磁性
層表面に露出している状態で有効な効果を発揮すること
から、表面の潤滑剤濃度が減少してくると、磁性層表面
と磁気ヘッドとの摩擦が上昇し、やはり磁性層中のバイ
ンダー、さらには潤滑剤が磁気ヘッドの磁気記録媒体摺
動面に付着し、ブラウンステインを生じさせる。
【0014】そこで、このブラウンステインの対策のと
して、デッキソルベント(アイエヌジー社製 商品名)
と称される溶剤が市販されている。この溶剤は、パーフ
ルオロポリエーテルをパーフルオロ炭素(Cn2n+1
に溶解させたものである。ブラウンステインは一般的な
溶剤では払拭することができないが、このデッキソルベ
ントを含浸させた布で磁気ヘッドを払拭すると、ブラウ
ンステインを取り除くことができる。また、パーフルオ
ロポリエーテルに導入された極性基が磁気ヘッドの磁気
コア材である金属に吸着し、磁気コアに汚れが付き難く
なるようにも作用する。
【0015】しかしながら、このパーフルオロポリエー
テルによる汚れ防止効果は、長期間持続させることがで
きないといった難点がある。
【0016】そのため、パーフルオロポリエーテルの末
端に各種極性基を導入することによって、磁気ヘッドと
の吸着性を高める工夫もなされているが、多少効果が持
続するようになるものの十分であるとは言えない。
【0017】また、パーフルオロポリエーテルをアミン
塩化合物とし、磁気ヘッドの磁気記録媒体摺動面に塗布
することも試みられている。しかし、このパーフルオロ
ポリエーテルのアミン塩化合物は、アルコール等の溶剤
でヘッドの磁気記録媒体摺動面を払拭することによって
取り除かれ、やはり効果を持続させるのが難しい。この
他にも、この類の溶液が各種提案されているが、いずれ
も耐久性が不十分である。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】このように磁気記録に
おける記録容量の増大を図るためには、磁気テープでは
バック層の潤滑剤の改良が必要であり、磁気ヘッドでは
ブラウンステインへの対策が重要になる。
【0019】そこで、本発明はこのような従来の実情に
鑑みて提案されたものであり、磁気記録媒体のバック層
に保持させたときには、バック層表面とテープ走行系と
の摩擦係数を十分に低減でき、しかもテープを巻回させ
たときにバック層と磁性層とを粘着させることがなく、
一方、磁気ヘッドの磁気記録媒体摺動面に保持させたと
きには、この摺動面への汚れの付着を効果的に防止で
き、さらに、このような効果が長期間持続する潤滑剤を
提供することを目的とする。そして、このような潤滑剤
を用いることで良好な走行性、耐久性が得られる磁気記
録媒体を提供し、さらには汚れの付着による再生出力の
レベルダウン等が抑えられる磁気ヘッドを提供すること
を目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するた
めに、本発明の潤滑剤は、アルコキシシラノ基を有する
パーフルオロポリエーテル系化合物であることを特徴と
するものである。
【0021】また、本発明の磁気記録媒体は、非磁性支
持体の一方の面に磁性層が形成され、他方の面に非磁性
粉末と結合剤を主体とするバック層が形成されてなり、
上記バック層に、末端にアルコキシシラノ基を有するパ
ーフルオロポリエーテル系潤滑剤が保持されていること
を特徴とするものである。
【0022】さらに、本発明の磁気ヘッドは、磁気記録
媒体摺動面に、アルコキシシラノ基を有するパーフルオ
ロポリエーテル系化合物よりなる保護被膜が形成されて
いることを特徴とするものである。
【0023】アルコキシシラノ基を有するパーフルオロ
ポリエーテル系化合物を磁気記録媒体のバック層に保持
させると、バック層表面が比較的平滑である場合でも、
バック層とテープ走行系との摩擦係数が十分に低減す
る。また、このパーフルオロポリエーテル系化合物は、
バック層と磁性層の粘着を抑える作用も有している。し
たがって、このようなパーフルオロポリエーテル系化合
物を用いた磁気記録媒体は、電磁変換特性に優れるとと
もに、良好な走行性、耐久性が得られる。
【0024】一方、磁気ヘッドの磁気記録媒体摺動面
に、アルコキシシラノ基を有するパーフルオロポリエー
テル系化合物よりなる保護被膜を形成すると、この保護
被膜によって、潤滑性能が付与されるとともに、磁気記
録媒体から脱落したバインダーや潤滑剤等が磁気記録媒
体摺動面に付着するのが防止され、ブラウンステインの
形成が抑えられる。これにより、ブラウンステインに起
因する再生出力のレベルダウン、ドロップアウトあるい
はヘッドクロッグ等が効果的に防止される。
【0025】また、この保護被膜はsol−gel化学
反応を経て形成されることから、ヘッドに対する付着性
が高く硬度も非常に高い。このため、耐摩耗性に優れ、
その効果が長期間持続する。
【0026】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を説明
する。
【0027】本発明の潤滑剤は、アルコキシシラノ基を
有するパーフルオロポリエーテル系化合物である。
【0028】このアルコキシシラノ基を有するパーフル
オロポリエーテル系化合物は、非磁性支持体上に磁性層
が形成され、この磁性層が形成された側とは反対側の面
に、非磁性粉末と結合剤を主体とするバック層が形成さ
れて構成される磁気記録媒体の、前記バック層に内添あ
るいは塗布されたかたちで保持される。
【0029】この磁気記録媒体で用いられるアルコキシ
シラノ基を有するパーフルオロポリエーテル系化合物は
例えば化4の一般式で示されるものが用いられる。
【0030】
【化4】
【0031】このパーフルオロポリエーテル系化合物
は、潤滑性能に優れ、バック層表面が比較的平滑である
場合でも、バック層とテープ走行系との摩擦係数を十分
に低減する。また、このパーフルオロポリエーテル系化
合物は、エッジダメージ等に対する耐久性にも効果があ
り、しかも巻回されているテープにおいてバック層と磁
性層の粘着を抑える作用を有する。したがって、このよ
うなパーフルオロポリエーテル系化合物をバック層に保
持させると、走行性、耐久性に優れた磁気記録媒体が得
られる。
【0032】なお、化4において、R1、R2、R3は炭
化水素基あるいは水素であり、このR1、R2、R3うち
少なくとも一つは、炭素数が10以上の炭化水素基とさ
れる。パーフルオロポリエーテル系化合物は、一般にフ
ロン等のフッ素系溶剤には可溶であり、炭化水素系溶剤
に難溶であるが、R1、R2、R3の少なくとも一つが炭
素数10以上の炭化水素基となされていると、炭化水素
系溶剤への溶解性も改善される。
【0033】Rは、パーフルオロポリエーテル部分とア
ルコキシシラノ基を結合するスペーサであり、特にその
構造は規定はされない。製造の容易さを考慮すると、ア
ルキレン鎖あるいはフェニレン基とアルキレン鎖よりな
るのが好ましい。
【0034】また、Xは結合鎖であり、その構造はパー
フルオロポリエーテルの末端基と有機鎖Rの分子構造に
起因する。このXの構造も特に限定されないが、合成の
容易さを考慮すると、エステル構造、アミド構造、エー
テル構造等であるのが好ましい。
【0035】以上のようなアルコキシシラノ基を有する
パーフルオロポリエーテル系化合物が保持されるバック
層は、非磁性粉末と結合剤を有機溶剤とともに混練して
バック塗料を調製し、このバック塗料を非磁性支持体上
に塗布、乾燥することで形成される。このバック塗料の
材料としては、この種の磁気記録媒体で通常用いられて
いるものがいずれも使用可能である。
【0036】例えば結合剤としては、塩化ビニル−酢酸
ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸
共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化
ビニル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステ
ル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−
塩化ビニリデン共重合体、メタクリル酸エステル−塩化
ビニリデン共重合体、メタクリル酸エステル−スチレン
共重合体、熱可塑性ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹
脂、ポリフッ化ビニル、塩化ビニリデン−アクリロニト
リル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合
体、アクリロニトリル−ブタジエン−メタクリル酸共重
合体、ポリビニルブチラール、セルロース誘導体、スチ
レン−ブタジエン共重合体、ポリエステル樹脂、フェノ
ール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹
脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、尿素−ホルムアルデ
ヒド樹脂またはこれらの混合物等が挙げられる。特に、
ポリエステルまたはポリウレタン樹脂を併用すると、媒
体の耐久性および走行性が向上する。また、さらに、架
橋剤として、3官能イソシアネート化合物、たとえばト
リメチロールプロパン1モルとトリレンジイソシアネー
ト3モルとの反応生成物等を併用すると、耐久性等がよ
り一層向上する。
【0037】非磁性粉末としては、カーボンブラック、
グラファイトおよび無機質充填材が挙げられる。無機質
充填材の具体例としては、TiO2、TiO、ZnO、
CaCO3、CaO、SnO2、SiO2、α−Fe
23、Cr23、α−Al23、ZnS、MoS2、B
aSO4、CaSO4、MgCO3、BNおよびSiCが
ある。これら粉末は単独で使用してもよく、2種類以上
を混合して用いてもよい。なお、これらの非磁性粉末の
うちでは、カーボンブラック、グラファイト、ZnO、
TiO2、BaSO4及びCaSO4を単独あるいは2種
類以上を混合した混合粉末を使用するのが好ましい。
【0038】これら非磁性粉末の粒子径、粒子形状等の
パラメータについては特に制限されず、通常採用されて
いる粒子径および粒子形状のものを用いることができ
る。たとえば、カーボンブラックでは平均粒子径が10
〜300μmの範囲内にあるものが望ましく、無機質充
填材では平均粒子径が0.1〜10μmの範囲内にある
ものが望ましい。また、粒子形状は、球状、針状、板
状、サイコロ状等、種々の形状のものが使用可能であ
る。
【0039】これらの材料を塗料化するための有機溶剤
としては、アセトン,メチルエチルケトン,メチルイソ
ブチルケトン,シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢
酸メチル,酢酸エチル,酢酸ブチル,乳酸エチル,酢酸
グリコールモノエチルエーテル等のエステル系溶剤、エ
チルエーテル,グリコールジメチルエーテル,グリコー
ルモノエチルエーテル,ジオキサン,テトラヒドロフラ
ン等のエーテル系溶剤、ベンゼン,トルエン,キシレン
等の芳香族炭化水素系溶剤、メチレンクロライド,エチ
レンクロライド,四塩化炭素,クロロホルム,エチレン
クロルヒドリン,ジクロルベンゼン等の塩素化炭化水素
系溶剤等が適宜選択して使用される。
【0040】バック層の厚さは、通常3μm以下であ
り、1.5μm以下であるのが好ましく、0.2〜1.
2μmであるのがより好ましい。特に、家庭用ビデオテ
ープあるいはオーディオテープで用いられている磁気テ
ープにおいて、バック層の厚さを1.5μmより厚くす
るとテープがカールする場合がある。
【0041】アルコキシシラノ基を有するパーフルオロ
ポリエーテル系化合物は、このようなバック層に内添あ
るいは塗布するかたちで保持される。
【0042】内添する場合には、バック塗料を調製する
段階で、予めこのパーフルオロポリエーテル系化合物を
他の塗料組成物と混合しておけば良い。
【0043】また、パーフルオロポリエーテル系化合物
をトップコートする場合には、適当な溶媒に溶解して潤
滑剤溶液を調製し、これをバック層上に塗布する。この
潤滑剤溶液の溶媒としては、地球環境保護の観点からフ
ロン等よりも炭化水素系溶剤を用いることが望ましい。
【0044】なお、内添、トップコートのいずれの場合
にも、アルコキシシラノ基を有するパーフルオロポリエ
ーテル系化合物は溶剤に溶解されるので、トルエンやメ
チルエチルケトン等の炭化水素系溶媒に可溶であること
が好ましい。このような観点から、化4におけるR1
2、R3の少なくとも一つには炭素数10以上の炭化水
素基が導入される。
【0045】一方、磁気記録媒体を構成する磁性層や非
磁性支持体には、以下のような従来公知の材料が使用さ
れる。
【0046】すなわち、磁性層は、例えば強磁性粉末、
結合剤及び各種添加剤を有機溶剤ととも分散、混練して
磁性塗料を調製し、これを非磁性支持体上に塗布、乾燥
することで形成される。
【0047】強磁性粉末としては、強磁性酸化鉄微粉
末、Coドープの強磁性酸化鉄微粉末、強磁性二酸化ク
ロム微粉末、強磁性合金粉末、バリウムフェライト等が
使用可能である。
【0048】強磁性酸化鉄微粉末、二酸化クロム微粉末
の針状比は、3/1〜30/1、好ましくは4/1以上
であり、平均長は0.05〜2.0μm程度の範囲が適
当である。
【0049】強磁性合金粉末は、金属粉が75重量%以
上であり、この金属粉の80重量%以上がFe、Co、
Ni、Fe−Ni、Co−Ni、Fe−Co−Ni等の
強磁性金属であって、長径が約0.5μm以下のものが
用いられる。
【0050】また、結合剤としては、従来公知の熱可塑
性樹脂、熱硬化性樹脂がいずれも使用可能であり、電子
線等の照射によって架橋する放射線架橋型樹脂であって
も良い。また、これらは単独で用いてもよく、2種類以
上を混合して用いてもよい。なお、熱可塑性樹脂として
は、軟化点温度が150℃以下、平均分子量が1000
0〜200000、重合度が約200〜2000程度の
ものであって、たとえば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合
体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル
−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−ア
クリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−塩化ビ
ニリデン共重合体、アクリル酸エステル−スチレン共重
合体、メタクリル酸エステル−アクリロニトリル共重合
体、メタクリル酸エステル−塩化ビニリデン、メタクリ
ル酸エステル−スチレン共重合体、ウレタンエラストマ
ー、ポリフッ化ビニル、塩化ビニリデン−アクリロニト
リル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合
体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、セルロー
ス誘導体(セルロースアセテートブチレート,セルロー
スダイアセテート,セルローストリアセテート,セルロ
ースプロピオネート,ニトロセルロース等)、スチレン
ブタジエン共重合体、ポリエステル樹脂、各種の合成ゴ
ム系の熱可塑性樹脂(ポリブタジエン,ポリクロロプレ
ン,ポリイソプレン,スチレンブタジエン共重合体等)
及びこれらの混合物等が使用される。
【0051】また、バック層、磁性層が形成される非磁
性支持体の素材としては、ポリエチレンテレフタレー
ト,ポリエチレン2,6ナフタレート等のポリエステル
類、ポリエチレン,ポリプロピレン等のポリオレフィン
類、セルローストリアセテート等のセルロース誘導体、
ポリカーボネート,ポリイミド,ポリアミドイミド等の
プラスチック、アルミニウム等の金属を蒸着したプラス
チック類も使用できる。この非磁性支持体の形態は、フ
ィルム状、テープ状、シート状等のいずれでもよく、形
態に応じて上記材料のうちから適当なものを選択すれば
良い。
【0052】なお、非磁性支持体に、磁性塗料及びバッ
ク塗料を塗布するに際しては、いずれの塗料を先に塗布
してもよく、また両方の塗料を同時に塗布しても良い。
【0053】次に、このパーフルオロポリエーテル系化
合物を磁気ヘッドに適用する場合について説明する。
【0054】図1に磁気ヘッドの一例を示す。
【0055】この磁気ヘッドは、Mn−Zn系フェライ
ト,Ni−Zn系フェライト等の酸化物磁性材料からな
る一対の磁気コア半体1,2がギャップ材9を介して突
き合わされ、接合一体化してなるものであり、この突き
合わせ面に磁気ギャップgが形成されてなっている。
【0056】これら磁気コア半体1,2の対向面には、
斜めに切り欠かれることで斜面が形成されており、この
斜面全面に金属磁性薄膜7,8が被着形成されている。
【0057】この金属磁性薄膜7,8には、高い飽和磁
束密度を有し且つ軟磁気特性に優れた強磁性材料が使用
される。かかる強磁性材料としては従来から公知のもの
がいずれも使用でき、結晶質,非結晶質を問わない。例
示するならば、Fe−Al−Si系合金,Fe−Al系
合金,Fe−Si−Co系合金、Fe−Ni系合金、F
e−Al−Ge系合金、Fe−Ga−Ge系合金、Fe
−Si−Ge系合金、Fe−Co−Si−Al系合金等
の強磁性金属材料、あるいはFe−Ga−Si系合金、
さらには上記Fe−Ga−Si系合金の耐蝕性や耐摩耗
性の一層の向上を図るために、Fe、Ga、Co(Fe
の一部をCoで置換したものを含む)、Siを基本組成
とする合金に、Ti、Cr、Mn、Zr、Nb、Mo、
Ta、W、Ru、Os、Rh、Ir、Re、Ni、P
d、Pt、Hf、Vの少なくとも一種を添加したもので
あってもよい。また、強磁性非晶質金属合金、いわゆる
アモルファス合金(例えばFe、Ni、Coの1つ以上
の元素とP、C、B、Siの1つ以上の元素とからなる
合金、またはこれを主成分としAl、Ge、Be、S
n、In、Mo、W、Ti、Mn、Cr、Zr、Hf、
Nb等を含んだ合金等のメタル−メタロイド系アモルフ
ァス合金、あるいはCo、Hf、Zr等の遷移元素や希
土類元素等を主成分とするメタル−メタル系アモルファ
ス合金)等も使用される。
【0058】この一対の磁気コア半体1,2には、磁気
ギャップgの両側に対応してトラック幅規制溝3,4が
切溝として設けられ、このトラック幅規制溝3,4によ
り磁気ギャップgのトラック幅が規制されるようになっ
ている。なお、このトラック幅規制溝3,4内には融着
ガラス5,6が充填されており、これにより磁気記録媒
体摺動面11の磁気記録媒体に対する当たりが確保でき
るようになっている。
【0059】また、磁気コア半体1のフロント側からバ
ック側に亘る中途部には、コイルを巻装するためのコイ
ル巻線溝10が略矩形状に設けられ、磁気ギャップgの
デプスがこのコイル巻線溝10によって規制されるよう
になっている。
【0060】そして、さらに、この磁気コア半体1,2
のフロント側の面は円筒研磨加工が施されており、これ
によって磁気記録媒体摺動面11が形成されている。
【0061】以上が磁気ヘッドの基本的な構成である
が、この磁気ヘッドでは、上記磁気記録媒体摺動面11
にアルコキシシラノ基を有するパーフルオロポリエーテ
ル系化合物よりなる保護被膜が形成される。
【0062】この保護被膜は、磁気ヘッドの磁気媒体摺
動面にアルコキシシラノ基を有するパーフルオロポリエ
ーテル系化合物を塗布し、加熱処理を施すことで形成さ
れるものである。パーフルオロポリエーテル系化合物を
塗布し、加熱処理を行うと、パーフルオロポリエーテル
系化合物がヘッド表面に露出している水酸基とsol−
gel化学反応を生じる。この保護被膜は、このような
sol−gel化学反応を経て形成されていることか
ら、付着性に優れ、高い硬度を有する。
【0063】このようにして形成された保護被膜は、パ
ーフルオロポリエーテル構造を有しているため良好な潤
滑性を有するとともに溌水性、耐油性に優れる。このた
め、磁気ヘッドの磁気記録媒体摺動面に、磁気テープか
ら脱落したバインダーや潤滑剤等が付着するのを防止
し、これらの焼き付き物であるブラウンステインの形成
を抑える。したがって、ブラウンステインに起因する再
生出力のレベルダウン、ドロップアウトあるいはヘッド
クロッグ等が効果的に防止される。また、この保護被膜
は、耐摩耗性に優れ、その効果が長期間持続する。
【0064】このアルコキシシラノ基を有するパーフル
オロポリエーテル化合物としては、例えば化5または化
6で表されるものが用いられる。
【0065】
【化5】
【0066】
【化6】
【0067】化5、化6は、それぞれRfが単官能パー
フルオロポリエーテル鎖である場合あるいは多官能パー
フルオロポリエーテル鎖である場合であり、化5におい
てパーフルオロポリエーテル鎖Rfとしては、例えば化
7,化8,化9で表されるものが導入される。
【0068】
【化7】
【0069】
【化8】
【0070】
【化9】
【0071】また、化6においてパーフルオロポリエー
テル鎖Rfとしては、例えば化10で表されるものが導
入される。
【0072】
【化10】
【0073】但し、化7〜化10のn,m,r,k,
t,qは1以上の整数を示す。また、これらのパーフル
オロポリエーテル鎖にはCと結合される側の末端にアル
キレン基を有していても良い。
【0074】このパーフルオロポリエーテル鎖Rfの分
子量は、特に限定されないが600〜5000程度が好
ましい。なお塗料化にフッ素系溶剤以外の溶剤を用いる
場合には、溶剤への溶解性を考慮して分子量が600〜
1500程度であるのが良い。
【0075】結合基R1,炭化水素基R2,アルキル基R
3については、本質的には特に制限されないが、合成の
し易い、すなわち実現性の点から、次のような構造であ
るのが望ましい。
【0076】まず、R1は、R2とパーフルオロポリエー
テル鎖とを結合する結合基であり、化合物の合成上、
O,NH,S等の原子あるいはこれらの原子団であるの
が良い。
【0077】R2は、アルキレン鎖を有しているのが望
ましく、アルキレン鎖を有するとともにフェニレン基等
の芳香環を含有していても構わない R3は、アルキル基であり、炭素数が3以下のアルキル
基、例えばイソプロピル基、プロピル基、エチル基、メ
チル基等であるのが望ましい。但し、炭素数がこれ以上
であっても保護被膜の効果を損なうことはない。
【0078】このようなアルコキシシラノ基を有するパ
ーフルオロポリエーテル系化合物は、溶剤に溶解され、
磁気ヘッドの磁気記録媒体摺動面に塗布される。
【0079】塗布の方法は、このパーフルオロポリエー
テル系化合物の溶液を綿棒やセーム皮等に含浸させて塗
布する方法であってもよく、パーフルオロポリエーテル
系化合物の溶液に磁気ヘッドを浸す方法(ディッピング
法)であっても構わない。
【0080】パーフルオロポリエーテル系化合物を溶解
させる溶剤としては、当該化合物を溶解し得るものであ
れば何れでも良い。但し、溶液をセーム皮に含浸させて
塗布する場合には、炭化水素系溶剤、好ましくはパーフ
ルオロ炭素系溶剤を用いるのが好ましく、パーフルオロ
ポリエーテル系化合物の種類によってはメチルエチルケ
トン等のケトン系溶剤を用いても構わない。なお、メン
テナンスを考慮すると、再沸点が50℃以上の溶剤の方
が都合が良い。
【0081】このパーフルオロポリエーテル系化合物の
溶液には、硬化反応を促進させる目的で触媒等を添加す
ることが可能である。触媒としては、例えば塩酸等の酸
性化合物、あるいはアンモニア等の塩基性化合物、燐酸
エステル等が挙げられる。また、アセチルアセトンのよ
うなケトン系化合物を反応促進剤として添加しても良
い。
【0082】保護被膜は、このようなパーフルオロポリ
エーテル系化合物の溶液を磁気記録媒体摺動面に塗布し
た後、乾燥、加熱硬化させることで形成される。この乾
燥温度は、70℃以上とするのが望ましい。
【0083】また、保護被膜の厚さは、反応防止性、水
に対する静止接触角及び表面硬度との関係から0.5n
m以上であるのが好ましい。保護被膜の厚さが0.5n
m未満であると、保護被膜としての効果が十分に得られ
ない。厚さの上限については特に制限されないが、磁気
コアと磁気記録媒体摺動面との間のスペーシングを抑え
る点から50nm以下であるのが望ましい。なお、磁気
ヘッドの磁気記録媒体摺動面は耐えず磁気記録媒体に高
速摺動され、これによって保護被膜が多少なりとも削り
取られる可能性もある。このため、保護被膜の厚さは、
この削り取られる量を考慮して50nmよりも若干厚め
であっても差し支えない。
【0084】以上、本発明に係る磁気ヘッドの実施の形
態を、フェライトコアの磁気ギャップ近傍に金属磁性薄
膜を配したタイプの磁気ヘッド(メタル・イン・ギャッ
プ(MIG)ヘッド)を例にして説明したが、本発明が
適用される磁気ヘッドはこれに限らない。この他、積層
型磁気ヘッドやフェライトヘッド、薄膜磁気ヘッド等に
本発明を適用することも可能である。
【0085】なお、フェライトヘッドは、Mn−Zn系
フェライトやNi−Zn系フェライト等の強磁性酸化物
磁性材料よりなる一対の磁気コア半体同士が突き合わさ
れ、接合一体化されてなるものである。
【0086】また、積層型磁気ヘッドは、金属磁性薄膜
を一対の基板により膜厚方向で挟み込み一体化してなる
一対の磁気コア半体が、金属磁性薄膜の端面同士を対向
させるように突き合わされ、接合一体化されてなるもの
である。
【0087】薄膜磁気ヘッドには、先に示した磁気ヘッ
ドと同様に磁気誘導現象を利用したインダクティブヘッ
ドと磁気抵抗効果(MR効果)を利用したMRヘッドと
がある。インダクティブヘッドは、磁気コアやコイル等
がメッキや真空薄膜形成技術によって成膜される。ま
た、MRヘッドは、再生専用型の磁気ヘッドであり、M
R効果を示すMR磁性薄膜、バイアス電極及びこれらを
上下から挟み込む磁気シールド層等によって構成され
る。このMRヘッドを構成する各要素もメッキや真空薄
膜形成技術によって形成される。
【0088】これらの磁気ヘッドにおいても、磁気記録
媒体摺動面にアルコキシシラノ基を有するパーフルオロ
ポリエーテル系化合物よりなる保護被膜を形成すると、
この保護被膜によって磁気テープから脱落したバインダ
ーや潤滑剤等が付着するのが防止され、ブラウンステイ
ンの形成が抑えられる。これにより、ブラウンステイン
に起因する再生出力のレベルダウン、ドロップアウトあ
るいはヘッドクロッグ等が効果的に防止される。また、
この保護被膜はヘッドに対する付着性が良く、硬度も非
常に高いため、耐摩耗性に優れ、その保護効果が長期間
持続する。
【0089】
【実施例】以下、本発明の具体的な実施例について、実
験結果に基づいて説明する。
【0090】<磁気記録媒体についての検討>まず、こ
こで用いたアルコキシシラノ基を有するパーフルオロポ
リエーテル系潤滑剤の一般式を化11に、化11におけ
るRf,X,R,R1,R2,R3を表1に示す。
【0091】
【化11】
【0092】
【表1】
【0093】但し、Rfにおけるm,n,q,tは1以
上の整数である。
【0094】実施例1 まず、下記の組成に準じて各種磁性塗料組成物を計り取
り、ボールミルで50時間混合した。
【0095】 磁性塗料の組成 強磁性Fe合金粉末: 100重量部 (保磁力Hc:1500Oe、BET比表面積50m2/g) 塩化ビニル系共重合体: 10重量部 ポリウレタン樹脂: 6重量部 (日本ポリウレタン社製 商品名N−2304) ブチルステアレート: 1重量部 Al23: 2重量部 (平均粒子サイズ:0.50μm) カーボンブラック: 2重量部 メチルエチルケトン: 100重量部 トルエン: 100重量部 次いで、この混合物に、硬化剤(日本ポリウレタン社
製、商品名コロネートL)を5重量部加え、さらにボー
ルミルで10分間混合することにより磁性塗料を調製し
た。次に、この磁性塗料をトルエンで希釈し、厚さ14
μmのポリエチレンテレフタレート支持体上に、乾燥膜
厚が4μmとなるようにドクターブレードで膜厚制御し
ながら塗布した。そして、この磁性塗膜に対して、未乾
燥の状態でコバルト磁石を用いて配向処理を行い、乾燥
させることで磁性層を形成した。
【0096】次に、下記の組成に準じて各種バック塗料
組成物を秤取り、ボールミルで50時間混合した。
【0097】 バック塗料の組成 カーボンブラック: 100重量部 (二次平均粒子径:17nm、商品名コンダクテックスSC) 塩化ビニル系重合体: 50重量部 (UCC社製 商品名VAGH) ポリウレタン樹脂: 50重量部 (日本ポリウレタン社製 商品名N−2304) トルエン: 50重量部 メチルエチルケトン: 700重量部 潤滑剤1: 3重量部 次いで、この混合物に、硬化剤(日本ポリウレタン社
製、商品名コロネートL)を5重量部加え、さらに10
分間ボールミルで混合することにより、バック塗料を調
製した。次に、このバック塗料を、非磁性支持体の磁性
層を形成した側とは反対側の面に、乾燥膜厚が1μmと
なるように塗布し、乾燥した。そして、表面を平滑化す
るためのカレンダー処理を施し、温度60℃,72時間
の条件で結合剤を熱硬化させ、バック層を形成した。
【0098】以上のようにして磁性層およびバック層が
形成されたテープ原反を、1/2インチ幅に裁断してサ
ンプルテープを作製した。
【0099】実施例2〜実施例10 バック層に内添する潤滑剤として潤滑剤1の代わりに潤
滑剤2〜潤滑剤10をそれぞれ用いたこと以外は実施例
1と同様にしてサンプルテープを作製した。
【0100】比較例1 バック層に潤滑剤を内添しないこと以外は実施例1と同
様にしてサンプルテープを作製した。
【0101】比較例2,比較例3 バック層に内添する潤滑剤として潤滑剤1の代わりに表
3に示す比較潤滑剤1,比較潤滑剤2をそれぞれ用いた
こと以外は実施例1と同様にしてサンプルテープを作製
した。
【0102】
【表2】
【0103】以上のようにして作製されたサンプルテー
プについて、動摩擦係数、バック層と磁性層の粘着性、
ドロップアウト数を測定した。その結果を表3に示す。
【0104】なお、動摩擦係数は、ビデオテープレコー
ダ上を走行させたときの、回転シリンダーの送り出し側
のテープテンションをT1、巻き取り側のテープテンシ
ョンT2とし、この値をオイラーの式に代入することに
より求めた。測定は、温度25℃相対湿度70%条件下
および温度40℃相対湿度80%条件下で行った。
【0105】ドロップアウト数は、ビデオテープレコー
ダ上を100パス走行させ、1分間あたりに発生した1
5×10-6秒以上のドロップアウト数を測定した値であ
る。
【0106】粘着性は、テープを巻回した状態で、温度
95℃相対湿度100%条件下に24時間保存し、保存
後、加重1gをかけたときにバック層と磁性層が離れる
か否かで評価した。表中、○はバック層と磁性層が離れ
た場合、×はバック層と磁性層とが離れなかった場合を
示す。
【0107】
【表3】
【0108】表3からわかるように、アルコキシシラノ
基を有するパーフルオロポリエーテル系潤滑剤をバック
層に内添させた実施例1〜実施例10のサンプルテープ
は、バック層に潤滑剤を内添していない比較例1のサン
プルテープや他の潤滑剤を内添させた比較例2、比較例
3のサンプルテープに比べて、温度25℃,相対湿度7
0%条件下、温度40℃,相対湿度80%条件下のいず
れにおいても低い動摩擦係数を示す。また、ドロップア
ウト数も少なく、バック層と磁性層の粘着性も低い。
【0109】このことから、アルコキシシラノ基を有す
るパーフルオロポリエーテル系潤滑剤は、バック層と走
行系との接触性を改善する効果に優れるとともにバック
層と磁性層との粘着を防止する作用も有し、バック層に
保持させる潤滑剤として好適であることがわかった。
【0110】<磁気ヘッドについての検討>次に、アル
コキシシラノ基を有するパーフルオロポリエーテル系潤
滑剤を磁気ヘッドに用いた場合の効果を検討した。
【0111】ここで用いたアルコキシシラノ基を有する
パーフルオロポリエーテル系潤滑剤の一般式を化12
(潤滑剤11、潤滑剤13〜18及び潤滑剤20),化
13(潤滑剤12、潤滑剤19)に、また化12,化1
3におけるRf,R1,R2,R3を表4に示す。
【0112】
【化12】
【0113】
【化13】
【0114】
【表4】
【0115】但し、Rfにおけるq,r,tは1以上の
整数であり、PhはC64を表し、BzはCH264
CH2を表す。
【0116】特性の検討に用いた磁気記録媒体 また、磁気ヘッドの特性を検討するのに使用した磁気記
録媒体は、次のようにして作成したものである。
【0117】 磁性塗料の組成 金属粉末磁性粉 100重量部 塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 10.5重量部 ポリウレタン樹脂 10.5重量部 カーボン(帯電防止剤) 5重量部 メチルエチルケトン 150重量部 トルエン 150重量部 シクロヘキサノン 100重量部 ステアリン酸ブチルエステル 2重量部 この組成に準じて磁性塗料組成物を計りとり、ボールミ
ルに投入して24時間混合した。そして、この混合物を
フィルターでろ過した後、硬化剤を4重量部添加し、3
0分間攪拌した。
【0118】このようにして調製された磁性塗料を、8
μm厚のポリエチレンテレフタレートベース上に乾燥後
の厚みが3μmとなるように塗布し、磁性塗膜を形成し
た。そして、塗膜が未乾燥状態にあるうちに磁場配向処
理を行い、塗膜を乾燥させ、巻き取った。次いで、塗膜
にカレンダー処理を施し、1/2インチ幅に裁断するこ
とで、サンプルテープを作成した。
【0119】実施例11 まず、潤滑剤11を2重量%なる割合でアルコールに溶
解させ、アルコール溶液を調製した。そして、この溶液
を綿棒に含浸させ、磁気ヘッド(Fe−Al−Si系合
金薄膜がギャップ近傍に配されたMIGヘッド)の磁気
記録媒体摺動面に塗布した。次いで、温度150℃で1
時間加熱処理を施すことで潤滑剤11を硬化させ、保護
被膜を形成した。
【0120】実施例12〜実施例20 潤滑剤11の代わりに潤滑剤12〜潤滑剤20を用いる
こと以外は実施例1と同様にして、磁気ヘッドの磁気記
録媒体摺動面に保護被膜を形成した。
【0121】実施例21〜実施例26 潤滑剤11の代わりに潤滑剤16を用い、加熱処理の条
件を表5に示すように変えたこと以外は実施例1と同様
にして、磁気ヘッドの磁気記録媒体摺動面に保護被膜を
形成した。
【0122】
【表5】
【0123】比較例4 この例は、磁気記録媒体摺動面に保護被膜を形成しない
場合である。
【0124】比較例5 潤滑剤11よりなる保護被膜を形成する代わりに、表6
に示す末端に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル
(比較潤滑剤3)単独をパーフルオロヘキサンに溶解さ
せた潤滑剤溶液を、磁気ヘッドの磁気記録媒体摺動面に
塗布した。
【0125】比較例6 潤滑剤11よりなる保護被膜を形成する代わりに、表6
に示す末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリ
エーテル(比較潤滑剤4)単独をパーフルオロオクタン
に溶解させた潤滑剤溶液を、磁気ヘッドの磁気記録媒体
摺動面に塗布した。
【0126】比較例7 潤滑剤11よりなる保護被膜を形成する代わりに、表6
に示す末端に末端にピペロニル基を有するパーフルオロ
ポリエーテル(比較潤滑剤5)単独をパーフルオロヘキ
サンに溶解させた潤滑剤溶液を、磁気ヘッドの磁気記録
媒体摺動面に塗布した。
【0127】比較例8 潤滑剤11よりなる保護被膜を形成する代わりに、末端
に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル(比較潤滑
剤6)単独をパーフルオロヘキサンに溶解させた潤滑剤
溶液を、磁気ヘッドの磁気記録媒体摺動面に塗布した。
【0128】比較例9 潤滑剤11よりなる保護被膜を形成する代わりに、末端
にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテルの
ステアリルアミン塩(比較潤滑剤7)単独をエタノール
に溶解させた潤滑剤溶液を磁気ヘッドの磁気記録媒体柔
道面に塗布した。
【0129】
【表6】
【0130】そして、これらの磁気ヘッドをビデオデッ
キの回転ドラムに装着し、温度25℃条件下でサンプル
テープを走行させた。そして、レベルダウンに伴うエラ
ーレートを測定するとともに、テープ走行後のブラウン
ステインの発生状況を調べた。
【0131】また、磁気ヘッドを温度40℃相対湿度8
0%下で3日間保存した後、同様にしてエラーレートの
測定及びブラウンステインの発生状況を調べた。
【0132】さらに、磁気ヘッドの磁気記録媒体摺動面
をエターノールで洗浄し、このエタノール洗浄が施され
た磁気ヘッドについても、保存前及び保存後のそれぞれ
についてエラーレート及びブラウンステインの発生状況
を調べた。
【0133】これらの測定結果を表7(エタノール洗浄
前),表8(エタノール洗浄後)に示す。
【0134】なお、表中のブラウンステインの発生状況
において、○は磁気記録媒体の摺動面、特に金属磁性薄
膜がほとんど汚れていない場合、△はこの金属磁性薄膜
に多少の汚れが認められる場合、×は金属磁性薄膜が半
分以上変化してしまった場合をそれぞれ示す。
【0135】
【表7】
【0136】(エタノール洗浄前)
【0137】
【表8】
【0138】(エタノール洗浄後)表7,表8に示すよ
うに、アルコキシシラノ基を有するパーフルオロポリエ
ーテル系化合物よりなる保護被膜が形成されている磁気
ヘッド(実施例11〜実施例26)では、ブラウンステ
インの発生が抑えられており、エラーレートも低い値に
なっている。この効果は、高温多湿環境下保存後やエタ
ーノール洗浄後においても損なわれることがない。
【0139】これに対して、アルコキシシラノ基を有し
ていないパーフルオロポリエーテルを塗布しただけの比
較例5〜比較例9の磁気ヘッドは、特にエタノール洗浄
後においてエラーレートの上昇が見られ、ブラウンステ
インによるヘッドの汚れも多く見受けられる。
【0140】このことから、磁気ヘッドの磁気記録媒体
摺動面に、アルコキシシラノ基を有するパーフルオロポ
リエーテル系化合物よりなる保護被膜を形成すると、こ
の摺動面にブラウンステインが付着するのが防止される
ようになることがわかった。また、この保護被膜は、潤
滑剤の塗布層に比べて耐久性が高く、その効果を安定に
維持できることがわかった。
【0141】
【発明の効果】以上の説明からも明らかなように、本発
明では、磁気記録媒体のバック層にアルコキシシラノ基
を有するパーフルオロポリエーテル系化合物を保持させ
るので、バック層を平滑化した場合でも、このバック層
とテープ走行系との動摩擦係数が低く抑えられ、またバ
ック層と磁性層との粘着が防止される。したがって、電
磁変換特性に優れ、良好な走行性,耐久性を発揮する磁
気記録媒体を得ることができる。
【0142】また、磁気ヘッドの磁気記録媒体摺動面
に、アルコキシシラノ基を有するパーフルオロポリエー
テル系化合物よりなる保護被膜を形成するので、この保
護被膜によって、磁気テープから脱落したバインダーや
潤滑剤等が付着するのが防止され、ブラウンステインの
形成が抑えられる。これにより、ブラウンステインに起
因する再生出力のレベルダウン、ドロップアウトあるい
はヘッドクロッグ等が効果的に防止される。また、この
保護被膜は耐摩耗性に優れ、その保護効果が長期間持続
する。
【0143】したがって、本発明によれば磁気記録媒体
のバック層や磁性層の平滑化が可能になり、磁気記録の
分野での記録密度の向上に大いに貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した磁気ヘッドの1構成例を示す
斜視図である。
【符号の説明】
1,2 磁気コア半体、7,8 金属磁性薄膜、11
磁気記録媒体摺動面、g 磁気ギャップ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C09D 183/12 PMV C09D 183/12 PMV C10N 40:18

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルコキシシラノ基を有するパーフルオ
    ロポリエーテル系化合物であることを特徴とする潤滑
    剤。
  2. 【請求項2】 非磁性支持体の一方の面に磁性層が形成
    され、他方の面に非磁性粉末と結合剤を主体とするバッ
    ク層が形成されてなる磁気記録媒体において、 上記バック層に、末端にアルコキシシラノ基を有するパ
    ーフルオロポリエーテル系潤滑剤が保持されていること
    を特徴とする磁気記録媒体。
  3. 【請求項3】 末端にアルコキシシラノ基を有するパー
    フルオロポリエーテル系潤滑剤は、化1で表されること
    を特徴とする請求項2記載の磁気記録媒体。 【化1】
  4. 【請求項4】 磁気記録媒体摺動面に、アルコキシシラ
    ノ基を有するパーフルオロポリエーテル系化合物よりな
    る保護被膜が形成されていることを特徴とする磁気ヘッ
    ド。
  5. 【請求項5】 アルコキシシラノ基を有するパーフルオ
    ロポリエーテル系化合物は、化2または化3で表される
    ことを特徴とする請求項4記載の磁気ヘッド。 【化2】 【化3】
  6. 【請求項6】 保護被膜は、磁気記録媒体摺動面にアル
    コキシシラノ基を有するパーフルオロポリエーテル系化
    合物を塗布した後、熱硬化させることによって形成され
    ていることを特徴とする請求項4記載の磁気ヘッド。
  7. 【請求項7】 磁気記録媒体摺動面にアルコキシシラノ
    基を有するパーフルオロポリエーテル系化合物を塗布し
    た後、70℃以上の温度で乾燥することを特徴とする請
    求項6記載の磁気ヘッド。
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