JPH1139644A - 磁気記録媒体及びこれを用いた磁気記録再生装置 - Google Patents

磁気記録媒体及びこれを用いた磁気記録再生装置

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JPH1139644A
JPH1139644A JP9192842A JP19284297A JPH1139644A JP H1139644 A JPH1139644 A JP H1139644A JP 9192842 A JP9192842 A JP 9192842A JP 19284297 A JP19284297 A JP 19284297A JP H1139644 A JPH1139644 A JP H1139644A
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JP9192842A
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English (en)
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Noriyuki Kishii
典之 岸井
Takahiro Kamei
隆広 亀井
Kenichi Kurihara
研一 栗原
Takeshi Kobayashi
健 小林
Hiroshi Iwamoto
岩本  浩
Nobuyuki Matsuzawa
伸行 松澤
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Sony Corp
Original Assignee
Sony Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 連続摺動耐久性、低粘着性、高メニスカス力
の全ての特性を満たす潤滑剤を保持する磁気記録媒体、
及びこれを用いた磁気記録媒体を提供する。 【解決手段】 非磁性支持体上に磁性層が形成されてな
る磁気記録媒体において、二環式の液晶分子を含有する
潤滑剤が最外層に保持される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁気記録媒体、及
びこれを用いた磁気記録再生装置に関するものであり、
特に潤滑剤の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】磁気記録媒体は、オーディオ用テープ、
ビデオテープ、バックアップ用データーカートリッジ、
フロッピーディスク、ハードディスク等として広く利用
されている。この磁気記録媒体としては、非常に微細な
強磁性粉末及び結合剤を含有する磁性塗料を非磁性支持
体上に塗布し乾燥することで磁性層が形成される、いわ
ゆる塗布型の磁気記録媒体、或いは強磁性金属材料を蒸
着等の手法により非磁性支持体上に被着形成することで
磁性層が形成される、いわゆる金属薄膜型の磁気記録媒
体が用いられている。
【0003】ところで、これら磁気記録媒体において
は、スペーシングロスを最小限にするために、磁性層表
面の平滑化が図られている。高密度記録においては、使
用する記録波長が短いため、表面粗さの影響を受けやす
く、表面粗さの制御が特に重要である。
【0004】しかし、磁性層表面の平滑性が良好であれ
ばあるほど、磁気ヘッドやガイドローラ等の摺動部材に
対する実質的な接触面積が大きくなる。したがって、磁
性層表面の平滑性が良好である磁気記録媒体は、摩擦係
数が大きくなり、走行途中で摺動部材と凝着現象(いわ
ゆる貼り付き)を起こし易くなり、走行性、耐久性に欠
ける等の問題が多くなる。
【0005】例えば、8mmビデオデッキにおいては、
磁気テープの磁性層表面とガイドピンとの摩擦係数が大
きいと、磁気テープがスティックスリップを起こし、い
わゆるテープ鳴きという現象が生じて再生画像のひきつ
れが誘発される。また、ポーズ状態のようにテープ上の
同一箇所に磁気ヘッドが高速摺動する場合には、磁気テ
ープの磁性層表面と磁気ヘッドとの摩擦係数が大きい
と、これによる磁性層の摩耗やその結果発生する再生出
力の低下が問題になる。
【0006】また、ハードディスク等に代表されるよう
な磁気記録再生装置においては、一般に、ディスクの停
止時には磁気ヘッドがディスクと接触しており、起動時
にディスクが高速回転されると、それに伴って磁気ヘッ
ドがディスク表面から浮上し、この状態で記録再生が行
われる浮上方式が用いられている。このような浮上方式
では、起動時の、ディスクの回転が開始されてから磁気
ヘッドが浮上するまでの間、及び運転停止時の、磁気ヘ
ッドがディスクと接触してからディスクの回転が停止す
るまでの間で、磁気ヘッドがディスク上を摺動すること
になる。その際の磁気ヘッド、ディスク間の摩擦が大き
な問題となり、磁気記録媒体及び磁気ヘッドの摩耗減少
の原因となる。この摩耗損傷が磁性層までに達すると、
磁性層に記録されている情報が破壊される、いわゆるヘ
ッドクラッシュ現象が発生する。
【0007】そこで、これら問題点を改善するために、
潤滑剤を上記磁気記録媒体の磁性層に内添したり、或い
は磁性層表面に塗布したりして潤滑膜を形成し、摩擦係
数を抑えようとする試みがされている。また、磁性層を
炭素、酸化物、炭化物、窒化物等からなる保護層により
被膜し、さらに、保護膜層上に潤滑剤を塗布し潤滑膜を
形成することにより、磁気記録媒体自体の耐摩耗性を向
上させて、上記ヘッドクラッシュ等を防止しようとする
試みがなされている。
【0008】このような磁気記録媒体に用いられる潤滑
剤には、その性質上厳しい特性が要求され、一般に次に
挙げるような特性が求められている。
【0009】(1)耐熱性、化学的安定性に優れている
こと。
【0010】(2)寒冷地での使用に際しても、所定の
潤滑効果が確保されるように低温特性に優れているこ
と。
【0011】(3)磁気ヘッドとのスペーシングが問題
となるので極めて薄くできることと、その場合にも十分
な潤滑特性が発揮されること。
【0012】(4)長時間の使用に耐え、長期間にわた
り潤滑効果が持続すること。
【0013】現在、このような特性を満足する潤滑剤と
して様々検討されているが、最も多く使用されている潤
滑剤には、ステアリン酸等の高級脂肪酸やそのエステル
等、また、パーフロロアルキルポリエーテル系化合物、
或いはパーフルロロアルキル系化合物等のフッ素系潤滑
剤が挙げられる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】ところで、近年、磁気
記録再生装置の高密度化が急ピッチで進んでいるため、
磁気ヘッドの浮上量も低下の一途をたどっている。さら
に、浮上量の極限として、磁気ヘッドを磁気記録媒体表
面に常時接触させながら記録再生を行う方式、いわゆる
コンタクト方式も提唱されている。
【0015】このように、浮上量が低下してくると、磁
気ヘッドと磁気記録媒体面とが接触摺動する時間も必然
的に増加するため、潤滑膜の連続摺動耐久性を高めて動
摩擦係数や磨耗の低減を計る必要がある。
【0016】また、この浮上量の低下にともなって、デ
ィスクの面粗さやうねりが小さくなるため、磁気ヘッド
とディスクとの間で高い最大静止摩擦力(以後、粘着と
呼ぶ)が発生しやすくなる。粘着は、ディスクの起動不
能やヘッドの損傷の原因となる。したがって、潤滑膜の
低粘着化が必要となる。
【0017】さらに、コンタクト方式では、常時ヘッド
スライダと磁気ディスクとが接触しているが、このとき
に何らかの振動(特に外部からの振動)により、ヘッド
スライダが磁気ディスク表面から浮上し、磁気ディスク
に再度衝突して、ヘッドクラッシュを生じることがあ
る。この現象を防ぐためには、ある程度潤滑膜とヘッド
スライダ間に働くメニスカス力で、磁気ディスク表面に
ヘッドスライダを吸着することも必要となる。
【0018】したがって、このような極低浮上方式或い
はコンタクト方式をとる場合には、潤滑膜の連続摺動耐
久性、低粘着性、高メニスカス力を両立する潤滑剤によ
り、潤滑膜を構成する必要がある。
【0019】しかしながら、一般に、連続摺動耐久性、
低粘着性、高メニスカス力は、相反する関係にあり、一
般的なこれまでの潤滑剤では、その両立に限界があっ
た。
【0020】例えば、連続摺動耐久性を持たせるため
に、潤滑層を厚くすると、低粘着性に不利になる。ま
た、粘着を回避するために潤滑膜の厚さを薄くすると、
連続摺動耐久性が低下し、潤滑膜の被覆率が低下する。
【0021】また、低表面エネルギー、低粘着性、耐熱
性、化学的安定性に優れているために従来検討されてき
たパーフロロポリエーテル系ポリマーにおいても、以下
のような問題点が生じていた。
【0022】極低浮上方式或いはコンタクト方式をとる
磁気記録再生装置では、ヘッドスライダ(主要な構成材
料であるAl23/TiC等の酸化物系の材料)と磁気
ディスク表面が接触することによって、ヘッドスライダ
表面が摩耗し、非常に活性な新生面が露出することが知
られている。パーフロロポリエーテル系ポリマーは、こ
の活性な新生面で非常に分解しやすいため、連続摺動耐
久性が低下し、分解生成物が磁気ヘッド及びヘッドスラ
イダ表面に付着してしまうという問題が生じる。
【0023】また、パーフロロポリエーテル系ポリマー
は、フッ素化合物であることから、磁気記録媒体上に塗
布した場合、その表面が低表面エネルギー化及び撥水性
になる。つまり、潤滑膜表面と、ヘッドスライダ表面間
に生じるメニスカス力が小さくなる。そのため、極低浮
上方式或いはコンタクト方式をとる磁気記録再生装置で
は、ヘッドスライダを磁気記録媒体上に安定に存在させ
られず、磁気ヘッドの振動等が起こり易くなり、ヘッド
クラッシュが発生する等の問題が生じる。
【0024】このように、一般的なこれまでの潤滑剤で
は、連続摺動耐久性、低粘着性、高メニスカス力の両立
に限界があった。
【0025】そこで、本発明は、このような問題点を解
決しようとするものであり、連続摺動耐久性、低粘着
性、高メニスカス力の全ての特性を満たす潤滑剤を保持
する磁気記録媒体、及びこれを用いた磁気記録再生装置
を提供することを目的とするものである。
【0026】
【課題を解決するための手段】本発明者らが鋭意検討を
重ねた結果、下記の化38の一般式(A)又は化39の
一般式(A’)で示される二環式構造の液晶分子を潤滑
剤として磁気記録媒体の最外層に保持させることによ
り、連続摺動耐久性、低粘着性、高メニスカス力の全て
の潤滑特性を満足する優れた潤滑効果が得られることを
見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0027】
【化38】
【0028】
【化39】
【0029】すなわち、本発明に係る磁気記録媒体は、
非磁性支持体上に少なくとも磁性層が形成されてなる磁
気記録媒体において、一般式(A)又は一般式(A’)
にて示される二環式の液晶分子を含有する潤滑剤が最外
層に保持されてなることを特徴とする。
【0030】上記潤滑剤は、磁性層表面に塗布されてい
る、或いは磁性層中に内添されていてもよい。
【0031】また、磁性層が金属磁性薄膜であり、金属
磁性薄膜上に保護膜が形成される場合には、上記潤滑剤
が保護膜表面に塗布されていてもよい。
【0032】さらに、非磁性支持体の磁性層形成面とは
反対側の面にバックコート層が形成される場合には、上
記潤滑剤がバックコート層表面に塗布されている、或い
はバックコート層中に内添されていてもよい。非磁性支
持体と磁性層との間に非磁性層が形成される場合には、
上記潤滑剤が非磁性層中に内添されていてもよい。
【0033】本発明に係る磁気記録再生装置は、情報を
記録する磁気記録媒体と、磁気記録媒体に情報を記録及
び/又は再生する磁気ヘッドとを有し、磁気記録媒体と
磁気ヘッドのそれぞれの表面の幾何学的平均面の最小間
隔が50nm以下である。そして、上記磁気記録媒体
は、磁気ヘッドと対向する最外層に、化38の一般式
(A)又は化39の一般式(A’)にて示される二環式
の液晶分子を含有する潤滑剤が保持されてなることを特
徴とする。
【0034】本発明で用いられる潤滑剤は、固体から液
体への相転移とともに液体と固体の中間の性質を持つ液
晶分子を含有する。このため、本発明の潤滑剤は、摺動
によって与えられた運動エネルギーを相転移によって逃
がすことができる。
【0035】また、この液晶分子を含有する潤滑剤は、
摺動エネルギーが小さい(又は摩擦しない)時には、固
体の性質で存在するために低粘着性であり、一旦衝突に
より摺動エネルギーを受けると相転移して液体の性質と
なり、磁気ヘッドに回り込んでメニスカス力を発生させ
る。このように、本発明の液晶分子を含有する潤滑剤
は、摺動により得た摩擦エネルギーにより相転移して液
体となるため、低粘着性、高メニスカス力の両特性を満
足することができる。
【0036】そして、一般式(A)又は一般式(A’)
で示される液晶分子は、室温(20℃)以上にネマティ
ック相或いはスメクティック相を有する。ネマティック
相/スメクティック相の液晶分子は、分子長軸が基板面
に対して垂直に並びやすく、基板上で厚みのある膜を構
成するため、摺動を繰り返して潤滑剤分子が次第に摩耗
減少していく場合にも耐久性に優れたものとなると考え
られる。これに対して、コレステリック相の液晶分子
は、分子長軸が基板面に対して平行に並びやすいため、
摺動を繰り返して潤滑剤分子が次第に摩耗減少していく
場合、潤滑剤分子が摩耗(剥離)しやすく、耐久性が十
分でないと考えられる。
【0037】また、ネマティック相/スメクティック相
を示す液晶分子は、一定方向に配向していることによ
り、高い局所的な粘度を得ることができると考えられ
る。これに対して、コレステリック相を示す液晶では、
配向面がねじれながら層を構成するため、分子間の力が
平均化されてしまい、配向することによる高い局所的な
粘度が得られず、摺動による摩擦エネルギーを逃がす上
では不利である。
【0038】このように、本発明で用いられる潤滑剤
は、摺動によって与えられた運動エネルギーを相転移に
よって逃がすことができ、液体へ相転移するために、連
続摺動耐久性、低粘着性、高メニスカス力の潤滑特性を
全て満足することができる。
【0039】本発明に係る磁気記録媒体及び磁気記録再
生装置は、このような潤滑層を最外層に有してなること
から、各種使用条件において優れた潤滑性能が保たれる
とともに、長時間にわたり潤滑効果が持続され、走行
性、耐摩耗性、耐久性に優れたものとなる。
【0040】さらに、本発明に用いる潤滑剤は、従来の
フッ素系潤滑剤がフッ素系溶媒でしか塗布できないのに
対して、トルエン、アセトン等の炭化水素系溶媒で塗布
することが可能であるため、環境へ与える負荷も小さく
できる。
【0041】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る磁気記録媒体
について、詳細に説明する。
【0042】本発明に係る磁気記録媒体は、非磁性支持
体上に少なくとも磁性層が形成されてなり、下記の化4
0の一般式(A)又は化41の一般式(A’)にて示さ
れる二環式の液晶分子を含有する潤滑剤が最外層に保持
されてなることを特徴とする。
【0043】
【化40】
【0044】
【化41】
【0045】一般式(A)又は一般式(A’)で示され
る液晶分子において、Xで示される原子団は、下記の化
42の一般式(X−1)で示される六員環構造、或いは
下記の化43の一般式(X−2)で示される縮合環構造
であることが好ましい。
【0046】
【化42】
【0047】
【化43】
【0048】また、一般式(A)で示される結晶分子に
おいて、Y1で示される原子団は、下記の化44〜化4
9の一般式(Y−1)〜一般式(Y−6)にて示される
環式構造の中から選択されることが好ましい。
【0049】
【化44】
【0050】
【化45】
【0051】
【化46】
【0052】
【化47】
【0053】
【化48】
【0054】
【化49】
【0055】また、一般式(A’)で示される結晶分子
において、Y2で示される原子団は、下記の化50〜化
74の一般式(Y−7)〜一般式(Y−31)にて示さ
れる環式構造の中から選択されることが好ましい。
【0056】
【化50】
【0057】
【化51】
【0058】
【化52】
【0059】
【化53】
【0060】
【化54】
【0061】
【化55】
【0062】
【化56】
【0063】
【化57】
【0064】
【化58】
【0065】
【化59】
【0066】
【化60】
【0067】
【化61】
【0068】
【化62】
【0069】
【化63】
【0070】
【化64】
【0071】
【化65】
【0072】
【化66】
【0073】
【化67】
【0074】
【化68】
【0075】
【化69】
【0076】
【化70】
【0077】
【化71】
【0078】
【化72】
【0079】
【化73】
【0080】
【化74】
【0081】本発明で用いられる潤滑剤は、固体から液
体への相転移とともに液体と固体の中間の性質を持つ液
晶分子を含有する。このため、本発明の潤滑剤は、摺動
によって与えられた運動エネルギーを相転移によって逃
がすことができる。
【0082】また、この液晶分子を含有する潤滑剤は、
摺動エネルギーが小さい(又は摩擦しない)時には、固
体の性質で存在するために低粘着性であり、一旦衝突に
より摺動エネルギーを受けると相転移して液体の性質と
なり、磁気ヘッドに回り込んでメニスカス力を発生させ
る。このように、本発明の液晶分子を含有する潤滑剤
は、摺動により得た摩擦エネルギーにより相転移して液
体となるため、低粘着性、高メニスカス力の両特性を満
足することができる。
【0083】一方、固体の潤滑剤である場合には、摺動
によって与えられた運動エネルギーが分子をはじき飛ば
すために用いられ、結果として潤滑剤の分解がおきる。
この分解生成物は、磁気ヘッド、磁気記録媒体に付着し
て摺動特性を悪化させる。これに対し、液晶分子を含有
する潤滑剤は、半固体から液体への状態変化により摺動
により与えられた摩擦エネルギーを逃がすことができる
ため、潤滑剤の分解が抑えられ摺動特性を悪化させるこ
とがない。
【0084】また、液体の潤滑剤である場合には、流動
性が高いため、摺動によって与えられた摩擦エネルギー
を潤滑剤の分解を伴わずに逃がすことが可能である。し
かし、液体の潤滑剤は、流動性が大きいため摺動によっ
て表面から流出し、基板の被覆率が低下して潤滑性がた
ちどころに失われる。これに対し、液晶分子を含有する
潤滑剤は、半固体/半液体の状態で表面に存在するた
め、液体の潤滑剤のように基板表面の被覆率が摺動によ
って損なわれる事がなく、摺動特性が劣化しない。
【0085】そして、一般的に液晶分子は、その分子配
列により、ネマティック相、スメクティック相、コレス
テリック相の3種類が存在している。
【0086】本発明で用いられる液晶分子は、室温(2
0℃)以上にネマティック相或いはスメクティック相を
有する。ネマティック相/スメクティック相の液晶分子
は、分子長軸が基板面に対して垂直に並びやすく、基板
上で厚みのある膜を構成するため、摺動を繰り返して潤
滑剤分子が次第に摩耗減少していく場合にも耐久性に優
れたものとなると考えられる。これに対して、コレステ
リック相の液晶分子は、分子長軸が基板面に対して平行
に並びやすいため、摺動を繰り返して潤滑剤分子が次第
に摩耗減少していく場合、潤滑剤分子が摩耗(剥離)し
やすく、耐久性が十分でないと考えられる。
【0087】また、ネマッティク相/スメクティック相
を示す液晶は、一定方向に配向しているため、高い局所
的な粘度を得ることができると考えられる。これに対し
て、コレステリック相を示す液晶では、配向面がねじれ
ながら層を構成するため、分子間の力が平均化されてし
まうと考えられる。したがって、コレステリック相を示
す液晶は、配向することによる高い局所的な粘度が得ら
れず、摺動による摩擦エネルギーを逃がす上では不利で
ある。
【0088】このように、本発明で用いられる潤滑剤
は、摺動によって与えられた運動エネルギーを相転移に
よって逃がすことができ、液体へ相転移するために、連
続摺動耐久性、低粘着性、高メニスカス力の潤滑特性を
全て満足することができる。
【0089】ところで、本発明に係る磁気記録媒体は、
非常に微細な強磁性粉末及び結合剤を含有する磁性塗料
を非磁性支持体上に塗布し乾燥することで磁性層が形成
される、いわゆる塗布型の磁気記録媒体であっても、或
いは強磁性金属材料を蒸着等の手法により非磁性支持体
上に被着形成することで磁性層が形成される、いわゆる
金属薄膜型の磁気記録媒体であってもよい。
【0090】塗布型磁気記録媒体の場合には、磁性塗料
に一般式(A)又は一般式(A’)で示される二環式の
液晶分子を含有する潤滑剤を磁性層内に内添する。また
は、磁性層が形成された後に、当該潤滑剤をディッピン
グ方式或いはスピンコート方式により塗布し、潤滑膜を
形成する。
【0091】前者の場合、その添加量は、強磁性粉末或
いは非磁性粉末100重量部に対して、0.1〜20重
量部が好ましく、0.5〜10重量部がより好ましい。
一方後者の場合、潤滑剤の塗布量としては、0.5〜1
00mg/m2が好ましく、1〜50mg/m2がより好
ましい。いずれの場合においても、磁気記録媒体の最外
層(磁性層表面)の潤滑剤存在量が少ない場合には、そ
の潤滑効果が不十分で、逆に多い場合には磁気記録媒体
の貼り付きの原因になる。従って、自ずと上記のような
最適量が決まってくる。近年の超微粒子ハイパッキング
媒体の場合には、後者の方がより効率良く磁性層表面に
潤滑剤を保持することができる。
【0092】また、金属磁性薄膜型の磁気記録媒体の場
合には、磁性層を蒸着等により被着形成した後、磁性層
上に一般式(A)又は一般式(A’)で示される二環式
の液晶分子を含有する潤滑剤を塗布してもよい。また
は、連続摺動耐久性を付与するために、金属磁性薄膜か
らなる磁性層上に保護膜を形成し、保護膜表面に当該潤
滑剤を塗布してもよい。
【0093】潤滑剤の塗布方法としては、例えば、浸漬
法、ラングミュアー・ブロジェット法(LB法)、スプ
レー法、スピンコート法、キャスト法、真空蒸着法、分
子線蒸着法等が挙げられる。この場合にも、潤滑剤の塗
布量としては、0.5〜100mg/m2が好ましく、
1〜50mg/m2がより好ましい。また、潤滑膜形成
後に、溶剤による洗浄を実施して、塗布量を調節しても
よい。潤滑膜形成後に溶剤による洗浄を実施するかどう
かは、膜厚調整の観点から決定される。
【0094】さらに、必要に応じて、潤滑膜形成後に加
熱処理または紫外線照射処理を行うこともできる。加熱
処理は、用いる潤滑剤にもよるが、70〜200℃の範
囲、好ましくは90〜170℃の範囲で実施することが
望ましい。
【0095】さらに、本発明では、非磁性支持体の磁性
層形成面とは反対側の面にバックコート層を形成し、こ
のバックコート層上に上記液晶分子を含有する潤滑剤を
塗布しても、バックコート層中に当該潤滑剤を内添して
もよい。
【0096】また、本発明では、非磁性支持体と磁性層
との間に、磁性層の平滑性を得る目的で非磁性層(下
層)を形成してもよい。これは、一般に、重層塗布型磁
気記録媒体と呼ばれるものである。この場合にも、非磁
性層中に上記液晶分子を含有する潤滑剤を内添するとよ
い。非磁性層に内添された潤滑剤は、磁性層側にしみだ
し、最終的には磁気記録媒体の最外層に存在することに
なる。
【0097】このように、本発明に係る磁気記録媒体
は、上述した液晶分子を含有する潤滑剤が最外層に保持
されてなることから、各種使用条件においても、優れた
潤滑性能が保たれ、長時間にわたり潤滑効果が持続さ
れ、走行性、耐摩耗性、耐久性に優れたものとなる。
【0098】ところで、本発明が適用される磁気記録媒
体における非磁性支持体や磁性層を構成する材料は、従
来公知のものがいずれも使用可能であり、特に限定され
ない。
【0099】例示するならば、非磁性支持体としては、
ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−
ナフタレート等のポリエステル類、ポリプロピレン等の
ポリオレフィン類、セルローストリアセテート、セルロ
ースジアセテート等のセルロース類、ビニル系樹脂、ポ
リイミド類、ポリカーボネート類に代表されるような高
分子材料、或いは金属、ガラス、セラミクス等により形
成される支持体等が挙げられる。
【0100】また、磁気記録媒体が塗布型の磁性層を有
する場合、磁性層は磁性粉末と結合剤とを主体とする磁
性塗料が塗布されることによって形成されるが、この強
磁性粉末としては、Fe、Co、Ni等の金属、Fe−
Co、Fe−Ni、Fe−Al、Fe−Ni−Al、F
e−Al−P、Fe−Ni−Si−Al、Fe−Ni−
Si−Al−Mn、Fe−Mn−Zn、Fe−Ni−Z
n、Co−Ni、Co−P、Fe−Co−Ni、Fe−
Co−Ni−Cr、Fe−Co−Ni−P、Fe−Co
−B、Fe−Co−Cr−B、Mn−Bi、Mn−A
l、Fe−Co−V等の合金、窒化鉄、炭化鉄等が挙げ
られる。もちろん、還元時の焼結防止または形状維持等
の目的で添加されるAl、Si、P、B等の軽金属元素
が適当量含有したとしても、本発明の効果を妨げるもの
ではない。
【0101】さらに、強磁性粉末としては、γ−Fe2
3、Fe34、γ−Fe23とFe34とのベルトラ
イド化合物、Co含有γ−Fe23、Co含有Fe
34、Coを含有するγ−Fe23とFe34とのベル
トライド化合物、CrO2に1種またはそれ以上の金属
元素、たとえばTe、Sb、Fe、B等を含有させた酸
化物等が挙げられる。
【0102】また、六方晶系板状フェライトも使用可能
であり、M型、W型、Y型、Z型のバリウムフェライ
ト、ストロンチウムフェライト、カルシウムフェライ
ト、鉛フェライト、及びこれらに、保磁力を制御する目
的で、Co−Ti、Co−Ti−Zn,Co−Ti−N
b、Co−Ti−Zn−Nb、Cu−Zr、Ni−Ti
等を添加したものも挙げられる。これら強磁性粉末は、
それぞれ1種を用いることも可能であるが、2種以上を
併用することも可能である。
【0103】本発明に用いる強磁性粉末の比表面積は、
30〜80m2/gが好ましく、40〜70m2/gがよ
り好ましい。比表面積が、上記範囲にあると、強磁性粉
末の形状の微粒子化を伴い、高密度記録が可能となり、
ノイズ特性の優れた磁気記録媒体を得ることが可能であ
る。
【0104】さらに、本発明に用いられる強磁性粉末
は、長軸長0.05〜0.50μm、軸比が2〜15で
あることが好ましい。長軸長が0.05μm未満である
と、磁性塗料中の分散が困難となり、長軸長が0.50
μmを越えるとノイズ特性が劣化する恐れがあり好まし
くない。軸比が5未満であると、強磁性粉末の配向性が
低下し出力の低下となり、軸比が15を超えると短波長
信号出力が低下する恐れがあり好ましくない。板状フェ
ライトの場合は、板径0.01〜0.5μm、板厚0.
001〜0.2μm程度が好ましい。長軸長、軸比、板
径、及び板厚は、透過型電子顕微鏡写真から無作為に選
んだ100サンプル以上の平均値を採用する。
【0105】本発明の磁性層に含有させる結合剤は、従
来より磁気記録媒体用の結合剤として使用される公知の
熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂等が使用可能
であり、数平均分子量が5000〜100000のもの
が好ましい。
【0106】熱可塑性樹脂の例としては、塩化ビニル、
酢酸ビニル、塩化ビニルー酢酸ビニル共重合体、塩化ビ
ニルー塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニルーアクリロ
ニトリル共重合体、アクリル酸エステルーアクリロニト
リル共重合体、アクリル酸エステルー塩化ビニルー塩化
ビニリデン共重合体、塩化ビニルーアクリロニトリル共
重合体、アクリル酸エステルー塩化ビニリデン共重合
体、メタクリル酸エステルー塩化ビニリデン共重合体、
メタクリル酸エステルー塩化ビニル共重合体、メタクリ
ル酸エステルーエチレン共重合体、ポリ弗化ビニル、塩
化ビニリデンーアルリロニトリル共重合体、アクリロニ
トリルーブタジエン共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビ
ニルブチラール、セルロース誘導体(セルロースアセテ
ートブチレート、セルロースダイアセテート、セルロー
ストリアセテート、セルロースプロピオネート、ニトロ
セルロース)、スチレンブタジエン共重合体、ポリウレ
タン樹脂、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、合成ゴム等
が挙げられる。また熱硬化性樹脂または反応型樹脂の例
としてはフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン
硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹
脂、シリコーン樹脂、ポリアミン樹脂、尿素ホルムアル
デヒド樹脂等が挙げられる。
【0107】また、上記の全ての結合剤には、顔料の分
散性を向上させる目的で−SO3M、−OSO3M、−C
OOM、P=O(OM)2等の極性官能基が導入されて
いても良い。ここで、式中Mは、水素原子、或いはリチ
ウム、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属である。
更に、上記極性官能基としては、−NR12、−NR1
23+-の末端基を有する側鎖型のもの、>NR1
2+-の主鎖型のものがある。ここで、式中R1、R2
3は、水素原子或いは炭化水素基であり、X-は弗素、
塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン元素イオン、或いは無
機・有機イオンである。また、−OH、−SH、−C
N、エポキシ基等の極性官能基もある。これら極性官能
基の量は、10-1〜10-8mol/gが好ましく、10
-2〜10-6mol/gがより好ましい。これら結合剤
は、1種単独で用いられることが可能であるが、2種以
上を併用することも可能である。
【0108】磁性層中におけるこれら結合剤は、上記強
磁性粉末或いは非磁性粉末100重量部に対して、1〜
200重量部が好ましく、10〜50重量部がより好ま
しい。結合剤の使用量が多すぎると、磁性層での強磁性
粉末の占める割合が相対的に小さくなり、出力の低下す
る。また、ドライブでの繰り返し摺動等により塑性流動
が起こりやすくなり、磁気記録媒体の走行耐久性が低下
する。一方、結合剤の使用量が少なすぎると、磁性層が
脆くなり、磁気記録媒体の走行耐久性が低下する。
【0109】本発明では、上記結合剤を架橋硬化させる
ポリイソシアネートを併用することが可能である。この
ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネー
ト並びにこれの付加体、アルキレンジイソシアネート並
びにこれの付加体等がある。これらポリイソシアネート
の上記結合剤への配合量は、上記結合剤100重量部に
対して、5〜80重量部が好ましく、10〜50重量部
がより好ましい。
【0110】上述したような強磁性粉末や結合剤は、溶
媒中に分散されて磁性塗料とされる。この塗料化に用い
られる溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、
メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン
系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール等のア
ルコール系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチ
ル、酢酸プロピル、乳酸エチル、エチレングリコールア
セテート等のエステル系溶媒、ジエチレングリコールジ
メチルエーテル、2−エトキシエタノール、テトラヒド
ロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、ベンゼン、
トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、メチレ
ンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロ
ロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶
媒等が挙げられる。
【0111】なお、磁性塗料中には、必要に応じて研磨
剤粒子を含有させることが可能である。これらの例とし
ては、酸化アルミニウム(α、β、γ)、酸化クロム、
炭化珪素、ダイヤモンド、ガーネット、エメリー、窒化
ホウ素、チタンカーバイト、炭化珪素、炭化チタン、酸
化チタン(ルチル、アナターゼ)等がある。これらの粒
子は、強磁性粉末100重量部に対して、20重量部以
下、好ましくは、10重量部以下がよい。また、これら
粒子のモース硬度は、4以上、好ましくは5以上、比重
は、2〜6、好ましくは3〜5の範囲、平均粒径は、
0.5μm以下、好ましくは、0.3μm以下がよい。
非磁性補強粒子の平均粒径も、強磁性粉末の場合と同様
に、透過型電子顕微鏡写真から測定し、統計処理する。
【0112】磁性塗料を調製する際には、上述した材料
を混練工程、混合工程、分散工程の各工程によって塗料
化する。分散及び混練には、ロールミル、ボールミル、
サンドミル、アジター、ニーダー、エクストルーダー、
ホモジナイザー、超音波分散機等が用いられる。
【0113】そして、磁性塗料調製後に、この磁性塗料
を非磁性支持体上に吹付け又はロール塗布等の任意の方
法で塗布し、乾燥することで磁性層が形成される。更に
必要とあれば、カレンダー装置に導き、巻き取りロール
に巻き取る。更にバックコート層を非磁性支持体の磁性
層形成面とは反対側の面に塗布する。
【0114】なお、このような塗布型の磁性層を設ける
場合には、磁性層と非磁性支持体との間に、磁性層の平
滑化を図る目的で、非磁性粉末を結合剤中に分散させた
非磁性層(下層)を形成してもよい。
【0115】このように重層塗布を行う場合、下層に用
いる結合剤には、磁性層で例示したものがいずれも使用
可能である。
【0116】また、下層に含有させる非磁性粉末として
は、例えば、α−Fe23等の非磁性酸化鉄、ゲータイ
ト、ルチル型酸化チタン、アナターゼ型酸化チタン、酸
化錫、酸化タングステン、酸化珪素、酸化亜鉛、酸化ク
ロム、酸化セリウム、チタンカーバイト、BN、α−ア
ルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、硫酸カルシウ
ム、硫酸バリウム、二硫化モリブデン、炭酸マグネシウ
ム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸ストロンチウ
ム、チタン酸バリウム等が挙げられる。これらの非磁性
粉末は、単独で用いることも可能であるし、複数を混合
して用いることも可能である。
【0117】上記非磁性粉末は、目的に応じて適当量の
不純物をドープすることも可能であるし、分散性の改
良、導電性の付与、色調の改善等の目的で、Al、S
i、Ti、Sn、Sb、Zr等の化合物で表面処理する
ことも可能である。非磁性粉末の比表面積は、30〜8
0m2/gが好ましく、40〜70m2/gがより好まし
い。
【0118】また、非磁性層には、必要に応じて上記非
磁性粉末の他に、ゴム用ファーネス、熱分解カーボン、
カラー用ブラック、アセチレンブラック等のカーボンブ
ラックが含まれていてもよい。カーボンブラックの比表
面積は100〜400m2/g、DBP吸油量は20〜
200ml/100gであることが好ましい。
【0119】非磁性粉末及びカーボンブラックの比表面
積を上記範囲に設定することによって、非磁性層(下
層)を平滑化し、結果的に磁性層(上層)の平滑化が可
能となる。これにより、変調ノイズ特性に優れ、スペー
シングロスの影響の少ない磁気記録媒体を得ることが可
能となる。
【0120】さらに、本発明の磁気記録媒体が金属磁性
薄膜よりなる磁性層を有する場合、金属磁性薄膜は、強
磁性金属材料を、メッキやスパッタリング、真空蒸着法
等の手法により非磁性支持体上に連続的に被着させるこ
とによって形成される。
【0121】非磁性支持体としては、上述した非磁性支
持体を用いることができるが、アルミニウム合金板やガ
ラス板等の剛性を有する基板を使用した場合には、基板
表面にアルマイト処理等の酸化膜や、Ni−P被膜等を
形成してその表面を硬くするようにしてもよい。
【0122】金属磁性薄膜としては、Fe、Co、Ni
等の金属や、Co−Ni系合金、Co−Pt系合金、C
o−Pt−Ni系合金、Fe−Co系合金、Fe−Ni
系合金、Fe−Co−Ni系合金、Fe−Ni−B系合
金、Fe−Co−B系合金、Fe−Co−Ni−B系合
金等からなる面内磁化記録金属磁性膜やCo−Cr系合
金薄膜が挙げられる。
【0123】特に、面内磁化記録金属磁性薄膜の場合、
予め非磁性支持体上にBi、Sb、Pb、Sn、Ga、
In、Ge、Si、Tl等の低融点非磁性材料の下地層
を形成しておき、金属磁性材料を垂直方向から蒸着或い
はスパッタすることで金属磁性薄膜を形成してもよい。
下地層上に金属磁性材料を被着させると、金属磁性薄膜
中にこれら低融点非磁性材料が拡散し、配向性を解消し
て面内等方性が確保され、抗磁性が向上する。
【0124】また、磁気記録媒体の表面には、潤滑膜を
形成する前に、塗膜強度或いは防錆性向上を目的とした
カーボン等の保護膜を設けてもよい。保護膜を形成する
方法としては、特に限定するものではなく、いずれの方
法も使用可能であるが、スパッタリング或いは化学気相
成長(CVD)法が一般的である。保護膜の膜厚は、2
〜100nmであることが好ましく、5〜30nmがよ
り好ましい。
【0125】さらに、上述の潤滑剤は、必要に応じて、
防錆剤を併用してもよい。防錆剤としては、通常この種
の磁気記録媒体の防錆剤として使用されるものであれば
いずれも使用でき、例えばフェノール類、ナフトール
類、キノン類、窒素原子を含む複素環化合物、酸素原子
を含む複素環化合物、硫黄原子を含む複素環化合物等が
挙げられる。
【0126】防錆剤は、上述の潤滑剤と複合して用いて
もよいが、磁性層或いはカーボン等の保護膜上に防錆剤
層を塗布した後、潤滑剤層を塗布するというように、2
層以上に分けて被着すると効果が高い。
【0127】本発明が適用される磁気記録媒体は、非磁
性支持体上に磁性層が形成されてなるものであれば、そ
の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、8m
m幅にスリットされた磁気テープ、或いは3.5インチ
サイズにディスク状に打ち抜くことで得られる磁気ディ
スク、さらにはディスク状の硬質基板を用いた磁気ディ
スク(いわゆるハードディスク)であってもよい。
【0128】次に、本発明の磁気記録再生装置につい
て、説明する。
【0129】この磁気記録再生装置は、磁気ディスク
と、この磁気ディスク上を走査しながら当該磁気ディス
クに対して、情報の記録及び/又は再生を行う磁気ヘッ
ドよりなる。上記磁気ヘッドは、磁気ディスクの回転風
力によって当該磁気ディスク表面に対して微小間隔を空
けて浮上しながら走査する浮上型磁気ヘッドであっても
よく、磁気ディスク表面と接触しながら走査するコンタ
クト型磁気ヘッドであってもよい。但し、浮上型磁気デ
ィスクの場合、磁気ディスク表面の幾何学的平均面に対
する最小間隔は、50nm以下とされる。
【0130】そして、この磁気記録再生装置では、特に
上記磁気ディスクとして、上述したような最外層に一般
式(A)又は一般式(A’)で示される液晶分子を含有
する潤滑剤が保持された磁気記録媒体が用いられる。
【0131】このような磁気記録再生装置において、最
外層に上記液晶分子が保持された磁気記録媒体を用いる
と、液晶分子は低粘着性、高メニスカス力を有するの
で、浮上型磁気ヘッドにおける起動や停止に際するディ
スク摺動時、コンタクト型磁気ヘッドにおける記録再生
に際するディスク摺動時に良好な摺動耐久性が得られ、
優れた走行性、耐摩耗性、耐久性が得られる。
【0132】
【実施例】以下、本発明の具体的な実施例及び比較例に
ついて説明するが、本発明はこの実施例に限定されるも
のではないことは言うまでもない。
【0133】<塗布型磁気テープの作製>実施例1 まず始めに、下記に示される組成の、強磁性粉末、結合
剤、添加剤、潤滑剤、溶剤を混合し、エクストルーダー
により混練した後、サンドミルで6時間分散し、磁性塗
料を調製した。
【0134】 <磁性塗料組成> Fe系メタル強磁性粉末 100重量部 (保磁力=160kA/m、飽和磁化量=145Am2/kg、 比表面積=51m2/g、長軸長=0.08μm、針状比=3) ポリ塩化ビニル樹脂(日本ゼオン社製;MR−110) 14重量部 ポリエステルポリウレタン樹脂(東洋紡製;MG−130) 3重量部 添加剤(Al23) 5重量部 潤滑剤(下記の化75で示される液晶分子1) 3重量部 メチルエチルケトン 150重量部 シクロヘキサノン 150重量部
【0135】
【化75】
【0136】次に、得られた磁性塗料にポリイソシアネ
ートを3重量部を加えた。そして、この磁性層塗料を、
厚さ7μmのポリエチレンテレフタレート(以下、PE
Tと称す。)フィルム上に厚みが6.5μmになるよう
に塗布し、ソレノイドコイルにより配向処理した後、乾
燥、カレンダー処理、硬化処理を行い、磁性層を形成し
た。更に、下記の組成のバック塗料を、PETフィルム
上の上記磁性層形成面とは反対面に塗布した。そして、
このPETフィルムを8mm幅に裁断してテープ化し、
塗布型磁気テープを作製した。
【0137】 <バック塗料組成> カーボンブラック(商品名:#50;旭カーボン社製) 100重量部 ポリエステルポリウレタン(商品名:ニッポランN−2304)100重量部 メチルエチルケトン 500重量部 トルエン 500重量部実施例2〜実施例8 潤滑剤として、液晶分子1の代わりに、下記の化76〜
化82で示される液晶分子2〜液晶分子8を用いた以外
は、実施例1と同様にして塗布型磁気テープを作製し
た。
【0138】
【化76】
【0139】
【化77】
【0140】
【化78】
【0141】
【化79】
【0142】
【化80】
【0143】
【化81】
【0144】
【化82】
【0145】比較例1 潤滑剤として、液晶分子1の代わりに、一般的な潤滑剤
であるステアリン酸を用いた以外は、実施例1と同様に
して塗布型磁気テープを作製した。
【0146】比較例2 潤滑剤として、液晶分子1の代わりに、一般的な潤滑剤
であるステアリン酸メチルを用いた以外は、実施例1と
同様にして塗布型磁気テープを作製した。
【0147】比較例3 潤滑剤として、液晶分子1の代わりに、一般的な潤滑剤
であるステアリン酸ブチルを用いた以外は、実施例1と
同様にして塗布型磁気テープを作製した。
【0148】特性評価 以上のようして得られた実施例1〜実施例8及び比較例
1〜比較例3の磁気テープに対して、温度25℃相対湿
度60%のとき、温度40℃相対湿度80%のとき、温
度−5℃のときの摩擦係数およびスチル耐久性を測定を
行った。その結果を表1〜表2に示す。
【0149】なお、摩擦係数は、一般的なシャトル式摩
擦測定器を用い、荷重20g,テープ速度5mm/sで
測定した。摩擦係数の値は、100パス走行後の値を用
い、テンションの変化からオイラーの式を用いて計算し
た。
【0150】スチル耐久性は、ポーズ状態における出力
が−3dBまで減衰する時間を測定することで評価し
た。最長測定時間は150分とした。
【0151】
【表1】
【0152】
【表2】
【0153】表1〜表2より、潤滑剤として液晶分子1
〜液晶分子8を用いた実施例の塗布型磁気テープは、従
来からの潤滑剤であるステアリン酸やステアリン酸メチ
ルを用いた比較例に対して、摩擦係数が低減され、優れ
たスチル特性を得られていることがわかる。このことか
ら、液晶分子を潤滑剤として用いることにより、優れた
連続摺動耐久性、低粘着性を得られることがわかる。
【0154】次に、潤滑剤として、下記の化83にて示
される液晶分子(シアノアルキルビフェニル化合物)又
は下記の化84にて示される液晶分子(シアノアルコキ
シビフェニル化合物)を用い、好ましい添加量及び疎水
基(CH2nCH3の炭素数を調べた。
【0155】
【化83】
【0156】
【化84】
【0157】実験例1〜実験例5 潤滑剤として、化83で示される液晶分子(シアノアル
キルビフェニル化合物)を用い、疎水基−(CH2n
3のnを7とし、添加量をそれぞれ0.1,0.5,
3,7,15とした以外は、実施例1と同様にして、塗
布型磁気テープを作製した。
【0158】実験例6〜実験例8 潤滑剤として、化83で示される液晶分子(シアノアル
キルビフェニル化合物)を用い、疎水基−(CH2n
3のnを1,5,12とした以外は、実施例1と同様
にして、塗布型磁気テープを作製した。
【0159】実験例9〜実験例13 潤滑剤として、化84で示される液晶分子(シアノアル
コキシビフェニル化合物)を用い、疎水基−O(C
2nCH3のnを7とし、添加量をそれぞれ0.1,
0.5,3,7,15とした以外は、実施例1と同様に
して、塗布型磁気テープを作製した。
【0160】実験例14〜実験例16 潤滑剤として、化84で示される液晶分子(シアノアル
コキシビフェニル化合物)を用い、疎水基−O(C
2nCH3のnを1,5,12とした以外は、実施例
1と同様にして、塗布型磁気テープを作製した。
【0161】特性評価 以上のようして得られた実験例1〜実験例16の塗布型
磁気テープに対して、実施例1と同様に、温度25℃湿
度60%のとき、温度−5℃のとき、温度40℃湿度8
0%のときの摩擦係数及びスチル耐久性を測定を行っ
た。その結果を表3〜表4に示す。
【0162】
【表3】
【0163】
【表4】
【0164】表3〜表4の結果から、液晶分子の添加量
は、強磁性粉末100重量部に対して、0.5〜10重
量部がより好ましいことがわかる。一般に液晶分子の添
加量が多いほど摩擦及びスチル両特性が良好になる傾向
があるが、その添加量には、最適点が存在する。液晶分
子の添加量が多くなり過ぎると、はりつきぎみになり、
かえって摩擦係数が高くなりスチル特性も劣化してしま
う。
【0165】また、化83及び化84で示される液晶分
子の疎水基の炭素数は、3〜15が好ましいことがわか
る。炭素数が2以下の場合には、疎水基長が短すぎ、摩
擦、スチル両特性とも十分な特性を確保することができ
ない。
【0166】次に、潤滑剤を磁性層内に添加せず、磁性
層表面にトップコートし、その好ましい塗布量を調べ
た。
【0167】実験例17〜実験例23 潤滑剤として、化83で示され、疎水基−(CH2n
3のnを7とする液晶分子(シアノアルキルビフェニ
ル化合物)を磁性層内に添加せず、磁性層表面にトップ
コートした。そして、その塗布量をそれぞれ0.3,
1,5,10,35,50,100とした。これ以外
は、実施例1と同様にして、塗布型磁気テープを作製し
た。
【0168】実験例24〜実験例30 潤滑剤として、化84で示され、疎水基−O(CH2n
CH3のn=7とする液晶分子(シアノアルコキシビフ
ェニル化合物)を磁性層内に添加せず、磁性層表面にト
ップコートした。そして、その塗布量をそれぞれ0.
3,1,5,10,35,50,100とした。これ以
外は、実施例1と同様にして、塗布型磁気テープを作製
した。
【0169】特性評価 以上のようして得られた実験例17〜実験例30の塗布
型磁気テープに対して、実施例1と同様に、温度25℃
湿度60%のとき、温度−5℃のとき、温度40℃湿度
80%のときの摩擦係数及びスチル耐久性を測定を行っ
た。その結果を表5〜表6に示す。
【0170】
【表5】
【0171】
【表6】
【0172】表5〜表6の結果から、潤滑剤として液晶
分子を磁性層内に内添しても、磁性層表面に塗布した場
合でも良好な結果を得ることができることがわかる。
【0173】また、その際の液晶分子の塗布量は、1〜
50mg/m2がより好ましいことがわかる。一般に液
晶分子の添加量が多いほど摩擦及びスチル両特性が良好
になる傾向があるが、その塗布量には、最適点が存在す
る。液晶分子の塗布量が多くなり過ぎると、はりつきぎ
みになり、かえって摩擦係数が高くなりスチル特性も劣
化してしまう。
【0174】次に、潤滑剤を磁性層内に添加せず、バッ
クコート層に内添し、その好ましい添加量を調べた。
【0175】実験例31〜実験例33 潤滑剤として、化83で示され、疎水基−(CH2n
3のnを7とする液晶分子(シアノアルキルビフェニ
ル化合物)を磁性層内に添加せず、バックコート層に内
添した。そして、その添加量をそれぞれ5,10,20
とした。これ以外は、実施例1と同様にして、塗布型磁
気テープを作製した。
【0176】実験例34〜実験例36 潤滑剤として、化84で示され、疎水基−O(CH2n
CH3のn=7とする液晶分子(シアノアルコキシビフ
ェニル化合物)を磁性層内に添加せず、バックコート層
に内添した。そして、その添加量をそれぞれ5,10,
20とした。これ以外は、実施例1と同様にして、塗布
型磁気テープを作製した。
【0177】特性評価 以上のようして得られた実験例31〜実験例36の塗布
型磁気テープに対して、実施例1と同様に、温度25℃
湿度60%のとき、温度−5℃のとき、温度40℃湿度
80%のときの摩擦係数及びスチル耐久性を測定を行っ
た。その結果を表7〜表8に示す。
【0178】
【表7】
【0179】
【表8】
【0180】表7〜表8の結果から、潤滑剤として液晶
分子を磁性層内に内添しても、バックコート層に内添し
た場合でも良好な結果を得ることができることがわか
る。
【0181】また、その際の液晶分子の添加量は、5〜
20重量部が好ましいことがわかる。
【0182】<金属薄膜型磁気テープの作製>実施例9 先ず始めに、10μm厚のPETフィルム上に、斜方蒸
着法によりCo−Ni合金を被着させ、膜厚100nm
の強磁性金属薄膜を形成した。次に、この強磁性金属薄
膜表面に、スパッタリングにより膜厚10nmのカーボ
ン保護膜を成膜した。次に、このカーボン保護膜上に、
潤滑剤として化75で示される液晶分子1を塗布した。
液晶分子1の塗布量は、10mg/m2とする。そし
て、このPETフィルムを8mm幅に裁断してテープ化
し、金属薄膜型磁気テープを作製した。
【0183】実施例10〜実施例16 潤滑剤として、液晶分子1の代わりに、化76〜化82
で示される液晶分子2〜液晶分子8を用いた以外は、実
施例9と同様にして、金属薄膜型磁気テープを作製し
た。
【0184】比較例4 潤滑剤として、液晶分子1の代わりに、一般的な潤滑剤
であるステアリン酸を用いた以外は、実施例9と同様に
して金属薄膜型磁気テープを作製した。
【0185】比較例5 潤滑剤として、液晶分子1の代わりに、一般的な潤滑剤
であるステアリン酸メチルを用いた以外は、実施例9と
同様にして金属薄膜型磁気テープを作製した。
【0186】比較例6〜比較例10 潤滑剤として、液晶分子1の代わりに、下記の化85で
示される高級脂肪酸1〜高級脂肪酸5を用いた以外は、
実施例9と同様にして金属薄膜型磁気テープを作製し
た。なお、化85式中のpは、高級脂肪酸1においてp
=10、高級脂肪酸2においてp=2、高級脂肪酸3に
おいてp=15、高級脂肪酸4においてp=17、高級
脂肪酸5においてp=20となるようにした。
【0187】
【化85】
【0188】特性評価 以上のようして得られた実施例9〜実施例16及び比較
例4〜比較例10の金属薄膜型磁気テープに対して、実
施例1と同様に、温度25℃湿度60%のとき、温度−
5℃のとき、温度40℃湿度80%のときの摩擦係数及
びスチル耐久性の測定を行った。その結果を表9〜表1
1に示す。
【0189】
【表9】
【0190】
【表10】
【0191】
【表11】
【0192】表9〜表11より、潤滑剤として液晶分子
1〜液晶分子8を用いた実施例の磁気テープは、従来か
らの潤滑剤であるステアリン酸、ステアリン酸メチル、
高級脂肪酸を用いた比較例に対して、摩擦係数が低減さ
れ、優れたスチル特性を得られていることがわかる。こ
のことから、液晶分子を潤滑剤として用いることによ
り、優れた連続摺動耐久性、低粘着性を得られることが
わかる。
【0193】また、先の結果からもわかるように、その
潤滑効果は、塗布型磁気テープ或いは金属薄膜型磁気テ
ープのいずれにおいても良好であることがわかる。
【0194】次に、潤滑剤として、先に用いた化83に
て示される液晶分子(シアノアルキルビフェニル化合
物)を用い、好ましい疎水基(CH2nCH3の炭素数
を調べた。
【0195】実験例37〜実験例46 潤滑剤として、化83で示される液晶分子(シアノアル
キルビフェニル化合物)を用い、疎水基−(CH2n
3のnを3〜15と変えて行った。これ以外は、実施
例9と同様にして、金属薄膜型磁気テープを作製した。
【0196】特性評価 以上のようして得られた実験例37〜実験例46の磁気
テープに対して、実施例1と同様に、温度25℃湿度6
0%のとき、温度−5℃のとき、温度40℃湿度80%
のときの摩擦係数及びスチル耐久性を測定を行った。そ
の結果を表12〜表13に示す。
【0197】
【表12】
【0198】
【表13】
【0199】表12〜表13より、化83で示される液
晶分子(シアノアルキルビフェニル化合物)の疎水基の
炭素数は、3〜15が好ましいことがわかる。炭素数が
2以下の場合には、疎水基長が短すぎ、摩擦、スチル両
特性とも十分な特性を確保することができない。炭素数
が16以上の場合には、潤滑剤を磁性層表面に塗布する
に際して、溶媒への溶解性が減少するため好ましくな
い。
【0200】<金属薄膜型磁気ディスクの作製>実施例17 まず始めに、表面を鏡面研磨した3.5インチのアルミ
合金基板上に、NiP下地膜10μm、Cr中間層0.
5μm、Co−Cr−Pt磁性層60nm、カーボン保
護膜20nmを順にスパッタにより成膜した。なお、こ
の磁気ディスク表面の面粗さは、中心線平均粗さ(R
a)で1.2nmである。
【0201】次に、化75で示される液晶分子1をクロ
ロホルムに0.01重量%の濃度で溶解させた潤滑剤を
調製した。そして、この潤滑剤中に上記磁気ディスクを
浸積することにより、液晶分子1を磁気ディスク上に塗
布した。塗布条件は、潤滑剤中での滞留時間を180
秒、潤滑剤からの引き上げ速度を0.25mm/秒とし
た。さらに、磁気ディスクを純粋なクロロホルム中に浸
積し、余分に付着した液晶分子1を磁気ディスク上より
除去した。これにより、全膜厚が2.5nm(エリプソ
メータの測定による)で、塗布量が10mg/m2であ
る潤滑膜が形成された。以上の工程により、金属磁性薄
膜型磁気ディスクを作製した。
【0202】実施例18〜実施例24 潤滑剤として、液晶分子1の代わりに、化76〜化82
で示される液晶分子2〜液晶分子8を用いた以外は、実
施例17と同様にして金属薄膜型磁気ディスクを作製し
た。
【0203】比較例11 潤滑剤として液晶分子1の代わりに、化86で示される
フッ素系潤滑剤(分子量4000)を用いた以外は、実
施例17と同様にして金属薄膜型磁気ディスクを作製し
た。
【0204】
【化86】
【0205】特性評価 以上のようして得られた実施例17〜実施例24及び比
較例11の磁気ディスクをハードディスク装置に取り付
け、最大静止摩擦係数と、動摩擦係数と、ヘッドクラッ
シュが発生するまでの周回数を測定した。その結果を表
14に示す。
【0206】なお、最大静止摩擦係数は、ヘッドスライ
ダと磁気ディスクを接触させた状態で磁気ディスクを低
速で回転させ、回転直後に発生する摩擦力を測定した。
測定条件は、ヘッド押しつけ荷重を5g、ディスク回転
数を1rpmとした。
【0207】動摩擦係数は、ヘッドスライダを磁気ディ
スクに接触させた状態で20万回まで連続的に摺動さ
せ、その間の最大摩擦力を測定した。測定条件は、ヘッ
ドの押しつけ荷重を5g、ディスク回転数を150rp
mとした。なお、20万回以下の周回数でヘッドクラッ
シュが発生した場合には、ヘッドクラッシュが発生する
までの最大摩擦力を測定した。
【0208】磁気ディスクのヘッドクラッシュは、潤滑
膜の下地であるカーボン保護膜が完全に摩耗し、磁性膜
が露出した状態である。このヘッドクラッシュが発生す
ると、目視により確認できる摺動痕が発生するので、そ
の時点で実験を中止し、そこまでの周回数を記録した。
なお、最大周回数は20万回とした。
【0209】
【表14】
【0210】表14より、潤滑剤として液晶分子を用い
た実施例の磁気ディスクは、比較例の磁気ディスクと比
較して、ほぼ同等の最大摩擦係数および動摩擦係数を示
し、かつヘッドクラッシュまでの周回数が大きく向上し
ている。このことから、液晶分子を潤滑剤として使用し
た場合、優れた連続摺動耐久性、低粘着性、高メニスカ
ス力を得られることがわかる。
【0211】以上の実施例、実験例、及び比較例より、
潤滑剤として液晶分子を用いた磁気記録媒体は、各種使
用条件において、摩擦係数が低減され、耐久性に優れて
いることがわかる。
【0212】
【発明の効果】以上の説明からも明らかなように、本発
明によれば、潤滑剤に液晶材料を用いてなることから、
各種使用条件下において優れた潤滑性能が保たれるとと
もに、長時間にわたり潤滑効果が持続され、走行性、耐
摩耗性、耐久性に優れた磁気記録媒体を提供できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C09K 19/32 C09K 19/32 19/34 19/34 C10N 40:18 50:10 (72)発明者 小林 健 東京都品川区北品川6丁目7番35号 ソニ ー株式会社内 (72)発明者 岩本 浩 東京都品川区北品川6丁目7番35号 ソニ ー株式会社内 (72)発明者 松澤 伸行 東京都品川区北品川6丁目7番35号 ソニ ー株式会社内

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非磁性支持体上に少なくとも磁性層が形
    成されてなる磁気記録媒体において、 下記の化1又は化2式にて示される二環式の液晶分子を
    含有する潤滑剤が最外層に保持されてなることを特徴と
    する磁気記録媒体。 【化1】 【化2】
  2. 【請求項2】 化1又は化2式中のXは、下記の化3式
    にて示される6員環構造、又は化4式にて示される縮合
    環構造であることを特徴とする請求項1記載の磁気記録
    媒体。 【化3】 【化4】
  3. 【請求項3】 化1式中のY1は、下記の化5〜化10
    式にて示される環式構造の中から選ばれることを特徴と
    する請求項1記載の磁気記録媒体。 【化5】 【化6】 【化7】 【化8】 【化9】 【化10】
  4. 【請求項4】 化2式中のY2は、下記の化11〜化3
    5式にて示される環式構造の中から選ばれることを特徴
    とする請求項1記載の磁気記録媒体。 【化11】 【化12】 【化13】 【化14】 【化15】 【化16】 【化17】 【化18】 【化19】 【化20】 【化21】 【化22】 【化23】 【化24】 【化25】 【化26】 【化27】 【化28】 【化29】 【化30】 【化31】 【化32】 【化33】 【化34】 【化35】
  5. 【請求項5】 上記潤滑剤が、磁性層表面に塗布されて
    いる、或いは磁性層中に内添されていることを特徴とす
    る請求項1記載の磁気記録媒体。
  6. 【請求項6】 磁性層が金属磁性薄膜であり、金属磁性
    薄膜上に保護膜が形成され、 上記潤滑剤が、保護膜表面に塗布されてなることを特徴
    とする請求項1記載の磁気記録媒体。
  7. 【請求項7】 非磁性支持体の磁性層形成面とは反対側
    の面にバックコート層が形成され、 上記潤滑剤が、バックコート層表面に塗布されている、
    或いはバックコート層中に内添されていることを特徴と
    する請求項1記載の磁気記録媒体。
  8. 【請求項8】 非磁性支持体と磁性層との間に非磁性層
    が形成され、 上記潤滑剤が、非磁性層中に内添されていることを特徴
    とする請求項1記載の磁気記録媒体。
  9. 【請求項9】 情報が記録される磁気記録媒体と、磁気
    記録媒体に情報を記録及び/又は再生する磁気ヘッドと
    を有し、磁気記録媒体と磁気ヘッドのそれぞれの表面の
    幾何学的平均面の最小間隔が50nm以下である磁気記
    録再生装置において、 磁気記録媒体は、磁気ヘッドと対向する最外層に、下記
    の化36又は化37式にて示される二環式の液晶分子を
    含有する潤滑剤が保持されてなることを特徴とする磁気
    記録再生装置。 【化36】 【化37】
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2005139398A (ja) * 2003-11-10 2005-06-02 Kyodo Yushi Co Ltd 半固体状潤滑剤組成物
WO2015022990A1 (ja) * 2013-08-16 2015-02-19 Jx日鉱日石エネルギー株式会社 潤滑油添加剤、および潤滑油組成物

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